第1~第4実施形態に係るアッセイ装置について以下に説明する。なお、以下の説明で用いる図4、図5(a)~図5(d)、図6(a)~図6(c)、図7、図8(a)~図8(d)、図9及び図10においては、アッセイ装置の外形を破線によって示し、かつアッセイ装置内部の構成要素を実線によって示す。特に明確に図示はしないが、図5(a)~図5(d)及び図6(a)~図6(c)におけるアッセイ装置の分離空間及びその周辺部の配向方向は、図4におけるものと同様であり、かつ図8(a)~図8(d)におけるアッセイ装置の分離空間及びその周辺部の配向方向は、図7におけるものと同様である。
本実施形態に係るアッセイ装置に適用し得る液体は、アッセイ装置内を流れることができるものであれば、特に限定されない。かかるアッセイ装置に適用し得る液体は、化学的に純粋な液体のみならず、気体、別の液体又は固体を液体に溶解、分散、又は懸濁したものも含むことができる。
例えば、液体は親水性であるとよく、親水性の液体としては、例えば、ヒト又は動物の全血、血清、血漿、血球、尿、糞便希釈液、唾液、汗、涙、爪の抽出液、皮膚の抽出液、毛髪の抽出液、又は脳脊髄液等の生体由来の液体試料が挙げられる。この場合、アッセイ装置においては、妊娠検査、尿検査、便検査、成人病検査、アレルギー検査、感染症検査、薬物検査、がん検査等のための体外診断用医薬品、一般用検査薬、POCT(PointOfCareTesting)等の用途にて、液体試料中の臨床検査、診断、又は分析上有効な検体を測定し得るが、アッセイ装置の用途は特に限定されない。また、親水性の液体としては生体試料に限定されず、例えば、食品の懸濁液、飲用水、河川の水、土壌懸濁物等も挙げられる。この場合、アッセイ装置において、食品や飲用水の中の病原体を測定し得るか、又は河川の水の中や土壌中の汚染物質を測定し得る。これら親水性の液体は、典型的には、水を溶媒とするものであってよく、本アッセイ装置によって溶液交換が可能である水溶液であれば良い。
本願明細書において、「ラテラルフロー」は、重力沈降が駆動力となることによって移動する液体の流れを指す。ラテラルフローに基づく液体の移動は、重力沈降による液体の駆動力が支配的(優位)に作用する液体の移動を指す。これに対して、毛管力(毛細管現象)に基づく液体の移動は、界面張力が支配的(優位)に作用する液体の移動を指す。ラテラルフローに基づく液体の移動と毛管力に基づく液体の移動とは異なるものである。
本願明細書において、「検体」は、液体中に存在し、かつ検出又は測定される化合物又は組成物を指す。例えば、「検体」は、糖類(例えば、グルコース)、タンパク質若しくはペプチド(例えば、血清タンパク質、ホルモン、酵素、免疫調節因子、リンホカイン、モノカイン、サイトカイン、糖タンパク質、ワクチン抗原、抗体、成長因子、若しくは増殖因子)、脂肪、アミノ酸、核酸、細胞、ステロイド、ビタミン、病原体若しくはその抗原、天然物質若しくは合成化学物質、汚染物質、治療目的の薬物若しくは違法な薬物若しくは毒物、又はこれらの物質の代謝物若しくは抗体を含むものであるとよいが、特定の検体には限定されない。
本願明細書において、「マイクロ流路」は、μl(マイクロリットル)オーダー、すなわち、約0.1μl以上かつ約1ml(ミリリットル)未満の微量な液体を用いて検体を検出又は測定するためか、又はかかる微量な液体を秤量するために、アッセイ装置内にて液体を流すように構成される経路を指す。
本願明細書において、「フィルム」は、約200μm(マイクロメートル)以下の厚さを有する膜状物体を指し、かつ「シート」は、約200μmを超える厚さを有する膜状物体又は板状物体を指す。
本願明細書において、「プラスチック」は、重合し得る材料又はポリマー材料を必須成分として使用するように重合又は成形したものを指す。プラスチックは、2種類以上のポリマーを組み合わせたポリマーアロイもまた含む。
本願明細書において、「多孔質媒体」は、複数かつ多数の微細孔を有し、かつ液体を吸引かつ通過可能とする部材、又は固形物を捕捉若しくは濃縮できる部材であってもよく、紙、セルロース膜、不織布、ガラスファイバー、高分子ゲル、プラスチック等を含む部材を指す。例えば、「多孔質媒体」は、液体が親水性である場合には親水性を有するとよく、かつ液体が疎水性である場合には疎水性であるとよい。特に、「多孔質媒体」は、親水性を有するとよく、かつ多数の繊維を含んで成る紙、脱脂綿等であるとよい。さらに、「多孔質媒体」は、セルロース、ニトロセルロース、セルロースアセテート、濾紙、ティッシュペーパー、トイレットペーパー、ペーパータオル、布地、綿、又は水を透過する親水性多孔質ポリマーのうちの1つ以上とすることができる。
[第1実施形態]
第1実施形態に係るアッセイ装置について説明する。
[アッセイ装置の概略的な構成について]
最初に、図1~図4を参照して、本実施形態に係るアッセイ装置の概略的な構成について説明する。図1~図3に示すように、アッセイ装置は、液体を流すことができるように構成されるマイクロ流路1を有する。以下において、このようなマイクロ流路1内における液体の流れに沿った方向(矢印Cにより示す)を「流れ方向」と呼ぶ。
アッセイ装置は、流れ方向の一方側(すなわち、下流側)に位置するマイクロ流路1の一端部1aと間隔を空けて配置される吸収用多孔質媒体2を有する。アッセイ装置はまた、マイクロ流路1の一端部1aと吸収用多孔質媒体2との間に配置される分離空間3を有する。分離空間3はアッセイ装置内の空洞となっている。吸収用多孔質媒体2は、マイクロ流路1の一端部1aから分離空間3に流入した液体を吸収可能とするように構成されている。さらに、アッセイ装置は、吸収用多孔質媒体2と一緒に分離空間3を画定する周壁4を有する。なお、分離空間は、吸収用多孔質媒体及び周壁に加えて、さらなる構成要素によって画定されてもよい。
かかるアッセイ装置においては、マイクロ流路1を通るように供給される液体が、分離空間3を隔てて、吸収用多孔質媒体2によって吸収された一部とマイクロ流路1内に留置された別の一部とに分離できるようになっている。
さらに、図4に示すように、アッセイ装置においては、吸収用多孔質媒体2が、流れ方向にてマイクロ流路1の一端部1a寄りに位置する先端領域2aを有する。吸収用多孔質媒体2はまた、分離空間3内に突出するように形成される凸部5を有する。すなわち、吸収用多孔質媒体2の先端領域2aが凸部5を有する。流れ方向に対して直交する幅方向(矢印Wにより示す)において、吸収用多孔質媒体2の先端領域2aの最大幅(すなわち、幅方向の最大長さ)eはマイクロ流路1の一端部1aの幅(すなわち、幅方向の長さ)dよりも大きくなっている。
幅方向においては、分離空間3及び周壁4のそれぞれの最大幅fはマイクロ流路1の一端部1aの幅dよりも大きくなっている。例えば、分離空間3及び周壁4のそれぞれの最大幅fは、マイクロ流路1の一端部1aの幅dに対して約2倍以上であるとよく、好ましくは、マイクロ流路1の一端部1aの幅dに対して約3倍以上であるとよい。しかしながら、分離空間及び周壁のそれぞれの最大幅は、これに限定されない。
周壁4には、空気を流通可能とするように構成される2つの通気口6が設けられる。特に、各通気口6は、アッセイ装置の外部と分離空間3とを連通するように構成されるとよい。マイクロ流路1の一端部1aは幅方向にて2つの通気口6間に位置している。
しかしながら、本発明のアッセイ装置はこれに限定されず、周壁に1つ又は3つ以上の通気口を設けることもできる。例えば、1つの通気口が設けられる場合において、1つの通気口を、上記2つの通気口のいずれか一方と実質的に同様に構成することができる。3つ以上の通気口が設けられる場合において、これらの通気口のうち2つを上記2つの通気口と実質的に同様に構成することができる。
[アッセイ装置の詳細な構成について]
図1~図4を参照して、本実施形態に係るアッセイ装置の詳細な構成について説明する。すなわち、アッセイ装置は、詳細には以下のように構成することができる。
図1に示すように、アッセイ装置は、流れ方向及び幅方向に直交する高さ方向(矢印Hにより示す)にて互いに対向する頂面及び底面を有する。アッセイ装置は、その使用状態では、高さ方向を鉛直方向に向けるように配置されるとよく、この場合、アッセイ装置の頂面及び底面はそれぞれ上方及び下方を向く。かかるアッセイ装置は、その頂面から底面に向かって順に並ぶ第1層部材S1、第2層部材S2及び第3層部材S3を有する。第1~第3コア層部材S1~S3のそれぞれは実質的に層状に形成されるとよい。
第1及び第3層部材S1,S3は、液体を透過させないような素材を用いて構成される。第1及び第3層部材S1,S3の接触角は90度よりも小さいとよい。第1及び第3層部材S1,S3は透明であるとよい。しかしながら、第1及び第3層部材の一方を半透明又は不透明とすることもできる。第1及び第3層部材S1,S3の少なくとも一方は、アッセイ装置に液体を通過させたときに液体の圧力により弾性変形可能となっている。
第1及び第3層部材S1,S3のそれぞれは、プラスチックを用いて作製されるとよい。さらに、第1及び第3層部材S1,S3のそれぞれの素材は、プラスチック製のシート又はフィルムであるとよい。例えば、このようなプラスチックとしては、ポリエチレン(PE)、高密度ポリエチレン(HDPE)、ABS樹脂(ABS)、AS樹脂(SAN)、ポリプロピレン(PP)、ポリ塩化ビニリデン(PVDC)、ポリスチレン(PS)、ポリエチレンテレフタラート(PET)、ポリ塩化ビニール(PVC)、ポリオレフィン(PO)、ナイロン、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、シクロオレフィンコポリマー(COC)、シクロオレフィンポリマー(COP)、ポリカーボネート(PC)、ポリジメチルシロキサン(PDMS)、ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリ乳酸(PLA)等の生分解性プラスチック若しくはその他のポリマー又はそれらの組み合わせが挙げられる。しかしながら、第1及び第3層部材の少なくとも一方が、流体が浸透しない材料であれば、プラスチック以外の材料を用いて作製することもでき、このようなプラスチック以外の材料は、樹脂、ガラス、金属等とすることもできる。このような第1及び第3層部材S1,S3に用いられる材料又は素材は同一であっても異なっていてもよい。
第2層部材S2は両面接着テープであるとよい。かかる第2層部材S2の頂面及び底面が接着性を有する。第1層部材S1の底面が第2層部材S2の頂面に接合され、かつ第2層部材S2の底面が第3層部材S3の頂面に接合される。しかしながら、第2層部材は、上述のように第1及び第3層部材に用いられ得る材料又は素材として示したものを用いて作製することもできる。この場合、第2層部材は、接着剤、溶着等の接合手段を用いて第1及び第3層部材と接合されるとよく、第2層部材に用いられる材料又は素材は、第1又は第2層部材に用いられるものと同一であっても異なっていてもよい。
さらに、アッセイ装置において、図1に示すように、マイクロ流路1は、第2層部材S2を貫通するように形成される。さらに、マイクロ流路1の頂面及び底面は、それぞれ、第1及び第3層部材S1,S3によって画定される。図2に示すように、マイクロ流路1は略直線状に形成されるとよい。しかしながら、本発明においては、マイクロ流路を湾曲又は屈曲するように形成することもできる。
例えば、マイクロ流路1の高さ(すなわち、高さ方向の長さ)は、約15μm以上かつ約1000μm(すなわち、約1mm(ミリメートル))以下であるとよい。例えば、マイクロ流路1の幅dは、約100μm以上かつ約10000μm(すなわち、約1cm(センチメートル))以下であるとよい。例えば、マイクロ流路1の流れ方向の長さは、約10μm以上かつ約10cm以下であるとよい。例えば、マイクロ流路1の容積Pは、約0.1μl以上かつ約1000μl以下であるとよく、より好ましくは、約1μl以上かつ約500μl未満であるとよい。しかしながら、マイクロ流路の各寸法及び容積は、これらに限定されない。
再び図1に示すように、分離空間3は、第2層部材S2を貫通するように形成される。さらに、分離空間3の頂面及び底面は、それぞれ、第1及び第3層部材S1,S3によって画定される。流れ方向から見た場合において、分離空間3の横断面積はマイクロ流路1の横断面積よりも大きいとよい。
図3を参照すると、分離空間3の高さはマイクロ流路1の高さと実質的に等しくなっている。しかしながら、本発明はこれに限定されず、分離空間の高さをマイクロ流路の高さよりも大きくすることもできる。この場合、分離空間の底面がマイクロ流路の底面よりもアッセイ装置の底面側に位置するとよく、さらに、分離空間の底面が、流れ方向の上流から下流に向かうに従って、アッセイ装置の頂面側から底面側に向かう方向に傾斜するとよい。さらに、かかる分離空間及びマイクロ流路の底面の位置関係の代わりに、又はこの位置関係に加えて、分離空間の頂面がマイクロ流路の頂面よりもアッセイ装置の頂面側に位置してもよく、さらに、分離空間の頂面が、流れ方向の上流から下流に向かうに従って、アッセイ装置の底面側から頂面側に向かう方向に傾斜してもよい。
分離空間3の容積Qは、約0.001μl以上かつ約10000μl以下であるとよい。マイクロ流路1の容積Pに対する分離空間3の容積Qの比率Q/Pは、約0.01以上であるとよい。しかしながら、分離空間の容積、及びマイクロ流路の容積に対する分離空間の容積の比率は、これらに限定されない。また、分離空間3の容積Qはマイクロ流路1の容積Pはよりも大きいとよい。しかしながら、分離空間の容積はマイクロ流路の容積以下とすることもできる。
図3に示すように、周壁4は、それぞれ高さ方向の両側に位置する頂部4a及び底部4bを有する。すなわち、周壁4の頂部4a及び底部4bは、それぞれ、アッセイ装置の頂面側及び底面側に位置する。図4に示すように、周壁4はまた、流れ方向の上流側に位置する上流部4cを有する。マイクロ流路1の一端部1aは上流部4cに接続されている。周壁4は、それぞれ幅方向の両側に位置する2つの側部4d,4dをさらに有する。
図1~図4を参照すると、周壁4の頂部4aは第1層部材S1に形成される。周壁4の上流部4c及び2つの側部4d,4dは第2層部材S2に形成される。周壁4の底部4bは第3層部材S3に形成される。図3及び図4に示すように、分離空間3は、吸収用多孔質媒体2の先端領域2aと、周壁4の頂部4a,底部4b,上流部4c,2つの側部4d,4dとによって囲まれるとよい。かかる分離空間3において、吸収用多孔質媒体2及び周壁4の通気口6を介して空気が流通可能になっている。分離空間3を画定する表面のうちの底面、すなわち、周壁4の底部4bの表面は、高さ方向にて、マイクロ流路1を画定する表面のうちの底面よりも下方に配置されるとよい。しかしながら、分離空間を画定する表面のうちの底面、高さ方向にて、マイクロ流路を画定する表面のうちの底面と略一致するように配置することもできる。
マイクロ流路1を画定する表面と、分離空間3を画定する表面、すなわち、周壁4の表面とは親水処理されるとよい。かかる親水処理は、液体中に特異的結合体が含まれる場合において、特異的結合体がこれらの表面に吸着することを防ぐことを可能にするブロッキング剤を用いた処理を含む。ブロッキング剤としては、Block Ace等の市販のブロッキング剤、ウシ血清アルブミン、カゼイン、スキムミルク、ゼラチン、界面活性剤、ポリビニルアルコール、グロブリン、血清(例えば、ウシ胎仔血清又は正常ウサギ血清)、エタノール、MPCポリマー等が挙げられる。かかるブロッキング剤は、単独で又は2種以上を混合して用いることができる。
図1に示すように、アッセイ装置は、吸収用多孔質媒体2を収容可能とする収容空間7をさらに有する。収容空間7は、分離空間3に対して流れ方向の下流側に隣接するように配置される。さらに、収容空間7の流れ方向の下流端部には、空気を流通可能とするようにアッセイ装置の外部に向かって開口する開口部7aが形成されている。収容空間7は、第2層部材S2を貫通するように形成される。収容空間7の頂面及び底面は、それぞれ、第1及び第3層部材S1,S3によって画定される。
吸収用多孔質媒体2は、その上流端部2aが分離空間3を流れ方向の下流側から塞ぐように収容空間7内に配置されるとよい。さらに、吸収用多孔質媒体2は収容空間7全体を占めるように配置することができる。しかしながら、吸収用多孔質媒体は、その上流端部が周壁と一緒に分離空間を画定していれば、これに限定されない。
吸収用多孔質媒体2と第1層部材S1との間には2つの両面接着テープTが配置される。2つの両面接着テープTは互いに幅方向に間隔を空けて位置している。吸収用多孔質媒体2は、これらの両面接着テープTによって第1層部材S1に接合されている。しかしながら、吸収用多孔質媒体は、両面接着テープ以外の接合手段によって接合されてもよく、例えば、接合手段は接着剤、溶着等であってもよい。さらに、吸収用多孔質媒体は、両面接着テープ、又は両面接着テープ以外の接合手段によって第3層部材に接合されてもよい。
図4に示すように、吸収用多孔質媒体2の凸部5は、マイクロ流路1の一端部1aから分離空間3に流れる液体をその界面張力によって凸部5の周囲で膨らませた状態で受けることができるように配置されるとよい。ここで、液体を凸部5の周囲で膨らませた状態は、アッセイ装置を高さ方向から見た場合に、液体が、凸部5を実質的な中心として略円形状に広がった状態であると定義する。このとき、マイクロ流路1の一端部1aから分離空間3に流れる液体は、特に、凸部5の周囲で略球状に膨らんだ状態であるとよい。マイクロ流路1の一端部1aの幅dに対する吸収用多孔質媒体2の凸部5及びマイクロ流路1の一端部1a間における流れ方向の最短距離gの比率g/dは、約0.1以上かつ約5以下であるとよく、より好ましくは、約0.5以上かつ約5以下であるとよい。しかしながら、かかる比率は、これに限定されない。
凸部5はまた、幅方向にてマイクロ流路1の一端部1aに対応するように配置されるとよい。吸収用多孔質媒体2の素材が繊維を含む場合においては、凸部5をプレス加工することによって、凸部5から飛び出した繊維が液体に混入することを防ぐこともできる。
吸収用多孔質媒体2の凸部5は、その突出方向の基端から先端に向かってその幅を減少させるように形成されている。しかしながら、凸部は、その突出方向の基端から先端に向かってその幅を増加させるように形成されてもよい。また、凸部は、その突出方向の全体に渡ってその幅を略等しくするように形成されてもよい。さらに、凸部は、その突出方向の中間の幅を最大とするように形成されてもよい。
2つの通気口6は、それぞれ、次のように想定される2つの仮想線V1,V2に対して分離空間3の幅方向の外方寄りに位置するとよい。2つの仮想線V1,V2は、それぞれマイクロ流路1の一端部1aにおける幅方向の両端1b,1cと吸収用多孔質媒体2の先端領域2aにおける幅方向の両端2b,2cとを直線状に結んだものとして想定される。すなわち、2つの仮想線V1,V2のうち一方側の仮想線V1は、マイクロ流路1の一端部1aにおける幅方向の一方側の端1bと吸収用多孔質媒体2の先端領域2aにおける幅方向の一方側の端2bとを直線状に結んだものとして想定され、かつ2つの仮想線V1,V2のうち他方側の仮想線V2は、マイクロ流路1の一端部1aにおける幅方向の他方側の端1cと吸収用多孔質媒体2の先端領域2aにおける幅方向の他方側の端2cとを直線状に結んだものとして想定される。
かかる通気口6は、特に、周壁4の頂部4aを貫通するように形成されるとよい。この場合、通気口6は、第1層部材S1を貫通するように形成される。さらに、通気口6は、周壁4の上流部4c及び側部4d間に形成される角部4eに配置されるとよい。通気口6の大きさは、高さ方向から見て、仮想線V1,V2に対して分離空間3の幅方向の外方寄りに位置する分離空間3の領域よりも小さくなっているとよい。しかしながら、本発明はこれに限定されず、周壁の頂部の通気口に代えて、又は当該通気口に加えて、周壁の底部、上流部及び側部のうち少なくとも1つに、それからアッセイ装置の外部に連通するように形成される通気口を設けることもできる。なお、上述した周壁の頂部の通気口に代えて、周壁の頂部にさらなる通気口を設けることもできる。
加えて、アッセイ装置は、液体をマイクロ流路1に流入させるように構成される注入口8を有する。注入口8は、流れ方向の他方側(すなわち、上流側)に位置するマイクロ流路1の他端部1dに配置される。注入口8は、第1層部材S1を貫通するように形成される。
アッセイ装置はまた、注入口8に対応するようにマイクロ流路1の他端部1d内に配置される展開用多孔質媒体9を有する。かかる展開用多孔質媒体9の材料と吸収用多孔質媒体2の材料とは同一であっても異なっていてもよい。展開用多孔質媒体9は、液体が分離空間3を隔てて分離されるときに、液体の一部をマイクロ流路1内に留置させることができるように構成されるとよい。しかしながら、後述するようにマイクロ流路にて液体のラテラルフローを生じさせることができれば、アッセイ装置は、展開用多孔質媒体を有さないように構成することもできる。
[アッセイを行う構成について]
図1~図3を参照して、本実施形態に係るアッセイ装置においてアッセイを行う構成について説明する。図2及び図3に示すように、アッセイ装置におけるマイクロ流路1の長手方向の中間部には、アッセイ試薬を含んだアッセイ領域10が設けられる。かかるアッセイ領域10のアッセイ試薬は、液体中の検体と反応し、かつ当該検体を検出可能な結果を生じさせるものである。検体を検出可能な結果は、例えば、色の変化等に基づいて、肉眼により観察可能に表れてもよく、又は検体を検出可能な結果は、分光計又は他の測定手段のみによって検出可能に表れてもよい。
かかるアッセイ試薬は、検体との反応により呈色する鉄(III)イオン等の化学物質、呈色試薬等であってもよい。また、アッセイ試薬は、酵素、抗体、エピトープ、核酸、細胞、アプタマー、ペプチド、分子インプリントポリマー、吸着ポリマー、吸着ゲル、又は検体と反応することによって検出可能な結果を生じさせる任意の他の物質であってよい。アッセイ試薬は、物理吸着法、化学吸着法等の周知の固定化技術によってアッセイ領域10に固定されるとよい。具体的には、アッセイ試薬は、第1又は第3層部材S1,S3に固定されるとよく、特に、第1層部材S1に固定されるとよい。また、アッセイ試薬は、検出シグナルを分析するか又は増幅させるために、放射性同位元素、酵素、金コロイド、呈色試薬、量子ドット、ラテックス等の着色分子、色素、電気化学反応物質、蛍光物質、又は発光物質等の任意の標識物質を結合されてもよい。
かかるアッセイ装置においては、1種類以上のアッセイ試薬を用いてアッセイを行うことができ、この場合、アッセイ領域10は、1種類以上のアッセイ試薬を固定した1つ以上の固定部を有する。かかるアッセイ装置のアッセイにおいては、液体がマイクロ流路1内にて流動した状態、又は液体がマイクロ流路1内にて静置されるか又は一時的に停止した状態で、アッセイが行われる。
また、アッセイ装置において、2種類以上のアッセイ試薬を用いてアッセイを行う場合には、アッセイ領域10は、それぞれ2種類以上のアッセイ試薬を固定した2つ以上の固定部を有し、これらの固定部は流れ方向に並んで配置されるとよい。例えば、図2及び図3に示すように、2種類のアッセイ試薬、すなわち、第1及び第2アッセイ試薬が用いられる場合、アッセイ領域10は、第1アッセイ試薬を固定した第1固定部10aと、第2アッセイ試薬を固定した第2固定部10bとを有する。第1及び第2固定部10a,10bは、流れ方向の下流から上流に向かう方向に順に並ぶとよい。特に、このような2つ以上の固定部を有するアッセイ領域10を含んだアッセイ装置は、クロマトグラフィーの用途に用いることができるが、このことは、本発明を限定するものではない。
例えば、上述のように第1及び第2アッセイ試薬が用いられる構成においては、最初に、注入口8から送られた液体中の検体が、第2固定部10bにて第2アッセイ試薬と反応して、これによって、検体及び第2アッセイ試薬の複合体が生成される。次に、検体及び第2アッセイ試薬の複合体が、第1固定部10aに移動し、かつ第1固定部10aにて第1アッセイ試薬と反応して、これによって、検体及び第2アッセイ試薬の複合体と第1アッセイ試薬とのさらなる複合体が生成される。さらなる複合体のシグナルは周知の方法によって検出することができる。
第1及び第2アッセイ試薬が用いられる構成において、検体が抗原である場合、典型的には、第1アッセイ試薬が一次抗体を含み、かつ第2アッセイ試薬が二次抗体を含み、さらに、一次抗体及び二次抗体が検体における2つの異なるエピトープに結合するか、又は二次抗体が検体のエピトープに結合すると共に一次抗体が二次抗体に結合する。一次抗体及び二次抗体の少なくとも一方は標識される。この場合、第1固定部10aにおいて、抗原、一次抗体及び二次抗体の複合体が検出されることとなる。また、検体が抗体である場合、アッセイ試薬が抗原を含んでいて、抗原抗体反応により生じる複合体のシグナルを同様に検出できる。検体が酵素である場合、アッセイ試薬を基質とし、酵素基質反応の特異性を利用して同様に検出又は測定を行うことができる。検体が基質である場合、第1アッセイ試薬を酵素とし、任意選択に、第2アッセイ試薬を呈色試薬としてもよい。
特に図示はしないが、アッセイ装置においては、任意選択に、マイクロ流路1のアッセイ領域10に対して流れ方向の下流側に、アッセイ領域10に十分な量の検体が到達していることを確認可能に構成された対照領域が設けられてもよい。対照領域には、液体中の検体に結合しながら液体の流れと共に移動するアッセイ試薬(例えば、上記第2アッセイ試薬)とは結合できるが、検体とは結合しない対照試薬が設けられる。対照試薬は当該技術分野で周知の任意の分子又は組成物であってよい。対照試薬に、アッセイ試薬との反応が起こった場合に色の変化等を生じるようになっている試薬を用いれば、アッセイが信頼できる状態で行われたことを目視等によって確認することができる。
[アッセイ装置の流体制御について]
図5(a)~図5(d)及び図6(a)~図6(c)を参照して、本実施形態に係るアッセイ装置の流体制御について説明する。ここでアッセイ装置に適用される液体を第1及び第2液体L1,L2とし、これら第1及び第2液体L1,L2を順にアッセイ装置に供給するものとする。また、第1及び第2液体L1,L2は異なるものとする。しかしながら、第1及び第2液体を同一とすることも可能である。
典型的には、アッセイ装置に供給される各液体の量(ここでは、第1及び第2液体L1,L2のそれぞれの量)は、約1μl以上かつ約1ml未満であるとよい。さらに、各液体の量は、好ましくは、約1.5μl以上であるとよく、より好ましくは、約3.0μl以上であるとよい。各液体の量の上限は、例えば、数μl~数百μlであるとよい。このような各液体の量によって、検体等の検出感度を安定させることができ、かつ検体等の検出を容易にすることができる。この場合、各液体の量は、一滴の液体によって得ることができる。さらに、各液体の量は、マイクロ流路1の容量よりも大きいとよく、この場合、液体を、分離空間3を隔てて、吸収用多孔質媒体2によって吸収された一部とマイクロ流路1内に留置された別の一部とに良好に分離することができる。しかしながら、各液体の量は、マイクロ流路の容量よりも小さくすることもでき、又はマイクロ流路と実質的に同じにすることもできる。
最初に、特に図示はしないが、第1液体L1を注入口8に供給する。かかる第1液体L1は、展開用多孔質媒体9にその毛管力によって浸透し、その後、展開用多孔質媒体9を通ってマイクロ流路1に流入する。さらに、第1液体L1は、マイクロ流路1内を流れ方向の上流側から下流側に向かって流動する。このように第1液体L1がマイクロ流路1内を流動している状態、又は第1液体L1がマイクロ流路1内で静置されるか又は一時的に停止した状態で、上述のようにアッセイ領域10にてアッセイが行われる。
ここで、マイクロ流路1内における第1液体L1の流動の原理は、理論的には次のように考え得る。上述のように、第1及び第3層部材S1,S3の少なくとも一方が第1液体L1の圧力により弾性変形可能となっている。そのため、マイクロ流路1内において第1液体L1が第1及び第3層部材S1,S3に部分的に当接していたとしても、ラテラルフローに基づいて流れる第1液体L1によって、第1及び第3層部材S1,S3が引き剥がされる。さらに、マイクロ流路1内において第1層部材S1の底面及び第3層部材S3の頂面に剥離帯電が生じ、この剥離帯電によって、第1層部材S1の底面及び第3層部材S3の頂面に水分子が引き寄せられ、かつ第1液体L1には界面張力が生ずる。その結果、第1液体L1はマイクロ流路1内でその速度を減少させずに流動することができる。しかしながら、かかる第1液体L1の流動の原理は、現時点で理論的に考えられる一例であり、第1液体がマイクロ流路内でその速度を減少させずに流動することができれば、これに限定されない。
第1液体L1の供給を継続した場合、特に、マイクロ流路1の容量を超える量の第1の液体L1を供給した場合、図5(a)に示すように、マイクロ流路1内を流れる第1液体L1が分離空間3に到達する。さらに、図5(b)に示すように、第1液体L1は分離空間3を通って吸収用多孔質媒体2の凸部5に接触する。第1液体L1の流れは、最初に、分離空間3内でマイクロ流路1の一端部1aから吸収用多孔質媒体2の凸部5まで延びるような状態となる。特に、第1液体L1の流れは、その界面張力によって凸部5の周囲で膨らんだ状態となるとよい。さらに第1液体L1の供給を継続すると、図5(c)に示すように、第1液体L1は、分離空間3における空気の流通を可能とする通気口6を避けながら、吸収用多孔質媒体2の先端領域2a全体に接触するように分離空間3内で広がった状態となる。第1液体L1は、その供給を停止するまで、このような状態で吸収用多孔質媒体2によって吸収される。第1液体L1の供給を停止した後、図5(d)に示すように、第1液体L1は、分離空間3を隔てて、吸収用多孔質媒体2によって吸収された一部とマイクロ流路1内に留置された別の一部とに分離される。
次に、特に図示はしないが、第1液体L1の供給を停止した後、第2液体L2をさらに注入口8に供給すると、第2液体L2は、第1液体L1と同様にマイクロ流路1内を流れる。このとき、図6(a)に示すように、第2液体L2は、マイクロ流路1内に予め充填されていた第1液体L1を分離空間3に押し出す。その結果、マイクロ流路1内で、第1液体L1を第2液体L2に入れ替える溶液交換が行われることとなる。なお、第2液体L2がマイクロ流路1内を流動している状態、又は第2液体L2が第1液体L1と入れ替わった後にマイクロ流路1内で静置されるか又は一時的に停止した状態で、上述のようにアッセイ領域10にてアッセイが行われる。
第2液体L2の供給を継続した場合、特に、マイクロ流路1内に予め充填されていた第1液体L1の量を超える量の第2の液体L2を供給した場合、さらに図6(a)に示すように、第2液体L2により押し出された第1液体L1が、先に、分離空間3を通って吸収用多孔質媒体2の凸部5に再び接触する。かかる第1液体L1の流れは、再び、分離空間3内でマイクロ流路1の一端部1aから吸収用多孔質媒体2の凸部5まで延びるような状態となる。さらに、その後、図6(b)に示すように、第2液体L2は、第1液体L1に続いて、分離空間3を通って吸収用多孔質媒体2の凸部5に接触する。第2液体L2は、分離空間3における空気の流通を可能とする通気口6を避けながら、吸収用多孔質媒体2の先端領域2a全体に接触するように分離空間3内で広がった状態となる。第2液体L2は、その供給を停止するまで、このような状態で吸収用多孔質媒体2によって吸収される。第2液体L2の供給を停止した後、図6(c)に示すように、第2液体L2は、分離空間3を隔てて、吸収用多孔質媒体2によって吸収された一部とマイクロ流路1内に留置された別の一部とに分離される。
上述のような溶液交換は、ELISA法等の多段階の抗原抗体反応を生じさせることを容易化できる。特に、アッセイ装置に供給する第2液体L2の量をマイクロ流路1内に充満された第1液体L1の量と実質的に同じとするか、又は同第1液体L1の量よりも大きくする場合、溶液交換を確実に行うことができる。
言い換えれば、本実施形態に係るアッセイ装置おいては、複数の液体を順に注入口8に供給する場合において、複数の液体の1つである先行する液体をマイクロ流路1に予め充填し、先行する液体の供給を停止し、続いて、複数の液体のうち別の1つであり、かつ上記先行する液体に後続する液体を注入口8に供給し、これによって、マイクロ流路1にて、後続する液体を先行する液体と入れ替えることができる。さらに、このように後続する液体を先行する液体と入れ替える液体交換を繰り返すことができる。この場合においても、典型的には、先行する液体と後続する液体とを異なるものとする。しかしながら、先行する液体と後続する液体とを同一とすることも可能である。
以上によれば、本実施形態に係るアッセイ装置は、液体を流すことができるように構成されるマイクロ流路1と、マイクロ流路1の流れ方向の一端部1aと間隔を空けて配置される吸収用多孔質媒体2と、マイクロ流路1の一端部1a及び吸収用多孔質媒体2間に配置される分離空間3と、吸収用多孔質媒体2と一緒に分離空間3を画定する周壁4とを備え、空気を流通可能とするように構成される通気口6が周壁4に設けられ、マイクロ流路1を通るように供給される液体が、分離空間3を隔てて、吸収用多孔質媒体2によって吸収された一部とマイクロ流路1内に留置された別の一部とに分離できるようになっている。
そのため、吸収用多孔質媒体2内の液体の蒸発により発生した蒸気を、分離空間3から通気口6を介してアッセイ装置の外部に放出でき、その結果、かかる蒸気がマイクロ流路1内の液体の蒸発を促すことを防止できる。また、通気口6を介して分離空間3内における空気の流通を定常的に確保することができる。特に、分離空間3に面する吸収用多孔質媒体2の湿潤が進行した結果、吸収用多孔質媒体2を介した分離空間3における空気の流通量が減少した場合であっても、通気口6によって分離空間3における空気の流通を確保することができる。従って、分離空間における空気の流通量のバラツキを低減することができて、分離空間3における液体交換性能の低下を防止することができる。また、マイクロ流路1の一端部1aにおけるメニスカスの屈曲を抑えることができる。その結果、分離空間3における液体の残留を防止することができ、さらには、マイクロ流路1内に充填される液体の量のバラツキを低減することができる。よって、液体の計量精度を向上させることができ、液体の制御性能を向上させることができる。
本実施形態に係るアッセイ装置においては、吸収用多孔質媒体2が、分離空間3内に突出するように形成される凸部5を有する。そのため、かかる凸部5によって、マイクロ流路1を通って供給される液体を、分離空間3を隔てて、吸収用多孔質媒体2によって吸収された一部とマイクロ流路1内に留置された別の一部とに確実に分離することができる。よって、液体の計量精度を向上させることができ、液体の制御性能を向上させることができる。例えば、吸収用多孔質媒体2の凸部5が、マイクロ流路1の一端部1aから分離空間3に流れる液体をその界面張力によって凸部5の周囲で膨らませた状態で受けることができるように配置されていれば、液体の計量精度を効率的に向上させることができ、液体の制御性能を効率的に向上させることができる。
本実施形態に係るアッセイ装置においては、幅方向において分離空間3の最大幅fがマイクロ流路1の一端部1aの幅dよりも大きくなっており、2つの通気口6が周壁4に設けられ、マイクロ流路1の一端部1aが幅方向にて2つの通気口6間に位置するとよい。さらに、吸収用多孔質媒体2が、流れ方向にてマイクロ流路1の一端部1a寄りに位置する先端領域2aを有し、幅方向にて吸収用多孔質媒体2の先端領域2aの最大幅eがマイクロ流路1の一端部1aの幅dよりも大きくなっており、それぞれマイクロ流路1の一端部1aにおける幅方向の両端1b,1cと吸収用多孔質媒体2の先端領域2aにおける幅方向の両端2b,2cとを直線状に結んだ2つの仮想線V1,V2を想定した場合に、2つの通気口6がそれぞれ2つの仮想線V1,V2に対して分離空間3の幅方向の外方寄りに位置するとよい。
そのため、2つの通気口6によって、分離空間3内における空気の流通を効率的に確保することができる。そして、通気口6は、分離空間3における液体の経路を避けることができるので、液体が通気口6からアッセイ装置の外部に漏れることを防止できる。よって、液体の制御性能を向上させることができる。
[第2実施形態]
第2実施形態に係るアッセイ装置について説明する。
本実施形態に係るアッセイ装置は、以下に述べる点を除いて、第1実施形態に係るアッセイ装置と同様である。そのため、本実施形態においては、第1実施形態に係るアッセイ装置と同様の構成に関する説明を省略する。なお、本実施形態の構成要素が、第1実施形態の構成要素と同様に構成される場合には、その第1実施形態の構成要素と同様の符号を付す。
[アッセイ装置の構成について]
図7を参照して、本実施形態に係るアッセイ装置の構成について説明する。本実施形態に係るアッセイ装置においては、吸収用多孔質媒体2、特に、その先端領域2aが、第1実施形態における凸部5の代わりに、次のような凸部21を有すると好ましい。かかる凸部21の概略的な構成は、第1実施形態におけるアッセイ装置の概略的な構成にて述べたような凸部5の概略的な構成と同様である。
凸部21の詳細な構成については、凸部21は、それぞれ流れ方向の上流側及び下流側に位置する先端区域21a及び基端区域21bを有する。先端区域21aは、流れ方向の上流側から下流側に向かってその幅を増加させるように形成されている。基端区域21bは、流れ方向の全体にてその幅を実質的に等しくするように形成されている。しかしながら、本実施形態の吸収用多孔質媒体2は、このような凸部21の代わりに、第1実施形態の凸部5を有することもできる。その逆に、第1実施形態の吸収用多孔質媒体2が、その凸部5の代わりに、本実施形態の凸部21を有することもできる。
マイクロ流路1の一端部1aの幅dに対する吸収用多孔質媒体2の凸部21及びマイクロ流路1の一端部1a間における流れ方向の最短距離gの比率g/dは、約0.1以上であるとよく、より好ましくは、約0.5以上であるとよい。しかしながら、かかる比率は、これに限定されない。
吸収用多孔質媒体2の素材が繊維を含む場合においては、凸部21をプレス加工することによって、凸部5から飛び出した繊維が液体に混入することを防ぐこともできる。
さらに、本実施形態に係るアッセイ装置においては、幅方向にて、分離空間3の最大幅fがマイクロ流路1の一端部1aの幅dよりも大きくなっており、さらに、かかるアッセイ装置は、第1実施形態における2つの通気口6の代わりに、次に述べる2つの通気口22を有する。2つの通気口22の概略的な構成は、第1実施形態におけるアッセイ装置の概略的な構成にて述べたような2つの通気口6の概略的な構成と同様である。2つの通気口22の詳細な構成については、各通気口22は、周壁4の頂部4aを貫通するように形成される。マイクロ流路1の一端部1aは幅方向にて2つの通気口22間に位置する。各通気口22は、流れ方向にて周壁4の上流部4cと吸収用多孔質媒体2の凸部21、特に、凸部21の先端区域21aとの間で延びている。なお、本実施形態に係る通気口は、周壁の頂部に加えて、又は周壁の頂部の代わりに、周壁の底部に設けることもできる。
幅方向において、2つの通気口22間の最短距離iはマイクロ流路1の一端部1aの幅dと実質的に等しくなっているとよい。この場合、各通気口22は、幅方向にてマイクロ流路1の一端部1aと周壁4の側部4dとの間で延びるとよい。特に、分離空間3の幅方向の中央寄りに位置する通気口22の内側縁22aが、流れ方向にて周壁4の上流部4cと吸収用多孔質媒体2の凸部21との間で略直線状に延びるとよい。
[アッセイ装置の流体制御について]
図8(a)~図8(d)を参照して、本実施形態に係るアッセイ装置の流体制御について説明する。ここでアッセイ装置に適用される液体は、第1実施形態と同様に、第1及び第2液体L1,L2とし、これら第1及び第2液体L1,L2を順にアッセイ装置に供給するものとする。
最初に、特に図示はしないが、第1実施形態と同様に、第1液体L1を注入口8に供給すると、第1液体L1は、マイクロ流路1内を流れ方向の上流側から下流側に向かって流動する。第1液体L1がマイクロ流路1内を流動するときには、アッセイ領域10にてアッセイが行われる。
第1液体L1の供給を継続した場合、特に、マイクロ流路1の容量を超える量の第1の液体L1を供給した場合、図8(a)に示すように、マイクロ流路1内を流れる第1液体L1が分離空間3に到達する。さらに、図8(b)に示すように、第1液体L1は分離空間3を通って吸収用多孔質媒体2の凸部21に接触する。その後、第1液体L1の流れは、第1液体L1の界面張力と、2つの通気口22における空気の流通とによって、2つの通気口22の内側縁22aに沿って、分離空間3内でマイクロ流路1の一端部1aから吸収用多孔質媒体2の凸部21まで延びるような状態となる。第1液体L1は、その供給を停止するまで、このような状態で吸収用多孔質媒体2によって吸収される。このとき、第1液体L1は、マイクロ流路1の一端部1aから分離空間3内に流入すると、ラテラルフローに基づいて流れ方向に向かう力が作用した状態で移動し、2つの通気口22の内側縁22aでは、かかる状態の第1液体L1の界面張力が、第1の液体L1を2つの通気口22に向かわせる力よりも圧倒的に大きくなる。そのため、第1液体L1がこのような状態にあれば、第1液体L1が通気口22から漏出することを防ぐことができる。
第1液体L1の供給を停止した後、図8(c)に示すように、第1液体L1の流れは、分離空間3内で、流れ方向にてマイクロ流路1の一端部1a及び吸収用多孔質媒体2の凸部21から、これらの間の中央に向かうに従って、2つの通気口22の内側縁22aから離れるようにその幅を減少させた状態となる。その後、図8(d)に示すように、第1液体L1は、分離空間3を隔てて、吸収用多孔質媒体2によって吸収された一部とマイクロ流路1内に留置された別の一部とに分離される。
第2液体L2をアッセイ装置に供給する場合については、第2液体L2の流れが、第2液体L2の界面張力と、2つの通気口22における空気の流通とによって、2つの通気口22の内側縁22aに沿うように、分離空間3内でマイクロ流路1の一端部1aから吸収用多孔質媒体2の凸部21まで延びるような状態となる点を除いて、第1実施形態と同様である。
以上によれば、本実施形態に係るアッセイ装置は、第1実施形態における2つの通気口6の詳細な構成に基づく効果を除いて、第1実施形態に係るアッセイ装置と同様の効果を得ることができる。
さらに、本実施形態に係るアッセイ装置においては、幅方向にて、分離空間3の最大幅がマイクロ流路1の一端部1aの幅よりも大きくなっており、2つの通気口22が周壁4の頂部4aに配置され、マイクロ流路1の一端部1aが幅方向にて2つの通気口22間に位置し、各通気口22が、流れ方向にて周壁4の上流部4cと吸収用多孔質媒体2の凸部21との間で延びている。そのため、分離空間3内における液体の流れに沿って通気口22が位置するので、かかる通気口22における空気の流通によって、液体を、分離空間3を隔てて吸収用多孔質媒体2によって吸収された一部とマイクロ流路1内に留置された別の一部とに確実に分離することができる。特に、ブロッキング剤、界面活性剤等を含む液体を、多数回、マイクロ流路1を通るように供給して、多数回の液体交換が行われ、その結果として、吸収用多孔質媒体2の液体吸収性能が低下した場合であっても、上記通気口22における空気の流通によって、液体を、吸収用多孔質媒体2によって吸収された一部とマイクロ流路1内に留置された別の一部とに確実に分離することができる。特には、各通気口22が流れ方向にて周壁4の上流部4cと吸収用多孔質媒体2の凸部21との間で延びているので、通気口22の大きさを、通気口22の下流付近に液体が残留し難くするように十分に確保することができる。
[第3実施形態]
第3実施形態に係るアッセイ装置について説明する。本実施形態に係るアッセイ装置は、以下に述べる点を除いて、第1実施形態に係るアッセイ装置と同様である。そのため、本実施形態においては、第1実施形態に係るアッセイ装置と同様の構成に関する説明を省略する。なお、本実施形態の構成要素が、第1実施形態の構成要素と同様に構成される場合には、その第1実施形態の構成要素と同様の符号を付す。
本実施形態に係るアッセイ装置の構成については、図9に示すように、アッセイ装置の吸収用多孔質媒体2、特に、その先端領域2aが、凸部5を有さない構成となっている。しかしながら、アッセイ装置は、吸収用多孔質媒体2が凸部21を有さない点を除いて、第2実施形態に係るアッセイ装置と同様とすることもできる。本実施形態に係るアッセイ装置の流体制御は、第1及び第2液体L1,L2のそれぞれの流れがその界面張力によって凸部5の周囲で膨らんだ状態になる点を除いて、第1実施形態に係るアッセイ装置の流体制御と同様である。
以上、本実施形態に係るアッセイ装置は、通気口6に基づく効果を除いて、第1実施形態に係るアッセイ装置と同様の効果を得ることができる。
[第4実施形態]
第4実施形態に係るアッセイ装置について説明する。本実施形態に係るアッセイ装置は、以下に述べる点を除いて、第1実施形態に係るアッセイ装置と同様である。そのため、本実施形態においては、第1実施形態に係るアッセイ装置と同様の構成に関する説明を省略する。なお、本実施形態の構成要素が、第1実施形態の構成要素と同様に構成される場合には、その第1実施形態の構成要素と同様の符号を付す。
本実施形態に係るアッセイ装置の構成については、図10に示すように、アッセイ装置が、通気口6を有さない構成となっている。しかしながら、アッセイ装置は、通気口22を有さない点を除いて、第2実施形態に係るアッセイ装置と同様とすることもできる。本実施形態に係るアッセイ装置の流体制御は、第1及び第2液体L1,L2のそれぞれの流れが分離空間3の全体を占める状態になり得る点を除いて、第1実施形態に係るアッセイ装置の流体制御と同様である。
以上、本実施形態に係るアッセイ装置は、液体を流すことができるように構成されるマイクロ流路1と、マイクロ流路1の一端部1aと間隔を空けて配置される吸収用多孔質媒体2と、マイクロ流路1の一端部1a及び多孔質媒体2間に配置される分離空間3とを備え、吸収用多孔質媒体2が、分離空間3内に突出するように形成される凸部5を有し、マイクロ流路1を通るように供給される液体が、分離空間3を隔てて、吸収用多孔質媒体2によって吸収された一部とマイクロ流路1内に留置された別の一部とに分離できるようになっている。
そのため、吸収用多孔質媒体2の凸部5によって、マイクロ流路1を通って供給される液体を、分離空間3を隔てて、吸収用多孔質媒体2によって吸収された一部とマイクロ流路1内に留置された別の一部とに確実に分離することができる。よって、液体の計量精度を向上させることができ、液体の制御性能を向上させることができる。特に、吸収用多孔質媒体2の凸部5が、マイクロ流路1の一端部1aから分離空間3に流れる液体をその界面張力によって凸部5の周囲で膨らませた状態で受けることができるように配置される場合には、液体の計量精度を効率的に向上させることができ、液体の制御性能を効率的に向上させることができる。
ここまで本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明は、その技術的思想に基づいて変形及び変更可能である。
[実施例1]
実施例1においては、第1実施形態にて図1~図4に示すように構成されたアッセイ装置に対して、青色のメチレンブルー染色液と透明なリン酸緩衝液との溶液交換を行った。具体的には、青色のメチレンブルー染色液をアッセイ装置の注入口8に供給し、その後、透明なリン酸緩衝液をアッセイ装置の注入口8に供給する作業を、繰り返し10回行った。このような作業過程において、液体の流動性と、吸収用多孔質媒体2の凸部5による液体吸収の程度と、マイクロ流路1の一端部1aにおけるメニスカスとを確認した。
[実施例2]
実施例2においては、第2実施形態にて図7に示すように構成されたアッセイ装置に対して、実施例1と同様の溶液交換を実施し、かつ実施例1と同様の確認を行った。
[実施例3]
実施例3においては、第3実施形態にて図9に示すように構成されたアッセイ装置に対して、実施例1と同様の溶液交換を実施し、かつ実施例1と同様の確認を行った。
[実施例4]
実施例4においては、第4実施形態にて図10に示すように構成されたアッセイ装置に対して、実施例1と同様の溶液交換を実施し、かつ実施例1と同様の確認を行った。
[比較例1]
比較例1においては、実施例1のアッセイ装置とは、吸収用多孔質媒体に凸部を設けない点と、通気口を設けない点とを除いて同様に構成したアッセイ装置に対して、実施例1と同様の溶液交換を実施し、かつ実施例1と同様の確認を行った。
実施例1~実施例4及び比較例1の結果について、実施例1~実施例4のアッセイ装置それぞれにおいて、メチレンブルー染色液及びリン酸緩衝液が確実に流動することが確認できた。吸収用多孔質媒体2の凸部5,21がメチレンブルー染色液及びリン酸緩衝液を確実に吸収することが確認できた。マイクロ流路1の一端部1aにおけるメニスカスの屈曲が抑えられることが確認できた。分離空間3における液体の残留を低減できることも確認できた。そして、実施例1~実施例4の溶液交換の精度は、比較例1の溶液交換の精度よりも高くなっていることが確認できた。これらのうち実施例1及び実施例2のアッセイ装置は、溶液交換の確実性、残留液体の低減性、及びマイクロ流路内の液体の蒸発防止のいずれの観点においても、比較例1のアッセイ装置よりも特に優れた効果を得ることができた。
[実施例5]
実施例5においては、実施例1のアッセイ装置と同様に構成されたアッセイ装置に対して、青色のメチレンブルー染色液と透明なリン酸緩衝液と赤色のエオシンとの溶液交換を行った。具体的には、最初に、青色のメチレンブルー染色液をアッセイ装置の注入口8に供給した。次に、メチレンブルー染色液の供給を停止してから約3分経過後に、透明なリン酸緩衝液をアッセイ装置の注入口8に供給した。さらに、リン酸緩衝液の供給を停止してから約3分経過後に、赤色のエオシンをアッセイ装置の注入口8に供給した。このような作業過程において、液体の流動性と、吸収用多孔質媒体2の凸部5による液体吸収の程度と、マイクロ流路1の一端部1aにおけるメニスカスとを確認した。
実施例5の結果について、そのアッセイ装置にてメチレンブルー染色液とリン酸緩衝液とエオシンとが確実に流動することが確認できた。吸収用多孔質媒体2の凸部5がメチレンブルー染色液とリン酸緩衝液とエオシンとを確実に吸収することが確認できた。マイクロ流路1の一端部1aにおけるメニスカスの屈曲が抑えられることが確認できた。さらに、分離空間3における液体の残留を低減できることも確認できた。よって、メチレンブルー染色液とリン酸緩衝液とエオシンとの溶液交換が確実に行われることが確認できた。