JP7016096B2 - イオンの測定装置及びそれを用いた点欠陥の位置検出方法 - Google Patents

イオンの測定装置及びそれを用いた点欠陥の位置検出方法 Download PDF

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特許法第30条第2項適用 2017年8月17日、2017年真空・表面科学合同講演会の2Cp06にて発表
本発明は、例えば試料内に吸蔵しているガスや試料中の点欠陥から透過してくるガスを検出することができる、イオンの測定装置及びそれを用いた点欠陥の位置検出方法に関する。
構造材料における水素脆化は大きな問題であり、水素利用社会が進むにつれてより重要になる研究分野である。水素は電子を一つしか持たないため、電子分光やエネルギー分散法(Energy Dispersion X-ray Spectroscopy、以下、EDXと略称する。)では検出されず、水素と他の原子の振動分光を行うことや、核反応法で測定する方法、水素マイクロプリント法(銀デコレーションなど)で間接的に水素の存在を確認する方法が知られている。
固体内あるいは表面に湧出した水素分布の観察方法は、核反応法や水素マイクロプリント法(銀デコレーション)等があるが、何れも固体内を拡散する水素を動的に追跡することは不可能であった。
電子衝撃脱離法(Electron Simulated Desorption、以下、ESD法と略称する。)は電子の照射により吸着原子をイオン化し、脱離させることで表面分析を行う方法であり、表面分析分野における公知の手法である。ESD法を用いると、実時間で水素を直接観察することが可能になる(非特許文献1及び非特許文献2参照)。特許文献1には、試料表面のプロトンの拡散を測定できる走査プロトン顕微鏡が開示されている。
一方、ESD法を用いることで、表面に滞在する水素の位置情報を可視化することは可能であるが、水素が脱離しきってしまうと測定が続けられなくなるため、鉄鋼内に微量に存在する水素の湧きだし量測定には適していなかった。
このように、従来の装置や方法では、試料内部で拡散して、表面側に放出される水素を非破壊でかつ実時間で、その透過経路(チャンネル)を測定することができなかった。
最近、本発明者等により、試料裏面側に試料に水素を導入することで試料内を拡散しつつ表面側に透過(湧出)する水素の原子をESD法で取得する際、水素イオンの収率効果の高い収集機構と水素イオンを選択的に透過させるイオンエネルギー分解部等からなる水素透過拡散経路観測装置及びそれを用いて試料を透過する水素イオンを計測する方法が、開発された(特許文献2参照)。
特開平10-269983号公報 特開2017-187457号公報
板倉明子、村瀬義治、土佐正弘、鈴木真司、高木祥示、後藤哲二、「水素放出に及ぼすステンレス鋼の表面加工の効果」、J. Vac. Soc. Jpn.、Vol. 57, No. 1, pp.23-26, 2014 宮内直弥、鈴木真司、高木祥示、後藤哲二、村瀬義治、板倉明子、「ステンレス表面上の透過水素分布の観察」、J. Vac. Soc. Jpn.、Vol. 58, No. 10, pp.31-35, 2015
従来の装置や方法では、試料内に吸蔵しているガスや試料中の点欠陥から透過してくるガスを、非破壊でかつ実時間で、その透過経路(チャンネル)を測定することができないという課題がある。
本発明は、従来の装置や方法では実現できなかった点欠陥からの透過性や吸蔵性のガスに由来するイオンを測定することができるイオンの測定装置及びそれを用いた点欠陥の位置検出方法を提供することを目的としている。
上記目的を達成するため、本発明のイオンの測定装置は、試料に電子線を照射する電子源を収容する分析室と該分析室に配設され試料に照射された電子線により生じる二次電子を検出する二次電子検出器とを備える走査型電子顕微鏡と、電子源から試料に照射された電子線により生じるイオンを検出するイオン検出部と、制御部と、を具備し、試料は、分析室内の温度可変型試料ホルダーに配設され、温度可変型試料ホルダーは、ガスを封入したコンテナを備え、該コンテナの開口部に試料が試料固定板により固定され、イオン検出部は、試料表面から生じるイオンを収集する収集機構と該イオン以外を除去するイオンエネルギー分解部と該イオンエネルギー分解部を通過したイオンを検出するイオン検出器とからなり、制御部は、電子源から発生する電子線の走査により試料から発生する二次電子を用いてSEM像を撮影し、かつ、試料の内部あるいは背面から該試料内を拡散して表面に存在する点欠陥部分より湧出する原子を電子線の電子衝撃脱離法(ESD)によりイオンとし、該イオンのESD像を電子線の走査に同期して取得し、試料のSEM像とESD像とから試料の点欠陥の位置を検出することを特徴とする。
前記構成において、好ましくは温度可変型試料ホルダーに支持された試料が、分析室とコンテナとを仕切る隔膜として作用する。
分析室には、好ましくは、質量分析装置及び/又はオージェ電子分光分析器が備えられている。
原子、分子またはイオンが、好ましくは水素、重水素、ヘリウム、酸素、窒素、水、試料作成時又は試料使用目的に係わるガスの何れかに由来するか、その中の複数のガスに由来するものである。
上記目的を達成するため、本発明の上記の何れかに記載のイオンの測定装置を用いて試料内部又は背面から点欠陥を経由して漏れ出る原子、または分子をイオンとして検出する方法であって、下記のステップにより、試料の点欠陥を測定する、点欠陥の位置検出方法である。
点欠陥を有している試料を準備するステップ。
前記点欠陥を有している試料を温度可変型試料ホルダーに配設するステップ。
前記試料のSEM像を取得するステップ。
前記試料のESD像を取得するステップ。
前記試料のSEM像とESD像との対比を行うことにより試料の点欠陥の特定をするステップ。
上記構成において、好ましくは、点欠陥を有している試料を準備するステップにおいて、試料の表面に表面改質層、バリア膜及び多層膜の何れかを設けて形成する。
ガスを、好ましくは、水素又は重水素、ヘリウム、酸素、窒素、水、試料作成時又は試料使用目的に係わるガスの何れかに由来するか、あるいはその中の複数のガスに由来するものとする。
本発明のイオンの測定装置によれば、非破壊かつ実時間で試料表面から湧出するガスやガスの透過経路(チャンネル)を測定することにより、試料の使用目的に対する欠陥である、表面改質の点欠陥、あるいは表面コーティングの欠陥を測定することができる。
本発明のイオンの測定装置を用いた点欠陥の位置検出方法によれば、例えば、既存の金属材料からなる試料を作製し、ガスとして例えば水素の透過拡散経路の位置と、試料の欠陥の位置や形状をマイクロメーター以下の高空間分解能で測定することが可能となる。
第1の実施の形態に係るイオンの測定装置及びそれを用いた点欠陥の位置検出方法の構成を模式的に示す図である。 温度可変型試料ホルダーの、(a)は平面図、(b)は断面図である。 温度可変型試料ホルダーの変形例を示す断面図である。 図3の温度可変型試料ホルダーの変形例及び接続されるガス配管との関係を示す断面図である。 温度可変型試料ホルダーの変形例を示す断面図である。 図5に示すコンテナの、(a)は平面図、(b)は断面図である。 分析室内のイオン検出部と、温度可変型試料ホルダーと、温度可変型試料ホルダーに試料台部を介して接続されるガス配管等の関係を示す部分拡大図である。 制御部のブロック図である。 電子衝撃脱離全体制御部の構成を示すブロック図である。 電子源の走査と、ESD像の二次元計測との関係を示す模式図である。 走査による二次元のESD像を計測するフロー図である。 点欠陥の検出方法を示すフロー図である。 表面改質層を有している試料を示す模式的な断面図であり、(a)は試料となる母材の表面構造を変化させた場合、(b)は表面酸化層など試料の母材の表面を反応させて別の物質とした場合、(c)は試料の母材の表面に別の材料の膜をつけた場合を示す図である。 バリア膜を塗布した表面を有している試料を示す模式的な断面図である。 四重極型質量分析器による残留ガス分析の結果を示す図である。 測定した試料の像であり、(a)はSEM像、(b)はESD像を示す。 図16の観察視野を広げ、330μm×330μmで測定した時の像であり、(a)はSEM像、(b)はESD像を示す。 図17(a)の中の欠陥と推定される暗点の代表的なものに番号付けをしたものである。 図18で番号付けをした欠陥位置1におけるSEM像及びESD像を示す図である。 図18で番号付けをした欠陥位置2におけるSEM像及びESD像を示す図である。 図18で番号付けをした欠陥位置3におけるSEM像及びESD像を示す図である。 オージェ電子分光法による表面構成原子の内、Cr(クロム)の分布を示す図である。 オージェ電子分光法による表面構成原子の内、Fe(鉄)の分布を示す図である。 オージェ電子分光法による表面構成原子の内、C(炭素)の分布を示す図である。
以下、図面を参照しながら本発明を実施するための形態について説明するが、本発明の範囲は実施形態に限定されることなく適宜変更することができる。特に、図面に記載した各部材の形状、寸法、位置関係などについては概念的な事項を示すに過ぎず、その適用場面に応じて変更することができる。各図において、同一の又は対応する部材等には同一の符号を付している。
(第1の実施形態)
最初に、第1の実施の形態に係るイオンの測定装置について説明する。
図1は、第1の実施の形態に係るイオンの測定装置10の構成を模式的に示し、図2(a)に、温度可変型試料ホルダー12の平面図を、図2(b)にその断面図を示す。図3~図6は、温度可変型試料ホルダー12の変形例を示す図であり、図7は、分析室11内のイオン検出部20と、温度可変型試料ホルダー12Aと、温度可変型試料ホルダー12Aに試料台部31を介して接続されるガス配管14等の関係を示す部分拡大図である。
図1に示すように、イオンの測定装置10は、走査型電子顕微鏡15を備え、この走査型電子顕微鏡15には、試料17と、試料17に電子線を照射する電子源16を収容する分析室11と、分析室11に配設され試料17に照射された電子線により生じる二次電子を検出する二次電子検出器18とが配備されている。さらに、イオンの測定装置10は、電子源16から試料17に照射された電子線により生じるイオンを検出するイオン検出部20と、試料17の裏面側に接続される水素配管14に水素を供給するガス供給部19と、制御部50と、を具備している。
図1に示すように、分析室11にはさらに、残留元素を分析する質量分析器35やオージェ電子分光分析器36等の分析器が配備されていてもよい。質量分析器35は、例えば四重極質量分析装置である。
オージェ電子分光分析器36を備えていれば、試料17の表面に存在する炭素等の量を測定することができる。
図2(a)及び図2(b)に示すように、温度可変型試料ホルダー12は分析室11内に配設され、フランジ部12aと、フランジ部12aに接続される試料搭載部12bとから構成されている。試料17は、試料搭載部12bの上部において、試料固定板13により保持されている。フランジ部12aは、例えば、ICF34(国際標準規格)のフランジ付き単管を用いて構成される。また、試料搭載部12bは、熱伝導を良くするために銅を用いて構成することができる。
図2(a)に示すように、試料は単一の試料17だけではなく、複数の試料17が温度可変型試料ホルダー12に保持されてもよい。試料17の寸法は、例えば、縦8mm、横1.5mm、厚さ1mmとすることができる。
上記構成を備えたイオンの測定装置10によれば、試料17に吸着、含有、固溶されるガス、ガスの構成成分となる原子の何れかの放出を測定することができる。
(温度可変型試料ホルダーの変形例)
図3は、温度可変型試料ホルダーの変形例12Aである。
図3の試料ホルダー12Aは、フランジ部12aと、このフランジ部12aの上部に接続され、開口Wを有する試料搭載部12cと、を備え、試料搭載部12cの開口Wを試料17で塞ぐ構造で成っている。温度可変試料ホルダー12Aと試料17との界面は、真空シールが可能な、エラストマーシール、金属ガスケットシールなど、一般的な真空シール方法を用いる。他の構成は、温度可変型試料ホルダー12と同じであるので、説明は省略する。図3に示す温度可変型試料ホルダー12Aは、試料搭載部12cが開口Wを有する点で、図2に示す温度可変型試料ホルダー12の試料搭載部12bの構造と相違する。
図4は、図3に示す温度可変型試料ホルダー12Aと、この温度可変型試料ホルダー12Aに接続されるガス配管14等との関係を示す部分断面図である。図4に示すように、温度可変型試料ホルダー12Aは、試料台部31に載置され、試料台部31を介してガス配管14に接続される。図1に示したように、ガス配管14はガス供給部19に接続されている。図4のフランジ部12aは、図2に示す温度可変型試料ホルダー12と同様に、ICF34のフランジ付き単管を用いて構成でき、図4に示すように、ICF34のフランジ付き単管の一端側が開口されており、この一端側に接続した試料搭載部12cに試料17が固定されている。ICF34のフランジ付き単管の他端のフランジは、ボルト等により試料台部31に固定される。
図4に示す温度可変型試料ホルダー12Aは、試料17を載置していない状態においては試料台部31を介してガス配管14に接続される。温度可変型試料ホルダー12Aの一端部の開口が、試料固定板13を介して試料17で塞がれることにより、ガス配管14から供給されるガスが、試料17を透過した場合には、測定面である試料17の上面に湧き出す現象が測定されることになる。温度可変型試料ホルダー12Aを、隔膜型試料ホルダー12Aとも呼ぶ。
図5は、温度可変型試料ホルダーの別の変形例を示す部分断面図であり、試料搭載部をコンテナ12dとしたものである。図6(a),(b)は、図5に示すコンテナ12dの平面図及び断面図である。
図5及び図6に示す温度可変型試料ホルダー12Bは、フランジ部12eと、フランジ部12eに接続されるコンテナ12dとを備えて構成されている。このコンテナ12dは、試料17の裏面側からガスを供給するためにガスが封入され、フランジ部12eに載置されて、図示しないボルト等によりフランジ部12eに固定される。
図5に示すように、コンテナ12dの上部には、開口部Wが設けられおり、この開口部Wの上から試料17で塞がれる。これにより、温度可変型試料ホルダー12Bによれば、コンテナ12dから供給されるガスが、試料17を透過し、測定面である上面に湧き出す現象を測定することができる。つまり、温度可変型試料ホルダー12Aでは、ガス供給がガス配管14を介して行われていたのが、温度可変型試料ホルダー12Bにおいてはガスを封入したコンテナ12dにより行われる。
上記温度可変型試料ホルダー12Bによれば、ガスを封入したコンテナ12dの開口Wを閉塞するように試料17を試料固定板13により固定してフランジ部12eに接続すればよいので、試料17の交換の簡易化が図れる。
図7はイオン検出部20を示している。このイオン検出部20は、試料17の表面から生じるイオンを収集する収集機構21と、目的のイオン以外を除去するイオンエネルギー分解部22と、イオンエネルギー分解部22を通過したイオンを検出するイオン検出器23とからなる。例えば、イオンが水素である場合には、イオン検出部20を水素イオン検出部20、水素イオンを収集する収集機構21を水素イオン収集機構21、イオン検出器を水素イオン検出器と呼ぶ。特に断らない限りは、以下、イオンは水素を例に挙げて説明する。
水素イオン検出部20は、ESD法により試料17の表面で発生する水素イオンを検出する。電子線の走査により検出した水素イオンによる二次元の像を、ESD像又はESDマップとも呼ぶ。
分析室11には、温度可変型試料ホルダー12,12A,12Bの何れかが載置されて、必要に応じてガス配管部14に接続される試料台部31と、加熱された試料17の温度を測定する試料温度測定部33及び試料17の位置を調整する試料位置調整部34と、が配備されている。
図2又は図7に示すように、何れかの温度可変型試料ホルダー12,12A,12Bや試料台部31には、試料17の温度を室温よりも高い温度として、例えば水素の拡散を促進するように試料加熱部32(図7)が配設されている。加熱される試料17の温度は図1に示した試料温度測定部33により測定される。この試料温度測定部33に用いる温度センサーとしては、例えば銅とコンスタンタンとからなる熱電対を使用することができる。熱電対は、試料17に溶接により接続してもよい。熱電対のリード線は、分析室11内に配設された導線引き出しポート11aに接続される。試料17の加熱温度により熱電対に生じる起電力は、導線引き出しポート11aの外部端子に接続した電圧計により測定され、試料17の温度が測定できる。また、この電圧を検知しヒーター電流にフィードバックして温度を一定に保つ温度調整機構(図示省略)を配設する。ここで、試料加熱部32は、温度可変型試料ホルダー12,12A,12Bや試料台部31に配設しているが、試料を加熱できれば、他の部分に備えることも可能である。
分析室11は、第1の真空排気部37により真空にされる。第1の真空排気部37は、図示しないターボ分子ポンプ等の真空ポンプと、ゲートバルブや真空計等を備えて構成されている。分析室11を走査電子顕微鏡像(Scanning Electron Microscope、以下、SEMと略称する。)つまりSEM像が得られる真空度、例えば1.0×10-7Pa以下に排気する。
ガス配管14の先端は、試料台部31を介して試料17が接続された温度可変型試料ホルダー12Aにフランジ等を介して接続されており、試料17の裏面に検出目的のガスあるいは目的のガスを含む混合ガスを供給する。
検出するガスとしては、一例としてあげた水素以外には、重水素、ヘリウム、酸素、窒素、水等が挙げられ、これらのガス以外のガスとして、試料17の作成時及び試料17の使用目的に関係するガスが挙げられる。さらに、ガスは一つではなく、複数のガスを供給してもよい。基端側は、フランジ、配管、ストップバルブ等を介して第2の真空排気部38に接続されている。
ガス配管14は、第2の真空排気部38により真空にされる。第2の真空排気部38は、図示しないターボ分子ポンプ等の真空ポンプと、ストップバルブや真空計等を備えて構成されている。第2の真空排気部38は、ガス配管14、試料台座部31及び温度可変型試料ホルダー12Aを所定の真空度に排気する。
ガス供給部19は、ガスの種類に応じて図示しない一つ又は複数のガスのボンベと、圧力調整器、ストップバルブ、圧力計等を備えて構成されている。ガス配管14、試料台座部31及び温度可変型試料ホルダー12Aが所定の真空度に排気された後、第2の真空排気部38側のストップバルブが閉となる。所定の真空度は、例えば8.0×10-4Pa以下である。
次に、ガス供給部19側のストップバルブが開となり、ガス供給部19から水素がガス配管14に供給される。これにより、試料台座部31、温度可変型試料ホルダー12Aを介して試料17の裏面が検出目的のガスに晒される。例えば、目的ガスが水素であれば、供給する水素ガスは、分析室11にバックグラウンドとして残留する水素ガスとの区別が容易にできるように、重水素が好ましい。
図4に示すように、温度可変型試料ホルダー12Aに保持される試料17は、その表面が分析室11側に露出され、その裏面側がガス配管14側に露出している。温度可変型試料ホルダー12Aは、試料台部31にネジ等で固定されている。
試料17は、例えば鉄鋼やステンレスからなる薄板であり、厚さは100μm~5mm程度である。試料17は試料加熱部32により加熱されている。試料加熱部32は、例えばハロゲンランプから構成されている。
図2又は図7に示すように、試料17近傍には湧出イオンを効率よく収集するための収集機構21が配設されている。図の収集機構21は、金属線の金網からなり、グリッド構造のレンズである。収集機構21で集光した目的ガスのイオン、例えば水素イオンは、水素イオン検出部20に入射する。イオンエネルギー分解部22は、例えば水素イオンを選別してイオン検出器23に入射させる。
イオンエネルギー分解部22は、イオン検出器23が試料17に直接対向しないように蓋形状を有している金属電極からなる。イオンエネルギー分解部22は、円筒形や円錐を含む形状の電極を用いることができる。イオンエネルギー分解部22は、円筒形の電極に適当な正電圧を印加し、電場により目的ガスのイオン、例えば水素イオンだけをイオン検出器23に導き、試料17に電子線が照射されて発生する光と電子を除去できる。イオン検出器23は、例えばセラトロンや二次電子増倍管を用いることができる。
(制御部)
制御部50は、電子源16から照射する電子線16aの走査により試料から発生する二次電子による走査電子顕微鏡像(SEM像と呼ぶ)を取得し、かつ、試料の裏面から該試料内を拡散して表面に湧出する原子、例えば水素原子を、電子線の電子衝撃脱離(ESD)により水素イオンとし、水素イオンのESD像を電子線の走査に同期して取得する。
図8は制御部50のブロック図であり、図9は電子衝撃脱離全体制御部52の構成を示すブロック図である。
図8に示すように、制御部50は、走査型電子顕微鏡15を制御する電子顕微鏡全体制御部51と、ESD像の取得を制御する電子衝撃脱離全体制御部52とを含んで構成されている。電子顕微鏡全体制御部51は、試料17の走査型電子顕微鏡像(SEM像)を取得するための二次電子検出部53と、電子光学系制御部54と、SEM用の画像演算部55と、高電圧安定化電源56と、入力装置57と、ディスプレイ58と、記憶装置59等を備えており、これらの各部を制御するように構成されている。分析室11内に配設される二次電子検出器18の出力は、二次電子検出部53に入力される。
(電子衝撃脱離全体制御部)
図9に示すように、ESD像の取得を制御する電子衝撃脱離全体制御部52は、二次元のマルチチャンネルスケーラー60と、パルス計数部61と、同期制御部62と、測定信号の二次元平面への並べ替え部63と、マイクロプロッセッサ72等から構成される。
分析室11内に配設されるイオン検出部20の出力は、電子衝撃脱離イオン検出部67を介してパルス計数部61に入力される。電子衝撃脱離全体制御部52には電子光学系制御部54から走査信号が入力され、SEM像と同期して制御される。さらに電子衝撃脱離全体制御部52には、ディスプレイ65と記憶装置66が接続されている。
マイクロプロッセッサ72は、マイクロコントローラ等のマイコン、パーソナルコンピュータ、現場でプログラム可能なゲートアレイであるFPGA(Field-ProgrammableGate Array)でもよい。
電子光学系制御部54から同期制御部62に入力された走査信号は、同期制御部62を介して垂直走査信号62aとして、電子源16の第1の偏向コイル16bに出力される。同期制御部62からの水平走査信号62bは、電子源16の第2の偏向コイル16cに出力される。同期制御部62から走査位置に関する情報62cが、マイクロプロッセッサ72に出力される。
パルス計数部61から出力される水素イオンのカウント数信号61aは、各走査位置の水素イオンのカウント数信号としてマイクロプロッセッサ72に出力される。
マイクロプロッセッサ72で生成されたESD像は、入出力インターフェース(I/O)72aを介してディスプレイ65に出力され、かつ、入出力インターフェース(I/O)72bを介して記憶装置66に出力される。
次に、電子衝撃脱離全体制御部52の動作について説明する。
図10は、電子源16の走査とESD像の二次元計測との関係を示す模式図である。図10に示すように、電子源16から発生した電子線16aは、第1の偏向コイル16bと第2の偏向コイル16cを通過することにより、垂直方向と水平方向に走査されて試料17に二次元に照射される。
図10に示す同期制御部62において発生されるデジタル信号である垂直走査信号のクロック信号は、デジタルアナログ変換器(DAC)62dにより鋸波に変換されて、電子源16の第1の偏向コイル16bに印加される。同様にデジタル信号である水平走査信号のクロック信号は、デジタルアナログ変換器(DAC)62eにより鋸波に変換されて、電子源16の第2の偏向コイル16cに印加される。
1パルスの撮影タイミング信号(Shoot timing、ST信号と呼ぶ)によって、垂直走査信号(Vertical clock)が、合計2048パルス発生するように制御が開始される。
1パルスの垂直走査信号のパルス幅の期間に、水平方向の画素信号(Horizontal clock)が、合計2048パルス出力される。これにより、2048行×2048列(=4194304)の約419万画素の二次元走査を生成する。つまり、パルス計数部61でカウントされる信号は、ST信号、垂直走査用のクロック信号、水平走査用のクロック信号からなる複数のカウンターを同期させることで、各走査位置におけるイオン検出器23からの水素イオンのカウント数として取得することができる。
(ESD像の取得方法)
図11は走査による二次元のESD像を計測するフロー図である。この図に示すように、二次元のESD像は、以下のステップで行うことができる。
ステップ1:試料17の表面から脱離したイオンが、イオン検出器23で検出される。
ステップ2:イオン検出器23で検出したイオンの定量計測を、パルス計数部61で行う。
ステップ3:図6に示した垂直走査用のクロック信号及び水平走査用のクロック信号を生成する同期制御部62により、試料17の二次元の各測定点のイオンをカウントする。
ステップ4:ステップ3で測定した試料17の二次元の各測定点のイオンのカウント数を記憶装置66のメモリーに保存する。
ステップ5:垂直走査用のクロック信号及び水平走査用のクロック信号を元に記憶装置66のメモリーに保存されたイオン信号を二次元画像として並び替える。
ステップ6:ステップ5で取得したESD像をディスプレイ65に表示し、画像及び数値データとして、記憶装置66に保存する。
これにより、SEM像と同じ領域のESD像が取得される。
上記ステップ1~6のESD像の取得は、計測機器制御に特化したプログラム製作環境で作製したソフトウェアで実行することができる。このようなソフトウェアとしては、National Instruments社製のLabVIEW(登録商標)(http://www.ni.com/labview/ja/)を用いることができる。上記ステップ1~6のESD像は、マイクロプロッセッサ72において、LabVIEWで作製したプログラムで実行される二次元のマルチチャンネルスケーラー60により取得できる。
(第2の実施形態)
次に、第2の実施形態として、イオンの測定装置を用いた点欠陥の検出方法について説明する。
図12は点欠陥の検出方法を示すフロー図である。図12に示すように、点欠陥の検出は以下のステップで行うことができる。
ステップ11:点欠陥を有している試料を準備する。
点欠陥を有する試料としては、表面構造が改質された表面を有している試料、バリア膜を塗布した表面を有している試料、多層膜が成膜された表面を有している試料等が挙げられる。
ステップ12:ステップ11で用意した点欠陥を有している試料を温度可変型試料ホルダー12,12A,12Bの何れかに配設する。例えば、試料は、試料搭載部12bに試料固定板13により配設することができる。
ステップ13:試料のSEM像を取得する。
ステップ14:必要に応じて、試料表面の分析を行う。試料表面の分析には、オージェ電子分光器36を用いることができる。
ステップ15:必要に応じて、試料の裏面からガスを導入し、質量分析器35により質量分析を行う。
ステップ16:試料のESD像を取得する。ESD像は、イオンの測定装置10で述べたステップ1~6により取得することができる。
ステップ17:試料のSEM像とESD像との対比を行う。これにより、試料の点欠陥の特定ができる。
(ステップ11)
点欠陥を有している試料の作製について説明する。
図13は、表面改質層を有している試料を示す模式的な断面図であり、(a)は試料となる母材の表面構造を変化させた場合、(b)は表面酸化層など試料の母材の表面を反応させて別の物質とした場合、(c)は試料の母材の表面に別の材料の膜をつけた場合を示す図である。
図13に示すように、試料81の母材の表面構造を変化させて表面改質層81aを形成する場合には、試料の化学エッチングや物理的な衝撃を与える方法が挙げられる。
図13(b)に示すように、試料の母材を反応させて別の物質とする場合には、例えば酸化や窒化により試料81の表面及び/又は裏面に表面構造を変化させて表面酸化層又は表面窒化層81bとすればよい。
さらに、図13(c)に示すように、試料の母材上に試料81とは別の物質からなる膜の表面改質層81cを形成してもよい。
表面改質の目的は大きく二つに分類できる。目的の一つは改質表面層の接するガス雰囲気から、ガス分子を吸着させないことである。他の目的としては、改質表面層の内側の母材から、ガス分子の元(例えば水素原子など)を透過させないことである。
従って、図13(b)に示すように、試料81の表面改質層81bが遮蔽を目的とするガス分子あるいはそのガス分子の成分である原子、例えば水素原子などを透過させない材料である場合には、表面改質層81bが形成されていない箇所が点欠陥となり、改質表面層の内側の母材から、ガス分子の元である、例えば水素原子等が表面改質層81bの点欠陥を介して分析室11に透過してくることにより、ESD像として取得される。図13(c)に示す表面改質層81cを各種の堆積方法で形成する場合も、表面改質層81cが形成されていない箇所が点欠陥となる。
バリア膜としては、例えば水素拡散バリア、水蒸気拡散バリア、ヘリウム透過バリアのための、金属膜および高分子膜等が挙げられる。さらに、バリア膜としては、酸素、窒素、炭素系気体分子の吸着阻害を目的とした、緻密なセラミック膜又は酸化膜などにより改質した表面を有していてもよい。
図14は、バリア膜82aを塗布した表面を有している試料82を示す模式的な断面図である。図14に示すように、試料82の表面にはバリア膜82aが塗布されている。バリア膜82aは、例えば絶縁膜等からからなり、化学蒸気堆積(CVD)法等により形成される。バリア膜82aは単層ではなく、多層の膜でもよい。バリア膜82aを塗布した表面を有している試料82においても、バリア膜82aや多層膜に欠陥があれば、図13の表面改質層で生じる欠陥と同様に、バリア膜82aや多層膜の点欠陥を介して分析室11に透過してくる遮蔽を目的とするガス分子の成分である原子、例えば水素原子などがESD像として取得される。
本発明の点欠陥の検出方法によれば、表面構造が改質された表面を有している試料等の点欠陥をSEM像で特定し、SEM像の観察視野で取得した遮蔽を目的とするガス分子の成分である原子、例えば水素原子あるいは重水素原子のESD像より、試料からの遮蔽を目的とするガス分子の透過位置を検出することができる。通常、例えば水素透過の遮蔽を目的とするバリア膜であれば、試料の点欠陥を通過して水素の透過が起こる。これにより、SEM像で観察した点欠陥の位置とESD像で水素の透過量が大きい位置が対応する場合には、試料の点欠陥の位置から水素透過が生起していることを特定することができる。
改質加工が十分機能せず、効果の不十分な場所やその位置が欠陥と解釈し、この欠陥が点欠陥であるときに、ガス放出の総量の測定では欠陥位置を捕らえられない。
本発明の点欠陥の検出方法によれば、この点欠陥の位置の特定ができ、追加加工等の点欠陥が生じないような加工に変更することが可能となる。
例えば、上述の低ガス放出の効果を狙った表面改質加工の表面が、機械的な接触やプラズマ照射などで損傷を受けたとき、それが本来の改質目的において致命的な損傷であるか否かを、欠陥部分を計測することで判断することができる。
さらに、真空シール(真空封止とも呼ばれる)を考えたとき、シール部分のガス漏れが発生したときに、ガス漏れが何処で起きているかについては測定が難しい。最も漏れやすい小さな元素である水素あるいはヘリウムを漏れ位置から透過させ、本発明の点欠陥の検出方法により検出することで、漏れ位置の特定ができる。
本発明の点欠陥の検出方法によれば、試料の目的に応じて表面が改質された表面、バリア膜が塗布された表面、多層膜を成膜した表面等の不特定の表面に対し、これらの表面上で、本来期待される目的を満たさない点欠陥を検出することができる。
検出できる点欠陥の寸法は、装置全体の構成と使用する電子ビームのエネルギー、電流値、電子銃のスポット径から決まる二次電子像の空間分解能に依存する。二次電子像は、例えば走査型電子顕微鏡(SEM)で取得するSEM像である。これにより、検出できる点欠陥の寸法は、通常のSEMであれば、大凡1μm以下とすることができる。
(変形例)
上述の点欠陥の検出では、試料裏面側に水素を導入することで試料内を拡散しつつ表面側に透過(湧出)する水素により取得したが、試料を透過させる元素は、任意に選定することができる。試料を透過させる元素は、水素に限らず他の元素であってもよい。他の元素を使用する場合には、水素のガス供給部19を他の元素のガス供給部とし、水素イオン検出部20を他の元素のイオン検出部とすればよい。例えば、酸素を使用する場合には、水素のガス供給部19を酸素のガス供給部とし、水素イオン検出部20を酸素イオン検出部とすればよい。
本発明のイオンの測定装置10及びそれを用いた点欠陥の検出方法の実施例を、以下さらに詳細に説明する。
背面からのガス供給に限らず、試料が内包したガス、シール材や接合部分からの漏れなど、広く点欠陥部分から出てくるガスを可視化することができる。
(実施例1)
実施例1のイオンの測定装置10は、走査型電子顕微鏡15(日本電子社製、JAMP-10)に、温度可変型試料ホルダー12A、試料加熱部32、試料位置調整部34、第2の真空排気部38、重水素ガス供給部19、収集用機構21、イオンエネルギー分解部22、イオン検出器23を付加して、試料17の表面から脱離した重水素イオンが検出できるようにし、さらに、分析室11内に四重極型質量分析器(Pfeiffer Vacuum 社製QMS200)を付帯した。また、重水素イオンの信号検出に関しては、二次元のマルチチャンネルスケーラー60と、パルス計数部61と、同期制御部62と、測定信号の二次元平面への並べ替え部63等から構成される電子衝撃脱離全体制御部52を製作して、制御部50に組み込んだ。収集用機構21、イオンエネルギー分解部22及びイオン検出器23と、ESDの取得方法等は、特許文献2と同様である。
イオンの測定装置10の温度可変型試料ホルダー12Aに、ステンレス(SUS316)鋼と、ステンレス(SUS316)鋼に低ガス放出(ガス吸着およびその結果としてのガス放出が少なくなるような)の表面処理を施した試料を並べて設置した。ここで、ガスとしては、水素,重水素、ヘリウム、酸素、窒素、水等、又は試料作成時に母材などに含まれるガスが挙げられる。
分析室11を第1の真空排気部37により1.0×10-7Paに排気し、同時に水素ガス導入系となる水素配管14は、第2の真空排気部38により8.0×10-4Paに排気した後、上記二つの試料のSEM像とESD像を測定した。
図15は、四重極型質量分析器による残留ガス分析の結果を示す図である。図15の横軸は質量数、縦軸がカウント数である。図15に示すように、横軸のm/z=2が水素、18周辺が水、28が窒素、32が酸素を示しており、温度可変型試料ホルダー12Aに水素を供給していないときの残留ガスが水素であることが分かる。
図16は測定した試料の像であり、(a)はSEM像、(b)はESD像を示す。
図16(a)及び(b)に示すように各像において、100μm×100μmの視野の中に、二つの試料が上下方向に並べておかれている。上側の像が実施例の表面処理を施したステンレス(SUS316)鋼であり、下側のSEM像が表面処理を施していないステンレス(SUS316)鋼である。
図16(b)は図16(a)と同じ位置からの水素イオン放出を測定している。試料温度を200℃とし、24時間積算を行った。装置に付帯した四重極型質量分析器のガス分析結果(図11参照)から、この時の放出イオンの90%が水素であることがわかっているので、図16(b)は、水素イオン像と特定した。
図16(b)に示すように、実施例の低ガス放出の表面処置が有効で、視野の上半分である表面処理部分からのイオン放出は少ない、つまり、表面に水素が存在しにくいということが分かる。
図17は、図16の観察視野を広げ、330μm×330μmで測定した時の像であり、(a)はSEM像、(b)はESD像を示す。。
図17(a)に示すように、視野を広げたことで欠陥(SEM像での暗点)が撮影されている。
図17(b)は、図17(a)と同じ位置からの水素イオンの放出を示すESD像である。試料温度は200℃とし、24時間積算を行った。図16と同様に装置に付帯した四重極型質量分析器のガス分析結果から、放出イオンの90%が水素であることがわかっているので、図17(b)は、水素イオン像と特定した。表面処理の効果と同時に、欠陥位置からの水素イオン放出が撮影されている。
図18は図17(a)の中の欠陥と推定される暗点の代表的なものに番号付けをしたものであり、図19~図21は、図18で番号を付けた欠陥位置におけるSEM像及びESD像を示す図で、それぞれ図19は欠陥位置1、図20は欠陥位置2、図21は欠陥位置3を示す。
図19に示すように、欠陥位置1においては、低ガス放出表面処理を行った試料の欠陥から、水素が湧き出しているのが分かる。しかしながら、図20の欠陥位置2及び図21の欠陥位置3の処理を行わなかった表面の欠陥からは、目だった水素イオンの放出は見られないことが分かった。
図22~図24は、オージェ電子分光法による表面構成原子分布であり、それぞれ図22はCr(クロム)、図23はFe(鉄)、図24はC(炭素)を示す図である。各図において、点線で囲った部分が図16及び図17で測定した場所に対応しており、上側が実施例の表面改質を施したステンレス(SUS316)鋼、下側が表面処理を施していないステンレス(SUS316)鋼である。
図22に示すように、実施例の表面改質を施したステンレス(SUS316)鋼では、表面改質の構成原子であるクロムが上側の半分に分布していることが分かり、下側の表面改質を施していないステンレス(SUS316)鋼ではクロムが検出されていないことが分かる。
図23に示すように、実施例の表面改質を施したステンレス(SUS316)鋼では、ステンレスの構成原子である鉄はクロム被覆部分には見えていないことが分かる。
さらに、図24に示すように、炭素の分布は実施例の表面改質を施したステンレス(SUS316)鋼と表面改質を施さないステンレス(SUS316)鋼の双方で観測されないことが分かった。エッジ近くに存在した欠陥部分でクロム、鉄、炭素いずれの局在も観測されなかった。
上記実施例によれば、この手法を用いることで、電子顕微鏡やSEMの二次電子像ではわからない、ガス放出に対する欠陥の質を調べることができた。
検出できる点欠陥のサイズは、装置全体の構成と使用する電子ビームのエネルギー・電流値・スポット径から決まり、二次電子像(SEM像)の空間分解能に依存するが、実施例では1μm以下を達成した。
本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載した発明の範囲内で種々の変形が可能であり、それらも本発明の範囲内に含まれることはいうまでもない。
10:イオンの測定装置
11:分析室
11a:導線引き出しポート
12:温度可変型試料ホルダー
12A,12B:温度可変型試料ホルダーの変形例
12a,12e:フランジ部
12b,12c:試料搭載部
12d:コンテナ
13:試料固定板
14:ガス配管
15:走査型電子顕微鏡
16:電子源
16a:電子線
16b:第1の偏向コイル
16c:第2の偏向コイル
17:試料
18:二次電子検出器
19:ガス供給部(水素ガス供給部)
20:イオン検出部(水素イオン検出部)
21:収集機構
22:イオンエネルギー分解部
23:イオン検出器
31:試料台部
32:試料加熱部
33:試料温度測定部
34:試料位置調整部
35:質量分析器
36:オージェ電子分光分析器
37:第1の真空排気部
38:第2の真空排気部
41:水素イオン
50:制御部
51:電子顕微鏡全体制御部
52:電子衝撃脱離全体制御部
53:二次電子検出部
54:電子光学系制御部
55:SEM用の画像演算部
56:高電圧安定化電源
57:入力装置
58:ディスプレイ
59:記憶装置
60:二次元のマルチチャンネルスケーラー
61:パルス計数部
61a:水素イオンのカウント数信号
62:同期制御部
62a:垂直走査信号
62b:水平走査信号
62c:走査位置に関する情報
62d、62e:デジタルアナログ変換器
63:測定信号の二次元平面への並べ替え部
64:ESD用の画像演算部
65:ディスプレイ
66:記憶装置
67:電子衝撃脱離イオン検出部
72:マイクロプロッセッサ
72a、72b:入出力インターフェース
81,82:試料
81a,81c:表面改質層
81b:表面酸化層又は表面窒化層
82a:バリア膜

Claims (7)

  1. 試料に電子線を照射する電子源を収容する分析室と該分析室に配設され前記試料に照射された電子線により生じる二次電子を検出する二次電子検出器とを備える走査型電子顕微鏡と、
    前記電子源から前記試料に照射された電子線により生じるイオンを検出するイオン検出部と、
    制御部と、を具備し、
    前記試料は、前記分析室内の温度可変型試料ホルダーに配設され、
    前記温度可変型試料ホルダーは、ガスを封入したコンテナを備え、該コンテナの開口部に前記試料が試料固定板により固定され、
    前記イオン検出部は、前記試料表面から生じるイオンを収集する収集機構と該イオン以外を除去するイオンエネルギー分解部と該イオンエネルギー分解部を通過したイオンを検出するイオン検出器とからなり、
    前記制御部は、
    電子源から発生する電子線の走査により試料から発生する二次電子を用いてSEM像を撮影し、かつ、
    前記試料の内部あるいは背面から該試料内を拡散して表面に存在する点欠陥部分より湧出する原子を前記電子線の電子衝撃脱離によりイオンとし、該イオンのESD像を前記電子線の走査に同期して取得し、
    前記試料のSEM像とESD像とから前記試料の点欠陥の位置を検出する、イオンの測定装置。
  2. 前記温度可変型試料ホルダーに配設された前記試料が、前記分析室と前記コンテナとを仕切る隔膜として構成される、請求項に記載のイオンの測定装置。
  3. 前記分析室は、質量分析装置及び/又はオージェ電子分光分析器を備えている、請求項1又は2に記載のイオンの測定装置。
  4. 前記原子、分子またはイオンが、水素、重水素、ヘリウム、酸素、窒素、水、試料作成時又は試料使用目的に係わるガスの何れかに由来するか、その中の複数のガスに由来するものである、請求項1~の何れかに記載のイオンの測定装置。
  5. 請求項1~の何れかに記載のイオンの測定装置を用いて試料内部又は背面から点欠陥を経由して漏れ出る原子、または分子をイオンとして検出する方法であって、以下のステップにより、試料の点欠陥を測定する、点欠陥の位置検出方法:
    点欠陥を有している試料を準備するステップと、
    前記試料を温度可変型試料ホルダーに配設するステップと、
    前記試料のSEM像を取得するステップと、
    前記試料のESD像を取得するステップと、
    前記試料のSEM像とESD像との対比を行うことにより試料の点欠陥を特定するステップと、を含む。
  6. 前記点欠陥を有している試料を準備するステップにおいて、該試料の表面に表面改質層、バリア膜及び多層膜の何れかを設けて形成する、請求項に記載の点欠陥の位置検出方法。
  7. 前記ガスを、水素又は重水素、ヘリウム、酸素、窒素、水、試料作成時又は試料使用目的に係わるガスの何れかに由来するか、その中の複数のガスに由来するものとする、請求項又はに記載の点欠陥の位置検出方法。
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