以下、本発明の光導波路、光導波路接続体および電子機器について添付図面に示す好適実施形態に基づいて詳細に説明する。
<光導波路接続体>
まず、本発明の光導波路接続体の実施形態について説明する。
図1は、本発明の光導波路接続体の実施形態を示す斜視図であり、図2は、図1に示す光導波路接続体と光ファイバーとを接続する様子を示す斜視図であり、図3は、図1に示す光導波路接続体の縦断面図であり、図4は、図3に示す光導波路接続体の部分拡大図である。また、図5は、図1に示す光導波路接続体の断面図であって図4とは異なる断面についての部分断面図である。なお、以下の説明では、説明の便宜上、図3、4の上方を「上」、下方を「下」として説明する。
図1に示す光導波路接続体10は、光導波路1(本発明の光導波路の実施形態)と、光導波路1の端部に設けられた光コネクター5と、光インターポーザー2(光学部品)と、実装基板3と、を有している。
また、図1に示す光導波路1は、図2に示すように、光コネクター91を伴う光ファイバー9と接続されるようになっている。すなわち、光導波路1の右端面102は、光信号を入出射させるための光入出射面であり、光コネクター5と光コネクター91とを互いに締結することにより、光ファイバー9の光入出射面と光学的に結合される。
図1に示す光導波路1は、長尺状でかつシート状をなしている。この光導波路1では、長手方向の一端と他端との間で光信号を伝送することができる。
このような光導波路1は、図4に示すように、下側クラッド層11、コア層13および上側クラッド層12が下方からこの順で積層された積層体を備えている。なお、本明細書では、図4におけるコア層13の互いに表裏の関係にある2つの主面のうち、下面を「下面103」といい、上面を「上面104」ともいう。
一方、光インターポーザー2は、インターポーザー基板21と、導光部22と、導電部23と、バンプ24と、半導体素子25と、受発光素子26と、を備えている。
そして、光導波路1のコア層13の上面104のうち、左端面101近傍の部分(以下、この部分を「左上面105」という。)には、上側クラッド層12が積層されていない(図4参照)。そして、この左上面105上には、図4に示すように、接着剤6を介して光インターポーザー2が接するように設けられている。これにより、左上面105において、コア部14と光インターポーザー2との間でアディアバティック結合が形成される。このアディアバティック結合は、染み出し光(エバネッセント光)を介して光学的に接続されていることをいう。その結果、光導波路1と光インターポーザー2との間で光信号を相互に伝送させることができる。
このように光導波路接続体10は、光導波路1と、光導波路1と光学的に接続されている光インターポーザー2と、を有している。
かかる光導波路接続体10を製造するには、図5に示すように、光導波路1のコア部14の幅の中心と光インターポーザー2の導光部22の幅の中心とが一致するように双方を配置する。これにより、光結合効率を高めることができる。
また、図6は、図4に示す光導波路接続体に含まれる光導波路の上面の平面図である。
図6に示すように、コア層13には、並列に設けられた8本の長尺状のコア部14と、各コア部14の側面に隣接する側面クラッド部15と、が含まれている。コア部14は、クラッド部(側面クラッド部15、下側クラッド層11および上側クラッド層12)で囲まれており、コア部14に光を閉じ込めて伝搬させることができる。すなわち、これらのコア部14が、光導波路1において光信号を伝送する伝送路として機能する。そして、各コア部14の右端面102は、図2に示す光ファイバー9等が接続されたとき、光導波路1の右端において光信号を入出射させるための光入出射面となる。
一方、コア層13の左上面105において、コア部14と光インターポーザー2との間が光学的に接続されている。その結果、光導波路1と光インターポーザー2との間で光信号を相互に伝送させることができる。
以下、光導波路接続体10についてさらに詳述する。
(光導波路)
コア部14は、前述したように、クラッド部(側面クラッド部15、下側クラッド層11および上側クラッド層12)で囲まれており、コア部14に光を閉じ込めて伝搬させることができる。
コア層13の横断面における屈折率分布は、いかなる分布であってもよい。この屈折率分布は、屈折率が不連続的に変化したいわゆるステップインデックス(SI)型の分布であってもよいが、少なくともコア部14の幅方向の屈折率が連続的に変化したいわゆるグレーデッドインデックス(GI)型の分布であるのが好ましい。これにより、多少の製造バラツキがあっても光結合損失に影響し難くなるため、製造条件によらずコア部14の光伝送効率が向上するとともに、光導波路1と光インターポーザー2との光結合効率が向上する。
また、光導波路1やその中に形成されているコア部14は、それぞれ平面視で直線状であっても曲線状であってもよい。さらに、光導波路1やその中に形成されているコア部14は、それぞれ途中で分岐または交差していてもよい。
また、コア部14の横断面形状は特に限定されず、例えば、真円、楕円形、長円形等の円形、三角形、四角形、五角形、六角形等の多角形であってもよいが、四角形(矩形状)であることにより、コア部14を形成し易い利点がある。
一方、コア部14の導波モードは、マルチモードであってもよいが、シングルモードであるのが好ましい。これにより、エバネッセント光を利用したアディアバティック結合にて、高効率で結合できる。また、導波モードがシングルモードである光学部品に対して良好な光結合効率での光接続が可能な光導波路1が得られる。
コア部14の幅および高さ(コア層13の厚さ)は、特に限定されないが、それぞれ1~15μm程度であるのが好ましく、2~12μm程度であるのがより好ましく、3~10μm程度であるのがさらに好ましい。これにより、伝送効率の低下を抑えることができる。また、コア部14の幅および高さを前記範囲内に設定することにより、コア部14の導波モードをシングルモードにし易くなる。
また、図6に示すように複数のコア部14が並列しているとき、コア部14同士の間に位置する側面クラッド部15の幅は、特に限定されないものの、0.5~500μm程度であるのが好ましく、1~300μm程度であるのがより好ましく、2~250μm程度であるのがさらに好ましい。これにより、コア部14同士の間で光信号が混在(クロストーク)するのを防止しつつコア部14の狭ピッチ化を図ることができる。
また、光導波路1中に形成されるコア部14の数は、特に限定されないが、1~100本程度であるのが好ましい。なお、コア部14の数が多い場合は、必要に応じて、光導波路1を多層化してもよい。具体的には、図4に示す上側クラッド層12の上に、さらにコア層とクラッド層とを交互に重ねることによって多層化することができる。
上述したようなコア層13の構成材料(主材料)としては、例えば、アクリル系樹脂、メタクリル系樹脂、ポリカーボネート、ポリスチレン、エポキシ系樹脂やオキセタン系樹脂のような環状エーテル系樹脂、ポリアミド、ポリイミド、ポリベンゾオキサゾール、ポリシラン、ポリシラザン、シリコーン系樹脂、フッ素系樹脂、ポリウレタン、ポリオレフィン系樹脂、ポリブタジエン、ポリイソプレン、ポリクロロプレン、PETやPBTのようなポリエステル、ポリエチレンサクシネート、ポリサルフォン、ポリエーテル、ベンゾシクロブテン系樹脂やノルボルネン系樹脂等の環状オレフィン系樹脂のような成分をベースポリマーとした各種樹脂材料の他、石英ガラス、ホウケイ酸ガラスのような各種ガラス材料等が挙げられる。なお、樹脂材料は、異なる組成のものを組み合わせた複合材料やポリマーアロイであってもよい。
また、下側クラッド層11および上側クラッド層12の構成材料としては、例えば、前述したコア層13の構成材料と同様の材料を用いることができるが、特に(メタ)アクリル系樹脂、エポキシ系樹脂、シリコーン系樹脂、ポリイミド系樹脂、フッ素系樹脂、およびポリオレフィン系樹脂からなる群から選択される少なくとも1種であるのが好ましい。
なお、光導波路1は、樹脂材料で構成されているのが好ましい。これにより、光導波路1は、安価で、かつ、可撓性および軽量性に富んだものとなり、取り扱いや実装作業の容易化が図られる。
また、図4に示す光導波路1は、上側クラッド層12の上面に積層されているカバー層17を備えている。
カバー層17の構成材料としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレン、ポリプロピレンのようなポリオレフィン、ポリイミド、ポリアミド等の各種樹脂材料、石英ガラス、ホウケイ酸ガラスのような各種ガラス材料等が挙げられる。
カバー層17の平均厚さは、特に限定されないが、5~500μm程度であるのが好ましく、10~400μm程度であるのがより好ましい。これにより、カバー層17は、適度な剛性を有するものとなるため、コア層13を確実に支持するとともに、外力や外部環境からコア層13および上側クラッド層12を確実に保護することができる。
なお、カバー層17は、必要に応じて設けられればよく、省略されていてもよい。
一方、図4に示す光導波路1は、下側クラッド層11の下面(コア層13とは反対側)に積層されている支持層16を備えている。これにより、コア層13が支持層16によって補強されるため、信頼性の高い光導波路1が得られる。
支持層16の構成材料としては、特に限定されないが、カバー層17の構成材料として挙げたものから選択可能である。
支持層16の平均厚さは、特に限定されないが、10~3000μm程度であるのが好ましく、20~1500μm程度であるのがより好ましい。これにより、光導波路1が厚くなり過ぎるのを防止しつつ、支持層16の上述した機能が十分に発揮される。
なお、支持層16は、必要に応じて設けられればよく、省略されていてもよい。
また、支持層16と下側クラッド層11との間、および、カバー層17と上側クラッド層12との間には、それぞれ、必要に応じて任意の層が介挿されていてもよい。
一方、コア層13の上面104に積層されている上側クラッド層12は、必ずしも設けられる必要はなく、省略されてもよい。しかしながら、図4に示すように上側クラッド層12が設けられることによって、例えば光導波路1が光ファイバーと接続されるとき、光ファイバーとの結合効率が向上するとともに、コア部14を外力や外部環境から保護することができる。よって、光導波路1の信頼性をより高めることができる。
また、図4に示す光導波路1では、前述したように、コア層13の上面104のうち、左上面105には上側クラッド層12が積層されていない。すなわち、図4に示す光導波路1では、上側クラッド層12の左端面121が、コア層13の左端面101よりも右側に後退している。この上側クラッド層12の後退により、光導波路1に対して光インターポーザー2を配置するとき、上側クラッド層12と光インターポーザー2との干渉が避けられることとなる。このため、光導波路1と光インターポーザー2とを配置し易くなり、左上面105以外では上側クラッド層12によってコア部14を確実に保護しつつ、光導波路1と光インターポーザー2との接続性を高めることができる。
なお、上側クラッド層12は、コア層13の上面104の全体を覆うように積層されていてもよい。
また、コア層13の上面104が露出することによって、コア部14も露出するため、コア部14と光インターポーザー2との距離を近づけることができる。これにより、両者の間での光結合効率をより高めることができる。
コア部14と光インターポーザー2との間は、互いに接触しているのが好ましいが、アディアバティック結合が阻害されない範囲内であれば互いに離間していてもよい。また、その場合、図4に示すような接着剤6等の介在物が介在していてもよい。コア部14と光インターポーザー2との離間距離(接着剤6の厚さ)は、コア部14の幅に応じて適宜設定されるものの、0.3~10μm程度であるのが好ましく、0.5~5μm程度であるのがより好ましい。これにより、十分に高い光結合効率を確保することができる。
用いられる接着剤6としては、例えば、エポキシ系接着剤、アクリル系接着剤、ウレタン系接着剤、シリコーン系接着剤、オレフィン系接着剤、各種ホットメルト接着剤(ポリエステル系、変性オレフィン系)等が挙げられる。
接着剤6の弾性率は、特に限定されないものの、好ましくは100~20000MPa程度とされ、より好ましくは300~15000MPa程度とされ、さらに好ましくは500~12500MPa程度とされ、特に好ましくは1000~10000MPa程度とされる。接着剤6の弾性率を前記範囲内に設定することにより、接着力を確保しつつ、接着界面に発生する応力の集中を緩和することができる。これにより、接着部分の信頼性をより高めることができる。
なお、接着剤6の弾性率は、JIS K 7127に規定された方法に準拠し、温度25℃で測定される。
ここで、コア部14および側面クラッド部15は、その構成材料のベースポリマーが互いに同じである。ベースポリマーが互いに同じとは、双方の構成材料において配合比が最も多いポリマーに含まれる主要な(モル比が最も大きい)繰り返し単位の構造が互いに同じであることをいう。これにより、コア部14と側面クラッド部15との間で、熱膨張率や弾性率等の物性が互いに近似することとなる。その結果、光導波路1が置かれる環境が変化したり、光導波路1が折り曲げられたりした場合でも、コア部14が変形したり、コア部14における伝送効率が低下したり、コア部14と光インターポーザー2との光結合効率が低下したりするのを抑制することができる。また、コア層13の製造が容易になり、コア部14の寸法精度を高め易いという利点もある。
コア部14は、光照射によって二量化可能な官能基(以下、「光二量化性官能基」ともいう。)を有する第1化合物を含む。一方、側面クラッド部15は、コア部14の側面に隣接するように設けられ、光二量化性官能基を介して第1化合物が二量化してなる第2化合物を含む。
このようなコア部14および側面クラッド部15は、光照射による二量化反応を利用して同時に形成される。すなわち、光二量化反応によって第1化合物同士が架橋し、架橋体である第2化合物が生成される。このため、コア部14と側面クラッド部15との界面に異物が付着したり、隙間ができたりすることが抑制される。その結果、コア部14と側面クラッド部15との界面に起因する伝搬損失の増大が抑制され、伝搬効率の高い光導波路1が得られる。
また、このような光導波路1を備えることにより、光導波路1における伝搬効率が高いことによる信頼性の高い光導波路接続体10が得られる。
-コア部-
次に、コア部14について説明する。
コア部14に含まれる第1化合物は、前述したように光二量化性官能基を有する。
光二量化性官能基としては、例えば、N=N基、C=C基、C=N基、C=O基等の不飽和結合を含む官能基が挙げられる。
具体的には、アゾベンゼン基、アゾナフタレン基、芳香族複素環アゾ基、ビスアゾ基、ホルマザン基のようなN=N基、マレイミド基、インデン基、クマリン基、シンナメート基、ポリエン基、スチルベン基、スチルバゾ-ル基、スチルバゾリウム基、シンナモイル基、シンナミル基、シンナミリデン基、ヘミチオインジゴ基、カルコン基、アントリル基、ケイ皮酸基のようなC=C基、芳香族シッフ塩基、芳香族ヒドラゾン構造のようなC=N基、ベンゾフェノン基、アントラキノン基等のようなC=O基、アリルエステル基のようなエステル基、アシルフェノール構造等が挙げられ、これらのうちの少なくとも1つが用いられる。
これらのうち、光二量化性官能基としては[2+2]環化反応を生じる不飽和結合を含むものが好ましく用いられる。[2+2]環化反応は、選択性の高い反応であるため、光照射の領域を適宜選択することによってコア部14および側面クラッド部15を高精度に形成することができる。その結果、複雑なパターンを有するコア部14であっても高精度に形成することができ、伝搬効率が高く、かつ、他の光学部品との光結合効率も高い光導波路1が得られる。
また、光二量化性官能基としては特にマレイミド基が好ましく用いられる。マレイミド基は、光照射による二量化反応において、比較的高い感度を有する。このため、光二量化性官能基としてマレイミド基を用いることにより、複雑なパターンを有するコア部14であっても高精度でかつ短時間に形成することができる。その結果、伝搬効率が高く、かつ、他の光学部品との光結合効率もより高い光導波路1が得られる。
ここで、本実施形態に係る光二量化性官能基として用いられるマレイミド基は、例えば下記式(1)で表される。
[式中、R
1およびR
2は、独立して、水素原子または炭素数1~4のアルキル基である。]
また、このような光二量化性官能基は、第1化合物中のポリマーの側鎖に含まれるのが好ましい。すなわち、第1化合物は、主鎖と、光二量化性官能基を含む側鎖と、を有する。
主鎖としては、特に限定されないが、例えば、環状オレフィン類、アクリル酸エステル類、メタクリル酸エステル類、アクリルアミド類、メタクリルアミド類、ビニルエステル類、スチレン類、アクリル酸類、メタクリル酸類、アクリロニトリル類、無水マレイン酸類、マレイン酸イミド類等のモノマーに由来する構造単位を含むものが挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を含むものが用いられる。
このうち、環状オレフィン類に由来する構造単位(環状オレフィン構造)を含む主鎖が好ましく用いられる。すなわち、第1化合物は、主鎖に環状オレフィン構造を含み、側鎖に光二量化性官能基を含むのが好ましい。このような第1化合物は、光透過性がより良好になるため、伝搬効率がより高い光導波路1が得られる。
環状オレフィン類としては、例えば、シクロヘキセン、シクロオクテンのような単環体、ノルボルネン、ノルボルナジエン、ジシクロペンタジエン、ジヒドロジシクロペンタジエン、テトラシクロドデセン、トリシクロペンタジエン、ジヒドロトリシクロペンタジエン、テトラシクロペンタジエン、ジヒドロテトラシクロペンタジエンのような多環体等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を含むものが用いられる。
本実施形態に用いられる第1化合物は、特に、下記式(2)で表される構造単位を含むものが好ましい。
[式中、Xは、単結合または二価の有機基であり、R
1およびR
2は、独立して水素原子または炭素数1~4のアルキル基である。]
Xが二価の有機基である場合、かかる有機基としては、例えば、炭素数1~12の炭化水素基、エーテル結合、エステル結合、アミド結合、カルボニル基、ビニリデン基等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせたものとされる。
このうち、Xに含まれる炭素数1~12の炭化水素は、直鎖または分枝鎖のいずれであってもよく、飽和または不飽和のいずれであってもよい。なお、炭化水素の炭素数は、1~8であるのが好ましく、1~4であるのがより好ましい。これにより、コア層13の機械的特性が最適化されるため、例えば耐折性に優れた光導波路1が得られる。
また、炭化水素基の水素原子は、炭素数1~2のアルキル基、水酸基、アミノ基、カルボキシル基、ハロゲン原子等の置換基で置換されていてもよい。
一方、R1およびR2が炭素数1~4のアルキル基である場合、かかるアルキル基としては、例えばメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基等が挙げられる。このうち、R1およびR2のいずれか一方がメチル基であるのが好ましく、双方がメチル基であるのがより好ましい。このようなR1およびR2を有する光二量化性官能基を含む第1化合物は、ラジカル重合反応が進行し難いか、または全く進行しないものとなる。このため、光二量化反応以外の重合反応が進行する確率を小さくすることができ、屈折率の制御が容易となる。
このような式(2)で表される第1化合物は、特に高い感度を有し、かつ、光透過性が良好なものとなるため、とりわけ伝搬効率の高い光導波路1を実現することができる。
また、第1化合物の重量平均分子量は、特に限定されないが、10,000以上であるのが好ましく、20,000~150,000程度であるのがより好ましい。このような第1化合物は、必要かつ十分な機械的特性を有するとともに、光透過性が良好なものとなる。すなわち、コア部14の形状を保持しつつ可撓性も付与する程度の機械的特性が得られるとともに、伝送効率の高い光導波路1が得られる。
さらに、このような範囲内の分子量であれば、光導波路1を製造する際に第1化合物の揮発等を抑えることができるため、製造に要する時間や乾燥条件等に過度な配慮をする必要がなくなる。このため、製造工程の容易性が高まるとともに、製造工程の自由度を高め、製造効率の向上や低コスト化を図ることができる。
なお、第1化合物の重量平均分子量の算出には、例えばGPC(Gel Permeation Chromatography)測定により得られる標準ポリスチレン(PS)の検量線から求められるポリスチレン換算値が用いられる。装置としては、東ソー株式会社製高速液体クロマトグラフHLC-8020システムに、TSK-gel GMLカラムとTSK-gel G2000Hカラム、示差屈折計を用い、移動相としてテトラヒドロフランを用いたものが用いられる。そして、40℃、流速1.0ml/minの条件で測定を行い、標準ポリスチレンとして東ソー製PS-オリゴマーキットを用いて、リテンションタイムと分子量の検量線を作製し、第1化合物のポリスチレン換算の重量平均分子量を求めることができる。
また、第1化合物は、モノマー、プレポリマー、オリゴマー、ポリマー、またはそれらの混合物もしくはそれらの多量体等、いずれの形態であってもよいが、ポリマーまたはオリゴマーであるのが好ましく、ポリマーであるのがより好ましい。
また、第1化合物は、上述した光二量化性官能基を含む構造単位以外の他の構造単位を有していてもよい。他の構造単位としては、任意のモノマーに由来する構造単位が挙げられ、特に限定されない。
なお、このような他の構造単位は、第1化合物中の全ての構造単位のうち、50モル%以下であるのが好ましく、30モル%以下であるのがより好ましい。
また、コア部14は、上述した第1化合物以外の成分、例えば後述する第2化合物やその他のポリマー、他のモノマー、増感剤、反応促進剤、酸化防止剤、密着助剤、界面活性剤、染料等の添加剤を含んでいてもよい。このような第1化合物以外の成分の含有率は、コア部14のうちの50質量%以下であるのが好ましく、30質量%以下であるのがより好ましく、10質量%以下であるのがさらに好ましい。
このうち、密着助剤としては、例えば、ビニルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、N-β(アミノエチル)γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、トリメトキシシリルノルボルネン、トリエトキシシリルノルボルネン、トリメトキシシリルエチルノルボルネン等のシランカップリング剤が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上が用いられる。
また、密着助剤の添加量は、樹脂固形分の0.1~5質量%程度であるのが好ましく、0.3~3質量%程度であるのがより好ましい。
-側面クラッド部-
次に、側面クラッド部15について説明する。
側面クラッド部15は、前述したように、コア部14の側面に隣接するように設けられ、光二量化性官能基を介して第1化合物が二量化してなる第2化合物を含む。
したがって、第2化合物は、光二量化性官能基同士が二量化してなる構造(二量化構造)を含む第1化合物の二量体である。
下記式(3)は、光二量化性官能基がマレイミド基である場合の、二量化反応を表す式である。
このような二量化反応に伴い、光二量化性官能基に含まれる二重結合が減少する。これにより、第2化合物の屈折率は、第1化合物の屈折率よりも低下する傾向を示す。このため、側面クラッド部15の屈折率がコア部14の屈折率よりも小さくなる。その結果、コア部14は、光伝送路として機能することとなる。
以上のような観点から、コア部14が第1化合物を含み、側面クラッド部15が第2化合物を含んでいればよい。なお、第2化合物は、コア部14に含まれていてもよいし、第1化合物は、側面クラッド部15に含まれていてもよい。
このとき、側面クラッド部15における第2化合物の含有率は、コア部14における第2化合物の含有率よりも大きいことが好ましい。これにより、側面クラッド部15の屈折率は、コア部14の屈折率よりも低くなる。
一方、側面クラッド部15における第1化合物の含有率は、コア部14における第1化合物の含有率よりも小さいことが好ましい。
このような各化合物の含有率の差が、コア部14と側面クラッド部15との屈折率差に反映されることとなる。
コア部14と側面クラッド部15との比屈折率差は、特に限定されないが、0.1~2%であるのが好ましく、0.2~1%であるのがより好ましい。これにより、コア部14における光伝送効率を十分に高めることができ、信頼性の高い光導波路接続体10が得られる。すなわち、光導波路接続体10の低消費電力化、高速化および小型化を図ることができる。特に、コア部14の導波モードがシングルモードである場合には、屈折率差の最適化が求められるため、前記範囲内の比屈折率差であれば、高い光伝送効率を実現することができる。また、コア部14の導波モードがシングルモードになり易くなるため、例えばコア部14と光インターポーザー2との光結合効率をより高めることができる。
なお、前記比屈折率差とは、コア部14の屈折率をn1、側面クラッド部15の屈折率をn2としたとき、次式で表される。
比屈折率差(%)=100×(n1
2-n2
2)/2n1
2
このような第2化合物は、第1化合物の二量体であるため、第1化合物と似通った物性を示すこととなる。このため、コア部14および側面クラッド部15は、例えば機械的特性や熱的特性において互いに近い物性を有するものとなり、互いに隣接する構造体として高い親和性を有するものとなる。したがって、例えば光導波路1が折り曲げられたり、光導波路1に熱的負荷が加わったりしても、コア部14と側面クラッド部15との間に隙間が生じたり、亀裂が発生したりする確率を十分に下げることができる。
また、第2化合物の重量平均分子量は、特に限定されないが、第1化合物の重量平均分子量よりも大きく、具体的には20,000以上であるのが好ましく、40,000~250,000程度であるのがより好ましい。このような第2化合物は、必要かつ十分な機械的特性を有するとともに、光透過性が良好なものとなる。すなわち、側面クラッド部15の形状を保持しつつ可撓性も付与する程度の機械的特性が得られる。
さらに、このような範囲内の分子量であれば、光導波路1を製造する際に第2化合物の揮発等を抑えることができるため、製造に要する時間や乾燥条件等に過度な配慮をする必要がなくなる。このため、製造工程の容易性が高まるとともに、製造工程の自由度を高め、製造効率の向上や低コスト化を図ることができる。
なお、第2化合物の重量平均分子量の算出には、例えばGPC(Gel Permeation Chromatography)測定により得られる標準ポリスチレン(PS)の検量線から求められるポリスチレン換算値が用いられる。装置としては、東ソー株式会社製高速液体クロマトグラフHLC-8020システムに、TSK-gel GMLカラムとTSK-gel G2000Hカラム、示差屈折計を用い、移動相としてテトラヒドロフランを用いたものが用いられる。そして、40℃、流速1.0ml/minの条件で測定を行い、標準ポリスチレンとして東ソー製PS-オリゴマーキットを用いて、リテンションタイムと分子量の検量線を作製し、第2化合物のポリスチレン換算の重量平均分子量を求めることができる。
また、第2化合物は、モノマー、プレポリマー、オリゴマー、ポリマー、またはそれらの混合物もしくはそれらの多量体等、いずれの形態であってもよいが、ポリマーまたはオリゴマーであるのが好ましく、ポリマーであるのがより好ましい。
また、第2化合物は、上述した二量化構造以外の他の構造単位を有していてもよい。他の構造単位としては、任意のモノマーに由来する構造単位が挙げられ、特に限定されない。
なお、このような他の構造単位は、第2化合物中の全ての構造単位のうち、30モル%以下であるのが好ましく、10モル%以下であるのがより好ましい。
また、側面クラッド部15は、上述した第2化合物以外の成分、例えば前述した第1化合物やその他のポリマー、他のモノマー、増感剤、反応促進剤、酸化防止剤、密着助剤、界面活性剤、染料等の添加剤を含んでいてもよい。このような第2化合物以外の成分の含有率は、側面クラッド部15のうちの50質量%以下であるのが好ましく、30質量%以下であるのがより好ましく、10質量%以下であるのがさらに好ましい。
このうち、密着助剤としては、例えば、ビニルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、N-β(アミノエチル)γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、トリメトキシシリルノルボルネン、トリエトキシシリルノルボルネン、トリメトキシシリルエチルノルボルネン等のシランカップリング剤が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上が用いられる。
また、密着助剤の添加量は、樹脂固形分の0.1~5質量%程度であるのが好ましく、0.3~3質量%程度であるのがより好ましい。
なお、コア部14および側面クラッド部15は、それぞれ重合開始剤を実質的に含んでいないのが好ましい。これにより、重合開始剤による材料の劣化等が経時的に進行してしまう不具合を抑制することができる。すなわち、光導波路1に事後的に意図しない光が当たったとき、コア部14や側面クラッド部15の屈折率が変化したり、機械的特性が低下したりして、光導波路1の信頼性が低下してしまうのを抑制することができる。その結果、環境試験耐性が良好な光導波路1が得られる。
コア部14および側面クラッド部15における重合開始剤の含有率は、できるだけ小さければよいので特に限定されないが、0.01質量%以下であるのが好ましく、0.005質量%以下であるのがより好ましい。
この重合開始剤としては、例えば光酸発生剤等が挙げられる。
(光コネクター)
光コネクター5は、図3に示すように、コネクター本体51と、コネクター本体51に形成された貫通孔50と、を備えている。
光導波路1は、接着剤等を介して貫通孔50の内壁面に接着されている。これにより、光導波路1の端部に対して光コネクター5が固定される。この光コネクター5は、例えば図2に示すような光コネクター91と係合するように構成されている。これにより、光コネクター5が装着されている光導波路1と光コネクター91が装着されている光ファイバー9とを光学的に接続することができる。
コネクター本体51の外形状は、特に限定されず、図1、3に示すような直方体に準じた形状であっても、それ以外の形状であってもよい。また、コネクター本体51は、各種コネクター規格に準拠した部位を含んでいてもよい。かかるコネクター規格としては、例えば小型(Mini)MTコネクター、JIS C 5981に規定されたMTコネクター、16MTコネクター、2次元配列型MTコネクター、MPOコネクター、MPXコネクター等が挙げられる。
また、光コネクター5は、光コネクター91と係合するための係合手段等を備えていてもよい。かかる係合手段としては、例えば、ガイドピンおよびガイド孔からなる手段、爪による係止を利用した手段、クリップ、接着剤等が挙げられる。
コネクター本体51の構成材料としては、例えば、フェノール系樹脂、エポキシ系樹脂、オレフィン系樹脂、尿素系樹脂、メラミン系樹脂、不飽和ポリエステル系樹脂、ポリフェニレンサルファイド系樹脂のような各種樹脂材料、ステンレス鋼、アルミニウム合金のような各種金属材料等が挙げられる。
なお、光コネクター5は、必要に応じて設けられればよく、省略されてもよい。その場合、光コネクター5を介することなく光ファイバー9に接続されていてもよく、図示しない受発光素子や光インターポーザーに接続されていてもよい。
(実装基板)
実装基板3は、光導波路1、光コネクター5および光インターポーザー2を搭載するための基板である。このような実装基板3を用いることにより、光導波路1や光インターポーザー2を安定して保持することができる。それとともに、実装基板3には、LSI(Large-Scale Integration)、IC(Integrated Circuit)、CPU(Central Processing Unit)、RAM(Random Access Memory)等の能動部品、コンデンサー、コイル、抵抗、ダイオード等の受動部品のような電子部品、発光ダイオード、レーザーダイオード、受光センサーのような光部品を混載することができる。これにより、より高機能な光導波路接続体10を構築することができる。
実装基板3は、絶縁基板31と導電層32(電気配線)とを備えている。
このうち、絶縁基板31としては、絶縁性とハンドリングに適した剛性とを有する基板であれば、いかなるものでも用いられる。具体例としては、ポリイミド系樹脂、ポリアミド系樹脂、エポキシ系樹脂、各種ビニル系樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂等のポリエステル系樹脂等の各種樹脂材料が挙げられる。この他、紙、ガラス布、樹脂フィルム等を基材とし、この基材に、フェノール系樹脂、ポリエステル系樹脂、エポキシ系樹脂、シアネート系樹脂、ポリイミド系樹脂、フッ素系樹脂等の樹脂材料を含浸させたもの、具体的には、ガラス布・エポキシ銅張積層板、ガラス不織布・エポキシ銅張積層板等のコンポジット銅張積層板に使用される絶縁性基板の他、ポリエーテルイミド樹脂基板、ポリエーテルケトン樹脂基板、ポリサルフォン系樹脂基板等の耐熱・熱可塑性の有機系リジッド基板や、アルミナ基板、窒化アルミニウム基板、炭化ケイ素基板等のセラミックス系リジッド基板等が挙げられる。
また、導電層32は、絶縁基板31の内部や表面に設けられる。導電層32の構成材料としては、例えば、銅、アルミニウム、ニッケル、クロム、亜鉛、錫、金、銀のような金属単体、またはこれらの金属元素を含む合金等が挙げられる。
なお、実装基板3は、必要に応じて設けられればよく、例えば光導波路1と光インターポーザー2との接続体のみで十分な剛性を有する場合には省略されてもよい。
(光インターポーザー)
光インターポーザー2は、インターポーザー基板21と、導光部22と、導電部23と、バンプ24と、半導体素子25と、受発光素子26と、を備えている。
インターポーザー基板21は、導光部22と導電部23とを混載し得る基板であれば、いかなる基板であってもよい。
導光部22は、受発光素子26と光導波路1とを光学的に接続する。すなわち、導光部22は、受発光素子26の近傍から光導波路1に当接する領域まで延在するように設けられる。
また、導光部22は、コア層13が平面視されたとき、その幅の中心とコア部14の幅の中心とが一致するように配置されるのが好ましい(図5参照)。このように配置されることで、平面視において双方が重なる面積を最大限に確保し易くなる。これにより、光導波路1と光インターポーザー2との光結合効率をより高めることができる。
なお、導光部22の幅の中心とコア部14の幅の中心とが一致しているとは、位置ずれがコア部14の幅の20%以下である状態を指す。
さらに、導光部22の光軸およびコア部14の光軸は、互いに平行であるのが好ましい。このように配置されることで、平面視において双方が重なる面積を最大限に確保し易くなる。これにより、光導波路1と光インターポーザー2との光結合効率をより高めることができる。
なお、導光部22の光軸とコア部14の光軸とが互いに平行であるとは、角度ずれが1°以下である状態を指す。
導電部23は、半導体素子25や受発光素子26とバンプ24とを電気的に接続する。すなわち、導電部23は、半導体素子25や受発光素子26の近傍からバンプ24まで延在するように設けられる。
また、半導体素子25および受発光素子26は、それぞれ個別の素子である必要はなく、両者が複合された複合素子であってもよい。
以上のような光インターポーザー2を備える光導波路接続体10は、例えば実装基板3に搭載されたLSI等の制御素子によって制御され、光信号を送信または受信する光トランシーバーとして機能する。すなわち、制御素子と光ファイバー9との間に介挿され、電気・光変換を担うことにより、例えばチップ間、ボード間、サーバー間の光通信の構築に寄与する。
<光導波路の変形例>
次に、実施形態に係る光導波路の変形例について説明する。
図7は、図4に示す光導波路の変形例を示す断面図である。また、図8は、図7に示す光導波路の透過斜視図である。
以下、前述した実施形態の変形例について説明するが、以下の説明では、前述した実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項についてはその説明を省略する。
図7に示す光導波路1は、支持層16およびカバー層17が省略されている一方、マーク付き基材7を備えている。マーク付き基材7は、下側クラッド層11の下面に設けられており、基材71と、基材71の上面に設けられたマーク72と、を備えている。
このマーク72は、コア層13から離間し、かつ、平面視でコア部14と重なる領域に少なくとも設けられている。なお、本変形例では、図8に示すように、コア部14と重なる領域のみにマーク72が設けられている。なお、平面視とは、コア層13の上面104の法線に沿って見たときの視野のことをいい、必要に応じて透視されている。
このようなマーク72は、コア部14の位置や形状と一致したパターンを示す。このため、コア部14の視認性が低い場合であっても、マーク72がコア部14に代わってその視認性を補強することができる。
すなわち、コア部14は、その機能上、比較的高い光透過性を有している。このため、コア部14を視認しようとしても、正確に視認することが困難な場合がある。
これに対し、マーク72が設けられていることにより、コア部14を直接視認することが難しくても、それに代わってマーク72を視認することができ、それによって間接的にコア部14の位置や形状を把握することができる。その結果、コア部14の位置や形状を把握しながら、光導波路1と他の光学部品との接続作業等を行うことができる。これにより、位置合わせをより精度よく行うことができ、光導波路1と他の光学部品との光結合効率を容易に高めることができる。
また、マーク72は、視認性を高めるため、コア部14よりも光透過性が低くなっているのが好ましい。このため、マーク72は、製造後の光導波路1において、意図しない光照射によるコア部14の劣化等を抑制する遮光膜としても機能する。すなわち、平面視においてマーク72とコア部14とが重なっているため、マーク72側から光が照射されたとき、マーク72の陰に位置するコア部14に光が当たるのを抑制することができ、光による劣化等を抑制することができる。
また、マーク72とコア部14との離間距離は、特に限定されないが、2~50μm程度であるのが好ましく、5~40μm程度であるのがより好ましい。離間距離を前記範囲内に設定することにより、光導波路1をいかなる方向から見たとしても、コア部14とマーク72とが十分に近接していることでこれらを一体的に視認することができるので、コア部14の位置や形状をより容易に視認することができる。また、コア部14とマーク72とが近すぎることによる伝搬損失の増大を抑制することができる。
なお、離間距離が前記下限値を下回ると、マーク72の厚さによっては、マーク72の凹凸の影響がコア層13に及んでしまうおそれがある。また、下側クラッド層11の厚さが薄くなり過ぎるため、伝搬損失が増大するおそれがある。一方、離間距離が前記上限値を上回ると、コア部14とマーク72とが離れ過ぎるため、目視角度によっては視差による認識誤差が大きくなるおそれがある。
また、マーク72は、図示したように、平面視においてコア部14と重なる領域のみに設けられているのが好ましいものの、それ以外の領域にも設けられていてもよい。この場合でも、多少精度は落ちるものの、コア部14の位置や形状を把握することができ、上述したような効果を得ることができる。
マーク72は、コア部14よりも光透過性が低ければ、その構成材料は特に限定されないものの、例えば、クロムやクロム合金、ニッケルやニッケル合金のような金属材料、酸化クロム、酸化ニッケルのような酸化物材料、各種窒化物材料、各種炭化物材料等が挙げられる。
このうち、マーク72は金属材料を含むことが好ましい。これにより、薄くても光遮蔽性の高いマーク72が得られるので、マーク72の視認性をより高めつつマーク72の厚さをより薄くすることができる。このため、マーク72の凹凸の影響がコア層13に及ぶ確率を下げつつ、コア部14の位置や形状をより把握し易い光導波路1が得られる。
マーク72の厚さは、マーク72の構成材料に応じて適宜設定されるが、20~2000nm程度であるのが好ましく、50~500nm程度であるのがより好ましい。マーク72の厚さを前記範囲内に設定することにより、マーク72の視認性を十分に確保しつつ、マーク72の凹凸によるコア層13への影響を最小限に留めることができる。
このようなマーク72は、いかなる形態であってもよく、例えば板材をパターニングしてなる部材であってもよく、各種成膜方法によって成膜された部材であってもよい。
基材71は、光導波路1の機械的強度の一部を分担し、光導波路1の剛性を高めることに寄与する。これにより、薄くても撓み難い光導波路1が得られる。かかる光導波路1は、形状が保持され易いため、例えば他の光学部品との位置合わせをより精度よく行うことに寄与する。
基材71は、光透過性を有するものであれば、特に限定されない。基材71の構成材料としては、例えば、アクリル系樹脂、メタクリル系樹脂、ポリカーボネート、ポリスチレン、エポキシ系樹脂やオキセタン系樹脂のような環状エーテル系樹脂、ポリアミド、ポリイミド、ポリベンゾオキサゾール、ポリシラン、ポリシラザン、シリコーン系樹脂、フッ素系樹脂、ポリウレタン、ポリオレフィン系樹脂、ポリブタジエン、ポリイソプレン、ポリクロロプレン、PETやPBTのようなポリエステル、ポリエチレンサクシネート、ポリサルフォン、ポリエーテル、ベンゾシクロブテン系樹脂やノルボルネン系樹脂等の環状オレフィン系樹脂のような成分をベースポリマーとした各種樹脂材料の他、石英ガラス、ホウケイ酸ガラス、ソーダライムガラスのような各種ガラス材料等が挙げられる。なお、樹脂材料は、異なる組成のものを組み合わせた複合材料やポリマーアロイであってもよい。
このうち、基材71の構成材料はガラス材料であるのが好ましい。これにより、基材71は、優れた光透過性と十分な剛性とを両立するものとなる。このため、コア層13の形状が維持され易くなるとともに、基材71側から照明することによってマーク72をより視認し易くなる。そして、コア部14が光導波路1の自重等によって変形することが抑えられ易くなるため、光導波路1と他の光学部品との光結合効率を高めることにも寄与する。
基材71の形状は、例えば平板状とされる。これにより、厚さ方向の光透過率が高くなるとともに、光の直進性も高くなる。このため、基材71側から見たとき、マーク72を容易に視認することができる。
基材71の厚さは、基材71の構成材料に応じて適宜設定されるが、0.01~5mm程度であるのが好ましく、0.05~3mm程度であるのがより好ましく、0.10~1mm程度であるのがさらに好ましい。このような範囲内に厚さを設定すれば、優れた光透過性と十分な剛性とを両立する基材71が得られる。
基材71の光透過率は、できるだけ高いことが好ましいが、波長550nmにおける全光線透過率が85%以上であるのが好ましく、90%以上であるのがより好ましい。これにより、基材71側から見たときでも、マーク72を容易に視認することができる。
また、基材71には、後述する下側クラッド層11よりも曲げ弾性率が大きいものが好ましく用いられる。このような基材71は、基材71の厚さを薄くしたとしても、マーク付き基材7の平坦性を高めることができるので、マーク72のパターンの精度も高めることができる。これにより、形成しようとするコア部14のパターンの精度も高めることができ、他の光学部品との光結合効率が高い光導波路1を効率よく製造することができる。
なお、基材71の曲げ弾性率は、下側クラッド層11の曲げ弾性率の110%以上であるのが好ましく、120~1000%程度であるのがより好ましい。
また、曲げ弾性率は、例えばJIS K 7171:2016に規定されたプラスチックの曲げ特性の求め方に準じて求められた25℃における測定値とされる。
なお、このような基材71は、必要に応じて設けられればよく、例えば他の部位の機械的強度が十分に大きい場合等には省略されてもよい。
<光導波路の製造方法>
次に、光導波路1を製造する方法について説明する。光導波路1は、いかなる方法で製造されたものであってもよいが、ここではその一例について説明する。また、以下の説明では、特に、図7、8に示す変形例に係る光導波路1を製造する方法について説明する。
図9、10は、それぞれ図7、8に示す光導波路を製造する方法を説明するための図である。なお、以下の説明では、図9、10の上方を「上」、下方を「下」という。
光導波路1の製造方法は、光透過性を有するマーク付き基材7を用意する工程と、マーク付き基材7の上面側(一方の面側)に下側クラッド層11を形成する工程と、下側クラッド層11の上面側(マーク付き基材7側とは反対側)にコア形成層130を形成する工程と、下面側からコア形成層130に活性放射線Lを照射し、コア形成層130にコア部14および側面クラッド部15を形成しコア層13を得る工程と、コア層13の上面側に上側クラッド層12を形成する工程と、を有する。
[1]マーク付き基材7を用意する工程
まず、図9(a)に示すように、光透過性を有する基材71とマーク72とを備えるマーク付き基材7を用意する。
マーク72としては、例えば、クロムマスク、エマルジョンマスク、フィルムマスクのような各種フォトマスク、メタルマスク、シリコンマスクのような各種ステンシルマスク等を転用して用いることができる。
また、マーク72は、基材71と別体であってもよく、基材71の上面に成膜されたものであってもよく、基材71の下面に成膜されたものであってもよい。このうち、マーク72は基材71の上面に成膜されたものであるのが好ましい。このようなマーク72は、精度よく比較的簡単に形成可能なため、寸法精度の高いコア部14を備える光導波路を低コストで製造することに寄与する。
なお、マーク72の成膜方法は、特に限定されず、例えば気相成膜法、液相成膜法、めっき法等が挙げられる。
[2]下側クラッド層11を形成する工程
次に、図9(b)に示すように、マーク付き基材7の上面に下側クラッド層11を形成する。
下側クラッド層11の形成は、例えばフィルムを貼り付ける方法、原料液を塗布する方法等により行うことができる。このうち、原料液を塗布する方法が好ましく用いられる。この方法では、マーク72を覆うように原料液を塗布することによって、マーク72の厚さの影響が下側クラッド層11の上面に及んでしまうのを防ぐことができる。その結果、後述する工程において形成されるコア形成層130の平坦化が図られ、コア部14の寸法精度をより高めることができる。
塗布方法は、特に限定されず、例えば、ドクターブレード法、スピンコート法、ディッピング法、テーブルコート法、スプレー法、アプリケーター法、カーテンコート法、ダイコート法、インクジェット法等の方法が挙げられる。
また、このような方法で形成された液状被膜を乾燥させる方法も、特に限定されないが、例えば、液状被膜を加熱したり、減圧下に置いたり、あるいは乾燥ガスを吹き付けたりする方法が用いられる。
その後、必要に応じて、乾燥膜を硬化させるプロセスを追加してもよい。
かかるプロセスは、例えば加熱処理であり、その条件は50~230℃の温度で、1分~3時間程度とされる。また、加熱処理は複数回に分けて行われてもよい。
下側クラッド層11の平均厚さは、特に限定されないが、2~50μm程度であるのが好ましく、5~40μm程度であるのがより好ましい。下側クラッド層11の平均厚さを前記範囲内に設定することにより、コア形成層130とマーク72との離間距離を十分に確保することができる。これにより、形成されるコア部14を伝搬する光がマーク72側に漏れ出る確率を十分に低下させることができ、伝搬効率の高い光導波路1の実現に寄与する。併せて、マーク72の凹凸の影響がコア層13に及んでしまうのを抑制することができる。また、下側クラッド層11が厚くなり過ぎるのを防止して、活性放射線の直進性の低下を防止するとともに光導波路1の厚膜化を防止することができる。
なお、下側クラッド層11の平均厚さとは、下側クラッド層11の厚さを任意の10点以上で測定したとき、それらの測定値の平均値のことをいう。
また、マーク72の構成材料によっても異なるが、下側クラッド層11の平均厚さは、マーク72の平均厚さの2~200倍程度であるのが好ましく、3~150倍程度であるのがより好ましい。これにより、下側クラッド層11の平坦化が十分に図られ、マーク72の凹凸の影響がコア層13に及んでしまうのを抑制することができる。また、下側クラッド層11が厚くなり過ぎるのを防止して、活性放射線の直進性の低下を防止し、寸法精度の高いコア部14を形成することができる。
[3]コア形成層130を形成する工程
次に、図9(c)に示すように、下側クラッド層11の上面側(マーク付き基材7側とは反対側)にコア形成層130を形成する。
コア形成層130は、光や紫外線のような活性放射線が照射されることによって屈折率が変化する特性(屈折率変調能)を有する。このため、コア形成層130のうち、特定の領域に活性放射線が照射されると、照射領域と非照射領域との間に屈折率差が形成される。その結果、高屈折率側の領域がコア部14となり、低屈折率側の領域が側面クラッド部15となる。
屈折率変調の原理には、光二量化の他、例えばモノマーディフュージョン、フォトブリーチング、光異性化等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせた原理が用いられる。
このうち、モノマーディフュージョンでは、ポリマー中にこのポリマーと屈折率の異なる光重合性モノマーが分散してなる材料で構成された層に対して部分的に光を照射し、光重合性モノマーの重合を生起させるとともに、それに伴って光重合性モノマーを移動、偏在させることにより、層内に屈折率の偏りを生じさせてコア部14および側面クラッド部15を形成する。
このようなモノマーディフュージョンを生じる材料としては、例えば、特開2010-090328号公報に記載された感光性樹脂組成物等が挙げられる。
また、フォトブリーチングでは、光の照射によって材料中の分子構造が切断され、離脱性基が主鎖から離脱する。これにより材料の屈折率を変化させ、コア部14および側面クラッド部15を形成する。
フォトブリーチングを生じる材料としては、例えば、特開2009-145867号公報に記載されたコアフィルム材料等が挙げられる。
また、光異性化および光二量化では、それぞれ光の照射によって材料の光異性化または光二量化が生じる。これにより材料の屈折率を変化させ、コア部14および側面クラッド部15を形成する。
光異性化を生じる材料としては、例えば、特開2005-164650号公報に記載されたノルボルネン系樹脂等が挙げられる。
光二量化を生じる材料としては、前述した活性放射線によって二量化可能な官能基(光二量化性官能基)を有する化合物が挙げられる。
また、フォトブリーチング、光異性化および光二量化といった原理による屈折率変調の場合、照射する光の照射量(放射線の照射量)に応じて屈折率の変化量を調整することができる。照射位置に応じて光の照射量を徐々に変化させることにより、任意の屈折率分布、例えば滑らかな屈折率変化を伴う屈折率分布を形成することができる。これにより、グレーデッドインデックス型の屈折率分布を容易に形成することができる。
照射位置に応じて光の照射量を徐々に変化させる方法としては、例えば、グレイトーンマスクやハーフトーンマスクといった多階調マスクを用いる方法、光強度に分布がある光ビームを走査する方法、領域ごとの照射時間または照射強度を変化させつつ照射する方法等が挙げられる。
また、コア形成層130の形成は、例えばフィルムを貼り付ける方法、原料液を塗布する方法等により行うことができる。なお、塗布方法は、前述した方法から適宜選択される。
[4]コア形成層130に活性放射線Lを照射する工程
次に、図10(a)に示すように、下面側からコア形成層130に活性放射線Lを照射する。これにより、コア形成層130にコア部14および側面クラッド部15を形成する。
下面側、すなわちマーク付き基材7越しに活性放射線Lを照射すると、マーク72を介してコア形成層130に活性放射線Lが照射されることとなる。このため、マーク72が設けられている領域では、活性放射線Lが遮蔽される一方、マーク72が設けられていない領域では、コア形成層130に活性放射線Lが到達する。
活性放射線Lは、前述した屈折率変調能においてコア形成層130が反応する放射線の種類に応じて適宜選択されるが、例えば、可視光のような光、赤外線や紫外線のような電磁波等が挙げられる。
本実施形態では、照射領域の屈折率が低下する屈折率変調能を有するコア形成層130を例として説明する。すなわち、本実施形態に係るコア形成層130は、活性放射線Lの照射によって屈折率が低下する。したがって、図10(a)に示すように、マーク72はコア部14を形成しようとする領域に設けられる。そして、このようなマーク72を介して活性放射線Lが照射されると、照射領域では屈折率が低下して側面クラッド部15が形成される。また、マーク72と重なる領域は、非照射領域となるため、コア部14が形成されることとなる。
なお、コア形成層130は、照射領域の屈折率が上昇する屈折率変調能を有するものであってもよい。その場合、マーク72は、側面クラッド部15を形成しようとする領域に設けられることとなる。
その後、必要に応じて、コア形成層130を硬化させるプロセスを追加してもよい。
かかるプロセスは、例えば加熱処理であり、その条件は50~230℃の温度で、1分~3時間程度とされる。また、加熱処理は複数回に分けて行われてもよい。
以上のようにしてコア部14および側面クラッド部15を含むコア層13が形成される(図10(b)参照)。
なお、このようにして形成されたコア部14および側面クラッド部15は、その構成材料のベースポリマーを互いに同じにすることが可能である。ベースポリマーが互いに同じとは、双方の構成材料において配合比が最も多いポリマーに含まれる主要な繰り返し単位の構造が互いに同じであることをいう。これにより、コア部14と側面クラッド部15との間で、熱膨張率や弾性率等の物性が互いに近似することとなる。その結果、光導波路1が置かれる環境が変化したり、光導波路1が折り曲げられたりした場合でも、コア部14が変形したり、コア部14における伝送効率が低下したり、コア部14と他の光学部品との光結合効率が低下したりするのを抑制することができる。また、コア層13の製造が容易になり、コア部14の寸法精度を高め易いという利点もある。
また、このようなコア部14および側面クラッド部15は、光照射によって同時に形成される。このため、コア部14と側面クラッド部15との界面に異物が付着したり、隙間ができたりすることが抑制される。その結果、コア部14と側面クラッド部15との界面に起因する伝搬損失の増大が抑制され、伝搬効率の高い光導波路1が得られる。
[5]上側クラッド層12を形成する工程
次に、コア層13の上面側に上側クラッド層12を形成する。
上側クラッド層12の形成は、例えばフィルムを貼り付ける方法、原料液を塗布する方法等により行うことができる。具体的には、下側クラッド層11の形成と同様にして行うことができる。
以上のようにして、下側クラッド層11、コア層13および上側クラッド層12を含む光導波路1が得られる(図10(c)参照)。
なお、上側クラッド層12は必要に応じて設けられればよく、省略されてもよい。その場合、本工程も省略することができる。
このような製造方法では、その原理上、マーク72のパターンが忠実に反映されたコア部14が形成されることとなる。換言すれば、マーク72のパターンは、コア部14のパターンと実質的に一致することとなる。このため、マーク72は、コア部14の位置や形状を把握するというマーク本来の機能に加え、活性放射線の照射領域を制御するためのマスクにもなり得る。その結果、光導波路1は、マーク72の形状が忠実に反映されたコア部14を備えるものとなり、他の光学部品との位置合わせをより正確に行い得るものとなる。
なお、実質的に一致するとは、製造誤差程度のずれは許容されることを指す。
また、以上の製造方法では、マーク72を光導波路1の内部に設け、このマーク72によって光の照射領域が制御されているが、マーク72の配置はこれに限定されず、例えば光導波路1の外部に設けられていてもよい。
また、複数の光導波路1を含むように形成し、最終的にこれらを個片化する工程を追加するようにしてもよい。かかる工程としては、例えば、ダイヤモンドカッターのような切断ツールを用いて光導波路1同士を個別に切り離すように切断する工程が挙げられる。
<電子機器>
上述したような光導波路接続体10は、前述したように、伝送効率の高い光導波路1と光インターポーザー2とが接続され、信頼性の高いものである。したがって、光導波路接続体10を備えることにより、高品質の光通信を行い得る信頼性の高い電子機器(本発明の電子機器の実施形態)が得られる。
かかる電子機器としては、例えば、スマートフォン、タブレット端末、携帯電話、ゲーム機、ルーター装置、WDM(Wavelength Division Multiplex)装置、パソコン、テレビ、ホーム・サーバー等の電子機器類が挙げられる。これらの電子機器では、いずれも、例えばLSI等の演算装置とRAM等の記憶装置との間で、大容量のデータを高速に伝送する必要がある。したがって、このような電子機器が光導波路接続体10を備えることにより、電気配線に特有なノイズ、信号劣化等の不具合が解消され、その性能の飛躍的な向上が期待できる。
また、光導波路部分では、電気配線に比べて発熱量が大幅に削減される。このため、冷却に要する電力を削減することができ、電子機器全体の消費電力を削減することができる。
以上、本発明の光導波路、光導波路接続体および電子機器を、図示の実施形態に基づいて説明したが、本発明はこれらに限定されるものではない。
例えば、前記実施形態には任意の要素が付加されていてもよいし、前記実施形態に含まれる要素はそれと同等の機能を有する要素に代替されてもよい。
次に、本発明の実施例について説明する。
1.光導波路の製造
以下のようにして光導波路を製造した。
(実施例1)
(1)コア層形成用樹脂組成物の製造
まず、乾燥窒素が充填されたグローブボックス中において、下記式(4)で表されるジメチルマレイミドノルボルネン(DMMINB)の単位構造を形成し得るモノマーを、500mLバイアル瓶に計量し、これにメシチレンを加えた後、シリコン製のシーラーで密栓して撹拌した。なお、ジメチルマレイミドノルボルネンの光二量化性官能基はジメチルマレイミド基であり、主鎖はノルボルネンである。
次いで、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(密着助剤)を添加し、撹拌して溶解させた。なお、密着助剤の添加量は、樹脂固形分の0.9質量%とした。
得られた溶液を0.2μm孔径のPTFEフィルターでろ過し、コア層形成用樹脂組成物を得た。なお、コア形成用樹脂組成物における重合開始剤の含有率は0.005質量%以下であった。
(2)クラッド層形成用樹脂組成物の製造
次に、乾燥窒素が充満されたグローブボックス中において、ヘキシルノルボルネン(HxNB)と、ジフェニルメチルノルボルネンメトキシシラン(diPhNB)とを、500mLバイアル瓶に計量し、これにメシチレンを加えた後、シリコン製のシーラーで密栓して撹拌した。
得られた溶液を0.2μm孔径のPTFEフィルターでろ過し、クラッド層形成用樹脂組成物を得た。
(3)下側クラッド層の作製
次に、マーク付き基材を用意した。なお、基材にはガラス基板を用い、マークにはガラス基板に蒸着したクロム系薄膜を用いた。また、マークのパターンは、形成しようとするコア部と同じパターンとし、これによりマークをマスクとして利用した。
次に、マーク付き基材のマーク側に、クラッド層形成用樹脂組成物をスピンコート法により均一に塗布した後、50℃で10分間加熱した。溶媒を除去した後、UV露光機で全面に紫外線を照射し、塗布したクラッド層形成用樹脂組成物を硬化させた。さらに、150℃のホットプレートで10分間加熱した。これにより、厚さ10μmの下側クラッド層を得た。なお、紫外線の積算光量は1000mJ/cm2とした。
(4)コア形成層の作製
次に、下側クラッド層の上面にコア層形成用樹脂組成物を塗布し、50℃で10分間加熱した。これにより、溶媒を除去してコア形成層を得た。
(5)紫外線の照射
次に、得られたコア形成層に対し、マーク付き基材側から紫外線を照射した。なお、紫外線の積算光量は1000mJ/cm2とした。
次に、紫外線を照射したコア形成層等を、150℃のホットプレートで30分間加熱した。これにより、幅10μmのコア部および幅250μm側面クラッド部が形成されてなる、厚さ10μmのコア層を形成した。
以上のようにして光導波路を得た。
(実施例2~11)
コア層形成用樹脂組成物に含まれる化合物について表1、表2に示すように変更した以外は、実施例1と同様にして光導波路を得た。
(比較例)
まず、実施例1と同様にして下側クラッド層を作製した。
次に、実施例1と同様にして、下側クラッド層の上面にコア形成層を作製した。
次に、実施例1と同様にして、コア形成層に紫外線を照射した。紫外線照射後のコア形成層を45℃で20分間加熱した。
次に、コア形成層を現像液に2分間浸漬し、非照射領域を溶解させた。
次に、コア形成層を150℃のホットプレートで30分間加熱し、厚さ10μmのコア部を得た。
なお、表1、表2に示す略称は、以下に示す構造単位のことである。
2.光導波路の評価
2.1 伝搬損失
得られた光導波路について、「高分子光導波路の試験方法(JPCA-PE02-05-01S-2008)」の4.6.2.1カットバック方法に準拠して、伝搬損失を求めた。なお、測定には、波長850nmの光を用いた。
そして、求めた伝搬損失を、以下の評価基準に照らして評価した。
<伝搬損失の評価基準>
◎:伝搬損失が0.05[dB/cm]未満である
○:伝搬損失が0.05[dB/cm]以上0.1[dB/cm]未満である
△:伝搬損失が0.1[dB/cm]以上0.2[dB/cm]未満である
×:伝搬損失が0.2[dB/cm]以上である
以上の評価結果を表1、表2に示す。
2.2 耐折性試験
得られた光導波路について、社団法人 日本電子回路工業会が規定した「高分子光導波路の試験方法(JPCA-PE02-05-01S-2008)」の6.1.2耐折試験に準拠して引張力をかけながら屈曲させる試験を行った。そして、試験前の挿入損失に対する試験後の挿入損失の増分を算出し、これを以下の評価基準に照らして評価した。
なお、測定には、波長850nmの光を用いた。また、引張荷重は5N、回転速さは毎分90回、屈曲角度を135°、屈曲回数を1000回、曲げ半径を2mmとした。
<耐折性試験の評価基準>
A:増分が非常に小さい(0.2dB未満)
B:増分が小さい(0.2dB以上0.5dB未満)
C:増分がやや小さい(0.5dB以上1.0dB未満)
D:増分がやや大きい(1.0dB以上1.5dB未満)
E:増分が大きい(1.5dB以上2dB未満)
F:増分が非常に大きい(2dB以上)
以上の評価結果を表1、表2に示す。
表1、表2から明らかなように、各実施例の光導波路では、伝搬損失が小さく、耐折性試験を経た後でも挿入損失の著しい増加が抑えられていた。このことから、本発明によれば、過酷な環境下にあっても、伝搬効率の高い光導波路を実現し得ることが認められた。