以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。なお、各図面において、特に説明がない限り、同一の又は対応する構成については同一の符号を付して説明を省略する場合がある。
(吸収性物品の基本構造)
まず、本発明の実施形態による吸収性物品の基本的な構造について説明する。以下の説明においては、本発明の実施形態をパッドタイプ使い捨ておむつ(尿取りパッド)の例に基づき説明する。
図1に、本発明の一形態による吸収性物品100の平面図を示す。また、図2に、図1のI-I線断面図を示す。図1及び図2に示すように、吸収性物品100は、透液性の上側シート(トップシート又は表面シートともいう)22と、不透液性の下側シート(バックシート又は裏面シートともいう)21と、両シート21、22の間に設けられた吸収体層30とを有している。吸収性物品100を装着する際には、上側シート22側が肌側となり、下側シート21側は、アウター(外側のおむつ)や下着等に固定される側となる。
図1に示すように、吸収性物品100は、平面視で、第1方向(前後方向又は縦方向)D1に所定の長さを有し、第1方向D1と直交する第2方向(幅方向又は横方向)D2に所定の幅を有している。図1の形態では、吸収性物品100の幅は長さより短い。すなわち、吸収性物品100は、全体として細長い形状を有している。なお、吸収性物品100の前方及び後方は、装着時(吸収性物品100を装着した状態)ではそれぞれ腹側及び背側に相当する。
また、図2に示すように、吸収性物品100は略平面状である。略平面状とは、薄く広がりをもった平坦な形状(シート状又は層状ともいう)を指すが、表面が部分的に膨出しているものも含まれる。
吸収性物品100の前後方向D1の長さ(全長)は、350~700mm程度、幅方向D2の長さ(全幅)は130~400mm程度とすることができる。吸収性物品100の形状は、前後方向D1に延びる中心線CLを対称線として線対称とすることができるが、必ずしも線対称である必要はない。また、吸収性物品100の構成(上側シート22、下側シート21、吸収体層30等の各要素の大きさ、形状、配置等)も線対称であってよいが、吸収性物品100の形状と同様、線対称でなくてもよい。
図1の形態では、吸収性物品100は、前後方向D1で見て中央付近に、股間対応領域RC1を有する。本明細書において、「股間対応領域」とは、使用時に身体の股間(股下)に対応させる部分を意味する。股間対応領域RC1は、例えば、吸収性物品100の前後方向D1中央若しくはその近傍から前方の所定位置までの範囲であってもよいし、吸収性物品の前後方向D1中央の所定範囲であってよい。図1の形態では、吸収性物品100には、幅が狭くなっている括れ部分が形成されているが、その括れ部分が形成されている領域若しくはその一部が股間対応領域RC1となっていてよく、括れ部分が形成されている領域が股間対応領域RC1の一部となっていてもよい。また、股間対応領域RC1の前方に隣接し、吸収性物品100の前端までの領域が前方領域RF1となっており、股間対応領域RC1の後方に隣接し、吸収性物品100の後端までの領域が後方領域RB1となっている。
吸収性物品100の平面視形状は、上述のように、前後の領域に比べて幅が狭くなっている部分(括れ部分)を有するものでなく、前後方向D1にわたって幅が一定である矩形状等、他の形状とすることもできる。
股間対応領域RC1の前後方向D1の長さは10~150mm程度、前方領域RF1の前後方向D1の長さは50~350mm程度、後方領域RB1の前後方向D1の長さは50~350mm程度とすることができる。また、吸収性物品100が括れ部分有する場合、その最小幅は、吸収性物品100の全幅(括れ部分の前後における幅方向D2の長さ)の50~90%程度であるのが好ましい。
下側シート21は、吸収性物品100と同じ形状及びサイズとすることができる。下側シート21のサイズは、吸収体層30よりも大きくてよい。下側シート21としては、ポリエチレンフィルム等の他、ムレ防止の点から遮水性を損なわずに透湿性を備えたシートも用いることができる。この遮水・透湿性シートは、例えばポリエチレンやポリプロピレン等のオレフィン樹脂中に無機充填材を溶融混練してシートを形成した後、一軸又は二軸方向に延伸することにより得られる微多孔性シートを用いることができる。なお、下側シート21の外面は、不織布等の外装シートにより覆うこともできる。
図1及び図2に示すように、吸収体層30の上側には、上側シート22が配置されている。図示の形態では、上側シート22は、吸収体層30の幅方向D2の端部の一部を覆っていないが、吸収体層30全体を覆っていてもよい。上側シート22としては、有孔又は無孔の不織布や穴あきプラスチックシートなどを用いることができる。不織布を構成する素材繊維としては、ポリエチレン、ポリプロピレン等のオレフィン系、ポリエステル系、アミド系等の合成繊維の他、レーヨン、キュプラ等の再生繊維、綿等の天然繊維を用いることができる。
図1及び図2に示すように、上側シート22と吸収体層30との間には、中間シート25を介在させることができる。中間シート25を設けることで、吸収体層30により吸収した体液の逆戻りを防止することができる。そのため、中間シート25としては、保水性が低く且つ液透過性の高い素材、例えば各種の不織布、メッシュフィルム等を用いるのが好ましい。
吸収体層30の前後方向D1の両端部においては、下側シート21と上側シート22とが貼り合わされていてよい。また、吸収性物品100の幅方向D2の両側部においては、下側シート21と、吸収性物品100の両側部に前後方向D1に沿ってそれぞれ設けられたギャザーシート24、24とが貼り合されている。
ギャザーシート24としては、プラスチックシート、メルトブローン不織布等使用することもできるが、肌への感触性が良いという観点から、不織布にシリコーン等によって撥水処理をしたものが好適に使用される。
図1及び図2に示すように、ギャザーシート24、24はそれぞれ、上側シート22上に重ねられている。そして、各キャザーシート24の幅方向D2の内側の端部には、前後方向D1に沿って伸張状態で固定された弾性部材が設けられていてもよい。この弾性部材は、糸状、紐状、帯状等に形成された、スチレン系ゴム、オレフィン系ゴム、ウレタン系ゴム、エステル系ゴム等から製造されたものであってよい。
また、ギャザーシート24は、図1の斜線で示す範囲において、その直下に配置されている上側シート22、包装シート26、又は下側シート21と接合されていてよい。そして、上述のように、ギャザーシート24の幅方向D2の内側の端部に弾性部材を設けることによって、ギャザーシート24の接合されていない部分(すなわち、幅方向D2の内側の領域であって、その両端部を除く領域)が、吸収性物品100の表側(上側シート側)に起立するギャザーG、Gとなり得る。ギャザーG、Gによって、側方への体液の漏れ等を防ぐことができる。
なお、ギャザーシート24、24と下の構成要素との接合は、例えば、ホットメルト接着剤、ヒートシール、超音波シールによって形成できる。
図1に示すように、吸収体層30は、吸収性物品100と同様に、全体として細長い形状を有している。図示の形態では、吸収体層30の平面視形状は、吸収性物品100の全体の平面視形状と同様に、括れ部分を有している。しかし、吸収体層30の平面視形状は、吸収性物品100の平面視形状に関わらず、例えば、前後方向D1にわたって幅が一定である括れ部分のない矩形状等とすることもできる。なお、図示のように吸収体層30が括れ部分を有する場合、括れ部分の最小幅は、括れ部分の前後における幅方向D2の長さの50~75%程度とすることができる。
図1及び図2に示すように、吸収体層30は、不織布やクレープ紙等の包装シート26によって全体が又は部分的に包まれていてもよい。また、後述のように吸収体層30が複数層からなる場合には、各層が包装シートによって包まれていてもよいし、包装シートが層間に挟まれていてもよい。包装シート26は、無着色(すなわち、白色)であってもよいし、着色されていてもよい。色は、排出された体液の色を目立たなくすることができる色、例えば体液の色に近い色、又は体液の色の補色若しくはそれに近い色等にすることができる。
図1に示すように、吸収体層30は、前後方向D1で見て中央付近に、股間対応領域RC2を有しており、この股間対応領域RC2は、上記の吸収性物品100の股間対応領域RC1に対応している。そして、股間対応領域RC2の前方に隣接し、吸収体層30の前端までの領域が前方領域RF2となっており、股間対応領域RC2の後方に隣接し、吸収体層30の後端までの領域が後方領域RB2となっている。
なお、上記の括れ部分の一部を構成し得る吸収体層30の股間対応領域RC2は、図示のように、吸収体層30の前半分の領域に配置されていてもよいし、製品全体の構成によっては、吸収体層30の前後方向D1の中央に配置されていてもよい。
吸収体層30は、繊維又はフィラメントを含む。吸収体層30は、例えば、パルプ繊維の積繊体、セルロースアセテート等のフィラメントの集合体、不織布等であってよい。また、吸収体層30としては、上記の繊維又はフィラメントに加え、必要に応じて粒子状等の高吸収性ポリマーを混合、固着等してなるものを用いることができる。高吸収性ポリマー粒子を混合する場合等、粒子のこぼれを防ぐために、吸収体層30は包装シート26で包まれていることが好ましい。
吸収体層30(後述のように、吸収体層が複数ある場合には各吸収体層)における繊維目付及び高吸収性ポリマーの目付は適宜定めることができるが、繊維目付は100~700g/m2程度とするのが好ましく、また吸収性ポリマーを含む場合、その目付は50~550g/m2程度とするのが好ましい。
(第1実施形態)
第1実施形態は、図1に示す吸収性物品100とすることができる。第1実施形態を、図1の吸収性物品100の一部を示す図3に基づき説明する。図3は、図1に示す構成から、上側シート22、中間シート25、ギャザーシート24、及び包装シート26を省略した状態を示す。また、図4に、図3のII-II線断面を模式的に示し、図5に、図3のIII-III線断面を模式的に示す。
第1実施形態による吸収性物品100においては、吸収体層30は、上側の第1吸収体層31と下側の第2吸収体層32とが積層されてなる(図4及び図5)。図示の形態では、第1吸収体層31と第2吸収体層32とは、平面視で同じ形状及び大きさを有するが、両層の形状及び大きさは互いに異なっていてもよい。
図3に示すように、上側の第1吸収体層31は、前後方向中心線CLの両側に離間して、前後方向D1に延在する肉厚部34、34を有している。肉厚部34は、周囲よりも厚みの大きい部分である(図4及び図5)。肉厚部34は、吸収体層を製造する際に、肉厚部34を形成したい場所が盛り上がるように積繊できる型を用いて形成することができる。また、均一な厚みを有する吸収体層を準備し、その上に、肉厚部34を形成したい部分に吸収体層片を積層させることによって形成することもできる。図4及び図5に示す形態は、前者の方法により形成されたものである。
肉厚部34の最大厚みf(図4及び図5)は、10~40mm程度とすることができる。なお、肉厚部34以外の部分の吸収体層31の厚みgは、3~30mm程度とすることができる(図4及び図5)。また、吸収体層30全体の厚みは、3~40mm程度であってよい。
図3に示すように、肉厚部34、34が第1吸収体層31の両側部に設けられていることによって、幅方向D2外側に移行してきた体液を塞き止めることができる。そのため、吸収性物品100の装着後に最初に多量の体液が排出された場合でも、体液が幅方向D2外側に流れ出ることを防止することができ、幅方向D2外側への体液の漏れを防止することができる。
図3に示すように、肉厚部34は、第1吸収体層31(吸収体層30)の股間対応領域RC2又は吸収性物品100の股間対応領域RC1に形成されている。これにより、排出された体液を直ちに、肉厚部34を含む吸収体の側部にて吸収、拡散させることができる。
なお、股間対応領域RC2(又は股間対応領域RC1)に形成されているとは、肉厚部34の少なくとも一部が、股間対応領域RC2(又は股間対応領域RC1)内に延在することを意味する。肉厚部34は、図示の形態のように、股間対応領域RC2(又は股間対応領域RC1)の前端及び後端の両方を越えて延在していてもよいし、肉厚部34の前端及び後端のいずれか一方が、股間対応領域RC2(又は股間対応領域RC1)を越えて延在していていてもよい。また、肉厚部34の全体が、股間対応領域RC2(又は股間対応領域RC1)内に配置されていてもよい。
肉厚部34は、平面視で、凹凸のある外形形状を有しており、肉厚部34の外形形状のこの凹凸は、少なくとも幅方向D2内側に形成されている。このため、体液を凹部35に良好に誘導することができる。
肉厚部があっても凹部がなく貫通孔もない構成では、体液の前後方向D1の移行を促すことができると考えられるが、肉厚部自体及びその側部若しくは周辺で体液を吸収・拡散させる機能は十分ではない。よって、急な排出があった場合には、体液を前後方向D1の移行を促しても十分でなく、体液が肉厚部を乗り越えて幅方向D2外側へ体液が流れ出てしまう可能性もある。
これに対し、本形態では、肉厚部の幅方向D2内側の外形形状が凹凸を有しているので、前後方向D1に移行する体液も凹部35に引き込むことができる。そのため、肉厚部34にてより多くの体液を捉えることができる。よって、肉厚部34及びその周辺、すなわち、第1吸収体層31の側部における体液の吸収及び拡散を促進させることができ、第1吸収体層31の側部をより有効に活用することができる。これにより、装着者が横向きに寝た状態で急な多量の体液の排出があった場合等でも、幅方向D2外側への体液の漏れを良好に防止することができる。
さらに、図3に示すように、凹部35の位置には貫通孔37が形成されている。本明細書において、貫通孔(或いは貫通部)とは、吸収体層を略厚み方向に貫通する孔を意味する。すなわち、吸収体層30(第1実施形態では、第1吸収体層31及び第2吸収体層32を含む)の面方向に対して略垂直な方向に沿って形成された孔である。なお、略厚み方向とは、厚み方向に対して±15°、好ましくは±5°程度傾いた方向であってよい。貫通孔37は、その部分に吸収体が配置されないようにして吸収体層を積繊することによって形成することができるし、また孔のない吸収体層を形成した後、パンチ等によって穿孔することによって形成することもできる。
貫通孔37が、凹部35の位置に形成されていることで、体液を凹部35へと誘導する上記作用を一層高めることができる。また、誘導された体液を貫通孔37の縁部から周囲へと吸収・拡散させることができるので、吸収体の側部において体液を吸収及び拡散させる作用も向上させることができる。
次に、肉厚部34及び貫通孔37の構成についてより詳細に説明する。図6に、肉厚部34付近を拡大した図(図3の部分拡大図)を示す。図6に示すように、肉厚部34は、平面視で、複数の部分円形状の凸部36が、同じ向きで並べられた形状を有することができる。図示の形状は、貫通孔37がないと仮定した場合に、複数の部分円が連結位置35Aで連結した形状となり得るものである。そして、この連結位置35Aを含む部分が凹部35となっている。連結位置35Aは、凹部35の底点(凹部35のうち最も幅方向D2外側に位置する点)に相当する。この肉厚部34の平面視形状について別の言い方をすれば、凸部36、36、…と凹部35、35、…が交互に配置された形状といえる。
肉厚部34において、上記の凸部36の数は、2以上であればよく、吸収性物品100のサイズや用途等に応じて適宜変更することができるが、3~6程度であると好ましい。よって、凹部35の数は2~5程度であると好ましい。
肉厚部34の凸部36の幅方向D2内側への張出し部分の長さbは、5~30mmであると好ましく、10~25mmであるとより好ましい。bを15mm以上とすることで、体液を凹部35に引き込む作用を向上させることができる。また、bを15mm以下とすることで、装着状態において肉厚部34が身体に当たることにより生じ得る違和感を低減できる。なお、この張出し部分の長さbは、平面視で、肉厚部34の輪郭線が貫通孔37の縁に達する位置から、凸部36の頂点36Aまでの幅方向D2の距離である。よって、貫通孔37の大きさや形状によっても変化する。
肉厚部34の凸部36間の距離c(凸部36の頂点36A間の距離)は、20~50mmであると好ましく、25~45mmであるとより好ましい。cを上記範囲とすることで、凹部35に体液を引き込みやすくすることができる。
上記の寸法b及びcはそれぞれ、肉厚部34の全体にわたって同じであってもよいし、異なっていてもよい。異なっている場合、前方又は後方に向かって値が漸次大きくなっていってもよいし、小さくなっていてもよい。また、肉厚部34又は股間対応領域RC2の前後方向D1の中央に向かって、値が漸次大きくなっていってもよいし、小さくなっていてもよい。上記寸法は、吸収性物品100のサイズや全体の構成、用途等に応じて、適宜設定することができる。
図示の形態では凸部36の形状は部分円形を含むが、凸部36の形状は特に限定されない。凸部36は、部分楕円であってもよいし、三角形、四角形等の多角形であってもよい。例えば、幅方向D2内側に短辺が配置された台形であってもよい。図7A及び図7Bに、肉厚部34の平面視形状の変形例を示す。
図7Aの例では、肉厚部34の幅方向D2内側の凹凸の形状は、貫通孔37がないと仮定した場合に、連続する波状の曲線となり得るものである。このような波状の曲線は、図示のように接線方向が連続して変化する形状であってもよいし、接線方向の変化が不連続であってもよい。また、図7Bの例では、肉厚部34の幅方向D2内側の凹凸の形状は、三角形を含む。
なお、図3及び図6に示すように、本形態における肉厚部34は、吸収体層31の幅方向D2の端部まで延在しているが、肉厚部34が吸収体層31の幅方向D2の端部の手前まで延在する構成とすることもできる。但し、肉厚部34が、吸収体層31の幅方向D2の端部まで延在していると、吸収体層31(ひいては吸収体層30全体)の側部での吸収容量を大きくすることができ、好ましい。
図8に、肉厚部34の別の変形例を示す。図8は、図4の断面図に相当する断面図(図3のII-II線で切った断面図)である。図8の例では、肉厚部34の厚みが均一ではなく、幅方向D2中央の厚みが厚くなっている。より具体的には、肉厚部34の上部の断面視形状が曲線状の輪郭を有している。また、肉厚部34を前後方向D1に延びる線で切った場合に、その上部の断面視形状の輪郭が曲線を含んでいてもよい。例えば、各凸部36の前後方向D1に沿った断面視形状が、ドーム状になっていてもよい。
貫通孔37は、図3の形態では、平面視で円形であるが、貫通孔37の平面視形状は図示のものに限られない。例えば、楕円、三角形、四角形等の多角形、星形等にすることができる。貫通孔37の平面視形状を、中心から貫通孔37の輪郭線までの距離が場所によって変動する形状、特に星形とした場合には、吸収体が膨潤しても貫通孔37が潰れにくくなるため、好ましい。
貫通孔37の大きさは、平面視形状が円形である場合には、その直径が5~20mmであると好ましく、7~15mmであるとより好ましい。貫通孔37の直径が5mm以上であることで、吸収体が体液を吸収して膨潤しても貫通孔37が潰れにくい。また、貫通孔37の直径が20mm以下であることで、吸収体の量が過度に減ることを防ぎ、十分な吸収容量を確保することができる。なお、貫通孔37の平面視形状が円形でない場合には、同等の面積を有する円形の直径が、上記と同様の範囲にあると好ましい。
また、貫通孔37は、これに代えて窪みとすることもできる。ここで、窪みとは、略厚み方向に窪んだ部分を意味し、貫通孔とは異なり、窪みが形成された場所には吸収体が存在している。窪みは、上側から下側へと窪むものであってもよく、下側から上側へと窪むものであってもよい。窪みは、その部分だけ目付が小さくなるように積繊を行うことによって形成することができるし、或いは、平坦に形成された吸収体層を上側又は下側から圧搾することによって形成することもできる。
図3及び図6に示すように、貫通孔37は、凹部35の位置に設けられている。図示の形態では、肉厚部34の部分円状の凸部36の仮想の連結位置35Aに、貫通孔37の中心が配置されるように設けられている。しかし、この配置は、前後方向D1及び/又は幅方向D2にずれていてもよい。例えば、貫通孔37の縁が、肉厚部34の部分円状の凸部36の連結位置35Aに接するように設けられていてもよい。図7Bに示す形態では、貫通孔37の縁が、凸部36の連結位置35Aに接している。
第1実施形態では、図3~図5に示すように、吸収体層31の下側に積層されている第2吸収体層32に、拡散部38が設けられている。拡散部38は、吸収された液体(体液)の拡散を促進させることのできる機能を有するものであれば、その構成は特に限定されない。
図3に示すように、拡散部38は、上側の吸収体層31に形成された貫通孔37と平面視で重なるように、前後方向D1に延在している。これにより、貫通孔37に集められた(誘導された)体液を、下層の第2吸収体層32に速やかに移行させることができる。そして、体液を、下側の第2吸収体層32において、拡散部38に沿って体液を前後方向D1に誘導し、その際、拡散部38の側方の吸収体、及び構成によっては拡散部38自体にも体液を吸収・拡散させることができる。
拡散部38は、平面視で、少なくとも1つの貫通孔37と重なっていればよい。但し、拡散部38が全ての貫通孔37と重なるように延在している場合には、拡散部38が貫通孔37から多くの体液を直接受けとめ、前後方向D1に拡散させることができるので、好ましい。
上記のような第1実施形態の構成により、吸収体の側部を、吸収体層30を厚み方向にも有効に活用することができる。本形態では、体液を速やかに下層に移行させることができるので、体液が上層に滞留することも防止することができ、肌に触れる体液を低減することができ、装着感を向上させることができる。
図示の形態では、拡散部38の幅が、貫通孔37の直径と同様の幅を有しており、拡散部38は、拡散部38の中心線(拡散部38の幅方向D2中央を通る中心)が貫通孔37の中心を通るように配置されている(図3~図5)。しかし、拡散部38は、その一部が平面視で貫通孔37と重なるように配置してもよい。また、貫通孔37の中心が拡散部38の中心線を通らない配置とすることもできる。
上述のように拡散部38の構成は限定されないが、拡散部38は、スリット又は溝であることが好ましい。本形態において、スリットとは、前後方向D1に沿って幅狭に形成された、吸収体層32を厚み方向に貫通する部分であり、その部分には吸収体が残されていない。また、溝とは、前後方向D1に沿って幅狭に形成された、吸収体層32を上側又は下側から窪ませた部分である。図示の形態では、拡散部38はスリットとして形成されている(図4及び図5)。
また、拡散部38は、周囲より吸収性の低い部分とすることができる。具体的には、拡散部38は、少量の高吸収性ポリマーを含む部分とすることもできる。例えば、拡散部38の周囲の部分に含まれる高吸収性ポリマーの量100%と比較して、高吸収性ポリマーの量が50%以下、好ましくは30%以下、より好ましくは10%以下である部分とすることができる。また、拡散部38が高吸収性ポリマーを実質的に含まず、上述の繊維状の材料からなっていることが好ましい。
拡散部38の幅(幅方向D2の長さ)は、5~30mm程度とすることができる。また、拡散部38の長さも特に限定されず、200~350mm程度とすることができる。
拡散部38は、前後方向中心線CLの一方の側に複数形成されていてもよく、その場合の配置は、平面視で、第1吸収体層37に形成された貫通孔37と重なっているのであれば、特に限定されない。
このように、本形態では、肉厚部34、貫通孔37、及び拡散部38を備えていることで、吸収体層の側部を有効に活用することができ、これにより、体液を吸収体層全体にわたって吸収させることができる。言い換えれば、吸収体層全体の吸収能を発揮させることができる。
(第2実施形態)
図9に、第2実施形態による吸収性物品200の一部を示す。図9は、吸収性物品200から、上側シート、中間シート、包装シートを省略した状態を示す。また、図10に、図9のIV-IV線断面を模式的に示し、図11に、図9のV-V線断面を模式的に示す。
第2実施形態による吸収性物品200の基本的な構成は、第1実施形態による吸収性物品100と同様であるが、吸収体層として、一層の吸収体層230が配置されており、肉厚部234と拡散部238とが同じ層に形成されている点で異なる。
第2実施形態においても、図9に示すように、肉厚部234、234は、前後方向中心線CLの両側に離間して前後方向D1に沿って延在している。肉厚部234の平面視の外形形状は、幅方向D2内側に凹凸を有する形状であり、その凹凸の凹部235に貫通孔237が形成されている。よって、第1実施形態と同様に、体液を凹部235に誘導することができ、凹部235及びその周辺に体液を吸収・拡散させることができるので、側部の吸収体を有効活用することができる。そのため、装着者が横向きに寝た状態で多量の体液の排出があっても、横漏れを防止することができる。なお、第2実施形態における肉厚部234及び貫通孔237の構成(サイズ、形状、配置)に関しては、第1実施形態(吸収性物品100)で説明したものと同様である。
図9に示すように、拡散部238は、肉厚部234の幅方向D2外側にそれぞれ、前後方向D1に延在するように配置されている。各拡散部238は、少なくとも1つの貫通孔237に連結している。したがって、凹部235に誘導され、貫通孔237に引き込まれた体液を、さらに拡散部238に誘導させることができる。そして、拡散部238では、その延在方向である前後方向D1に沿って体液を誘導させることができる。その際、拡散部238の側方の吸収体において体液を吸収・拡散させることができる。このように、拡散部238によって、側部の吸収体をより一層有効に活用することができるので、幅方向D2外側へと流れる体液を側部で吸収・拡散させることができ、横漏れを防ぐことができる。
拡散部238は全ての貫通孔237に連結していなくてもよい。しかし、拡散部238は、貫通孔237に引き込んだ体液を速やかに拡散部238に移行させ、前後方向D1に拡散させることができるので、全ての貫通孔237に連結していることが好ましい。
また、図9では、拡散部238は、拡散部238の中心線(拡散部38の幅方向D2中央を通る中心)が貫通孔37の中心を通るように配置されているが、拡散部238と貫通孔237の位置関係は、図示のものに限られない。拡散部238が、図示の位置より幅方向D2外側にずれている、例えば、貫通孔237の幅方向D2外側に隣接していてもよい。
拡散部238の構成も、第1実施形態において説明したものと同様とすることができる。すなわち、拡散部238は、スリット又は溝とすることができる。拡散部238がスリットである場合には、拡散部238と貫通孔237とが一体となって貫通部が形成されることになる。また、拡散部238が溝であり、貫通孔237に代えて、窪みが形成されている場合には、拡散部238と窪みとが連結して、吸収体層230に厚みの小さい部分が形成されることになる。この際、拡散部238が設けられている吸収体層230の部分の厚みと、窪みが設けられている部分の吸収体層の厚みとは同じであってもよいし、異なっていてもよい。
なお、第2実施形態においては、拡散部238より幅方向D2外側に吸収体層が存在していることが好ましい。そして、この拡散部238より幅方向D2外側に存在する吸収体層の幅(すなわち、吸収体層230の側端から拡散部238までの距離)は、吸収容量を大きくする観点から、拡散部238の幅より大きいことが好ましい。
第2実施形態における吸収体層230の厚みは、3~40mm程度とすることができる。
以上、具体的な形態について、パッドタイプの使い捨ておむつを例に説明してきたが、本形態は、テープタイプ、パンツタイプ等の他の形態の使い捨ておむつの他、生理用ナプキンにおいても適用することができる。