以下、図面を参照して、本発明の実施形態に係る切羽評価装置100、切羽評価方法及びコンクリート材料吹付方法について説明する。
山岳トンネル等の施工に主に用いられるNATM工法では、発破工程、ズリ出し工程、一次コンクリート吹付工程、支保工建込工程及び二次コンクリート吹付工程を例えば1~3mごとに繰り返すことにより、トンネル1を軸方向に構築する。支保工建込工程以後の工程では、切羽2の近傍で作業者が作業することがある。切羽2は剥落するおそれがあるので、このような作業の安全性を高めるために、一次コンクリート吹付工程では、切羽2にコンクリート材料を吹付けたりボルトを打込んだりして切羽2を安定させる。
コンクリート材料を吹付けたりボルトを打ち込んだりする際には、切羽2の状態(具体的には、切羽2が剥落しやすいかどうか)を評価し、評価結果に基づいて、コンクリート材料の吹付厚さやボルトの本数等を設定している。コンクリート材料の吹付厚さやボルトの本数等を適切に決定するためには、切羽2の状態を正確に評価する必要がある。
切羽2の状態は、切羽2における亀裂の形状、特に互いに交差する亀裂の影響を受ける。そのため、互いに交差する亀裂に基づいて切羽2の状態を評価することが望ましい。
切羽評価装置100及び切羽評価方法は、亀裂どうしが交差する亀裂交差領域を抽出し、亀裂交差領域に基づいて、切羽2の状態を評価する。したがって、トンネル1の切羽2の状態をより正確に評価することができる。
以下、切羽評価装置100及び切羽評価方法を具体的に説明する。
切羽評価装置100は、画像情報を解析する手段としてのコンピュータ20で構成される。コンピュータ20は、演算処理を行うCPU(Central Processing Unit)と、CPUにより実行される制御プログラム等を記憶するROM(Read-Only Memory)と、CPUの演算結果等を記憶するRAM(random access memory)と、を含む。
切羽2の状態を評価する際には、まず、作業者がズリ出し工程後に切羽2をデジタルカメラ10を用いて撮影する。デジタルカメラ10は有線又は無線でコンピュータ20に接続され、撮影によって取得された切羽画像2P(図3参照)は、コンピュータ20に送られる。
コンピュータ20は、図2に示すように、切羽画像2P(図3参照)を取り込む画像取込部30と、切羽画像2Pを複数の領域A(図3参照)にメッシュ状に分割する画像分割部40と、複数の領域Aから亀裂交差領域を抽出する亀裂交差領域抽出部50と、切羽画像2Pを用いて切羽2の風化度合を算出する風化度合算出部60と、亀裂交差領域と風化度合とに基づいて切羽2の状態を評価する評価部70と、を備える。
なお、画像取込部30、画像分割部40、亀裂交差領域抽出部50、風化度合算出部60、評価部70は、切羽2の状態を評価するためのコンピュータ20の機能を仮想的なユニットとしたものである。
画像取込部30は、切羽画像2Pを画像データとして取り込む。画像分割部40は、領域A(図3参照)が複数の画素を含むように切羽画像2Pを分割する。なお、図3において、点線は、隣り合う領域Aの境界(分割線)を示している。
図3では、領域Aは正方形状であるが、正方形状に限られず、長方形であってもよいし、他の形状であってもよい。
画像分割部40によって分割された切羽画像2Pは、亀裂交差領域抽出部50における処理に用いられる。亀裂交差領域抽出部50によって行われる亀裂交差領域抽出処理について、図4~図13を参照して具体的に説明する。
図4に示すように、亀裂交差領域抽出部50は、切羽画像2Pの画素から亀裂が生じている部分を示す画素(以下、「亀裂画素」と称する)を抽出する亀裂画素抽出部51と、亀裂画素に基づいて、亀裂が延びる方向を亀裂方向として検出する亀裂方向検出部52と、検出された亀裂方向に基づいて亀裂の類型を選択する亀裂類型選択部53と、選択された亀裂の類型に基づいて、亀裂どうしが交差しているか否かを判定する亀裂交差判定部54と、を有する。
亀裂画素抽出部51は、まず、切羽画像2Pに二値化処理を施し、切羽画像2Pを白色と黒色との2階調に変換する。次に、白色画素を、亀裂画素として抽出し、黒色画素を、亀裂が生じていない部分を示す非亀裂画素として抽出する。
また、亀裂画素抽出部51は、亀裂画素に基づいて、複数の領域Aから、亀裂が形成されている領域(亀裂領域)を抽出する。具体的には、領域Aが少なくとも1つの亀裂画素を含む場合には当該領域Aを亀裂領域と判定し、領域Aが亀裂画素を含まない(全ての画素が非亀裂画素である)場合には当該領域Aを無亀裂領域と判定する。判定結果は不図示の記憶部に記憶される。
亀裂類型選択部53は、亀裂領域であると判定された領域Aに対して、亀裂の類型を、予め定められた複数の類型から選択する。切羽2における剥落の生じやすさは、亀裂の類型にも依存するため、亀裂の類型を選択することにより、トンネル1の切羽2の状態をより正確に評価することができる。予め定められた複数の類型を、図5を参照して説明する。
図5は、切羽画像2Pの拡大模式図であり、点線は、図3と同様に、隣り合う領域Aの境界(分割線)を示している。説明の便宜上、図5に示す9個の領域Aを、上段左、上段中央、上段右、中段左、・・・、下段右の順に、領域A1,A2,A3,A4,・・・,A9とする。図5に示す例では、領域A1,A3~A9に亀裂が形成されており、領域A2には亀裂が形成されていない。つまり、領域A1,A3~A9が亀裂領域であり、領域A2が無亀裂領域である。
領域A4,A7,A9には、1つの亀裂が形成されている。領域A8には、2つの亀裂が形成されているが、この2つの亀裂は互いに交差していない。つまり、領域A4,A7,A8,A9においては、亀裂は、他の亀裂と交差しない。このような亀裂の類型を、「非交差型」と定義する。
領域A1には、端部どうしが重なるように互いに交差する2つの亀裂が形成されている。2つの亀裂は、これらの間の角度が鈍角となるように延びている。このような亀裂が切羽2に与える影響は、非交差型の亀裂と同等である。そのため、このような亀裂の類型も、「非交差型」と定義する。
領域A6には、端部どうしが重なるように互いに交差する2つの亀裂が形成されている。2つの亀裂は、これらの間の角度が鋭角となるように延びている。このような亀裂の類型を、「鋭角交差型」と定義する。
領域A5では、ある亀裂が別の亀裂から分岐するように延びている。このような亀裂の類型を、「分岐交差型」と定義する。
領域A3では、2つの亀裂がX字状に互いに交差するように延びている。このような亀裂の類型を、「X字交差型」と定義する。
亀裂交差判定部54(図4参照)は、領域Aにおける亀裂の類型がX字交差型、分岐交差型及び鋭角交差型のいずれかである場合には、領域Aにおいて亀裂どうしが交差していると判定し、領域Aが亀裂交差領域であると判定する。領域Aの各々が亀裂交差領域であるか否かを判定することによって、複数の領域Aから亀裂交差領域を抽出することができる。
以下において、X字交差型、分岐交差型及び鋭角交差型を、単に「交差型」と称することもある。
図5からわかるように、亀裂の類型が交差型と非交差型とのいずれに該当するかは、領域Aにおける2つの亀裂方向により定まる。そこで、亀裂類型選択部53は、亀裂方向検出部52により検出された2つの亀裂方向に基づいて、亀裂の類型を、交差型と非交差型とのいずれかから選択する。2つの亀裂方向は、亀裂方向検出部52により検出される。亀裂方向検出部52及び亀裂類型選択部53によって行われる処理を、図6から図10を参照して詳細に説明する。
亀裂方向検出部52及び亀裂類型選択部53によって行われる処理では、切羽画像2Pにおける方向は、水平方向を基準に反時計回り方向を正とした角度を用いて表される。つまり、0(零)度方向は水平方向を意味し、90度方向は鉛直方向を意味する。0度より大きく90度未満の方向は、水平方向に対して右上がりの方向を意味する。90度よりも大きく180度未満の方向は、水平方向に対して右下がりの方向を意味する。
亀裂方向検出部52は、図6に示すフローチャートのステップS601~S605を実行する。
ステップS601では、亀裂画素抽出部51(図4参照)により亀裂領域と判定された領域Aの1つを選択する。
ステップS602では、亀裂画素抽出部51(図4参照)により抽出された亀裂画素を用いて、予め定められた複数の方向(角度)ごとに亀裂画素の連続度合を算出する。亀裂画素の連続度合は、亀裂画素が途切れることなく連続して並ぶ度合を意味し、連続度合が大きいほど、その方向に延びる亀裂がある可能性が高いことを示す。亀裂画素の連続度合は、例えば特許文献2に開示される方法により算出することができ、具体的な処理については後述する。
ステップS603では、算出された複数の連続度合から、最も大きい値と2番目に大きい値を第1及び第2連続度合として取得すると共に、第1及び第2連続度合が算出された方向(角度)を第1及び第2亀裂方向として取得する。第1及び第2連続度合と第1及び第2亀裂方向とは、不図示の記憶部に記憶される。
ステップS604では、亀裂領域と判定された全ての領域Aに対してステップS602,S603を実行したか否かを判定する。全ての領域Aに対してステップS602,S603を実行していないと判定した場合には、ステップS605に進む。ステップS605では、亀裂領域と判定された別の領域Aを選択し、ステップS602に戻る。ステップS604にて、全ての領域Aに対してステップS602,S603を実行したと判定した場合には、亀裂方向検出部52による処理を終了する。
このように、第1及び第2亀裂方向は、予め定められた複数の方向から、算出された連続度合が最も大きい方向と2番目に大きい方向として検出される。そのため、領域Aに亀裂が3つ以上形成されている場合において最も大きい亀裂と2番目に大きい亀裂の方向を検出することができる。
図7は、図5に示す切羽画像2Pに対して亀裂画素抽出部51及び亀裂方向検出部52による処理を実行し、亀裂方向検出部52により検出された第1及び第2亀裂方向を線分で示した図である。図7において、細点線は、図5と同様に、隣り合う領域Aの境界(分割線)を示している。
図7では、第1亀裂方向に基づく線分は、領域Aの中心を通り第1亀裂方向(角度)分、水平方向(0度)に対して傾斜する実線で示されている。第2亀裂方向に基づく線分は、領域Aの中心を通り第2亀裂方向(角度)分、水平方向(0度)に対して傾斜する太点線で示されている。実線及び太点線の長さは、第1及び第2連続度合に対応している。すなわち、実線及び太点線が長いほど、第1及び第2連続度合が大きいことを意味している。
図5と図7とを比較するとわかるように、第1及び第2亀裂方向は、領域AにX字交差型、分岐交差型、鋭角交差型又は非交差型の亀裂のいずれが形成されている場合であっても、第1及び第2亀裂方向に基づく線分が互いに交差するように検出される。そのため、ある領域Aにおける亀裂の類型を決定する際に、当該領域Aにおける第1及び第2亀裂方向を用いるだけでは、亀裂の類型を正確に選択することはできない。
例えば、図5において、領域A5には、分岐交差型の亀裂が形成されている。具体的には、領域A5には、略45度方向に延びる亀裂と、略135度方向に延びる亀裂と、が形成されている。略135度方向に延びる亀裂は、領域A1まで延びている一方で、領域A9まで延びていない。領域A5における第1及び第2亀裂方向は、領域A5における亀裂が延びる方向を示すだけであり、略135度の亀裂が領域A1まで延びる一方で領域A9まで延びていないことを検出することができない。そのため、領域A5における第1及び第2亀裂方向を用いるだけでは領域A5における亀裂の類型として分岐交差型を選択することはできない。
また、亀裂は、幅をもって形成されるため、領域Aに亀裂が1つだけ形成されている場合(図5における領域A4,A7,A9参照)であっても、第1及び第2亀裂方向が検出される。そのため、領域Aに亀裂が1つだけ形成されている場合においても、当該領域Aにおける第1及び第2亀裂方向を用いるだけでは、亀裂の類型を正確に選択することができないおそれがある。
そこで、亀裂類型選択部53(図6参照)は、領域A5における亀裂の類型を選択する際に、領域A5における第1及び第2亀裂方向に加え、領域A5の周囲に位置する領域A1~A4,A6~A9における第1及び第2亀裂方向を用いる。これにより、領域A5における亀裂が領域A5の周囲に位置する領域A1~A4,A6~A9まで延びているか否かを検出することができ、領域A5における亀裂の類型をより正確に選択することができる。
図5を参照して、領域A5の亀裂の類型と、領域A5の周囲に位置する領域A1~A4,A6~A9における第1及び第2亀裂方向と、の関係を説明する。
図5に示すように、ある領域A(A5)における亀裂が周囲の領域A(A1)まで延びている場合には、その周囲の領域A(A1)にも、当該ある領域A(A5)まで延びる亀裂が形成されている。つまり、ある領域A(A5)における亀裂方向と、周囲の領域A(A1)における亀裂方向と、が略一致する場合には、ある領域A(A5)における亀裂がその周囲の領域A(A1)まで延びていると検出することができる。
また、ある領域A(A5)における亀裂が周囲の領域A(A9)まで延びていない場合には、その周囲の領域A(A9)には、当該ある領域A(A5)まで延びる亀裂が形成されていない。つまり、ある領域A(A5)における亀裂方向と、周囲の領域A(A9)における亀裂方向と、が略一致しない場合には、ある領域A(A5)における亀裂がその周囲の領域A(A9)まで延びていないと検出することができる。
また、ある領域A(A5)に分岐交差型の亀裂が形成されている場合には、その亀裂は、周囲の3つの領域A(A1,A3,A7)まで延びている。つまり、ある領域A(A5)における亀裂が周囲の3つの領域A(A1,A3,A7)まで延びていると検出された場合には、ある領域A(A5)における亀裂の類型は分岐交差型であると選択することができる。
図示を省略するが、ある領域AにX字交差型の亀裂が形成されている場合には、その亀裂は、周囲の4つの領域Aまで延びている。つまり、ある領域Aにおける亀裂が周囲の4つの領域Aまで延びていると検出された場合には、ある領域Aにおける亀裂の類型はX字交差型であると選択することができる。
ある領域Aに鋭角交差型の亀裂が形成されている場合には、その亀裂は、周囲の2つの領域Aまで延び、かつその2つの領域Aがある領域Aの周りに90度以下の角度で位置している。つまり、ある領域Aにおける亀裂が周囲の2つの領域Aまで延び、かつその2つの領域Aがある領域Aの周りに90度以下の角度で位置していると検出された場合には、ある領域Aにおける亀裂の類型は鋭角交差型であると選択することができる。
ある領域Aに非交差型の亀裂が形成されている場合には、その亀裂は、周囲の2つの領域Aまで延び、かつその2つの領域Aがある領域Aの周りに90度を越える角度で位置している。つまり、ある領域Aにおける亀裂が周囲の2つの領域Aまで延び、かつその2つの領域Aがある領域Aの周りに90度を越える角度で位置していると検出された場合には、ある領域Aにおける亀裂の類型は非交差型であると選択することができる。
このように、領域A5における第1及び第2亀裂方向と、領域A1~A4,A6~A9における第1及び第2亀裂方向と、を用いることにより、領域A5における亀裂が領域A1~A4,A6~A9まで延びているか否かを検出することができる。そして、領域A5における亀裂が領域A1~A4,A6~A9まで延びているか否かを検出することによって、領域A5における亀裂の類型をより正確に選択することができる。
以下、図8及び図9に示すフローチャートを参照して、亀裂類型選択部53により実行される亀裂類型選択処理を詳細に説明する。
図8に示すように、ステップS801では、亀裂画素抽出部51(図4参照)により亀裂領域と判定された領域Aのうちの1つを基準領域として選択する。
ステップS802では、基準領域の周囲に位置する8つの領域Aを周囲領域として選択する。このとき、図10に示すように、基準領域に対して0度方向に位置する周囲領域を第1周囲領域とし、第1周囲領域から基準領域を中心に反時計回りに順に第2、第3、・・・第8周囲領域とする。
ステップS803では、第1~第8周囲領域を第i周囲領域として示す変数iを、予め定められた初期値に設定する。ここでは、予め定められた初期値を「1」とする。つまり、ステップS803では、変数iを「1」に設定する。
ステップS804では、基準領域における第1及び第2亀裂方向のいずれか一方が基準領域から第i周囲領域に向かう方向か否かを判定する。具体的には、基準領域における第1及び第2亀裂方向のいずれか一方が、変数iに基づいて定められる所定の範囲内の方向であるか否かを判定する。基準領域における第1及び第2亀裂方向のいずれか一方が、所定の範囲内の方向である場合には、基準領域における第1及び第2亀裂方向のいずれか一方が基準領域から第i周囲領域に向かう方向であると判定する。
所定の範囲の下限値及び上限値は、それぞれ、基準領域の中心から第i周囲領域の中心へ向かう方向(角度)に、22.5度を引いて得られる値、及び22.5度を足して得られる値に設定される。例えば、変数iが「1」である場合には、基準領域の中心から第1周囲領域の中心へ向かう方向は0度の方向であるため、所定の範囲は-22.5度以上22.5度未満に設定される。基準領域における第1及び第2亀裂方向のいずれか一方が、-22.5度以上22.5度未満である場合には、基準領域における第1及び第2亀裂方向のいずれか一方が第1周囲領域に対応する方向であると判定する。
なお、図10には、基準領域から第1~第8周囲領域に向かう方向の範囲の境界を一点鎖線で示している。
ステップS804にて、基準領域における第1及び第2亀裂方向のいずれか一方が基準領域から第i周囲領域に向かう方向であると判定した場合には、ステップS805に進む。ステップS804にて、基準領域における第1及び第2亀裂方向のいずれもが基準領域から第i周囲領域に向かう方向でないと判定した場合には、ステップS901に進む。
ステップS805では、亀裂画素抽出部51(図4参照)による判定結果を用いて、第i周囲領域が亀裂領域であるか否かを判定する。第i周囲領域が亀裂領域であると判定した場合にはステップS806に進む。第i周囲領域が亀裂領域でない(無亀裂領域である)と判定した場合にはステップS901に進む。
ステップS806では、第i周囲領域における第1及び第2亀裂方向のいずれか一方が第i周囲領域から基準領域へ向かう方向か否かを判定する。具体的には、第i周囲領域における第1及び第2亀裂方向のいずれか一方が、変数iに基づいて定められる所定の範囲内の方向であるか否かを判定する。第i周囲領域における第1及び第2亀裂方向のいずれか一方が、所定の範囲内の方向である場合には、第i周囲領域における第1及び第2亀裂方向のいずれか一方が第i周囲領域から基準領域へ向かう方向であると判定する。
ステップS806における所定の範囲は、ステップS804における所定の範囲と同様に変数iに基づいて設定されるため、ここではその詳細を省略する。
ステップS806にて、第i周囲領域における第1及び第2亀裂方向のいずれか一方が第i周囲領域から基準領域へ向かう方向であると判定した場合には、ステップS807に進む。ステップS806にて、第i周囲領域における第1及び第2亀裂方向のいずれか一方が第i周囲領域から基準領域へ向かう方向でないと判定した場合には、ステップS901に進む。
ステップS807は、ステップS804~S806の全ての条件が満たされる場合、すなわち、基準領域における第1及び第2亀裂方向のいずれか一方が基準領域から第i周囲領域に向かう方向であり、第i周囲領域における第1及び第2亀裂方向のいずれか一方が第i周囲領域から基準領域へ向かう方向である。この場合、基準領域における亀裂が第i周囲領域まで延びていると検出される。したがって、ステップS807では、基準領域における亀裂が第i周囲領域まで延びていると記憶する。
図9に示すように、ステップS901では、第1~第8周囲領域の全てにステップS804~S806を実行したか否かを判定する。第1~第8周囲領域の全てにステップS804~S806を実行していないと判定した場合には、ステップS902に進む。第1~第8周囲領域の全てにステップS804~S806を実行したと判定した場合には、ステップS903に進む。
ステップS902では、変数iに「1」を加算してステップS804に戻る。
ステップS903では、ステップS807にて記憶された情報に基づいて、基準領域における亀裂の類型を選択し、不図示の記憶部に亀裂の類型を記憶する。具体的には、基準領域の亀裂が4つの周囲領域まで延びていると記憶されている場合には、X字交差型を選択する。基準領域の亀裂が3つの周囲領域まで延びていると記憶されている場合には、分岐交差型を選択する。基準領域の亀裂が2つの周囲領域まで延びていると記憶されており、かつ2つの周囲領域が基準領域の中心の周りに90度以下の角度で位置している場合には、鋭角交差型を選択する。基準領域の亀裂が2つの周囲領域まで延びていると記憶されており、かつ2つの周囲領域が基準領域の中心の周りに90度よりも大きい角度で位置している場合には、非交差型を選択する。基準領域の亀裂が1つの周囲領域まで延びていると記憶されている場合にも、非交差型を選択する。
ステップS904では、亀裂領域と判定された全ての領域Aを基準領域として選択し、亀裂の類型を選択したか否かを判定する。全ての領域Aを基準領域として選択しておらず亀裂の類型を選択していないと判定した場合には、ステップS905に進む。ステップS905では、亀裂領域と判定された別の領域Aを基準領域として選択し、ステップS802に戻る。このとき、ステップS807にて記憶した情報を消去する。ステップS904にて、全ての領域Aを基準領域として選択し亀裂の類型を選択したと判定した場合には、亀裂類型選択処理を終了する。
亀裂類型選択処理では、基準領域における第1及び第2亀裂方向と、第1~第8周囲領域における第1及び第2亀裂方向と、に基づいて、基準領域における亀裂が第1~第8周囲領域のいずれまで延びるかを検出することができるため、亀裂の類型を正確に選択することができる。
亀裂類型選択部53により選択された亀裂の類型は、亀裂交差判定部54(図4参照)における処理に用いられる。
亀裂交差判定部54は、亀裂類型選択部53により選択された亀裂の類型に基づいて、領域Aの各々が亀裂交差領域であるか否かを判定する。具体的には、亀裂交差判定部54は、領域Aにおける亀裂の類型がX字交差型、分岐交差型、鋭角交差型のいずれかである場合には、当該領域Aが亀裂交差領域であると判定する。これにより、複数の領域Aから亀裂交差領域が抽出される。
図11(a)は、亀裂交差判定部54による判定結果を示す図である。図11(a)では、亀裂交差領域であると判定された領域Aにはハッチングが施されている。図11(a)に示す結果をモニタ80(図1参照)に表示することにより、亀裂が交差する箇所を容易に把握することができる。
次に、風化度合算出部60(図2参照)によって行われる処理について説明する。風化度合算出部60は、切羽画像2Pにおける色彩及び明度等に基づいて、切羽2の風化度合を算出する。具体的には、風化度合算出部60は、切羽2の風化度合と、色彩及び明度等と、を関連付けるテーブルに基づいて、切羽画像2Pにおける色彩及び明度等から切羽2の風化度合を算出する。
ここでは、風化度合を「0」~「4」の5段階で評価する。風化していない状態(新鮮な状態)の風化度合を「0」とし、著しく風化している状態(変質が大きい状態)の柔化度合を「4」とする。図12は、算出結果の一例である。
次に、評価部70によって行われる処理について、図13~図18を参照して説明する。
図13に示すように、評価部70は、亀裂交差領域抽出部50にて抽出された亀裂交差領域に基づいて、亀裂が交差する密度を算出する亀裂交差密度算出部71と、算出された亀裂交差密度に基づいて、切羽2における亀裂性状を判定する亀裂性状判定部72と、風化度合算出部60にて算出された風化度合に基づいて切羽2における風化性状を判定する風化性状判定部73と、判定された亀裂性状及び風化性状に基づいて切羽2の状態を総合的に評価する総合評価部74と、を有する。
亀裂交差密度算出部71により行われる亀裂交差密度算出処理について図14を参照して説明する。
切羽2の剥落は、交差する亀裂が密集している場合に生じやすい。図11(a)に示すように、亀裂交差領域を抽出しただけでは、交差する亀裂が密集しているか否かを判定することが難しい。そこで、亀裂交差密度を算出し、亀裂交差密度に基づいて、切羽2の状態を評価する。
また、切羽2の剥落は、X字交差型の亀裂が生じている箇所で最も生じやすく、分岐交差型の亀裂が生じている箇所で次に生じやすく、鋭角交差型の亀裂が生じている箇所で次に生じやすく、非交差型の亀裂が生じている箇所、及び亀裂の無い箇所において最も生じにくい。そこで、亀裂交差密度算出処理では、剥落の生じやすさに比例した重みを亀裂の類型につけ、亀裂交差密度を算出する。
図14に示すように、ステップS1401では、切羽画像2Pにおける複数の領域Aの1つを、密度評価領域として選択する。
ステップS1402では、密度評価領域を含むように所定数の領域Aを密度算出領域として選択する。図11(a)では、密度算出領域を太点線で示している。ここでは、密度評価領域を中心として、一辺が領域Aの5つ分の長さとなる正方形の内側に位置する25個の領域Aを密度算出領域として選択する。
ステップS1403では、密度算出領域として選択された25個の領域Aにおける亀裂の類型に基づいて、亀裂交差密度を算出する。具体的には、X字交差型の亀裂がある領域Aを3点、分岐交差型の亀裂がある領域Aを2点、鋭角交差型の亀裂がある領域Aを1点、非交差型の亀裂が有る領域A及び無亀裂領域を0点として、合計点を算出し、算出された合計点を、ステップS1401にて密度評価領域として選択された領域Aの亀裂交差密度とする。
図11(b)は、図11(a)に示す判定結果から、密度算出領域を抽出した図であり、亀裂の類型の点数を併記している。図11(b)に示す例では、3点(X字型交差型の亀裂)が1つであり、2点(分岐交差型の亀裂)が1つであり、1点(鋭角交差型の亀裂)が3つであるため、合計点は8点である。したがって、密度評価領域として選択された領域Aの亀裂交差密度は、8点である。
ステップS1404では、全ての領域Aを密度評価領域として選択し亀裂交差密度を算出したか否かを判定する。全ての領域Aを密度評価領域として選択し亀裂交差密度を算出していないと判定した場合には、ステップS1405に進む。ステップS1405では、別の領域Aを選択し、ステップS1402に戻る。ステップS1404にて、全ての領域Aを密度評価領域として選択し亀裂交差密度を算出したと判定した場合には、亀裂交差密度算出処理を終了する。
図15は、亀裂交差密度算出部71による算出結果を示す図である。図15では、亀裂交差密度が所定点数以上(本実施形態では6点以上)の領域Aには、亀裂集中領域であるとしてハッチングが施されている。図15に示す結果をモニタ80(図1参照)に表示することにより、亀裂交差密度が高い箇所を容易に把握することができる。
亀裂交差密度算出部71により算出された亀裂交差密度は、亀裂性状判定部72(図13参照)における処理に用いられる。
亀裂性状判定部72は、切羽2の亀裂性状と、亀裂交差密度を用いて算出される指標と、を関連付けるテーブル(図16参照)に基づいて、切羽2の亀裂性状を、予め定められた「C1」~「C4」の4段階で評価する。
具体的には、亀裂性状判定部72は、切羽画像2Pの総面積に対する亀裂集中領域の面積の割合を算出する。亀裂集中領域は、亀裂交差密度が6点以上の領域Aである。亀裂集中領域の面積の割合が40%以上の場合には、切羽2の亀裂性状を「C1」と判定する。亀裂集中領域の面積の割合が10%未満の場合には、切羽2の亀裂性状を「C4」と判定する。亀裂集中領域の面積の割合が10%以上40%未満の場合には、亀裂集中領域に偏りがあるか否かを算出する。
亀裂集中領域の偏りの有無は、図15に示すように、切羽画像2Pを4つに分割し、分割後の領域の各々における亀裂集中領域の面積の割合を算出することにより判定する。4つの分割領域の少なくとも1つにおいて亀裂集中領域の面積の割合が30%以上であり、かつ、4つの分割領域の少なくとも別の1つにおいて亀裂集中領域の面積の割合が10%未満である場合に、亀裂集中領域に偏りがあると判定する。4つの分割領域の全てにおいて亀裂集中領域の面積の割合が30%未満である、又は、4つの分割領域の全てにおいて亀裂集中領域の面積の割合が10%以上である場合に、亀裂集中領域に偏りがないと判定する。
亀裂性状判定部72は、亀裂集中領域の面積の割合が10%以上40%未満であり、かつ亀裂集中領域に偏りがある場合には、亀裂性状を「C2」と判定する。亀裂集中領域の面積の割合が10%以上40%未満であり、かつ亀裂集中領域に偏りがない場合には、亀裂性状を「C3」と判定する。
このように、亀裂性状は、亀裂が交差する密度の分布、すなわち亀裂集中領域に基づいて判定される。そのため、切羽2の剥落が生じやすい亀裂集中領域の影響を含めて亀裂性状を判定することができ、切羽2の状態をより正確に評価することができる。
風化性状判定部73は、亀裂性状判定部72と同様に、切羽2の風化性状と、風化度合を用いて算出される指標と、を関連付けるテーブル(図17参照)に基づいて、切羽2の風化性状を、予め定められた「W1」~「W4」の4段階で評価する。
具体的には、風化性状判定部73は、風化度合が3以上の領域を風化領域とし、切羽画像2Pの総面積に対する風化領域の面積の割合を算出する。風化領域の面積の割合が60%以上の場合には、切羽2の風化性状を「W1」と判定する。風化領域の面積の割合が10%未満の場合には、切羽2の亀裂性状を「W4」と判定する。風化領域の面積の割合が10%以上60%未満の場合には、風化領域に偏りがあるか否かを算出する。
風化領域の偏りの有無は、図12に示すように、切羽画像2Pを4つに分割し、分割後の領域の各々における風化領域の面積の割合を算出することにより判定する。4つの分割領域の少なくとも1つにおいて風化領域の面積の割合が40%以上であり、かつ、4つの分割領域の少なくとも別の1つにおいて風化領域の面積の割合が10%未満である場合に、風化領域に偏りがあると判定する。4つの分割領域の全てにおいて風化領域の面積の割合が40%未満である、又は、4つの分割領域の全てにおいて風化領域の面積の割合が10%以上である場合に風化領域に偏りがないと判定する。
風化性状判定部73は、風化領域の面積の割合が10%以上60%未満であり、かつ風化領域に偏りがある場合には、風化性状を「W2」と判定する。風化領域の面積の割合が10%以上60%未満であり、かつ風化領域に偏りがない場合には、風化性状を「W3」と判定する。
総合評価部74は、亀裂性状と風化性状と切羽2の状態とを関連付けるテーブル(図18参照)に基づいて、切羽2の状態を、予め定められた「M1」~「M3」の3段階で評価する。
具体的には、総合評価部74は、亀裂性状が「C1」であるか、風化性状が「W1」であるか、又は亀裂性状と風化性状の組み合わせが「C2,W2」である場合には、切羽2の状態を「M1」と評価する。亀裂性状と風化性状との組み合わせが、「C3,W2」、「C4,W2」、「C2,W3」、「C3,W3」、「C4,W3」、「C2,W4」又は「C3,W4」である場合には、切羽2の状態を「M2」と評価する。亀裂性状と風化性状との組み合わせが、「C4,W4」である場合には、切羽2の状態を「M3」と評価する。
このように、切羽2の状態は、切羽2における風化性状と亀裂性状とに基づいて評価される。そのため、風化度合の影響と、互いに交差する亀裂の影響と、を含めて切羽2の状態を評価することができ、切羽2の状態を正確に評価することができる。
図18に示すテーブルにおける「M1」~「M3」は、過去のトンネル施工時に切羽2において剥落が発生した確率(剥落発生率)に基づいて設定される。例えば、「M1」は、剥落発生率が75%以上である亀裂性状と風化性状との組み合わせに設定され、「M2」は、剥落発生率が10%以上75%未満である亀裂性状と風化性状との組み合わせに設定され、「M3」は、剥落発生率が10%未満である亀裂性状と風化性状との組み合わせに設定される。「M1」~「M3」は、予め行われる実験の結果に基づいて設定されていてもよい。
以上により、評価部70による処理が終了し、切羽2の状態の評価が完了する。評価結果は、モニタ80に表示される。
切羽評価装置100による切羽2の状態の評価は、トンネル1の施工における一次コンクリート吹付工程が開始されるまでに行われる。作業者は、評価結果に基づいて、コンクリート材料の吹付厚さを設定する。例えば、切羽2の状態が「M1」と評価された場合には、コンクリート材料の吹付厚さを10mmに設定する。切羽2の状態が「M2」と評価された場合には、コンクリート材料の吹付厚さを7mmに設定する。切羽2の状態が「M3」と評価された場合には、コンクリート材料の吹付厚さを5mmに設定する。これにより、切羽2を適切に安定させることができる。
次に、ステップS602(図6参照)にて行われる、予め定められた方向ごとに亀裂画素の連続度合を算出する処理の一例を、図19~図23を参照して説明する。
亀裂画素の連続度合は、切羽画像2P(図3参照)から所定の領域を連続度合算出用領域D(図20参照)として抽出し、連続度合算出用領域Dにおける亀裂画素の連続率に基づいて算出される。亀裂画素の連続率は、連続度合算出用領域Dをそのまま、又は複数に分割して(図21、図22参照)、1つ又は複数の連続率算出用領域DRを設定し、複数の連続率算出用領域DRにおいて一端から他端まで連続する亀裂画素の並びの有無を判定し、一端から他端まで連続する並びがある連続率算出用領域DRの数を算出し、算出された数を、連続率算出用領域DRの総数で除して100を乗じることによって取得される。このように算出される連続率が高いほど、連続度合は大きくなる。
以下、図19に示すフローチャートを主に参照して、予め定められた方向ごとに亀裂画素の連続度合を算出する処理を詳述する。ここでは、予め定められた複数の方向を、0度から5度間隔に175度までの36方向に設定した場合を説明する。また、連続率算出用領域DRを、連続度合算出用領域Dに幾何学的に相似するように設定する。以下において、予め定められた複数の方向を「連続度合算出方向」とも称する。
図19に示すように、ステップS1901では、連続度合算出方向として、0度方向を選択する。
ステップS1902では、切羽画像2Pから所定の領域を連続度合算出用領域D(図20参照)として抽出する。連続度合算出用領域Dは、2辺が連続度合算出方向に沿って延びる正方形内の領域であり、連続度合算出用領域Dの中心は、ステップS601又はS605(図6参照)により選択された領域Aの中心と一致する。図20は、連続度合算出用領域Dの一例である。図20に示す連続度合算出用領域Dは、0度方向に20個、90度方向に20個並んだ画素を含む。
ステップS1903では、連続率算出用領域DRの1辺に対する連続度合算出用領域Dの1辺の長さ比Nを「1」に設定する。
ステップS1904では、連続度合算出用領域Dを分割してN^2個の連続率算出用領域DRを設定する。今、長さ比Nは「1」なので、連続率算出用領域DRは1個設定される。つまり、連続度合算出用領域Dは、実質的には分割されず、連続度合算出用領域Dがそのまま連続率算出用領域DRとして設定される(図20参照)。
ステップS1905では、連続率算出用領域DRにおいて連続度算出方向に一端から他端まで連続する亀裂画素の並びがあるか否かを判定し、一端から他端まで連続する並びがある連続率算出用領域DRの数M(以下、「並び領域数M」と称する)を算出する。図20に示す連続率算出用領域DRでは、一端から他端まで連続する亀裂画素の並びがないので、並び領域数Mは「0(零)」である。
ステップS1906では、並び領域数Mを、連続率算出用領域DRの総数(つまり、N^2)で除し、連続率を算出する。今、並び領域数Mは「0(零)」であり、長さ比Nは1なので、連続率は、M/(N^2)=0/1=0と算出される。
ステップS1907では、長さ比Nが予め定められた最大長さ比Nmaxであるか否かを判定する。最大長さ比Nmaxは、ここでは「10」に設定されている。長さ比Nが最大長さ比Nmaxである場合には、ステップS1909に進む。長さ比Nが最大長さ比Nmaxではない場合には、ステップS1908に進む。今、長さ比Nは「1」であり、最大長さ比Nmaxは「10」であるため、ステップS1908に進む。
ステップS1908では、長さ比Nを「1」だけ増加して、ステップS1904に戻る。今、長さ比Nは「1」であったので、新たな長さ比は「2」に設定されて、ステップS1904に戻る。
2回目のステップS1904では、連続度合算出用領域Dを分割してN^2個、すなわち4個の連続率算出用領域DRを設定する(図21参照)。
2回目のステップS1905では、4個の連続率算出用領域DRの各々において連続度算出方向に一端から他端まで連続する亀裂画素の並びがあるか否かを判定し、並び領域数Mを算出する。図21に示す例では、左下の連続率算出用領域DRには、一端から他端まで連続する並びがあり、他の連続率算出用領域DRには連続する並びがないので、並び領域数Mは「1」である。
2回目のステップS1906では、並び領域数Mは「1」であり、長さ比Nは「2」なので、連続率は、M/(N^2)=1/4と算出される。
2回目のステップS1907では、長さ比Nは「2」であり、最大長さ比Nmaxは「10」であるため、ステップS1908に進む。
2回目のステップS1908では、長さ比Nを「2」から「1」だけ増加させた「3」に設定して、ステップS1904に戻る。
3回目のステップS1904では、連続度合算出用領域Dを分割してN^2個、すなわち9+個の連続率算出用領域DRを設定する(図22参照)。
3回目のステップS1905では、9個の連続率算出用領域DRの各々において連続度算出方向に一端から他端まで連続する亀裂画素の並びがあるか否かを判定し、並び領域数Mを算出する。図22に示す例では、上段左、中段中央、下段左の連続率算出用領域DRに一端から他端まで連続する並びがあり、他の連続率算出用領域DRには連続する並びがないので、並び領域数Mは「3」である。
3回目のステップS1906では、並び領域数Mは「3」であり、長さ比Nは「3」なので、連続率は、M/(N^2)=3/9=1/3と算出される。
3回目のステップS1907では、長さ比Nは「3」であり、最大長さ比Nmaxは「10」であるため、ステップS1908に進む。
ステップS1904~ステップS1906は、長さ比Nが「10」に設定されるまで、すなわち10回繰り返される。
ステップS1909では、算出された複数の連続率に基づいて、連続度合を算出する。具体的には、長さ比Nと連続率との間の関係を表す関係式を算出し、算出された関係式を0から1まで積分して得られる値を連続度合として算出する。関係式は、例えば、連続率=A*長さ比N+B(ただし、A,Bは係数)で表される近似一次式ある。
図23は、長さ比Nを横軸とし連続率を縦軸としたグラフである。連続度合は、近似一次式と横軸と縦軸とによって囲まれる領域の面積に相当する。算出された連続度合は、不図示の記憶部に記憶される。
ステップS1910では、予め定められた複数の連続度合算出方向の全てにおける連続度合を算出したか否かを判定する。複数の連続度合算出方向の全てにおける連続度合を算出していないと判定した場合には、ステップS1911に進む。ステップS1911では、連続度合算出方向として別の方向を選択し、ステップS1902に戻る。
ステップS1910にて、複数の連続度合算出方向の全てにおける連続度合を算出したと判定した場合には、亀裂画素の連続度合を算出する処理を終了する。以上により、予め定められた方向ごとに亀裂画素の連続度合が算出される。
以上の本実施形態によれば、以下に示す作用効果を奏する。
切羽評価装置100及び切羽評価方法では、切羽画像2Pにおける複数の領域Aから、亀裂交差領域を画像処理によって抽出し、抽出された亀裂交差領域に基づいて、切羽2の状態を評価する。そのため、互いに交差する亀裂の影響を含めて切羽2の状態を評価することができ、トンネル1の切羽2の状態を正確に評価することができる。
また、複数の領域Aごとに第1及び第2亀裂方向が検出され、検出された第1及び第2亀裂方向に基づいて、複数の領域Aの各々における亀裂の類型が選択される。そのため、領域Aの各々における亀裂の類型の影響を含めて切羽2の状態を評価することができ、トンネル1の切羽2の状態をより正確に評価することができる。
また、亀裂の類型を選択する際には、複数の領域Aの1つを基準領域として選択し、複数の領域Aのうち基準領域の周囲に位置する領域を周囲領域として選択し、基準領域及び前記周囲領域における第1及び第2亀裂方向に基づいて、基準領域における亀裂の類型を選択する。そのため、亀裂の類型をより正確に選択することができ、トンネル1の切羽2の状態をより正確に評価することができる。
また、亀裂方向を検出する際には、予め定められた複数の方向ごとに、領域Aにおいて亀裂画素が連続して並ぶ連続度合を算出し、予め定められた複数の方向から、算出された連続度合が最も大きい方向を第1亀裂方向として検出すると共に、算出された度合が2番目に大きい亀裂方向を第2亀裂方向として検出する。そのため、領域Aに亀裂が3つ以上形成されている場合において最も大きい亀裂と2番目に大きい亀裂の方向を正確に検出することができ、トンネル1の切羽2の状態をより正確に評価することができる。
また、切羽2の状態を評価する際には、亀裂交差領域に基づいて、亀裂が交差する密度の分布を算出し、算出された密度の分布に基づいて、切羽2の状態を評価する。そのため、切羽2の剥落が生じやすい亀裂集中領域の影響を含めて切羽2の状態を評価することができ、トンネル1の切羽2の状態をより正確に評価することができる。
また、切羽2の状態を評価する際には、切羽2における風化度合と、抽出された亀裂交差領域と、に基づいて切羽2の状態を評価する。そのため、風化度合の影響と、互いに交差する亀裂の影響と、を含めて切羽2の状態を評価することができ、トンネル1の切羽2の状態を正確に評価することができる。
また、コンクリート材料吹付方法では、切羽2の状態を評価し、評価結果に基づいて、切羽2へ吹付けられるコンクリート材料の厚さを設定する。そのため、切羽2を適切に安定させることができる。
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態は本発明の適用例の一部を示したに過ぎず、本発明の技術的範囲を上記実施形態の具体的構成に限定する趣旨ではない。
例えば、亀裂方向検出部52は、3つ以上の亀裂方向を検出するように構成され、亀裂類型選択部53は、3つ以上の亀裂方向に基づいて亀裂の類型を選択するように構成されていてもよい。
また、評価部70は、亀裂性状に基づいてのみ切羽2の状態を評価するように構成されていてもよい。また、評価部70は、亀裂交差密度を算出することなく、亀裂交差領域を用いて直接切羽2の状態を評価するように構成されていてもよい。
また、評価部70は、切羽2の全体を評価するのではなく、切羽2の一部を評価するように構成されていてもよい。
また、評価部70による評価結果は、作業者が携帯する端末に表示されてもよい。