以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。以下の実施形態は、本発明の好適な具体例であって、種々の好ましい技術を開示しているが、本発明の技術範囲はこれらの態様に限定されるものではない。
本発明の実施形態による自律走行作業システム100について説明する。自律走行作業システム100は、複数の部屋ROを有するホテル、病院、介護施設、商業施設、オフィス等の施設FAに適用される。図1に示すように、自律走行作業システム100では、管理サーバ101と、管理用コンピュータ102と、1つ以上の無線基地局103と、1つ以上のフロアコントローラ104とがLAN(Local Area Network)105を介して接続されている。各無線基地局103は、本発明の実施形態による自律走行作業装置1と無線通信可能に接続される。
図1では、自律走行作業システム100が、3つの階(フロア)1F、3Fを有する施設FA(2階は図示せず)に適用される例を示しているが、この例に限定されず、1つ以上の階を有する施設FAに適用されてよい。各階1F、3F毎に、各無線基地局103および各フロアコントローラ104がそれぞれ設けられてよく、各階1F、3F毎に、1つ以上の無線基地局103が設けられてよい。図1では、階3Fが2つの部屋RO(例えば、301号室、302号室)を有する例を示しているが、この例に限定されず、各階1F、3F毎に、1つ以上の部屋ROを有してよい。また、図1では、階3Fに自律走行作業装置1を配置する例を示しているが、この例に限定されず、自律走行作業装置1は、各階1F、3Fに共通して利用され、各階1F、3Fの清掃時間に合わせて各階1F、3Fへ移動される。
各階1F、3Fの各部屋ROには、部屋ROの利用状況を検知する部屋状況センサが設けられている。例えば、部屋状況センサとして、部屋ROのドアDO(図4参照)がロックされているか否かを検知するドアロックセンサ110や、ドアDOの鍵であるルームカードが入室後に部屋RO内の指定ホルダに格納されているか否かを検知するルームカードセンサ111が設けられている。ルームカードを鍵として用いるドアDOは、ロック解除してから閉扉後に自動的にロックされてよい。なお、部屋状況センサとして、利用者の在室を検知する人感センサやカメラ等が設けられてもよい。ドアロックセンサ110やルームカードセンサ111等の部屋状況センサは、各階1F、3Fのフロアコントローラ104に接続されている。
各階1F、3Fの共用部には、共用部の利用状況を検知する共用部センサが設けられている。例えば、共用部センサとして、共用部であるエレベータホールHAには、エレベータEVの利用者を検知するホール用人感センサ112やカメラ等が設けられてよく、あるいは利用者の各階への乗降を判断するため、エレベータEVに備わる各階1F、3Fの階数ボタンの操作が検知されてもよい。また、共用部センサとして、共用部である階段ST1や非常階段ST2の踊り場や出入口には、階段ST1や非常階段ST2の利用者を検知する人感センサやカメラ等が設けられてよく、あるいは階段ST1や非常階段ST2の出入口の階段用ドアの開閉センサやロックセンサが設けられてもよい。なお、各階1F、3Fの通路PAや他の共用スペースにも、共用部センサとして、利用者を検知する人感センサやカメラ等が設けられてよい。ホール用人感センサ112等の共用部センサも、各階1F、3Fのフロアコントローラ104に接続されている(図4参照)。
また、各階1F、3Fの共用部には、施設FAの利用者に対して緊急情報を報知するためのフロアスピーカ113やモニタ等の緊急情報出力装置が設けられてもよい。フロアスピーカ113等の緊急情報出力装置も、各階1F、3Fのフロアコントローラ104に接続されている。緊急情報には、様々な種類の緊急事態があり、例えば、ホテル等の様々な施設FAで配信される避難情報や災害情報等があり、介護施設や病院等の施設FAで配信されるナースコールやスタットコール等がある。例えば、避難情報や災害情報等の緊急情報には、様々な緊急情報発信サイト107から配信される緊急地震速報、津波警報、特別警報等、国・地方公共団体から配信される災害・避難情報等、施設FAの運営会社から配信される火災・災害・避難情報等がある。なお、緊急情報には、施設FAの全館に向けた全館緊急情報と、各階1F、3F毎に向けたフロア別緊急情報とがある。なお、全館緊急情報が配信される時は緊急時の為、ブロードキャストで配信されても良い。
管理サーバ101は、インターネット106に接続されていて、インターネット106を介して緊急情報発信サイト107や外部予約サイト108等と通信可能に接続される。管理サーバ101は、緊急情報発信サイト107から緊急情報をリアルタイムに受信することができる。また、管理サーバ101は、外部予約サイト108の利用に応じて、施設FAや部屋ROの予約を受け付けることができる。
管理サーバ101は、LAN105および各フロアコントローラ104を介して各階1F、3Fの各部屋ROの部屋状況センサ(ドアロックセンサ110やルームカードセンサ111)の検知情報(オンまたはオフ)を受信して格納する。また、管理サーバ101は、LAN105および各フロアコントローラ104を介して各階1F、3Fの共用部センサ(ホール用人感センサ112)の検知情報(オンまたはオフ)を受信して格納する。これにより、管理サーバ101は、各階1F、3Fの各部屋ROおよび共用部の利用状況を管理する。
また、管理サーバ101は、緊急情報発信サイト107等からインターネット106を介して緊急情報を受信した場合や、管理サーバ101に接続された管理用コンピュータ102、またはナースコールやスタットコール等で緊急情報の入力操作が行われた場合に、LAN105および各フロアコントローラ104を介して各階1F、3Fのフロアスピーカ113等の緊急情報出力装置に対して、緊急情報を送信する。管理サーバ101は、緊急情報が全館緊急情報である場合には、全ての階1F、3Fの各フロアコントローラ104に対して緊急情報を送信し、緊急情報が所定の階のフロア別緊急情報である場合には、その所定の階のフロアコントローラ104に対して緊急情報を送信する。これにより、管理サーバ101は、施設FAの利用者に対して緊急情報を報知することができる。
更に、管理サーバ101は、自律走行作業装置1が所定の階1F、3Fで稼働してその階1F、3Fの1つ以上の無線基地局103の何れかと通信可能になっている場合、LAN105および無線基地局103を介してその自律走行作業装置1に周囲情報を送信する。周囲情報は、自律走行作業装置1が稼働している階1F、3Fにおいて、1つ以上の無線基地局103の全てによって送信されてもよく、あるいは、自律走行作業装置1の近傍の無線基地局103のみによって送信されてもよい。なお、自律走行作業装置1が稼働している階1F、3Fの通路PA等を、清掃を行う対象の清掃エリアAR1(作業エリア)とする一方、通路PAに沿う部屋ROやエレベータEV、階段ST1や非常階段ST2等を、清掃エリアAR1の周辺エリアAR2とする。周囲情報は、稼働している自律走行作業装置1の周囲の情報であって、清掃エリアAR1および周辺エリアAR2の少なくとも一方における利用者の行動を予測可能な情報である(図4参照)。
例えば、図2に示すように、周囲情報は、上記のように管理サーバ101が管理する緊急情報を含む。図2では、管理サーバ101が管理する緊急情報が、緊急事態の種類に拘らず、全館緊急情報およびフロア別緊急情報のフラグ(緊急事態発生または緊急事態解除)である例を示しているが、管理サーバ101は、緊急事態毎に緊急情報を管理してもよい。管理サーバ101は、このような緊急情報が受信または入力されたタイミングで、緊急情報を示す周囲情報を自律走行作業装置1へ送信するとよい。また、周囲情報は、上記のように管理サーバ101に格納された各部屋ROの部屋状況センサ(ドアロックセンサ110やルームカードセンサ111)の検知情報や共用部センサ(ホール用人感センサ112)の検知情報を含む。管理サーバ101は、検知情報が更新されたタイミングで、検知情報を示す周囲情報を自律走行作業装置1へ送信するとよい。なお、図2では、管理サーバ101が、4つの階1F、3F、4Fを有する施設FA(2階は図示せず)の周囲情報を有する例を示しているが、この例に限定されず、管理サーバ101は、1つ以上の階を有する施設FAの周囲情報を有してよい。
管理用コンピュータ102は、施設FAの管理者によって操作されるコンピュータであり、LAN105を介して管理サーバ101や各無線基地局103および各フロアコントローラ104を統括制御することができる。管理用コンピュータ102は、LAN105および各無線基地局103を介して、自律走行作業装置1を遠隔操作できるように構成されてもよい。
無線基地局103は、例えば、Wi-Fi等の無線LANやBluetooth(登録商標)等の通信規格を利用した無線通信により機器間相互接続を行う装置であり、自律走行作業装置1と管理サーバ101との中継機器である。上記したように、各階1F、3F毎には、1つ以上の無線基地局103が清掃エリアAR1において所定の間隔を空けて設けられてよい。
フロアコントローラ104は、各階1F、3Fにおける利用者の状況を統括して管理および制御する装置である。フロアコントローラ104は、その階1F、3Fの各部屋ROの部屋状況センサ(ドアロックセンサ110やルームカードセンサ111)の検知情報や共用部センサ(ホール用人感センサ112)の検知情報を監視していて、更新された検知情報を管理サーバ101へ送信する。
次に、自律走行作業装置1について説明する。図3に示すように、自律走行作業装置1は、各部を収容するための装置本体2と、装置本体2を走行させる走行部3とを備える。自律走行作業装置1は、所定の作業を実行する作業機構(作業部)を装置本体2に搭載することができ、例えば、装置本体2の下方の床面FLの清掃作業を実行する清掃部4を作業部として備える。
また、自律走行作業装置1は、装置本体2とこの装置本体2の周囲の人、壁WA(図4参照)およびその他の障害物(例えば、置物等)等の非作業対象との位置関係(例えば、装置本体2の進行方向に対する角度や距離)等を計測する計測部5と、装置本体2の周囲画像を撮像する撮像部6とを備える。更に、自律走行作業装置1は、清掃部4の清掃作業により生じる騒音に対して消音効果を発揮する消音部7を備える。また、自律走行作業装置1は、自律走行作業装置1の各部および各種機能(走行部3による走行、清掃部4による清掃作業、計測部5による計測、撮像部6による撮像、消音部7による消音等)を統括制御する制御部8を備える。更に、自律走行作業装置1は、自律走行作業装置1の各種機能の操作や表示のためのタッチパネル33(図5参照)からなる操作表示部9と、無線基地局103と無線通信を行うことで管理サーバ101等の外部機器と通信を行うための無線通信部10と、自律走行作業装置1の各部に電力を供給し、図示しないバッテリーの残量監視や充電を制御するための電源部11とを備える。
自律走行作業装置1は、動作モードとして、事前に入力されたプログラムやデータに従って自律的な走行および自動的な清掃(作業)を行う自動モードで主に動作する。自律走行作業装置1は、自動モードでは、清掃を優先して走行しつつ、人、壁WAおよびその他の障害物等の非作業対象との衝突を回避する。なお、自律走行作業装置1は、動作モードとして、手動操作や遠隔操作に従って、あるいは事前に入力されたデータを修正したデータに従って走行および清掃を行う設定モードで動作することもできる。また、設定モード内には更に、利用者の手動操作を受け付けて動作する手動操作モードや、利用者のタブレット端末等の操作による遠隔操作を受け付けて動作する遠隔操作モードが設定されても良い。
自律走行作業装置1は、図4に示すような清掃エリアAR1のエリアレイアウト20、環境地図21および走行経路22、並びに走行部3の走行設定および清掃部4の清掃設定(作業設定)等の自動操作情報を作成または設定することで記憶していて、この自動操作情報に基づいて、自動操作による走行および清掃を行う自律走行清掃(自律走行作業)を実行するように構成される。なお、自動操作情報には、その清掃エリアAR1に関する施設情報(ホテルや病院、新館や別館等の名称)やエリア情報(フロア表示D1や部屋番号D2)も含まれる。
エリアレイアウト20は、例えば、清掃エリアAR1である通路PA、階段ST1や非常階段ST2やエレベータEVの配置、フロア表示D1等のエリア情報の配置、通路PAに沿って隣接する部屋ROの配置や数、各部屋ROの通路PA側(清掃エリアAR1側)の幅(以下、壁幅WIと称する)およびその壁幅WIに基づく各部屋ROの広さ(範囲)、各部屋ROのドアDOの位置等に関する情報を有する。エリアレイアウト20の各部屋ROの配置や壁幅WIは、環境地図21に反映させることができる。例えば、エリアレイアウト20に基づいて各部屋ROの範囲を区分けし、区分けした部屋ROの壁幅WIに基づいて通路PA側の壁WAを更に区画して壁情報を取得すると、この壁情報を環境地図21に反映させることができる。例えば、エリアレイアウト20における304号室の部屋ROの壁幅WIで区画された壁WAの壁情報を304壁とするとき、この304壁を環境地図21上の304号室の部屋ROの範囲として反映させれば、304号室の部屋ROの幅(部屋範囲)を計測部5によって検知可能となる。
走行部3は、装置本体2の下部に設けられていて、駆動輪として左右一対の前輪3aを備え、補助輪として後輪3bを備える。左右一対の前輪3aのそれぞれには、正転または逆転に駆動するためのモータ(図示せず)と、回転を検出するためのエンコーダ(図示せず)とが設けられる。走行部3は、左右一対の前輪3aを同時に正転または逆転させることで装置本体2を前進または後退させることができる。また、走行部3は、一方の前輪3aを停止または低速回転させると同時に、他方の前輪3aを回転または高速回転させることで装置本体2を左旋回または右旋回させることができる。なお、走行部3は、左右一対の前輪3aをそれぞれ逆方向に回転させることで、最小旋回軸A周りにその場で旋回させることもできる。
走行部3は、自律走行作業装置1の動作モードが自動モードに設定されている間、記憶されている走行経路22および走行設定に従って走行部3の左右一対の前輪3aのそれぞれのモータが作動して、装置本体2の走行(前進や後退)の作動および停止、走行速度の調整(加減速)並びに左旋回および右旋回が自動的に操作される。走行部3は、自動モードが設定されている間は、操作表示部9の緊急停止ボタン32(図5参照)の操作以外の手動操作を受け付けない。
走行部3の走行経路22として記憶されるデータは、例えば、走行経路22の座標(環境地図21上におけるX座標およびY座標)、進行方向に対する旋回角度、左右一対の前輪3aのエンコーダのカウント数等であり、これらのデータに基づいて走行経路22を図化することができる。また、走行部3の走行設定は、走行の作動/停止、走行速度等であり、例えば、左右一対の前輪3aのそれぞれのモータの作動状態(オフ、低速、中速、高速)のデータが走行経路22の位置毎に記憶される。あるいは、走行モータの作動状態は、数字(1~5または1~7等)による複数段階設定でもよい。走行部3の走行設定は、初期設定されてもよく、作業者によって制御部8の記憶装置(図示せず)に予め記憶されてもよく、環境地図21や走行経路22の新規作成時に、事前入力されたプログラムに従って環境地図21や走行経路22に基づいて自動的に作成されてもよく、または操作表示部9を介して手動で設定されてもよい。なお、自律走行作業装置1の動作モードが設定モードに設定されている場合には、走行経路22や走行設定の新規作成や修正等が可能である。
走行部3は、作業者による手動操作を受け付けるハンドル等の手動操作部(図示せず)を備えてもよい。自律走行作業装置1は、作業者による手動操作部の手動操作に従って走行部3の左右一対の前輪3aのそれぞれのモータが作動して、装置本体2の走行(前進や後退)の作動および停止、走行速度の調整(加減速)並びに左旋回および右旋回が手動操作されてもよい。更に、自律走行作業装置1は、タブレット端末等で構成される操作表示部9を利用した遠隔走行操作を受け付け、走行部3が遠隔走行操作に応じて走行するように構成されてもよい。作業者は、清掃エリアAR1に存在する自律走行作業装置1を目視しながら、またはタブレット端末等の操作表示部9のタッチパネル33に表示されたエリアレイアウト20や環境地図21を視認しながら、操作表示部9を操作することで、走行部3を遠隔走行操作で走行させることができる。
清掃部4は、装置本体2内の前下部に設けられ、例えば、乾式の清掃手法によって床面FLを清掃する機構で構成される。清掃部4は、回転することで床面FL上の塵埃を収集するブラシ4aと、ブラシ4aを回転駆動するブラシモータ(図示せず)と、ブラシ4aによって収集された塵埃を吸引するブロア(図示せず)と、ブロアへの吸入口となる吸引ノズル4bと、ブロアで吸引された塵埃を溜めるバケット(図示せず)と、ブロアの吸引で生じた排気を排出する排気ダクト4cとを備える。清掃部4のブラシ4aは、装置本体2の前下面に設けられ、床面FLに接触すると共に回転することで床面FLを清掃する。清掃部4の吸引ノズル4bは、ブラシ4aよりも後方で、先端を床面近傍に向けて配置され、基端側にはブロワが設けられる。清掃部4の排気ダクト4cは、装置本体2内の前下部のブロワから背面側まで延設されている。
清掃部4は、自律走行作業装置1の動作モードが自動モードに設定されている間、記憶されている清掃設定に従ってブラシモータやブロアを作動させることで床面FLの清掃作業を行うように構成される。清掃部4の清掃設定は、ブラシモータの作動/停止、回転速度や、ブロアの作動/停止、吸引強度等であり、例えば、ブラシモータの作動状態(オフ、低速、中速、高速)や、ブロアの作動状態(オフ、少量、中量、多量)等のデータが走行経路22の位置毎に記憶される。あるいは、ブラシモータやブロアの作動状態は、数字(1~5または1~7等)による複数段階設定でもよい。清掃設定は、初期設定されてもよく、作業者によって制御部8の記憶装置(図示せず)に予め記憶されてもよく、環境地図21や走行経路22の新規作成時に、事前入力されたプログラムに従って環境地図21や走行経路22に基づいて自動的に作成されてもよく、または操作表示部9を介して手動で設定されてもよい。なお、自律走行作業装置1の動作モードが設定モードに設定されている場合には、清掃設定の新規作成や修正等が可能である。
計測部5は、装置本体2と周囲の人、壁WAおよびその他の障害物等の非作業対象との距離および角度を計測するレーザーレンジファインダ(LRF:Laser Range Finder)等の障害物センサ5aを備える。また、計測部5は、装置本体2付近の床面FLの段差を検知する段差センサ(図示せず)や、非作業対象との接触を検知する接触センサ(図示せず)等を備えてもよい。障害物センサ5aは、例えば、装置本体2の外部(例えば、前面)に設けられ、図11に示すように、所定の走査範囲に対して測定光を送受信可能であり、床面FLから所定の計測可能高さ以内で、障害物センサ5aから所定の計測可能範囲RA内に存在する非作業対象を検知する。
なお、計測部5の障害物センサ5aによって検知された非作業対象が静止物である場合、走行中の自律走行作業装置1と静止物との単位時間経過毎の距離を、走行部3の走行速度に基づいて推定して算出することができる。一方、計測部5の障害物センサ5aによって検知された非作業対象が自律走行作業装置1側に接近する人や台車等の移動物Mである場合、走行中の自律走行作業装置1と移動物Mとの単位時間経過毎の距離に関して、障害物センサ5aによって計測した距離は、静止物のように走行部3の走行速度に基づいて算出した距離よりも短くなる。換言すれば、計測部5の障害物センサ5aの検知結果に基づいて、自律走行作業装置1側に接近する移動物Mを検知することができる。
また、計測部5の障害物センサ5aの計測結果である計測範囲は、図11等に示すように、人、壁WAおよびその他の障害物等の非作業対象に遮られない限り、所定の計測可能範囲RAまでの広がりを有する。計測範囲と所定の計測可能範囲RAとを比較することで、計測範囲が壁WAに規制されているか否かを判定することができ、また、壁WAに規制される範囲を推定することができる。
撮像部6は、装置本体2の周囲画像を撮像するCCD(Charge Coupled Device)等のカメラ6aを備える。カメラ6aは、例えば、装置本体2の前方の所定の撮像範囲内の周囲画像を撮像するように装置本体2の外部(例えば、前上面)に設けられる。撮像部6による周囲画像は、例えば、自律走行作業装置1に備わるドライブレコーダーによって作業状況の記録に用いられる。
消音部7は、清掃部4のブロアによって生じて排気ダクト4cを介して伝わる排気音(騒音)に対して消音効果を発揮するアクティブ消音波を出力する。消音部7は、例えば、ブロアの排気音を収集するマイク(図示せず)と、アクティブ消音波を生成する消音波生成部(図示せず)と、アクティブ消音波を出力するスピーカ(図示せず)とを備える。マイクは、排気ダクト4cに近接して配置されて、ブロアの排気音を排気ダクト4cの近傍で収集する。消音波生成部は、マイクで収集された排気音に基づいて、この排気音の位相を半分ずらした逆位相を有するアクティブ消音波を生成する。スピーカは、排気ダクト4cに近接して配置されて、アクティブ消音波を排気ダクト4cの近傍で出力する。これにより、消音部7は、アクティブ消音波をブロアの排気音に重ね合わせて出力することで、排気音に対して消音効果を発揮する。なお、消音部7の消音波生成部は、制御部8のプログラムとして構成されていてよい。
制御部8は、CPU(Central Processing Unit)等のコンピュータ(図示せず)と、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、ハードディスク、フラッシュメモリ等からなる記憶装置(図示せず)とを備える。制御部8は、上記の走行部3、清掃部4、計測部5、撮像部6、消音部7、操作表示部9、無線通信部10および電源部11等の自律走行作業装置1の各部に接続されている。
制御部8の記憶装置は、自律走行作業装置1の各部および各種機能を制御するためのプログラムやデータを記憶している。制御部8は、コンピュータが記憶装置に格納されたプログラムやデータを読み取ってこのプログラムを実行することにより、各部および各種機能を統括制御する。例えば、記憶装置には、自律走行清掃で実施されるプログラムや、1つ以上の清掃エリアAR1について、図4に示すようなエリアレイアウト20、環境地図21および走行経路22並びに走行設定および清掃設定を組み合わせた自動操作情報が記憶されている。制御部8は、このプログラムおよび自動操作情報に基づいて、走行部3による自律走行や清掃部4による自動清掃等を制御する。
例えば、清掃エリアAR1のエリアレイアウト20、環境地図21、走行経路22、走行設定および清掃設定等の自動操作情報に関するデータは、作業者によって操作表示部9や無線通信部10を利用して制御部8に入力されて記憶装置に記憶される。なお、図4に示すように、走行経路22には、自律走行清掃の開始位置P1および停止位置P2も含まれる。
あるいは、環境地図21は、自律走行作業装置1を設定モードで動作させる際に、手動操作部による手動操作やタブレット端末等の操作表示部9による遠隔操作によって清掃エリアAR1を走行させることで、制御部8によって下記のようにして作成されてもよい。この走行の間、計測部5が、装置本体2の周囲の人、壁WAおよびその他の障害物等の非作業対象までの距離および角度を計測する。制御部8は、リアルタイムで自己位置の推定と環境地図21の作成とを行うSLAM(Simultaneous Localization and Mapping)等の技術を用いて、計測部5の計測結果に基づいて、装置本体2の周囲の局所地図を作成すると共に、各位置の局所地図を合成して環境地図21を作成し、この清掃エリアAR1に関連付けて記憶装置に記憶する。または、環境地図21は、清掃エリアAR1のエリアレイアウト20に基づいてプログラム入力することで制御部8によって作成されてもよい。
また、走行経路22は、上記のように設定モードにおいて環境地図21が計測部5の計測結果に基づいて作成されるときに、制御部8によって下記のようにして作成されてもよい。制御部8は、環境地図21と、走行部3の左右一対の前輪3aのエンコーダの検出結果とに基づいて、環境地図21における装置本体2の自己位置(座標)を推定して環境地図21上の走行経路22を作成し、この清掃エリアAR1に関連付けて記憶装置に記憶する。または、走行経路22は、環境地図21に基づいて所定のパターンとなるように制御部8によって自動的に作成されてもよい。例えば、この所定のパターンとして、環境地図21の長手方向に向かって一定距離オフセットしながら往復走行を繰り返すパターンや、壁WAから一定距離オフセットしながら往復走行を繰り返すパターンがある。
また、走行部3の走行設定および清掃部4の清掃設定は、設定モードでの動作時の設定が制御部8によって清掃エリアAR1に関連付けられて記憶装置に記憶されてもよい。
更に、制御部8は、計測部5によって検知される清掃エリアAR1内の静止物や移動物M等の非作業対象を回避するように走行部3や清掃部4の機能を制限する回避動作を制御する。また、制御部8の記憶装置は、施設FAの清掃エリアAR1および周辺エリアAR2の周囲情報を記憶していて、この周囲情報に基づいて清掃エリアAR1および周辺エリアAR2の利用者の行動を予測して、その行動を妨げないように走行部3や清掃部4の機能を制限する予測動作を制御する。記憶装置は、例えば、図2に示す管理サーバ101が管理する周囲情報と同等のデータを記憶する。自律走行作業装置1の回避動作および予測動作については後述する。
操作表示部9は、装置本体2の後上面に設けられ、図5に示すように、メインスイッチ31と、緊急停止ボタン32と、タッチパネル33(表示部)とを備え、操作表示部9の各部は、制御部8に接続されている。操作表示部9は、装置本体2に取り付けられる操作表示パネル等で構成されてもよく、装置本体2に対して着脱可能に装着されるタブレット端末等で構成されてもよい。なお、タブレット端末等で構成される操作表示部9は、ビルトインで取り付けられてもよく、また、無線通信部10を介して制御部8と接続され、これにより自律走行作業装置1を遠隔操作可能となる。
メインスイッチ31は、オン、オフを切換可能に構成されている。メインスイッチ31をオンに切り換えることで、電源部11から各部に電力が供給されて自律走行作業装置1が稼働する一方、メインスイッチ31をオフに切り換えることで、電源部11から各部への電力供給が停止されて自律走行作業装置1の稼働が停止する。緊急停止ボタン32は、操作されることで、自律走行作業装置1の各部の動作(特に、自律走行)を強制的に停止し、電源部11から各部への電力供給も強制的に停止する(図5参照)。
タッチパネル33は、制御部8からの制御信号に応じて様々な画面を表示し、各画面でのタッチ操作に基づく操作信号を制御部8へと送信する。タッチパネル33で表示される各画面の詳細については後述する。
無線通信部10は、制御部8からの制御信号に基づいて、タブレット端末等の操作表示部9や外部機器と、Wi-Fi等の無線LANやBluetooth等の通信規格によって無線通信を行う。例えば、無線通信部10は、制御部8からタブレット端末の操作表示部9への各画面を表示させる制御信号の送信や、タブレット端末の操作表示部9から制御部8への操作信号の受信を行う。また、無線通信部10は、無線基地局103と無線通信することで管理サーバ101と接続し、自動操作情報に関するデータや周囲情報を取得することができる。
電源部11は、装置本体2内部に搭載されたバッテリー(電源)および充電回路を備え、外部電源に接続することでバッテリーが充電され、また、自律走行作業装置1の各部へと電力を供給する。
次に、本実施形態の自律走行作業装置1の各動作モードでの自律走行清掃の動作について図5~図6等を参照しながら説明する。所定の清掃エリアAR1の清掃を行うために自律走行作業装置1が稼働すると、制御部8は、図5に示すメニュー画面35をタッチパネル33に表示する。
メニュー画面35には、動作モードの切換ボタンとして、自動モードボタン35aおよび設定モードボタン35bがタッチ操作可能に表示される。自律走行作業装置1の動作モードは、自動モードボタン35aが操作されることで自動モードに切り換えられ、設定モードボタン35bが操作されることで設定モードに切り換えられる。更に、図示しないが、手動操作モードボタンや遠隔操作モードボタンが操作されることで、設定モードから手動操作モードや遠隔操作モードに切り替えられても良い。
自律走行作業装置1の自動モードの動作について説明する。制御部8は、メニュー画面35の自動モードボタン35aが操作されて自動モードが設定されると、メニュー画面35に代えて、自動清掃を実施すべきエリアを選択できる図6に示すようなエリア選択画面37をタッチパネル33に表示する。
エリア選択画面37には、制御部8の記憶装置に記憶された1つ以上の清掃エリアAR1の自動操作情報毎にエリアキー37aが選択可能に表示される。更に、エリア選択画面37には、施設欄37bとエリア欄37cとが設けられ、エリアキー37aは、共通する施設情報毎に施設欄37bに区分されると共に、施設欄37bに対応するエリア欄37cに一覧表示される。エリア選択画面37に表示された何れかのエリアキー37aを選択すると、選択したエリアキー37aに対応する自動操作情報が、自律走行清掃の対象の自動操作情報として選択される。
また、エリア選択画面37には、メニューボタン37dがタッチ操作可能に表示され、メニューボタン37dが操作されると、自動モードが終了して自律走行作業装置1の動作モードはオフ状態となり、制御部8は、エリア選択画面37に代えてメニュー画面35をタッチパネル33に表示する。
更に、エリア選択画面37には、自動選択ボタン37eがタッチ操作可能に表示され、自動選択ボタン37eが操作されると、制御部8は、撮像部6による自律走行作業装置1の周囲画像に基づいて、清掃エリアAR1の施設情報(ホテルや病院、新館や別館等の名称)やエリア情報(フロア表示D1や部屋番号D2)等の清掃エリアAR1の種類に関する文字表記を検出する。そして、制御部8は、清掃エリアAR1の種類に関する文字表記を検出すると、その清掃エリアAR1に対応する自動操作情報(エリアレイアウト20、環境地図21、走行経路22、走行設定および清掃設定)を、自律走行清掃の対象の自動操作情報として選択する。
制御部8は、上記のようにして選択された自動操作情報を記憶装置から読み出し、その自動操作情報に基づいて走行部3および清掃部4を制御して自律走行清掃を行う。自律走行清掃は、走行経路22の開始位置P1から開始される。自律走行清掃では、タッチパネル33に図4に示すようなエリアレイアウト20、環境地図21および走行経路22を表示してもよい。また、制御部8は、この自律走行清掃を行う際に、清掃エリアAR1の環境地図21、走行経路22、走行設定および清掃設定を新たに作成して、以前の自動操作情報を更新して記憶装置に記憶してもよい。なお、自律走行清掃では、後述の回避動作や予測動作が行われる。
自律走行作業装置1の設定モードの動作について説明する。制御部8は、メニュー画面35の設定モードボタン35bが操作されて設定モードが設定されると、メニュー画面35に代えて設定開始画面(図示せず)をタッチパネル33に表示する。設定開始画面では、上記したような自動操作情報の新規作成モードと修正モードとを選択可能である。
設定開始画面において新規作成モードが設定された場合、手動操作部による手動操作やタブレット端末等の操作表示部9による遠隔操作によって、自律走行作業装置1の走行操作が可能となる。そして、制御部8は、この走行操作に基づいて清掃エリアAR1の環境地図21を作成して記憶装置に記憶する。また、制御部8は、上記したように、作成した環境地図21に基づいて自動的に走行経路22を作成し、あるいは、環境地図21の作成時の走行部3のデータに基づいて自動的に走行経路22を作成して記憶装置に記憶する。なお、新規作成モードにおいても、手動操作モードや遠隔操作モードが選択され設定されても良い。
環境地図21および走行経路22の作成完了後、自律走行作業装置1の走行を停止した状態で、制御部8は、自動操作情報の走行設定や清掃設定を設定可能な詳細設定画面(図示せず)をタッチパネル33に表示する。詳細設定画面では、例えば、環境地図21および走行経路22がタッチパネル33に表示され、表示された走行経路22上で開始位置P1および停止位置P2を設定することができる。また、詳細設定画面では、表示された走行経路22上の各位置での走行設定や清掃設定を設定することができる。このとき、詳細設定画面では、走行部3の前進、後退、旋回等に関する左右一対の前輪3aのモータの作動状態を設定可能なボタンや作動状態を示す表示器を表示する。また、詳細設定画面では、清掃部4のブラシモータやブロアの作動状態を設定可能なボタンや作動状態を示す表示器を表示する。
そして、制御部8は、上記のようにして作成された環境地図21および走行経路22、並びに詳細設定画面上で設定された走行設定および清掃設定を含む自動操作情報を清掃エリアAR1に関連付けて記憶装置に記憶する。また、制御部8は、この新規作成した自動操作情報を、自律走行清掃の対象の自動操作情報として選択する。自動操作情報の選択以降の動作は、自動モードと同様である。
また、設定開始画面において修正モードが設定された場合、修正対象の清掃エリアAR1および自動操作情報を選択するために、制御部8は、エリア選択画面37と同様の修正エリア選択画面(図示せず)をタッチパネル33に表示する。修正エリア選択画面では、制御部8の記憶装置に記憶された1つ以上の清掃エリアAR1が選択可能に表示される。制御部8は、修正エリア選択画面で選択された清掃エリアAR1の自動操作情報を修正対象とし、この自動操作情報の環境地図21、走行経路22、走行設定および清掃設定を修正可能な情報修正画面(図示せず)をタッチパネル33に表示する。
情報修正画面では、詳細設定画面と同様にして、環境地図21および走行経路22、並びに走行経路22上の開始位置P1および停止位置P2が、タッチパネル33に修正可能に表示される。また、情報修正画面では、詳細設定画面と同様にして、表示された走行経路22上の各位置での走行設定や清掃設定を修正することができる。
そして、制御部8は、詳細設定画面上で修正された環境地図21および走行経路22、並びに走行設定および清掃設定を含む自動操作情報を上書きして記憶装置に記憶する。また、制御部8は、情報修正画面で修正された自動操作情報を、自律走行清掃の対象の自動操作情報として選択する。自動操作情報の選択以降の動作は、自動モードと同様である。
次に、自律走行作業装置1の自律走行清掃の実行中の回避動作について図7、図11を参照しながら説明する。図11において、白抜き矢印の太さは走行設定および清掃設定の強度を示している。
図7に示すように、自律走行作業装置1の制御部8は、計測部5の計測結果に基づいて、清掃エリアAR1内の走行経路22上の静止物が検知されると(ステップS1:Yes)、静止物から所定の安全距離を離しつつ走行経路22に沿って走行するように走行部3を制御する(ステップS2)。このとき、制御部8は、走行部3の走行速度の走行設定や清掃部4の清掃設定を変更することなく、走行部3の自律走行および清掃部4の自動清掃を制御する。これにより、自律走行作業装置1は、清掃を優先して走行速度を落とさず静止物を回避して、清掃エリアAR1を短時間で清掃することができる。
また、自律走行作業装置1の制御部8は、計測部5の計測結果に基づいて、図11(1)に示すように、清掃エリアAR1内で自律走行作業装置1に接近する移動物M(非作業対象の変化)が検知されると(ステップS3:Yes)、清掃作業(ブラシモータの回転やブロアの吸引)を停止するように清掃部4を制御する(ステップS4)。また、制御部8は、自律走行作業装置1の回避を開始する走行経路22上の位置を回避開始位置として記憶しておくと共に、計測部5の計測結果から作成される局所地図における自律走行作業装置1の位置に基づいて、移動物Mの清掃エリアAR1内の進行や進入を妨げない回避位置として自律走行作業装置1から最も近い壁WAを検出する(ステップS4)。なお、最も近い壁WAは、各部屋ROのドアDOや、階段ST1、非常階段ST2およびエレベータEV等の出入口を避けて選択される。このとき、制御部8は、エリアレイアウト20や環境地図21を利用してもよい。
そして、制御部8は、図11(2)に示すように、検出した最も近い壁WA側まで自律走行作業装置1を移動するように走行部3を制御する(ステップS5)。更に、制御部8は、図11(3)に示すように、壁WA側に移動させた自律走行作業装置1が移動物Mの検知を継続できる通路PA側(移動物M側)の向き(計測部5の障害物センサ5aが清掃エリアAR1を向く方向)まで旋回して停止するように走行部3を制御する(ステップS5)。なお、自律走行作業装置1の壁WA側への移動および旋回は、計測部5の計測結果に基づいて、周囲の非作業対象との衝突を回避しながら行われる。
自律走行作業装置1を壁WA側で停止させた後も、制御部8は、計測部5によって移動物Mの検知を継続していて、移動物Mが自律走行作業装置1を通過して検知されなくなってから所定時間経過した後(ステップS6:Yes)、制御部8は、走行経路22上の回避開始位置まで自律走行作業装置1を移動するように走行部3を制御した後、自律走行作業を再開するように走行部3および清掃部4を制御する(ステップS7)。
なお、上記では、制御部8が移動物Mの清掃エリアAR1内の進行や進入を妨げない回避位置として自律走行作業装置1から最も近い壁WAを検出する例を説明したが、回避位置はこれに限定されない。例えば、制御部8は、計測部5の計測結果から推定して算出される局所地図上の移動物Mの位置および走行方向に基づいて移動物Mの移動経路を推定して算出し、移動物Mの移動経路から遠い側の壁WAを推定して回避位置として検出してもよい。そして、制御部8は、上記と同様にして、回避位置まで自律走行作業装置1を移動するように走行部3を制御する。
次に、自律走行作業装置1の自律走行清掃の実行中の予測動作について図7~図10、図12~図13を参照しながら説明する。
図7に示すように、自律走行作業装置1の制御部8は、清掃エリアAR1内の静止物や移動物M等の非作業対象が検知されずに回避動作を行わない場合(ステップS3:No)、予測動作を行う。
予測動作では、図8に示すように、制御部8は、周囲情報を無線通信部10によって無線基地局103を介して管理サーバ101から受信して記憶装置に記憶していて、周囲情報が更新されたか否かを所定間隔(例えば、1秒)で随時監視している(ステップS11)。そして、周囲情報が更新された場合(ステップS11:Yes)、制御部8は、周囲情報の種類に応じた予測動作を行う。
更新された周囲情報が緊急情報であって、自律走行作業装置1の稼働している階に向けた全館緊急情報またはフロア別緊急情報である場合(ステップS12:Yes)、その階の利用者が清掃エリアAR1を移動することが予測される。そこで、制御部8は、上記のステップS2~S3と同様にして、図12(1)に示すように、自律走行作業装置1の清掃作業を停止すると共に、利用者等の非作業対象の清掃エリアAR1内の進行や進入を妨げない回避位置P3(例えば、最も近い壁WA側の回避位置P3)に自律走行作業装置1を移動させるように走行部3および清掃部4を制御する(ステップS13~S14)。
その後、緊急情報を示す周囲情報が更新されてその緊急事態が解除された場合(ステップS15:Yes)、制御部8は、上記のステップS5と同様にして、自律走行作業装置1の自律走行作業を再開するように走行部3および清掃部4を制御する(ステップS16)。
一方、更新された周囲情報が緊急情報でない場合(ステップS12:No)、即ち、更新された周囲情報が所定の部屋ROの部屋状況センサ(ドアロックセンサ110やルームカードセンサ111)の検知情報や所定の共用部の共用部センサ(ホール用人感センサ112)の検知情報である場合、制御部8は、検知情報に基づいて、利用者の清掃エリアAR1への進入を予測する動作に移行する。
検知情報に基づく進入予測では、図9に示すように、制御部8は、更新された検知情報を送信した部屋状況センサや共用部センサ等のセンサ位置に基づいて、利用者の進入予測位置を検出する(ステップS21)。
例えば、所定の部屋ROについて、ドアロックセンサ110の検知情報がオンからオフに更新された後、ルームカードセンサ111の検知情報がオフからオンに更新された場合、その部屋ROへの利用者の入室が予測される。これに対して、ルームカードセンサ111の検知情報がオンからオフに更新された後、ドアロックセンサ110の検知情報がオンからオフに更新された場合、図12(2)に示すように、その部屋ROからの利用者の退室が予測され、換言すれば、その部屋ROから清掃エリアAR1への利用者の進入が予測される。そこで、制御部8は、エリアレイアウト20や環境地図21に基づいてその部屋ROのドアDOの位置を進入予測位置として検出する。
また、エレベータEVのエレベータホールHAのホール用人感センサ112の検知情報がオンからオフに更新された場合、図12(3)に示すように、清掃エリアAR1において自律走行作業装置1の死角にあるエレベータホールHAから自律走行作業装置1の進行方向への利用者の進入が予測される。そこで、制御部8は、エリアレイアウト20や環境地図21に基づいて、清掃エリアAR1においてそのエレベータホールHAから最も近い位置を進入予測位置として検出する。
また、制御部8は、自律走行作業装置1が進入予測位置に向かって走行しているかを判定し(ステップS22)、図12(2)や図12(3)に示すように、自律走行作業装置1が進入予測位置に向かって走行している場合(ステップS22:Yes)、計測部5の計測結果およびエリアレイアウト20や環境地図21に基づいて、装置本体2と進入予測位置との距離を算出する(ステップS23)。
そして、制御部8は、その算出結果が所定の第1設定距離(例えば、5m)以下になると(ステップS24:Yes)、減速するように走行部3を制御すると共に清掃作業の強度を弱めるように清掃部4を制御する(ステップS25)。
更に、制御部8は、装置本体2と進入予測位置との距離が第1設定距離よりも短い第2設定距離(例えば、1m)以下になると(ステップS26:Yes)、進入予測位置を回避しながら走行を継続するように走行部3を制御する(ステップS27)。なお、ステップS27の回避は、ステップS4~ステップS7の移動物の検知による回避と同様であってもよい。
その後、制御部8は、装置本体2が進入予測位置を通り過ぎて装置本体2と進入予測位置との距離が第1設定距離を超えると(ステップS28:Yes)、制御部8は、走行部3の走行設定および清掃部4の清掃設定を元に戻し、更に、消音部7を停止する(ステップS29)。
あるいは、制御部8は、装置本体2と進入予測位置との距離が第2設定距離以下の場合に、進入予測位置の回避に代えて、上記のステップS2~S3と同様にして、自律走行作業装置1の清掃作業を停止すると共に、利用者等の非作業対象の清掃エリアAR1内の進行や進入を妨げない回避位置(例えば、最も近い壁WA側の回避位置)に自律走行作業装置1を移動させるように走行部3および清掃部4を制御してもよい。この場合、自律走行作業装置1を停止してから所定時間(例えば、30秒)経過後に、制御部8は、上記のステップS5と同様にして、自律走行作業装置1の自律走行作業を再開するように走行部3および清掃部4を制御する。
なお、上記の進入予測位置は、検出してから所定時間(例えば、30秒)経過後には解除されてよい。また、進入予測位置が検出されていても、計測部5によって清掃エリアAR1内の静止物や移動物M等の非作業対象が検知された場合には、上記の回避動作を優先してよい。
また、制御部8は、周囲情報が更新されていない場合(図8のステップS11:No)、所定の部屋ROの部屋状況センサ(ドアロックセンサ110やルームカードセンサ111)の検知情報である周囲情報に基づいて、その部屋ROの利用者の在室を判定する動作に移行する。
検知情報に基づく在室判定では、図10に示すように、周囲情報の更新に拘らず、部屋状況センサが在室を検知している場合(ステップS31:Yes)、例えば、所定の部屋ROのルームカードセンサ111の検知信号がオンである間は、その部屋ROの利用者の在室が判定される。そこで、制御部8は、エリアレイアウト20や環境地図21に基づいて、各部屋ROの壁情報(通路PA側の部屋範囲)を検出し、各部屋ROの検知信号および壁情報に基づいて、自律走行作業装置1が在室中の部屋ROに向かって走行しているかを判定する(ステップS32)。例えば、図13(1)および図13(2)では、自律走行作業装置1が、303号室から309号室までの複数の部屋ROに隣接する通路PAを清掃エリアAR1として自律走行清掃を行っている例を示す。この例では、複数の部屋ROの壁情報(303壁~309壁)に基づいて、304号室および309号室の部屋ROが在室中である。なお、図13(1)および図13(2)に図示される○は、各部屋ROの部屋範囲の始点および終点を示す。
そして、制御部8は、自律走行作業装置1が在室中の部屋ROに向かって走行している場合(ステップS32:Yes)、計測部5の計測結果に基づいて装置本体2とその部屋ROの部屋範囲との距離を算出する(ステップS33)。
更に、制御部8は、その算出結果が所定の第3設定距離(例えば、1m)以下の場合(ステップS34:Yes)、図13(2)に示すように、減速するように走行部3を制御すると共に清掃作業の強度を弱めるように清掃部4を制御し、更に、消音部7を起動する(ステップS35)。
その後、自律走行作業装置1がこの部屋ROを通り過ぎて、装置本体2と部屋ROの部屋範囲との距離が第3設定距離を超えると(ステップS36:Yes)、制御部8は、走行部3の走行設定および清掃部4の清掃設定を元に戻し、更に、消音部7を停止する(ステップS37)。
上記のような自律走行清掃は、自律走行作業装置1が走行経路22の停止位置P2に到達するまで継続され、自律走行作業装置1が走行経路22の停止位置P2に到達すると(ステップS8:Yes)、制御部8は、自律走行清掃を終了するように走行部3および清掃部4を制御する。
上述のように、本実施形態によれば、事前に入力されたプログラムに従って自律的に走行し自動で作業する自律走行作業を実行可能な自律走行作業装置1は、装置本体2と、装置本体2を清掃エリアAR1(作業エリア)内で走行させる走行部3と、装置本体2の清掃エリアAR1内の走行経路22上で清掃(作業)を行う清掃部4(作業部)と、装置本体2とこの装置本体2の周囲の非作業対象との位置関係を計測する計測部5と、清掃エリアAR1および/またはその周辺エリアAR2の周囲情報を、所定の無線通信によって管理サーバ101等の所定の外部機器から受信する無線通信部10と、走行部3および清掃部4を制御する制御部8とを備える。そして、制御部8は、計測部5の計測結果に基づいて清掃エリアAR1内の利用者等の非作業対象の変化を検知できない場合でも、周囲情報に基づいて清掃エリアAR1および/または周辺エリアAR2の利用者の行動を予測して、利用者の行動を妨げないように走行部3および清掃部4の少なくとも一方の動作を制限する。
このような構成により、本実施形態に係る自律走行作業装置1では、清掃エリアAR1や周辺エリアAR2の周囲情報を利用することによって、計測部5によって清掃エリアAR1内の利用者を検知できない場合でも、清掃エリアAR1や周辺エリアAR2の広範囲に亘って利用者の行動を予測することができる。これにより、自律走行作業装置1は、利用者の施設FAの利用状況を判断して、利用者の行動を妨げないように、前もって、走行部3の走行設定や清掃部4の清掃設定を下げたり、走行や清掃作業を停止したりすることができる。このようにして、利用者の往来の優先や騒音の抑制を事前に行いながら、安全性を高めて自律走行作業をすることができる。
また、本実施形態では、制御部8は、周囲情報の更新に基づいて、利用者の行動として清掃エリアAR1への進入や清掃エリアAR1内の死角から装置本体2の進行方向への進入を予測する。
このような構成により、自律走行作業装置1は、自律走行清掃の実行中に周囲情報が更新されても、周囲情報の更新に随時対応することができる。従って、自律走行作業装置1は、利用者の施設FAの利用状況の変化に合わせて、より高い清掃効率を保つことができる。また、計測部5によって利用者を検知できない場合でも、利用者の清掃エリアAR1への進入を予測するので、清掃エリアAR1に急に進入した利用者との衝突等の危険を回避できるような自律走行清掃を前もって行うことができる。従って、自律走行作業装置1は、衝突回避の安全性をより高めることができる。
また、本実施形態では、制御部8は、周囲情報として、利用者に向けて移動を促す緊急情報を用いて、利用者の清掃エリアAR1への進入や清掃エリアAR1内の死角から装置本体2の進行方向への進入を予測する。
このような構成により、自律走行作業装置1は、施設FAにおいて緊急事態が発生して多くの利用者の移動が予測される場合には、計測部5によって利用者を検知していなくても、利用者との衝突等の危険を回避できるような自律走行清掃を前もって行うことができる。従って、自律走行作業装置1は、緊急事態発生時の衝突回避の安全性をより高めることができる。
また、本実施形態では、制御部8は、周囲情報としての緊急情報によって利用者の清掃エリアAR1への進入や清掃エリアAR1内の死角から装置本体2の進行方向への進入が予測される場合、計測部5の計測結果に基づいて利用者の進入を妨げない回避位置P3を検出し、回避位置P3まで装置本体2を移動させて停止するように走行部3を制御すると共に、清掃作業を停止するように清掃部4を制御する。
このような構成により、自律走行作業装置1は、清掃エリアAR1を往来する人や台車に対して、前もって移動して道を開ける(道を譲る)ことで往来の邪魔にならないようにしている。例えば、病院や老人ホーム等の清掃エリアAR1では、壁WA伝いに歩く患者や老人の移動を妨げることなく適切に回避することができる。更に、ナースコールや救急患者の搬送に伴う作業エリアでの人やストレッチャー、台車等の急な移動にも対応できる。そのため、人や台車の往来の妨害に起因する不快感を低減し、人や台車の往来の安全性を向上しながら、自律走行および自動清掃を行うことができる。
また、本実施形態では、制御部8は、周囲情報として、周辺エリアAR2の部屋ROに設けられると共に管理サーバ101に接続されていてこの部屋ROの利用状況を検知する部屋状況センサ(ドアロックセンサ110やルームカードセンサ111)の検知情報、および/または清掃エリアAR1および/または周辺エリアAR2のエレベータホールHA等の共用部に設けられると共に管理サーバ101に接続されていて共用部における利用者の存在を検知する共用部センサ(ホール用人感センサ112)の検知情報を用いて、利用者の清掃エリアAR1への進入や清掃エリアAR1内の死角から装置本体2の進行方向への進入を予測する。
このような構成により、自律走行作業装置1は、施設FAに備わる部屋状況センサや共用部センサを利用して、施設FAの様々な場所での利用者の利用状況を認識することができる。そして、部屋ROから退室しようとする利用者や、自律走行作業装置1から見通しの悪い場所にいる利用者、その他の外部から清掃エリアAR1へ進入する利用者を、計測部5によって検知できない場合でも、利用者との衝突等の危険を回避できるような自律走行清掃を前もって行うことができる。従って、自律走行作業装置1は、施設FAの様々な場所の利用者の利用状況に合わせて、衝突回避の安全性をより高めることができる。また、利用者の進入が予測されない場所では、通常の自律走行清掃を維持するので、走行部3や清掃部4の機能を不要に制限することがなく、清掃効率を良好に維持することができる。
また、本実施形態では、制御部8は、周囲情報としての検知情報によって利用者の清掃エリアAR1への進入や清掃エリアAR1内の死角から装置本体2の進行方向への進入が予測される場合、検知情報に基づいて利用者の清掃エリアAR1への進入予測位置を検出し、計測部5の計測結果に基づいて、装置本体2と進入予測位置との距離を算出する。そして、制御部8は、その算出結果が所定の第1設定距離以下の場合には、減速するように走行部3を制御すると共に清掃作業の強度を弱めるように清掃部4を制御する。更に、制御部8は、算出結果が第1設定距離よりも短い所定の第2設定距離以下の場合には、進入予測位置を回避するように走行部3を制御する。
このような構成により、自律走行作業装置1は、利用者との衝突等の危険をより確実に回避できるような自律走行清掃を前もって行うことができる。
また、本実施形態では、制御部8は、周囲情報に基づいて、利用者の行動として周辺エリアAR2の部屋ROの在室を判定する。
このような構成により、自律走行作業装置1は、部屋ROに在室している利用者を、計測部5によって検知できない場合でも、その利用者に対する騒音等の不快感を低減できるような自律走行清掃を前もって行うことができる。従って、自律走行作業装置1は、清掃エリアAR1だけでなく、部屋RO等の周辺エリアAR2にいる利用者に対して、自律走行清掃に起因する騒音等の不快感を低減することができる。
また、本実施形態では、制御部8は、周囲情報として、部屋ROに設けられると共に管理サーバ101に接続されていて部屋ROの利用状況を検知する部屋状況センサ(ドアロックセンサ110やルームカードセンサ111)の検知情報を用いて、利用者の部屋ROからの退室を予測する。
このような構成により、自律走行作業装置1は、施設FAに備わる部屋状況センサを利用する簡易な構成で、部屋ROからの利用者の退室をより確実に認識することができる。
また、本実施形態では、自律走行作業装置1は、清掃部4の清掃作業によって生じる騒音を消音する消音部7を更に備える。制御部8は、周囲情報としての検知情報によって利用者の部屋ROの在室が判定される場合、部屋ROの部屋範囲を検出し、計測部5の計測結果に基づいて、装置本体2と部屋範囲との距離を算出する。そして、制御部8は、その算出結果が所定の第3設定距離以下の場合には、減速するように走行部3を制御すると共に清掃作業の強度を弱めるように清掃部4を制御し、更に、消音部7を起動する。
このような構成により、自律走行作業装置1は、清掃作業を停止させることなく、簡易な構成で清掃部4の騒音を消音することができる。そして、部屋RO等の周辺エリアAR2にいる利用者に対して、自律走行清掃に起因する騒音等の不快感をより確実に低減することができる。また、自律走行や自動清掃に伴う騒音の不快感を低減しながら、自律走行および自動清掃を行うことができる。
また、本実施形態では、自律走行作業システム100は、上記したような自律走行作業装置1と、清掃エリアAR1を有する施設FAに設けられた管理サーバ101と、清掃エリアAR1に設けられると共に管理サーバ101に接続されていて、清掃エリアAR1における自律走行作業装置1と無線通信可能な無線基地局103と、を備える。
このような構成により、自律走行作業システム100は、自律走行作業装置1が清掃エリアAR1の何れの位置にある場合でも、無線基地局103によって、管理サーバ101からの周囲情報を自律走行作業装置1に対して確実に送信することができる。従って、自律走行作業装置1は、常に最新の周囲情報に基づいて、清掃エリアAR1や周辺エリアAR2の利用者の行動を予測することができ、換言すれば、リアルタイムに利用者の施設FAの利用状況を認識することができる。そのため、自律走行作業システム100は、清掃効率を高いレベルで維持しつつ、利用者の行動を妨げることのない安全な自律走行清掃を提供することができる。
上記した本実施形態では、計測部5の検知結果に基づいて、清掃エリアAR1内で回避すべき静止物や移動物M等の非作業対象を検知する例を説明したが、この例に限定されず、例えば、撮像部6で撮像した周囲画像に基づいて非作業対象を検知してもよい。また、上記した本実施形態では、予測動作において、計測部5の検知結果に基づいて、装置本体2と利用者の進入予測位置との距離や、装置本体2と部屋ROの部屋範囲との距離を算出する例を説明したが、この例に限定されず、例えば、撮像部6で撮像した周囲画像に基づいて、これらの距離を算出してもよい。
上記した本実施形態では、清掃部4が乾式の清掃機構で構成される例を説明したが、清掃部4は、この例に限定されず、湿式の清掃機構で構成されてもよい。
また、本発明は、請求の範囲および明細書全体から読み取ることのできる発明の要旨または思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、そのような変更を伴う自律走行作業装置もまた本発明の技術思想に含まれる。