JP7011316B2 - 加熱脱気装置 - Google Patents
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前記撹拌部は、螺旋状スクリューと、前記螺旋状スクリューを回転させる回転駆動部とを備え、
前記螺旋状スクリューは、回転軸と、前記回転軸の周囲に螺旋状に一回転以上連続して巻回された羽根と、を有することを特徴とする。
(1)上記従来構造の撹拌部に比べて、羽根が螺旋状に少なくとも一回転以上連続して巻回されているので、羽根の総面積が大きく、羽根が一回転したときに押しのける液量が多くなり、押しのけた後にできる陰圧空間が大きい。液中の陰圧空間は、当該陰圧空間の局所的な飽和溶存気体濃度を低下させるから、液中において溶存気体の気化を促進できる。
(2)羽根が螺旋状に少なくとも一回転以上連続して巻回されているので、上記従来構造の羽根に比べて羽根の存在する部分が回転軸方向に長い。そうすると、従来構造の羽根に比べて広範囲に接液することになり、液量にかかわらず、溶存気体の気化が容易となって、液層から気層への移動を促進できる。
上記(1)、(2)に示した脱気効果により、試験液から飽和溶存気体濃度を超過した溶存気体を除去する時間を短くし、試験液を加熱・撹拌した後に減圧脱気等の他の脱気方法を併用することなく所望の溶存気体濃度以下の試験液を得ることができる。
前記加熱部と前記羽根の少なくとも一部とを浸漬させる量の試験液を注入し、試験液を加熱及び撹拌できるようにする。そして、上記(1)、(2)に示した脱気効果により、試験液から飽和溶存気体濃度を超過した溶存気体を除去する時間を短くし、試験液を加熱・撹拌した後に減圧脱気等の他の脱気方法を併用することなく所望の溶存気体濃度以下の試験液を得ることができる。
また、前記羽根における回転軸方向の先端から前記試験液の液面までの長さが、前記回転軸の軸中心線を延長した位置における前記容器の内側底面から前記液面までの長さに対して50%以上となるように、液を注入すると、脱気を効果的に行うことができる。
なお、本発明の加熱脱気方法は、前記試験液を加熱及び攪拌した後に、試験液を減圧して脱気する工程を含まない。
(1)上記従来構造の撹拌部の羽根に比べて羽根415が螺旋状に少なくとも一回転以上連続して巻回されているので、羽根415の総面積が大きく、(2)羽根415が螺旋状に少なくとも一回転以上連続して巻回されているので、上記従来構造の羽根に比べて羽根の存在する部分が回転軸方向に長い。
なお、図1及び図2に示す実施形態において羽根415は9回以上連続して巻回されているが、一回転以上連続して巻回された羽根を少なくとも一つ有するのであれば、上記二つの作用を得ることができる。もちろん、羽根415が巻回される回数が2回以上であれば、上記二つの作用が強まり、更に巻回回数が3回以上、4回以上、5回以上、6回以上、7回以上と大きくなるほど、上記二つの作用が強まり好ましい。
本実施形態において、限界最低液面高さSmin及び好適最低液面高さSfilを別個に定めているが、これに限定されない。例えば、いずれか一方のみを定めてもよいし、両方とも定めなくてもよい。
7≦A≦10(cm2/L)
600≦n≦1200(rpm)
である場合、所望の脱気効果が得られる。(上記単位中、「L」は「リットル」を表す。以下で使用される単位中の「L」も、同様である。)接液面積Aと回転速度nが上記範囲を下回ると十分な脱気効果が得られず、上記範囲を上回ると、撹拌効果が大きすぎて液体が暴れるような挙動を示し、液体の制御が難しくなる。
そして、単位液量あたりの羽根415の接液面積Aは、図2(a)に示した、羽根415のピッチP、回転軸42の半径r1、羽根415の半径(回転軸42の中心軸から羽根最外端までの距離)r2によって左右されるが、
20≦P≦50(mm)
5≦r1≦7.5(mm)
10≦r2≦25(mm)
であると好ましい。
容器6が密閉状態であると、試験液の加熱により容器6内の圧力が高まって試験液の飽和溶存気体濃度が上昇する。そのため、飽和溶存気体濃度の差を利用した脱気効果が得られない。一方、加熱脱気終了後、第1制御モードから第2制御モードに切りかわって試験液1の温度が低下するとき、容器6の気密性が乏しいと、外部の空気が絶えず流入して試験液に再溶解しやすくなるために、試験液の温度が低下するにつれて脱気効果が維持できなくなる。そのため、気層の空気成分の一部が容器外へ流出でき、容器外から容器内への流入を妨げる逆止弁を設けることで、容器内の圧力の上昇を防ぎ、気層中の空気成分が試験液に再溶解しないようにする。
試験液は、水以外に、製剤の溶出試験や崩壊試験等に用いる試験液、例えば人工の胃液や腸液等の電解液がそれに当たるが、それに限らない。製剤は、医薬品に限らず、健康食品やサプリメント等、人や動物が摂取する物である。また、固形製剤に限らず、粉末剤やカプセル剤、湿布剤でもよい。その他、製剤の試験に用いる試験液のみならず、土壌検査や水質検査を含む環境計測用の試験検査液等、製剤の試験以外の脱気が必要な試験検査液にも使用できる。
容器2は、例えば中密度のポリエチレン製とし、螺旋状スクリュー41は、例えば樹脂製とし、加熱部3は金属、例えばチタンや耐蝕性の高いSUS316L等を使用するとよい。これらの部材は、試験液に人工胃液や腸液といった強酸や塩化物イオンが用いられる場合には、当該物質に対する耐蝕性を示す材料であれば、特に限定されない。
容器2の下部には水栓12が取り付けられている。水栓12を使用することで、容器2を傾けたり、又は、ポンプ等の動力を使用したりすることなく、脱気済みの液を、新たに空気を溶解させないよう静かに取り出すことができる。
A、B、Cの三種類の加熱脱気装置を用いて、25℃の水25Lを、60分かけて45℃まで加熱し、水に含まれる溶存酸素濃度の目標値6mg/L(約6ppm)を下回るまで脱気する。目標値を6mg/Lに設定した理由は、6ppmが米国薬局方(USP)において規定される溶出試験用試験液の溶存酸素濃度の上限基準値であることによる。水を45℃まで加熱する理由は、45℃の水の飽和溶存酸素濃度が、目標値6ppmを下回る5.93mg/Lであり、試験液中に溶存する溶存酸素量を飽和溶存酸素濃度の超過分だけ減少させることで目標値に到達し得る温度であるためである。
図5をみると、加熱脱気装置Aにおける60分後45℃の水の溶存酸素濃度は7.1mg/Lであり、加熱脱気装置Bにおける60分後45℃の水の溶存酸素濃度は6.74mg/Lである。つまり、加熱脱気装置A、Bは、加熱開始後60分が経過し、水が45℃に到達しても、45℃における飽和溶存酸素濃度5.93mg/Lまで溶存酸素濃度が低下せず、水は過飽和状態にある。そして、加熱脱気装置A、Bは、加熱開始後180分が経過しても過飽和状態は解消せず、目標値の6ppm以下を満たさない。よって、目標値の6ppm以下を満たすためには、通常、他の脱気方法を併用することを要する。
それに対し、加熱脱気装置Cは、水の加熱による飽和溶存酸素濃度の低下に伴って、過飽和を生じることなく溶存酸素濃度が低下しているとみられ、加熱開始後60分で45℃に到達したとき、溶存酸素濃度は、45℃の飽和溶存酸素濃度である5.93mg/Lよりも低い値に低下している。よって、溶存酸素濃度の目標値の6ppm以下を満たすから、他の脱気方法を併用することを要しない。また、本実施例では、溶存気体濃度として、計測が簡便であり、米国薬局方で規定されている溶存酸素濃度を測定しているが、酸素以外の気体の濃度を測定してもよい。空気成分である窒素等の他の気体の濃度についても、酸素濃度と同様の傾向を示すものと考えられる。
図6は、水25L、5.9ppmの溶存酸素濃度に到達した脱気済み試験液を、40℃に維持して保管したときの溶存酸素濃度の変化を計測した図である。図中、「逆止弁あり」は、逆止弁の有する蓋を装着した容器を備える、図1の加熱脱気装置を表す。図中、「逆止弁なし」は、蓋をせずに開口を解放した状態の図1の加熱脱気装置を表す。横軸は脱気済み試験液の保管時間(単位:時間)であり、縦軸は、各保管時間が経過したときの溶存酸素濃度計の計測結果(単位:mg/L)である。この図によると、「逆止弁なし」の場合、3時間経過すると、米国薬局方(USP)の基準である6ppm(約6mg/L)以下を満たさなくなるため、再脱気を要するが、「逆止弁あり」の場合、8時間経過しても、6ppm以下を満たしているため、再脱気を要しない。これは、逆止弁を使用することにより、容器外から容器内への空気の移動を妨げて、空気の試験液への再溶解を小さくすることによる。その結果、脱気済みの液を長期保管することができる。
2…容器
3…加熱部
4…撹拌部
5…上部体
6…気層
7…制御部
8…開口部
9…蓋
10…逆止弁
11…水位検知器
115…フロート
12…水栓
13…溶存気体濃度計
21…液面
22…容器内側底面
31…温度計
40…撹拌部
41…螺旋状スクリュー
42…回転軸
43…回転駆動部
100…加熱脱気装置
415…羽根
Claims (8)
- 試験液を溜める容器と、前記試験液を加熱する加熱部と、前記試験液を撹拌する撹拌部と、を備え、真空排気せずに前記試験液を脱気する加熱脱気装置であって、
前記撹拌部は、螺旋状スクリューと、前記螺旋状スクリューを回転させる回転駆動部とを備え、
前記螺旋状スクリューは、回転軸と、前記回転軸の周囲に螺旋状に一回転以上連続して巻回された羽根と、を有し、かつ、揚液管に挿入されていないことを特徴とする、試験液の加熱脱気装置。 - 前記試験液の脱気を効果的に行うことのできる好適最低液面高さが定められており、
前記羽根における回転軸方向の先端から前記好適最低液面高さまでの長さは、前記回転軸の軸中心線を延長した位置における容器の内側底面から前記好適最低液面高さまでの長さに対して50%以上である、請求項1に記載の加熱脱気装置。 - 前記回転駆動部を通じて前記螺旋状スクリューを600~1200(rpm)で回転制御する制御部を備え、
単位液量あたりの前記羽根片面の接液面積が7~10(cm2/L)である、請求項1又は2に記載の加熱脱気装置。 - 前記試験液の温度を検出する温度計と、前記温度計の検出温度と目標値とに基づいて前記加熱部を制御する制御部と、を備え、
前記制御部は、前記試験液を脱気させるための第1制御モードと脱気した前記試験液を一定の温度で保管するための第2制御モードとを備え、前記第1制御モードは、試験液の加熱目標値を第1目標値として加熱制御し、前記第2制御モードは、試験液の加熱目標値を前記第1温度より低い第2目標値として加熱制御し、
前記第1制御モードで所定の時間が経過したとき、前記第1制御モードを前記第2制御モードに切換える、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の加熱脱気装置。 - さらに、前記試験液中の溶存気体濃度を計測する溶存気体濃度計を備え、
溶存気体濃度計の計測値が基準濃度値を下回ったとき、前記第1制御モードを前記第2制御モードに切換える、請求項4に記載の加熱脱気装置。 - さらに、前記容器には、前記容器内部から前記容器外部に気体流出を可能にし、前記容器外部から前記容器内部に気体流入を抑制する、逆止弁が設けられている、請求項1乃至5のいずれか一項に記載の加熱脱気装置。
- 前記容器は、試験液を注入するための開口部と該開口部を塞ぐ蓋とを備えており、前記逆止弁は、前記蓋に設けられている、請求項6に記載の加熱脱気装置。
- 試験液を溜める容器と、前記試験液を加熱する加熱部と、回転軸及び前記回転軸の周囲に螺旋状に一回転以上連続して巻回された羽根で前記試験液を撹拌する撹拌部と、を備え、かつ、前記羽根が挿入される揚液管を備えていない、試験液の加熱脱気装置を用いた、真空排気せずに前記試験液を脱気する前記試験液の加熱脱気方法であって、
前記容器に、前記加熱部と前記羽根の少なくとも一部とを浸漬可能な量の試験液を注入し、
前記容器を真空排気することなく、注入した前記試験液を、加熱及び撹拌することで、前記試験液中の空気成分を脱気することを特徴とする、加熱脱気方法。
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