JP7010470B2 - 静電荷像現像用トナーの製造方法 - Google Patents
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Description
本発明は、カブリの抑制に優れ、且つ、優れた耐熱保存性を示す静電荷像現像用トナーの製造方法に関する。
本発明は、ポリエステル系樹脂粒子の凝集体である凝集粒子を水系媒体内で融着させる工程を含む静電荷像現像用トナーの製造方法であって、
前記融着させる工程において、前記凝集粒子のポリエステル系樹脂のガラス転移温度以上の温度で、且つ、3価以上の金属化合物を添加し、水系媒体内のpHを前記金属化合物の添加前より低下させる、静電荷像現像用トナーの製造方法に関する。
本発明の静電荷像現像用トナー(以下、単に「トナー」ともいう)の製造方法は、ポリエステル系樹脂粒子の凝集体である凝集粒子を水系媒体内で融着させる工程(以下、「融着工程」ともいう)を含む。
そして、融着させる工程において、凝集粒子のポリエステル系樹脂のガラス転移温度以上の温度で、且つ、3価以上の金属化合物を添加し、水系媒体内のpHを金属化合物の添加前より低下させる。
以上の方法により、カブリの抑制に優れ、且つ、優れた耐熱保存性を示すトナーが得られる。
融着工程において水系媒体内のpHを調整し、温度を上昇させて凝集粒子の融着を進行させるが、通常、トナー表面に存在するポリエステル系樹脂のカルボキシ基等の酸性基は大部分が分散のため解離した状態であり表面に酸イオンが多い状態となる。この場合、最終的に得られたトナー表面は親水性となる。一方、融着工程における水系媒体のpHを十分に低下させると最小限の解離したカルボキシ基を残し大部分のカルボキシ基は非解離の状態となるため(-COOH状態)に表面だけでなく、トナー粒子内部へもカルボキシ基が配向した状態となると考えられる。この場合、解離した状態のカルボキシ基と比べ最終的に得られるトナー表面の親水性は低下する結果となる。これにより、周囲の水分の影響が少なく、カブリの抑制に優れ、且つ、優れた耐熱保存性を示すトナーとなると考えられる。
しかしながら、融着工程においてpH調整のために塩酸や硫酸等の一般的な強酸性化合物を用いた場合には、急激なpH変化をもたらし、融着粒子の安定性が急激に低下し融着粒子同士の凝集を引き起こしてしまう。
これに対して、3価以上の金属化合物を用いることで、金属イオンに対する水分子の配位のし易さと、金属イオンによる分極の強さから、金属イオンに対して配位した水分子からプロトンが放出されることで間接的にプロトン濃度が上昇し、融着粒子に対して穏やかなpH変化をもたらすため、融着粒子同士の凝集を抑制することが可能となり、カブリの抑制に優れ、優れた耐熱保存性を示すトナーが得られたものと考えられる。
樹脂が結晶性であるか非晶性であるかについては、結晶性指数により判定される。結晶性指数は、後述する実施例に記載の測定方法における、樹脂の軟化点と吸熱の最大ピーク温度との比(軟化点(℃)/吸熱の最大ピーク温度(℃))で定義される。結晶性樹脂とは、結晶性指数が0.6以上1.4以下のものである。非晶性樹脂とは、結晶性指数が0.6未満又は1.4超のものである。結晶性指数は、原料モノマーの種類及びその比率、並びに反応温度、反応時間、冷却速度等の製造条件により適宜調整することができる。
明細書中、ポリエステル樹脂のカルボン酸成分には、その化合物のみならず、反応中に分解して酸を生成する無水物、及び各カルボン酸のアルキルエステル(アルキル基の炭素数1以上3以下)も含まれる。
本明細書において、「結着樹脂」とは、ポリエステル系樹脂A、ポリエステル系樹脂B及び結晶性ポリエステル樹脂Cを包含するトナー中に含まれる樹脂成分を意味する。
「体積中位粒径D50」とは、体積分率で計算した累積体積頻度が粒径の小さい方から計算して50%になる粒径である。
粒径分布の変動係数(以下、単に「CV値」ともいう)は、下記式で表される値である。下記式における体積平均粒径とは、体積基準で測定された粒径に、その粒径値を持つ粒子の割合を掛け、それにより得られた値を粒子数で除して得られる粒径である。
CV値(%)=[粒径分布の標準偏差(μm)/体積平均粒径(μm)]×100
本発明のトナーの製造方法は、ポリエステル系樹脂粒子の凝集体である凝集粒子を水系媒体内で融着させる工程を含む。当該工程により、物理的に凝集しているポリエステル系樹脂粒子を融着させる。
融着工程において、凝集粒子は、好ましくは、ポリエステル系樹脂Aを含有する樹脂粒子aの凝集体である凝集粒子1、及びその表面に付着したポリエステル系樹脂Bを含有する樹脂粒子bを有する凝集粒子2である。
当該ポリエステル系樹脂A、樹脂粒子a、凝集粒子1、ポリエステル系樹脂B、樹脂粒子b、凝集粒子2については、後ほど詳細に説明する。
凝集粒子は、ポリエステル系樹脂粒子に、凝集剤を添加することで凝集させて得られる。
凝集剤としては、例えば、第四級塩のカチオン性界面活性剤、ポリエチレンイミン等の有機系凝集剤;硫酸ナトリウム、硝酸ナトリウム、塩化ナトリウム、塩化カルシウム、硝酸カルシウム等の無機金属塩;硫酸アンモニウム、塩化アンモニウム、硝酸アンモニウム等の無機アンモニウム塩;2価以上の金属錯体等の無機系凝集剤が挙げられる。
これらの中でも、凝集性を向上させ均一な凝集粒子を得る観点から、無機アンモニウム塩が好ましく、硫酸アンモニウムがより好ましい。
温度T1は、凝集粒子を含む水系媒体の温度を意味し、例えば、融着を行う混合液に温度計を挿入し測定した温度を意味する。
ポリエステル系樹脂が複数種含まれる場合、温度T1は、凝集粒子中に含まれるガラス転移温度を有する、すべてのポリエステル系樹脂のガラス転移温度以上であることが好ましく、より具体的には、前述の凝集粒子2では、ポリエステル系樹脂Aのガラス転移温度以上、且つ、ポリエステル系樹脂Bのガラス転移温度以上である。
温度T1は、トナーのカブリ抑制及び耐熱保存性をより向上させる観点から、好ましくは凝集粒子のポリエステル系樹脂のガラス転移温度より2℃高い温度以上、より好ましくは凝集粒子のポリエステル系樹脂のガラス転移温度より5℃高い温度以上、更に好ましくは凝集粒子のポリエステル系樹脂のガラス転移温度より8℃高い温度以上であり、そして、好ましくは凝集粒子のポリエステル系樹脂のガラス転移温度より30℃高い温度以下、より好ましくは凝集粒子のポリエステル系樹脂のガラス転移温度より20℃高い温度以下、更に好ましくは凝集粒子のポリエステル系樹脂のガラス転移温度より15℃高い温度以下である。
なお、前述の温度T1は、ポリエステル系樹脂が2種以上含まれる場合、最も高いガラス転移温度を有する樹脂を基準とした好適範囲である。
温度T1は、カブリ抑制及び耐熱保存性をより向上させる観点から、好ましくは65℃以上、より好ましくは68℃以上、更に好ましくは70℃以上であり、そして、好ましくは95℃以下、より好ましくは90℃以下、更に好ましくは85℃以下である。
3価以上の金属化合物は、好ましくは3価の金属化合物である。
3価以上の金属化合物としては、例えば、硫酸アルミニウム、塩化アルミニウム等のアルミニウム化合物、塩化鉄(III)、硫酸鉄(III)等の鉄(III)化合物、塩化チタン(III)、塩化ジルコニウム(III)、塩化スカンジウム(III)等が挙げられる。
これらの中でも、カブリ抑制及び耐熱保存性をより向上させる観点から、アルミニウム化合物、鉄(III)化合物が好ましく、硫酸アルミニウム、塩化アルミニウム、塩化鉄(III)がより好ましく、塩化鉄(III)が更に好ましい。
金属化合物の水溶液として添加する場合、金属化合物の濃度は、金属化合物の水溶液中、好ましくは1質量%以上、より好ましくは3質量%以上、更に好ましくは5質量%以上であり、そして、好ましくは30質量%以下、より好ましくは20質量%以下、更に好ましくは15質量%以下である。
水としては、例えば、脱イオン水、蒸留水が挙げられる。
水系媒体中の水の含有量は、好ましくは80質量%以上、より好ましくは90質量%以上、更に好ましくは95質量%以上、更に好ましくは98質量%以上、更に好ましくは100質量%である。
水とともに水系媒体を構成し得る水以外の成分としては、炭素数1以上5以下のアルキルアルコール;アセトン、メチルエチルケトン等の炭素数3以上5以下のジアルキルケトン;テトラヒドロフラン等の環状エーテル等の水に溶解する有機溶媒が用いられる。これらの中でも、有機溶媒のトナーへの混入を防止する観点から、ポリエステル樹脂を溶解しない炭素数1以上5以下のアルキルアルコールが好ましく、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノールがより好ましい。
水系媒体内のpHは、凝集粒子を含む水系媒体のpHを意味し、例えば、pHメーターを用いて、融着を行う分散液にpHメーターの電極を浸して測定したpHである。
金属化合物の添加により低下させるpH(以下、「ΔpH」ともいう)は、カブリ抑制及び耐熱保存性をより向上させる観点から、好ましくは0.3以上、より好ましくは1.0以上、更に好ましくは2.0以上、更に好ましくは2.5以上、更に好ましくは3.0以上、更に好ましくは3.5以上であり、そして、好ましくは5.0以下、より好ましくは4.5以下、更に好ましくは4.0以下である。
ポリエステル系樹脂Aを含有する樹脂粒子aを凝集させて凝集粒子1を得る工程(以下、「工程(1)」ともいう)、
ポリエステル系樹脂Bを含有する樹脂粒子bを凝集粒子1に付着させて凝集粒子2を得る工程(以下、「工程(2)」ともいう)、及び
凝集粒子2を水系媒体内で融着させる工程(以下、「工程(3)」ともいう)
を含む。
以下、当該実施態様を例にとり、本発明について説明する。
工程1では、ポリエステル系樹脂Aを含有する樹脂粒子aを凝集させて、凝集粒子1を得る。
〔樹脂粒子a〕
工程1において、樹脂粒子aが結晶性ポリエステル樹脂Cを含有する、又は、樹脂粒子aと共に、結晶性ポリエステル樹脂Cを含有する樹脂粒子cを凝集させる、ことが好ましい。
ポリエステル系樹脂Aとしては、例えば、ポリエステル樹脂、ポリエステル樹脂セグメントと付加重合樹脂セグメントとを含む複合樹脂が挙げられる。これらの中でも複合樹脂が好ましい。
ポリエステル系樹脂Aは、好ましくは非晶性ポリエステル系樹脂Aである。
アルコール成分としては、例えば、芳香族ジオール、直鎖又は分岐の脂肪族ジオール、脂環式ジオール、3価以上の多価アルコールが挙げられる。これらの中でも、芳香族ジオールが好ましい。
芳香族ジオールは、好ましくはビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物であり、より好ましくは式(I):
(式中、OR1及びR2Oはオキシアルキレン基であり、R1及びR2はそれぞれ独立にエチレン基又はプロピレン基であり、x及びyはアルキレンオキサイドの平均付加モル数を示し、それぞれ正の数であり、xとyの和の値は、1以上、好ましくは1.5以上であり、16以下、好ましくは8以下、より好ましくは4以下である)で表されるビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物である。
ビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物としては、例えば、ビスフェノールA〔2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン〕のプロピレンオキサイド付加物、ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物が挙げられる。これらは1種又は2種以上を用いてもよい。これらの中でも、ビスフェノールAのプロピレンオキサイド付加物が好ましい。
ビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物の含有量は、アルコール成分中、好ましくは70モル%以上、より好ましくは90モル%以上、更に好ましくは95モル%以上であり、そして、100モル%以下であり、更に好ましくは100モル%である。
脂環式ジオールとしては、例えば、水素添加ビスフェノールA〔2,2-ビス(4-ヒドロキシシクロヘキシル)プロパン〕、水素添加ビスフェノールAの炭素数2以上4以下のアルキレンオキサイド付加物(平均付加モル数2以上12以下)が挙げられる。
3価以上の多価アルコールとしては、例えば、グリセリン、ペンタエリスリトール、トリメチロールプロパン、ソルビトールが挙げられる。
これらのアルコール成分は、1種又は2種以上を用いてもよい。
ジカルボン酸としては、例えば、芳香族ジカルボン酸、直鎖又は分岐の脂肪族ジカルボン酸、脂環式ジカルボン酸が挙げられる。これらの中でも、芳香族ジカルボン酸、及び、直鎖又は分岐の脂肪族ジカルボン酸から選ばれる少なくとも1種が好ましい。
芳香族ジカルボン酸としては、例えば、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸が挙げられる。これらの中でも、イソフタル酸、テレフタル酸が好ましく、テレフタル酸がより好ましい。
芳香族ジカルボン酸の量は、カルボン酸成分中、好ましくは20モル%以上、より好ましくは30モル%以上、更に好ましくは40モル%以上、更に好ましくは50モル%以上であり、そして、好ましくは90モル%以下、より好ましくは80モル%以下、更に好ましくは75モル%以下である。
直鎖又は分岐の脂肪族ジカルボン酸としては、例えば、シュウ酸、マロン酸、マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、イタコン酸、グルタコン酸、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、ドデカン二酸、アゼライン酸、炭素数1以上20以下のアルキル基又は炭素数2以上20以下のアルケニル基で置換されたコハク酸が挙げられる。炭素数1以上20以下のアルキル基又は炭素数2以上20以下のアルケニル基で置換されたコハク酸としては、例えば、ドデシルコハク酸、ドデセニルコハク酸、オクテニルコハク酸が挙げられる。これらの中でも、フマル酸、セバシン酸が好ましい。
直鎖又は分岐の脂肪族ジカルボン酸の量は、カルボン酸成分中、好ましくは1モル%以上、より好ましくは5モル%以上、更に好ましくは10モル%以上であり、そして、好ましくは80モル%以下、より好ましくは70モル%以下、更に好ましくは50モル%以下である。
3価以上の多価カルボン酸を含む場合、3価以上の多価カルボン酸の量は、カルボン酸成分中、好ましくは3モル%以上、より好ましくは5モル%以上、更に好ましくは8モル%以上であり、そして、好ましくは30モル%以下、より好ましくは20モル%以下、更に好ましくは15モル%以下である。
これらのカルボン酸成分は、1種又は2種以上を用いてもよい。
ポリエステル樹脂は、例えば、アルコール成分及びカルボン酸成分の重縮合により得られる。
ポリエステル樹脂は、必要に応じて、ジ(2-エチルヘキサン酸)錫(II)、酸化ジブチル錫、チタンジイソプロピレートビストリエタノールアミネート等のエステル化触媒をアルコール成分とカルボン酸成分との総量100質量部に対し0.01質量部以上5質量部以下;没食子酸(3,4,5-トリヒドロキシ安息香酸と同じ。)等のエステル化助触媒をアルコール成分とカルボン酸成分との総量100質量部に対し0.001質量部以上0.5質量部以下用いて重縮合してもよい。
また、重縮合にフマル酸等の不飽和結合を有するモノマーを使用する際には、必要に応じてアルコール成分とカルボン酸成分との総量100質量部に対して、好ましくは0.001質量部以上0.5質量部以下のラジカル重合禁止剤を用いてもよい。ラジカル重合禁止剤としては、例えば、4-tert-ブチルカテコールが挙げられる。
重縮合反応の温度は、好ましくは120℃以上、より好ましくは160℃以上、更に好ましくは180℃以上であり、そして、好ましくは250℃以下、より好ましくは240℃以下である。なお、重縮合は、不活性ガス雰囲気中にて行ってもよい。
スチレン系化合物としては、例えば、無置換又は置換スチレンが挙げられる。スチレンに置換される置換基としては、例えば、炭素数1以上5以下のアルキル基、ハロゲン原子、炭素数1以上5以下のアルコキシ基、スルホン酸基又はその塩が挙げられる。
スチレン系化合物としては、例えば、スチレン、メチルスチレン、α-メチルスチレン、β-メチルスチレン、tert-ブチルスチレン、クロロスチレン、クロロメチルスチレン、メトキシスチレン、スチレンスルホン酸又はその塩が挙げられる。これらの中でも、スチレンが好ましい。
付加重合樹脂セグメントの原料モノマー中、スチレン系化合物の含有量は、好ましくは50質量%以上、より好ましくは65質量%以上、更に好ましくは75質量%以上であり、そして、100質量%以下であり、好ましくは95質量%以下、より好ましくは90質量%以下、更に好ましくは85質量%以下である。
(メタ)アクリル酸アルキルにおけるアルキル基の炭素数は、好ましくは1以上、より好ましくは6以上、更に好ましくは10以上であり、そして、好ましくは24以下、より好ましくは22以下、更に好ましくは20以下である。
(メタ)アクリル酸アルキルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸(イソ)プロピル、(メタ)アクリル酸(イソ又はターシャリー)ブチル、(メタ)アクリル酸(イソ)アミル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸(イソ)オクチル、(メタ)アクリル酸(イソ)デシル、(メタ)アクリル酸(イソ)ドデシル、(メタ)アクリル酸(イソ)パルミチル、(メタ)アクリル酸(イソ)ステアリル、(メタ)アクリル酸(イソ)ベヘニル等が挙げられ、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル又は(メタ)アクリル酸ステアリルが好ましく、(メタ)アクリル酸ステアリルがより好ましい。
なお、「(イソ又はターシャリー)」及び「(イソ)」は、これらの接頭辞が存在する場合としない場合の双方を意味し、これらの接頭辞が存在しない場合には、ノルマルを示す。また、「(メタ)アクリル酸」は、アクリル酸又はメタクリル酸を示す。
「両反応性モノマー由来の構成単位」とは、両反応性モノマーの官能基、付加重合性基が反応した単位を意味する。
付加重合性基としては、例えば、炭素-炭素不飽和結合が挙げられる。
両反応性モノマーとしては、例えば、分子内に、水酸基、カルボキシ基、エポキシ基、第1級アミノ基及び第2級アミノ基から選ばれる少なくとも1種の官能基を有する付加重合性モノマーが挙げられる。これらの中でも、反応性の観点から、水酸基及びカルボキシ基から選ばれる少なくとも1種の官能基を有する付加重合性モノマーが好ましく、カルボキシ基を有する付加重合性モノマーがより好ましい。
カルボキシ基を有する付加重合性モノマーとしては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、フマル酸、マレイン酸が挙げられる。これらの中でも、重縮合反応と付加重合反応の双方の反応性の観点から、アクリル酸、メタクリル酸が好ましく、アクリル酸がより好ましい。
両反応性モノマー由来の構成単位の量は、複合樹脂のポリエステル樹脂セグメントのアルコール成分100モル部に対して、好ましくは1モル部以上、より好ましくは5モル部以上、更に好ましくは8モル部以上であり、そして、好ましくは30モル部以下、より好ましくは25モル部以下、更に好ましくは20モル部以下である。
工程Aの後に工程Bを行ってもよいし、工程Bの後に工程Aを行ってもよく、工程Aと工程Bを同時に行ってもよい。
工程Aにおいて、カルボン酸成分の一部を重縮合反応に供し、次いで工程Bを実施した後に、カルボン酸成分の残部を重合系に添加し、工程Aの重縮合反応及び必要に応じて両反応性モノマーとの反応をさらに進める方法が好ましい。
付加重合のラジカル重合開始剤としては、例えば、ジブチルパーオキサイド等の過酸化物、過硫酸ナトリウム等の過硫酸塩、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)等のアゾ化合物が挙げられる。
ラジカル重合開始剤の使用量は、付加重合樹脂セグメントの原料モノマー100質量部に対して、好ましくは1質量部以上20質量部以下である。
付加重合の温度は、好ましくは110℃以上、より好ましくは130℃以上であり、そして、好ましくは230℃以下、より好ましくは220℃以下、更に好ましくは210℃以下である。
ポリエステル系樹脂Aの軟化点は、耐熱保存性をより向上させる観点から、好ましくは70℃以上、より好ましくは90℃以上、更に好ましくは100℃以上であり、そして、低温定着性をより向上させる観点から、好ましくは140℃以下、より好ましくは130℃以下、更に好ましくは125℃以下である。
ポリエステル系樹脂Aのガラス転移温度は、耐熱保存性をより向上させる観点から、好ましくは30℃以上、より好ましくは35℃以上、更に好ましくは40℃以上であり、そして、低温定着性をより向上させる観点から、好ましくは80℃以下、より好ましくは70℃以下、更に好ましくは60℃以下である。
ポリエステル系樹脂Aの軟化点、ガラス転移温度、及び酸価は、原料モノマーの種類及びその使用量、並びに反応温度、反応時間、冷却速度等の製造条件により適宜調整することができ、また、それらの値は、実施例に記載の方法により求められる。
なお、ポリエステル系樹脂Aを2種以上組み合わせて使用する場合は、それらの混合物として得られた軟化点、ガラス転移温度及び酸価の値がそれぞれ前述の範囲内であることが好ましい。
結晶性ポリエステル樹脂Cは、アルコール成分とカルボン酸成分との重縮合物である。
アルコール成分としては、α,ω-脂肪族ジオールが好ましい。
α,ω-脂肪族ジオールの炭素数は、好ましくは2以上、より好ましくは4以上、更に好ましくは6以上であり、そして、好ましくは16以下、より好ましくは14以下、更に好ましくは12以下である。
α,ω-脂肪族ジオールとしては、例えば、エチレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,7-ヘプタンジオール、1,8-オクタンジオール、1,9-ノナンジオール、1,10-デカンジオール、1,11-ウンデカンジオール、1,12-ドデカンジオール、1,13-トリデカンジオール、1,14-テトラデカンジオールが挙げられる。これらの中でも、1,6-ヘキサンジオール、1,10-デカンジオール、1,12-ドデカンジオールが好ましく、1,10-デカンジオールがより好ましい。
脂肪族ジカルボン酸の炭素数は、好ましくは4以上、より好ましくは8以上、更に好ましくは10以上であり、そして、好ましくは14以下、より好ましくは12以下である。
脂肪族ジカルボン酸としては、例えば、フマル酸、セバシン酸、ドデカン二酸、テトラデカン二酸が挙げられる。これらの中でも、セバシン酸、ドデカン二酸が好ましく、セバシン酸がより好ましい。これらのカルボン酸成分は、1種又は2種以上を用いてもよい。
結晶性ポリエステル樹脂Cの軟化点は、耐熱保存性をより向上させる観点から、好ましくは60℃以上、より好ましくは70℃以上、更に好ましくは80℃以上であり、そして、低温定着性をより向上させる観点から、好ましくは150℃以下、より好ましくは120℃以下、更に好ましくは100℃以下である。
樹脂粒子aの分散液は、ポリエステル系樹脂Aを水性媒体中に分散させることで得られる。なお、トナーが結晶性ポリエステル樹脂Cを含有する場合には、結晶性ポリエステル樹脂Cを同時に分散して、結晶性ポリエステル樹脂Cを含有する樹脂粒子aとしてもよいし、樹脂粒子aと別に、結晶性ポリエステル樹脂Cを含有する樹脂粒子cを使用してもよい。樹脂粒子cの分散液も、樹脂粒子aの分散液の製造方法と同様の方法で得られる。
水性媒体としては、水を主成分とするものが好ましく、樹脂粒子の分散液の分散安定性を向上させる観点、及び環境性の観点から、水性媒体中の水の含有量は、好ましくは80質量%以上、より好ましくは90質量%以上、更に好ましくは95質量%以上、更に好ましくは98質量%以上であり、そして、100質量%以下であり、更に好ましくは100質量%である。水としては、脱イオン水又は蒸留水が好ましい。水性媒体に含まれうる水以外の成分としては、例えば、炭素数1以上5以下のアルキルアルコール;アセトン、メチルエチルケトン等の炭素数3以上5以下のジアルキルケトン;テトラヒドロフラン等の環状エーテル等の水に溶解する有機溶媒が挙げられる。これらの中でも、メチルエチルケトンが好ましい。
有機溶媒溶液には、中和剤を添加することが好ましい。中和剤としては、例えば、塩基性物質が挙げられる。塩基性物質としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属の水酸化物;アンモニア、トリメチルアミン、ジエタノールアミン等の含窒素塩基性物質が挙げられる。
樹脂粒子aに含まれる樹脂の酸基に対する中和剤の使用当量(モル%)は、好ましくは10モル%以上、より好ましくは30モル%以上、更に好ましくは40モル%以上であり、そして、好ましくは150モル%以下、より好ましくは100モル%以下、更に好ましくは70モル%以下である。
なお、中和剤の使用当量(モル%)は、下記式によって求めることができる。中和剤の使用当量は、100モル%以下の場合、中和度と同義である。
中和剤の使用当量(モル%)=〔{中和剤の添加質量(g)/中和剤の当量}/[{樹脂粒子aを構成する樹脂の加重平均酸価(mgKOH/g)×樹脂粒子aを構成する樹脂の質量(g)}/(56×1000)]〕×100
水性媒体を添加する際の有機溶媒溶液温度は、樹脂粒子aの分散安定性を向上させる観点から、好ましくは樹脂粒子aを構成する樹脂のガラス転移温度以上、好ましくは50℃以上、より好ましくは60℃以上であり、そして、好ましくは85℃以下、より好ましくは80℃以下である。
樹脂粒子aが結晶性ポリエステル樹脂Cを含有する場合、結晶性ポリエステル樹脂Cの含有量は、トナーの低温定着性を向上させる観点から、樹脂粒子aの樹脂成分の合計量に対して、好ましくは5質量%以上、より好ましくは10質量%以上、更に好ましくは20質量%以上であり、そして、好ましくは50質量%以下、より好ましくは40質量%以下、更に好ましくは35質量%以下である。
分散液中の樹脂粒子aのCV値は、高画質の画像が得られるトナーを得る観点から、好ましくは10%以上、より好ましくは20%以上であり、そして、好ましくは40%以下、より好ましくは35%以下、更に好ましくは30%以下である。
樹脂粒子の体積中位粒径(D50),CV値は、後述の実施例に記載の方法で求められる。
樹脂粒子a、樹脂粒子cの添加量は、前述のポリエステル系樹脂A及び結晶性ポリエステル系樹脂Cの含有量となる量が好ましい。
凝集粒子1は、離型剤を含有していてもよい。
離型剤としては、例えば、ポリプロピレンワックス、ポリエチレンワックス、ポリプロピレンポリエチレン共重合体ワックス;マイクロクリスタリンワックス、パラフィンワックス、フィッシャートロプシュワックス、サゾールワックス等の炭化水素系ワックス又はそれらの酸化物;カルナウバワックス、モンタンワックス又はそれらの脱酸ワックス、脂肪酸エステルワックス等のエステル系ワックス;脂肪酸アミド類、脂肪酸類、高級アルコール類、脂肪酸金属塩が挙げられる。これらは1種又は2種以上を用いてもよい。
離型剤の含有量は、結着樹脂100質量部に対して、好ましくは0.1質量部以上、より好ましくは1質量部以上、更に好ましくは5質量部以上であり、そして、好ましくは20質量部以下、より好ましくは15質量部以下、更に好ましくは10質量部以下である。
離型剤は、離型剤粒子の分散液として、樹脂粒子aと混合し、凝集させることで、凝集粒子1に含有させることが好ましい。
離型剤粒子の分散液は、界面活性剤を用いて得ることも可能であるが、離型剤と後述する樹脂粒子zとを混合して得ることが好ましい。離型剤と樹脂粒子zを用いて離型剤粒子を調製することで、樹脂粒子zにより離型剤粒子が安定化され、界面活性剤を使用しなくても離型剤を水性媒体中に分散させることが可能となる。離型剤粒子の分散液中では、離型剤粒子の表面に樹脂粒子zが多数付着した構造を有していると考えられる。
複合樹脂Dの軟化点は、好ましくは70℃以上、より好ましくは80℃以上であり、そして、好ましくは140℃以下、より好ましくは120℃以下、更に好ましくは100℃以下である。
複合樹脂Dのその他の樹脂特性の好適範囲、樹脂を構成する原料モノマーの好適例等は、ポリエステル系樹脂Aで示した例と同様である。樹脂粒子zの分散液は、例えば、前述の転相乳化法により得ることができる。
樹脂粒子zの体積中位粒径(D50)は、離型剤粒子の分散安定性の観点から、好ましくは0.01μm以上、より好ましくは0.03μm以上であり、そして、好ましくは0.3μm以下、より好ましくは0.2μm以下である。
樹脂粒子zのCV値は、離型剤粒子の分散安定性の観点から、好ましくは10%以上、より好ましくは15%以上であり、そして、好ましくは40%以下、より好ましくは35%以下、更に好ましくは30%以下である。
分散時の加熱温度は、好ましくは離型剤の融点以上且つ80℃以上、より好ましくは85℃以上、更に好ましくは90℃以上であり、そして、好ましくは、樹脂粒子zに含まれる樹脂の軟化点より10℃高い温度未満且つ100℃以下、より好ましくは98℃以下、更に好ましくは95℃以下である。
離型剤粒子のCV値は、好ましくは10%以上、より好ましくは20%以上であり、そして、好ましくは40%以下、より好ましくは35%以下、更に好ましくは30%以下である。
離型剤粒子の体積中位粒径(D50)及びCV値の測定方法は、実施例に記載の方法による。
凝集粒子1は、着色剤を含有していてもよい。
着色剤としては、トナー用着色剤として用いられている染料、顔料等のすべてを使用することができる。
着色剤としては、例えば、カーボンブラック、フタロシアニンブルー、パーマネントブラウンFG、ブリリアントファーストスカーレット、ピグメントグリーンB、ローダミン-Bベース、ソルベントレッド49、ソルベントレッド146、ソルベントブルー35、キナクリドン、カーミン6B、ジスアゾエローが挙げられる。トナーは、黒トナー、カラートナーのいずれであってもよい。
着色剤は、着色剤粒子の分散液として、樹脂粒子aと混合し、凝集させることで、凝集粒子1に含有させることが好ましい。
着色剤粒子の分散液は、着色剤と水性媒体とを、ホモジナイザー、超音波分散機等の分散機を用いて分散して得ることが好ましい。当該分散は、着色剤の分散安定性を向上させる観点から、界面活性剤の存在下で行うことが好ましい。当該界面活性剤としては、例えば、非イオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤が挙げられ、着色剤粒子の分散安定性を向上させる観点から、好ましくはアニオン性界面活性剤である。アニオン性界面活性剤としては、例えば、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ドデシル硫酸ナトリウム、ラウリルエーテル硫酸ナトリウム、アルケニルコハク酸ジカリウムが挙げられる。これらの中でも、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムが好ましい。
着色剤粒子の体積中位粒径(D50)の測定方法は実施例に記載の方法による。
工程1では、混合分散液を調製した後に樹脂粒子aを凝集させることが好ましい。
混合分散液を調製する際、樹脂粒子a及び必要に応じて添加されるワックス粒子等の任意成分の分散安定性を向上させる観点から、界面活性剤の存在下で行ってもよい。界面活性剤としては、例えば、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルエーテル硫酸塩等のアニオン性界面活性剤;ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルケニルエーテル類等の非イオン性界面活性剤が挙げられる。
界面活性剤を使用する場合、その使用量は、樹脂粒子a 100質量部に対して、好ましくは0.1質量部以上、より好ましくは0.5質量部以上であり、そして、好ましくは10質量部以下、より好ましくは5質量部以下、更に好ましくは3質量部以下である。
工程2では、ポリエステル系樹脂Bを含有する樹脂粒子bを凝集粒子1に付着させて凝集粒子2を得る。
〔樹脂粒子b〕
樹脂粒子bの分散液は、前述の樹脂粒子aの分散液の製造方法と同様の方法で得られる。
工程2では、例えば、30℃以上80℃以下の凝集粒子1を含む分散液に樹脂粒子bの分散液を添加することで凝集粒子1に、樹脂粒子bを水性媒体中で凝集させて、凝集粒子2を得る。
ポリエステル系樹脂Bとしては、例えば、ポリエステル樹脂、ポリエステル樹脂セグメントと付加重合樹脂セグメントとを含む複合樹脂が挙げられる。
ポリエステル系樹脂Bは、好ましくは非晶性ポリエステル系樹脂Bである。
以下、共通する例示については省略し、ポリエステル系樹脂Bとして好ましい態様について説明する。
アルコール成分は、好ましくは芳香族ジオールであり、より好ましくはビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物であり、更に好ましくは式(I)で表されるビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物である。ビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物としては、ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物が好ましい。
ビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物の含有量は、アルコール成分中、好ましくは70モル%以上、より好ましくは90モル%以上、更に好ましくは95モル%以上であり、そして、100モル%以下であり、更に好ましくは100モル%である。
芳香族ジカルボン酸としては、イソフタル酸、テレフタル酸が好ましく、テレフタル酸がより好ましい。
芳香族ジカルボン酸の量は、カルボン酸成分中、好ましくは20モル%以上、より好ましくは30モル%以上、更に好ましくは40モル%以上であり、そして、好ましくは95モル%以下、より好ましくは90モル%以下、更に好ましくは85モル%以下である。
直鎖又は分岐の脂肪族ジカルボン酸の量は、カルボン酸成分中、好ましくは1モル%以上、より好ましくは5モル%以上、更に好ましくは10モル%以上、更に好ましくは15モル%以上であり、そして、好ましくは40モル%以下、より好ましくは30モル%以下、更に好ましくは25モル%以下である。
3価以上の多価カルボン酸の量は、カルボン酸成分中、好ましくは3モル%以上、より好ましくは5モル%以上、更に好ましくは8モル%以上であり、そして、好ましくは30モル%以下、より好ましくは20モル%以下、更に好ましくは15モル%以下である。
ポリエステル系樹脂Bの軟化点は、耐熱保存性をより向上させる観点から、好ましくは70℃以上、より好ましくは90℃以上、更に好ましくは100℃以上であり、そして、低温定着性をより向上させる観点から、好ましくは140℃以下、より好ましくは130℃以下、更に好ましくは125℃以下である。
ポリエステル系樹脂Bの軟化点、ガラス転移温度、及び酸価は、原料モノマーの種類及びその使用量、並びに反応温度、反応時間、冷却速度等の製造条件により適宜調整することができ、また、それらの値は、実施例に記載の方法により求められる。
なお、ポリエステル系樹脂Bを2種以上組み合わせて使用する場合は、それらの混合物として得られた軟化点、ガラス転移温度及び酸価の値がそれぞれ前述の範囲内であることが好ましい。
樹脂粒子bにおける、ポリエステル系樹脂Bの中和度は、工程3の金属化合物の添加によりカブリ抑制をより向上させる観点から、好ましくは10モル%以上、より好ましくは20モル%以上、更に好ましくは30モル%以上、更に好ましくは40モル%以上であり、そして、好ましくは100モル%以下、より好ましくは80モル%以下、更に好ましくは70モル%以下である。
ポリエステル系樹脂Bと、ポリエステル系樹脂A及び結晶性ポリエステル樹脂Cの合計量との質量比〔ポリエステル系樹脂B/ポリエステル系樹脂A及び結晶性ポリエステル樹脂Cの合計量〕は、好ましくは5/95以上、より好ましくは10/90以上、更に好ましくは15/85以上であり、そして、好ましくは30/70以下、より好ましくは25/85以下、更に好ましくは20/80以下である。
凝集を停止させる方法としては、例えば、分散液を冷却する方法、凝集停止剤を添加する方法、分散液を希釈する方法、pHを変化させる方法が挙げられる。不必要な凝集を確実に防止する観点からは、凝集停止剤を添加して凝集を停止させる方法が好ましい。
凝集停止剤としては、界面活性剤が好ましく、アニオン性界面活性剤がより好ましい。アニオン性界面活性剤としては、例えば、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキル硫酸塩、アルキルエーテル硫酸塩、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル硫酸塩が挙げられる。凝集停止剤は、1種又は2種以上を用いてもよい。凝集停止剤は、水溶液で添加してもよい。
凝集停止剤の添加量は、不必要な凝集を確実に防止する観点から、トナー中の結着樹脂100質量部に対して、好ましくは0.1質量部以上、より好ましくは1質量部以上であり、そして、トナーへの残留を低減する観点から、好ましくは30質量部以下、より好ましくは15質量部以下である。
工程3では、凝集粒子2を水系媒体内で融着させる。当該工程においては、前述の融着工程において示した条件により、凝集粒子2を融着させる。
融着により得られた融着粒子の体積中位粒径(D50)は、好ましくは2μm以上、より好ましくは3μm以上、更に好ましくは4μm以上であり、そして、好ましくは10μm以下、より好ましくは8μm以下、更に好ましくは6μm以下である。
融着粒子の体積中位粒径(D50)は、実施例に記載の方法による。
融着粒子の円形度は、カブリ抑制及び耐熱保存性をより向上させる観点から、好ましくは0.955以上、より好ましくは0.960以上、更に好ましくは0.965以上であり、そして、好ましくは0.990以下、より好ましくは0.980以下、更に好ましくは0.975以下である。
融着粒子の円形度は、実施例に記載の方法による。
融着は、融着粒子の円形度をモニターし、適度な範囲となった時点で終了することが好ましい。
工程3の後に後処理工程を行ってもよく、融着粒子を単離することによってトナー粒子が得られる。工程3で得られた融着粒子は、水性媒体中に存在するため、まず、固液分離を行うことが好ましい。固液分離には、例えば、吸引濾過法、加圧濾過法、遠心濾過法が挙げられ、吸引濾過法が好ましく用いられる。
固液分離後に洗浄を行うことが好ましい。このとき、添加した界面活性剤も除去することが好ましいため、界面活性剤の曇点以下で水性媒体により洗浄することが好ましい。洗浄は複数回行うことが好ましい。
次に乾燥を行うことが好ましい。乾燥方法としては、例えば、真空低温乾燥法、振動型流動乾燥法、スプレードライ法、冷凍乾燥法、フラッシュジェット法が挙げられる。
トナー粒子は、トナーとしてそのまま用いることもできるが、後述のようにトナー粒子の表面を処理したものをトナーとして用いることが好ましい。
トナー粒子の体積中位粒径(D50)は、高画質の画像を得る観点、トナーのクリーニング性をより向上させる観点から、好ましくは2μm以上、より好ましくは3μm以上、更に好ましくは4μm以上であり、そして、好ましくは10μm以下、より好ましくは8μm以下、更に好ましくは6μm以下である。
トナー粒子の体積中位粒径(D50)及び円形度は、実施例に記載の方法により測定できる。
トナー粒子の含有量は、トナー中、好ましくは60質量%以上、より好ましくは80質量%以上、更に好ましくは90質量%以上、更に好ましくは95質量%以上であり、そして、100質量%以下であり、好ましくは99質量%以下である。
トナー粒子をトナーとしてそのまま用いることもできるが、流動化剤等を外添剤としてトナー粒子表面に添加処理したものをトナーとして使用することが好ましい。
外添剤としては、例えば、疎水性シリカ、酸化チタン、アルミナ、酸化セリウム、カーボンブラック等の無機材料微粒子、ポリカーボネート、ポリメタクリル酸メチル、シリコーン樹脂等のポリマー微粒子が挙げられる。これらの中でも、疎水性シリカが好ましい。
外添剤を用いてトナー粒子の表面処理を行う場合、外添剤の添加量は、トナー粒子100質量部に対して、好ましくは1質量部以上、より好ましくは2質量部以上、更に好ましくは3質量部以上であり、そして、好ましくは5質量部以下、より好ましくは4.5質量部以下、更に好ましくは4質量部以下である。
以下の実施例等においては、各物性の測定及び評価は次の方法により行った。
〔樹脂の酸価〕
樹脂の酸価は、JIS K0070:1992に従って測定した。但し、測定溶媒をアセトンとトルエンの混合溶媒〔アセトン:トルエン=1:1(容量比)〕とした。
(1)軟化点
フローテスター「CFT-500D」(株式会社島津製作所製)を用い、1gの試料を昇温速度6℃/minで加熱しながら、プランジャーにより1.96MPaの荷重を与え、直径1mm、長さ1mmのノズルから押し出した。温度に対し、フローテスターのプランジャー降下量をプロットし、試料の半量が流出した温度を軟化点とした。
(2)結晶性指数
示差走査熱量計「Q-100」(ティー エイ インスツルメント ジャパン株式会社製)を用いて、試料0.01gをアルミパンに計量し、降温速度10℃/minで0℃まで冷却した。次いで試料をそのまま1分間静止させ、その後、昇温速度10℃/minで180℃まで昇温し熱量を測定した。観測される吸熱ピークのうち、ピーク面積が最大のピークの温度を吸熱の最大ピーク温度(1)として、(軟化点(℃))/(吸熱の最大ピーク温度(1)(℃))により、結晶性指数を求めた。
(3)融点及びガラス転移温度
示差走査熱量計「Q-100」(ティー エイ インスツルメント ジャパン株式会社製)を用いて、試料0.01gをアルミパンに計量し、200℃まで昇温し、その温度から降温速度10℃/minで0℃まで冷却した。その後、昇温速度10℃/minで昇温し、熱量を測定した。観測される吸熱ピークのうち、ピーク面積が最大のピーク温度を吸熱の最大ピーク温度(2)とした。結晶性樹脂の時には該ピーク温度を融点とした。非晶性樹脂の時には、吸熱の最大ピーク温度以下のベースラインの延長線と、該ピークの立ち上がり部分からピークの頂点までの最大傾斜を示す接線との交点の温度をガラス転移温度とした。
示差走査熱量計「Q-100」(ティー エイ インスツルメント ジャパン株式会社製)を用いて、試料0.01gをアルミパンに計量し、200℃まで昇温した後、200℃から降温速度10℃/minで0℃まで冷却した。次いで、試料を昇温速度10℃/minで昇温し、熱量を測定し、吸熱の最大ピーク温度を融点とした。
(1)測定装置:レーザー回折型粒径測定機「LA-920」(堀場製作所株式会社製)
(2)測定条件:測定用セルに試料分散液をとり、蒸留水を加え、吸光度を適正範囲になる温度で体積中位粒径(D50)及び体積平均粒径を測定した。また、CV値は次の式に従って算出した。
CV値(%)=(粒径分布の標準偏差/体積平均粒径)×100
赤外線水分計「FD-230」(株式会社ケツト科学研究所製)を用いて、測定試料5gを乾燥温度150℃、測定モード96(監視時間2.5分、変動幅0.05%)の条件にて水分(質量%)を測定した。固形分濃度は次の式に従って算出した。
固形分濃度(質量%)=100-水分(質量%)
凝集粒子の体積中位粒径(D50)は次の通り測定した。
・測定機:「コールターマルチサイザー(登録商標)III」(ベックマンコールター株式会社製)
・アパチャー径:50μm
・解析ソフト:「マルチサイザー(登録商標)IIIバージョン3.51」(ベックマンコールター株式会社製)
・電解液:「アイソトン(登録商標)II」(ベックマンコールター株式会社製)
・測定条件:試料分散液を前記電解液100mLに加えることにより、3万個の粒子の粒径を20秒で測定できる濃度に調整した後、改めて3万個の粒子を測定し、その粒径分布から体積中位粒径(D50)を求めた。
pHメーター「SevenGo pH meter SG2」(メトラー トレド社製)を用い、電極として「InLab Expert Go」(メトラー トレド社製)を接続して、水系媒体にpHメーターの電極を浸すことにより、各温度下、撹拌された状態で、pHを測定した。
次の条件でトナー粒子の円形度を測定した。
・測定装置:フロー式粒子像分析装置「FPIA-3000」(シスメックス株式会社製)
・分散液の調製:トナー粒子の分散液を固形分濃度が0.001~0.05質量%になるように脱イオン水で希釈して調製した。
・測定モード:HPF測定モード
トナー粒子の体積中位粒径(D50)は、次の通り測定した。
測定装置、アパチャー径、解析ソフト、電解液は、前述の凝集粒子の体積中位粒径(D50)の測定で用いたものと同様のものを用いた。
・分散液:ポリオキシエチレンラウリルエーテル「エマルゲン(登録商標)109P」(花王株式会社製、HLB(Hydrophile-Lipophile Balance)=13.6)を前記電解液に溶解させ、濃度5質量%の分散液を得た。
・分散条件:前記分散液5mLに乾燥後のトナー粒子の測定試料10mgを添加し、超音波分散機にて1分間分散させ、その後、電解液25mLを添加し、更に、超音波分散機にて1分間分散させて、試料分散液を調製した。
・測定条件:前記試料分散液を前記電解液100mLに加えることにより、3万個の粒子の粒径を20秒で測定できる濃度に調整した後、改めて3万個の粒子を測定し、その粒径分布から体積中位粒径(D50)及び体積平均粒径を求めた。
〔トナーの耐熱保存性〕
内容積100mLの広口ポリビンにトナー20gを入れてフタを解放した状態で、温度55℃、相対湿度40%の乾燥機内で8時間静置した。その後、それぞれのサンプルを25℃の温度で密封したまま12時間以上静置して冷却した。次いで、「パウダーテスター」(ホソカワミクロン株式会社製)の振動台に、目開き250μmのフルイをセットし、その上に前記トナー20gを乗せ30秒間振動を行い、フルイ上に残ったトナー質量を測定し、次の算出式より凝集度を算出した。数値が小さいほど、トナーが耐熱保存性に優れることを表す。
凝集度(%)=フルイ上の残留トナー質量[g]/20[g]×100
市販のプリンタ「Microline5400」(沖データ株式会社製)にトナーを実装し、温度30℃、相対湿度80%の環境試験室内で、画像のない白色画像を、上質紙「エクセレントホワイト紙A4サイズ」(沖データ株式会社製)を用いて印字し、A4の半分まで転写した時点でマシンを停止させ、転写前の感光体表面に透明なメンディングテープ「Scotch(登録商標)メンディングテープ810-3-18」(3M社製)を貼付け、感光体表面のトナーを採取する。
未使用のエクセレントホワイト紙面上に、リファレンスとしてのメンディングテープと、感光体上のトナーを採取したメンディングテープをそれぞれ貼付し、測色計「SpectroEye」(Gretag-Macbeth社製、光射条件;標準光源D50、観察視野2°、濃度基準DINNB、絶対白基準)を用いて、リファレンスとしてのメンディングテープ上及び感光体上のトナーを採取したメンディングテープ上のCIE L*a*b*色座標系における色相(L*a*b*値)を測定し、下記式で表される両者の色差(ΔE)を求めた。ΔEが小さい程、カブリが少ないこと示す。
ΔE=[(L* 1-L* 2)2+(a* 1-a* 2)2+(b* 1-b* 2)2]1/2
〔式中、L* 1、a* 1及びb* 1はリファレンスとしてのメンディングテープ上の各測定値を、L* 2、a* 2及びb* 2は感光体上のトナーを採取したメンディングテープ上の各測定値をそれぞれ示す。〕
製造例A1(非晶性樹脂A-1の製造)
窒素導入管、脱水管、撹拌機、及び熱電対を装備した内容積10Lの四つ口フラスコの内部を窒素置換し、ビスフェノールAのプロピレンオキサイド(2.2)付加物4200g、テレフタル酸1355g、ジ(2-エチルヘキサン酸)錫(II)31g、及び没食子酸(3,4,5-トリヒドロキシ安息香酸)3gを入れ、窒素雰囲気下、撹拌しながら、235℃に昇温し、235℃で5時間保持した後、フラスコ内の圧力を下げ、8kPaにて1時間保持した。その後、大気圧に戻した後、160℃まで冷却し、160℃に保持した状態で、スチレン1819g、メタクリル酸ステアリル455g、アクリル酸138g、及びジブチルパーオキサイド227gの混合物を1時間かけて滴下した。その後、30分間160℃に保持した後、200℃まで昇温し、更にフラスコ内の圧力を下げ、8kPaにて1時間保持した。その後、大気圧に戻した後、190℃まで冷却し、フマル酸223g、トリメリット酸無水物230g、及び4-tert-ブチルカテコール2.5gを加え、210℃まで10℃/hrで昇温し、その後、4kPaにて所望の軟化点まで反応を行って、非晶性樹脂A-1を得た。樹脂の各種物性を測定し、表1に示した。
窒素導入管、脱水管、撹拌機、及び熱電対を装備した内容積10Lの四つ口フラスコの内部を窒素置換し、ビスフェノールAのエチレンオキサイド(2.2)付加物5363g、テレフタル酸1780g、ジ(2-エチルヘキサン酸)錫(II)40g、及び没食子酸4gを入れ、窒素雰囲気下、撹拌しながら、235℃に昇温し、235℃で8時間保持した後、フラスコ内の圧力を下げ、8kPaにて1時間保持した。その後、大気圧に戻した後、180℃まで冷却し、フマル酸287g、ドデセニルコハク酸無水物221g、トリメリット酸無水物380g、及び4-tert-ブチルカテコール2.5gを加え、220℃まで10℃/hrで昇温し、その後、フラスコ内の圧力を下げ、10kPaにて所望の軟化点まで反応を行って、非晶性樹脂B-1を得た。樹脂の各種物性を測定し、表1に示した。
窒素導入管、脱水管、撹拌機、及び熱電対を装備した内容積10Lの四つ口フラスコの内部を窒素置換し、ビスフェノールAのプロピレンオキサイド(2.2)付加物4313g、テレフタル酸818g、コハク酸727g、ジ(2-エチルヘキサン酸)錫(II)30g、及び没食子酸3gを入れ、窒素雰囲気下、撹拌しながら、235℃に昇温し、235℃で5時間保持した後、フラスコ内の圧力を下げ、8kPaにて1時間保持した。その後、大気圧に戻した後、160℃まで冷却し、160℃に保持した状態で、スチレン2755g、メタクリル酸ステアリル689g、アクリル酸142g、及びジブチルパーオキサイド413gの混合物を1時間かけて滴下した。その後、30分間160℃に保持した後、200℃まで昇温し、更にフラスコ内の圧力を下げ、8kPaにて所望の軟化点まで反応を行って、非晶性樹脂D-1を得た。樹脂の各種物性を測定し、表1に示した。
窒素導入管、脱水管、撹拌機、及び熱電対を装備した内容積10Lの四つ口フラスコの内部を窒素置換し、1,10-デカンジオール3416g及びセバシン酸4084gを入れた。撹拌しながら、135℃に昇温し、135℃で3時間保持した後、135℃から200℃まで10時間かけて昇温した。その後、ジ(2-エチルヘキサン酸)錫(II)23gを加え、更に200℃にて1時間保持した後、フラスコ内の圧力を下げ、8.3kPaにて1時間保持し、結晶性ポリエステル樹脂C-1を得た。樹脂の各種物性を測定し、表2に示した。
製造例X1(樹脂粒子分散液X-1の製造)
撹拌器「スリーワンモーターBL300」(新東科学株式会社製)、還流冷却器、滴下ロート、温度計及び窒素導入管を備えた内容積3Lの容器に、非晶性樹脂A-1を210g、結晶性ポリエステル樹脂C-1を90g、及びメチルエチルケトン300gを入れ、73℃にて2時間かけて樹脂を溶解させた。得られた溶液に、5質量%水酸化ナトリウム水溶液を、樹脂の酸価に対して中和度60モル%になるように添加し60分撹拌した。
次いで、73℃に保持したまま、200r/min(周速度63m/min)で撹拌しながら、脱イオン水600gを60分かけて添加し、転相乳化した。継続して73℃に保持したまま、メチルエチルケトンを減圧下で留去し水系分散体を得た。その後、撹拌を行いながら水系分散体を30℃に冷却した後、固形分濃度が30質量%になるように脱イオン水を加えて調整したのち、150メッシュ金網でろ過し、樹脂粒子分散液X-1を得た。得られた樹脂粒子の体積中位粒径(D50)及びCV値を表3に示す。
使用する非晶性樹脂と結晶性ポリエステル樹脂を表3の組み合わせとした以外は製造例X1と同様にして樹脂粒子分散液X-2,Y-1,Z-1を得た。得られた樹脂粒子の体積中位粒径D50及びCV値を表3に示す。
製造例W1(離型剤粒子分散液W-1の製造)
内容積1Lのビーカーに、脱イオン水120g、樹脂粒子分散液Z-1 53g、パラフィンワックス「HNP-9」(日本精蝋株式会社製、融点75℃)40gを添加し、90~95℃に温度を保持して溶融させて撹拌し、溶融混合物を得た。90~95℃に温度を保持しながら、超音波ホモジナイザー「US-600T」(株式会社日本精機製作所製)を用いて20分間分散処理を行った後に、室温まで冷却した。得られた分散物に脱イオン水を加え、固形分濃度を20質量%に調整し、離型剤粒子分散液W-1を得た。体積中位粒径(D50)は0.45μm、CV値は26%であった。
製造例P1(着色剤粒子分散液P-1の製造)
内容積1Lのビーカーに、銅フタロシアニン顔料「ECB-301」(大日精化工業株式会社製)116.2g、アニオン性界面活性剤「ネオペレックス(登録商標)G-15」(花王株式会社製、15質量%ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム水溶液)154.9g及び脱イオン水340gを混合し、ホモジナイザーを用いて室温下で3時間分散させた後、固形分濃度が24質量%になるように脱イオン水を加えることにより着色剤粒子分散液P-1を得た。分散液中の着色剤粒子の体積中位粒径(D50)は0.12μmであった。
実施例1(トナー1の製造)
脱水管、撹拌装置及び熱電対を装備した内容積3Lの4つ口フラスコに、樹脂粒子分散液X-1を300g、離型剤粒子分散液W-1を49.7g、着色剤粒子分散液P-1を33.8g、及び非イオン性界面活性剤「エマルゲン(登録商標)150」(花王株式会社製、ポリオキシエチレン(平均付加モル数50)ラウリルエーテルの10質量%水溶液)9g、脱イオン水150.0gを温度25℃で混合した。次に、該混合物を撹拌しながら、硫酸アンモニウム31.0gを脱イオン水468.4gに溶解した水溶液に4.8質量%水酸化カリウム水溶液22.7gを添加してpH8.4に調整した溶液を、25℃で10分かけて滴下した後、62℃まで2時間かけて昇温し、凝集粒子の体積中位粒径(D50)が5.1μmになるまで、62℃で保持し、凝集粒子1の分散液を得た。
凝集粒子1の分散液の温度を55℃まで低下させ、55℃で保持しながら、樹脂粒子分散液Y-1を60gと脱イオン水18.3gの混合液を120分かけて添加し、凝集粒子に樹脂粒子が凝集した、凝集粒子2の分散液を得た。
凝集粒子2の分散液に、アニオン性界面活性剤「エマール(登録商標)E-27C」(花王株式会社製、ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸ナトリウム、有効濃度27質量%)42.9g、脱イオン水1457g、を混合した水溶液を添加した。その後、75℃まで1時間かけて昇温した。この際、凝集粒子2の分散液のpHは6.9であった。75℃に到達後、10質量%硫酸アルミニウム水溶液を1g/minの速度で添加しながら円形度を測定し、円形度が0.965~0.975の範囲に到達するまで75℃を保持することによって、凝集粒子が融着した融着粒子の分散液を得た。添加した10質量%硫酸アルミニウム水溶液は35gであり、融着粒子の分散液はpH4.0であった。
得られた融着粒子の分散液を30℃に冷却し、吸引濾過して固形分を分離した後、25℃の脱イオン水で洗浄し、35℃で48時間真空乾燥を行って、トナー粒子を得た。得られたトナー粒子の物性を表4に示した。
トナー粒子100質量部、疎水性シリカ「RY50」(日本アエロジル株式会社製、個数平均粒径;0.04μm)2.5質量部、及び疎水性シリカ「キャボシル(登録商標)TS720」(キャボットジャパン株式会社製、個数平均粒径;0.012μm)1.0質量部をヘンシェルミキサーに入れて撹拌し、150メッシュの篩を通過させてトナー1を得た。各種評価を行い、その結果を表4に示した。
10質量%硫酸アルミニウム水溶液の代わりに、10質量%塩化アルミニウム水溶液 27gを用いた以外は実施例1と同様にして、トナー2を得た。各種評価を行い、その結果を表4に示した。
10質量%硫酸アルミニウム水溶液の代わりに、10%質量塩化鉄(III)水溶液 33gを用いた以外は実施例1と同様にして、トナー3を得た。各種評価を行い、その結果を表4に示した。
10質量%硫酸アルミニウム水溶液の添加量を28gとした以外は実施例1と同様にして、トナー4を得た。各種評価を行い、その結果を表4に示した。
樹脂粒子分散液X-1の代わりに、樹脂粒子分散液X-2を用いた以外は実施例1と同様にして、トナー4を得た。各種評価を行い、その結果を表4に示した。
10質量%硫酸アルミニウム水溶液の代わりに、1mol/L硫酸 25gを用いた以外は実施例1と同様にして、トナー51を得た。各種評価を行い、その結果を表4に示した。
10質量%硫酸アルミニウム水溶液の代わりに、1mol/L硫酸 49gを用いた以外は実施例1と同様にしてトナーを得ようとした。しかしながら、融着粒子の分散液がpH4になるまで1.0mol/L硫酸を添加しようとしたところ、上記添加量で、大凝集が発生した。粒径等測定及び評価は不可能であった。
10質量%硫酸アルミニウム水溶液の代わりに、10質量%塩化マグネシウム水溶液 20gを用いた以外は実施例1と同様にして、トナー53を得た。各種評価を行い、その結果を表4に示した。10質量%塩化マグネシウム水溶液を添加したが、pH変化が小さくpH4に調整することはできなかった。
硫酸アルミニウム水溶液を添加せず、75℃で3時間保持することで融着工程を終了したこと以外は実施例1と同様にして、トナー54を得た。各種評価を行い、その結果を表4に示した。
Claims (2)
- ポリエステル系樹脂Aを含有する樹脂粒子aを凝集させて凝集粒子1を得る工程、
ポリエステル系樹脂Bを含有する樹脂粒子bを凝集粒子1に付着させて凝集粒子2を得る工程、及び
前記凝集粒子2を水系媒体内で融着させる工程を含む静電荷像現像用トナーの製造方法であって、
前記凝集粒子2を得る工程において凝集停止剤を添加して凝集を停止させ、
前記融着させる工程において、前記凝集粒子2に含まれる最も高いガラス転移温度を有するポリエステル系樹脂のガラス転移温度以上の温度で、且つ、3価以上の金属化合物の添加により、水系媒体内のpHを前記金属化合物の添加前より、1.0以上低下させる、静電荷像現像用トナーの製造方法。 - 前記金属化合物がアルミニウム化合物又は鉄(III)化合物である、請求項1に記載の静電荷像現像用トナーの製造方法。
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