JP7010312B2 - 地山補強工法 - Google Patents
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Description
上半部切羽15の安定を確保しつつトンネルの変位を抑制するために、1掘進ごとに鋼製支保工(不図示)を建て込み、吹付コンクリート41を吹き付け後、ロックボルト(不図示)を打設して支保構造を形成する。
上半部1を一定の区間に亘って掘進後、下半部2の掘削および上半部1と同様な支保構造を形成する。
また、インバート部2-1においては、トンネルの変形や沈下状況に応じて支保構造や構築時期が異なってくる。
早期に変位抑制が必要な場合は、床付け面28に湾曲したインバートストラット71を設置し、吹付けコンクリートを吹き付けて一次インバートを形成して、トンネル断面を閉合する。
一方、早期に変位抑制が不要な場合は、覆工コンクリート42の施工前までにインバートコンクリート72を構築してトンネル断面の閉合を行う。
このように、トンネル断面を円環構造にしてトンネルの安定化を図っている。
なお、図9において、覆工コンクリート42、インバートコンクリート72は記載を省略している。
(ア)地山強度が小さく、切羽の自立性が悪い。(イ)地山の強度が小さく、剛性が低いため、掘削時に地山の変形が大きくなる。(ウ)湧水が生ずる場合があり、切羽が不安定になりやすい。
地山に過大な変形が生じると切羽の崩落や不安定化の原因となるので、地山の変形を極力抑制する必要がある。さらに、小土被りで近接構造物等がある場合には、これらの近接構造物等の機能に支障を与えないように地山の変形(特に沈下)を抑制する対策が必要である。
また、インバート部2-1については、変位状況により床付け面28に吹付けコンクリートを施工して仮インバートとする場合やインバートストラットと吹付けコンクリートによる仮インバートとする場合がある。ここで、「下部地山3」とは、下半部2とインバート部2-1とを合わせた総称をいう。
しかし、このような早期閉合が必要な地山は崩壊性が高いため、上半仮インバート60を設置した後に下部地山3を掘削する際に下部地山3の崩落が発生しやすい。このような場合には下部地山3の崩落によって地山の緩み範囲がさらに増大し、トンネルに大きな変位が生じる。
特に脆弱な地山ではインバートの曲率半径が小さいトンネル形状となるため、インバートの掘削深さが大きくなり、インバート切羽25の不安定化に起因した地山の緩み拡大や地表面沈下が懸念される。
しかしながら、インバート切羽25が不安定であると、図9に示すように、原点Oを中心とした所定の曲率半径Rの円弧すべり面Sが生じやすく、この円弧すべり面Sに沿って地すべりが発生するおそれがある。
この特許文献1に記載の下部地山補強工法は、トンネルの上半部の切羽手前の底部両端から、鉛直下向き内側に削孔を設け、その削孔に注入管を挿入して注入剤を注入したり、削孔奥からセメントミルクを高圧噴射することで、未掘削部分である下半部の掘削線の周辺地山に改良体を設ける工法である。
この工法によると、切羽手前の底部両端から改良体を設けるため、切羽前方の支保工脚部を補強すると共に、下半部の側部の地盤を改良する効果を高めることができる。
本発明は、かかる従来の課題を解決するものであり、山岳トンネルの施工における下部地山掘削時の地山崩落や変位、変状を抑制する地山補強工法を提供することを目的とする。
請求項2に記載の地山補強工法の発明は、請求項1の記載において、前記芯材を通じて地山内に地山改良材を注入し、地山を補強することを要旨とする。
請求項3に記載の地山補強工法の発明は、請求項1の記載において、前記芯材が中空であり、かつ前記下部地山を掘削する際に撤去可能であることを要旨とする。
請求項4に記載の地山補強工法の発明は、請求項1乃至3のうちのいずれか一項の記載において、前記芯材の長さが、前記仮インバート面から下部の床付け面までの長さより長いことを要旨とする。
また、芯材を通じて地山内に地山改良材を注入する場合には、更に下部地山を改良することができ下部地山の掘削時の自立性が向上する。
更に、芯材が中空であり、かつ下部地山を掘削する際に撤去可能であれば、下部地山の掘削を容易かつ安全に行うことが可能となる。
また、芯材の長さが、仮インバート面から下部の床付け面までの長さより長い場合には、下部地山の広い範囲を縫い付け、改良することができ、下部地山掘削時の崩落防止、緩みや変位の抑制に特に効果的となる。
図1は、本発明の実施例に係るトンネルの軸方向に対して略直交する横断面を模式的に示す図である。
トンネルの掘削は、上半部1をトンネル軸に沿って先行して掘削し、1掘進ごとに鋼製支保工(不図示)を建て込み、吹付けコンクリート11を吹き付け後、ロックボルト(不図示)を打設して支保構造を形成する。
上半部1を一定の区間(30m程度)に亘って掘進後、下半部2の掘進(2~4m程度)に追従しながらインバート部2-1の掘進(2~4m程度)を行う。
下半部2においては、1掘進ごとに鋼製支保工(不図示)を建て込み、吹付けコンクリート11を吹き付け後、ロックボルト(不図示)を打設して支保構造を形成する。
インバート部2-1においては、1掘進ごとに床付け面28に湾曲したインバートストラット21を設置し、吹付けコンクリートを吹き付けて一次インバートを形成する。
以上のそれぞれの作用効果については、前述した通りである。
なお、床付け面28の中央Bから天端Uまでの高さhは、通常10m程度であり、仮インバート面30aからSL(スプリングライン)までの高さDは、75cm程度である。ここで、SLとは、上半部1と下半部2を垂直方向に分ける線である。また、仮インバートの厚さTは、25cm程度である。そして、床付け面28から仮インバート面30aまでの高さMは4m程度である。
[1]芯材の打設位置決め
この仮インバート面30a全面に、芯材の打設位置のマーキングを行う。このマーキングは、図3及び図4に示すように、横断方向(トンネルの軸方向に対し水平方向に直交する方向)及び縦断方向(トンネルの軸方向に沿う方向)に一定の間隔で行う。
ここで、図4は、図3における仮インバート30の模式的な平面図である。図4において、紙面下側が坑口側、紙面上側が切羽側である。
坑口側1列目と2列目において、芯材の打設を一定間隔で削孔のためのマーキングをする。削孔のうち奇数孔31が1列目、偶数孔32が2列目となるように、左端LEから右端REまでの範囲において一定間隔でマーキングを行う。奇数孔31同士、偶数孔32同士の間隔は横断方向に略1.2mの千鳥配置、奇数孔31と偶数孔32の縦断方向の間隔は略1mとする。同様に、切羽側まで奇数列目には奇数孔31が、偶数列目には偶数孔32となるように、左端LEから右端REまでの範囲において千鳥配置となるようにマーキングをする。
芯材を打設するには、通常、削孔を形成してから、削孔への芯材の挿入を行う。削孔は、前述の仮インバート面30aの複数のマーキング箇所から下部地山3に略鉛直方向に行う。削孔を形成するには、ドリルジャンボに、先端にビットを装着した削孔ロッドを設置し、マーキング位置にガイドセルをセットし、所定長の削孔を行う。ビット径は打設する芯材の径より大きくする。例えば、芯材の径が76mmの場合、削孔の径は略90mmとすることができる。ただし、これらの径に限定されるものではなく、芯材の径との関係で、削孔の径を選択できる。
「鉛直方向」は図5に示すように、仮インバート面30aに対して垂直な方向を意味するが、略垂直であればよく、例えば、SLに対して略垂直な方向も含む。
また、芯材は下部地山を掘削する際には撤去可能であることが好ましく、例えば塩化ビニル管、スリット付き鋼管であれば、撤去が可能である。例えば、管の円周方向にスリットの入った鋼管であれば、下部地山を掘削する際に、スリット部から容易に切断して撤去可能である。
打設した芯材の口元に注入アダプター(図示せず)を取り付け、注入アダプターから芯
材内に所定の地山改良材を注入する。芯材内に注入された地山改良材は、芯材の外周部に設置された吐出孔を通じて芯材周辺の地山内に拡散され、地山の空隙や亀裂を充填することで地山を補強する。
地山改良剤は、地山を改良することができる素材であれば特に限定はないが、セメント系、ウレタン系などから選択できるが、地山を早期に補強するためには強度発現の速いウレタン系注入材が望ましい。また、湧水の多い地山では耐水性能の高いウレタン系減水材が好適である。
施工順序について、以下説明する。芯材の打設、地山改良材の注入の順序は隣接管の閉塞防止を目的に、1本おきに行う。
すなわち、例えば図5に示すように、1列目の9個の奇数孔31への9本の芯材51の打設を行う。完了後にこれら奇数孔31に挿入されたそれぞれ9本の芯材51への地山改良剤の注入を行う。
その後、図6に示すように、2列目の8個の偶数孔32への8本の芯材52の打設を行う。完了後にこれら偶数孔32に挿入されたそれぞれ8本の芯材52への地山改良剤の注入を行う。
同様に3列目は、1列目と同様に、4列目は2列目と同様にして、芯材の打設、地山改良材の注入を坑口側から切羽側へ進めていき、坑口側から切羽側までの30m程度までの施工を1施工ブロックとして繰り返していく。
なお、図5、図6及び後述の図7において、覆工コンクリート12、22は記載を省略している。
また、本発明の実施形態では所定の長さの削孔を形成した後にロッド等を回収し、削孔内に芯材を挿入する方法を説明したが、地山状況によっては2重管方式で芯材の打設と挿入を同時に行ってもよい。
本発明に係る実施形態の効果を定量的に把握するため、下部掘削時のトンネル縦断方向の安定性を従来の技術と本発明とで比較した。前述した通り、従来技術では図9に示すように、仮インバート60と床付け面28の間の下部地山にすべり線Sに沿って下部地山のすべりや崩落が発生しやすい。
本発明では図7に示すように、上半部1の仮インバート面30aから床付け面28の間の下部地山3に芯材51、52を打設するため、図示するように芯材51、52がすべり線Sの上下の地山を縫い付けることができる。この縫い付け効果によって下部地山掘削時の安定が図られる。
更に芯材51、52を通じて地山内に地山改良材を注入して地山を補強することで、周辺地山を改良し、芯材と地山の付着力を向上させることが可能となるため、下部地山3を掘削する際の崩落防止や地山の緩み抑制が図られ、トンネルの変位を抑制できる。
Claims (6)
- トンネル外周部の下部地山の掘削に先立って、該トンネルの上半部の掘削後に上半盤に仮インバートを設置し、該仮インバート面から前記下部地山に略鉛直方向に複数の芯材を打設し、
前記複数の芯材の打設は、前記仮インバート面において前記トンネルの軸方向に対し水平方向に直交する横断方向にわたって一定の間隔で行われ、
前記複数の芯材の打設は、前記仮インバート面に千鳥配置で行われることを特徴とする地山補強工法。 - トンネル外周部の下部地山の掘削に先立って、該トンネルの上半部の掘削後に上半盤に仮インバートを設置し、該仮インバート面から前記下部地山に略鉛直方向に複数の芯材を打設し、
前記複数の芯材の打設は、前記仮インバート面において前記トンネルの軸方向に対し水平方向に直交する横断方向にわたって一定の間隔で行われ、
前記芯材を通じて前記下部地山内に地山改良材を注入し、前記下部地山を補強することを特徴とする地山補強工法。 - トンネル外周部の下部地山の掘削に先立って、該トンネルの上半部の掘削後に上半盤に仮インバートを設置し、該仮インバート面から前記下部地山に略鉛直方向に複数の芯材を打設し、
前記複数の芯材の打設は、前記仮インバート面において前記トンネルの軸方向に対し水平方向に直交する横断方向にわたって一定の間隔で行われ、
前記芯材が中空であり、かつ前記下部地山を掘削する際に切断により撤去可能であることを特徴とする地山補強工法。 - 前記芯材を通じて前記下部地山内に地山改良材を注入し、前記下部地山を補強することを特徴とする請求項1に記載の地山補強工法。
- 前記芯材が中空であり、かつ前記下部地山を掘削する際に切断により撤去可能であることを特徴とする請求項1、2又は4に記載の地山補強工法。
- 前記芯材の長さが、前記仮インバート面から下部の床付け面までの長さより長いことを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一項に記載の地山補強工法。
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