JP7010282B2 - 電力変換装置、モータ駆動ユニットおよび電動パワーステアリング装置 - Google Patents
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Description
本開示は、電力変換装置、モータ駆動ユニットおよび電動パワーステアリング装置に関する。
近年、電動モータ(以下、単に「モータ」と表記する。)、電力変換装置およびECUが一体化された機電一体型モータが開発されている。特に車載分野において、安全性の観点から高い品質保証が要求される。そのため、部品の一部が故障した場合でも安全動作を継続できる冗長設計が取り入れられている。冗長設計の一例として、1つのモータに対して2つの電力変換装置を設けることが検討されている。他の一例として、メインのマイクロコントローラにバックアップ用マイクロコントローラを設けることが検討されている。
特許文献1は、制御部と、2つのインバータとを有し、三相モータに供給する電力を変換する電力変換装置を開示する。2つのインバータの各々は電源およびグランド(以下、「GND」と表記する。)に接続される。一方のインバータは、モータの三相の巻線の一端に接続され、他方のインバータは、三相の巻線の他端に接続される。各インバータは、各々がハイサイドスイッチ素子およびローサイドスイッチ素子を含む3つのレグから構成されるブリッジ回路を有する。制御部は、2つのインバータにおけるスイッチ素子の故障を検出した場合、モータ制御を正常時の制御から異常時の制御に切替える。正常時の制御では、例えば、2つのインバータのスイッチ素子をスイッチングすることによりモータが駆動される。異常時の制御では、例えば、故障したインバータに構成された巻線の中性点を用いて、故障していないインバータによってモータが駆動される。
上述した従来の技術では、モータ出力のさらなる向上が求められていた。
本開示の実施形態は、インバータに接続されるコイル群の数を調整することによりモータ出力を任意の大きさに変化させることが可能となる電力変換装置を提供する。
本開示の例示的な電力変換装置は、電源からの電力を、直列接続され得るm個(mは3以上の整数)のコイル群を有するn相(nは3以上の整数)のモータに供給する電力に変換する電力変換装置であって、前記m個のコイル群の一端に接続される第1インバータと、前記m個のコイル群の他端に接続される第2インバータと、前記m個のコイル群において隣接する2つのコイル群の間にそれぞれ接続されるm-1個の分離リレー回路であって、各々は隣接する2つのコイル群の接続・非接続を切替える、m-1個の分離リレー回路と、隣接する2つのコイル群の間で、前記m-1個の分離リレー回路の各々の前記第1インバータ側に設けられたm-1個の第1中性点リレー回路であって、各々は、隣接する2つのコイル群のうちの前記第1インバータ側のコイル群の端同士の接続・非接続を切替える、m-1個の第1中性点リレー回路と、隣接する2つのコイル群の間で、前記m-1個の分離リレー回路の各々の前記第2インバータ側に設けられたm-1個の第2中性点リレー回路であって、各々は、隣接する2つのコイル群のうちの前記第2インバータ側のコイル群の端同士の接続・非接続を切替える、m-1個の第2中性点リレー回路と、を備える。
本開示の例示的な実施形態によると、複数の分離リレー回路、複数の第1中性点リレー回路および複数の第2中性点リレー回路を用いて、インバータに接続されるコイル群の数を調整することにより、モータ出力を任意の大きさに変化させることが可能となる電力変換装置、当該電力変換装置を備えるモータ駆動ユニット、および、当該モータ駆動ユニットを備える電動パワーステアリング装置が提供される。
以下、添付の図面を参照しながら、本開示の電力変換装置、モータ駆動ユニットおよび電動パワーステアリング装置の実施形態を詳細に説明する。但し、以下の説明が不必要に冗長になるのを避け、当業者の理解を容易にするため、必要以上に詳細な説明は省略する場合がある。例えば、既によく知られた事項の詳細説明や実質的に同一の構成に対する重複説明を省略する場合がある。
本明細書において、電源からの電力を、三相(U相、V相、W相)の巻線(「コイル」と表記する場合がある。)を有する三相モータに供給する電力に変換する電力変換装置を例にして、本開示の実施形態を説明する。ただし、電源からの電力を、四相または五相などのn相(nは4以上の整数)の巻線を有するn相モータに供給する電力に変換する電力変換装置も本開示の範疇である。
(実施形態1)
〔モータ駆動ユニット1000および電力変換装置100の構造〕 図1は、本実施形態によるモータ駆動ユニット1000の典型的なブロック構成を模式的に示す。
〔モータ駆動ユニット1000および電力変換装置100の構造〕 図1は、本実施形態によるモータ駆動ユニット1000の典型的なブロック構成を模式的に示す。
モータ駆動ユニット1000は、典型的に、電力変換装置100、モータ200および制御回路300を備える。
モータ駆動ユニット1000は、モジュール化され、例えば、モータ、センサ、ドライバおよびコントローラを有するモータモジュールとして製造および販売され得る。本明細書では、構成要素としてモータ200を備えるシステムを例に、モータ駆動ユニット1000を説明する。ただし、モータ駆動ユニット1000は、構成要素としてモータ200を備えない、モータ200を駆動するためのシステムであってもよい。
電力変換装置100は、第1インバータ110、第2インバータ120、分離リレー回路130、第1中性点リレー回路140、第2中性点リレー回路150および電流センサ400を備える。電力変換装置100は、電源101(図2を参照)からの電力をモータ200に供給する電力に変換することが可能である。例えば、第1および第2インバータ110、120は、直流電力を、U相、V相およびW相の擬似正弦波である三相交流電力に変換することが可能である。
第1インバータ110は、モータ200の第1コイル群210に接続され、第2インバータ120は、第2コイル群220に接続される。本明細書において、部品(構成要素)同士の間の「接続」とは、主に電気的な接続を意味する。
モータ200は、例えば三相交流モータである。モータ200は、第1および第2コイル群210、220を有する。第1および第2コイル群210、220の各々は、U相、V相およびW相の巻線を有する。第1および第2コイル群210、220は、後述する分離リレー回路130によって直列接続することが可能である。巻線の巻き方は、集中巻きまたは分布巻きであり得る。
制御回路300は、マイクロコントローラなどを備える。制御回路300は、電流センサ400および角度センサ320からの入力信号に基づいて電力変換装置100を制御する。その制御手法として、例えばベクトル制御、パルス幅変調(PWM)および直接トルク制御(DTC)がある。
図2を参照して、電力変換装置100の具体的な回路構成を説明する。
図2は、本実施形態による電力変換装置100の典型的な回路構成を模式的に示す。
電力変換装置100は、典型的に、電源101、コイル102、コンデンサ103、第1インバータ110、第2インバータ120、分離リレー回路130、第1中性点リレー回路140および第2中性点リレー回路150を備える。
電源101は所定の電源電圧(例えば12V)を生成する。電源101として、例えば直流電源が用いられる。ただし、電源101は、AC-DCコンバータまたはDC―DCコンバータであってもよいし、バッテリー(蓄電池)であってもよい。電源101は、第1および第2インバータ110、120に共通の単一電源であってもよいし、第1インバータ110用の第1電源および第2インバータ120用の第2電源を有していてもよい。
電源101と各インバータとの間にコイル102が設けられている。コイル102は、ノイズフィルタとして機能し、各インバータに供給する電圧波形に含まれる高周波ノイズ、または各インバータで発生する高周波ノイズを電源101側に流出させないように平滑化する。また、各インバータの電源端子には、コンデンサ103が接続されている。コンデンサ103は、いわゆるバイパスコンデンサであり、電圧リプルを抑制する。コンデンサ103は、例えば電解コンデンサであり、容量および使用する個数は設計仕様などによって適宜決定される。
第1インバータ110は、3個のレグを有するブリッジ回路を備える。各レグは、ハイサイドスイッチ素子およびローサイドスイッチ素子を有する。具体的には、U相用レグは、ハイサイドスイッチ素子111Hおよびローサイドスイッチ素子111Lを有する。V相用レグは、ハイサイドスイッチ素子112Hおよびローサイドスイッチ素子112Lを有する。W相用レグは、ハイサイドスイッチ素子113Hおよびローサイドスイッチ素子113Lを有する。スイッチ素子として、例えば電界効果トランジスタ(典型的にはMOSFET)または絶縁ゲートバイポーラトランジスタ(IGBT)を用いることができる。
第1インバータ110は、例えば、U相、V相およびW相の各相の巻線に流れる電流を検出するための電流センサ400(図1を参照)として、シャント抵抗111R、112Rおよび113Rをそれぞれ各レグに有する。電流センサ400は、各シャント抵抗に流れる電流を検出する電流検出回路(不図示)を有する。例えば、シャント抵抗は、各レグにおいて、ローサイドスイッチ素子とGNDとの間に接続され得る。シャント抵抗の抵抗値は、例えば0.5mΩ~1.0mΩ程度である。
シャント抵抗の数は3つに限られない。例えば、U相、V相用の2つのシャント抵抗111R、112R、V相、W相用の2つのシャント抵抗112R、113R、または、U相、W相用の2つのシャント抵抗111R、113Rを用いることが可能である。使用するシャント抵抗の数およびシャント抵抗の配置は、製品コストおよび設計仕様などを考慮して適宜決定される。
第2インバータ120は、3個のレグを有するブリッジ回路を備える。U相用レグは、ハイサイドスイッチ素子121Hおよびローサイドスイッチ素子121Lを有する。V相用レグは、ハイサイドスイッチ素子122Hおよびローサイドスイッチ素子122Lを有する。W相用レグは、ハイサイドスイッチ素子123Hおよびローサイドスイッチ素子123Lを有する。第1インバータ110と同様に、第2インバータ120は、例えば、シャント抵抗121R、122Rおよび123Rを有する。
第1インバータ110は、第1コイル群210の一端に接続される。具体的に説明すると、第1インバータ110のU相用レグ(つまり、ハイサイドスイッチ素子およびローサイドスイッチ素子の間のノード)は、第1コイル群210のU相コイル211の一端に接続される。V相用レグは、V相コイル212の一端に接続される。W相用レグは、W相コイル213の一端に接続される。
第2インバータ120は、第2コイル群220の一端に接続される。具体的に説明すると、第2インバータ120のU相用レグは、第2コイル群220のU相コイル221の一端に接続される。V相用レグは、V相コイル222の一端に接続される。W相用レグは、W相コイル223の一端に接続される。
分離リレー回路130は、第1コイル群210の他端と第2コイル群220の他端と、に接続される。分離リレー回路130は、第1および第2コイル群210、220の接続・非接続を切替えることが可能である。
分離リレー回路130は、第1コイル群210の3個のコイル211、212および213と、第2コイル群220の3個のコイル221、222および223と、の接続・非接続を切替える3個の分離リレー131、132および133を備える。具体的に説明すると、分離リレー131は、第1コイル群210のコイル211の他端と第2コイル群220のコイル221の他端とに接続され、それらのコイルの接続・非接続を切替える。分離リレー132は、コイル212の他端とコイル222の他端とに接続され、それらのコイルの接続・非接続を切替える。分離リレー133は、コイル213の他端とコイル223の他端とに接続され、それらのコイルの接続・非接続を切替える。
第1中性点リレー回路140は、第1コイル群210の他端に接続される。第1中性点リレー回路140は、第1コイル群210の他端同士の接続・非接続を切替えることが可能である。
第1中性点リレー回路140は、一端がノードN1に共通に接続され、かつ、他端が第1コイル群210の3個のコイル211、212および213に接続される3個の第1中性点リレー141、142および143を有する。具体的に説明すると、第1中性点リレー141は、ノードN1とコイル211の他端とに接続される。第1中性点リレー142は、ノードN1とコイル212の他端とに接続される。第1中性点リレー143は、ノードN1とコイル213の他端とに接続される。
第2中性点リレー回路150は、第2コイル群220の他端に接続される。第2中性点リレー回路150は、第2コイル群220の他端同士の接続・非接続を切替えることが可能である。
第2中性点リレー回路150は、一端がノードN2に共通に接続され、かつ、他端が第2コイル群220の3個のコイル221、222および223に接続される3個の第2中性点リレー151、152および153を有する。具体的に説明すると、第2中性点リレー151は、ノードN2とコイル221の他端とに接続される。第2中性点リレー152は、ノードN2とコイル222の他端とに接続される。第2中性点リレー153は、ノードN2とコイル223の他端とに接続される。
上述した分離リレーおよび中性点リレーとして、例えば、MOSFET、サイリスタ、アナログスイッチIC、トライアックなどの半導体スイッチ素子またはメカニカルリレーを用いることができる。
以下、分離リレー回路130、第1および第2中性点リレー回路140、150のオン・オフ状態、および、オン・オフ状態における、第1および第2コイル群210、220の電気的な接続関係を詳細に説明する。
分離リレー回路130がオンすると、第1コイル群210と第2コイル群220とが接続される。分離リレー回路130がオフすると、第1コイル群210は第2コイル群220から電気的に切り離される。「分離リレー回路130がオンする」とは、分離リレー回路130内の分離リレー131、132および133が全てオンすることを意味し、「分離リレー回路130がオフする」とは、分離リレー131、132および133が全てオフすることを意味する。
第1中性点リレー回路140がオンすると、第1コイル群210の三相のコイル211、212および213の他端同士が接続される。その結果、第1コイル群210はY結線される。第1中性点リレー回路140の中のノードN1を中性点として機能させることが可能となる。第1中性点リレー回路140がオフすると、三相のコイル211、212および213の他端同士は接続されない。「第1中性点リレー回路140がオンする」とは、第1中性点リレー回路140内の第1中性点リレー141、142および143が全てオンすることを意味し、「第1中性点リレー回路140がオフする」とは、第1中性点リレー141、142および143が全てオフすることを意味する。
第2中性点リレー回路150がオンすると、第2コイル群220の三相のコイル221、222および223の他端同士が接続される。その結果、第2コイル群220はY結線される。第2中性点リレー回路150の中のノードN2を中性点として機能させることが可能となる。第2中性点リレー回路150がオフすると、三相のコイル221、222および223の他端同士は接続されない。「第2中性点リレー回路150がオンする」とは、第2中性点リレー回路150内の第2中性点リレー151、152および153が全てオンすることを意味し、「第2中性点リレー回路150がオフする」とは、第2中性点リレー151、152および153が全てオフすることを意味する。
本実施形態において、分離リレー回路130、第1および第2中性点リレー回路140、150は、同時にオンまたはオフしない。分離リレー回路130がオンすると、第1および第2中性点リレー回路140、150がオフする。分離リレー回路130がオフすると、第1および第2中性点リレー回路140、150の少なくとも1つがオンする。
再び図1を参照する。制御回路300は、例えば、電源回路310と、角度センサ320と、入力回路330と、マイクロコントローラ340と、駆動回路350と、ROM360とを備える。制御回路300は電力変換装置100に接続される。制御回路300は、電力変換装置100を、具体的には、第1インバータ110、第2インバータ120、分離リレー回路130、第1中性点リレー回路140および第2中性点リレー回路150を制御する。
制御回路300は、目的とするロータの位置(回転角)、回転速度、および電流などを制御してクローズドループ制御を実現することができる。回転速度は、例えば、回転角(rad)を時間微分することにより得られ、単位時間(例えば1分間)にロータが回転する回転数(rpm)で表される。制御回路300は、角度センサに代えてトルクセンサを備えていてもよい。この場合、制御回路300は、目的とするモータトルクを制御することが可能である。
電源回路310は、回路内の各ブロックに必要なDC電圧(例えば3V、5V)を生成する。
角度センサ320は、例えばレゾルバまたはホールICである。角度センサ320は、磁気抵抗(MR)素子を有するMRセンサとセンサマグネットとの組み合わせによっても実現される。角度センサ320は、モータ200のロータの回転角(以下、「回転信号」と表記する。)を検出し、回転信号をマイクロコントローラ340に出力する。モータ制御手法(例えばセンサレス制御)によっては、角度センサ320は必要とされない場合がある。
入力回路330は、電流センサ400によって検出されたモータ電流値(以下、「実電流値」と表記する。)を受け取る。入力回路330は、マイクロコントローラ340の入力レベルに実電流値のレベルを必要に応じて変換し、実電流値をマイクロコントローラ340に出力する。入力回路330は、アナログデジタル変換回路である。
マイクロコントローラ340は、角度センサ320によって検出されたロータの回転信号を受信する。マイクロコントローラ340は、実電流値およびロータの回転信号などに従って目標電流値を設定してPWM信号を生成し、それを駆動回路350に出力する。
例えば、マイクロコントローラ340は、電力変換装置100の第1および第2インバータ110、120における各スイッチ素子のスイッチング動作(ターンオンまたはターンオフ)を制御するためのPWM信号を生成する。マイクロコントローラ340は、電力変換装置100の分離リレー回路130の中の各分離リレーのオン・オフの状態と、第1および第2中性点リレー回路140、150の中の各中性点リレーのオン・オフの状態と、を決定する信号を生成することが可能である。
駆動回路350は、典型的にはゲートドライバである。駆動回路350は、第1および第2インバータ110、120における各スイッチ素子のスイッチング動作を制御する制御信号(例えば、ゲート制御信号)をPWM信号に従って生成し、各スイッチ素子に制御信号を与える。さらに、駆動回路350は、マイクロコントローラ340からの、各分離リレーおよび各中性点リレーのオン・オフの状態を決定する信号に従って、それらのリレーをオン・オフする制御信号を生成し、それらに制御信号を与えることが可能である。マイクロコントローラ340は、駆動回路350の機能を有していてもよい。その場合、駆動回路350は必要とされない。
ROM360は、例えば書き込み可能なメモリ(例えばPROM)、書き換え可能なメモリ(例えばフラッシュメモリ)または読み出し専用のメモリである。ROM360は、マイクロコントローラ340に電力変換装置100を制御させるための命令群を含む制御プログラムを格納する。例えば、制御プログラムはブート時にRAM(不図示)に一旦展開される。
〔モータ駆動ユニット1000の動作〕
以下、モータ駆動ユニット1000の動作の具体例を説明し、主として電力変換装置100の動作の具体例を説明する。
以下、モータ駆動ユニット1000の動作の具体例を説明し、主として電力変換装置100の動作の具体例を説明する。
電力変換装置100の制御に、正常時および異常時の制御がある。制御回路300(主としてマイクロコントローラ340)は、電力変換装置100の制御を正常時の制御から異常時の制御に切替えることができる。
正常とは、第1および第2インバータ110、120のスイッチ素子に故障が生じていない状態を指す。電力変換装置100は、正常時の制御において、第1および第2動作モードを有する。第1動作モードは、モータの高速回転による高いモータ出力(高出力)が要求されない動作モードである。第1動作モードは、コイルの一端に一方のインバータが接続され、コイルの他端に他方のインバータが接続される電力変換装置の駆動に一般に用いられる従来のモードに相当する。第2動作モードは、モータの高速回転による高出力が要求される動作モードである。制御回路300は、第1および第2動作モードの間で正常時の動作モードを切替えることが可能である。
(第1動作モード)
制御回路300は、分離リレー回路130をオンし、かつ、第1および第2中性点リレー回路140、150をオフする。これにより、第1インバータ110は、第1コイル群210の一端に接続され、かつ、第2インバータ120は、第2コイル群220の一端に接続された状態で、第1および第2コイル群210、220の他端同士が接続される。この接続状態で、第1および第2インバータ110、120は、三相のコイルに流れる電流を独立に制御する三相通電制御を行う。
制御回路300は、分離リレー回路130をオンし、かつ、第1および第2中性点リレー回路140、150をオフする。これにより、第1インバータ110は、第1コイル群210の一端に接続され、かつ、第2インバータ120は、第2コイル群220の一端に接続された状態で、第1および第2コイル群210、220の他端同士が接続される。この接続状態で、第1および第2インバータ110、120は、三相のコイルに流れる電流を独立に制御する三相通電制御を行う。
図3は、三相通電制御を行ったときにモータ200のU相、V相およびW相の各コイルに流れる電流値をプロットして得られる電流波形(正弦波)を例示する。横軸は、モータ電気角(deg)を示し、縦軸は電流値(A)を示す。図3の電流波形において、電気角30°毎に電流値をプロットしている。Ipkは各相の最大電流値(ピーク電流値)を表す。
表1は、図3の正弦波において電気角毎に、各相のコイルに流れる電流値を示す。表1は、具体的に、第1インバータ110から各相のコイルに流れる、電気角30°毎の電流の値、および、第2インバータ120から各相の巻線に流れる、電気角30°毎の電流の値を示す。ここで、第1インバータ110に対しては、第1インバータ110から各相のコイルに流れる電流方向を正の方向と定義する。図3に示される電流の向きはこの定義に従う。また、第2インバータ120に対しては、第2インバータ120から各相のコイルに流れる電流方向を正の方向と定義する。従って、第1インバータ110の電流と第2インバータ120の電流との位相差は180°となる。表1において、電流値I1の大きさは〔(3)1/2/2〕*Ipkであり、電流値I2の大きさはIpk/2である。
電気角0°において、U相の2つのコイル211、221には電流は流れない。V相の2つのコイル212、222には第2インバータ120から第1インバータ110に大きさI1の電流が流れ、W相の2つのコイル213、223には第1インバータ110から第2インバータ120に大きさI1の電流が流れる。
電気角30°においては、U相の2つのコイル211、221には第1インバータ110から第2インバータ120に大きさI2の電流が流れ、V相の2つのコイル212、222には第2インバータ120から第1インバータ110に大きさIpkの電流が流れ、W相の2つのコイル213、223には第1インバータ110から第2インバータ120に大きさI2の電流が流れる。
電気角60°において、U相の2つのコイル211、221には第1インバータ110から第2インバータ120に大きさI1の電流が流れ、V相の2つのコイル212、222には第2インバータ120から第1インバータ110に大きさI1の電流が流れる。W相の2つのコイル213、223には電流は流れない。
電気角90°において、U相の2つのコイル211、221には第1インバータ110から第2インバータ120に大きさIpkの電流が流れ、V相の2つのコイル212、222には第2インバータ120から第1インバータ110に大きさI2の電流が流れ、W相の2つのコイル213、223には第2インバータ120から第1インバータ110に大きさI2の電流が流れる。
電気角120°において、U相の2つのコイル211、221には第1インバータ110から第2インバータ120に大きさI1の電流が流れ、W相の2つのコイル213、223には第2インバータ120から第1インバータ110に大きさI1の電流が流れる。V相の2つのコイル212、222には電流は流れない。
電気角150°において、U相の2つのコイル211、221には第1インバータ110から第2インバータ120に大きさI2の電流が流れ、V相の2つのコイル212、222には第1インバータ110から第2インバータ120に大きさI2の電流が流れ、W相の2つのコイル213、223には第2インバータ120から第1インバータ110に大きさIpkの電流が流れる。
電気角180°において、U相の2つのコイル211、221には電流は流れない。V相の2つのコイル212、222には第1インバータ110から第2インバータ120に大きさI1の電流が流れ、W相の2つのコイル213、223には第2インバータ120から第1インバータ110に大きさI1の電流が流れる。
電気角210°において、U相の2つのコイル211、221には第2インバータ120から第1インバータ110に大きさI2の電流が流れ、V相の2つのコイル212、222には第1インバータ110から第2インバータ120に大きさIpkの電流が流れ、W相の2つのコイル213、223には第2インバータ120から第1インバータ110に大きさI2の電流が流れる。
電気角240°において、U相の2つのコイル211、221には第2インバータ120から第1インバータ110に大きさI1の電流が流れ、V相の2つのコイル212、222には第1インバータ110から第2インバータ120に大きさI1の電流が流れる。W相の2つのコイル213、223には電流は流れない。
電気角270°において、U相の2つのコイル211、221には第2インバータ120から第1インバータ110に大きさIpkの電流が流れ、V相の2つのコイル212、222には第1インバータ110から第2インバータ120に大きさI2の電流が流れ、W相の2つのコイル213、223には第1インバータ110から第2インバータ120に大きさI2の電流が流れる。
電気角300°において、U相の2つのコイル211、221には第2インバータ120から第1インバータ110に大きさI1の電流が流れ、W相の2つのコイル213、223には第1インバータ110から第2インバータ120に大きさI1の電流が流れる。V相の2つのコイル212、222には電流は流れない。
電気角330°において、U相の2つのコイル211、221には第2インバータ120から第1インバータ110に大きさI2の電流が流れ、V相の2つのコイル212、222には第2インバータ120から第1インバータ110に大きさI2の電流が流れ、W相の2つのコイル213、223には第1インバータ110から第2インバータ120に大きさIpkの電流が流れる。
図3に示される電流波形において、電流の向きを考慮した三相のコイルに流れる電流の総和は電気角毎に「0」となる。ただし、電力変換装置100の回路構成によれば、三相のコイルに流れる電流を独立に制御することができるため、電流の総和が「0」とはならない制御を行うことも可能である。例えば、制御回路300は、図3に示される電流波形が得られるPWM制御によって第1および第2インバータ110、120の各スイッチ素子のスイッチング動作を制御する。
(第2動作モード)
制御回路300は、モータの高速回転による高出力が要求されるとき、動作モードを第1動作モードから第2動作モードに切替えることができる。第2動作モードでは、分離リレー回路130はオフし、第1および第2中性点リレー回路140、150がオンする。これにより、第1コイル群210は第2コイル群から切り離される。第1コイル群210の他端同士がY結線され、第2コイル群220の他端同士がY結線される。この接続により、第1中性点リレー回路140のノードN1および第2中性点リレー回路150のノードN2をそれぞれ中性点として機能させることができる。
制御回路300は、モータの高速回転による高出力が要求されるとき、動作モードを第1動作モードから第2動作モードに切替えることができる。第2動作モードでは、分離リレー回路130はオフし、第1および第2中性点リレー回路140、150がオンする。これにより、第1コイル群210は第2コイル群から切り離される。第1コイル群210の他端同士がY結線され、第2コイル群220の他端同士がY結線される。この接続により、第1中性点リレー回路140のノードN1および第2中性点リレー回路150のノードN2をそれぞれ中性点として機能させることができる。
第1インバータ110は、Y結線された第1コイル群210に接続され、第2インバータ120は、Y結線された第2コイル群220に接続される。この接続状態で、第1インバータ110は第1コイル群210を通電し、第2インバータ120は第2コイル群220を通電することができる。
図4は、第2インバータ120が三相通電制御を行ったときにモータ200の第2コイル群220に流れる電流値をプロットして得られる電流波形(正弦波)を例示する。横軸は、モータ電気角(deg)を示し、縦軸は電流値(A)を示す。図4の電流波形において、電気角30°毎に電流値をプロットしている。Ipkは各相の最大電流値(ピーク電流値)を表す。
表2は、図4の正弦波において電気角毎に、第2コイル群220の各相のコイルに流れる電流値を示す。図4に示される電流値の正負の符号は、上述した電流方向の定義に従う。
例えば、電気角30°において、U相のコイル221には第2インバータ120に向けて大きさI2の電流が流れ、V相のコイル222には第2インバータ120から大きさIpkの電流が流れ、W相のコイル223には第2インバータ120に向けて大きさI2の電流が流れる。電気角60°において、U相のコイル221には第2インバータ120に向けて大きさI1の電流が流れ、V相のコイル222には第2インバータ120から大きさI1の電流が流れる。W相のコイル223には電流は流れない。
一般的なY結線の結線方式のモータでは、電流の向きを考慮した三相の巻線に流れる電流の総和は電気角毎に「0」である。例えば、制御回路300は、図4に示される電流波形が得られるPWM制御によって第2インバータ120の各スイッチ素子のスイッチング動作を制御することが可能である。制御回路300は、第2インバータ120と同様に、第1インバータ110を制御することができる。第1および第2動作モードの間で全体の通電電流は変わらないので、モータのアシストトルクは同じである。
Y結線の結線方式において、ノードN1、N2の電位(中性点電位)を利用した電圧利用率を改善する方法が知られている。具体的には、三相電圧の3次高調波成分を重畳することにより、コイルに印加される最大電圧を高めることができる。この手法を積極的に利用することにより、第2動作モードにおいて、第1動作モードと比べ、より高速にモータ200を回転させることが可能となる。
(第3動作モード)
第3動作モードは、異常時の制御に用いる動作モードである。異常とは、第1および第2インバータ110、120の主にスイッチ素子に故障が生じ、第1および第2動作モードによってモータ駆動できない状態を指す。例えば、スイッチ素子としてMOSFETを用いる場合、その故障には、大きく分けて「オープン故障」と「ショート故障」とがある。「オープン故障」は、FETのソース-ドレイン間が開放する故障(換言すると、ソース-ドレイン間の抵抗rdsがハイインピーダンスになること)を指し、「ショート故障」は、FETのソース-ドレイン間が短絡する故障を指す。以下、第1インバータ110の中のスイッチ素子に故障が生じたとして、本動作モードを説明する。当然に、本動作モードによる制御は、第2インバータ120の中のスイッチ素子に故障が生じた場合も適用される。
第3動作モードは、異常時の制御に用いる動作モードである。異常とは、第1および第2インバータ110、120の主にスイッチ素子に故障が生じ、第1および第2動作モードによってモータ駆動できない状態を指す。例えば、スイッチ素子としてMOSFETを用いる場合、その故障には、大きく分けて「オープン故障」と「ショート故障」とがある。「オープン故障」は、FETのソース-ドレイン間が開放する故障(換言すると、ソース-ドレイン間の抵抗rdsがハイインピーダンスになること)を指し、「ショート故障」は、FETのソース-ドレイン間が短絡する故障を指す。以下、第1インバータ110の中のスイッチ素子に故障が生じたとして、本動作モードを説明する。当然に、本動作モードによる制御は、第2インバータ120の中のスイッチ素子に故障が生じた場合も適用される。
例えば、制御回路300は、第1動作モードと同様に、分離リレー回路130をオンし、第1および第2中性点リレー回路140、150をオフする。これにより、第1コイル群210は第2コイル群220に接続される。
第1インバータ110の中のハイサイドスイッチ素子111Hがオープン故障したとする(図2を参照)。例えば、制御回路300は、第1インバータ110の中の他のハイサイドスイッチ素子112H、113Hをオフにし、全てのローサイドスイッチ素子111L、112Lおよび113Lをオンにする。この制御により、第1インバータ110のローサイド側のノードNL(図2を参照)を中性点として機能させることができる。故障していない第2インバータ120は、第1インバータ110における中性点を利用して、第1および第2コイル群210、220を通電することができる。
ノードを中性点として機能させるとは、インバータの各相のレグと、各相のコイルと、を接続する3つのノード(各レグのハイサイドスイッチ素子とローサイドスイッチ素子との間のノード)L1、L2およびL3の電位を等電位にすることでもある。それら3つのノードを等電位にするためのスイッチ素子のオン・オフのパターンは上述したパターンに限られず、他の様々なパターンであり得る。
制御回路300は、例えば、図4に示される電流波形が得られるPWM制御によって第2インバータ120の各スイッチ素子のスイッチング動作を制御することが可能である。第2インバータ120は、第1および第2コイル群210、220を通電する。
電力変換装置100は、Hブリッジを相毎に有する。U相のHブリッジは、スイッチ素子111H、111Lを含むレグと、スイッチ素子121H、121Lを含むレグとを有する。V相のHブリッジは、スイッチ素子112H、112Lを含むレグと、スイッチ素子122H、122Lを含むレグとを有する。W相のHブリッジは、スイッチ素子113H、113Lを含むレグと、スイッチ素子123H、123Lを含むレグとを有する。例えば、電力変換装置100は、故障したスイッチ素子が含まれるHブリッジ以外の他の2つHブリッジを用いて二相通電制御を行うことが可能である。
例えば、第1インバータ110の中のハイサイドスイッチ素子111Hがオープン故障した場合、U相のHブリッジは利用できない。電力変換装置100は、VおよびW相のHブリッジを用いて二相通電制御を行う。VまたはW相のHブリッジが利用できない場合も、電力変換装置100は、他の二相のHブリッジを用いて二相通電制御を行うことができる。
図5は、電力変換装置100が二相通電制御を行ったときにモータ200の第1および第2コイル群210、220に流れる電流値をプロットして得られる電流波形(正弦波)を例示する。横軸は、モータ電気角(deg)を示し、縦軸は電流値(A)を示す。図5の電流波形において、電気角30°毎に電流値をプロットしている。Ipkは各相の最大電流値(ピーク電流値)を表す。電力変換装置100は、故障していないVおよびW相のHブリッジを用いて、VおよびW相のコイルを通電することができる。これにより、モータ駆動を継続することができる。
他の例として、故障したインバータを利用せずに、故障していないインバータを用いてそれに接続されたコイル群を通電することによりモータ駆動を行ってもよい。例えば、第1インバータ110の中のハイサイドスイッチ素子111Hがオープン故障した場合、制御回路300は、分離リレー回路130および第1中性点リレー回路140をオフし、第2中性点リレー回路150をオンすることができる。Y結線された第2コイル群220を第2インバータ120を用いて通電することによりモータ駆動を行うことが可能である。
図6は、モータの単位時間当たりの回転数N(rps)とトルクT(N・m)との関係を示す。図6には、上述した第1から第3動作モード毎のいわゆるT-N曲線を示す。
本実施形態によると、第1コイル群210の一端に第1インバータ110が接続され、第2コイル群220の一端に第2インバータ120が接続される電力変換装置100において、分離リレー回路130、第1および第2中性点リレー回路140、150を所定のパターンに従ってオン・オフすることにより、2つのコイル群の結線方式を切替えることができる。これにより、動作モードを第1動作モードおよび第2動作モードの間で切替えることができ、モータ200の高速駆動のさらなる向上が可能となる。
図7は、本実施形態の変形例による電力変換装置100Aの回路構成を模式的に示す。
本実施形態の変形例による電力変換装置100Aにおいて、第1コイル群210は、各々が、並列接続された少なくとも2個のコイルを有する3個の各相のコイル群を備え、第2コイル群220は、各々が、並列接続された少なくとも2個のコイルを有する3個の各相のコイル群を備える。図6に、各相のコイル群は、並列接続された2個のコイルを有する構成を例示する。
分離リレー回路130は、第1コイル群210における3個のコイル群と、第2コイル群220における3個のコイル群と、の接続・非接続を切替えることができる。
第1中性点リレー回路140は、一端がノードN1に共通に接続され、かつ、他端が第1コイル群210の3個のコイル群に接続される3個の第1中性点リレー141、142および143を有する。第2中性点リレー回路150は、一端がノードN2に共通に接続され、かつ、他端が第2コイル群220の3個のコイル群に接続される3個の第2中性点リレー151、152および153を有する。
本変形例によると、例えば、第1コイル群210における3個のコイル群のうちの、U相のコイル群の中のコイル211_1に断線が生じた場合でも、U相用のコイルとして、コイル211_2、221_1および221_2を用いて、第1または第2動作モードによるモータ駆動を継続することが可能となる。例えば、第2コイル群220における3個のコイル群のうちの、U相のコイル群の中のコイル221_2に断線がさらに生じた場合でも、U相用のコイルとして、コイル211_2、221_1を用いて、第1または第2動作モードによるモータ駆動を継続することが可能となる。このように、一相に含まれる複数のコイルのうちの1つに断線が生じた場合であっても、他のコイルを用いて第1または第2動作モードによるモータ駆動を継続することが可能となる。
図8Aは、本実施形態の変形例による電力変換装置100Aの他の回路構成を模式的に示す。
本実施形態の変形例による電力変換装置100Aにおいて、第1コイル群210は、各々が、並列接続された2個のコイルを有する3個の各相のコイル群を備え、第2コイル群220は、各々が、並列接続された2個のコイルを有する3個の各相のコイル群を備える。分離リレー回路130は、第1コイル群210における3個のコイル群と、第2コイル群220における3個のコイル群と、の接続・非接続を切替えることができる。
第1中性点リレー回路140は、一端がノードN1に共通に接続され、かつ、他端が、第1コイル群210の3個のコイル群の各々の中の2個のコイルのうちの一方に接続される3個の第1中性点リレー141_1、142_1および143_1を有する。第1中性点リレー回路140は、一端がノードN3に共通に接続され、かつ、他端が、第1コイル群210の3個のコイル群の各々の中の2個のコイルのうちの他方に接続される3個の第1中性点リレー141_2、142_2および143_2をさらに有する。
図8Aにおいて、第1中性点リレー141_1は、第1コイル群210の中のU相のコイル群におけるコイル211_1に接続され、第1中性点リレー142_1は、V相のコイル群におけるコイル212_1に接続され、第1中性点リレー143_1は、W相のコイル群におけるコイル213_1に接続される。第1中性点リレー141_2は、U相のコイル群におけるコイル211_2に接続され、第1中性点リレー142_2は、V相のコイル群におけるコイル212_2に接続され、第1中性点リレー143_2は、W相のコイル群におけるコイル213_2に接続される。
第2中性点リレー回路150は、一端がノードN2に共通に接続され、かつ、他端が、第2コイル群220の3個のコイル群の各々の中の2個のコイルのうちの一方に接続される3個の第2中性点リレー151_1、152_1および153_1を有する。第2中性点リレー回路150は、一端がノードN4に共通に接続され、かつ、他端が、第2コイル群220の3個のコイル群の各々の中の2個のコイルのうちの他方に接続される3個の第2中性点リレー151_2、152_2および153_2をさらに有する。
図8Aにおいて、第2中性点リレー151_1は、第2コイル群220の中のU相のコイル群におけるコイル221_1に接続され、第2中性点リレー152_1は、V相のコイル群におけるコイル222_1に接続され、第2中性点リレー153_1は、W相のコイル群におけるコイル223_1に接続される。第2中性点リレー151_2は、U相のコイル群におけるコイル221_2に接続され、第2中性点リレー152_2は、V相のコイル群におけるコイル222_2に接続され、第2中性点リレー153_2は、W相のコイル群におけるコイル223_2に接続される。
本変形例によると、例えば、第1コイル群210の中のコイル211_1、212_1、および、第2コイル群220の中のコイル223_1が各相で同時に断線した場合を考える。例えば、分離リレー回路130をオンして、第1および第2中性点リレー回路140、150をオフし、断線していないコイルを用いて、第1動作モードによるモータ駆動を継続することが可能である。
例えば、分離リレー回路130をオフして、第2動作モードによるモータ駆動を継続することが可能である。この場合、制御回路300は、断線したコイル211_1、212_1に接続された第1中性点リレーを含む3つの第1中性点リレー141_1、142_1および143_1を全てオフし、他の第1中性点リレー141_2、142_2および143_2をオンにする。これにより、コイル211_2、212_2および213_2はY結線される。第1インバータ110は、Y結線されたコイル211_2、212_2および213_2を通電することができる。
例えば、制御回路300は、断線したコイル223_1に接続された第2中性点リレーを含む3つの第2中性点リレー151_1、152_1および153_1を全てオフし、他の第2中性点リレー151_2、152_2および153_2をオンにする。これにより、コイル221_2、222_2および223_2はY結線される。第2インバータ120は、Y結線されたコイル221_2、222_2および223_2を通電するこ
とができる。このように、一相に含まれる複数のコイルのうちの1つに断線が生じた場合であっても、他のコイルを用いて第1または第2動作モードによるモータ駆動を継続することが可能となる。
とができる。このように、一相に含まれる複数のコイルのうちの1つに断線が生じた場合であっても、他のコイルを用いて第1または第2動作モードによるモータ駆動を継続することが可能となる。
図8Bは、本実施形態の変形例による電力変換装置100Aのさらなる他の回路構成を模式的に示す。
各相のコイル群に含まれるコイルの数は2個に限られない。第1コイル群210は、各々が、並列接続された3個以上のコイルを有する3個のコイル群を備えていてもよい。第2コイル群220は、各々が、並列接続された3個以上のコイルを有する3個のコイル群を備えていてもよい。図8Bには、各相のコイル群が3個のコイルを備える構成を例示する。
第1中性点リレー回路140は、3個の中性点リレー回路140_1、140_2および140_3を有する。各中性点リレー回路は3個の第1中性点リレーを有する。第1コイル群210の3個のコイル群の各々の中の3個のコイルは、3個の中性点リレー回路140_1、140_2および140_3に接続される。
例えば、U相のコイル群の中のコイル211_1は、第1中性点リレー141_1に接続される。コイル211_2は、第1中性点リレー141_2に接続される。コイル211_3は、第1中性点リレー141_3に接続される。V相のコイル群の中のコイル212_1は、第1中性点リレー142_1に接続される。コイル212_2は、第1中性点リレー142_2に接続される。コイル212_3は、第1中性点リレー142_3に接続される。W相のコイル群の中のコイル213_1は、第1中性点リレー143_1に接続される。コイル213_2は、第1中性点リレー143_2に接続される。コイル213_3は、第1中性点リレー143_3に接続される。
第2中性点リレー回路150は、3個の中性点リレー回路150_1、150_2および150_3を有する。各中性点リレー回路は3個の第2中性点リレーを有する。第2コイル群220の3個のコイル群の各々の中の3個のコイルは、3個の中性点リレー回路150_1、150_2および150_3に接続される。
例えば、U相のコイル群の中のコイル221_1は、第2中性点リレー151_1に接続される。コイル221_2は、第2中性点リレー151_2に接続される。コイル221_3は、第2中性点リレー151_3に接続される。V相のコイル群の中のコイル222_1は、第2中性点リレー152_1に接続される。コイル222_2は、第2中性点リレー152_2に接続される。コイル222_3は、第2中性点リレー152_3に接続される。W相のコイル群の中のコイル223_1は、第2中性点リレー153_1に接続される。コイル223_2は、第2中性点リレー153_2に接続される。コイル223_3は、第2中性点リレー153_3に接続される。
(実施形態2)
本実施形態による電力変換装置100Bは、電源101からの電力を、直列接続され得るm個(mは3以上の整数)のコイル群を有する三相モータに供給する電力に変換することが可能である。以下、実施形態1による電力変換装置100との差異点を主として説明する。
本実施形態による電力変換装置100Bは、電源101からの電力を、直列接続され得るm個(mは3以上の整数)のコイル群を有する三相モータに供給する電力に変換することが可能である。以下、実施形態1による電力変換装置100との差異点を主として説明する。
図9は、本実施形態による電力変換装置100Bの典型的な回路構成を模式的に示す。
図9には、直列接続され得る3個のコイル群210、220および230を有する三相モータを例示する。第1インバータ110は、3個のコイル群210、220および230の一端に接続され、第2インバータ120は、3個のコイル群210、220および230の他端に接続される。
2個の分離リレー回路130_1、130_2が、3個のコイル群210、220および230において隣接する2つのコイル群の間にそれぞれ接続される。各分離リレー回路は、隣接する2つのコイル群の接続・非接続を切替えることが可能である。具体的に説明すると、分離リレー回路130_1は、第1および第2コイル群210、220の間に接続され、それら2つのコイル群の接続・非接続を切替えることが可能である。分離リレー回路130_2は、第2および第3コイル群220、230の間に接続され、それら2つのコイル群の接続・非接続を切替えることが可能である。
2個の第1中性点リレー回路140_1、140_2が、隣接する2つのコイル群の間にそれぞれ設けられている。各第1中性点リレー回路は、隣接する2つのコイル群のうちの第1インバータ110側のコイル群の端同士の接続・非接続を切替えることが可能である。
第1中性点リレー回路140_1は、第1および第2コイル群210、220の間で、分離リレー回路130_1の第1インバータ110側に設けられている。第1中性点リレー回路140_1は、第1コイル群210の端同士の接続・非接続を切替えることが可能である。第1中性点リレー回路140_2は、第2および第3コイル群220、230の間で、分離リレー回路130_2の第1インバータ110側に設けられている。第1中性点リレー回路140_2は、第2コイル群220の端同士の接続・非接続を切替えることが可能である。
2個の第2中性点リレー回路150_1、150_2が、隣接する2つのコイル群の間にそれぞれ設けられている。各第2中性点リレー回路は、隣接する2つのコイル群のうちの第2インバータ120側のコイル群の端同士の接続・非接続を切替えることが可能である。
第2中性点リレー回路150_1は、第1および第2コイル群210、220の間で、分離リレー回路130_1の第2インバータ120側に設けられている。第2中性点リレー回路150_1は、第2コイル群220の端同士の接続・非接続を切替えることが可能である。第2中性点リレー回路150_2は、第2および第3コイル群220、230の間で、分離リレー回路130_2の第2インバータ120側に設けられている。第2中性点リレー回路150_2は、第3コイル群230の端同士の接続・非接続を切替えることが可能である。
各分離回路リレーおよび各中性点リレー回路の構成は、実施形態1において説明したとおりである。ここでの詳細な説明は省略する。
制御回路300は、2個の分離リレー回路130_1、130_2、2個の第1中性点リレー回路140_1、140_2、および2個の第2中性点リレー回路150_1、150_2のオン・オフ状態を制御する。これにより、3個のコイル群210、220および230のうちの、第1インバータ110に接続されるコイル群の数、および、第2インバータ120に接続されるコイル群の数を変えることが可能である。
例えば、制御回路300は、分離リレー回路130_1をオンして分離リレー回路130_2をオフし、かつ、第1中性点リレー回路140_1をオフして第1中性点リレー回路140_2をオンし、かつ、第2中性点リレー回路150_1をオフして第2中性点リレー回路150_2をオンすることを考える。その場合、第1インバータ110には、第1および第2コイル群210、220が接続され、第2インバータ120には、第3コイル群230が接続される。第1中性点リレー回路140_2をオンすることにより、第2コイル群220がY結線される。第2中性点リレー回路150_2をオンすることにより、第3コイル群230がY結線される。この接続によると、第1インバータ110は、第1および第2コイル群210、220を通電し、第2インバータ120は、第3コイル群230を通電することができる。
例えば、第2コイル群220が破損した場合、分離リレー回路130_1、130_2をオフすることにより、破損した第2コイル群220を2つのインバータから電気的に分離することができる。第1コイル群210と第3コイル群230とを通電してモータ駆動を継続することが可能である。
モータトルクは、コイル辺の長さおよび巻数に比例する。本実施形態によると、第1インバータ110に接続されるコイル群の数および第2インバータ120に接続されるコイル群の数を変えることにより、モータ出力を任意の大きさに変化させることが可能となる。
図10は、本実施形態による電力変換装置100Bの他の回路構成を模式的に示す。
図10には、直列接続され得る4個のコイル群210、220、230および240を有するモータ200を駆動することが可能な電力変換装置100Bの回路構成を例示する。
図10に示される電力変換装置100Bは、3個の分離リレー回路130_1、130_2、130_3、3個の第1中性点リレー回路140_1、140_2、140_3、3個の第2中性点リレー回路150_1、150_2および150_3を備える。コイル群の数、それらに接続される分離リレー回路および中性点リレー回路の数を増やすことにより、モータ出力を任意の大きさにより高い精度で変化させることが可能となる。
(実施形態3)
図11は、本実施形態による電動パワーステアリング装置2000の典型的な構成を模式的に示す。
図11は、本実施形態による電動パワーステアリング装置2000の典型的な構成を模式的に示す。
自動車等の車両は一般に、電動パワーステアリング(EPS)装置を有する。本実施形態による電動パワーステアリング装置2000は、ステアリングシステム520、および補助トルクを生成する補助トルク機構540を有する。電動パワーステアリング装置2000は、運転者がステアリングハンドルを操作することによって発生するステアリングシステムの操舵トルクを補助する補助トルクを生成する。補助トルクにより、運転者の操作の負担は軽減される。
ステアリングシステム520は、例えば、ステアリングハンドル521、ステアリングシャフト522、自在軸継手523A、523B、回転軸524、ラックアンドピニオン機構525、ラック軸526、左右のボールジョイント552A、552B、タイロッド527A、527B、ナックル528A、528B、および左右の操舵車輪529A、529Bを備える。
補助トルク機構540は、例えば、操舵トルクセンサ541、自動車用電子制御ユニット(ECU)542、モータ543および減速機構544を備える。操舵トルクセンサ541は、ステアリングシステム520における操舵トルクを検出する。ECU542は、操舵トルクセンサ541の検出信号に基づいて駆動信号を生成する。モータ543は、駆動信号に基づいて操舵トルクに応じた補助トルクを生成する。モータ543は、減速機構544を介してステアリングシステム520に、生成した補助トルクを伝達する。
ECU542は、例えば、実施形態1によるマイクロコントローラ340および駆動回路350などを有する。自動車ではECUを核とした電子制御システムが構築される。電動パワーステアリング装置2000では、例えば、ECU542、モータ543およびインバータ545によって、モータ駆動ユニットが構築される。そのユニットに、実施形態1によるモータ駆動ユニット1000を好適に用いることができる。
本開示の実施形態は、掃除機、ドライヤ、シーリングファン、洗濯機、冷蔵庫および電動パワーステアリング装置などの、各種モータを備える多様な機器に幅広く利用され得る。
100、100A、100B:電力変換装置、101:電源、102、103:ヒューズ、110:第1インバータ、120:第2インバータ、130:分離リレー回路、140:第1中性点リレー回路、150:第2中性点リレー回路、200:モータ、300:制御回路、310:電源回路、320:角度センサ、330:入力回路、340:マイクロコントローラ、350:駆動回路、360:ROM、400:電流センサ、1000:モータ駆動ユニット、2000:電動パワーステアリング装置
Claims (5)
- 電源からの電力を、直列接続され得るm個(mは3以上の整数)のコイル群を有するn相(nは3以上の整数)のモータに供給する電力に変換する電力変換装置であって、
前記m個のコイル群の一端に接続される第1インバータと、
前記m個のコイル群の他端に接続される第2インバータと、
前記m個のコイル群において隣接する2つのコイル群の間にそれぞれ接続されるm-1個の分離リレー回路であって、各々は隣接する2つのコイル群の接続・非接続を切替える、m-1個の分離リレー回路と、
隣接する2つのコイル群の間で、前記m-1個の分離リレー回路の各々の前記第1インバータ側に設けられたm-1個の第1中性点リレー回路であって、各々は、隣接する2つのコイル群のうちの前記第1インバータ側のコイル群の端同士の接続・非接続を切替える、m-1個の第1中性点リレー回路と、
隣接する2つのコイル群の間で、前記m-1個の分離リレー回路の各々の前記第2インバータ側に設けられたm-1個の第2中性点リレー回路であって、各々は、隣接する2つのコイル群のうちの前記第2インバータ側のコイル群の端同士の接続・非接続を切替える、m-1個の第2中性点リレー回路と、
を備える電力変換装置。 - 前記m個のコイル群の各々は、n個のコイルを有し、
前記m-1個の分離リレー回路の各々は、隣接する2つのコイル群の一方のn個のコイルと、他方のn個のコイルとの接続・非接続を切替えるn個の分離リレーを有し、
前記m-1個の第1中性点リレー回路の各々は、一端が第1ノードに共通に接続され、かつ、他端が、隣接する2つのコイル群のうちの前記第1インバータ側のコイル群の前記n個のコイルに接続されるn個の第1中性点リレーを有し、
前記m-1個の第2中性点リレー回路の各々は、一端が第2ノードに共通に接続され、かつ、他端が、隣接する2つのコイル群のうちの前記第2インバータ側のコイル群の前記n個のコイルに接続されるn個の第2中性点リレーを有する、請求項1に記載の電力変換装置。
- 前記m-1個の分離リレー回路、前記m-1個の第1中性点リレー回路、および前記m-1個の第2中性点リレー回路のオン・オフ状態を制御することにより、前記m個のコイル群のうちの、前記第1インバータに接続されるコイル群の数および前記第2インバータに接続されるコイル群の数が変わる、請求項1または2に記載の電力変換装置。
- 前記モータと、
請求項1から3のいずれかに記載の電力変換装置と、
前記電力変換装置を制御する制御回路と、
を備えるモータ駆動ユニット。
- 請求項4に記載のモータ駆動ユニットを備える電動パワーステアリング装置。
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