JP7009871B2 - イミド系樹脂組成物、画像形成装置用管状体、転写装置、及び画像形成装置 - Google Patents
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Description
非プロトン系極性溶剤及びプロトン系溶剤を含む混合溶剤と、
前記混合溶剤に溶解したイミド系樹脂又はその前駆体と、
ポリアニリンがドーパントによりドーピング処理され、前記ドーパントの含有モル量をMa、前記ポリアニリンにおける下記一般式(PA)で表される構造単位のモル量をMbとしたとき、比Ma/Mbが0超え1.95以下である導電性ポリアニリンと、
を含有するイミド系樹脂組成物。
前記比Ma/Mbが0.5以上1.5以下である<1>に記載のイミド系樹脂組成物。
前記導電性ポリアニリンの含有量が、前記イミド系樹脂又はその前駆体100質量部に対して、10質量部以上30質量部以下である<1>又は<2>に記載のイミド系樹脂組成物。
前記ドーパントが有機酸である<1>~<3>のいずれか1項に記載のイミド系樹脂組成物。
前記有機酸が炭素数6以上20以下のアルキル基を持つ<4>に記載のイミド系樹脂組成物。
前記プロトン系溶剤が水である<1>~<5>のいずれか1項に記載のイミド系樹脂組成物。
前記非プロトン系極性溶剤が1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン及びN-メチルピロリドンから選択される少なくとも1種である<1>~<6>のいずれか1項に記載のイミド系樹脂組成物。
前記混合溶剤における前記非プロトン系極性溶剤と前記プロトン系溶剤との質量比(プロトン系溶剤/非プロトン系極性溶剤)が0.2/1以上9/1以下である<1>~<7>のいずれか1項に記載のイミド系樹脂組成物。
さらに有機アミン化合物を含む<1>~<8>のいずれか1項に記載のイミド系樹脂組成物。
前記有機アミン化合物が、2-ジメチルアミノエタノール、2-ジエチルアミノエタノール、2-ジメチルアミノプロパノール、ピリジン、トリエチルアミン、ピコリン、N-メチルモルホリン、N-エチルモルホリン、1,2-ジメチルイミダゾール、2-エチル-4-メチルイミダゾール、N-メチルピペリジン、及びN-エチルピペリジンから選択される少なくとも1種である<9>に記載のイミド系樹脂組成物。
前記有機アミン化合物の含有量が、前記イミド系樹脂又はその前駆体中のカルボキシ基の量に対して、30モル%以上200モル%以下である<9>又は<10>に記載のイミド系樹脂組成物。
<1>~<11>のいずれか1項に記載のイミド系樹脂組成物が硬化された管状の硬化物である画像形成装置用管状体。
前記画像形成装置用管状体の引張破断伸度が70.0%以上である<12>に記載の画像形成装置用管状体。
前記画像形成装置用管状体の、試料幅:15mm、荷重:1kg、クランプ冶具の折れ部のR:0.38の条件でのMIT試験による耐折れ回数が15000回以上である<12>又は<13>に記載の画像形成装置用管状体。
前記画像形成装置用管状体の表面の、JIS B0601(1994年)に規定される十点平均粗さRzが0.06μm以上0.19μm以下である<12>~<14>のいずれか1項に記載の画像形成装置用管状体。
<12>~<15>のいずれか1項に記載の画像形成装置用管状体を有し、
像保持体の表面に形成されたトナー像を記録媒体の表面に転写する転写装置。
像保持体と、
前記像保持体の表面にトナー像を形成するトナー像形成手段と、
<16>に記載の転写装置を備え、前記トナー像を記録媒体の表面に転写する転写手段と、
を備える画像形成装置。
<2>に係る発明によれば、ドーパントの含有モル量Maとポリアニリンにおける一般式(PA)で表される構造単位のモル量Mbとの比Ma/Mbが0.5未満又は1.5超えであるイミド系樹脂組成物に比べ、樹脂成形体とした際の抵抗の電界依存性が抑制されるイミド系樹脂組成物が提供される。
<13>に係る発明によれば、引張破断伸度が70.0%未満である場合に比べ、機械強度に優れた画像形成装置用管状体が提供される。
<14>に係る発明によれば、試料幅:15mm、荷重:1kg、クランプ冶具の折れ部のR:0.38の条件でのMIT試験による耐折れ回数が15000回未満である場合に比べ、機械強度に優れた画像形成装置用管状体が提供される。
<15>に係る発明によれば、JIS B0601(1994年)に規定される十点平均粗さRzが0.19μm超えである場合に比べ、画像における画質欠陥の発生が抑制された画像形成装置用管状体が提供される。
本実施形態に係るイミド系樹脂組成物は、溶剤と、溶剤に溶解したイミド系樹脂又はその前駆体と、導電性ポリアニリンと、を含有する。
溶剤は、非プロトン系極性溶剤及びプロトン系溶剤を含む混合溶剤である。
導電性ポリアニリンは、ポリアニリンがドーパントによりドーピング処理され、ドーパントの含有モル量をMa、ポリアニリンにおける下記一般式(PA)で表される構造単位(以下単に「ポリアニリンにおける1ユニット」とも称す)のモル量をMbとしたとき、比Ma/Mbが0超え1.95以下である導電性ポリアニリンである。
その理由は、以下のように推察される。
しかし、ポリアニリンはドーピング処理によりプロトン化され導電状態となる際に、親水化して有機溶剤に溶解し難くなる。そのため、樹脂成形体の成形時に溶剤を揮発させていくときに導電性ポリアニリンの凝集が生じて凝集体が発生し、その結果樹脂成形体の導電性(抵抗)の電界依存性が高くなることがあった。なお、このように抵抗の電界依存性が高くなるのは、樹脂成形体中に凝集体が点在することで、凝集体間を電荷がホッピング伝導し電荷の伝導経路が形成されるためと考えられる。
体積抵抗の電界依存性が高くなると、低電界側の抵抗が高くなり高抵抗側の抵抗が低くなる。こうした樹脂成形体を仮に画像形成装置用の中間転写体(中間転写用管状体)に適用した場合、低電界側が高抵抗になることで、中間転写体表面の2次転写後の電荷が減衰し難くなり、前回の画像形成で形成された画像部分の濃度が濃くなる現象(ゴースト)が発生することがある。また、高電界側が低抵抗になることで、2次転写時に高圧印加を行った場合に過電流が中間転写体を突き抜け、この突き抜けた部分の画像が白く抜ける現象(マイクロホワイトスポット)が発生することがある。さらに、凝集体が存在していると、成形時に樹脂を硬化させる際の加熱ムラ(温度ムラ)によって凝集体同士の距離にもムラが生じることがあり、その結果樹脂成形体に抵抗ムラが発生し、中間転写体の帯電ムラにより画質の濃度ムラが発生することがある。
また、ポリアニリンを処理するドーパントの量が多過ぎると、やはり抵抗の電界依存性が高くなる傾向にあるが、本実施形態ではドーパントのモル量(Ma)とポリアニリンにおける1ユニットのモル量(Mb)との比Ma/Mbが1.95以下であるため、この点からも抵抗の電界依存性が低減される。
以上の点から、本実施形態では樹脂成形体の抵抗の電界依存性が抑制される。そして、この樹脂成形体を画像形成装置用の中間転写体に適用した場合でも、前回形成した画像部分の濃度が濃くなる現象(ゴースト)や、2次転写時に高圧印加を行った場合に過電流が突き抜けて画像に白く抜けが生じる現象(マイクロホワイトスポット)の発生が抑制される。さらに、凝集体の発生自体が抑制されるため、成形時の加熱ムラによる凝集体間距離のムラも抑制され、画質の濃度ムラの発生も抑制される。
これは、前述の通り樹脂成形体とした際に導電性ポリアニリンの凝集体の発生が抑制されることに起因するものと推察される。つまり、凝集体が存在しているとこの凝集体が亀裂発生の起点(破断点)になることがありその結果樹脂成形体としての強度が低下することがあるが、凝集体の発生自体が抑制されることで亀裂の発生が抑制され、強度の低下も抑制される。また、導電性ポリアニリンの凝集体自体の発生が抑制されることでその凝集体が樹脂成形体の表面に析出することも抑制される。さらに、凝集体の発生が抑制されていることは、導電性ポリアニリンの溶解性が向上していることを表し、この溶解性の向上に伴って樹脂成形体における表面の平滑性が向上する。
本実施形態に係るイミド系樹脂組成物は、イミド系樹脂及びその前駆体の少なくとも一方を主成分として含む。なお、主成分として含むとは、イミド系樹脂組成物に含まれる全固形分に対して、50質量%以上を占めることを表す。
したがって、イミド系樹脂組成物はイミド系樹脂又はその前駆体の一方のみを主成分(全固形分に対して50質量%以上)として含んでもよく、両者を主成分(合計含有量が全固形分に対して50質量%以上)として含んでいてもよい。
イミド系樹脂の種類は特に限定されるものではないく、例えばイミド系樹脂としては、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリエーテルイミド樹脂等が挙げられる。
ポリイミド樹脂としては、例えば、テトラカルボン酸二無水物とジアミン化合物との重合体であるポリアミック酸(ポリイミド樹脂の前駆体)のイミド化物が挙げられる。ポリイミド樹脂として具体的には、テトラカルボン酸二無水物とジアミン化合物との等モル量を溶媒中で重合反応させてポリアミド酸の溶液として得て、そのポリアミド酸をイミド化して得られたものが挙げられる。
ポリアミドイミド樹脂としては、酸無水物基を有する3価のカルボン酸(トリカルボン酸)と、イソシアネート又はジアミンとの重合体が挙げられる。
ポリエーテルイミド樹脂としては、芳香族ビス(エーテルジカルボン)酸とジアミンとの重合体が挙げられる。
芳香族ビス(エーテルジカルボン)酸としては、2,2-ビス[4-(2,3-ジカルボキシフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2-ビス[4-(3,4-ジカルボキシフェノキシ)フェニル]プロパン等が挙げられる。
ジアミンとしては、4,4’-ジアミノジフェニルメタン、メタフェニレンジアミン等が挙げられる。
・カラム:東ソーTSKgelα-M(7.8mm I.D×30cm)
・溶離液:DMF(ジメチルホルムアミド)/30mMLiBr/60mMリン酸
・流速:0.6mL/min
・注入量:60μL
・検出器:RI(示差屈折率検出器)
本実施形態に係るイミド系樹脂組成物は、導電剤として、ポリアニリンがドーパントによりドーピング処理された導電性ポリアニリンを含む。
イミド系樹脂組成物では、ドーパントの含有モル量をMa、ポリアニリンにおける前記一般式(PA)で表される構造単位(ポリアニリンにおける1ユニット)のモル量をMbとしたとき、比Ma/Mbが0超え1.95以下である。
比Ma/Mbが0超えであることで、イミド系樹脂組成物により成形される樹脂成形体に対し導電性を付与し得る。一方、比Ma/Mbが1.95以下であることで、樹脂成形体とした際の抵抗の電界依存性が低減される。
比Ma/Mbは、さらに0.5以上1.5以下であることが好ましく、0.8以上1.2以下であることがより好ましい。
ドーパントとして好ましいプロトン酸は、例えば、塩酸、硫酸の他、有機酸(例えば有機スルホン酸化合物、有機カルボン酸化合物等)が挙げられ、有機酸がより好ましい。
これらの中でも、ドデシルベンゼンスルホン酸、又はフェノールスルホン酸が好適に用いられる。
これらのドーパントの内、特に、ドデシルベンゼンスルホン酸、又はフェノールスルホン酸が好ましい。
イミド系樹脂組成物は、イミド系樹脂又はその前駆体のイミド化を促進させる観点、及び混合溶剤への溶解性を向上させる観点から、有機アミン化合物を含有することが好ましい。
なお、有機アミン化合物は、水溶性の化合物であることがよい。ここで、水溶性とは、25℃において、対象物質が水に対して1質量%以上溶解することを意味する。
これらの中でも、有機アミン化合物としては、2級アミン化合物、及び3級アミン化合物から選択される少なくとも一種(特に、3級アミン化合物)がよい。有機アミン化合物として、3級アミン化合物又は2級アミン化合物を適用すると(特に、3級アミン化合物)、溶剤に対する溶解性が高まり、イミド系樹脂組成物の保存安定性が向上し易くなる。
2級アミン化合物としては、例えば、ジメチルアミン、2-(メチルアミノ)エタノール、2-(エチルアミノ)エタノール、モルホリンなどが挙げられる。
3級アミン化合物としては、例えば、2-ジメチルアミノエタノール、2-ジエチルアミノエタノール、2-ジメチルアミノプロパノール、トリエチルアミン、ピコリン、メチルモルホリン、エチルモルホリンなどが挙げられる。
有機アミン化合物の含有量を30モル%以上とすることで、混合溶剤への溶解性が得やすくなる。一方、有機アミン化合物の含有量を200モル%以下とすることで、有機アミン化合物の溶液安定性が確保され易くなり、また不快な臭いも抑えられ易くなる。
本実施形態に係るイミド系樹脂組成物は、溶剤として、非プロトン系極性溶剤とプロトン系溶剤とを含む混合溶剤を含有する。
これらの中でも、プロトン系溶剤としては水が好ましい。
例えば、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N-ジメチルアセトアミド(DMAc)、N,N-ジエチルアセトアミド(DEAc)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、ヘキサメチレンホスホルアミド(HMPA)、N-メチルカプロラクタム、N-アセチル-2-ピロリドン、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン(N,N-ジメチルイミダゾリジノン、DMI)等が挙げられる。
これらの中でも、非プロトン系極性溶剤としては1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン及びN-メチルピロリドンが好ましい。
質量比(プロトン系溶剤/非プロトン系極性溶剤)が0.2/1以上であることで、混合溶剤中における非プロトン系極性溶剤の割合が高められ、イミド系樹脂又はその前駆体の優れた溶解性が高められる。一方、質量比(プロトン系溶剤/非プロトン系極性溶剤)が9/1以下であることで、混合溶剤中におけるプロトン系溶剤の割合が高められ、導電性ポリアニリンの凝集が抑制され易くなり、樹脂成形体とした際の抵抗の電界依存性が低減され易くなる。
なお、混合溶剤中において、非プロトン系極性溶剤とプロトン系溶剤とが主成分(つまり合計量が50質量%以上)であることが好ましく、両溶剤の合計量が80質量%以上であることがより好ましく、90質量%以上であることがさらに好ましく、100質量%以上であることが特に好ましい。
本実施形態に係るイミド系樹脂組成物が硬化されることで、樹脂成形体が作製される。例えば、管状の硬化物とすることで樹脂の管状体が得られる。
本実施形態に係るイミド系樹脂組成物により成形された樹脂成形体の用途としては、まず画像形成装置における管状体が挙げられる。具体的には、転写装置用のベルト部材(例えば中間転写ベルト、記録媒体搬送ベルト、一次転写ベルト、二次転写ベルト等)、帯電装置用のベルト部材(例えば帯電ベルト等)等に適用される。なお、これらのベルト部材をさらに金属製ロール、樹脂製ロール等のロール上に被覆することで、ロール部材(転写装置用のロール部材、帯電装置用のロール部材)として用いてもよい。
また、樹脂成形体の画像形成装置用管状体以外の用途としては、例えば円筒形状の太陽電池用基材等が挙げられる。
ここで、樹脂成形体の成形方法の一例として、画像形成装置用管状体(イミド系樹脂層の単層構成からなる管状体)の成形方法について説明する。
単層構成の画像形成装置用管状体は、例えばイミド系樹脂組成物を円筒状の金型の外周面(又は内周面)に塗布し、この塗布層を乾燥し、さらに必要により焼成(イミド化)することで成形される。
塗布方法としては、例えばブレード塗布法、ワイヤーバー塗布法、スプレー塗布法、浸漬塗布法、ビード塗布法、エアーナイフ塗布法、カーテン塗布法等の通常の方法が挙げられる。
本実施形態に係るイミド系樹脂組成物の硬化物である管状体(例えば画像形成装置用管状体)の、好ましい物性について説明する。
引張破断伸度が70.0%以上であることで、優れた機械強度が得られ、例えば画像形成装置における管状体として用いた場合に長寿命化し易くなる。
ヤング率が2000MPa以上であることで、優れた機械強度が得られ、例えば画像形成装置における管状体として用いた場合にベルトウォークした際の変形が抑制され、長寿命化し易くなる。一方、ヤング率が8000MPa以下であることで、例えば画像形成装置における管状体として用いた場合にベルトウォーク時、管状体に歪がかかった際の応力が低減され長寿命化しやすくなる。
ヤング率はS-Sカーブが直線となっている領域(Strainが10N-38N)の傾きから算出する。
破断伸度については引っ張り試験にて破断した時点での長さから算出する。
耐折れ回数が15000回以上であることで、優れた機械強度が得られ、例えば画像形成装置における管状体として用いた場合に長寿命化し易くなる。
粗さRzが0.19μm以下であることで、管状体表面の平滑性が高められ、例えば画像形成装置における管状体として用いた場合に画質に優れた画像を形成し易くなる。一方、粗さRzが0.06μm以上であることで、例えば画像形成装置における管状体として用いた場合に該管状体に接して表面をクリーニングするクリーニング材(クリーニングブレード)との過度な密着を防ぎクリーニングブレードのめくれ上がりの抑制の効果が得られる。
例えば、基材としてのイミド系樹脂層(本実施形態に係るイミド系樹脂組成物の硬化物)の外周面側に、弾性層(例えばシリコーンゴム層)、表面層(例えばフッ素含有樹脂層)等を有する態様であってもよい。
次に、本実施形態に係る画像形成装置について説明する。
本実施形態の画像形成装置は、像保持体と、前記像保持体の表面にトナー像を形成するトナー像形成手段と、本実施形態に係る転写装置を備え、前記トナー像を記録媒体の表面に転写する転写手段と、を備える。
図1は、本実施形態に係る画像形成装置の構成を示した概略構成図である。なお、中間転写ベルトとして本実施形態に係る画像形成装置用環状体が適用されている。
本実施形態に係る画像形成装置では、図示しない画像読取装置や図示しないパーソナルコンピュータ(PC)等から出力される画像データは、図示しない画像処理装置により画像処理が施された後、画像形成ユニット1Y,1M,1C,1Kによって作像作業が実行される。
〔管状体(ベルト)の作製〕
-重合工程-
攪拌棒、温度計、滴下ロートを取り付けたフラスコに、プロトン系溶剤として水450gと、非プロトン系極性溶剤としてN-メチルピロリドン(NMP)450gとを充填した。ここに、4,4’-ジアミノジフェニルエーテル(ODA)50.51gと、メチルモルホリン(MMO)50.00gとを添加し、20℃で10分間攪拌して分散させた。更に、この溶液に、テトラカルボン酸二無水物として3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(BPDA)72.72gを添加し、反応温度20℃に保持しながら、24時間攪拌して溶解、反応を行い、ポリイミド前駆体溶液(A)を得た。
樹脂溶液としてポリイミド前駆体溶液(A)を、導電剤溶液としてポリアニリン未ドープ酸化体(日本カーリット製)のNMP溶液(2質量%)を準備した。上記2種類の溶液を、ポリイミド樹脂に対しポリアニリン未ドープ酸化体の固形分率が25phrとなるように混合し攪拌して、ポリイミド前駆体-ポリアニリン混合溶液を得た。その後、導電化処理を行うためドーパントとしてドデシルベンゼンスルホン酸(東京化成工業株式会社)のNMP溶液(50質量%)を調製し、ドーパント(ドデシルベンゼンスルホン酸)のモル量(Ma)とポリアニリンにおける1ユニットのモル量(Mb)との比Ma/Mb(以下単に「ドーピング率」とも称す)が「1.0」となるよう、ポリイミド前駆体-ポリアニリン混合溶液に加えた。その後攪拌することで、塗布液(イミド系樹脂組成物)(A)を得た。
直径430mm、厚さ6mm、長さ980mmであり、ブラスト処理により表面粗さRaを0.4μmとしたアルミ円筒体の外周面に、シリコーン系離型剤(商品名:KS700、信越化学工業(株)製)を塗布し、380℃で1時間焼き付け処理を施して、金型を準備した。
この金型を100rpmで回転させながら、金型端面から外周面にディスペンサーとスクレイパーを速度150min/minで移動させながら、厚み0.5mmで前記塗布液(イミド系樹脂組成物)(A)を塗布した。その後、5rpmで回転させながら、120℃で30分間加熱し、常温(25℃)に冷却後、さらに300℃まで昇温して2時間加熱することにより、溶媒除去及び焼成(イミド化)を行い、最後に常温(25℃)まで冷却してから分離した。分離後に定められた長さに切断することで、管状体(ベルト)A1を得た。
実施例1の塗布液の調製において、ドーピング率「0.1」となるように変更した以外、実施例1と同様にして管状体(ベルト)を作製した。
実施例1の塗布液の調製において、ドーピング率「0.5」となるように変更した以外、実施例1と同様にして管状体(ベルト)を作製した。
実施例1の塗布液の調製において、ドーピング率「1.5」となるように変更した以外、実施例1と同様にして管状体(ベルト)を作製した。
実施例1の塗布液の調製において、ドーピング率「1.9」となるように変更した以外、実施例1と同様にして管状体(ベルト)を作製した。
実施例1の重合工程において、溶剤を、プロトン系溶剤としての水450gと、非プロトン系極性溶剤としての1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン(DMI)450gとに変更し、また塗布液の調製においてポリアニリン未ドープ酸化体のNMP溶液(2質量%)をDMI溶液(2質量%)に変更した以外、実施例1と同様にして管状体(ベルト)を作製した。
実施例6の塗布液の調製において、ドーピング率「0.1」となるように変更した以外、実施例6と同様にして管状体(ベルト)を作製した。
実施例6の塗布液の調製において、ドーピング率「1.9」となるように変更した以外、実施例6と同様にして管状体(ベルト)を作製した。
実施例1の塗布液の調製において、ポリアニリン固形分率「10phr」となるように変更した以外、実施例1と同様にして管状体(ベルト)を作製した。
実施例1の塗布液の調製において、ポリアニリン固形分率「30phr」となるように変更した以外、実施例1と同様にして管状体(ベルト)を作製した。
実施例1の塗布液の調製において、ポリアニリン固形分率「35phr」となるように変更した以外、実施例1と同様にして管状体(ベルト)を作製した。
実施例1の塗布液の調製において、溶剤の質量比を「水/NMP=0.2/1」となるように変更した以外、実施例1と同様にして管状体(ベルト)を作製した。
実施例1の塗布液の調製において、溶剤の質量比を「水/NMP=9/1」となるように変更した以外、実施例1と同様にして管状体(ベルト)を作製した。
実施例1の重合工程において、溶剤をN-メチルピロリドン(NMP)900gに変更した以外、実施例1と同様にして管状体(ベルト)を作製した。
実施例1の重合工程において、溶剤を1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン(DMI)900gに変更し、また塗布液の調製においてポリアニリン未ドープ酸化体のNMP溶液(2質量%)をDMI溶液(2質量%)に変更した以外、実施例1と同様にして管状体(ベルト)を作製した。
実施例1の重合工程において、溶剤をN-メチルピロリドン(NMP)900gに変更した。また、導電剤溶液として準備したポリアニリン未ドープ酸化体のNMP溶液(2質量%)、及びドーパントとしてのドデシルベンゼンスルホン酸のNMP溶液(50質量%)を使用せずに、導電剤としてカーボンブラック(SB4、Deggusa社)を用い、ポリイミド樹脂に対しカーボンブラックの固形分率が29phrとなるように調製した以外、実施例1と同様にして管状体(ベルト)を作製した。
実施例1の塗布液の調製において、ドーピング率「0」、つまりドデシルベンゼンスルホン酸を添加しないように変更した以外、実施例1と同様にして管状体(ベルト)を作製した。
実施例1の塗布液の調製において、ドーピング率「2.0」となるように変更した以外、実施例1と同様にして管状体(ベルト)を作製した。
実施例1の塗布液の調製において、ドーピング率「2.5」となるように変更した以外、実施例1と同様にして管状体(ベルト)を作製した。
実施例1の重合工程において、溶剤を水900gに変更し、また塗布液の調製においてポリアニリン未ドープ酸化体のNMP溶液(2質量%)を水溶液(2質量%)に変更した以外、実施例1と同様にして管状体(ベルト)を作製した。
・抵抗率
体積抵抗率(logΩ・cm)について、各ベルトを周方向に等間隔で6点、軸方向の中央部及び両端部について3点の計18点、電圧10V、100V、1000Vでそれぞれ測定し、各電圧ごとに平均値を算出した。
表面抵抗率(logΩ/□)について、各ベルトを周方向に等間隔で6点、軸方向の中央部及び両端部について3点の計18点、電圧100Vで測定し、平均値を算出した。
体積抵抗率の電界依存性の指標として、測定電圧100Vでの体積抵抗率と1000Vでの体積抵抗率の差を計算した。
表面抵抗率の軸方向ムラの指標として、軸方向3点での最大値と最小値の差分を計算し、周方向の等間隔6点においてその差分の最大値を軸方向ムラの値として使用した。
なお、抵抗測定機としては、Advantest微小電流計を用い、プローブとしてURプローブ(三菱化学)を使用した。
ヤング率(MPa)及び引張破断伸度(%)については、引張試験機(MODEL-1605N、アイコーエンジニアリング社製)を用い、ベルトの円筒周方向が長辺となるよう、80mm×5mmの短冊状の試験片を切り出し、更にチャック冶具間の試験片長さを40mmとして引張速度20mm/minにて、JIS K7161に準じた方法により試験を実施した。
ヤング率はS-Sカーブが直線となっている領域(Strainが10N-38N)の傾きから算出した。
破断伸度については引っ張り試験にて破断した時点での長さから算出した。
VersantTM 80 Press(富士ゼロックス社製)における中間転写ベルトとして作製したベルトを搭載し、画像を形成して、ゴースト(前回形成した画像部分の濃度が濃くなる現象)、マイクロホワイトスポット(2次転写時に過電流が突き抜けた箇所で画像に白く抜けが生じる現象)、濃度ムラの発生について下記基準により評価した。
(ゴースト)
A(○):未発生
B(△):目視官能評価により判定、ゴーストが発生しているが画像として許容できるレベル
C(×):目視官能評価により判定、ゴーストが発生しており画像として許容できないレベル
(マイクロホワイトスポット)
A(○):未発生
B(△):SRA3サイズ用紙に、ハーフトーン(HT)30%ベタ印刷にて、500μm以下のマイクロホワイトスポットが10個/枚以下発生
C(×):SRA3サイズ用紙に、ハーフトーン(HT)30%ベタ印刷にて、500μm以下のマイクロホワイトスポットが10個/枚超発生、もしくは500μm超えのマイクロホワイトスポット発生
(濃度ムラ)
A(○):未発生
B(△):目視官能評価により判定、濃度ムラが発生しているが画像として許容できるレベル
C(×):目視官能評価により判定、濃度ムラが発生しており画像として許容できないレベル
10 一次転写部
11 感光体
12 帯電器
13 レーザ露光器
14 現像器
15 中間転写ベルト
16 一次転写ロール
17 感光体クリーナ
20 二次転写部
22 二次転写ロール
25 背面ロール
26 給電ロール
31 駆動ロール
32 支持ロール
33 張力付与ロール
34 クリーニング背面ロール
35 中間転写ベルトクリーナ
40 制御部
42 基準センサ
43 画像濃度センサ
50 用紙収容部
51 給紙ロール
52 搬送ロール
53 搬送ガイド
55 搬送ベルト
56 定着入口ガイド
60 定着装置
100 画像形成装置
Claims (14)
- 非プロトン系極性溶剤及びプロトン系溶剤を含む混合溶剤と、
前記混合溶剤に溶解したイミド系樹脂又はその前駆体と、
ポリアニリンがドーパントによりドーピング処理され、前記ドーパントの含有モル量をMa、前記ポリアニリンにおける下記一般式(PA)で表される構造単位のモル量をMbとしたとき、比Ma/Mbが0超え1.95以下である導電性ポリアニリンと、
を含有し、
前記非プロトン系極性溶剤が沸点150℃以上300℃以下であり、かつ双極子モーメントが3.0D以上5.0D以下の溶媒であり、
前記プロトン系溶剤が水であり、
前記ドーパントが炭素数6以上20以下のアルキル基を持つ有機酸であるイミド系樹脂組成物。
一般式(PA) - 前記非プロトン系極性溶剤が1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン及びN-メチルピロリドンから選択される少なくとも1種であり、
前記プロトン系溶剤が水であり、
前記ドーパントがドデシルベンゼンスルホン酸である請求項1に記載のイミド系樹脂組成物。 - 前記比Ma/Mbが0.5以上1.5以下である請求項1又は請求項2に記載のイミド系樹脂組成物。
- 前記導電性ポリアニリンの含有量が、前記イミド系樹脂又はその前駆体100質量部に対して、10質量部以上30質量部以下である請求項1~請求項3のいずれか1項に記載のイミド系樹脂組成物。
- 前記混合溶剤における前記非プロトン系極性溶剤と前記プロトン系溶剤との質量比(プロトン系溶剤/非プロトン系極性溶剤)が0.2/1以上9/1以下である請求項1~請求項4のいずれか1項に記載のイミド系樹脂組成物。
- さらに有機アミン化合物を含む請求項1~請求項5のいずれか1項に記載のイミド系樹脂組成物。
- 前記有機アミン化合物が、2-ジメチルアミノエタノール、2-ジエチルアミノエタノール、2-ジメチルアミノプロパノール、ピリジン、トリエチルアミン、ピコリン、N-メチルモルホリン、N-エチルモルホリン、1,2-ジメチルイミダゾール、2-エチル-4-メチルイミダゾール、N-メチルピペリジン、及びN-エチルピペリジンから選択される少なくとも1種である請求項6に記載のイミド系樹脂組成物。
- 前記有機アミン化合物の含有量が、前記イミド系樹脂又はその前駆体中のカルボキシ基の量に対して、30モル%以上200モル%以下である請求項6又は請求項7に記載のイミド系樹脂組成物。
- 請求項1~請求項8のいずれか1項に記載のイミド系樹脂組成物が硬化された管状の硬化物である画像形成装置用管状体。
- 前記画像形成装置用管状体の引張破断伸度が70.0%以上である請求項9に記載の画像形成装置用管状体。
- 前記画像形成装置用管状体の、試料幅:15mm、荷重:1kg、クランプ冶具の折れ部のR:0.38の条件でのMIT試験による耐折れ回数が15000回以上である請求項9又は請求項10に記載の画像形成装置用管状体。
- 前記画像形成装置用管状体の表面の、JIS B0601(1994年)に規定される十点平均粗さRzが0.06μm以上0.19μm以下である請求項9~請求項11のいずれか1項に記載の画像形成装置用管状体。
- 請求項9~請求項12のいずれか1項に記載の画像形成装置用管状体を有し、
像保持体の表面に形成されたトナー像を記録媒体の表面に転写する転写装置。 - 像保持体と、
前記像保持体の表面にトナー像を形成するトナー像形成手段と、
請求項13に記載の転写装置を備え、前記トナー像を記録媒体の表面に転写する転写手段と、
を備える画像形成装置。
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