JP7009275B2 - アミノ基修飾ナノダイヤモンドの製造方法 - Google Patents
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また、本発明の他の目的は、液相にて、ナノダイヤモンドの表面に10μmol/g以上のアミノ基を直接結合させる簡便な方法を提供することにある。
NH2R (1)
(式中、Rは脱離性基を示す)
従って、本発明のアミノ基修飾NDは、ナノコンポジット用途や、DDS用途に好適に使用することができる。
例えば、本発明のアミノ基修飾NDのアミノ基に生体関連物質が結合されてなる複合体は、DDS製剤等として好適に使用することができる。
また、本発明のアミノ基修飾NDのアミノ基に繊維が結合してなる複合体(=ナノコンポジット)は、強化繊維等として好適に使用することができる。
本発明のアミノ基修飾NDは、ナノダイヤモンドの表面の炭素原子にアミノ基(=1級アミノ基、-NH2)が直接結合した構成を有する。前記アミノ基結合量は10μmol/g以上であり、好ましくは20μmol/g以上、特に好ましくは22μmol/g以上、最も好ましくは25μmol/g以上、とりわけ好ましくは27μmol/g以上である。また、アミノ基結合量の上限は、例えば200μmol/g、好ましくは100μmol/g、特に好ましくは50μmol/g、最も好ましくは40μmol/gである。
上記アミノ基修飾NDは、溶媒存在下、ナノダイヤモンドにホウ素化合物を反応させる工程(I)、更に、下記式(1)で表されるアミノ化合物を反応させる工程(II)を経て製造することができる。
NH2R (1)
(式中、Rは脱離性基を示す)
前記工程Iは、NDにホウ素化合物を反応させる工程である。本発明では、ND表面の二重結合性の炭素(すなわち、「炭素-炭素二重結合」を形成する炭素)への前記ホウ素化合物の付加反応が進行して、ホウ素置換基を形成する。従来、ホウ素化合物はND表面のカルボニル基を還元する目的で使用されていたが、本発明者はホウ素化合物との反応に付した後のNDにホウ素が残留していることから、カルボニル基の還元反応のほかにND表面の二重結合性の炭素のヒドロホウ素化反応が進行していることを見いだし、更に、これを利用すればND表面の炭素原子に直接アミノ基を導入できることを見いだしたのである。
BH3・L (2-3)
工程IIは、工程Iを経て得られた表面の炭素原子にホウ素置換基が直接結合するNDに、下記式(1)で表されるアミノ化合物を反応させて、表面の炭素原子にアミノ基(-NH2)が直接結合するアミノ基修飾ナノダイヤモンドを得る工程である。
NH2R (1)
(式中、Rは脱離性基を示す)
上記ヒドロホウ素化工程において、ホウ素化合物との反応に付すNDの粒子径D50(メディアン径)は、例えば5000nm以下、好ましくは100nm以下、特に好ましくは10nm以下である。NDの粒子径D50の下限は、例えば1nmである。
成形された爆薬に電気雷管が装着されたものを爆轟用の耐圧性容器の内部に設置し、容器内において大気組成の常圧の気体と使用爆薬とが共存する状態で、容器を密閉する。容器は例えば鉄製で、容器の容積は例えば0.5~40m3である。爆薬としては、トリニトロトルエン(TNT)とシクロトリメチレントリニトロアミンすなわちヘキソーゲン(RDX)との混合物を使用することができる。TNTとRDXの質量比(TNT/RDX)は、例えば40/60~60/40の範囲である。
酸処理工程は、生成工程を経て得られたND粗生成物に混入する金属性不純物を除去する工程であり、生成工程を経て得られたND粗生成物を水中に分散して得られる粗ND水分散液に、酸を添加して前記金属性不純物を酸に溶出させ、その後、金属性不純物が溶出した酸を分離・除去することで、金属性不純物を除去することができる。この酸処理に用いられる酸(特に、強酸)としては鉱酸が好ましく、例えば、塩酸、フッ化水素酸、硫酸、硝酸、王水等が挙げられる。これらは、1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
酸化処理工程は、酸化剤を用いてND粗生成物からグラファイトを除去する工程である。爆轟法で得られるND粗生成物にはグラファイト(黒鉛)が含まれるが、このグラファイトは、使用爆薬が部分的に不完全燃焼を起こして遊離した炭素のうちND結晶を形成しなかった炭素に由来する。ND粗生成物に、水溶媒中で所定の酸化剤を作用させることにより、ND粗生成物からグラファイトを除去することができる。
本方法では、次に、酸素酸化工程を設けてもよい。酸素酸化工程を設けることによりNDの分散性を向上することができる。酸素酸化工程は、精製工程を経て得られたNDの表面を酸化して酸素含有基を形成する工程である。酸素酸化は、酸素雰囲気下、又は窒素で希釈された酸素雰囲気下で加熱処理(例えば、300~400℃の温度で1~5時間加熱する処理)を行うことが好ましい。
本方法では、酸素酸化工程に代えて水素化工程を設けてもよい。水素化工程は、精製工程を経て得られたNDの表面を水素化して酸素含有基を還元する工程である。水素化は、水素雰囲気下、又は窒素で希釈された水素雰囲気下で加熱処理(例えば、500~600℃の温度で1~5時間加熱する処理)を行うことが好ましい。
本方法では、次に、解砕工程を設けてもよい。解砕工程は、ND凝着体を含有する溶液を解砕若しくは分散化処理に付すことによってND凝着体(二次粒子)をND一次粒子に解砕若しくは分散化するための工程である。
本方法では、次に、乾燥工程を設けることが好ましく、例えば、上記工程を経て得られたND含有溶液から噴霧乾燥装置やエバポレーター等を使用して液分を蒸発させた後、残留固形分をオーブン内で加熱することによって乾燥させることができ、粉末状のNDが得られる。加熱温度は、例えば40~150℃である。
本発明の複合体は、上述のアミノ基修飾NDのアミノ基に、アミノ基との反応性基を備えた化合物の1種又は2種以上が、(前記反応性基部分において)結合されてなる。
尚、ND水分散液に含まれるNDのゼータ電位は、スペクトリス社製の装置(商品名「ゼータサイザー ナノZS」)を使用して、レーザードップラー式電気泳動法によって測定した値である。測定に供されたND水分散液は、超純水を使用してND濃度を0.2質量%に希釈した後、超音波洗浄機を用いて超音波照射を行ったものである。
また、pHは、pH計(商品名「ラコムテスター PH110」、ニッコー・ハンセン(株)製)を使用して測定した。
以下のような生成工程、酸処理工程、酸化処理工程、酸素酸化工程を経てND粉末(1)を得た。
(生成工程)
まず、成形された爆薬に電気雷管が装着されたものを爆轟用の耐圧性容器の内部に設置して容器を密閉した。容器は鉄製で、容器の容積は15m3であった。爆薬としては、トリニトロトルエン(TNT)とヘキソーゲン(RDX)との混合物0.50kgを使用した。当該爆薬におけるTNTとRDXの質量比(TNT/RDX)は、50/50であった。次に、電気雷管を起爆させ、容器内で爆薬を爆轟させた。次に、室温での24時間の放置により、容器およびその内部を降温させた。この放冷の後、容器の内壁に付着しているND粗生成物(ND粒子の凝着体と煤を含む)をヘラで掻き取る作業を行い、ND粗生成物を回収した。
得られたND粗生成物200gに6Lの10質量%塩酸を加えてスラリーを得、得られたスラリーに対し、常圧条件での還流下で1時間の加熱処理を行った。加熱処理温度は85~100℃であった。次に、冷却後、デカンテーションにより、固形分(ND凝着体と煤を含む)の水洗を行った。沈殿液のpHが低pH側から2に至るまで、デカンテーションによる当該固形分の水洗を反復して行った。
酸処理後のデカンテーションを経て得た沈殿液(ND凝着体を含む)に、6Lの98質量%硫酸水溶液と1Lの69質量%硝酸水溶液とを加えてスラリーとした後、このスラリーに対し、常圧条件での還流下で48時間の加熱処理を行った。この酸化処理における加熱温度は140~160℃であった。次に、冷却後、デカンテーションにより、固形分(ND凝着体を含む)の水洗を行った。水洗当初の上澄み液は着色しているところ、上澄み液が目視で透明になるまで反復して水洗を行った。
得られたND粉末4.5gをガス雰囲気炉(商品名「ガス雰囲気チューブ炉 KTF045N1」、光洋サーモシステム(株)製)の炉心管内に静置し、炉心管に窒素ガスを流速1L/分で30分間通流させ続けた後、通流ガスを窒素から酸素と窒素との混合ガス(酸素濃度:4体積%)へと切り替えて当該混合ガスを流速1L/分で炉心管に通流させ続けた。混合ガスへの切り替えの後、炉内を加熱設定温度350℃まで昇温させた。昇温速度については、加熱設定温度より20℃低い330℃までは10℃/分とし、その後、330℃から加熱設定温度350℃までは1℃/分とした。そして、炉内の温度条件を350℃に維持しつつ、3時間、ND粉末に酸素酸化処理を行ってND粉末(1)を得た。得られたND粉末(1)の、pH10の水分散液中におけるゼータ電位(25℃)はネガティブであった。また、ND粉末(1)のアミノ基結合量を、後述のアミノ基修飾NDのアミノ基結合量の測定と同様の方法で測定したところ、3.9μmol/gであった。
酸素酸化工程に代えて、下記水素化工程を設けた以外は調製例1と同様にして、ND粉末(2)を得た。
(水素化工程)
得られたND粉末4.5gをガス雰囲気炉(商品名「ガス雰囲気チューブ炉 KTF045N1」、光洋サーモシステム(株)製)の炉心管内に静置し、炉心管に窒素ガスを流速1L/分で30分間通流させ続けた後、通流ガスを窒素から水素と窒素との混合ガスへと切り替えて当該混合ガス(水素濃度:2体積%)を流速1L/分で炉心管に通流させ続けた。混合ガスへの切り替えの後、炉内を加熱設定温度600℃まで昇温させた。昇温速度は10℃/分とした。そして、炉内の温度条件を600℃に維持しつつ、ND粉末に5時間水素化処理を行ってND粉末(2)を得た。得られたND粉末(2)の、pH5の水分散液中におけるゼータ電位(25℃)はポジティブであった。
(ヒドロホウ素化反応)
調製例1で得られたND粉末(1)(ゼータ・ネガティブ)(0.5g)をTHF(20mL)に懸濁し、室温でボラン-THF錯体のTHF溶液(1M、9mL)を滴下し、次いで17時間加熱還流を行った。室温まで放冷後、2M塩酸約5mLを加えて過剰な試薬を分解した。反応液を遠心沈降し、溶媒を除去した。沈降層に水(30mL)を加えて、均一に混合した後に遠心沈降を行い上澄みを除去した(洗浄を行った)。同様の操作を上澄み液のpHが中性になるまで3回繰り返した。得られた沈降層を減圧乾燥し、灰色のND固体(1)を得た(収量:0.4g)。
また、空のるつぼで同様の操作に行ったものを空試験値とし、この値を測定結果より差し引き試料中の金属濃度を算出した。検量線用標準液は関東化学原子吸光用標準液B1000を試料と同濃度の硫酸水溶液にて適宜希釈して用いた。使用した分析器機はアジレント・テクノロジーク製、Agilent5110である。
上記操作によりND固体(1)のホウ素含量を分析したところ、1100ppmであった。
また、赤外吸収スペクトル(真空加熱チャンバー内で減圧下150℃に加熱して測定)において、2500cm-1にB-H結合由来と考えられる新たなピークが確認された。
以上より、ND固体(1)は、その表面にホウ素置換基を有することが確認できた。
また、ND固体(1)のアミノ基結合量を、後述のアミノ基修飾NDのアミノ基結合量の測定と同様の方法で測定したところ、12.3μmol/gであった。
得られたND固体(1)200mgをモノグライム20mLに懸濁し、ヒドロキシルアミン-O-スルホン酸(572mg)を加え、85℃に加熱して7時間還流した。室温まで放冷、静置後にデカンテーションにより溶媒を除去した。沈降層に20%塩酸10mLとモノグライム10mLを加え、均一に混合した後に遠心沈降により上澄みを除去した。沈降層に水20mLを加え、均一に混合した後に遠心沈降により上澄みを除去した(水洗浄)。その後、沈降層に10%水酸化ナトリウム水溶液3mL(合計で20mLとする)と水を加え、均一に混合した後に遠心沈降を行った。その後、沈降層に水洗浄を行い、希塩酸(20%塩酸1mL+水)洗浄を行った後、減圧乾燥して灰色のアミノ基修飾NDを得た(収量:166mg)。得られたアミノ基修飾NDのアミノ基結合量を以下の方法で測定したところ、26.8μmol/gであった。
アミノ基修飾ND50mgをアセトニトリル10mLに懸濁し、N-t-ブトキシカルボニル-L-アラニンヒドロキシコハク酸イミドエステル(Boc-L-Ala-OSu、60mg)、トリエチルアミン(50μL)を加えて、室温で約20時間反応を行った。反応混合物の遠心沈降を行い、上澄みを除去した後に、沈降層にアセトニトリル(20mL)を加え、均一に混合した後に遠心沈降を行い上澄みを除去した(洗浄を行った)。沈降層は更に炭酸水素ナトリウム水溶液(30mL)で洗浄し、次いで水で洗浄した。得られた沈降層を減圧乾燥して、灰色のND固体を得た(収量:42mg)。
アミノ化反応において、溶媒をモノグライムからジグライムに変更し、反応温度を85℃から120℃に変更した以外は実施例1と同様にして、アミノ基修飾NDを得た。
調製例1で得られたND粉末(1)(ゼータ・ネガティブ)に代えて、調製例2で得られたND粉末(2)(ゼータ・ポジティブ)を使用した以外は実施例1と同様にして、アミノ基修飾NDを得た。
カルボデオン社製のND粉末(商品名「uDiamond(商標)Molto」、10.4g)を、石英製ボート上に載せ、管状炉内に設置した。
管状炉を真空ポンプで注意深く減圧し、次にアルゴンガスでパージした。アルゴンガスの流量を200mL/分に設定して、加熱を開始した。室温から800℃まで160分で昇温し、この温度で6時間保持した。その後、管状炉を室温まで自然放冷した。これにより、ND粉末の表面に存在する酸素を有する官能基を除去した。ND粉末を一旦取り出し秤量したところ、収量9.6gであった。
管状炉を真空ポンプで注意深く減圧し、次にアルゴンガスでパージした。通気するガスをアンモニアガスに切り替え、流量を200mL/分に設定して加熱を開始した。室温から625℃まで125分で昇温し、この温度で6時間保持した。室温まで徐々に冷却した後、通気するガスをアルゴンガスに切り替え30分通気後に試料を取り出した。これにより、ND粉末の表面にアミノ基を導入してアミノ基修飾NDを得た(収量:7.1g)。
調製例1で得られたND粉末(1)を、ヒドロホウ素化反応に付すことなく、アミノ化反応に付した以外は実施例1と同様にして、アミノ基修飾NDを得た。
Claims (1)
- 溶媒存在下、ナノダイヤモンドにホウ素化合物を反応させ、更に、下記式(1)
NH2R (1)
(式中、Rは脱離性基を示す)
で表されるアミノ化合物を反応させて、ナノダイヤモンドの表面の炭素原子にアミノ基(-NH 2 )が直接結合した構成を有し、前記アミノ基結合量が10μmol/g以上であるアミノ基修飾ナノダイヤモンドを得るアミノ基修飾ナノダイヤモンドの製造方法。
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