JP7008950B2 - 電子透かし装置および方法 - Google Patents
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Description
そこで,同一手法あるいはアルゴリズムにより,手法を変えることなく両者を抽出・検出する手法が提案されている。
本電子透かしの主情報の埋め込みに用いるグリーンノイズパターンは,以下の方法で生成する。
Step1: まず,初期値としてR×Rの領域にR^2/2個のランダムドットを配置しp(x,y)とする。初期値はホワイトノイズ特性を示す。
Step2: 次に,ドットパターンの二次元フーリエ変換を行い,P(fx,fy )を得る。
Step3: P(fx,fy )に対して,周波数fx,fyが,
fx,min≦fx≦fx,max
fy,min≦fy≦fy,max (1)
の帯域に制限するフィルタD(fx,fy)を乗じて新たなスペクトル特性P'(fx,fy)を得る。
Step4: P'(fx,fy)に逆フーリエ変換を行い,多値のドットパターンp'(x,y)を得る。
Step5: 誤差関数: e(x,y)=p'(x,y)-p(x,y) (2)
を求め,誤差の大きい順に白,黒反転する。
Step2~5を繰り返し行い,誤差関数が一定の値以下になった時に終了し最終的なパターンを得る.透かし埋め込み用のパターンとして2種類の異方性パターンを作成する.ビット“0”に対応するものは,フィルタD0 (fx,fy)を以下に示す楕円リング状の分布とする。
(fx^2)/(fx,max^2 )+(fy^2)/(fy,max^2 )≦1,
(fx^2)/(fx,min^2 )+(fy^2)/(fy,min^2 )≦1 (3)
こうして得られたドットパターンをp0 (x,y)とし,それを90°回転したものをp1 (x,y)とする。図3の主パターンにその一例を示す。
(a)はパターン1,すなわちp1(x,y)を表す。そのスペクトルは楕円形状をしている。(b)はp0(x,y)を表す。
副情報のパターンm(x,y)は,そのスペクトル分布が,主情報のパターンのスペクトルと重ならない高周波数域に分布するように設定する。このため,fmax以上の帯域にスペクトルがくるパターンを選択する.一例として,1画素おきの市松パターンを用いたものを図3の副パターンに示す。図4に主,副情報を両方埋め込んだ時のスペクトル特性を示す。そのスペクトルはナイキスト周波数の輝点スペクトルとなり,グリーンノイズノイズのスペクトルとは重複がない。
透かしデータの埋め込みは,主,副情報を合成したパターンをブロック単位で画像データに合成する.
今,L画素xM画素からなる画像データをi(x,y) (0≦i(x,y)<1)とし,R画素×R画素のブロックに分割する.Rは2のべき乗で,大きな値ほどスペクトルの分布は精度が上がるが,埋め込む情報量が減る。そのため,32や64が最適である。埋め込みの文字列をビット列に変換したものをwm∈{0,1} とし,
埋め込みビットwmが0の時 → pi (x,y)=p0(x,y)
埋め込みビットwmが1の時 → pi (x,y)=p1(x,y) (4)
とする。
埋め込み可能なビット数は,int(L/R)・int(M/R) となる。ここでint は整数化を表す。画像をブロックで分割しているため,画像サイズは任意のサイズでよい。
副情報はロゴやパターンの二値のイメージとする。埋め込み領域をM(x,y),埋め込みパターンをm(x,y)とし,主,副情報の合成されたパターンpi'(x,y)は,
埋め込み領域の内部(M(x,y)=0)の時 pi'(x,y)=m(x,y)
埋め込み領域の外部(M(x,y)=1)の時 pi'(x,y)=pi(x,y) (5)
として作成される。これは主情報のパターン内に,副情報のパターンをはめ込むことを意味する。
かかるpi'(x,y)をブロック毎に以下のように埋め込む。
w(x,y)=i(x,y)+gain・pi’(x,y) (6)
ここで,gainは埋め込み強度を表し,不可視の電子透かしを得るためには,gain≪1 の必要がある。図5にそれぞれのパターンとそのスペクトルを示す。(a)は主情報パターン(主パターン)とそのスペクトル分布を,(b)は副情報パターン(副パターン)とそのスペクトル分布を,(c)は主情報および副情報両者の合成パターンとそのスペクトル分布を示す。両者のスペクトル分布は重複がない,あるいは少ないため,抽出時に分離して取り出すことができる。
w(x,y)=i(x,y)+gain・pi’(x,y) の演算をブロック単位で行うだけでよい。式(4),(5)の計算はブロック毎に毎回行わずに事前に可能なパターンを求めておくことでさらに高速化が可能である。例えば,副情報のパターン数がn個であるとすると,それぞれに対してp0(x,y)とp1(x,y)のパターンを事前に求めておけば,合計2nのパターンの中から選び式(6)の計算のみ行えばよい。
式(6)を変換すると,
i(x,y)=w(x,y)-gain・pi’(x,y) (7)
となり,pi’(x,y)とgainが分かれば透かし情報の除去を行うことが可能である。除去に際し,p0(x,y), p1(x,y), m(x,y), M(x,y),gainおよび埋め込みビット列の情報が必要である。しかし,p1(x,y)は, p0(x,y)から回転操作により作られた場合は不要である。また,m(x,y)は市松パターンに限定すれば不要である。また,埋め込みビット列は抽出時に求められるのでこれも不要で,結局,p0(x,y),M(x,y)およびgainがあればよい。これらの情報を秘密鍵として用いる。また,M(x,y)およびgainにはあまり秘密性はないため鍵に含ませる必要性はなく,別の方法で入手してもよい。
前述のように,この秘密鍵はp0(x,y)パターンの生成時の疑似乱数発生器の初期値(SEED) を変えることによりドットパターンを変えることができる。しかし抽出時のマスクに変更はいらない。このため,画像ごと,あるいはユーザ毎に異なったSEED値から生成されたパターンを用いることにより,紛失や盗難時でも他の画像の透かし除去される被害を抑えることができる。
透かしの除去において,完全に原画に復元するためには,埋め込みデータのオーバーやフローアンダーフローを回避するため,埋め込み時にダイナミックレンジの調整が必要である。
i'(x,y)=(1-gain)i(x,y)+gain/2
この変換を画像全面に施すことによりオーバーフロー,アンダーフローは生じない。透かし除去後は逆変換をして元の画像を得る。
あるいは,画像のヒストグラムから,画素の最大値,最小値を求め,オーバーフロー,アンダーフローが生じないようであれば変換は不要である。また,埋め込みgainが極めて小さく,かつ完全に元に戻す必要がなければこの処理はスキップしても構わない。
副情報は鍵にあるパターンM(x,y)を用いるか,新たに作成しても構わない。いずれにせよ,完全に原画に戻った後は自由に透かし埋め込みが可能となり,二次著作権者としての権利を主張することが可能となる。
主情報の抽出は,画像をブロックに分割し,スペクトル空間にて埋め込みビットの識別を行う。
まず,ブロック毎にFFT(高速フーリエ変換)によりスペクトルを求め,続いて,スペクトル画像W(fx,fy )の形状から識別器により,p0(x,y),p1(x,y)を識別推定する.識別方法として,図6に示すドットパターン生成時のD0,および90°回転したD1をマスクとした識別器による輝度値の差分情報から求める。すなわち,ブロック毎に以下のQ0,Q1を求める。
Q0=(1/Z0)ΣD0(fx,fy)・W(fx,fy)
Q1=(1/Z1)ΣD1(fx,fy)・W(fx,fy) (8)
ただし,Zi=Σi(fx,fy) である。
上式から,埋め込まれたビット(wm)は,
Q0-Q1>Th の時 wm=0
Q1-Q0>Th の時 wm=1 (9)
それ以外の時 wmは不定
を得る。|Q0-Q1|は信頼度を表し,Thは識別の閾値を表す。かかるThにより,得られる透かし情報の信頼度をコントロールすることが可能となる。
副情報の抽出は,実空間で行われる。まず,L×Lの市松パターンのフィルタで埋め込み画像に畳みこみを行う。Lは大きいほど抽出の精度は上がるが,抽出領域のエッジが鈍る。L=3 あるいは5位が最適である。かかるマスクパターンとして3×3の市松パターンの識別器を図6のM0,M1に示す.このマスクパターンを用いて,
U0=w(x,y)*M0
U1=w(x,y)*M1 (10)
を求める。ここで,*はconvolutionを表す。各画素での出力Moutは,係数αを用いて α|U0-U1| となり,二値化の閾値Th1により,
α|U0-U1|>Th1の時 Mout(x,y)=1
それ以外の時 Mout(x,y)=0 (11)
と出力され,市松パターンの領域で強い応答を示す。NCCは抽出パターンの画像品質を表す評価量で,次式で表される。
NCC=(ΣΣM(x,y)・Mout (x,y))/(ΣΣM(x,y)^2 ) (12)
ここで,M(x,y)は,劣化のないパターンを,ΣΣはブロック内の全画素を表す。
カラー画像データをY,Cb,Cr変換し,輝度Yに透かし情法を埋め込む.電子データのみでの利用の場合はB(ブルー)信号を用いてもよい。ブロックサイズRは64×64とする.パターンp0(x,y)は,
(fmax,fmin )=(f0-1,f0-5)
ただし,f0=√(1/2)・ R/2で,楕円率を1.5とした.p1(x,y)は90°回転したものである。
図8に主情報の透かし情報の抽出の画像処理フローを示す。埋め込まれた画像データ21は画像の拡大・縮小,回転,歪みがある場合は画像補正され,補正画像を得る。その後,ブロック単位でFFT(高速フーリエ変換)を行い,(23)周波数空間(スペクトル空間)に変換される。FFT出力はブロック単位に行われるため輝度が変化するため,識別精度を向上させるためヒストグラムイコライゼーション24によりトーン補正される。続いてパターン識別25を行い,ビット情報を文字コードに変換し26,最終的に埋め込まれた文字情報を抽出する(27)。
一般に,ブロック型の電子透かしは,埋め込み時のブロックと抽出時のブロックのサイズと位置の同期が必要となる。そのため,変倍された画像では,ブロックのサイズと位置が異なるため,何らかの方法で元の画像サイズを推定することが必要である。副情報に同期用ヘッダー信号を埋め込むことは,元画像のサイズを推定することを可能とする。
副情報は実空間で透かし抽出処理を行うため,ブロックの位置変動の影響を受けず,主情報よりは変倍に対する耐性が強い。
同図(a)は透かしの埋め込まれた画像(1024画素×640画素)で,(b)は抽出した副情報である。(c)は(a)を1.5倍に拡大して1536画素×960画素にしたものである。透かし抽出では元の画像サイズが分からないので,そのまま主情報の透かし抽出を行っても正しく抽出されない。(d)は副情報を抽出したもので,主情報の埋め込み文字のビットの先頭ビット(MSB)に,十字型のパターンを副情報として埋め込んだものを抽出したものである。水平方向に8ブロック離れているため,これを計測することにより,元の画像サイズを推定することが可能である。
主情報のドットパターンは,クラスター化しているため様々な編集加工に耐性がある。拡大画像で主情報が正確に抽出されないのは,ブロックサイズと位相が違うためで,これさえ補正すれば主情報は高い信頼性で抽出可能である。したがって,元のサイズに画像補正された画像を用いて主情報の透かし抽出を行えば,ブロックの同期もそろい,主情報は高い信頼度で抽出される。
各種攻撃に対して主情報は高耐性を示す。大概の攻撃は画像への輝度への攻撃であり,グリーンノイズパターンは分散ドットの集合の状態でのスペクトル特性のため輝度変化には影響されにくいからである。
図14はJPEG圧縮に対する耐性を調べたもので,主情報はJPEGの品質係数Q=20まで正しく抽出されている。一方,副情報は人の認識能力によりある程度,元のパターンを推定することが可能であるが,Q=50以下では推定が困難である。高い空間周波数であるため消失しやすいからである。従って,副情報は脆弱(Fragile)な埋め込みであるといえる。
主情報はブロック単位でFFT処理するため,ブロックのサイズと位置が異なると検出誤差が生じ正しい結果が得られない。一方,副情報は検出用マスクを用いて畳み込み処理を画像全面に行い出力するため,ブロックによるエラーは生じない。したがって,前述のように,副情報で同期信号を検出することにより変倍画像の同期信号パターンを検出し,元の画像サイズを知ることが可能となる。この画像サイズに補正した画像を得ることにより,主情報の埋め込み情報を正確に得ることができ,同期の問題が解決する。
埋め込まれが画像は,プリンタなどで画像出力する。この時プリンタはオリジナルに忠実にプリント出力できるものとする。プリンタドライバによっては,ディザや誤差拡散法によるハーフトーニングが勝手に施され市松模様が再現できない場合があるので注意を要する。プリント画像をさらにコピーして複製を作ろうとした場合,必ずスキャナーで読み取る。この時読み取りの応答特性から市松模様の様な細かなパターンが消失し,プリンタの非線形特性と相まって複製物に地紋が生じる。かかる地紋は,使用者に警告を与え不正利用を阻止する効果がある。
| -0.25 0 -0.25 |
| 0 1 0 |
| -0.25 0 -0.25 |
かかるフィルタは副情報の市松パターンでは強調されず,グリーンノイズパターンは強調される。したがって,市松パターンとグリーンノイズパターンとの間に濃度差が生じ,副情報部分は白抜き(あるいは濃度が低下)として情報が顕像化される。
利用形態として,主情報に通常の埋め込み情報を,副情報としてロゴやパターンを埋め込み,著作権の保護,改ざん検出,不正流出の追跡などへの適用を可能とする。その他,副情報の利用形態として主情報の同期信号や,印刷用地紋としても利用可能である。二つの異なる特性の透かし情報を兼ね備えるため,その組み合わせで様々な用途に利用可能である。
16は著作権者のコンピュータ、17は購入者のコンピュータ,21は画像データ,22は画像補正処理,23はFFT(高速フーリエ変換),24はヒストグラムイコライゼーション処理,26は文字変換処理,27は透かしの抽出結果を,32は画像全体のヒストグラムイコライゼーション,33はマスクの畳みこみ演算処理,34は抽出パタンの表示処理を表す。
Claims (6)
- デジタル画像データi(x,y)に機密情報や著作権情報などを埋め込む電子透かし法において、画像データを複数のブロックに展開し,各ブロック毎に,埋め込みビット情報i(i=0,1)に対応した主情報パターンと,二値図形の副情報パターンとを多重化して埋め込む電子透かし法であって,
かかる主情報パターンと副情報パターンのスペクトル分布が互いに重ならないようにし,かつ,埋め込み操作は,主情報と副情報を合成したパターンと画像データ間の演算を実空間(画素空間)で行い,
透かしの抽出は,主情報の抽出は周波数空間で,副情報の抽出は実空間で行うことを特徴とする電子透かし装置および方法。 - 主情報の埋め込みパターンは、ビット情報i(i=0,1)に対応して,フーリエスペクトルが低周波域および高周波域で低減したグリーンノイズ特性を示すドットパターンpi(x,y) (i=0,1)で,
副情報の埋め込みパターンは,そのスペクトルが高周波数域に分布するパターンm(x,y)で,
かかる主情報のパターンに副情報をはめ込んだパターンpi'(x,y)を作成し,
埋め込まれた画像w(x,y)を,
w(x,y)=i(x,y) + gain ・ pi'(x,y)
として生成し(ただし,gainは合成の比率で,1より小),
透かし情報の抽出は、埋め込まれた画像データをブロックに分割し、
主情報の抽出は,そのスペクトルの分布の形状からマスクパターンを用いて識別推定により行い,
副情報の抽出は,そのスペクトルが高周波域に分布するマスクパターンを畳みこみ処理により行う,
ことを特徴とする請求項1に記載の電子透かし装置および方法。 - 前記透かしの埋め込まれた画像w(x,y)に対して、少なくとも埋め込み時のドットパターンp0(x,y)を含む秘密鍵を用いることにより、埋め込み前の画像i(x,y)を復元可能とし、その鍵を用いて新たな情報を電子透かしとして埋め込むことが可能な請求項2に記載の電子透かし装置および方法。
- 前記主情報の埋め込みドットパターンは,そのスペクトル分布が異なる2種類のドットプロファイルp0(x,y)およびp1(x,y)であり,
前記副情報の埋め込みパターンは,市松状の二値パターンであることを特徴とする請求項2に記載の電子透かし装置および方法。 - 前記副情報は,改ざん検出用パターンを埋め込み,副情報の透かし抽出において該パターンの検出の有無で改ざんの有無あるいは改ざん箇所の特定を可能とすることを特徴とする請求項4に記載の電子透かし装置および方法。
- 前記副情報は,同期用のパターンをブロックの対して一定の間隔で埋め込み,抽出時にその間隔を計測することにより,元の画像のサイズを求めることを可能とすることを特徴とする請求項4に記載の電子透かし装置および方法。
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