JP7007253B2 - ガスシールドアーク溶接用フラックス入りワイヤ - Google Patents
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Description
また、塩酸等の酸洗液を収容する鋼製めっき酸洗漕においても、長時間塩酸に晒されることにより、塩酸露点腐食が発生しやすい。したがって、ボイラの煙道ダクト、ケーシング、熱交換器、回転再生式空気予熱器のバスケット材及び伝熱エレメント板、減温塔、バグフィルター及び煙突等の排煙設備、並びに鋼製めっき酸洗漕等のように、硫酸及び塩酸環境下で使用される溶接構造物の材料としては、耐腐食鋼が使用されている。
したがって、フラックス中のSbの平均粒径を制御する必要がなく、また、ワイヤ中のSb含有量を従来技術と比較して低い範囲で制御した場合であっても、良好な耐塩酸露点腐食性を有する溶接金属を得ることができるフラックス入りワイヤの開発が求められている。
ワイヤ全質量あたり、
C :0.02質量%以上0.10質量%以下、
Si:0.05質量%以上1.00質量%以下、
Mn:1.5質量%以上3.0質量%以下、
S :0.003質量%以上0.030質量%以下、
Cu:0.05質量%以上0.50質量%以下、
Ni:0.05質量%以上0.50質量%以下、
Mo:0.05質量%以上0.35質量%以下、
Co:0.005質量%以上0.300質量%以下、
Sb:0.01質量%以上0.20質量%以下、
を含有し、
P :0.030質量%以下、
Cr:0.05質量%以下、
に制限するとともに、
下記式(1)を満足することを特徴とする。
57×[Mo]+221×[Co]≧15 ・・・(1)
ただし、[Mo]は、ワイヤ全質量に対する前記鋼製外皮及び前記フラックス中のMo含有量(質量%)を示し、[Co]は、ワイヤ全質量に対する前記鋼製外皮及び前記フラックス中のCo含有量(質量%)を示す。
本実施形態のフラックス入りワイヤは、鋼製外皮(フープ)内にフラックスが充填されたものである。詳細には、本実施形態に係るフラックス入りワイヤは、筒状を呈する鋼製外皮と、その外皮の内部(内側)に充填されるフラックスとからなる。なお、フラックス入りワイヤは、外皮に継目のないシームレスタイプ、C断面、重ね断面等のように外皮に継目のあるシームタイプのいずれの形態であってもよい。また、フラックス入りワイヤは、ワイヤ表面(外皮の外側)にCuなどのメッキなどが施されていても、施されていなくてもよい。
Cは、溶接金属の強度を向上させるが、溶接金属の高温割れ感受性を高める原因にもなる元素である。
C含有量が0.02質量%未満では、溶接金属中に溶け込むCが不足して強度が向上しないため、鋼製外皮及びフラックス中のCは0.02質量%以上とし、好ましくは0.03質量%以上とする。
一方、C含有量が0.10質量%を超えると、溶接金属中に溶け込むCが過多となり、高温割れ感受性が高くなることから、鋼製外皮及びフラックス中のCは0.10質量%以下とし、好ましくは0.08質量%以下とする。
なお、C源としては、鋼製外皮に添加されるもののほか、フラックスに添加される、炭素量の多い鉄粉や合金粉、グラファイト、黒鉛、カーボンナノチューブのような炭素単体、デンプン、コーンスターチのような有機物などが挙げられる。
Siは、溶接金属の脱酸のために不可欠な元素である。
Si含有量が0.05質量%未満では、溶接金属中に溶け込むSiが不足して脱酸の効果が十分に得られないため、鋼製外皮及びフラックス中のSiは0.05質量%以上とし、好ましくは0.20質量%以上とする。
一方、Si含有量が1.00質量%を超えると、高温割れ感受性が高くなるため、高温割れ感受性を低減させるために、Mn及びNi等の溶接金属中の合金元素量をワイヤ中に添加することが必要となる。しかし、Mn及びNi等の添加により高温割れ感受性を低減させた場合には、溶接金属の靱性が低下するとともに、溶接金属中の水素が起因する低温割れ感受性が高くなる。したがって、鋼製外皮及びフラックス中のSiは1.00質量%以下とし、好ましくは0.90質量%以下とする。
なお、SiはSiO2等のSi酸化物としてフラックスに添加される他、Fe-Si合金やSi金属等の形態でワイヤ中に添加されていてもよい。本実施形態においては、Si酸化物、Si金属及びSi合金の含有量をSiに換算した値で規定し、この換算値を単にSi含有量と記載する。
Mnは、溶接金属を脱酸し、かつ溶接金属の強度及び靱性を向上させる。また、高温割れ感受性を増大させるSと化合物を形成することから、高温割れを抑制するために不可欠の元素である。
Mn含有量が1.5質量%未満では、溶接金属中に溶け込むMnが不足して、脱酸及び高温割れ抑制の効果を十分に得られず、かつ強度及び靱性が向上しないため、鋼製外皮及びフラックス中のMn含有量は1.5質量%以上とし、好ましくは1.8質量%以上とする。
一方、Mn含有量が3.0質量%を超えると、溶接金属中に溶け込むMnが過多となり、溶接金属の靱性が低下し、かつ溶接金属中の水素が起因する低温割れ感受性が高くなるため、鋼製外皮及びフラックス中のMnは3.0質量%以下とし、好ましくは2.8質量%以下とする。
なお、MnはMnO、MnO2等のMn酸化物としてフラックスに添加される他、Fe-Mn合金やMn金属等の形態でワイヤ中に添加されていてもよい。本実施形態においては、Mn酸化物、Mn金属及びMn合金の含有量をMnに換算した値で規定し、この換算値を単にMn含有量と記載する。
Sは、溶接時の液滴の流れを改善する元素であるが、溶接金属の靱性を低下させ、かつ、高温割れ感受性を高める原因になる元素でもある。
S含有量が0.003質量%未満では、溶接時の液滴の粘性が高くなり、液滴の流れが阻害されるため、鋼製外皮及びフラックス中のS含有量は0.003質量%以上とし、好ましくは、0.004質量%以上とする。
一方、S含有量が0.030質量%を超えると、溶接金属中に溶け込むSが過多となり、溶接金属の靱性が低下し、かつ高温割れ感受性が高くなるため、鋼製外皮及びフラックス中のS含有量は0.030質量%以下とし、好ましくは0.025質量%以下とする。
なお、S源としては、鋼製外皮に添加されるもののほか、フラックスに添加される、硫化鉄や硫化銅などの硫化物、硫酸塩などが挙げられる。さらに、S源としては、ワイヤ表面に塗布されるS化合物なども挙げられる。
Cuは、溶接金属の耐食性を改善する元素である。
Cu含有量が0.05質量%未満では、溶接金属中に溶け込むCuが不足して、溶接金属の耐食性を向上させる効果が得られないため、鋼製外皮及びフラックス中のCu含有量は0.05質量%以上とし、好ましくは、0.10質量%以上とする。
一方、Cu含有量が0.50質量%を超えると、溶接金属中に溶け込むCuが過多となり、溶接金属の高温割れ感受性が高くなるため、鋼製外皮及びフラックス中のCu含有量は0.50質量%以下とし、好ましくは0.40質量%以下とする。
なお、Cuは主にFe-Cu合金やCu金属等の形態でワイヤ中に添加されるが、Cu2O、CuO等のCu酸化物としてフラックスに添加されていてもよい。本実施形態においては、Cu合金、Cu金属及びCu酸化物の含有量をCuに換算した値で規定し、この換算値を単にCu含有量と記載する。
Niは、溶接金属の高温割れ感受性を低減し、かつ、耐食性を改善する元素である。
Ni含有量が0.05質量%未満では、溶接金属中に溶け込むNiが不足して、溶接金属の高温割れ抑制の効果及び耐食性を改善させる効果を十分に得ることができないため、鋼製外皮及びフラックス中のNi含有量は0.05質量%以上とし、好ましくは0.10質量%以上とする。
一方、Ni含有量が0.50質量%を超えると、溶接金属中に溶け込むNiが過多となり、高温割れ感受性が高くなるとともに、溶接金属の強度が高くなり、水素割れ感受性が高くなるため、鋼製外皮及びフラックス中のNi含有量は0.50質量%以下とし、好ましくは0.40質量%以下とする。
なお、また、Ni源としては、鋼製外皮に添加されるもののほか、フラックスに添加される、単体金属や合金粉などが挙げられる。
Moは、Co、Cuとともに、溶接金属の耐塩酸性を著しく向上させる元素であり、その効果はCu-Sbとの複合添加で更に増大する。
Mo含有量が0.05質量%未満であると、溶接金属の耐塩酸性を向上させる効果を十分に得ることができないことから、鋼製外皮及びフラックス中のMo含有量は0.05質量%以上とし、好ましくは0.10質量%以上、より好ましくは0.12質量%以上とする。
一方、Mo含有量が0.35質量%を超えると、溶着金属の引張強度が高くなるため、鋼製外皮及びフラックス中のMo含有量は0.35質量%以下とし、好ましくは0.30質量%以下、より好ましくは0.28質量%以下とする。なお、Moの最適添加量は0.15%である。
Coは、Mo、Cuとともに添加することにより、溶接金属の耐塩酸性を著しく向上させるとともに、ニッケル-コバルト-モリブデン鋼(Ni-Co-Mo)の特徴に見られるように靭性を向上させる元素である。
Co含有量が0.005質量%未満であると、溶接金属の耐塩酸性及び靱性を向上させる効果を十分に得ることができない。したがって、鋼製外皮及びフラックス中のCo含有量は0.005質量%以上とし、好ましくは0.010質量%以上、より好ましくは0.020質量%以上とする。
一方、Co含有量が0.300質量%を超えると、溶着金属の引張強度が高くなりすぎるため、鋼製外皮及びフラックス中のCo含有量は0.300質量%以下とし、好ましくは、0.250質量%以下、より好ましくは0.200質量%以下とする。なお、Coの最適な添加量は0.050%である。
本発明者らは、種々の比率でMo及びCoを含有させたフラックス入りワイヤを使用してガスシールドアーク溶接を行い、得られた溶接金属の化学成分を分析して、分析値と溶接金属の腐食速度比との対応を回帰分析した。その結果、ワイヤ中のMo含有量及びCo含有量をパラメータとして、下記式(1)を満足することが、優れた耐塩酸性を有する溶接金属を得るための指標になることを見出した。
57×[Mo]+221×[Co]≧15 ・・・(1)
ただし、[Mo]は、ワイヤ全質量に対する鋼製外皮及びフラックス中のMo含有量(質量%)を示し、[Co]は、ワイヤ全質量に対する鋼製外皮及びフラックス中のCo含有量(質量%)を示す。
Sbは、Cuと共存して耐硫酸性及び耐塩酸性を更に向上させる元素である。
Sb含有量が0.01質量%未満であると、十分な耐食性を得ることができないおそれがある。したがって、鋼製外皮及びフラックス中のSb含有量は0.01質量%以上とし、好ましくは0.05質量%以上とする。
一方、Sb含有量が0.20質量%を超えると、表面割れ及び偏析が発生するおそれがあるため、鋼製外皮及びフラックス中のSb含有量は0.20質量%以下とし、好ましくは0.15質量%以下とする。
Pは、不可避的不純物としてワイヤ中に存在し、溶接金属の靱性を低下させる元素であるため、P含有量はできるだけ低減させることが好ましい。
P含有量が0.030質量%を超えると、溶接金属中に溶け込むPが過多となり、溶接金属の靱性が低下するおそれがある。したがって、鋼製外皮及びフラックス中のP含有量は0.030質量%以下に制限するものとする。
Crは、特に排ガス中の硫黄酸化物含有量の多いプラントで生じる酸化性の硫酸露点腐食環境での耐食性を向上させるが、耐塩酸性を阻害する元素であるため、Cr含有量はできるだけ低減させることが好ましい。
Cr含有量が0.05質量%を超えると、耐塩酸性が低下するおそれがある。したがって、鋼製外皮及びフラックス中のCr含有量は0.05質量%以下に制限するものとする。
本実施形態に係るフラックス入りワイヤは、さらに、任意成分として、Ti:2.0質量%以上4.5質量%以下を含有することが好ましい。Tiは、溶接時のアークの安定性及びスラグの被包性を向上させて、全姿勢溶接性を良好にする元素である。また、金属Tiとしてワイヤ中に添加された場合には、溶接金属を脱酸する働きを有する元素である。
Ti含有量が2.0質量%以上では、溶接時のアークの安定性及びスラグの被包性を向上する効果がある。したがって、鋼製外皮及びフラックス中にTiが含まれる場合のTi含有量は、2.0質量%以上であることが好ましく、2.5質量%以上であることがより好ましく、2.8質量%以上であることが更に好ましく、3.0質量%以上であることがより更に好ましい。
なお、Tiは主にTiO2等のTi酸化物としてフラックスに添加されるが、Fe-Ti合金やTi金属等の形態でワイヤ中に添加されていてもよい。本実施形態においては、Ti酸化物、Ti金属及びTi合金の含有量をTiに換算した値で規定し、この換算値を単にTi含有量と記載する。
本実施形態に係るフラックス入りワイヤは、さらに、任意成分として、スラグ形成剤を含有することが好ましい。スラグ形成剤は、溶接金属中の不純物(酸素等)を除去する作用を有する成分であり、本実施形態においては、ワイヤ中に少なくとも1種のスラグ形成剤を含有することが好ましい。なお、ワイヤ中に含有されるスラグ形成剤としては、特定の種類に限定しないが、Na、K、Li及びMg等のアルカリ金属、アルカリ土類金属及びこれらの化合物、SiO2、ZrO2、Al2O3、MnO及びMgO等の酸化物、CaF2、BaF2、MgF及びLiF等のフッ化物、CaCO3、並びにBaCO3等の炭酸塩を使用できる。
一方、上記合計量が1.500質量%以下の場合、ワイヤ中の水分量を低水準で維持でき、水素割れの発生を抑制できる。したがって、ワイヤ全質量に対するこれらの元素の合計量は1.500質量%以下とすることが好ましく、1.000質量%以下とすることがより好ましい。
本実施形態に係るフラックス入りワイヤは、さらに、任意成分として、Nb、Zr及びVから選択された少なくとも1種の合計:0.50質量%以下で含有することが好ましい。これらの元素からなる酸化物は安定であり、ワイヤ中にこれらの元素が含まれることで、高い脱酸効果が得られやすいからである。これらの元素の合計量は0.50質量%以下とすることが好ましく、0.40質量%以下とすることがより好ましい。
本実施形態に係るフラックス入りワイヤは、さらに、任意成分として、B:0質量%超0.0080質量%以下を含有することが好ましい。Bは、溶接金属の焼入れ性を向上させることができる。
ワイヤ中にBが含有されていると、B含有量が微量であっても、ワイヤを介して溶接金属にBが添加され、焼入れ効果により溶接金属の強度を向上させることができる。したがって、鋼製外皮及びフラックス中にBが含まれる場合のB含有量は、0質量%超であることが好ましく、0.0040質量%以上であることがより好ましい。
一方、B含有量が0.0080質量%以下の場合、溶接金属の靱性の低下を抑制し、かつ高温割れ感受性を低くすることができる。したがって、鋼製外皮及びフラックス中にBが含まれる場合のB含有量は、0.0080質量%以下とすることが好ましく、0.0075質量%以下とすることがより好ましい。
本実施形態に係るフラックス入りワイヤは、さらに、任意成分として、Bi:0.010質量%以上0.100質量%以下を含有することが好ましい。Biは、溶接の際に発生する溶接スラグの剥離性を改善するために不可欠の元素である。
上記Biが0.010質量%以上の場合、溶接スラグの剥離性を改善する効果がある。したがって、鋼製外皮及びフラックス中にBiが含まれる場合のBi含有量は0.010質量%以上であることが好ましく、0.015質量%以上であることがより好ましい。
一方、Biが0.100質量%以下の場合、溶接金属の高温割れ感受性を低くすることができる。したがって、鋼製外皮及びフラックス中にBが含まれる場合のBi含有量は0.100質量%以下とすることが好ましく、0.080質量%以下とすることがより好ましい。
なお、Biは主にBi2O3等の酸化物としてフラックスに添加されるが、Fe-Bi合金やBi金属等の形態でワイヤ中に添加されていてもよい。本実施形態においては、Bi酸化物、Bi金属及びBi合金の含有量をBiに換算した値で規定し、このBi換算値を単にBi含有量と記載する。
Feは、フラックス入りワイヤの主要成分である。溶着量や、他の成分組成の関係から、Feの含有量は、ワイヤ全質量あたり85質量%以上であることが好ましく、87質量%以上であることが好ましく、また、95質量%以下であることが好ましく、93質量%以下であることが好ましい。
本実施形態に係るフラックス入りワイヤの残部は、不可避的不純物である。そして、本実施形態に係るフラックス入りワイヤは、上記したワイヤの成分の他、更に必要に応じて、Al、Ta、W、Sn、希土類元素(REM)、及びCaが添加されていてもよい。なお、Snは、添加または不可避的不純物としてワイヤ中に含有されていても、溶接金属の耐塩酸露点腐食性を阻害するものではないが、Sn含有量が0.05質量%を超えると、溶接継手の靭性を著しく低下させるため、鋼製外皮及びフラックス中のSn含有量は0.05質量%以下に制限することが好ましい。
なお、本実施形態に係るフラックス入りワイヤは、上述の含有量を規定した元素、Fe、及び上記残部の元素を合計で、ワイヤ全質量に対し96質量%以上とすることが好ましい。その他の成分としては、酸化物の酸素及び窒素等である。例えば、酸素は、1~5%の範囲であることが実際的である。
本実施形態に係るフラックス入りワイヤのフラックス充填率(=フラックス質量/ワイヤ全質量×100)は、特に限定されない。
ただし、フラックス充填率が10質量%未満であると、アークの安定性が悪くなるとともにスパッタ発生量が増加し、溶接作業性が低下することがあるため、フラックス充填率は好ましくは10質量%以上とし、より好ましくは12質量%以上とする。
一方、フラックス充填率が30質量%を超えると、ワイヤの断線が発生したり、フラックスの充填中に粉がこぼれ落ちたりする等、生産性が低下することから、フラックス充填率は好ましくは30質量%以下とし、より好ましくは25質量%以下とする。
本実施形態に係るフラックス入りワイヤの製造方法としては、特に限定されるものではないが、例えば、以下に示す方法で製造することができる。
まず、鋼製外皮を構成する鋼帯を準備し、この鋼帯を長手方向に送りながら成形ロールにより成形して、U字状のオープン管にする。次に、所定の成分組成となるように、各種原料を配合したフラックスを鋼製外皮に充填し、その後、断面が円形になるように加工する。その後、冷間加工により伸線し、例えば1.2~2.4mmのワイヤ径のフラックス入りワイヤとする。
なお、冷間加工途中に焼鈍を施してもよい。また、製造の過程で成形した鋼製外皮の合わせ目を溶接した継ぎ目が無いワイヤと、前記合わせ目を溶接せず隙間のまま残すワイヤのいずれの構造も採用することができる。
なお、表1又は表2に示す各化学成分の含有量は、ワイヤ全質量あたりの含有量(質量%)である。また、残部は不可避的不純物である。さらに、表1に示す「57[Mo]+221[Co]」は、式(1)の左辺により算出される値を示す。
また、表1及び表2において、各成分組成における“-”なる表記は、0.005質量%未満を意味する。
その後、下記表4に示す溶接条件により2枚の鋼板1を突き合せ溶接し、接合された鋼板1の表面及び裏面をそれぞれ1mmずつ研磨した。さらに、得られた溶接金属3の表面及び裏面も適宜研磨した後、側面を切断することにより、幅が25mm、長さが60mm、厚さが4mmである継手試験片2を作製した。
比較例である試験No.3及び8は、Co含有量が本発明の数値範囲の下限未満であるとともに、式(1)を満足しないため、耐塩酸腐食性が優れた溶接金属を得ることができず、腐食試験の評価結果がD(不良)であった。
比較例である試験No.10は、Mo含有量及びCo含有量が本発明の数値範囲の下限未満であり、式(1)を満足しないとともに、Sb含有量が本発明の数値範囲の下限未満であり、更には、Cr含有量が本発明の数値範囲の上限を超えているため、腐食試験の評価結果が極めて悪い結果(評価結果D、腐食速度比:1.15)となった。
なお、試験No.12及び13は、Mo含有量及びCo含有量が比較的高く、式(1)の左辺により算出される値が20以上の大きな値となったため、耐塩酸腐食性が著しく優れた溶接金属(評価結果A、B)を得ることができた。
Claims (1)
- 鋼製外皮にフラックスが充填された、ガスシールドアーク溶接用フラックス入りワイヤであって、
ワイヤ全質量あたり、
C :0.02質量%以上0.10質量%以下、
Si:0.05質量%以上1.00質量%以下、
Mn:1.5質量%以上3.0質量%以下、
S :0.003質量%以上0.030質量%以下、
Cu:0.05質量%以上0.50質量%以下、
Ni:0.05質量%以上0.50質量%以下、
Mo:0.05質量%以上0.35質量%以下、
Co:0.005質量%以上0.300質量%以下、
Sb:0.01質量%以上0.20質量%以下、
Ti:2.0質量%以上4.5質量%以下、
B:0質量%超0.0080質量%以下、
Fe:85質量%以上、
を含有し、
P :0.030質量%以下、
Cr:0.05質量%以下、
Sn:0.05質量%以下、
に制限するとともに、
さらに、スラグ形成剤を含有し、ワイヤ全質量あたり、前記スラグ形成剤中のNa、K、Li、Mg及びFの含有量の合計が0.010質量%以上1.500質量%以下であり、
Nb、Zr及びVから選択された少なくとも1種を含有し、ワイヤ全質量あたり、前記Nb、Zr及びVの含有量の合計が0質量%超0.50質量%以下であり、
前記C、前記Si、前記Mn、前記S、前記Cu、前記Ni、前記Mo、前記Co、前記Sb、前記Ti、前記B、前記Fe、不可避的不純物、前記P、前記Cr、前記Sn、前記スラグ形成剤中のNa、K、Li、Mg及びFの含有量の合計、並びに前記Nb、Zr及びVの含有量の合計、の各元素の合計が、ワイヤ全質量に対し96質量%以上であり、
下記式(1)を満足することを特徴とするフラックス入りワイヤ。
57×[Mo]+221×[Co]≧15 ・・・(1)
ただし、[Mo]は、ワイヤ全質量に対する前記鋼製外皮及び前記フラックス中のMo含有量(質量%)を示し、[Co]は、ワイヤ全質量に対する前記鋼製外皮及び前記フラックス中のCo含有量(質量%)を示す。
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