JP7007114B2 - 固体接合型光電変換素子 - Google Patents

固体接合型光電変換素子 Download PDF

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Description

本発明は、固体接合型光電変換素子に関する。
近年、有機無機ペロブスカイト化合物を光電変換層に用いた新たな固体積層型光電変換素子が提案され(非特許文献1)、新たな光電変換素子として注目を集めた。更に、本光電変換層の製法上の特徴である簡易な低温溶液塗布プロセスを活かして樹脂フィルム基材上に本素子を形成する試みも盛んに行われている(非特許文献2)。しかしながら、これら樹脂フィルム基板を用いた太陽電池では450~500℃の高温プロセスを用いることができないために高品質な電子受容膜(TiOやZnO等)が形成できず、従来のガラス基材型に比べて十分な性能が得られないという欠点がある。
非特許文献3には、ITO/PEN基材にC60フラーレン誘導体を真空熱蒸着で成膜し、これを電子授受層としたペロブスカイト太陽電池が報告されている。しかしながら、炭素材料の熱蒸着には特殊な高真空成膜装置が必要であり、且つフラーレン誘導体そのものも高価な材料であることから、将来、これらの太陽電池モジュール製造に際しては、より簡便且つ安価な製造技術が求められる。
本発明では、低コストで製造可能であり、種々の基材を用いることができ、光電変換効率が良好な固体接合型光電変換素子を提供することを目的とする。
これまで我々が樹脂フィルム基材を用いた固体接合型光電変換素子の試作検討を行ったところ、従来のガラス基材を用いた素子と比べて光電変換効率が低いことが主課題として浮上してきた。これは電子授受層形成の際にガラス基材で行っていた450~500℃の高温熱処理を樹脂フィルム基材では施すことができないため、電子授受層の電子受容及び伝搬能力が不足していることが原因と考えられる。
本発明者らは、鋭意検討した結果、以下の固体接合型光電変換素子が、上記課題を解決できることを見出した。
本発明は以下の態様を有する。
[1] 基材と、
前記基材上の第1の導電層と、
前記第1の導電層上の電子受容層と、
前記電子受容層上のペロブスカイト化合物を含む光電変換層と、
前記光電変換層上の第2の導電層と、を有する光電変換素子であって、
前記電子受容層が、金属酸化物粒子Aと複合金属酸化物粒子Bとを含み、
前記金属酸化物粒子Aの抵抗率ρAと複合金属酸化物粒子Bの抵抗率ρBとが、ρA>ρBの関係を満たし、
前記金属酸化物粒子Aの体積と前記複合金属酸化物粒子Bの体積の合計に対する、前記複合金属酸化物粒子Bの体積の比が、0超0.1未満である、固体接合型光電変換素子。
[2] 前記金属酸化物粒子Aの抵抗率ρAが10~10Ωcmであり、エネルギーバンドギャップが3eV以上である、[1]に記載の固体接合型光電変換素子。
[3] 前記複合金属酸化物粒子Bの抵抗率ρBが10-1~10Ωcmである、[1]又は[2]に記載の固体接合型光電変換素子。
[4] 前記金属酸化物粒子Aと前記複合金属酸化物粒子Bの平均粒子径がそれぞれ10~200nmである、[1]~[3]のいずれ一項に記載の固体接合型光電変換素子。
[5] 前記光電変換層と前記第2の導電層との間に正孔輸送層を有する、[1]~[4]のいずれか一項に記載の固体接合型光電変換素子。
[6] 前記第1の導電層と前記電子受容層との間にブロック層を有する、[1]~[5]のいずれか一項に記載の固体接合型光電変換素子。
本発明によれば、低コストで製造可能であり、種々の基材を用いることができ、光電変換効率が良好な固体接合型光電変換素子を提供することができる。
本発明の第一の態様の固体接合型光電変換素子を示す断面図である。 光電変換層を形成する際の模式図である。
≪固体接合型光電変換素子≫
図1に本発明の第一の態様における固体接合型光電変換素子10の断面図を示す。本発明の第一の態様における固体接合型光電変換素子10は、基材1と、基材1上に形成された第1の導電層2と、第1の導電層2上に形成された電子受容層3と、電子受容層3上に形成された光電変換層4と、光電変換層4上に形成された第2の導電層5と、を有する。
<基材>
本発明において、基材1は樹脂フィルム、ガラス、金属基材等を使用できる。
樹脂フィルムとしては、透明なプラスチック樹脂を用いることができ、ポリアクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、ポリイミド樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂及びポリアミド樹脂等が例示できる。これらの中でも、ポリエステル樹脂、特にポリエチレンナフタレート(PEN)やポリエチレンテレフタレート(PET)が、薄く、軽く、かつフレキシブルな太陽電池を製造する観点から好ましい。
基材1としては、フィルムソーダライムガラス、硼珪酸ガラス、石英ガラス、ホウケイ酸ガラス、バイコールガラス、無アルカリガラス、青板ガラス及び白板ガラスなどの一般的なガラス等も使用することもできる。
また本発明では、第2の導電層5に光透過性を有するものを用いれば、基材1にステンレスの板や箔、アルミの板や箔などの金属基材を用いることもできる。
<第1の導電層>
第1の導電層2は公知の導電膜を用いることができる。
第1の導電層2の素材としては、導電性金属類(金、銀、銅、アルミ等)、導電性炭素(グラファイト、カーボンブラック、カーボンナノファイバー等)、導電性金属酸化物(ITO、FTO、IGZO等)が挙げられる。第1の導電層2は、これら材料の単一層であってもよく、複数材料による積層であってもよい。
第1の導電層2はCVD法、スパッタ法、蒸着法、塗布法などで形成することができる。
<電子受容層>
電子受容層3は、金属酸化物粒子Aと複合金属酸化物粒子Bとを含む。電子受容層3において、金属酸化物粒子Aと複合金属酸化物粒子Bとは均一に混合されていることが好ましい。
(金属酸化物粒子A)
本発明に用いる金属酸化物粒子Aは、1種又は2種以上の金属酸化物を含むものであり、1種の金属酸化物を含むものがより好ましい。金属酸化物に含まれる金属としては、Zn、Sn、Ti、Al、Si、Zr等が挙げられる。
金属酸化物粒子Aのエネルギーバンドギャップは、入射された光が電子受容層3を透過して光電変換層4に到達できるよう、3eV以上が好ましく、3.1~3.7eVがより好ましい。本発明においてエネルギーバンドギャップは、光学的バンドギャップ測定、X線光電子分光法などの方法で測定できる。
金属酸化物粒子Aの材料としては、可視光領域で透明な材料であることが好ましく、例えば、ZnO、SnO、TiOなどの酸化物半導体や、アルミナ、シリカ、ジルコニアなどの絶縁体が挙げられる。なかでも電子受容及び電子伝搬性の観点から酸化物半導体が好ましい。酸化物半導体は、その金属種や酸素比によって抵抗率が変動する。過剰な電子伝搬性が引き起こす素子内部での短絡を抑制する必要から、本発明では抵抗率10~10Ωcmの酸化物半導体を用いることが好ましく、抵抗率10~10Ωcmの酸化物半導体を用いることがより好ましい。このような抵抗率を有する酸化物半導体としては、酸化亜鉛や酸化チタンが挙げられる。なお、抵抗率は、粒子の粉体を圧力容器(イーガー社製:紛体電気伝導率測定セル)に入れて10MPaで圧縮して圧粉体を作製し、この圧粉体をデジタルマルチメーターで測定すること等により得られる。
本発明の金属酸化物粒子Aの平均粒子径は10~200nmが好ましく、10~50nmがより好ましい。
(複合金属酸化物粒子B)
本発明に用いる複合金属酸化物粒子Bは、前記金属酸化物粒子Aよりも低い抵抗率を有し、2種以上の金属を有する金属酸化物を含む。金属としてはSb、Al、Ga、Nb、Sn、Zn、Ti等が挙げられる。複合金属酸化物粒子Bを前記金属酸化物粒子Aと混合して用いることによって、450~500℃の高温焼成による粒子間の溶融結着工程を必要とせずに電子受容層3の電子受容及び伝搬能力を増加することができる。複合金属酸化物粒子Bの素材としては、ATO(アンチモン添加酸化スズ),AZO(アルミ添加酸化亜鉛),GZO(ガリウム添加酸化亜鉛),Nb-TiO(ニオブ添加酸化チタン)など、不純物元素を添加した各種金属酸化物材料が挙げられる。また本発明では、これらの複合金属酸化物材料によって被覆されたコアシェル構造粒子を用いることもできる。例えば、複合金属酸化物材料で前記酸化物半導体を被覆した粒子が挙げられる。
本発明の複合金属酸化物粒子Bは電子受容層3の電子受容及び電子伝搬能力を増加し得る。過剰な電子伝搬性が引き起こす素子内部での短絡を抑制する必要から、抵抗率10-1~10Ωcmの複合金属酸化物粒子Bを用いることが好ましく、10-1~10Ωcmの複合金属酸化物粒子Bを用いることがより好ましい。
本発明の複合金属酸化物粒子Bの平均粒子径は10~200nmが好ましく、10~50nmがより好ましい。
複合金属酸化物粒子Bの平均粒子径に対する金属酸化物粒子Aの平均粒子径の比(以下、a/b比ともいう)は、0.2~5.0が好ましく、0.5~3.0がより好ましく、1.0~2.0がさらに好ましい。
a/b比を上記範囲内とすると、金属酸化物粒子Aと複合金属酸化物粒子Bとが均一に混合されやすい。
電子受容層3の全体積に対する金属酸化物粒子Aと複合金属酸化物粒子Bの合計の体積は、60~100体積%が好ましく、70~100体積%がより好ましい。
金属酸化物粒子Aの体積と複合金属酸化物粒子Bの体積の合計に対する複合金属酸化物粒子Bの体積比(以下、B/(A+B)比ともいう)は、0超0.1未満であり、0.02~0.08が好ましい。
B/(A+B)比を上記範囲内とすることにより、光電変換効率を向上しやすい。
なお、電子受容層3を形成する粒子の体積はガス吸着法による空隙率を測定し、算出することが出来る。
電子受容層3は多孔質膜であってもよく、緻密膜(非多孔質膜)であってもよいが、多孔質膜であることが好ましい。
電子受容層3が多孔質膜である場合、後述の光電変換層の一部が、多孔質構造の空隙に存在してもよい。
電子受容層3の厚さは特に限定されないが、10~500nmが好ましく、10~100nmがより好ましい。
電子受容層3は1層でもよいし2層以上でもよい。2層以上の場合は、各層の組成は同じでもよいし異なっていてもよい。
<光電変換層>
光電変換層4は、ペロブスカイト化合物を含む層である。光電変換層4に含まれるペロブスカイト化合物は、光吸収により起電力を発生させ得るものであれば特に限定されず、公知のペロブスカイト化合物が適用可能である。なかでも、ペロブスカイト型の結晶を形成可能であり、単一の化合物内に有機成分及び無機成分を有する下記組成式(1):
ABX ・・・(1)
で表されるペロブスカイト化合物が好ましい。
組成式(1)において、Aは有機カチオンを表し、Bは金属カチオンを表し、Xはハロゲンアニオンを表す。ペロブスカイト結晶構造において、Bサイトは、Xサイトに対して八面体配位をとり得る。Bサイトの金属カチオンと、Xサイトのハロゲンアニオンの原子軌道とが混成し、光電変換に関わる価電子帯と伝導帯が形成される、と考えられる。
組成式(1)のBで表される金属カチオンを構成する金属は特に限定されず、例えばCu、Ni、Mn、Fe、Co、Pd、Ge、Sn、Pb、Euが挙げられる。なかでも、Xサイトのハロゲンアニオンの原子軌道との混成により伝導性の高いバンドを容易に形成することが可能な、Pb及びSnが好ましい。
Bサイトを構成する金属カチオンは1種類であってもよいし、2種類以上であってもよい。
組成式(1)のXで表されるハロゲンアニオンを構成するハロゲンは特に限定されず、例えばF、Cl、Br、Iが挙げられる。なかでも、Bサイトの金属カチオンとの混成軌道により伝導性の高いバンドを容易に形成することが可能な、Cl、Br及びIが好ましい。
Xサイトを構成するハロゲンアニオンは1種類であってもよいし、2種類以上であってもよい。
組成式(1)のAで表される有機カチオンを構成する有機基は特に限定されず、例えばアルキルアンモニウム誘導体、ホルムアミジニウム誘導体が挙げられる。
Aサイトを構成する有機カチオンは1種類であってもよいし、2種類以上であってもよい。
前記アルキルアンモニウム誘導体がなす有機カチオンとして、例えば、メチルアンモニウム、ジメチルアンモニウム、トリメチルアンモニウム、エチルアンモニウム、プロピルアンモニウム、イソプロピルアンモニウム、tert-ブチルアンモニウム、ペンチルアンモニウム、ヘキシルアンモニウム、オクチルアンモニウム、フェニルアンモニウム等の、炭素数1~6のアルキル基を有する1級又は2級のアンモニウムが挙げられる。なかでも、ペロブスカイト結晶が容易に得られる、メチルアンモニウムが好ましい。
前記ホルムアミジニウム誘導体がなす有機カチオンとして、例えば、ホルムアミジニウム、メチルホルムアミジニウム、ジメチルホルムアミジニウム、トリメチルホルムアミジニウム、テトラメチルホルムアミジニウムが挙げられる。なかでも、ペロブスカイト結晶が容易に得られる、ホルムアミジニウムが好ましい。
組成式(1)で表される好適なペロブスカイト化合物として、例えば、CHNHPbI、CHNHPbI3-hCl(hは0~3を表す。)、CHNHPbI3-jBr(jは0~3を表す。)等の下記組成式(2):
RNHPbX ・・・(2)
で表されるアルキルアミノ鉛ハロゲン化物が挙げられる。組成式(2)において、Rはアルキル基を表し、Xはハロゲンアニオンを表す。この組成式を有するペロブスカイト化合物は、その吸収波長域が広く、太陽光の広い波長範囲を吸収できるので、優れた光電変換効率が得られる。
組成式(2)のRで表されるアルキル基は、炭素数1~6の直鎖状、分岐鎖状若しくは環状の飽和又は不飽和アルキル基であることが好ましく、炭素数1~6の直鎖状飽和アルキル基であることがより好ましく、メチル基、エチル基又はn-プロピル基であることがさらに好ましい。これらの好適なアルキル基であると、ペロブスカイト結晶が容易に得られる。
光電変換層4は、化合物Zを含有してもよい。
化合物Zは、前記ペロブスカイト化合物とは異なる化合物であり、前記ペロブスカイト化合物が有しない化学状態を有する化合物である。
ここで「化学状態」とは、化合物を構成する元素同士の結合状態と同義である。
光電変換層4に含まれる化合物の化学状態は、例えば、光電子分光法(XPS)によって測定することができる。一般に、元素中の電子状態(電子エネルギー)は結合状態によって変化(化学シフト)するため、XPSによって、各元素の電子エネルギーを分析することで測定対象物に含まれる化合物の化学状態を調べることができる。元素は近接原子との結合状態や原子の価数によってその結合エネルギーが異なる。例えば、C-O結合とC=O結合を区別可能なシグナルをそれぞれ検出することができる。また、例えば、炭素原子に結合した元素の電気陰性度の違いによっても、各々の炭素原子を区別可能なシグナルをそれぞれ検出することができる。
したがって、光電変換層4をXPSで測定して得られたシグナルには、ペロブスカイト化合物を構成する元素同士の化学状態に由来するシグナルαが検出される。また、光電変換層4に化合物Zが含まれる場合、このシグナルαとは異なるシグナルβが検出される。つまり、シグナルβが検出されれば、光電変換層4にペロブスカイト化合物が有しない化学状態を有する化合物Zが含有されていることが分かる。
化合物Zを含む光電変換層4はピンホールやクラックが生じ難く、安定した発電性能を発揮する。このメカニズムとして、製造時に原料溶液の塗膜が徐々に乾燥しながらペロブスカイト化合物が結晶化して光電変換層(いわゆるペロブスカイト層)が形成される際、化合物Zが結晶化プロセスを安定化していると考えられる。つまり、化合物Zを含まず、ペロブスカイト化合物の結晶化速度が急速である場合には、乾燥後の光電変換層4において、より詳しくは光電変換層4の第1の導電層2の拡がり方向(基材1の上面に平行方向)に見た光電変換層4の面内において、結晶粒界面間の空白部が発生し、ピンホールの原因になることがある。また、ペロブスカイト化合物が結晶化しつつある塗膜の複数箇所で乾燥ムラが生じ、先に結晶化した領域が後に結晶化した領域に引っ張られたり押されたりして、局所的な過密状態及び過疎状態が発生し、ピンホールやクラックが発生することがある。
一方、ペロブスカイト化合物の結晶化時に化合物Zが存在すると、乾燥速度及び/又は結晶化速度が穏やかになり、乾燥ムラが低減され、ペロブスカイト結晶層が塗膜面全体に均一に形成され易くすることができる。また、形成後のペロブスカイト結晶層が化合物Zによって安定化され、物理的な応力、熱、光等に対する耐性を高くすることができる。
上記の効果を奏する化合物Zは、少なくとも前記原料溶液の乾燥及びペロブスカイトの結晶化が完了するまでは光電変換層4に含まれていることが好ましく、その結晶化の完了後も結晶の安定化の観点から光電変換層4に含まれていることがより好ましい。この観点から、化合物Zの沸点は前記原料溶液を構成する溶媒の沸点よりも高いことが好ましく、具体的には例えば150℃以上が好ましく、170℃以上がより好ましく、200℃以上がさらに好ましい。このように前記原料溶液の溶媒よりも高い沸点を有する化合物Zを用いると、結晶化完了後の光電変換層4に化合物Zを容易に含有させることができる。
上記の効果を奏する観点から、好適な化合物Zとして以下が挙げられる。
化合物Zは有機化合物であることが好ましい。
化合物Zは、周期表の第14~第16族元素に含まれる元素zを含み、前記元素zが前記化学状態を形成していることが好ましい。元素zは、炭素、窒素、酸素、ケイ素、リン、又は硫黄が好ましい。
化合物Zは、前記元素zとして2種以上の元素を含むことが好ましい。その好適な組み合わせとしては、例えば、炭素-窒素、炭素-酸素、炭素-リン、炭素-硫黄が挙げられる。
化合物Zは、アルキル基、アルケニル基及びアルキニル基のうち少なくとも1つを有する有機化合物であることが好ましい。これらの有機基は、直鎖状又は分岐鎖状であり、その炭素数は、1~6であることが好ましい。
光電変換層4全体でペロブスカイト化合物の結晶安定化を均一に行い、良好な膜質を得るためには、化合物Zとペロブスカイト化合物の混和性が高い方がより好ましい。一般に、2種の化合物の極性が類似していたほうが、混和性が高くなる傾向がある。通常、ペロブスカイト化合物はイオン性結晶であり極性が高い。よって、化合物Zも極性を有していた方がより好ましい。
この観点から、単一の化合物Zが2種以上の前記元素zを有する場合、2種以上の前記元素zのうち、最大の電気陰性度を有する第1の元素zと、最小の電気陰性度を有する第2の元素zとの電気陰性度の差が0.1以上であることが好ましい。例えば、炭素と酸素、炭素と窒素、炭素とリン、硫黄と酸素の組み合わせが挙げられる。このような電気陰性度の異なる2種以上の元素zを有する化合物Z中では電子密度が高い部位と低い部位とが存在し、適度な極性が得られる。これにより、ペロブスカイト化合物と化合物Zの混和性を高め、良好な膜質を得ることができる。本明細書において、「電気陰性度」はポーリングの電気陰性度である。
化合物Zは、エーテル基(-C-O-C-)、水酸基(-OH)、ケトン基(>C=O)、スルホ基(-SOH)、チオール基(-SH)、スルフェニル基(RS-;Rは1価の有機基)、スルホニル基(-S(=O)-)、亜硫酸エステル基(RO-S(=O)-O-;Rは1価の有機基)、ホスフィン基(>P-)及びホスホノ基{(RO)P(=O)-;Rはそれぞれ独立に1価の有機基)}の群から選ばれる1つ以上の基を有することが好ましい。
上記の群のうち、Rで表される1価の有機基は、直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基又はアルケニル基であることが好ましく、その炭素数は、1~6であることが好ましい。
なお、上記エーテル基を構成する炭素原子は4価であり、残る2本の結合手は省略している。
具体的な化合物Zとしては、例えば、下記式(Z1)~(Z4)で表される化合物(Z1)~(Z4)が挙げられる。
(化合物(Z1))
(Z1)・・・ R1-(CHn1-R2
式(Z1)中、n1は4~20の整数を表し、R1、R2はそれぞれ独立に、水素原子、-SH基又は-OH基を表し、1以上の互いに隣接しない(-CH-)基の水素原子は-OH基に置換されていてもよい。
式(Z1)中、n1は、6~18が好ましく、7~16がより好ましく、8~14がさらに好ましい。
化合物(Z1)の好適な具体例として、下記に構造式を例示する、n-デカン(沸点174℃)、n-ドデカン(沸点216℃)、2-デカノール(沸点211℃)、1-ヘプタンチオール(沸点177℃)、1-デカンチオール(沸点241℃)等が挙げられる。
Figure 0007007114000001
(化合物(Z2))
(Z2)・・・ *-(CHn2-NH-(CHn3-*
式(Z2)中、両端の「*」同士が単結合を形成して環式基を形成しており、n2,n3は1~3の整数を表し、1以上の互いに隣接しない(-CH-)基はそれぞれ独立に(>C=O)基に置換されていてもよく、(-NH-)の水素原子は炭素数1~3のアルキル基に置換されていてもよい。
式(Z2)中、n2,n3は、それぞれ独立に2又は3が好ましく、n2+n3は4又は5が好ましい。
化合物(Z2)の好適な具体例として、下記に構造式を例示する、n-メチルピロリドン(沸点202℃)、N-メチルスクシンイミド(沸点235℃)、等が挙げられる。
Figure 0007007114000002
(化合物(Z3))
(Z3)・・・ R3-(R4-)(R5-)P(=O)n4
式(Z3)中、n4は0又は1であり、R3,R4,R5は、それぞれ独立に、リン原子に結合した炭素数1~8の直鎖又は分岐鎖状のアルキル基であり、前記アルキル基を構成する1以上の互いに隣接しない(-CH-)基は(-O-)基に置換されていてもよい。
化合物(Z3)の好適な具体例として、下記に構造式を例示する、トリブチルホスフィン(沸点240℃)、リン酸トリエチル(沸点216℃)、等が挙げられる。
Figure 0007007114000003
(化合物(Z4))
(Z4)・・・ R6-(R7-)S(=O)n5
式(Z4)中、n5は1又は2であり、R6,R7は、それぞれ独立に、硫黄原子に結合した炭素数1~8の直鎖又は分岐鎖状のアルキル基であり、前記アルキル基を構成する1以上の互いに隣接しない(-CH-)基は(-O-)基に置換されていてもよい。
化合物(Z4)の好適な具体例として、下記に構造式を例示する、ジメチルスルホン(沸点238℃)、亜硫酸ジイソプロピル(沸点170℃)、等が挙げられる。
Figure 0007007114000004
光電変換層4に含まれる化合物Zを構成する各元素の電気陰性度の最大値は、前記ペロブスカイト化合物を構成する各元素の電気陰性度の最大値よりも大きいことが好ましい。ここで、電気陰性度はポーリングの電気陰性度である。
例えば、CHNHPbIの化学式で表されるペロブスカイト化合物を構成する各元素の電気陰性度は、炭素が2.55、水素が2.20、窒素が3.04、鉛が2.20、ヨウ素が2.66であり、その最大値は窒素の3.04である。
一方、例えば、化合物(Z4)の一例として挙げた硫酸ジメチルを構成する各元素のうち、最大の電気陰性度は酸素原子の3.44である。
したがって、電気陰性度の観点からも、硫酸ジメチルは好適な化合物Zである。
なお、電気陰性度が大きい化合物Zを用いることによって、ペロブスカイト化合物の結晶化に好影響を与えることができると考えられる。
光電変換層4に含まれる化合物Zは、1種類でもよいし、2種類以上であってもよい。
光電変換層4に含まれるペロブスカイト化合物は、1種類でもよいし、2種類以上であってもよい。
光電変換層4に含まれるペロブスカイト化合物の合計と化合物Zの合計の質量比は特に限定されず、例えば、ペロブスカイト化合物100モルに対する化合物Zのモル数は、0.01~50が好ましく、0.1~20がより好ましく、1~10がさらに好ましい。
化合物Zの含有量が0.01モル以上であると、ペロブスカイト結晶をより安定化することができる。50モル以下であると、ペロブスカイト結晶による発電性能の低下を抑制することができる。発電性能の低下とは、例えば光電変換層4の単位質量あたりの起電力の低下である。
光電変換層4におけるペロブスカイト化合物による光吸収及び光電変換を妨げない観点から、化合物Zのモル吸光係数は1000以下であることが好ましい。
本明細書において特に明記しない限り、「モル吸光係数」は400~800nmの波長におけるモル吸光係数である。
光電変換層4の厚さは、10~1000nmが好ましく、200~600nmがより好ましい。
<第2の導電層>
第2の導電層5の材料は特に限定されず、例えば、金、銀、銅、アルミニウム、タングステン、ニッケル及びクロムからなる群から選択される何れか1種以上の金属またはその合金、あるいはITOやIGZO等の透明導電酸化物材料、カーボンブラックやグラフェン等の導電性炭素材料が好適である。第2の導電層5の層数は、1層であってもよく、2層以上の積層であってもよい。厚さは特に限定されず、例えば、10nm~100nmが好ましい。
≪固体接合型光電変換素子の製造方法≫
本発明に係る固体接合型光電変換素子は、電子受容層に金属酸化物粒子Aと複合金属酸化物粒子Bとを含めること以外は、従来のペロブスカイト太陽電池と同じ製造方法によって製造することができる。以下、各層の形成方法の一例を順に説明する。
<基材の準備>
基材1は常法により作製可能であり、市販品を使用してもよい。
<第1の導電層の形成>
基材1の表面に第1の導電層2を形成する方法は特に限定されず、例えば、従来の太陽電池の透明導電層を形成する際に用いられている物理蒸着法や印刷法等の公知の製膜方法が挙げられる。
<電子受容層の形成>
本発明の電子受容層3は、金属酸化物粒子Aと複合金属酸化物粒子Bとを含む溶液を前記第1の導電層2上に塗布し、その後乾燥させることで作成できる。この際、前記金属酸化物粒子Aと前記複合金属酸化物粒子Bとの体積比が、0<B/(A+B)<0.1となるよう(好ましくは0.02<B/(A+B)<0.08となるよう)、塗布溶液中の粒子混合比を調整する。塗工手法や塗工環境に応じて、適宜、溶媒、粒子含有量を調整することが好ましい。通常、混合する粒子の体積比が、電子受容層3における金属酸化物粒子Aと複合金属酸化物粒子Bの体積比と同じになる。
金属酸化物粒子A及び複合金属酸化物粒子Bは、塗布溶液中で均一に混合されていると、電子受容層3において金属酸化物粒子A及び複合金属酸化物粒子Bの分布が均一になりやすい。例えばボールミル等で金属酸化物粒子A及び複合金属酸化物粒子Bを均一に混合できる。
塗布溶液の溶媒としては、水の他、エタノール、メチルエチルケトン等の有機溶媒が挙げられる。
塗布溶液を乾燥させる際の温度は、20~150℃が好ましく、50~100℃がより好ましい。乾燥温度を上記範囲内とすることにより、基材に樹脂フィルムを使用しても基材の変形を防ぐことができる。
塗布溶液の塗工方法としては特に限定されず、例えば、グラビア塗布法、バー塗布法、印刷法、スプレー法、スピンコーティング法、ディップ法、ダイコート法等の公知方法を適用できる。
<光電変換層の形成>
光電変換層4は、例えば、ペロブスカイト化合物又はペロブスカイト化合物の前駆体を溶解した原料溶液を前記電子受容層3の表面に塗布し、所望の厚さの溶液からなる塗膜を形成し、この塗膜を乾燥することによって形成できる。
図2は、光電変換層4を形成する際の模式図である。電子受容層3を構成する粒子P間に前記原料溶液が浸透し、電子受容層3の内部にも光電変換層4の一部が形成される。
前記電子受容層3の表面に前記原料溶液を塗布する方法は特に限定されず、例えば、グラビア塗布法、バー塗布法、印刷法、スプレー法、スピンコーティング法、ディップ法、ダイコート法等の公知方法を適用できる。
前記原料溶液中の原料の濃度は特に限定されず、充分に溶解又は分散され、前記塗布方法により原料溶液を均一な厚さで塗布可能な程度の粘度を呈する濃度であることが好ましい。
前記塗膜を乾燥する方法は特に限定されず、自然乾燥、減圧乾燥、温風乾燥等の公知方法を適用できる。
前記塗膜の乾燥温度は、ペロブスカイト化合物の結晶化(塗膜の硬化)が充分に進行する温度であればよく、例えば40~150℃の範囲が挙げられる。
乾燥処理の程度としては、硬化した光電変換層4の総質量(100%)に対する溶媒の含有量が、例えば、0.1%以下になるまで乾燥することが好ましく、0.01%以下になるまで乾燥することがより好ましい。
<第2の導電層の形成>
光電変換層4の表面に第2の導電層5を形成する方法は特に限定されず、例えば、従来の太陽電池の透明導電層を形成する際に用いられている物理蒸着法や印刷法等の公知の製膜方法が適用可能であり、第1の導電層2の形成方法と同じ方法を適用してもよい。
≪他の実施態様≫
本発明の固体接合型光電変換素子は、光電変換層と第2の導電層との間に正孔輸送層を有していてもよい。
また、本発明の固体接合型光電変換素子は、第1の導電層と電子受容層との間にブロック層を有していていもよい。
<正孔輸送層>
正孔輸送層の材料は特に限定されず、有機材料であってもよく、無機材料であってもよく、例えば、公知の太陽電池の正孔輸送層のp型半導体が適用できる。前記有機材料として、例えば、2,2’,7,7’-Tetrakis-(N,N-di-4-methoxyphenylamino)-9,9’-spirobifluorene(略称:spiro-OMeTAD)、Poly(3-hexylthiophene)(略称:P3HT)、polytriarylamine(略称:PTAA)などが挙げられる。前記無機材料としては、例えば、CuI、CuSCN、CuO、CuO等の銅化合物やNiOなどのニッケル化合物などが挙げられる。
正孔輸送層の厚さは特に限定されず、例えば、1nm~1000nmが好ましく、5nm~500nmがより好ましく、30nm~300nmがさらに好ましい。
<ブロック層>
本発明において第1の導電層と電子受容層との間にブロック層が配置されていると、第1の導電層と光電変換層のペロブスカイト化合物とが直接に接触することが確実に防止される。これにより、起電力の損失が防止され、光電変換効率が向上する。ブロック層は、上記接触を確実に防ぐために、非多孔性の緻密層であることが好ましく、n型半導体によって形成された緻密層であることがより好ましい。ブロック層を構成するn型半導体は、特に限定されず、例えば、ZnO、SnO、TiO等の酸化物半導体が挙げられる。ブロック層はCVD法、スパッタ法、蒸着法、塗布法などで形成することが出来る。
ブロック層の厚さは特に限定されないが、例えば5nm~100nm程度が挙げられる。5nm以上であると上記損失を防止する効果が充分に得られ、100nm以下であると内部抵抗を低く抑えることができる。
[実施例1]
(1)電子受容層用原料粒子
金属酸化物粒子Aとして酸化チタン(日本アエロジル社製:アエロジルP25、カタログ値:平均粒子径21nm)を用い、複合金属酸化物粒子Bとしてアンチモン添加酸化スズ被覆酸化チタン(石原産業社製:ET-300W、カタログ値:平均粒子径30~60nm、抵抗率10~30Ωcm)を用いた。
なお、原料粉体の抵抗率は粒子粉末を圧力容器(イーガー社製:紛体電気伝導率測定セル)に入れて10MPaで圧粉体を作製し、この圧粉体の抵抗率をデジタルマルチメーターによって測定した。上記酸化チタン粒子の室温における抵抗率は、1×10Ωcmであった。また、エネルギーバンドギャップは3.16eVであった。
(2)電子受容層用原料溶液の調整
カップ容器中に、エチルアルコールを溶媒として固形分濃度2重量%となるよう、金属酸化物粒子A(酸化チタン)と複合金属酸化物粒子B(アンチモン添加酸化スズ被覆の酸化チタン)とを体積比:B/(A+B)=0.02で秤量した。次いで、自転公転ミキサー(シンキー社製:ARE-310)で混合した後、ビーズミル(アイメックス社製:RMB)を用いて均一分散し、電子受容層用原料溶液を得た。
(3)固体接合型光電変換素子の作成
ITOからなるシート抵抗15Ω/sqの透明導電膜(第1の導電層)が表面に形成された透明樹脂基板(PEN基板,25×25mm,厚さ125μm)を準備した。この第1の導電層のうち不要部分を混合塩酸でエッチングし、第1の導電層の不要部分が意図せずに他の導電性部材に接触して短絡したりリーク電流が発生したりする可能性を排除した。続いて、光電変換素子評価の際に端子接続する箇所へ他の膜が付着しないよう、カプトンテープでマスキング処置を施した後、ITO膜上面に、スパッタ装置(自社製)を用いて膜厚約50nmの酸化チタン薄膜を形成し、ブロック層とした。
前記で調整した電子受容層用原料溶液を、スピンコーター(ミカサ社製:MS-B100)を用いて前記ブロック層上に塗布し、100℃のオーブンで5分間の加熱乾燥を行って、金属酸化物粒子A(酸化チタン)と複合金属酸化物粒子B(アンチモン添加酸化スズ)とから成る、厚さ約100nmの電子受容層を作成した。
次いで、ヨウ化鉛(PbI)とヨウ化メチルアミン(CHNHI)をモル比1:1の割合で、N,N-ジメチルホルムアミド(略称DMF)に1M濃度となるよう溶解し、ペロブスカイト化合物(CHNHPbI)のDMF溶液を調整した。
このペロブスカイト化合物のDMF溶液を、スピンコーター(ミカサ社製:MS-B100)を用いて前記電子受容層上に塗布し、100℃のオーブンで10分間の加熱乾燥を行って、厚さ約300nmの光電変換層を作成した。
続いて、70mM濃度の2,2’,7,7’-Tetrakis-(N,N-di-4-methoxyphenylamino)-9,9’-spirobifluorene(略称:spiro-OMeTAD)を溶解したクロロベンゼン溶液に、添加剤としてTris(2-(1H-pyrazol -1-yl)-4-tert- butylpyridine)cobalt(III)Tris(bis(trifluoromethylsulfonyl)imide)](略称:FK209)とBis(trifluoromethanesulfonyl)imide Lithium Salt(略称:Li-TFSI)と4-tert-Butylpyridine(略称:tBP)とを加え、spiro-OMeTADのクロロベンゼン溶液を調整した。
このspiro-OMeTADのクロロベンゼン溶液を、スピンコーター(ミカサ社製:MS-B100)を用いて光電変換層上に塗布した後、マスキングのカプトンテープを剥離除去し、100℃のオーブンで10分間の加熱乾燥を行って、厚さ約200nmの正孔輸送層を形成した。
最後に、正孔輸送層上に、前記マスキングによって第1の導電層(ITO)面が露出している部位に第2の導電層が重ならない形状に打ち抜き加工したSUS製マスク板(t=0.1mm)を重ね合わせ、蒸着装置(アルバック社製:VPC-260F)を用いて厚さ約100nmのAu膜からなる第2の導電層を形成し、固体接合型光電変換素子を作製した。
(4)固体接合型光電変換素子の評価
光源として、ソーラーシュミレータ(三永電機製作所製XES301S)を用い、AM1.5Gフィルター、光量100mWcm-2(JIS C8910 クラスA)で疑似太陽光を照射した。光電変換特性の計測には、ソースメーター(Keithley社製 2400型ソースメーター)を用い、光電変換素子の電流-電圧特性から光電変換効率を算出した。
[実施例2]
電子受容層用原料溶液の調整において、金属酸化物粒子A(酸化チタン)と複合金属酸化物粒子B(アンチモン添加酸化スズ被覆の酸化チタン)とを体積比:B/(A+B)=0.04としたこと以外は実施例1と同様にして固体接合型光電変換素子を作製し、光電変換効率を評価した。
[実施例3]
電子受容層用原料溶液の調整において、金属酸化物粒子A(酸化チタン)と複合金属酸化物粒子B(アンチモン添加酸化スズ被覆の酸化チタン)とを体積比:B/(A+B)=0.05としたこと以外は実施例1と同様にして固体接合型光電変換素子を作製し、光電変換効率を評価し。
[実施例4]
電子受容層用原料溶液の調整において、金属酸化物粒子A(酸化チタン)と複合金属酸化物粒子B(アンチモン添加酸化スズ被覆の酸化チタン)とを体積比:B/(A+B)=0.06としたこと以外は実施例1と同様にして固体接合型光電変換素子を作製し、光電変換効率を評価した。
[実施例5]
電子受容層用原料溶液の調整において、金属酸化物粒子A(酸化チタン)と複合金属酸化物粒子B(アンチモン添加酸化スズ被覆の酸化チタン)とを体積比:B/(A+B)=0.08としたこと以外は実施例1と同様にして固体接合型光電変換素子を作製し、光電変換効率を評価した。
[比較例1]
電子受容層用原料溶液の調整において、金属酸化物粒子A(酸化チタン)と複合金属酸化物粒子B(アンチモン添加酸化スズ被覆の酸化チタン)とを体積比:B/(A+B)=0.10としたこと以外は実施例1と同様にして固体接合型光電変換素子を作製し、光電変換効率を評価した。
[比較例2]
電子受容層用原料溶液の調整において、金属酸化物粒子A(酸化チタン)と複合金属酸化物粒子B(アンチモン添加酸化スズ被覆の酸化チタン)とを体積比:B/(A+B)=0.30としたこと以外は実施例1と同様にして固体接合型光電変換素子を作製し、光電変換効率を評価した。
[比較例3]
電子受容層用原料溶液の調整において、複合金属酸化物粒子Bを使用しなかったこと以外は実施例1と同様にして固体接合型光電変換素子を作製し、光電変換効率を評価した。
[比較例4]
電子受容層用原料溶液の調整において、金属酸化物粒子A(酸化チタン)と複合金属酸化物粒子B(アンチモン添加酸化スズ)とを体積比:B/(A+B)=1.0としたこと以外は実施例1と同様にして固体接合型光電変換素子を作製し、光電変換効率を評価した。
[実施例6]
電子受容層用原料粒子の複合金属酸化物粒子Bとして、アンチモン添加酸化スズ(石原産業社製:SN-100P、カタログ値:平均粒子径10~30nm、抵抗率1~5Ωcm)を用いたこと以外は実施例1と同様にして固体接合型光電変換素子を作製し、光電変換効率を評価した。
[実施例7]
電子受容層用原料溶液の調整において、金属酸化物粒子A(酸化チタン)と複合金属酸化物粒子B(アンチモン添加酸化スズ)とを体積比:B/(A+B)=0.04としたこと以外は実施例6と同様にして固体接合型光電変換素子を作製し、光電変換効率を評価した。
[実施例8]
電子受容層用原料溶液の調整において、金属酸化物粒子A(酸化チタン)と複合金属酸化物粒子B(アンチモン添加酸化スズ)とを体積比:B/(A+B)=0.06としたこと以外は実施例6と同様にして固体接合型光電変換素子を作製した。
[実施例9]
電子受容層用原料溶液の調整において、金属酸化物粒子A(酸化チタン)と複合金属酸化物粒子B(アンチモン添加酸化スズ)とを体積比:B/(A+B)=0.08としたこと以外は実施例6と同様にして固体接合型光電変換素子を作製し、光電変換効率を評価した。
[比較例5]
電子受容層用原料溶液の調整において、金属酸化物粒子A(酸化チタン)と複合金属酸化物粒子B(アンチモン添加酸化スズ)とを体積比:B/(A+B)=0.10としたこと以外は実施例6と同様にして固体接合型光電変換素子を作製し、光電変換効率を評価した。
[比較例6]
電子受容層用原料溶液の調整において、金属酸化物粒子A(酸化チタン)と複合金属酸化物粒子B(アンチモン添加酸化スズ)とを体積比:B/(A+B)=0.15としたこと以外は実施例6と同様にして固体接合型光電変換素子を作製し、光電変換効率を評価した。
[比較例7]
電子受容層用原料溶液の調整において、金属酸化物粒子A(酸化チタン)と複合金属酸化物粒子B(アンチモン添加酸化スズ)とを体積比:B/(A+B)=0.20としたこと以外は実施例6と同様にして固体接合型光電変換素子を作製し、光電変換効率を評価した。
Figure 0007007114000005
表1から、前記電子受容層に金属酸化物粒子Aと複合金属酸化物粒子Bとを含む各実施例の固体接合型変換素子は、金属酸化物粒子Aと複合金属酸化物粒子Bの体積比が本発明の範囲外である比較例1~7よりも光電変換効率に優れていることが判った。
以上のとおり、本発明によれば簡便且つ安価で製造可能であり、種々の基材に対応可能であり、光電変換効率が良好な固体接合型光電変換素子を提供することができる。
1・・・基材、2・・・第1の導電層、3・・電子受容層、4・・・光電変換層、5・・・第2の導電層、P・・・粒子

Claims (5)

  1. 基材と、
    前記基材上の第1の導電層と、
    前記第1の導電層上の電子受容層と、
    前記電子受容層上のペロブスカイト化合物を含む光電変換層と、
    前記光電変換層上の第2の導電層と、を有する光電変換素子であって、
    前記電子受容層が、金属酸化物粒子Aと複合金属酸化物粒子Bとを含み、
    前記金属酸化物粒子AがZnO、SnO、又はTiOを含み、
    前記複合金属酸化物粒子Bがアンチモン添加酸化スズ、アルミ添加酸化亜鉛、ガリウム添加酸化亜鉛、又はニオブ添加酸化チタンを含み、
    前記金属酸化物粒子Aの平均粒子径が10~50nmであり、
    前記複合金属酸化物粒子Bの平均粒子径が10~60nmであり、
    前記金属酸化物粒子Aの抵抗率ρAと前記複合金属酸化物粒子Bの抵抗率ρBとが、ρA>ρBの関係を満たし、
    前記金属酸化物粒子Aの体積と前記複合金属酸化物粒子Bの体積の合計に対する、前記複合金属酸化物粒子Bの体積の比が、0.02~0.08である、固体接合型光電変換素子。
  2. 前記金属酸化物粒子Aの抵抗率ρAが10~10Ωcmであり、エネルギーバンドギャップが3eV以上である、請求項1に記載の固体接合型光電変換素子。
  3. 前記複合金属酸化物粒子Bの抵抗率ρBが10-1~10Ωcmである、請求項1又は2に記載の固体接合型光電変換素子。
  4. 前記光電変換層と前記第2の導電層との間に正孔輸送層を有する、請求項1~3のいずれか一項に記載の固体接合型光電変換素子。
  5. 前記第1の導電層と前記電子受容層との間にブロック層を有する、請求項1~4のいずれか一項に記載の固体接合型光電変換素子。
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