JP7007111B2 - 褐色脂肪細胞の活性評価用プローブ - Google Patents

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Description

本発明は、褐色脂肪細胞の活性評価用プローブに関する。
褐色脂肪細胞は、脂肪を燃焼してエネルギーを産生する組織である。褐色脂肪細胞のエネルギー産生には脂肪の燃焼が不可欠であるため、近年増加しているメタボリックシンドロームの対策として、運動、食事及びサプリメント等により褐色脂肪細胞を活性化させる方法が注目されてきている。
従来、褐色脂肪細胞の量は、ヒトの成長及び加齢に伴って減少していくと考えられていた。しかし、近年、陽電子(ポジトロン)放出型断層撮影(PET)用プローブとして、世界中で最も汎用されている18F-フルオロデオキシグルコース([18F]FDG)を用いたPET検査において、特に痩身の若い女性において、首の周り、脇の下、肩甲骨の間等の部位に通常では見られない[18F]FDGの集積が認められ、これが褐色脂肪細胞の活性を反映したものであることが判ってきた。
褐色脂肪細胞の活性を評価する方法の一つとして、[18F]FDGを用いたPET検査が提案されている。しかし、ヒトの褐色脂肪細胞への[18F]FDGの集積量は、非常に低く、また個体差も大きい(非特許文献1)。このため、[18F]FDGを用いたPET検査では、通常は、褐色脂肪細胞が全くイメージングされないため、仮に運動、食事、サプリメント等により褐色脂肪細胞が活性化されたとしても、その変化量を定量的に解析することは不可能である。
他方、PET用プローブとして、ミトコンドリア内膜の膜電位の変化を計測するPET用プローブ([11C]TPMP及び[18F]FBnTP)が提案されており(非特許文献2及び非特許文献3)、[18F]FBnTPを用いたPET計測により、低温暴露したラットにおいて、褐色脂肪細胞の活性化を検出したと報告されている(非特許文献3)。
N.Engl.J.Med.,2009年,Vol.360,pp.1500-1508 J.Nucl.Med.,1999年,Vol.40(No.7),pp.1180-1185 PLoS ONE,2015年,10(6),e0129627
本発明者らの検討によれば、β3アドレナリン受容体作動薬(脂肪燃焼を促進するためメタボリックシンドロームの対処化合物として期待されている)を投与したラットについて、PET計測により褐色脂肪細胞の活性化の評価を試みたときに、プローブとして[18F]FDGを用いた場合は、用量依存性がなく(図3A参照)、[11C]TPMPを用いた場合は、有意な変化を検出できない(図3C参照)ことが明らかとなった。
そこで、本発明は、褐色脂肪細胞の活性を定量的に評価することができる褐色脂肪細胞の活性評価用プローブを提供することを目的とする。
本発明は、一般式(1)で表される化合物(以下、「化合物(1)」ともいう。)を有効成分として含有する、褐色脂肪細胞の活性評価用プローブを提供する。
Figure 0007007111000001

一般式(1)中、Rは、-O(CH-、-O(CHOC-、-CHO(CH-又は-CHO(CHOC-を示し、nは1~5の整数を示し、Qは、標識基を示す。
化合物(1)は、ミトコンドリアコンプレックス-1(以下、「MC-1」ともいう。)の検出に適していることが知られている(国際公開第2014/30709号)。一方、本発明者らは、褐色脂肪細胞(褐色脂肪組織)に化合物(1)が集積することを新たに見出した。本発明者らは更に、褐色脂肪細胞(褐色脂肪組織)における化合物(1)の集積はMC-1特異的であること、褐色脂肪細胞(褐色脂肪組織)における化合物(1)の集積量は用量依存的であり、化合物(1)の集積量に基づいて褐色脂肪細胞の活性を定量評価できることを見出している。本発明は、これらの知見に基づき、褐色脂肪細胞の活性評価という化合物(1)の新たな用途を提供するものである。
有効成分である一般式(1)で表される化合物は、一般式(2)で表される化合物(以下、「化合物(2)」ともいう。)であってもよく、一般式(3)で表される化合物(以下、「化合物(3)」ともいう。)であってもよい。
Figure 0007007111000002

一般式(2)中、Rは、-O(CH-、-O(CHOC-、-CHO(CH-又は-CHO(CHOC-を示し、nは1~5の整数を示し、Qは、標識基を示す。
Figure 0007007111000003

一般式(3)中、Rは、-O(CH-、-O(CHOC-、-CHO(CH-又は-CHO(CHOC-を示し、nは1~5の整数を示し、Qは、標識基を示す。
化合物(1)、化合物(2)又は化合物(3)において、Qで示される標識基は、18F又は-O11CHであってもよい。これにより、化合物(1)、化合物(2)又は化合物(3)は、ポジトロンを放出することが可能になる。放出されたポジトロンは、すぐに電子と結合してγ線(消滅放射線)を放出する。このγ線をPET計測に用いられる装置で測定することにより、褐色脂肪細胞に集積する化合物(1)、化合物(2)又は化合物(3)を定量的かつ経時的に画像化することができる。すなわち、褐色脂肪細胞の活性評価用PETプローブとしても利用可能になる。
本発明に係る活性評価用プローブは、褐色脂肪細胞の活性を定量評価できるため、褐色脂肪細胞の活性の定量評価用であってもよい。
本発明はまた、本発明に係る活性評価用プローブを対象に投与する工程と、褐色脂肪細胞に集積した化合物(1)を検出する工程と、褐色脂肪細胞における化合物(1)の集積量を定量解析する工程と、を含む、褐色脂肪細胞の活性を評価する方法と捉えることもできる。
本発明はさらに、褐色脂肪細胞の活性評価に使用するための一般式(1)で表される化合物と捉えることもできる。本発明はさらにまた、褐色脂肪細胞の活性評価用プローブの製造における一般式(1)で表される化合物の使用と捉えることもできる。
本発明によれば、褐色脂肪細胞の活性を定量的に評価することができる褐色脂肪細胞の活性評価用プローブの提供が可能となる。本発明の褐色脂肪細胞の活性評価用プローブは、褐色脂肪細胞への集積量が高く、また褐色脂肪細胞の活性を定量的に評価することができるため、例えば、メタボリックシンドロームの対策として、運動、食事及びサプリメント等の処置により褐色脂肪細胞の活性化を試みた際に、当該処置前後での褐色脂肪細胞の活性を定量的に比較することができることから、当該処置の有効性を判断することにも応用できる。
ロテノンの前投与による[11C]BCPP-EMの集積量(放射能集積量(SUV))への影響を評価した結果を示すグラフである。 低温暴露したラットの褐色脂肪細胞の活性評価の結果を示すグラフである。 β3アドレナリン受容体作動薬を投与したラットの褐色脂肪細胞の活性評価の結果を示すグラフである。
以下、本発明を実施するための形態について詳細に説明する。ただし、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。
本実施形態に係る褐色脂肪細胞の活性評価用プローブは、一般式(1)で表される化合物を有効成分として含有する。
Figure 0007007111000004
化合物(1)中、Rは、-O(CH-、-O(CHOC-、-CHO(CH-又は-CHO(CHOC-である。Rは、-O(CH-又は-O(CHOC-であることが好ましく、-O(CHOC-であることがより好ましい。
化合物(1)中、nは1~5の整数であり、2~4の整数であることが好ましく、2~3の整数であることがより好ましく、2であることが更に好ましい。
化合物(1)中、Qは、標識基である。標識基は、本実施形態に係る活性評価用プローブを検出するために用いることのできるシグナルを発し得る官能基である。標識基としては、例えば、蛍光性官能基、放射性核種を含む官能基を挙げることができる。
蛍光性官能基は、蛍光を発し得る官能基であればよく、例えば、クマリン、ローダミン、フルオレセイン及びBODIPY等の蛍光性化合物、当該蛍光性化合物にリンカーが結合した化合物、並びにこれらの誘導体から水素原子1個を除いた1価の官能基が挙げられる。リンカーの構造としては、例えば、1,2,3-トリアゾール等が挙げられる。
標識基として蛍光性官能基を用いた場合、例えば、蛍光検出装置(例えば、二光子レーザー走査型顕微鏡、選択的平面照明顕微鏡等)を使用して、本実施形態に係る活性評価用プローブを検出することができる。
放射性核種を含む官能基は、放射性核種のみからなる官能基であってもよく、放射性核種と非放射性核種からなる官能基であってもよい。放射性核種としては、例えば、ポジトロン核種(例えば、18F、11C、15O、13N)、シングルフォトン核種(例えば、99mTc、123I、111In)を挙げることができる。
標識基としてポジトロン核種を含む官能基を用いた場合、例えば、陽電子放出型断層撮影(PET)装置を使用して、本実施形態に係る活性評価用プローブを検出することができる。標識基としてシングルフォトン核種を含む官能基を用いた場合、例えば、単一光子放射断層撮影(SPECT)装置を使用して、本実施形態に係る活性評価用プローブを検出することができる。
標識基としては、PET計測による検出が可能であることから、ポジトロン核種を含む官能基であることが好ましく、18F及び-O11CHであることがより好ましい。また、標識基が-O11CHである場合、半減期が20分と短いため、同一被験者に対して1日に複数回の計測を行うことも可能になる。標識基が18Fである場合、半減期が110分と-O11CHよりも長いため、1回の計測時間を長くすることが可能になる。
ピリジン環における、ピリダジン環と結合している-OCH-の結合位置及びRの結合位置は特に制限されないが、ピリダジン環と結合している-OCH-の結合位置がピリジン環の5位であり、Rの結合位置がピリジン環の2位であることが好ましい。以下に示す一般式(2)で表される化合物は、ピリダジン環と結合している-OCH-の結合位置がピリジン環の5位であり、Rの結合位置がピリジン環の2位であるときの構造式である。
Figure 0007007111000005

一般式(2)中、R、n及びQは、一般式(1)中のR、n及びQと同義である。
褐色脂肪細胞の活性評価用途により適したものになることから、化合物(1)は、一般式(3)で表される化合物であることが好ましい。
Figure 0007007111000006

一般式(3)中、Qは、一般式(1)中のQと同義である。
化合物(1)は、例えば、対応する前駆体から合成することができる。化合物(2)及び化合物(3)についても同様である。
化合物(1)の対応する前駆体としては、例えば、下記一般式(1-2)で表される化合物(以下、「化合物(1-2)」ともいう。)が挙げられる。化合物(2)及び化合物(3)の対応する前駆体としては、例えば、化合物(1-2)において、R並びにピリジン環におけるピリダジン環と結合している-OCH-の結合位置及びRの結合位置が、化合物(2)及び化合物(3)と同じになる化合物が挙げられる。
Figure 0007007111000007

一般式(1-2)中、Rは一般式(1)中のRと同義である。Qは、脱離可能な置換基(置換スルホニルオキシ基、ハロゲン原子又は水酸基等)を示す。
置換スルホニルオキシ基としては、例えば、トシルオキシ基(-OTs)、メタンスルホニルオキシ基(-OMs)、トリフルオロメタンスルホニルオキシ基(-OTf)、ニトロベンゼンスルホニルオキシ基(-ONs)が挙げられるが、-OTsが好ましく用いられる。
ハロゲン原子としては、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素が挙げられる。
前駆体は、例えば、国際公開第2014/30709号に記載された方法により合成することができる。
化合物(1)は、MC-1特異的に褐色脂肪細胞(褐色脂肪組織)に集積する。また、化合物(1)は、褐色脂肪細胞の活性(例えば、脂肪を燃焼してエネルギーを産生する活性)と相関して集積量が変化する。すなわち、褐色脂肪細胞の活性が低下すると化合物(1)の集積量が減少し、褐色脂肪細胞の活性が亢進すると化合物(1)の集積量が増加する。したがって、本実施形態に係る活性評価用プローブは、化合物(1)の集積量の測定を介して、褐色脂肪細胞の活性評価に好適に用いられる。
化合物(1)の集積量の測定は、化合物(1)の標識基(Q)の種類に応じた測定装置及び測定方法により、標識基が発するシグナルを検出することにより実施することができる。
本実施形態に係る活性評価用プローブは、例えば、化合物(1)を任意の緩衝液に溶解することによって製造することができる。この場合、本実施形態に係る活性評価用プローブは、溶液として提供され、緩衝成分の他、界面活性剤、防腐剤、安定化剤等のその他の成分を含有してもよい。
本実施形態に係る褐色脂肪細胞の活性を評価する方法は、本発明に係る活性評価用プローブを対象に投与する工程と、褐色脂肪細胞に集積した化合物(1)を検出する工程と、褐色脂肪細胞における化合物(1)の集積量を定量解析する工程と、を含む。
対象としては、例えば、ヒト、サル、マウス及びラットが挙げられるがこれらに限定されるものではない。
活性評価用プローブを対象に投与する方法は、化合物(1)が褐色脂肪細胞に到達する限りにおいて特に制限されないが、通常、静脈内投与である。
活性評価用プローブの投与量としては、化合物(1)を褐色脂肪細胞で検出するのに充分な投与量であれば特に制限されず、投与する対象及び化合物(1)を検出する方法に応じて適宜設定すればよい。例えば、Q18F又は-O11CHである化合物(1)を含む活性評価用プローブを用いて、PET法に用いられる装置で化合物(1)を検出する場合、活性評価用プローブの投与量(以下、「投与放射能量」ともいう。)は、1MBq/kg体重~1000MBq/kg体重であってもよい。化合物(1)の比放射能は、10~10,000GBq/μmolであってもよい。また、活性評価用プローブの投与放射能量は、使用するPETカメラの感度と対象個体の体積に依存するが、げっ歯類(マウス、ラット)ではおおよそ200~500MBq/kg体重を0.1~0.5mLの生理食塩水溶液として投与する。ヒト以外の霊長類(サル類)の場合、40~200MBq/kg体重を0.5~2mLの生理食塩水で投与し、ヒトの場合、2~10MBq/kg体重を1~5mLの生理食塩水溶液として投与する。
褐色脂肪細胞に集積した化合物(1)を検出する方法としては、特に制限されず、化合物(1)の標識基(Q)の種類に応じて、公知の方法に準じて実施することができる。例えば、Q18F又は-O11CHである化合物(1)を含む活性評価用プローブを用いる場合、PET法によって、化合物(1)を検出することが可能である。PET法における測定方法は特に制限されず、公知の方法に準じて実施することができる。また例えば、PET法で計測する方法としては、活性評価用プローブの投与直後から60分間のダイナミック計測をしてもよいし、活性評価用プローブを投与して30~40分間待って褐色脂肪細胞に化合物(1)を充分集積させてから、10~20分間のPET計測をしてもよい。
褐色脂肪細胞における化合物(1)の集積量を定量解析する方法としては、特に制限されず、公知の方法に準じて実施することができる。例えば、以下の方法が挙げられる。まず、PET法によって得られた化合物(1)の集積画像と、CT計測等によって得られた褐色脂肪細胞の形態画像を重ねあわせ、褐色脂肪細胞のPET画像を同定する。次に褐色脂肪細胞のPET画像上に関心領域を設定して、対象となる個体の体重と投与放射能量とで正規化した値を、褐色脂肪細胞への化合物(1)の集積量とする。
本実施形態に係る褐色脂肪細胞の活性を評価する方法は、定量解析した化合物(1)の集積量を基準値と比較し、褐色脂肪細胞の活性を評価する工程を更に含んでいてもよい。
基準値は、方法を実施する目的に応じて適宜設定してよい。例えば、メタボリックシンドロームの対策として、運動、食事及びサプリメント等の処置により褐色脂肪細胞がどの程度活性化されるのかを評価する場合、基準値は、当該処置を施す前の対象における化合物(1)の集積量であってよい。この場合、処置を施した後の対象における集積量の定量解析値が、基準値を超えるときに、当該処置がメタボリックシンドロームの対策として有効であると判断することができる。
以上の説明から明らかなとおり、本発明は、一般式(1)で表される化合物を有効成分とする、褐色脂肪細胞の活性評価剤として捉えることもできる。本発明はまた、褐色脂肪細胞の活性評価に使用するための一般式(1)で表される化合物と捉えることもできる。本発明はさらにまた、褐色脂肪細胞の活性評価用プローブの製造における一般式(1)で表される化合物の使用と捉えることもできる。
以下、本発明を実施例に基づいてより具体的に説明する。ただし、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
〔(1)PETプローブの合成〕
国際公開第2014/030709号の実施例に記載された方法に従い、PET計測に充分な比放射能と放射化学的純度を有する[18F]BCPP-EF(式(4))(比放射能112.5±74.0GBq/μmolと放射化学的純度99.6±0.8%)及び[11C]BCPP-EM(式(5))(比放射能158.5±118.2GBq/μmolと放射化学的純度99.6±1.3%)を得た。
Figure 0007007111000008

Figure 0007007111000009
また、非特許文献2に記載された方法に従い、PET計測に充分な比放射能と放射化学的純度を有する[11C]TPMP(比放射能50.8±12.7GBq/μmolと放射化学的純度97.3±2.4%)を得た。
〔(2)ロテノンの前投与による結合特異性の評価〕
ロテノンの投与が、ラットの褐色脂肪細胞(褐色脂肪組織)、脳及び心臓への[11C]BCPP-EMの集積に与える影響を評価した。ロテノンは、ミトコンドリアコンプレックス-1(MC-1)の阻害薬である。
10mLの溶媒(N,N-ジメチルホルムアミド/ポリエチレングリコール400/生理食塩水=1/1/2)にロテノンを溶解し、10μg/kg又は50μg/kgのロテノン溶液を調製した。ラットを1.5-2.0%のイソフルラン(希釈ガス:酸素)で麻酔しながら、小動物用X-CT装置(ClairvivoCT,株式会社島津製作所製)で形態画像を収集した。麻酔を施したまま、ラットを動物用PET装置(SHR-38000,浜松ホトニクス株式会社製)のガントリー内に固定して、ロテノン溶液又は溶媒のみ(コントロール)を1時間かけてラットの尾静脈から持続的に投与した。吸収補正のために15分間のトランスミッション計測を実施した後、ラットの尾静脈から20MBqの[11C]BCPP-EMをボーラス投与して、60分間のエミッション計測を実施した。PET計測終了後、[11C]BCPP-EM投与20-40分後のPET集積画像を、CT画像に重ね合わせた。X-CT画像から同定した褐色脂肪細胞(褐色脂肪組織)、脳及び心臓のPET画像上に関心領域を設定して、各個体の体重と投与放射能量で正規化した値を、各部位への[11C]BCPP-EMの集積量(放射能集積量(SUV))とした(各群、ラット8匹)。
図1は、ロテノンの前投与による[11C]BCPP-EMの集積量への影響を評価した結果を示すグラフである。図1に示すとおり、ロテノンの前投与により、用量依存的に、[11C]BCPP-EMの褐色脂肪細胞(褐色脂肪組織)、脳及び心臓への集積量が低下した。したがって、[11C]BCPP-EMの集積は、褐色脂肪細胞(褐色脂肪組織)、脳及び心臓のミトコンドリアコンプレックス-1に特異的であると考えられる。
〔(3)低温暴露したラットの褐色脂肪細胞の活性評価〕
ラットを4群に分け、低温暴露による褐色脂肪細胞の活性を評価する試験を実施した。第1群及び第2群のラットは、小動物用温度調節機能付チャンバー(HC-100,株式会社シンファクトリー製)を使用して、低温(4℃)にそれぞれ4時間及び1日間暴露した。第3群のラットは、同チャンバーを使用して、低温(15℃)に7日間暴露した。第4群のラットは、コントロールとして、室温(24℃)で飼育した。低温に上記の所定期間暴露した後、PET計測を実施した。
上記の処理を施したラットを1.5-2.0%のイソフルラン(希釈ガス:酸素)で麻酔しながら、小動物用X-CT装置(ClairvivoCT,株式会社島津製作所製)で形態画像を収集した。麻酔を施したまま、ラットを動物用PET装置(SHR-38000,浜松ホトニクス株式会社製)のガントリー内に固定した。吸収補正のために15分間のトランスミッション計測を実施した後、ラットの尾静脈から20MBqの[11C]BCPP-EM又は8MBqの[18F]FDGをボーラス投与して、60分間のエミッション計測を実施した。PET計測終了後、[11C]BCPP-EM投与20-40分後のPET集積画像、又は[18F]FDG投与40-60分後のPET集積画像を、CT画像に重ね合わせた。X-CT画像から同定した褐色脂肪細胞(褐色脂肪組織)、脳及び心臓のPET画像上に関心領域を設定して、各個体の体重と投与放射能量で正規化した値を、各部位への[11C]BCPP-EM又は[18F]FDGの集積量(放射能集積量(SUV))とした(各群、ラット8匹)。
図2は、低温暴露したラットの褐色脂肪細胞の活性評価の結果を示すグラフである。褐色脂肪細胞(褐色脂肪組織)における、[11C]BCPP-EMのミトコンドリアコンプレックス-1(MC-1)への結合と、[18F]FDGによるグルコース代謝計測とを比較すると、[18F]FDGは、褐色脂肪細胞において、いずれの条件においても低温暴露後に集積量(SUV)が増加したが(図2A)、[11C]BCPP-EMの集積量(SUV)は、4℃で4時間低温暴露した後に対照と比較して有意に低下し、低温暴露時間の増加に伴い増加した(図2B)。他方、[11C]BCPP-EM及び[18F]FDGのいずれも、脳及び心臓への集積量に有意な変化は認められなかった。これらの結果は、[11C]BCPP-EMをプローブとして使用することで、褐色脂肪細胞の活性の評価が可能であることを示している。また、図2Bの結果は、低温への暴露時間に応じて、ミトコンドリアにおける代謝が、嫌気的糖代謝(グルコース→ピルビン酸→乳酸)から酸化的リン酸化(グルコース→ピルビン酸→アセチルCoA→クエン酸回路)に変化していることを示唆している。
〔(4)β3アドレナリン受容体作動薬を投与したラットの褐色脂肪細胞の活性評価〕
β3アドレナリン受容体作動薬(CL346,248)の投与によるラットの褐色脂肪細胞の活性を評価する試験を実施した。β3アドレナリン作動薬は、メタボリックシンドロームの対処化合物として期待されている。
10mLの溶媒(N,N-ジメチルホルムアミド/ポリエチレングリコール400/生理食塩水=1/1/2)にCL346,248を溶解し、10μg/kg又は100μg/kgのCL346,248溶液を調製した。ラットを1.5-2.0%のイソフルラン(希釈ガス:酸素)で麻酔しながら、小動物用X-CT装置(ClairvivoCT,株式会社島津製作所製)で形態画像を収集した。麻酔を施したまま、ラットを動物用PET装置(SHR-38000,浜松ホトニクス株式会社製)のガントリー内に固定して、CL346,248溶液又は溶媒のみ(コントロール)を1時間かけてラットの尾静脈から持続的に投与した。吸収補正のために15分間のトランスミッション計測を実施した後、ラットの尾静脈から20MBqの[11C]BCPP-EM、20MBqの[11C]TPMP、又は8MBqの[18F]FDGをボーラス投与して、60分間のエミッション計測を実施した。PET計測終了後、[11C]BCPP-EM投与20-40分後のPET集積画像、[11C]TPMP投与20-40分後のPET集積画像、又は[18F]FDG投与40-60分後のPET集積画像を、CT画像に重ね合わせた。X-CT画像から同定した褐色脂肪細胞(褐色脂肪組織)、脳及び心臓のPET画像上に関心領域を設定して、各個体の体重と投与放射能量で正規化した値を、各部位への[11C]BCPP-EM、[11C]TPMP又は[18F]FDGの集積量(放射能集積量(SUV))とした(各群、ラット8匹)。
図3は、β3アドレナリン受容体作動薬を投与したラットの褐色脂肪細胞の活性評価の結果を示すグラフである。褐色脂肪細胞(褐色脂肪組織)において、[11C]BCPP-EMは、用量依存的に集積量が増加した(図3B)のに対して、[18F]FDGは、集積量の増加が検出されたものの用量依存性はなく(図3A)、[11C]TPMPは、有意な変化は検出されなかった(図3C)。他方、[11C]BCPP-EM、[11C]TPMP及び[18F]FDGのいずれも、脳及び心臓への集積量に有意な変化は認められなかった。これらの結果から、[11C]BCPP-EMのみが、定量的に褐色脂肪細胞の活性を評価できることを示している。

Claims (5)

  1. 一般式(1)で表される化合物を有効成分として含有する、褐色脂肪細胞の脂肪を燃焼してエネルギーを産生する活性評価用プローブ。
    Figure 0007007111000010

    [一般式(1)中、Rは、-O(CH-、-O(CHOC-、-CHO(CH-又は-CHO(CHOC-を示し、nは1~5の整数を示し、Qは、標識基を示す。]
  2. 前記一般式(1)で表される化合物が、一般式(2)で表される化合物である、請求項1に記載の活性評価用プローブ。
    Figure 0007007111000011

    [一般式(2)中、Rは、-O(CH-、-O(CHOC-、-CHO(CH-又は-CHO(CHOC-を示し、nは1~5の整数を示し、Qは、標識基を示す。]
  3. 前記一般式(1)で表される化合物が、一般式(3)で表される化合物である、請求項1に記載の活性評価用プローブ。
    Figure 0007007111000012

    [一般式(3)中、Q は、標識基を示す。]
  4. が、18F又は-O11CHである、請求項1~3のいずれか一項に記載の活性評価用プローブ。
  5. 褐色脂肪細胞の脂肪を燃焼してエネルギーを産生する活性の定量評価用である、請求項1~4のいずれか一項に記載の活性評価用プローブ。
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