本発明は、携帯端末が機器から近接伝達手段で取得した接続情報を用いて機器に対して無線接続したことがある場合に、再度その機器に無線接続する際に、再度近接伝達手段でその機器から接続情報を取得することなく無線接続ができるようにすることを目的とする。
請求項1に係る発明は、接続先の機器から近接伝達手段を通じて取得した当該機器に接続するための接続情報を用いて、接続元の携帯端末が前記機器に対して無線接続を行ったときの、当該携帯端末の位置情報と前記接続情報とを対応付けた接続履歴を記憶する記憶手段と、前記携帯端末がユーザから前記機器への接続意思を示す操作を受け付けたときに、そのときの前記携帯端末の位置情報に基づいて、前記接続履歴の中から対応する前記機器を無線接続先の候補として抽出する抽出手段と、を含み、前記位置情報は、前記携帯端末が前記機器から前記近接伝達手段で取得した前記接続情報を用いて前記機器と無線接続を行ったときに、前記無線接続のプロトコルに従って前記携帯端末が検知していた他の機器のリストである、情報処理装置である。
請求項2に係る発明は、前記抽出手段は、前記接続意思を示す操作を受け付けたときの前記携帯端末の位置情報に近い位置情報を持つ前記接続履歴を抽出し、当該抽出した接続履歴の中から対応する前記機器を前記候補として抽出することを特徴とする請求項1記載の情報処理装置である。
請求項3に係る発明は、前記抽出手段は、前記接続意思を示す操作を受け付けたときの前記携帯端末の位置情報に近い位置情報を持つ前記接続履歴が前記記憶手段に記憶されていれば、当該接続履歴に対応する前記機器を前記候補として抽出することを特徴とする請求項1記載の情報処理装置である。
請求項4に係る発明は、前記抽出手段が抽出した前記候補の機器のうちの1つの機器に対応する前記接続情報を、その機器に対する無線接続のために前記携帯端末に提供する接続情報提供手段、を更に含む請求項1~3のいずれか1項に記載の情報処理装置である。
請求項5に係る発明は、前記接続情報提供手段は、前記抽出手段が抽出した候補の機器のうち前記携帯端末から最も近い機器に対応する前記接続情報を前記携帯端末に提供する請求項4に記載の情報処理装置である。
請求項6に係る発明は、前記接続情報提供手段は、前記候補の機器のうち前記無線接続のために前記携帯端末が受信した電波の強度が最も高いものを前記最も近い機器とする請求項5に記載の情報処理装置である。
請求項7に係る発明は、前記接続履歴には、対応する機器に対する前記携帯端末からの利用履歴に関する情報が含まれ、前記抽出手段は、前記接続履歴に含まれる前記利用履歴を、前記候補の抽出のために用いる、請求項1~6のいずれか1項に記載の情報処理装置である。
請求項8に係る発明は、接続先の機器から近接伝達手段を通じて取得した当該機器に接続するための接続情報を用いて、接続元の携帯端末が前記機器に対して無線接続を行ったときの、当該携帯端末の位置情報と前記接続情報とを対応付けた接続履歴を記憶する記憶手段と、前記携帯端末がユーザから前記機器への接続意思を示す操作を受け付けたときに、そのときの前記携帯端末の位置情報に基づいて、前記接続履歴の中から対応する前記機器を無線接続先の候補として抽出する抽出手段と、前記抽出手段が抽出した前記候補の機器のうちの1つの機器に対応する前記接続情報を、その機器に対する無線接続のために前記携帯端末に提供する接続情報提供手段と、を含み、前記接続情報提供手段は、前記接続意思を示す操作を受け付けたときの前記携帯端末の位置情報に近い位置情報を持つ前記接続履歴が1つである場合には、当該接続履歴に対応する機器に対応する前記接続情報を前記携帯端末に提供し、複数である場合には、それら複数の前記接続履歴の各々に対応する機器から前記無線接続のプロトコルに従って前記携帯端末が検知している各無線信号に基づいて、前記携帯端末に前記接続情報を提供する機器を選択する、情報処理装置である。
請求項9に係る発明は、前記接続履歴には、前記携帯端末が前記機器から前記近接伝達手段で取得した前記接続情報を用いて前記機器と無線接続を行ったときに、前記無線接続のプロトコルに従って前記携帯端末が検知していた前記無線信号が示す無線機器識別情報のリストが含まれており、前記接続情報提供手段は、前記接続意思を示す操作を受け付けたときの前記携帯端末の位置情報に近い位置情報を持つ前記接続履歴が複数である場合において、前記携帯端末が、それら複数の前記接続履歴の各々に対応する機器のいずれからも前記無線接続のプロトコルに従った前記無線信号を検知できない場合には、前記携帯端末の位置情報に近い位置情報を持つそれら複数の前記接続履歴のうち、当該接続履歴に含まれる前記無線機器識別情報のリストがそのとき前記携帯端末が前記無線接続のプロトコルに従って他の装置から検知している無線信号が示す無線機器識別情報のリストに対して最も一致度が高い接続履歴、に対応する機器の前記接続情報を前記携帯端末に提供する、請求項8に記載の情報処理装置である。
請求項10に係る発明は、前記接続情報提供手段は、前記携帯端末の位置情報に近い位置情報を持つ複数の前記接続履歴の中に、前記一致度が閾値以上であるものが1つもない場合には、それら複数の前記接続履歴に対応する機器の中から接続先をユーザに選択させ、選択された機器の前記接続情報を前記携帯端末に提供する、請求項9に記載の情報処理装置である。
請求項11に係る発明は、接続先の機器から近接伝達手段を通じて取得した当該機器に接続するための接続情報を用いて、接続元の携帯端末が前記機器に対して無線接続を行ったときの、当該携帯端末の位置情報と前記接続情報とを対応付けた接続履歴を記憶する記憶手段と、前記携帯端末がユーザから前記機器への接続意思を示す操作を受け付けたときに、そのときの前記携帯端末の位置情報に基づいて、前記接続履歴の中から対応する前記機器を無線接続先の候補として抽出する抽出手段と、を含み、前記接続履歴には、対応する機器が持つ機能に関する情報が含まれ、前記抽出手段は、前記候補の機器のうち、前記携帯端末にてユーザが選んでいる操作に対応する機能を持つ機器の中から、前記候補を抽出する、情報処理装置である。
請求項12に係る発明は、前記接続意思を示す操作は、前記携帯端末において所定の画面を表示する操作であり、前記携帯端末がインターネットへ無線接続を行っていない場合、前記所定の画面には、前記機器を操作するためのアプリケーションの初期画面が含まれる、請求項1~11のいずれか1項に記載の情報処理装置である。
請求項13に係る発明は、前記抽出手段が抽出した前記候補の機器を、無線接続先の候補として前記携帯端末の表示画面に表示する制御を行う表示制御手段、を更に含む、請求項1~12のいずれか1項に記載の情報処理装置である。
請求項14に係る発明は、前記接続履歴には、対応する機器の属性情報が含まれ、前記表示制御手段は、前記候補の機器毎にその機器の属性情報を前記表示画面に表示する制御を行う、請求項13に記載の情報処理装置である。
請求項15に係る発明は、前記接続履歴には、対応する機器に無線接続を行った際にその機器を利用して処理した文書の属性情報が含まれ、前記表示制御手段は、前記候補の機器毎にその機器を利用して処理した文書の属性情報を前記表示画面に表示する制御を行う、請求項13又は14に記載の情報処理装置である。
請求項16に係る発明は、前記表示制御手段は、前記候補の機器毎に、その機器の前記位置情報に基づいて前記携帯端末に対する相対的な位置関係を表示する制御を行う、請求項13~15のいずれか1項に記載の情報処理装置である。
請求項17に係る発明は、ユーザが前記携帯端末の前記表示画面に所定の画面を表示した際に、前記表示制御手段が前記候補の機器を前記表示画面に表示する制御を行うと共に、前記携帯端末がインターネットへ無線接続を行っていない場合、前記所定の画面には、前記機器を操作するためのアプリケーションの初期画面が含まれる、請求項13~16のいずれか1項に記載の情報処理装置である。
請求項18に係る発明は、前記携帯端末から前記候補の機器に無線接続が行われた場合に、その機器の前記携帯端末に対する位置関係を前記携帯端末の表示画面に表示する制御を行う手段、を更に含む、請求項1~17のいずれか1項に記載の情報処理装置である。
請求項19に係る発明は、指定された位置から所定範囲内に該当する前記位置情報を含む前記接続履歴に関する情報を、前記携帯端末の表示画面に一覧表示する制御を行う手段を更に含む、請求項1~18のいずれか1項に記載の情報処理装置である。
請求項20に係る発明は、前記一覧表示する制御を行う手段は、前記指定された位置から所定範囲内に該当する前記位置情報を含む前記接続履歴に関する情報を、前記指定された位置とともに地図上に一覧表示する、請求項19に記載の情報処理装置である。
請求項21に係る発明は、コンピュータを、接続先の機器から近接伝達手段を通じて取得した当該機器に接続するための接続情報を用いて、接続元の携帯端末が前記機器に対して無線接続を行ったときの、当該携帯端末の位置情報と前記接続情報とを対応付けた接続履歴を記憶する記憶手段、前記携帯端末がユーザから前記機器への接続意思を示す操作を受け付けたときに、そのときの前記携帯端末の位置情報に基づいて、前記接続履歴の中から対応する前記機器を無線接続先の候補として抽出する抽出手段、として機能させるためのプログラムであって、前記位置情報は、前記携帯端末が前記機器から前記近接伝達手段で取得した前記接続情報を用いて前記機器と無線接続を行ったときに、前記無線接続のプロトコルに従って前記携帯端末が検知していた他の機器のリストである、プログラムである。
請求項22に係る発明は、接続先の機器から近接伝達手段を通じて取得した当該機器に接続するための接続情報を用いて、接続元の携帯端末が前記機器に対して無線接続を行ったときの、当該携帯端末の位置情報と前記接続情報とを対応付けた接続履歴を記憶する記憶手段と、前記携帯端末がユーザから前記機器への接続意思を示す操作を受け付けたときに、そのときの前記携帯端末の位置情報に基づいて、前記接続履歴の中から対応する前記機器に対して無線接続を行うよう前記携帯端末を制御する接続制御手段と、を含み、前記位置情報は、前記携帯端末が前記機器から前記近接伝達手段で取得した前記接続情報を用いて前記機器と無線接続を行ったときに、前記無線接続のプロトコルに従って前記携帯端末が検知していた他の機器のリストである、情報処理装置である。
請求項23に係る発明は、情報処理装置と機器とを含み、前記情報処理装置は、前記機器から近接伝達手段を通じて取得した前記機器に接続するための接続情報を用いて、接続元の携帯端末が前記機器に対して無線接続を行ったときの、当該携帯端末の位置情報と前記接続情報とを対応付けた接続履歴を記憶する記憶手段と、前記携帯端末がユーザから前記機器への接続意思を示す操作を受け付けたときに、そのときの前記携帯端末の位置情報に基づいて、前記接続履歴の中から対応する前記機器に対して無線接続を行うよう前記携帯端末を制御する接続制御手段と、を含み、前記機器は、前記情報処理装置に対して前記近接伝達手段を通じて前記接続情報を提供する手段と、前記携帯端末と前記無線接続を行った場合に、前記機器が前記無線接続の接続先であることを示す報知を行う報知手段と、を含み、前記位置情報は、前記携帯端末が前記機器から前記近接伝達手段で取得した前記接続情報を用いて前記機器と無線接続を行ったときに、前記無線接続のプロトコルに従って前記携帯端末が検知していた他の機器のリストである、情報処理システムである。
請求項1~4、8~10、21又は22に係る発明によれば、携帯端末が機器から近接伝達手段で取得した接続情報を用いて機器に対して無線接続したことがある場合に、再度その機器に無線接続する際に、再度近接伝達手段でその機器から接続情報を取得することなく無線接続ができる。請求項1~4に係る発明によれば、更にステルスモード等で電波を発していない機器も含めて最も近い機器を特定することができる。
請求項5に係る発明によれば、携帯端末を持つユーザから最も近い機器に携帯端末が無線接続するようにできる。
請求項6に係る発明によれば、特別な距離測定機構を持たなくても、無線接続のための機構によりユーザから最も近い機器を特定できる。
請求項7に係る発明によれば、利用履歴を考慮しない場合と比べて、ユーザが利用したい可能性が高い機器を候補に抽出することができる。
請求項11に係る発明によれば、ユーザが携帯端末上で選んでいる操作に対応することができる機器を候補に選ぶことができる。
請求項12に係る発明によれば、携帯端末がインターネットへの無線接続を行っていない場合には、無線接続先の候補の抽出を、印刷プレビュー画面又はスキャン画面が開かれるのを待って行う場合よりも早く実行することができ、候補の機器への無線接続が確立されるのを早めることができる。
請求項13に係る発明によれば、携帯端末のユーザに接続先の機器を選ばせることができる。
請求項14~16に係る発明によれば、ユーザが接続先の機器を選ぶための参考となる情報を提供することができる。
請求項17に係る発明によれば、携帯端末がインターネットへの無線接続を行っていない場合には、接続先の選択のための画面の表示を、印刷プレビュー画面又はスキャン画面が開かれるのを待って行う場合よりも早く実行することができ、候補の機器への無線接続が確立されるのを早めることができる。
請求項18又は23に係る発明によれば、どの機器に無線接続が行われたのかをユーザに知らせることができる。
請求項19又は20に係る発明によれば、ユーザが指定した位置の近傍にある過去に無線接続した機器の情報を提供することができる。
図1を参照して、本発明に係る情報処理装置が適用されるシステムの例を示す。この例のシステムは、ユーザが携帯する携帯端末100と、機器200とを含む。携帯端末100は、情報処理機能とネットワーク通信機能を持つ端末であり、スマートフォンやタブレット端末がその一例である。機器200は、ユーザに対して処理機能を提供する装置であり、複合機(プリンタ、スキャナ、コピー機、ファクシミリ装置等の機能を併せ持つ装置)がその一例である。以下では、機器200が複合機である場合を例にとって説明する。
機器200は、制御部210、処理部220、Wi-Fi(登録商標)モジュール230、NFCモジュール240を含む。制御部210は、処理部220等の機器200内の各要素の動作を制御して、機器200の機能を実現する。処理部220は、機器200がユーザに提供する各種の処理機能を実行する装置である。例えば複合機の場合、処理部220には、印刷機構、スキャン機構、ファクシミリ装置などが含まれる。
Wi-Fiモジュール230は、Wi-Fi規格での無線LAN(ローカルエリアネットワーク)通信のためのモジュールである。Wi-Fiモジュール230は、無線アクセスポイント経由でLANに接続するインフラストラクチャモード(以下「インフラモード」と呼ぶ)での無線通信機能に加え、無線アクセスポイントを介さずに相手装置(例えば端末100)と直接Wi-Fi規格の通信を行うWi-Fi Direct(登録商標)の機能を持つ。Wi-Fi Direct機能を持つWi-Fiモジュール230は、自ら無線アクセスポイントとして振る舞い、相手装置とWi-Fi Direct通信を行う。なお、Wi-Fiモジュール230がWi-Fi Direct機能を持たない場合でも、機器200が接続されているLAN上に無線アクセスポイントがあれば、相手装置は、その無線アクセスポイント経由で機器200と通信を行うことができる(インフラモード)。
NFC(Near Field Communication)モジュール240は、NFC規格(ISO/IEC 18092)等の近距離無線通信規格に従った無線通信を行うモジュールである。NFCモジュール240には、タグ情報の1つとして、他の装置が機器200とWi-Fi経由での通信を行うために用いる接続情報242が保持されている。接続情報242には、機器200に無線経由で接続するための無線アクセスポイントの識別情報(SSID:Service Set IDentifier)とパスワードが含まれる。Wi-Fiモジュール230がWi-Fi Direct機能を持っている場合、接続情報242は、そのWi-Fiモジュール230自体がWi-Fi Direct接続のために立ち上げる無線アクセスポイントのSSID及びパスワードを含む。Wi-Fiモジュール230がWi-Fi Direct機能を持たない場合、接続情報242は、機器200が接続されているLAN上に設けられた無線アクセスポイントのSSID及びパスワードである。
携帯端末100から機器200にWi-Fi Directで接続して機器200を利用しようとする場合、ユーザは、携帯端末100を機器200のNFCポート(図示省略)にタップ(すなわち軽く触れる)することで、NFC通信により接続情報242を携帯端末100側に取得する。携帯端末100は、受け取った接続情報242を用いて無線アクセスポイント(Wi-Fiモジュール230自体が無線アクセスポイントの場合もある)に接続し、機器200と通信する。
NFCにより機器200から携帯端末100に接続情報242を受け渡してWi-Fi Direct接続を行う方式は、ユーザにとって分かりやすく、操作も簡便である。しかし、NFC通信及びWi-Fi Direct接続のための処理には相応の時間がかかるため、ユーザは、機器200の前まで来てから携帯端末100から機器200を利用できるようになるまでに少し待たされることになる。また、ユーザが前にWi-Fi Direct接続したことがある機器200に対して再度Wi-Fi Direct接続する場合にも、従来ならばNFCタップを行って接続情報242を再度取得し、機器200が利用できるまでやはり同じ時間だけ待つ必要があった。これに対し、本実施形態では、一度Wi-Fi Direct接続したことがある機器200については、2回目以降の接続の際には、NFCタップを省略し、その分だけ早く機器200と通信できるようにする。以下、このための仕組みについて説明する。
図2に、本発明に係る情報処理装置の一実施形態としての携帯端末100の機能構成を例示する。
携帯端末100は、機器利用アプリ110、Wi-Fiモジュール130、NFCモジュール140、及びGPSモジュール150を有する。
機器利用アプリ110は、機器200を利用するための各種制御処理を実行するアプリケーションである。機器利用アプリ110は、以下に説明する機器利用アプリ110の各機能を表すプログラムを、携帯端末100が内蔵するコンピュータにて実行することにより実現される。携帯端末100が内蔵するコンピュータは、一般的なノイマン型のものでよい。
Wi-Fiモジュール130は、Wi-Fi規格に準拠した無線LAN通信を行う装置であり、その通信を実行するためのハードウエア回路及びソフトウエアを有する。Wi-Fiモジュール130は、無線APを介して施設内のネットワークに接続するインフラストラクチャモードでの無線接続機能を有する。またWi-Fiモジュール130は、アドホック(AdHoc)モードでの相手装置との直接無線接続をサポートしていてもよい。またWi-Fiモジュール130は、Wi-Fi Directによる相手装置との直接無線接続をサポートしていてもよい。
NFCモジュール140は、NFC通信を行うモジュールである。本実施形態では、携帯端末100を機器200のNFCポートにタップした際、NFCモジュール140は、機器200のNFCモジュール240からNFC通信により接続情報242を取得する。
GPSモジュール150は、GPS(Global Positioning System)衛星からの情報を用いて、自機(携帯端末100)の位置(緯度及び経度)を計算する。
機器利用アプリ110について更に説明する。
機器利用アプリ110は、UI部112、接続制御部114、接続履歴管理部116、及び接続履歴記憶部118を有する。
UI(ユーザインタフェース)部112は、機器200の制御のためのユーザインタフェース処理を行う。例えばUI部112は、機器200が提供する機能(例えば印刷、スキャン、ファクシミリ送信等)を選択するためのメニュー画面や、選択した機能についての処理パラメータ(例えば印刷する文書、印刷部数、スキャン結果のデータ形式、宛先ファクシミリ番号等)を入力する画面等を表示し、それら画面についてのユーザの選択や入力を受け付ける。ユーザは、利用する機器200を最終決定する前に、UI部112に対して、使用する機能の選択や処理パラメータの入力(例えば印刷する文書の選択やプレビュー)を行うことができる。そして、ある機器200を利用することが決定した段階で、UI部112は、その入力内容に対応する処理指示を、無線LAN経由でその機器200に伝達する。
接続制御部114は、機器200とのWi-Fi Direct接続のための制御を行う。すなわち、接続制御部114は、NFCモジュール140が機器200からNFC経由で受信した接続情報242を取得し、その接続情報242を携帯端末100のオペレーティングシステム等を経由してWi-Fiモジュール130に渡す。これに応じて、Wi-Fiモジュール130は、その接続情報242内のSSID及びパスワードを用いて、機器200のWi-Fiモジュール230に対してWi-Fi Direct接続を行う。
また接続制御部114は、NFC通信で得た接続情報242を用いてWi-Fi Direct接続を行った場合に、接続履歴管理部116にその接続の履歴情報(「接続履歴」)の記録を指示する。接続履歴管理部116は、この指示に応じて、その接続情報242と、GPSモジュール150が検出しているその時の位置の情報とを含む接続履歴レコードを接続履歴記憶部118に書き込む。
図3に、接続履歴記憶部118に記憶された接続履歴情報の例を示す。図に示すテーブルの1つの行が1つの接続履歴レコードである。このレコードには、SSID、パスワード、位置情報、同時検知SSIDの各項目が含まれる。このうちSSID及びパスワードは、機器200からNFC経由で取得した接続情報242に含まれるSSID及びパスワードである。位置情報は、携帯端末100がその接続情報242をNFCで取得してWi-Fi Direct接続を実行したときの携帯端末100の位置を示す情報であり、そのときGPSモジュール150から得た情報である。同時検知SSIDは、そのとき(NFC通信及びWi-Fi Direct接続を行ったとき)にWi-Fiモジュール130が検知していたSSIDのリストである。すなわち、無線アクセスポイントは、通常(すなわちステルスモードに設定されていない場合)、自身のSSIDを含むビーコンを定期的に発信しており、Wi-Fiモジュール130は、近傍の各無線アクセスポイントからのビーコンを検知している。モバイルタイプの無線ルータ(アクセスポイント)もあるが、固定配置された無線アクセスポイントも多い。無線アクセスポイントは様々な場所に配置されており、携帯端末100がどこに位置するかで、Wi-Fiモジュール130が検出できるSSIDの組合せも異なってくる。すなわち、NFCで接続情報242を取得してWi-Fi Direct接続を行ったときにWi-Fiモジュール130が検知しているビーコンに含まれるSSIDの集合(リスト)は、そのときの携帯端末100の位置を間接的に表している。一つの例では、この同時検知SSIDのリストを、GPSモジュール150が求めた位置情報の補助として用いる。また、GPSモジュール150を搭載していない携帯端末100の場合、GPSモジュール150が求める位置情報の代わりに、同時検知SSIDのリストを、携帯端末100の位置の情報として用いてもよい。
接続制御部114は、接続履歴記憶部118に記憶された接続履歴レコード群を参照して、携帯端末100の現在位置に該当する位置の機器200に対して、そのレコード内の接続情報を用いてWi-Fi Direct接続を行う機能を有する。すなわち、過去に機器200からNFC経由で接続情報242を取得してWi-Fi Direct接続を行った場合、同じ機器200に再度Wi-Fi Direct接続を行う際には、接続履歴記憶部118に記憶されたその機器200についての接続履歴レコードを用いることで、その機器200とのNFC通信が省略可能になる。
次に、図4を参照して、ユーザが携帯端末100を機器200のNFCポートにタップしたときの接続制御部114の処理手順の例を説明する。
この手順では、接続制御部114は、タップによりNFCモジュール140がNFCモジュール240から取得した情報(接続情報242を含む)を取得し(S10)、その接続情報242をWi-Fiモジュール130に渡してWi-Fi接続を試行させる。Wi-Fiモジュール130は、まずインフラモードでの接続を試みる。すなわち、Wi-Fiモジュール130は、自動接続先として設定されているSSIDのビーコンが検出できていれば、そのSSIDに対してインフラモードの接続を行う。そうでなければ、インフラモードでの接続は失敗する。インフラモードでの接続が成功した場合(S12の判定結果がYes)、S18に進み、LAN経由で機器200との通信接続を行う。
インフラモードでの接続ができない場合、Wi-Fiモジュール130は、その接続情報242を用いて機器200のWi-Fiモジュール230とのWi-Fi Direct接続を試行し(S14)、その接続が成功したか否かを判定する(S16)。S16の判定結果がNoの場合、接続制御部114は、エラー処理を行う(S26)。エラー処理では、例えば、UI部112が、携帯端末100の画面に接続不可の旨を示すエラーメッセージを表示する。
S16でWi-Fi Direct接続が成功した場合、接続制御部114は、その接続を経由して機器200と通信接続を確立する(S18)。この後、機器利用アプリ110は、その通信接続を介して機器200との間で指示及び情報のやりとりを行う。接続制御部114は、S18の後、今回の無線接続がWi-Fi Direct接続か否かを判定し(S20)、Wi-Fi Direct接続であれば、接続履歴管理部116に接続履歴の記録を指示する(S22)。この指示には、今回のWi-Fi Direct接続に用いた接続情報242が含まれる。この接続履歴には、その接続の時点での携帯端末100の位置と、接続に用いた接続情報242(SSID、パスワードを含む)が含まれる。この後、機器利用アプリ110は、その機器200と通信し、ユーザが入力した指示を機器200に伝え、実行させる(S24)。
図5を参照して、S22の指示に従って接続履歴管理部116が行う接続履歴の登録処理を例示する。
接続履歴管理部116は、接続制御部114から履歴記録の指示(図4のS22)を受けた場合、GPSモジュール150から現在位置の情報を取得し、Wi-Fiモジュール130が検知しているSSID(ビーコン)のリストを取得する(S30)。次に接続履歴管理部116は、接続履歴記憶部118内の接続履歴レコード群を参照し(S32)、レコード中の位置情報が現在位置(S30で取得)と同じである接続履歴レコードがあるか判定する(S34)。ここで、「位置情報が現在位置と同じ」とは、位置情報と現在位置の座標同士が完全に一致する場合だけでなく、ある程度の誤差(例えばGPSの測位誤差程度)がある場合も許容する。
S34で位置情報が現在位置と同じ接続履歴レコードが見つからなかった場合は、接続履歴管理部116は、新たな接続履歴レコードを接続履歴記憶部118に登録する(S36)。この接続履歴レコードには、図4のS22で接続制御部114から受け取った指示に付随した接続情報(SSID及びパスワードを含む)、S30で取得した現在位置とSSIDのリストとが含まれる(図3参照)。
S34で、現在位置と同じ位置情報を持つ接続履歴レコードが1以上見つかった場合、接続履歴管理部116は、それらレコードの中に、S30で受けた指示に付随した接続情報242内のSSIDと同じSSIDを持つものがあるかどうかを判定する(S37)。
S37の判定結果がYesの場合、これは、前に一度NFCタップによりWi-Fi Direct接続をしたことがある機器200に再度NFCタップを行ったことを意味する。この場合、接続履歴管理部116は、その指示に付随するSSIDと同じSSIDを持つ接続履歴レコード中の項目の値を、今回取得した情報で更新する(S38)。このとき値が更新される可能性がある項目には、例えば、同時検知SSIDがある(図2参照)。また、後述する図7の例における機器属性の各項目の値も更新される可能性がある。
S37の判定結果がNoの場合は、位置は同じでも前にその位置の近傍でNFCタップした機器200とは別の機器200にNFCタップしたことを意味する。この場合、接続履歴管理部116は、新たな接続履歴レコードを接続履歴記憶部118に登録する(S36)。
次に、図6を参照して、接続制御部114が行う、接続履歴記憶部118の情報を参照したWi-Fi Direct接続制御の手順を例示する。
この手順では、携帯端末100のユーザが、いずれかの機器200に無線接続したいという意思(接続意思と呼ぶ)を示す特定の操作を行ったか否かを判定する(S40)。
図6では、その「特定の操作」として、機器利用アプリ110の操作画面において、印刷プレビュー画面又はスキャン画面を表示する操作を例示している。印刷プレビュー画面は、印刷対象として選択しようとしている文書の印刷結果がどのようになるかを画像で示す画面である。スキャン画面は、スキャンのための設定項目の入力やスキャンの実行指示を入力するための画面である。ユーザが携帯端末100にこれらの画面を表示するのは、印刷やスキャンを行いたい場合であり、そのような場合、携帯端末100から機器200への通信接続が必要になる。したがって、それらの画面が表示された場合、ユーザは近くの機器200を利用する意思があり、ひいては機器200への接続意思があるとみなせる。
なお、印刷プレビュー画面やスキャン画面を表示する操作は、いずれかの機器200への接続意思を示す「特定の操作」の一例に過ぎない。携帯端末100の機器利用アプリ110が受付可能な操作のうち、機器200に何らかの処理を実行させようとするための操作が「特定の操作」に該当する。例えば、機器200から携帯端末100に情報を取得したい場合や、携帯端末100から機器200に何らかの情報を送信してその情報を処理させたい場合、携帯端末100上でのその取得や送信のための操作(例えばそのための入力画面の表示)が行われた場合、S40では特定の操作が行われたと判定する。
また、ユーザが、機器利用アプリ110の操作メニューからWi-Fi Direct接続の実行(接続先の指定は不要)を選択する操作も、「特定の操作」に該当する。
ここで、携帯端末100上で機器利用アプリ110を起動する操作(あるいはバックグラウンドで動作している機器利用アプリ110をアクティブ状態、すなわち画面表示される状態にする操作)も、広義には、機器200に対する接続意思を示す操作といえなくもない。ただし、この種の操作だけでは、単にユーザは機器利用アプリ110の設定を確認したいだけかも知れず、直ちに機器200と通信が必要になるとは限らない。仮にこの段階で図6の手順を実行し、後述するS52で近傍の機器200にWi-Fi Direct接続が行われると、かえってユーザにとって不便になる場合がある。一般的なスマートフォン等では、Wi-Fi Direct接続を行うと、インフラモードのWi-Fi接続やLTE(Long Term Evolution)等の広域無線通信を経由したインターネット接続が切断されてしまうからである。そこで、図6の手順では、ユーザが機器200に接続しようとする接続意思(言い換えれば、携帯端末100から機器200と相互作用しようとする意思)が明確であるとみなせる「特定の操作」(単に機器利用アプリ110を開く操作はこれに該当しない)が行われて始めて、以降の手順を実行することとしている。
ただし、携帯端末100がインターネット接続をしていない状況(例えば無線アクセスポイントにインフラ接続していない状況)であれば、Wi-Fi Direct接続が行われてもユーザにほとんど不便がない。したがって、S40において、機器利用アプリ110がアクティブ状態(画面に表示された状態)になったときに、インターネット接続中か否かを判定し、インターネットに接続中であればS42に進まず、インターネットに接続中でなければS42以降の処理に進むようにしてもよい。この場合、印刷プレビュー画面の表示操作が行われるより早く図6の処理が開始されるので、近傍の機器200にWi-Fi Direct接続が行われるのもその分早くなり、その早くなった分だけユーザがその機器200のところに着くまでに接続やその後の処理の進むこととなる。
さて、S40で特定の操作が行われた場合、接続制御部114は、機器利用アプリ110が機器200(図は機器200がMFPすなわち複合機である場合を想定)に接続可能な状態であるかどうかを判定する(S42)。この判定の結果がNoの場合は、処理は終了する。
一方、S42の判定結果がYesの場合、接続制御部114は、GPSモジュール150から現在位置を取得する(S44)。そして、接続履歴記憶部118の情報を取得(参照)し(S46)、現在位置と同一位置の位置情報を持つ接続履歴レコードがあるかどうかを調べる(S48)。ここで、現在位置と接続履歴レコード内の位置情報とが「同一位置」である場合には、それら両者の座標(緯度、経度)が一致する場合の他に、それら両者の座標同士の差(距離)がWi-Fi Directの一般的な通信可能距離以内(一般的なオフィスの広さ程度の範囲が想定される)である場合も含まれる。これは、図6の手順でのWi-Fi Direct接続は、NFCタップが不要であり、Wi-Fi Direct接続が可能な距離であれば成立するからである。S48において、現在位置と同一位置の位置情報を持つレコードが見つからなかった場合、処理は終了する。
S48の判定結果がYesの場合、接続制御部114は、更に、現在位置と同一位置の位置情報を持つレコードが複数見つかったか否かを判定する(S50)。S50の判定結果がNo、すなわち見つかったレコードが1つである場合、接続制御部114は、Wi-Fiモジュール130を介して、そのレコード内のSSID及びパスワードを用いて、そのSSIDを持つ機器200のWi-Fiモジュール230に対してWi-Fi Direct接続を行う(S52)。
S50で現在位置と同一位置の位置情報を持つレコードが複数見つかった場合、接続制御部114は、Wi-Fiモジュール130から、各無線アクセスポイント(この中に各機器200のものもある)から受信中のビーコンが示すSSIDの情報と、そのビーコンの電波強度の情報を取得する。そして、取得したSSID(及び電波強度の情報)の中に、S50で見つかった複数の接続履歴レコード各々のSSIDに該当するものがあるかどうかを調べる(S54)。複数の接続履歴レコードのSSIDの中に、現在ビーコンとして受信中のものが1つ以上あれば(S54の判定結果がYes)、その中で電波強度が最も高いSSIDを特定し(S56)、その特定したSSIDと、接続履歴レコード中のそのSSIDに対応するパスワードを用いてWi-Fi Direct接続を行う(S52)。電波強度が最も高いSSIDは、携帯端末100から最も近いと考えられる。
なお、携帯端末100の現在位置の近傍に、その携帯端末100からWi-Fi Direct接続した接続履歴レコードに対応する機器200があったとしても、その機器200のWi-Fiモジュール230がステルスモードに設定されている場合がある。その場合、そのWi-Fiモジュール230はビーコンを発しないので、S54でそのWi-Fiモジュール230のSSIDは検出されない。また、GPSの位置情報は地表上の緯度経度の二次元座標なので、同じ建物内の異なるフロア(階)で同じ位置と判定される場合もある。異なるフロアの無線アクセスポイントからの電波は通常受信できない(特に鉄筋コンクリート製のビルの場合)。したがって、S50で見つかった複数の接続履歴レコードのSSIDを示すビーコンが1つも検出されない場合もある。この場合、S54の判定結果がNoとなる。
S54の判定結果がNoの場合、接続制御部114は、S50で見つかった複数の接続履歴レコードの各々から同時検知SSIDのリストを読み出す(S58)。そして、それら各レコードのSSIDリストの中から、Wi-Fiモジュール130が現在検知しているSSIDのリストに対する一致度合いが閾値以上のものがあるかどうかを判定する(S60)。ここでの一致度合いは、例えば、前者と後者のSSIDリストの間で共通するSSIDが、後者(現在検出中)のSSIDリストのSSIDに占める割合である。ただしこれは一例に過ぎない。一致度合いが閾値以上となる接続履歴レコードが1つであれば、それを接続先に選択し(S62)、複数ある場合は一致度合いが最高値のものを接続先に選択する(S62)。そして、選択した接続履歴レコード内のSSID及びパスワードを用いてWi-Fi Direct接続を行う(S62)。携帯端末100が検知できるビーコン(SSID)の集合は、その携帯端末100がどこに位置するかで変化する。したがって、一致度合いが閾値以上かつ最高値である接続履歴レコードが見つかれば、その接続履歴レコードに対応する機器200のかなり近くに携帯端末100が位置していることである。すなわち、S58~S62の処理では、検知できるSSIDのリスト(集合)をいわば位置情報の代わりとして用いることで、携帯端末100の現在位置に最も近い機器200(接続履歴レコードが記録されているもの)を見つけ出している。
なお、GPSの測位では、建物内のどのフロアに携帯端末100が位置するかまでは分からないため、位置の一致のみでは現在位置とは異なるフロアの機器200の接続履歴レコードも抽出され得る。現在位置のフロアにある最近傍の機器200(接続履歴レコードあり)がステルスモードであれば、他のフロアにある二次元位置が同じ他の接続履歴ありの機器200と同様ビーコンが検知できないので、ビーコンのみではその最近傍の機器200を特定できない。しかし、携帯端末100が検知可能なSSID(ビーコン)の集合は、二次元位置が同じであってもフロアが異なれば異なるので、S58~S62にてSSIDリストの一致度合いを判定することで、同じフロア内の現在位置に最も近いと考えられる機器200が特定できる。
S60の判定結果がNoの場合、接続制御部114は、ユーザに接続先の選択指示を仰ぐ。すなわち、接続制御部114は、S50で見つかった複数の接続履歴レコードのSSIDを、接続先の候補として一覧表示した選択画面をUI部112に画面表示させる(S64)。ユーザは、その選択画面上で、接続したいSSIDを選択する。接続制御部114は、ユーザの選択結果を受け取り(S66)、その選択結果のSSIDとこれに対応するパスワードを用いて、そのSSIDに対応する機器200にWi-Fi Direct接続を行う(S52)。
さて、S64における選択画面にSSIDの一覧を表示するのみでは、ユーザはどれを選んだらよいか判断が難しい場合がある。そこで、SSIDがどのような機器200のものであるかの判断材料となる情報を接続履歴レコードに持たせ、その情報を選択画面に併せて表示してもよい。
図7に、そのような判断材料となる情報を含んだ接続履歴情報の例を示す。この例では、図3に例示した接続履歴情報の項目に加え、機器名、機能リスト、最新利用日時、利用回数、印刷した文書、文書タイプの各項目を含む。図3の例にあった同時検知SSIDのリストが図7には示していないが、図7の例が同時検知SSIDのリストを更に含んでいてもよい。
それら項目のうち機器名は、当該接続履歴レコードに対応する機器200の名称である。機器名は、例えばその機器200を管理する管理者が名付ける。機能リストは、その機器200が持つ機能のリストである。図示例では、SSIDが「AAAA」の機器200は、両面印刷及びカラー印刷が可能であり、ステープル機能を持ち、スキャン機能を持っている。一方、SSIDが「CCCC」の機器200はスキャン機能のみを持つ(すなわちスキャナ単機能機)。機器名及び機能リストは、機器200自体の属性情報(機器属性)である。これら機器属性に該当する項目は、タグ情報の1つとして前述の接続情報242と共に機器200のNFCモジュール240に持たせておき、NFCタップ操作に応じて携帯端末100に伝達することが可能である。すなわち、携帯端末100は、図4の手順のS10において、これらの項目の情報を含むタグ情報を機器200のNFCモジュール240から読み取り、S22で接続情報242に対応付けてそれらの項目の情報を接続履歴記憶部118に登録する。
また、図7に例示した接続履歴レコードの項目のうち最新利用日時は、ユーザが携帯端末100からそのレコードに対応する機器200を最後に利用した日時である。また利用回数は、その携帯端末100からその機器200を利用した回数である。また、印刷した文書は、その携帯端末100からその機器200を用いて最後に印刷した文書のファイル名であり、文書タイプは、その文書の種類(例えばファイル形式)である。これらの項目は、そのレコードに対応する機器200に対するユーザの利用履歴を示す項目群である。これらの項目は、図4の手順のS24で携帯端末100から機器200を利用した際、又は図6の手順のS52でWi-Fi Direct接続が確立した後携帯端末100から機器200を利用した際に、機器利用アプリ110が、その利用の内容に応じて更新する。例えば、そのとき携帯端末100からある文書を機器200に送って印刷した場合には、最新利用日時をそのときの日時に更新し、利用回数を1増加させ、印刷した文書の欄をそのとき印刷した文書のファイル名に変更し、文書タイプをその文書のファイル形式の名前に変更する。
このように管理される図7の接続履歴情報を用いて、接続制御部114は、図6の手順のS64において、例えば図8に示す選択画面300を表示する。この選択画面300には、利用する機器200の選択を促すメッセージ302と、選択肢となる各機器200の情報を示す情報提示欄304が表示される。この情報提示欄304には、図6のS50で見つかった複数の接続履歴レコードの各々の情報が表示される。個々のレコードについての表示情報には、SSID、機器名、機能リスト、最新利用日時、利用回数、印刷した文書名、文書タイプの各項目が含まれる。ユーザは、これらの情報を参照することで、自分が利用したい機器200がどれであるかを判断する。例えば、機器名で判断がつく場合もあるだろう。また、機能リストに自分が利用したい機能があるかでどの機器200を選ぶか判断できる場合もある。また、最新利用日時、印刷した文書名、文書タイプ等から、それぞれどの機器200なのかがある程度目星がつくこともある。ユーザは、それらの情報を参考に利用する機器200を決めると、その機器200の情報の左隣にある利用指示ボタン306を押下する。接続制御部114は、押下された利用指示ボタン306に対応する接続履歴レコードのSSID及びパスワードを用いて、Wi-Fi Direct接続を行う。
図7に示した機器属性の項目及び利用履歴の項目はあくまで一例に過ぎない。接続履歴レコードには、例示した項目以外の機器属性や利用履歴の項目が記録されてもよいし、それら例示した項目のすべてが含まれていなくてもよい。また、図8の例示した選択画面300は、接続履歴レコード(図7)の機器属性及び利用履歴の項目のすべてを表示するものであったが、これはあくまで一例にすぎず、選択画面300はそれら項目のうちの一部の項目のみを表示するものであってもよい。
また、室内測位システム等により各機器200や携帯端末100の位置がある程度高精度に測定可能な場合には、選択画面300に自機(携帯端末100)と各機器200の位置関係を表示してもよい。例えば携帯端末100の位置と各機器200の位置とをマップ上に表示してもよい。また、センサ(例えばジャイロセンサ、加速度センサ、地磁気センサ)の信号等から携帯端末100を持つユーザの向きを推定できる場合、選択画面300に自機から見た各機器200の方向やおおよその距離などを表示してもよい。
また、接続制御部114は、UI部112が図8の選択画面300に表示する各機器(接続履歴レコード)の情報の表示順序を、利用履歴に応じて決めてもよい。例えば、最新利用日時が新しい順に上から表示してもよい。ユーザが最近利用した機器200があれば、それをもう一度利用する可能性が高いと考えられるからである。また、利用回数が多い順に上から表示するようにしてもよい。利用回数が多い程、ユーザがその機器200を利用する可能性が高いと考えられるからである。また、最新利用日時の新しさと利用回数の多さの総合評価で表示順序を決めてもよい。
以上に説明した図6の手順では、携帯端末100の近傍に接続履歴レコードのある機器200が複数見つかった場合、ビーコンの電波強度やSSIDリストの一致度合いに基づき携帯端末100に最も近い機器200を割り出し、自動的にWi-Fi Direct接続した。しかし、自動接続先の選定は、近さに基づくものに限らない。
例えば、接続履歴レコードに記録された利用履歴(図7参照)の情報に基づいて選定してもよい。それら複数のうち最新利用日時が最も新しいものを自動接続先に選定してもよい。また別の例として、利用回数が最も多いものを自動接続先に選定してもよい。
また、接続履歴レコードに記録された機器属性を自動接続先の選定の際に考慮に入れてもよい。すなわち、図6の手順を開始するトリガとなった特定の操作が、機器200の特定の機能に関連するものである場合、接続制御部114は、その機能を機能リスト(図7参照)に含む機器200を優先的に自動接続先に選定する。例えば、ユーザがスキャン画面を開く操作を行った場合、接続制御部114は、S50で見つかった複数の機器200(接続履歴レコード)のうち、S50で見つかった複数の機器200(接続履歴レコード)のうち、スキャン機能を有する機器200の中から自動接続先を選択する。また、ユーザが印刷プレビュー画面を開く操作を行った場合、接続制御部114は、印刷機能に該当する機能(例えば両面、カラーなど)を有する機器200を優先的に選択する。
ユーザの近くに機器200が複数存在する場合、上述した処理により携帯端末100が機器200に対して自動でWi-Fi Direct接続すると、どの機器200に接続したかユーザに分からない場合があり得る。これに対する対処として、一つの例では、自動接続した機器200が、接続したことをユーザに報知する動作を行う。例えば、その機器200のUI画面を明るく光らせたり、点滅させたりする。または機器200に報知用のランプが設けられている場合、そのランプを光らせたり点滅させたりしてもよい。あるいはその機器200が報知音を発してもよい。また、携帯端末100が、自動接続先の機器と携帯端末100との位置関係を画面表示してもよい。この表示は、例えばマップ上に自機と自動接続先の機器を表示するものであってもよいし、携帯端末100から見た自動接続先の機器200の方向や距離を示すものであってもよい。
さて、以上の例では、接続制御部114は、所定の基準により特定した機器200に対して自動的にWi-Fi Direct接続を行い、特定できない場合にのみユーザに接続先の機器200を選択(図6のS64)させたが、これは一例に過ぎない。この代わりに、例えば自動接続は行わず、ユーザに対して選択画面300を提示し、接続先の機器200を選択させる方式としてもよい。提示する選択画面300は、上述のS64で用いたものと同様のものでよい。
この例の処理手順は、図6の手順のS50で複数の接続履歴レコードが見つかった場合の処理が、上記実施形態とは異なる。すなわち、この例では、S50の判定結果がYesの場合、自動接続(S56又はS62からS52に進む流れ)は行わず、選択画面300を表示し(S64)、ユーザから接続先の選択を受け付ける(S66)。この場合の選択画面300は、上記実施形態と同様のものでよい。また、この例では、選択画面300上の接続履歴レコードの表示順序のバリーションとして、ビーコンの電波強度が強い順や、SSIDリストの一致度合い(図6のS58,S60の説明を参照)が高い順等もあり得る。また、電波強度及び/又は一致度合いを、利用履歴(利用回数など)等と合わせて総合的な評価値を求め、その評価値に基づいて表示順序を決めてもよい。
また、携帯端末100(例えば機器利用アプリ110)は、接続履歴記憶部118内の情報を用いて、ユーザが明示的又は暗黙的に指定する位置の周辺にある、接続履歴レコードが記録されている機器200を一覧表示する機能を有していてもよい。この場合の指定位置の「周辺」とは、図6のS48等で用いられるWi-Fi Direct接続可能な範囲よりも広い範囲であり、例えば指定位置から徒歩で数分から十数分程度で到達できる範囲である。また、この一覧表示は、指定位置の「周辺」範囲を示す地図(マップ)上に、その範囲内に位置する機器200(対応する接続履歴レコード内の位置情報から判別可能)の位置をマーク付けして表示する。地図表示の基準位置である上述の指定位置としては、例えば携帯端末100の現在位置を用いてもよい。この場合、ユーザは、自分の居る場所から少し歩く程度の範囲内において、過去に無線接続で使用した機器200がどこにあるかを知ることができる。また、ユーザに任意の位置を指定させ、その指定された位置の周辺の機器200を地図上に表示してもよい。この例は、ユーザがこれから行く出先の周辺で過去に利用した機器200がどこにあるかを知りたい場合等に利用できる。
以上の例では、接続履歴の保存、接続履歴に基づく接続先候補の機器200の抽出、それら候補の中からの自動接続先の選定等の処理を携帯端末100が行ったが、これは一例に過ぎない。この代わりに、それらの処理を携帯端末100からネットワーク経由で接続可能なサーバ(例えばクラウド)実行してもよい。この場合のシステム構成の例を図9に例示する。
この例では、携帯端末100は、接続履歴管理部116及び接続履歴記憶部118を持たず、その代わりにサーバIF(インタフェース)160を有する。サーバIF160は、サーバ400との情報のやりとりを行う。
インターネット上には、接続履歴管理部402と接続履歴記憶部404を備えたサーバ400が設けられている。また、サーバ400は、端末IF(インタフェース)406を有する。端末IF406は、携帯端末100との情報のやりとりを行う。
NFCタップ時の処理手順(図4参照)において、S20の判定結果がYesとなった場合、図1の例では接続履歴管理部116が現在位置及び接続情報242等を接続履歴記憶部118に登録していたが、この例では、サーバIF160がそれらと同じ情報を携帯端末100の識別情報(端末IDと呼ぶ)と対応付けてサーバ400に送信する。サーバ400の端末IF406がこの情報を受信し、接続履歴管理部402に渡す。接続履歴管理部402は、図5のS32以降と同じ処理を行うことで、受け取った情報を接続履歴管理部402に登録する。接続履歴記憶部404が保持する情報は、携帯端末100の接続履歴記憶部118が持つ情報(図3又は図7)と同様である。
またユーザが携帯端末100に対して処理開始のトリガとなる上述の特定の操作を行った場合、サーバIF160は、GPSモジュール150から得た現在位置の情報と端末IDを含んだ情報要求をサーバ400に送る。サーバ400では、端末IF406を介してその要求を受け取った接続履歴管理部402が、携帯端末100の接続制御部114及び接続履歴管理部116と同様の処理を実行する。
例えば、接続履歴管理部116は、図6のS48以降の処理(S52、S64、S66は除く)を実行してもよい。この場合、接続履歴管理部402は、自動接続先となる機器200を特定し(S56又はS62)、特定した機器200のSSID及びパスワードを携帯端末100に応答する。携帯端末100は、受け取ったSSID及びパスワードを用いて、そのSSIDに対応する機器200にWi-Fi Direct接続を行う。また、自動接続先が絞り込めなかった場合(S60の判定結果がNo)は、S50で求めた接続先の候補である各機器200のSSID及びパスワードの情報(及びユーザの判断の材料となる機器属性や利用履歴の情報)を携帯端末100に応答する。携帯端末100は、これらの情報を用いて選択画面300を表示し、ユーザから接続先の選択を受け付ける。
このように、サーバ400は、接続履歴記憶部404に記憶された接続履歴の情報を用いて、要求元の携帯端末100からの接続先の候補や自動接続先の機器200を特定し、特定した機器200の情報を携帯端末100に提供する。
以上では、携帯端末100の位置を求めるためにGPSを用いたが、GPS以外にも様々な測位システムが存在しており、本実施形態ではそれらいずれの測位システムを用いてもよい。
また以上では、機器200から携帯端末100へNFCを用いて接続情報242等の情報を伝達したが、これらの情報の伝達手段に限らない。NFCの代わりに、例えば接続情報242等の情報を表すQRコード(登録商標)等の画像コードを機器200の外表面に貼付したり、機器200のUI画面に表示したりし、携帯端末100のカメラによりその画像コードを読み取ることで、接続情報242等を伝達してもよい。また、赤外線通信等、電波以外の媒体を用いる近接通信手段で接続情報242等を伝達してもよい。また、Bluetooth(登録商標)のように、NFCより通信距離が長い近距離無線通信を接続情報242等の伝達手段として用いてもよい。この場合、伝達に用いる近距離通信手段の通信可能距離は、携帯端末100から機器200を操作する際の通信手段であるWi-Fi Directの通信可能距離よりも小さいものとする。
また以上では、携帯端末100から機器200にWi-Fi Direct接続を行う場合を例にとって説明したが、上記実施形態の手法は、Wi-Fi Direct以外の無線通信方式を用いる場合にも適用可能である。
以上に例示した携帯端末100、機器200、サーバ400の情報処理機構は、例えば、内蔵されるコンピュータにそれら各装置の機能を表すプログラムを実行させることにより実現される。ここで、コンピュータは、例えば、ハードウエアとして、CPU等のマイクロプロセッサ、ランダムアクセスメモリ(RAM)およびリードオンリメモリ(ROM)等のメモリ(一次記憶)、HDD(ハードディスクドライブ)を制御するHDDコントローラ、各種I/O(入出力)インタフェース、ローカルエリアネットワークなどのネットワークとの接続のための制御を行うネットワークインタフェース等が、たとえばバスを介して接続された回路構成を有する。また、そのバスに対し、例えばI/Oインタフェース経由で、CDやDVDなどの可搬型ディスク記録媒体に対する読み取り及び/又は書き込みのためのディスクドライブ、フラッシュメモリなどの各種規格の可搬型の不揮発性記録媒体に対する読み取り及び/又は書き込みのためのメモリリーダライタ、などが接続されてもよい。上に例示した各機能モジュールの処理内容が記述されたプログラムがCDやDVD等の記録媒体を経由して、又はネットワーク等の通信手段経由で、ハードディスクドライブ等の固定記憶装置に保存され、コンピュータにインストールされる。固定記憶装置に記憶されたプログラムがRAMに読み出されCPU等のマイクロプロセッサにより実行されることにより、上に例示した機能モジュール群が実現される。