なお、以下で説明する実施の形態は、いずれも本発明の一具体例を示すものである。以下の実施の形態で示される数値、形状、材料、構成要素、構成要素の配置位置及び接続形態、ステップ、ステップの順序などは、一例であり、本発明を限定する主旨ではない。また、以下の実施の形態における構成要素のうち、最上位概念を示す独立請求項に記載されていない構成要素については、任意の構成要素として説明される。
(実施の形態1)
[アンテナ装置の構成]
図1は、実施の形態1におけるアンテナ装置10の構成の一例を示す図である。
図1に示すように、本実施の形態におけるアンテナ装置10は、円形配列フェーズドアレーアンテナ1と、制御部12とを備える。本実施の形態におけるアンテナ装置10は、例えばコネクテッドカーに搭載される。図1では、8個のアンテナ素子を有する円形配列フェーズドアレーアンテナ1の例が示されている。
[円形配列フェーズドアレーアンテナ1]
円形配列フェーズドアレーアンテナ1は、円上に等間隔に配列されたN個(Nは4以上の偶数)のアンテナ素子を有する。N個のアンテナ素子それぞれは、当該円の領域を含む平面が無指向性のアンテナ素子であり、例えば、当該円の領域を含む平面と垂直に配置された所定長さのダイポールアンテナからなる。なお、ダイポールアンテナは必ずしも実際のダイポールアンテナである必要はなく、電気的に等価な動作をする等価ダイポール素子であってもよい。これにより、円形配列フェーズドアレーアンテナ1は、当該円の領域を含む平面(水平面内)の指向性が実質的に全方向となる。
図2は、実施の形態1における円形配列フェーズドアレーアンテナ1の構成の一例を示す図である。
図2に示すように、N=8の場合には、円形配列フェーズドアレーアンテナ1は、半径aの円周上に45度間隔で配列された8個のアンテナ素子(#1~#8)で構成される。ここで、半径aは、例えば4.9cmである。
以下では、円形配列フェーズドアレーアンテナ1のXY平面においてX軸に対してφの角度で到来波が到来する場合を例に挙げて説明する。
[制御部12]
制御部12は、円形配列フェーズドアレーアンテナ1に到来する到来波の方向である到来波方向に応じて、N個のアンテナ素子を到来波方向に直交するようにN/2個のサブアレーに分割する。制御部12は、分割したサブアレーの指向性を制御することで到来波方向に向いたN/2個のビームを独立に形成する。ここで、N/2個のサブアレーはそれぞれ、配列方向が平行となる2個のアンテナ素子の組み合わせで構成され、組み合わせは、到来波方向に応じて、変更される。組み合わせには、N/2のパターンがある。
制御部12は、N/2のパターンの組み合わせのうち、到来波方向とπ/Nの角度範囲以内において平行となる2個のアンテナ素子の組み合わせのパターンを選択することで、組み合わせを、到来波方向に応じて変更する。
例えば、制御部12は、円形配列フェーズドアレーアンテナ1を構成するアンテナ素子が8(N=8)の場合には、到来波方向に応じて4パターンの組み合わせの一を選択する。
図3A~図3Dは、実施の形態1におけるサブアレーの到来波方向に応じた組み合わせを示す図である。
図3Aには、アンテナ素子#2,#3と、アンテナ素子#1,#4と、アンテナ素子#5,#8と、アンテナ素子#6,#7とをそれぞれサブアレーとする組み合わせが示されている。そして、制御部12は、到来波の方向(角度)が図1に示すXY平面のX軸に対して0度±22.5度または180度±22.5度の場合、図3Aに示すサブアレーの組み合わせのパターンを選択する。
同様に、図3Bには、アンテナ素子#3,#4と、アンテナ素子#2,#5と、アンテナ素子#1,#6と、アンテナ素子#7,#8とをそれぞれサブアレーとする組み合わせが示されている。制御部12は、到来波の方向が図1に示すXY平面のX軸に対して45度±22.5度または225度±22.5度の場合、図3Bに示すサブアレーの組み合わせのパターンを選択する。
また、図3Cには、アンテナ素子#4,#5と、アンテナ素子#3,#6と、アンテナ素子#2,#7と、アンテナ素子#1,#8とをそれぞれサブアレーとする組み合わせが示されている。制御部12は、到来波の方向が図1に示すXY平面のX軸に対して90度±22.5度または270度±22.5度の場合、図3Cに示すサブアレーの組み合わせのパターンを選択する。
また、図3Dには、アンテナ素子#5,#6と、アンテナ素子#4,#7と、アンテナ素子#3,#8と、アンテナ素子#1,#2と、をそれぞれサブアレーとする組み合わせが示されている。制御部12は、到来波の方向が図1に示すX軸に対して135度±22.5度または315度±22.5度の場合、図3Dに示すサブアレーの組み合わせのパターンを選択する。
このように、制御部12は、到来波方向のX軸に対する角度に応じて、サブアレーの組み合わせを変更することで、4つのビームを到来波方向に制御する。なお、制御部12が、サブアレーの組み合わせを変える角度は、8個のアンテナ素子(#1~#8)が45度間隔で配列されていることから、その中間の22.5度となる。すなわち、制御部12は、到来波方向のX軸に対する22.5度、67.5度、112.5度、157.5度、202.5度、247.5度、292.5度、337.5度の角度を境にサブアレーの組み合わせを変更するとも表現できる。
以下、N=8の場合を例に挙げて説明する。
図4は、実施の形態1の制御部12の具体的構成の一例を示す図である。
本実施の形態では、制御部12は、図1に示すように、組み合わせ変更部121と、減算部122と、移相部123と、合成/分配部124とを備える。
<組み合わせ変更部121>
組み合わせ変更部121は、到来波方向に応じて、4つのサブアレーの組み合わせを変更する。これにより、組み合わせ変更部121は、到来波方向に直交するように、円形配列フェーズドアレーアンテナ1を構成する8個のアンテナ素子を4つのサブアレーに分割することができる。
例えば図4に示すように、組み合わせ変更部121は、複数のスイッチで構成されるスイッチ回路を有する。組み合わせ変更部121は、到来波方向に応じて複数のスイッチのON、OFFの組み合わせを切り換えることで、減算部122と接続する8個のアンテナ素子の組み合わせを変更する。
<減算部122>
減算部122は、移相部123を介して伝送された信号またはアンテナ素子#1~#8から伝送された信号を減衰させる。
例えば図4に示すように、減算部122は、8個のアッテネータで構成され、移相部123を介して伝送された信号またはアンテナ素子#1~#8から伝送された信号それぞれに重み(wi)をかけて重み付けする。
<移相部123>
移相部123は、合成/分配部124から伝送された信号の一部の位相を変化させる。または、移相部123は、減算部122から伝送された信号の一部の位相を変化させる。
例えば図4に示すように、移相部123は、4個の移相器で構成され、合成/分配部124から伝送された4つのch(ch1~ch4)それぞれが2つに分配された信号の一方の位相を変化させる。または、移相部123は、8個のアッテネータのうちの4個のアッテネータから伝送された信号の位相を変化させる。
<合成/分配部124>
合成/分配部124は、4つのch(ch1~ch4)からなるMIMO送信アンテナの信号それぞれを分配する。または、合成/分配部124は、移相部123から伝送された信号を4つのchに合成する。
例えば図4に示すように、合成/分配部124は、4個の合成/分配器で構成され、4つのch(ch1~ch4)の信号それぞれを分配する。または、合成/分配部124は、移相部123から伝送された信号を4つのchに合成する。
このようにして、制御部12は、分割したサブアレーにおいて、サブアレーを構成するアンテナ素子iに重みwiを乗算し、到来波方向に近いアンテナ素子に対して位相τiをかけて合成する。
[効果等]
以上のように、本実施の形態のアンテナ装置10によれば、変化する到来波方向に応じて、到来波方向に直交するように分割されたサブアレーの指向性を制御して複数のビームを独立に形成することができる。これにより、サブアレー配列方向の最適化により低空間相関化された、2×2以上の多素子MIMOアンテナを実現でき、多重波伝搬環境において超高速通信かつ大容量通信を行うことできる。
ところで、クラスター伝搬環境において超高速通信かつ大容量通信を行えるコネクテッドカーを実現するには、1)指向性制御による高SNR化、2)アレー配列方向の最適化による低空間相関化、3)多素子MIMOアンテナの実現が必要となる。以下では、図5を用いて、1)~3)が実現できることを説明する。
図5は、電波が+X軸方向から到来した場合のサブアレーの具体的構成例を示す図である。
電波すなわち到来波が0度(+X軸)方向から到来したとき、本実施の形態のアンテナ装置10は、図5に示すように、円形配列フェーズドアレーアンテナ1を4つのサブアレー(サブアレー1~4)に分割する。図5に示すように、サブアレー1は、アンテナ素子#2と#3、サブアレー2はアンテナ素子#1と#4、サブアレー3はアンテナ素子#5と#8、サブアレー4はアンテナ素子#6と#7によって構成される。また、サブアレー1~4それぞれを構成するアンテナ素子の配列方向は、到来波方向に対して平行となっている。
換言すると、本実施の形態のアンテナ装置10は、サブアレーを構成する各アンテナ素子に重みwiを乗算し、サブアレーを構成するアンテナ素子のうち到来波方向に近いアンテナ素子に対して位相τiをかけて合成する。この場合、サブアレーを構成するアンテナ素子は、X軸で対称となっているので、サブアレー1と4、サブアレー2と3の重みと位相は同じ値である。具体的には、サブアレー1と4においてw2=w7、w3=w6、τ2=τ7、サブアレー2と3においてw1=w8、w4=w5、τ1=τ8である。
このようにして、本実施の形態のアンテナ装置10は、円形配列フェーズドアレーアンテナ1を用いて、到来波に対して平行な2本のアンテナ素子によるフェーズドアレーを形成する。2本のアンテナ素子の指向特性はXY平面において無指向性である。そのため、サブアレーを構成するアンテナ素子間の距離d1およびd2に応じて位相差を設けて合成することによって指向性のビーム方向を制御することができる。
なお、円形配列フェーズドアレーアンテナ1の半径aが小さい場合には、サブアレーを構成するアンテナ素子間の距離が近くなるので、アンテナ素子間の相互結合により指向性が歪められる。本実施の形態では、各アンテナ素子の複素指向性に応じて、サブアレーを合成するアンテナ素子間の重みと位相とを最適化することで、ビームを到来波方向に向ける。
それにより、時々刻々と変化する到来波方向に指向性ビームを向けることができるので、本実施の形態のアンテナ装置10が円形配列フェーズドアレーアンテナ1で受信する受信信号は高SNRを実現できる。
また、到来波方向に対してアレー配列が平行な場合には受信信号の相関は高くなるのに対して、アレー配列が直交しているときは相関が低くなる。本実施の形態のアンテナ装置10では、到来波方向に対して合成するサブアレー1~4が直交して配列されているので、4つの受信信号は低相関となる。
このようにして、本実施の形態のアンテナ装置10は、第5世代移動通信において必要とされる4×4多素子MIMOアンテナを実現することができる。より具体的には、円形配列フェーズドアレーアンテナ1のアンテナ素子は、円形に配列されているので、到来波方向が変化しても合成する2つのアンテナ素子の組み合わせを45度毎に変えることで、様々な到来波方向に対応可能なサブアレーに分割できる。そして、アンテナ装置10は、到来波方向にビームを向けることで、アンテナ特性を常に高利得な状態に保つことが可能となり、超高速通信だけでなくMIMO伝送容量の向上も図れることになる。
(実施の形態2)
実施の形態2では、実施の形態1で説明した円形配列フェーズドアレーアンテナ1の円の略中心に、寄生素子を配する場合について説明する。なお、以下では、実施の形態1と異なる部分を中心に説明する。
[アンテナ装置の構成]
本実施の形態におけるアンテナ装置は、円形配列フェーズドアレーアンテナ1Aと、制御部12とを備える。
[円形配列フェーズドアレーアンテナ1A]
円形配列フェーズドアレーアンテナ1Aは、円上に等間隔に配列されたN個(Nは4以上の偶数)のアンテナ素子と、円の略中心に配された寄生素子を有する。N個のアンテナ素子それぞれは、当該円の領域を含む平面が無指向性のアンテナ素子であり、例えば、当該円の領域を含む平面と垂直に配置された所定長さのダイポールアンテナからなる。なお、ダイポールアンテナは必ずしも実際のダイポールアンテナである必要はなく、電気的に等価な動作をする等価ダイポール素子であってもよい。また、寄生素子は、当該円の領域を含む平面と垂直に配置された所定長さの金属導線からなる。なお、金属導線は必ずしも実際の金属導線である必要はなく、電気的に等価な動作をする素子であってもよい。
図6は、実施の形態2における円形配列フェーズドアレーアンテナ1Aの構成の一例を示す図である。
図6に示すように、N=8の場合には、円形配列フェーズドアレーアンテナ1Aは、半径aの円周上に45度間隔で配列された8個のアンテナ素子(#1~#8)で構成される。ここで、半径aは、例えば4.9cmである。また、寄生素子の長さは、例えば6.2cmである。
[制御部12]
なお、制御部12は、実施の形態1と同様のため、ここでの詳細な説明は省略する。
ただし、本実施の形態でも、制御部12は、円形配列フェーズドアレーアンテナ1Aを構成するアンテナ素子が8(N=8)の場合には、到来波方向に応じて、4パターンの組み合わせの一を選択する。
図7A~図7Dは、実施の形態2におけるサブアレーの到来波方向に応じた組み合わせを示す図である。
図7A~図7Dは、図3A~図3Dと比較して、円形配列フェーズドアレーアンテナ1Aの円の略中心に寄生素子が配されている点のみが異なり、組み合わせ等は同様である。すなわち、制御部12は、到来波方向のX軸に対する角度に応じて、サブアレーの組み合わせを変更することで、4つのビームを到来波方向に制御する。なお、制御部12は、到来波方向のX軸に対する22.5度、67.5度、112.5度、157.5度、202.5度、247.5度、292.5度、337.5度の角度を境にサブアレーの組み合わせを変更するとも表現できる。
[効果等]
以上のように、本実施の形態のアンテナ装置によれば、変化する到来波方向に応じて、到来波方向に直交するように分割されたサブアレーの指向性を制御して複数のビームを独立に形成することができる。これにより、サブアレー配列方向の最適化により低空間相関化された、2×2以上の多素子MIMOアンテナを実現でき、多重波伝搬環境において超高速通信かつ大容量通信を行うことができる。
図8は、電波が+X軸方向から到来した場合のサブアレーの具体的構成例を示す図である。なお、図8は、図5と比較して、円形配列フェーズドアレーアンテナ1Aの円の略中心に寄生素子が配されている点のみが異なる。
したがって、本実施の形態でも、各アンテナ素子の複素指向性に応じて、サブアレーを合成するアンテナ素子間の重みと位相とを最適化した上で、ビームを到来波方向に向ける。
それにより、本実施の形態のアンテナ装置は、受信信号の高SNR化および低相関化を実現できる。また、本実施の形態のアンテナ装置は、到来波方向が変化しても合成する2つのアンテナ素子の組み合わせを45度毎に変えることで、実施の形態1のアンテナ装置10と比較してさらにアンテナ特性を高利得な状態に保つことが可能となり、超高速通信だけでなくMIMO伝送容量の向上もさらに図れることになる。
<有効性の確認>
次に、本実施の形態に係るアンテナ装置の有効性の確認を、計算機シミュレーションを使用して行った。
<寄生素子の有効性の確認>
まず、寄生素子の有効性の確認結果について説明する。以下では、円形配列フェーズドアレーアンテナ1、1Aの半径aを4.9cm、アンテナ素子の数を共に8とした。円形配列フェーズドアレーアンテナ1Aの寄生素子の長さを6.2cmとした。また、解析周波数は2GHzとした。
図9A~図9Cおよび図10A~図10Cは、到来波方向が0度(+X軸)である場合における寄生素子を有さない円形配列フェーズドアレーアンテナ1の指向特性を示す図である。図9Aは、円形配列フェーズドアレーアンテナ1のアンテナ素子#3の指向特性を示す図である。図9Bは、円形配列フェーズドアレーアンテナ1のアンテナ素子#2の指向特性を示す図である。図9Cは、円形配列フェーズドアレーアンテナ1のサブアレー1の指向特性を示す図である。ここでサブアレー1は、到来波方向が0度(+X軸)であることから、アンテナ素子#2、#3で構成されている。また、図9Cには、アンテナ素子#2、#3に対する重みw2=0.8、w3=0.7、アンテナ素子#2に対する位相τ
2=-130度が示されており、到来波方向の指向性利得g0が3.3dBdとなることが示されている。
同様に、図10Aは、円形配列フェーズドアレーアンテナ1のアンテナ素子#4の指向特性を示す図である。図10Bは、円形配列フェーズドアレーアンテナ1のアンテナ素子#1の指向特性を示す図である。図10Cは、円形配列フェーズドアレーアンテナ1のサブアレー2の指向特性を示す図である。ここでサブアレー2は、到来波方向が0度(+X
軸)であることから、アンテナ素子#1、#4で構成されている。また、図10Cには、アンテナ素子#1、#4に対する重みw1=0.85、w4=0.15、アンテナ素子#
1に対する位相τ1=-270度が示されており、到来波方向の指向性利得g0が0.78dBdとなることが示されている。
図9Cおよび図10Cから、寄生素子を有さない円形配列フェーズドアレーアンテナ1では、到来波方向が0度である場合のサブアレー1およびサブアレー2を比較すると、サブアレー2の指向性利得はサブアレー1の指向性利得より小さくなっていることがわかる。
図11A~図11Cおよび図12A~図12Cは、到来波方向が0度(+X軸)である
場合における寄生素子を有する円形配列フェーズドアレーアンテナ1Aの指向特性を示す図である。図11Aは、円形配列フェーズドアレーアンテナ1Aのアンテナ素子#3の指向特性を示す図である。図11Bは、円形配列フェーズドアレーアンテナ1Aのアンテナ素子#2の指向特性を示す図である。図11Cは、円形配列フェーズドアレーアンテナ1Aのサブアレー1の指向特性を示す図である。ここでサブアレー1は、到来波方向が0度(+X軸)であることから、アンテナ素子#2、#3で構成されている。また、図11Cには、アンテナ素子#2、#3に対する重みw2=0.9、w3=0.65、アンテナ素子#2に対する位相τ2=-160度が示されており、到来波方向の指向性利得g0が2.46dBdとなることが示されている。
同様に、図12Aは、円形配列フェーズドアレーアンテナ1Aのアンテナ素子#4の指向特性を示す図である。図12Bは、円形配列フェーズドアレーアンテナ1Aのアンテナ素子#1の指向特性を示す図である。図12Cは、円形配列フェーズドアレーアンテナ1Aのサブアレー2の指向特性を示す図である。ここでサブアレー2は、到来波方向が0度(+X軸)であることから、アンテナ素子#1、#4で構成されている。また、図12C
には、アンテナ素子#1、#4に対する重みw1=0.65、w4=0.25、アンテナ
素子#1に対する位相τ1=-330度が示されており、到来波方向の指向性利得g0が4.11dBdとなることが示されている。
図11Cおよび図12Cから、寄生素子を有する円形配列フェーズドアレーアンテナ1Aでは、到来波方向が0度である場合のサブアレー1およびサブアレー2を比較すると、サブアレー2の指向性利得はサブアレー1の指向性利得より大きくなっていることがわかる。
また、図9Cおよび図11C、図10Cおよび図12Cをそれぞれ比較すると、寄生素子により、サブアレー1の指向性利得は若干下がっているものの、通常のダイポールアンテナの指向性利得より大きい。また、寄生素子により、サブアレー2の指向性利得は大幅に大きくなっているのがわかる。これにより、寄生素子を有する円形配列フェーズドアレーアンテナ1Aでは、すべてのサブアレー(4つのサブアレー)において高SNRが期待できるのがわかる。
図13A~図13Dは、到来波方向が0度のときの円形配列フェーズドアレーアンテナ1Aの各サブアレーの指向特性を示す図である。図13Aは、アンテナ素子#2、#3で構成されるサブアレー1の指向特性を示す図である。図13Bは、アンテナ素子#1、#4で構成されるサブアレー2の指向特性を示す図である。図13Cは、アンテナ素子#5、#8で構成されるサブアレー3の指向特性を示す図である。図13Dは、アンテナ素子#6、#7で構成されるサブアレー4の指向特性を示す図である。
図13A~図13Dにより、サブアレー1~サブアレー4それぞれにおいて、到来波方向が0度のすなわち、+x方向の指向性利得が大きくなっていることがわかる。これにより、円形配列フェーズドアレーアンテナ1Aをサブアレー1~サブアレー4に分割することで、+x方向にビームが向くようできるのがわかる。
図14A~図14Hは、到来波方向を0度から45度間隔で変化させたときのサブアレー2の指向特性を示す図である。図14Aは、到来波方向が0度のときのサブアレー2の指向特性を示す図である。図14Bは、到来波方向が45度のときのサブアレー2の指向特性を示す図である。図14Cは、到来波方向が90度のときのサブアレー2の指向特性を示す図である。図14Dは、到来波方向が135度のときのサブアレー2の指向特性を示す図である。図14Eは、到来波方向が180度のときのサブアレー2の指向特性を示す図である。図14Fは、到来波方向が225度のときのサブアレー2の指向特性を示す図である。図14Gは、到来波方向が270度のときのサブアレー2の指向特性を示す図である。図14Hは、到来波方向が315度のときのサブアレー2の指向特性を示す図である。
図14A~図14Hにより、サブアレー2は、到来波方向の指向性利得が大きくなっていることがわかる。これにより、円形配列フェーズドアレーアンテナ1Aをサブアレー1~サブアレー4に分割することで、到来波方向に応じた方向にビームが向くアンテナ放射指向性を得ることができるので、最適な送受信信号が得ることができるのがわかる。
<寄生素子の長さの確認>
円形配列フェーズドアレーアンテナ1Aにおいて、寄生素子の長さを短くすれば導波器として作用し、長くすれば反射器として作用する。そのため、以下では、円形配列フェーズドアレーアンテナ1Aが有するべき寄生素子の長さの範囲について確認した。以下でも、円形配列フェーズドアレーアンテナ1Aの半径aを4.9cm、アンテナ素子の数を8とした。また、8個のアンテナ素子(#1~#8)には、半波長ダイポールアンテナを用い、解析周波数は2GHzとした。
図15は、寄生素子の長さを変化させたときの指向性利得を示す図である。図15では、寄生素子の長さを変化させたときのアンテナ素子#1~#4の+x方向(0度方向)の指向性利得と、サブアレー1と2のメインのアンテナ素子#2、#1の平均値とが示されている。また、図15には、参考として、寄生素子を有さない円形配列フェーズドアレーアンテナ1のアンテナ素子#1~#4の+x方向(0度方向)の指向性利得の値が星型で示されている。
図15によれば、寄生素子の長さが7.5cm(半波長(0.5λ))よりも短い場合、アンテナ素子#1とアンテナ素子#2との指向性利得が向上することがわかる。さらに、寄生素子の長さが6.2cm(0.41λ)のときにアンテナ素子#1とアンテナ素子#2の0度方向の利得の平均値が最大となっているのがわかる。
これにより、長さが6.2cm(0.41λ)の寄生素子を有する円形配列フェーズドアレーアンテナ1Aでは、すべてのサブアレー(4つのサブアレー)の指向性利得(チャネル利得)が高くなることが期待できる。
<寄生素子による指向性および伝送容量の確認>
次に、寄生素子による指向性および伝送容量を確認するため、到来波方向を-20度から+20度まで変化させたときの4×4MIMO伝送容量の解析を行った。
図16は、円形配列フェーズドアレーアンテナ1Aを用いて4×4MIMOを構成する解析モデルを示す図である。
図16に示す円形配列フェーズドアレーアンテナ1Aの解析モデルは、半径a=4.9cmの円上に45度間隔で配列された8個の半波長ダイポールアンテナからなるアンテナ素子と、円の略中心に配された6.2cmの長さの寄生素子とを有する。なお、不図示だが、円形配列フェーズドアレーアンテナ1の解析モデルは、図16の寄生素子がないものに相当する。
図17は、到来波方向に応じて指向性を制御したときの4×4MIMO伝送容量を示す図である。図17に示す黒丸とそれを結ぶ線は、到来波方向に応じて各サブアレーの指向性を制御したときの解析結果である。また、図17には示す白四角とそれを結ぶ点線は、到来波方向が0度のときに最大の指向性となるように制御したときの結果である。なお、MIMO伝送容量の計算方法は公知であるのでここでの説明は省略する。ここで、XPR=50dB、SNR=30dB、解析周波数を2GHzとした。
図17より、到来波方向に応じて指向性を制御した場合(黒丸)と、0度方向の指向性が最大となるように制御した場合(白四角)との伝送容量は変化しないことがわかる。
つまり、円形配列フェーズドアレーアンテナ1Aにおいて到来波方向に応じて45度間隔でサブアレーの組み合わせを変えても、45度の中間の角度方向にビームを向ければ他の到来波角度においても高い伝送容量を維持できることがわかる。
したがって、本実施の形態のアンテナ装置では、8個のアンテナ素子からなる円形配列フェーズドアレーアンテナ1Aを用いて、円周上を8方向に離散化した(45度間隔に)到来波方向で指向性を制御しても有効であることがわかる。例えば、到来波が-22.5度から22.5度の間であるときには、当該アンテナ装置は、0度方向の利得が最大となるように各サブアレーの指向性を制御すればよいことがわかる。
図18は、寄生素子の有無と4×4MIMO伝送容量との関係を示す図である。図18に示す黒丸とそれを結ぶ線は、寄生素子を有するときにすなわち寄生素子を活用したときに、到来波方向に応じて各サブアレーの指向性を制御したときの伝送容量の解析結果である。図18に示す白四角とそれを結ぶ点線は、寄生素子が無いときに到来波方向に応じて各サブアレーの指向性を制御したときの伝送容量の解析結果である。なお、図17と同様に、XPR=50dB、SNR=30dB、解析周波数を2GHzとした。
図18に示すように、寄生素子を活用したときの伝送容量は寄生素子がない場合と比較して0.8bits/s/Hz以上向上することがわかった。したがって、寄生素子は、4×4MIMO伝送容量を増加させるのに有効であるのがわかった。
<伝送容量の向上の確認>
次に、円形配列フェーズドアレーアンテナ1Aを用いて4×4MIMOを構成したアンテナ装置の伝送容量が向上することを確認した。以下では、図16および図19に示す解析モデルを用いて、到来波方向を0度から360度まで変化させたときの4×4MIMO伝送容量の解析を行った。
図19は、比較例における半波長ダイポールを用いて4×4MIMOを構成する解析モデルを示す図である。図19に示す比較例の4×4MIMOの解析モデルは、Y軸上に等間隔(3cm)で配置した4素子半波長ダイポールアレーアンテナである。
図20は、到来波方向が変化したときの4×4MIMO伝送容量を示す図である。図20において、黒丸とそれを結ぶ線は図16に示す解析モデルの4×4MIMO伝送容量を示している。また、白四角とそれを結ぶ点線は、図19に示す比較例の解析モデルすなわちY軸上に3cm間隔で等間隔に並べた半波長ダイポールアンテナの4×4MIMO伝送容量を示している。なお、図16に示す解析モデルにおける各サブアレーの指向性は45度間隔で最適化し、XPR=50dB、SNR=30dB、解析周波数は2GHzである。
図20により、本実施の形態のアンテナ装置は、到来波方向によらず比較例よりも2bits/s/Hz以上4×4MIMO伝送容量が向上することがわかる。これは、図14A~図14Hに示したように、本実施の形態のアンテナ装置の到来波方向の利得がダイポールアンテナと比較して高いことに起因している。また、図20により、本実施の形態のアンテナ装置は、到来波方向が90度および270度のときに比較例よりも伝送容量が約10bits/s/Hz改善されていることがわかる。半波長ダイポールアレーアンテナは到来波方向に対して平行なので受信信号の相関は高くなるのに対して、本実施の形態のアンテナ装置では、到来波方向に対して直交するようにサブアレーが選択されるので相関が低くなるからである。
<円形配列フェーズドアレーアンテナ1Aの半径等の確認>
次に、円形配列フェーズドアレーアンテナ1Aの半径aを変えたときの4×4MIMO伝送容量の解析を行った。
図21は、円形配列フェーズドアレーアンテナ1Aの半径aを変えたときの4×4MIMO伝送容量を示す図である。図21において、丸とそれ結ぶ線はa=4.9cm、菱形とそれを結ぶ線はa=7cm、三角とそれを結ぶ線はa=8.5cmである場合の4×4MIMO伝送容量を示す。比較例として半波長ダイポールアレーアンテナの4×4MIMO伝送容量も示している。XPR=50dB、SNR=30dB、解析周波数は2GHzとした。
図21より、フェーズドアレーアンテナ1Aの半径aが4.9cmおよび7cmである場合の伝送容量は変化しないことがわかる。一方で、フェーズドアレーアンテナ1Aの半径a8.5cmである場合は、その半径が4.9cmであるのときと比較して1bit/s/Hz伝送容量が低下することがわかる。
これにより、フェーズドアレーアンテナ1Aの半径aは、4.9cmから7cmの範囲が適切であることがわかる。
<サブアレーの組み合わせについての確認>
次に、到来波方向が0度である場合におけるサブアレー2とサブアレー3とに合成されるアンテナ素子の組み合わせを変えたときの4×4MIMO伝送容量を解析した。
図22A~図22Cは、到来波方向が0度である場合におけるサブアレー2とサブアレー3とに合成されるアンテナ素子の組み合わせの一例である。なお、図22Aに示す組み合わせをパターン1、図22Bに示す組み合わせをパターン2、図22Cに示す組み合わせをパターン3と称し、サブアレー3はサブアレー2とX軸で線対称の組み合わせとした。また、寄生素子は送信アンテナとして機能させることができるので、図22B~図22Cでは、寄生素子は送信アンテナとして機能させてもよいとする場合の例が示されている。
図22Aに示すパターン1は、本実施の形態のアンテナ装置によるサブアレーの組み合わせに該当し、サブアレー2は、アンテナ素子#1と#4とが合成され、サブアレー3は、アンテナ素子#5と#8とが合成されている。図22Bに示すパターン2および図22Cに示すパターン3は、本実施の形態のアンテナ装置によるサブアレーの組み合わせとは異なるものに該当する。図22Bに示すパターン2では、サブアレー2は、アンテナ素子#1と#4と#9とが合成され、サブアレー3は、アンテナ素子#5と#8と#9とが合成されている。図22Cに示すパターン3では、サブアレー2は、アンテナ素子#1と#9とが合成され、サブアレー3は、アンテナ素子#8と#9とが合成されている。
図23は、サブアレー2とサブアレー3とのアンテナ素子の組み合わせを変えたときの4×4MIMO伝送容量を示す図である。丸とそれ結ぶ線は図22Aに示すパターン1、菱形とそれを結ぶ線は図22Bに示すパターン2、三角とそれを結ぶ線は図22Cに示すパターン3の4×4MIMO伝送容量を示す。比較例として半波長ダイポールアレーアンテナの4×4MIMO伝送容量も示している。XPR=50dB、SNR=30dB、解析周波数は2GHzとした。
図23により、アンテナ素子の組み合わせを変えても伝送容量に大きな違いがないことがわかる。
これにより、サブアレー2およびサブアレー3におけるアンテナ素子の組み合わせは構成が簡易なパターン1がよいため、パターン1のサブアレー2を本実施の形態等のサブアレー2とした。
以上のシミュレーション結果より、本実施の形態におけるアンテナ装置は、円形配列フェーズドアレーアンテナ1Aを用いることによって、半径が4.9cmと小型でありながら、到来波方向が変化しても各サブアレーの指向性を制御することにより高い伝送容量を維持できることがわかった。
(実施の形態3)
多重波伝搬環境において高いSNR(Signal Noise Ratio)の受信電波を得るためには、コネクテッドカーの走行によって、時々刻々と変化する到来波方向を推定し、その方向に指向性ビームを向けることが必要である。
円形配列フェーズドアレーアンテナを用いることで、多重波伝搬環境において受信電波の到来方向を高精度に検出できる方向推定装置を実現できるので、実施の形態3として以下説明する。
[方向推定装置10Cの構成]
図24は、本実施の形態における方向推定装置10Cの構成の一例を示す図である。
図24に示すように、本実施の形態における方向推定装置10Cは、円形配列フェーズドアレーアンテナ1Cと、加算部2と、演算部3とを備える。本実施の形態における方向推定装置10Cは、コネクテッドカーに搭載される。図24では、9個のアンテナ素子を有する円形配列フェーズドアレーアンテナ1Cの例が示されている。
[円形配列フェーズドアレーアンテナ1C]
円形配列フェーズドアレーアンテナ1Cは、円上に等間隔に配列されたN個(Nは3以上の自然数)の第1アンテナ素子と、当該円の略中心に配された1個の第2アンテナ素子とからなる。第1アンテナ素子それぞれと第2アンテナ素子とは、当該円の領域を含む平面が無指向性のアンテナ素子であり、例えば、当該円の領域を含む平面と垂直に配置された所定長さのダイポールアンテナからなる。なお、ダイポールアンテナは必ずしも実際のダイポールアンテナである必要はなく、電気的に等価な動作をする等価ダイポール素子であってもよい。これにより、円形配列フェーズドアレーアンテナ1Cは、当該円の領域を含む平面(水平面内)の指向特性が実質的に全方向となる。
以下、N=8の場合を例に挙げて説明する。
図25は、本実施の形態における円形配列フェーズドアレーアンテナ1Cの構成の一例を示す図である。図26は、図25に示す円形配列フェーズドアレーアンテナ1Cの具体的構成例を示す図である。
図25および図26に示すように、N=8の場合には、円形配列フェーズドアレーアンテナ1Cは、半径aの円周上に45度間隔で配列された8個のアンテナ素子(第1アンテナ素子:#1~#8)と、円の中心に配置された1個のアンテナ素子(第2アンテナ素子:#9)で構成される。ここで、半径aは、例えば4.9cmである。
そして、8個の第1アンテナ素子の受信信号を足し合わせたときの位相と、中心に配置された1個の第2アンテナ素子の受信信号の位相の差を求めることにより受信信号の到来波方向を推定できる。その推定方法について以下説明する。
図25および図26に示す円形配列フェーズドアレーアンテナ1Cの平面であるXY平面のX軸とφをなす方向から受信電波が到来するとする。この場合、受信電波によってi番目の第1アンテナ素子に誘起される信号すなわち電圧Viは、次の(式1)から算出できる。
第1アンテナ素子(#1~#8)ごとに受信のタイミングが微妙にずれるので、それを反映するために、(式2)で定義される重み関数Wiを(式1)から算出した電圧Viにかけて重み付けする。
そして、円上の全第1アンテナ素子の信号を足し合わせれば、8個の第1アンテナ素子それぞれの受信信号の合計である第1信号の電圧EΔを得ることができる。この第1信号の電圧EΔは、(式3)から算出できる。
ここで、(式3)に示される要素は8であるが、第1信号の電圧EΔの性質を理解するために第1アンテナ素子の数が無限個になった場合を考察すると、電圧EΔはベッセル関数を用いて以下の(式4)で表すことができる。
また、X軸とφをなす方向から到来する受信電波によって第2アンテナ素子(#9)に誘起される信号(第2信号)の電圧をEΩとする。さらに、第2信号の電圧EΩの位相角を∠EΩ、第1信号の電圧EΔの位相角を∠EΔとすれば、位相差φmは以下の(式5)を用いて算出することができる。
したがって、第1信号と第2信号との位相差φmは、受信電波の到来波角度φにほぼ比例した値となっているのがわかる。このようにして、円形配列フェーズドアレーアンテナ1Cを用いることで、到来波方向を推定できる。
[加算部2]
加算部2は、第1アンテナ素子それぞれの受信信号を加算して第1信号を算出する。加算部2は、算出した第1信号を演算部3に出力する。
図27は、本実施の形態の加算部2の具体的構成の一例を示す図である。なお、図1および図27では、円形配列フェーズドアレーアンテナ1Cを構成する第1アンテナ素子(#1~#8)にはそれぞれ移相器が接続されている。第1アンテナ素子(#1~#8)はそれぞれ、その配置により到来波の受信のタイミングが異なるので、それを反映した移相器が接続された図としている。図24に示す第1アンテナ素子(#1~#8)では、図25および図26で示すX軸方向を基準としたときの第1アンテナ素子(#1~#8)の配置に応じた重みに相当するπ/8、3π/8、5π/8、7π/8、9π/8、11π/8、13π/8、15π/8の移相器が接続されている。
加算部2は、例えばウィルキンソン電力合成器とラットレースハイブリッドとを用いて、例えば図27に示すような構成で実現することができる。図27に示す第1アンテナ素子(#1~#8)では、加算部2には180°haybridが用いられることから、第1アンテナ素子(#1~#8)の配置に応じた重みに相当するπ/8、3π/8、5π/8、7π/8、π/8、3π/8、5π/8、7π/8の移相器が接続されている。
なお、加算部2は、後述する演算部3に含まれるとしてもよい。
[演算部3]
演算部3は、第1アンテナ素子それぞれの受信信号を第1アンテナ素子の配置に応じた重みをかけて合計した第1信号と、第2アンテナ素子の受信信号である第2信号とを統計解析し、第1信号および第2信号の位相差を算出する。位相差は、到来波方向に略比例する。このようにして、演算部3は、円形配列フェーズドアレーアンテナ1Cに到来する到来波の方向である到来波方向を推定する。
演算部3は、第1信号の位相角と第2信号の位相角との差を算出することで、第1信号および前記第2信号の位相差を算出する。
より具体的には、演算部3は、所定時間の第1信号における同相成分および直交成分の平均値である第1同相平均値(UI)および第1直交平均値(UQ)を算出し、かつ、所定時間の第2信号における同相成分および直交成分の平均値である第2同相平均値(UI)および第2直交平均値(UQ)を算出することで、第1信号と第2信号とを統計解析する。そして、演算部3は、第1信号の位相角を第1同相平均値および第1直交平均値から算出し、第2信号の位相角を第2同相平均値および第2直交平均値から算出する。
ここで、演算部3は、加算部2から、第1信号を所定時間取得し、第2信号を所定時間取得する。
本実施の形態では、演算部3は、加算部2から8個の第1アンテナ素子の信号の合計である第1信号を取得し、第2アンテナ素子から、第2信号を取得する。
以下、演算部3が取得した受信信号(第1信号および第2信号)を統計解析することで、多重波伝搬環境において受信電波の到来波方向を推定できる理由について説明する。
<統計解析による到来波方向推定が可能な理由>
ところで、特許文献2に開示されるアンテナ装置は、リアルタイムに到来波方向を得ることができる。これは、当該アンテナ装置を主に航空機に搭載することを目的とし、上空においては反射物が存在しないことから、直接波のみが到来する伝搬環境を前提としているからである。しかし、特許文献2に開示されるアンテナ装置を地上において使用する際、地上ではビルや樹木などの地物が存在するので、反射した電波も当該アンテナに到来する。そして直接波のみならず反射波が存在する多重波伝搬環境ではフェージングによって受信信号が大きく変動する。つまり、特許文献2に開示されるアンテナ装置では、伝搬環境が直接波のみの通信環境であれば、一意に到来波方向を得ることができるが、多重波伝搬環境ではフェージングによって受信信号が大きく変動するので、一意に到来波方向を得ることができない。
それに対して、本実施の形態の方向推定装置10Cは、例えばコネクテッドカーに搭載される。そして、コネクテッドカーに搭載される場合、方向推定装置10Cがおかれる通信環境は、通信相手が見通せ、かつ通信相手との距離が近いことから、見通し内伝搬環境(LOS(Line Of Sight)環境)となる。
見通し内通信では、直接波の受信信号の減衰確率が低く、信号伝送特性の劣化がレイリー波と比較して小さくなる。このような反射波に比べ直接波の受信信号のレベルが大きい伝搬環境は、仲上-ライスフェージング(ライス伝搬環境)と呼ばれる。
図28は、仲上-ライスフェージングの確率分布を示す図である。
図28に示すように、ライス伝搬環境における受信波r(t)は、レイリー波r´にレベルの高い安定した直接波Cを加えたもので表現できる。なお、直接波Cは時間的に変化しない一定の波を表すことになるため定常波とも呼ばれる。
直接波Cとレイリー波r´とが合成された受信波r(t)は、直接波とN個の素波rn(t)の和として、(式6)のように与えることができる。
ここで、
は、直接波Cの振幅を示す。また、x(t)とy(t)とは、それぞれレイリー波r´の複素包絡線の同相成分と直交成分とである。
そして、直接波Cの先端を基準にすれば、x[x(t)の値]とy[y(t)の値]との結合確率密度関数p(x,y)は、x(t)とy(t)との値が互いに独立で、ともに平均値0、分散σs
2の正規分布に従うと考えられる。したがって、結合確率密度関数p(x,y)は、(式7)のように表すことができる。
ここで、図28より、x(t)=x´(t)-A、y(t)=y´(t)-Bであるから、x´[x´(t)の値]とy´[y´(t)の値]の結合確率密度関数p(x´,y´)は、(式8)のように表すことができる。
図29は、本実施の形態における多重波環境の受信信号のIQ値の一例を示す図である。
図29に示すように、本実施の形態における方向推定装置10Cが受信する多重波環境下の受信信号の同相(In-Phase)成分と直交(Quadrature-Phase)成分との確率密度関数は、対称的なベル型の曲線であるガウス分布となる。つまり、方向推定装置10Cが受信する個々の受信信号(各スナップショット信号)は変動するが、その同相成分と直交成分とは固有の平均値を有する。換言すると、方向推定装置10Cが受信する個々の受信信号の同相成分と直交成分との平均値は一定値(μI、μQ)となる。
したがって、同相成分と直交成分とにおいて各成分の確率密度関数より平均値(μI、μQ)を演算すれば、以下の(式9)を用いて、第1信号の電圧EΔの位相角∠EΔと、第2信号の電圧EΩの位相角∠EΩとを個別に演算することができる。
以上から、円上に等間隔に配列された第1アンテナ素子(#1~#8)すべての受信信号を足し合わせた第1信号の電圧EΔの位相角と、円の中心に配置された第2アンテナ素子(#9)に誘起される第2信号の電圧EΩの位相角とは、それぞれの受信信号である第1信号および第2信号を統計解析することにより上記の(式9)を用いて演算できる。したがって、(式5)に、(式9)を用いて演算したそれぞれの位相角を代入すれば到来波方向である角度φを算出することができる。
[方向推定装置の動作]
次に、以上のように構成された方向推定装置10Cの動作について説明する。
図30は、本実施の形態における方向推定装置10Cの動作概要を示すフローチャートである。まず、方向推定装置10Cは、第1アンテナ素子それぞれの受信信号の合計である第1信号と、第2アンテナ素子の受信信号である第2信号とを統計解析する(S2)。次に、方向推定装置10Cは、第1信号と第2信号との位相差を算出する(S3)。
そして、方向推定装置10Cは、S3で算出した位相差を用いて、円形配列フェーズドアレーアンテナ1Cに到来した到来波の到来波方向を推定する(S4)。
図31は、本実施の形態における方向推定装置10Cの動作の詳細を示すフローチャートである。図31は、図30に示す動作の詳細に該当する。
まず、方向推定装置10Cは、第1アンテナ素子の合計信号電圧(第1信号)と、第2アンテナ素子の信号電圧(第2信号)とを所定時間取得する(S1)。
次に、方向推定装置10Cは、円形配列フェーズドアレーアンテナ1Cが受信した受信信号を統計解析する(S2)。より詳細には、S2において、方向推定装置10Cは、所定時間の第1信号における同相成分および直交成分それぞれの平均値(μI、μQ)を算出する(S21)。続いて、所定時間の第2信号における同相成分および直交成分それぞれの平均値(μI、μQ)を算出する(S22)。なお、S21およびS22の処理の順番は逆でもよい。
次に、方向推定装置10Cは、第1信号と第2信号との位相差を算出する(S3)。より詳細には、S3において、方向推定装置10Cは、S21で算出した所定時間の第1信号における同相成分および直交成分それぞれの平均値(μI、μQ)から、第1信号の位相角∠EΔを算出する(S31)。続いて、方向推定装置10Cは、S22で算出した所定時間の第2信号における同相成分および直交成分それぞれの平均値(μI、μQ)から、第2信号の位相角∠EΩを算出する(S32)。なお、S21およびS22の処理の順番は逆でもよい。続いて、方向推定装置10Cは、S31およびS32で算出した第1信号の位相角∠EΔと第2信号の位相角∠EΩとの差を算出することで、第1信号と第2信号との位相差を算出する(S32)。
次に、方向推定装置10Cは、第1信号と第2信号との位相差が円形配列フェーズドアレーアンテナ1Cに対する到来波方向に略比例することから、S3で算出した位相差を用いて、到来波方向を推定する(S4)。
[効果等]
以上のように、本実施の形態の方向推定装置10C等によれば、多重波伝搬環境において受信電波の到来方向を高精度に検出できる。
具体的には、本実施の形態の方向推定装置10Cは、円上に等間隔に配列されたN個(Nは3以上の自然数)の第1アンテナ素子と、円の略中心に配された1個の第2アンテナ素子とからなる円形配列フェーズドアレーアンテナ1Cを用いて、第1アンテナ素子それぞれの受信信号の合計である第1信号と、第2アンテナ素子の受信信号である第2信号とを統計解析し、第1信号および第2信号の位相差を算出することにより、到来波方向を推定する。
ここで、本実施の形態の方向推定装置10Cは、所定時間の第1信号における同相成分および直交成分それぞれの平均値を算出し、かつ、所定時間の第2信号における同相成分および直交成分それぞれの平均値を算出することで、第1信号と第2信号とを統計解析する。そして、第1信号の位相角を算出した同相成分および直交成分それぞれの平均値から算出し、第2信号の位相角を算出した同相成分および直交成分それぞれの平均値から算出する。
このようにして、本実施の形態の方向推定装置10C等は、多重波伝搬環境において時々刻々と変化する到来波の直接波の到来波方向を高精度で推定することができる。それにより、方向推定装置10C等を搭載したコネクテッドカーは、推定した到来波方向にビームを向けて常時最適な受信信号を得られるので、携帯電話基地局や他自動車間との通信を安定的に行える。
(実施の形態4)
実施の形態2におけるアンテナ装置は、円形配列フェーズドアレーアンテナ1Aを用いることで、実施の形態3で説明した方向推定方法も行うことができる。以下、この場合を実施の形態4として説明する。なお、以下では、実施の形態2と異なる部分を中心に説明する。
[アンテナ装置の構成]
図32は、本実施の形態におけるアンテナ装置100の構成の一例を示す図である。図1、図4等と同様の要素には同一の符号を付しており、詳細な説明は省略する。
図32に示すように、本実施の形態におけるアンテナ装置100は、円形配列フェーズドアレーアンテナ1Dと、制御部12Dと、到来波方向推定部10Dと、切り替え部30とを備える。本実施の形態におけるアンテナ装置100は、例えばコネクテッドカーに搭載される。図32では、8個のアンテナ素子(#1~#8)と1個のアンテナ素子(#9)として機能する寄生素子とを有する円形配列フェーズドアレーアンテナ1Dの例が示されている。
[円形配列フェーズドアレーアンテナ1D]
円形配列フェーズドアレーアンテナ1Dは、円上に等間隔に配列されたN個(Nは4以上の偶数)のアンテナ素子と、円の略中心に配されたアンテナ素子として機能する寄生素子を有する。N個のアンテナ素子それぞれは、当該円の領域を含む平面が無指向性のアンテナ素子であり、例えば、当該円の領域を含む平面と垂直に配置された所定長さのダイポールアンテナからなる。なお、ダイポールアンテナは必ずしも実際のダイポールアンテナである必要はなく、電気的に等価な動作をする等価ダイポール素子であってもよい。また、寄生素子は、当該円の領域を含む平面と垂直に配置された所定長さの金属導線からなる。なお、金属導線は必ずしも実際の金属導線である必要はなく、電気的に等価な動作をする素子であってもよい。
つまり、円形配列フェーズドアレーアンテナ1Dは、実施の形態2の円形配列フェーズドアレーアンテナ1Aと比較して、円の略中心に配された寄生素子が、到来波方向を推定するためのアンテナ素子として用いられる点が異なる。
図33は、実施の形態4における円形配列フェーズドアレーアンテナ1Dの構成の一例を示す図である。
図33に示すように、N=8の場合には、円形配列フェーズドアレーアンテナ1Dは、半径aの円周上に45度間隔で配列された8個のアンテナ素子(#1~#8)と、円の略中心に配され、アンテナ素子として機能する寄生素子とで構成される。ここで、半径aは、例えば4.9cmである。また、寄生素子の長さは、例えば6.2cm(0.41λ)である。
以下では、円形配列フェーズドアレーアンテナ1DのXY平面においてX軸に対してφの角度で到来波が到来する場合を例に挙げて説明する。
[切り換え部30]
切り換え部30は、円形配列フェーズドアレーアンテナ1Dとの接続を、到来波方向推定部10Dおよび制御部12Dのうちの一方に切り換える。切り換え部30は、例えばスイッチ回路で構成される。
[制御部12D]
制御部12Dは、切り換え部30により、円形配列フェーズドアレーアンテナ1Dとの接続が、制御部12Dに切り換えられている間に、到来波方向推定部10Dにより推定された到来波方向に応じて、N/2個のサブアレーに分割し、サブアレーの指向性を制御する。
なお、制御部12Dは、実施の形態2の制御部12と比較して、切り換え部30により円形配列フェーズドアレーアンテナ1Dと制御部12とが接続されているときに、到来波方向を到来波方向推定部10Dから取得する点が異なる。なお、サブアレーの組み合わせを変更することで到来波方向に応じてN/2個のサブアレーに分割し、サブアレーの指向性を制御する等のその他の動作は、実施の形態2で説明した通りであるのでここでの説明は省略する。
図34は、本実施の形態の切り換え部30および制御部12Dの具体的構成の一例を示す図である。
図34に示すように、切り換え部30は、複数のスイッチで構成されるスイッチ回路を有する。切り換え部30が、円形配列フェーズドアレーアンテナ1Dとの接続を、到来波方向推定部10Dに切り換えている場合には、組み合わせ変更部121Dは、すべての接続をOFFにする。また、切り換え部30が、円形配列フェーズドアレーアンテナ1Dとの接続を、制御部12Dに切り換えている場合には、組み合わせ変更部121Dは、到来波方向に応じて複数のスイッチのON、OFFの組み合わせを切り換えることで、減算部122と接続する8個のアンテナ素子の組み合わせを変更する。
[到来波方向推定部10D]
到来波方向推定部10Dは、N個のアンテナ素子それぞれの受信信号をN個のアンテナ素子の配置に応じた重みをかけて合計した第1信号(EΔ)と、寄生素子の受信信号である第2信号(EΩ)とを統計解析し、第1信号および第2信号の位相差を算出することにより、到来波方向を推定する。位相差は、当該到来波方向に略比例する。
また、到来波方向推定部10Dは、切り換え部30により、円形配列フェーズドアレーアンテナ1Dとの接続が、到来波方向推定部10Dに切り換えられている間に、第1信号の位相角と第2信号の位相角との差を算出することで、第1信号および第2信号の位相差を算出する。
さらに、到来波方向推定部10Dは、所定時間の第1信号における同相成分および直交成分の平均値である第1同相平均値(UI)および第1直交平均値(UQ)を算出し、かつ、所定時間の第2信号における同相成分および直交成分の平均値である第2同相平均値(UI)および第2直交平均値(UQ)を算出することで、第1信号と第2信号とを統計解析する。そして、到来波方向推定部10Dは、第1信号の位相角を第1同相平均値および第1直交平均値から算出し、第2信号の位相角を第2同相平均値および第2直交平均値から算出する。詳細は実施の形態3で説明した通りであるので、ここでの説明は省略する。
図35は、本実施の形態における到来波方向推定部10Dの構成の一例を示す図である。図35に示すように、本実施の形態における到来波方向推定部10Dは、加算部2と、演算部3と、移相部101Dとを備える。到来波方向推定部10Dは、実施の形態3の方向推定装置10Cと比較して、円形配列フェーズドアレーアンテナ1Cを備えておらず、円形配列フェーズドアレーアンテナ1Cの移相器のみを移相部101Dとして備えている点が異なる。その他の構成については同様である。これは、切り換え部30を介して円形配列フェーズドアレーアンテナ1Dと接続することになるからである。個々の構成要素については実施の形態3で説明した通りであるのでここでの説明は省略する。
[効果等]
以上、本実施の形態の方向推定装置100によれば、所定時間の受信信号における同相成分および直交成分の平均値を用いることで、円形配列フェーズドアレーアンテナ1Dを利用して多重波伝搬環境において反射波の影響なく直接波の到来波方向を高精度に検出できる。
そして、本実施の形態のアンテナ装置100によれば、推定した到来波方向に応じて、到来波方向に直交するように分割されたサブアレーの指向性を制御して複数のビームを独立に形成することができる。これにより、サブアレー配列方向の最適化により、指向性走査による高SNR化かつ低空間相関化された、2×2以上の多素子MIMOアンテナを実現でき、多重波伝搬環境において超高速通信かつ大容量通信を行うことできる。
図36は、電波が+X軸方向から到来した場合のサブアレーの具体的構成例を示す図である。なお、図36は、図8と比較して、円形配列フェーズドアレーアンテナ1Dを用いて、到来波方向の推定をさらに行っている点のみが異なる。
したがって、本実施の形態でも、各アンテナ素子の複素指向性に応じて、サブアレーを合成するアンテナ素子間の重みと位相とを最適化した上で、ビームを推定した到来波方向に向ける。
それにより、本実施の形態のアンテナ装置100は、受信信号の高SNR化および低相関化を実現できる。また、本実施の形態のアンテナ装置100は、高精度で変化する到来波方向を推定でき、高い伝送容量を維持しながら、推定した到来波方向に応じて合成する2つのアンテナ素子の組み合わせを45度毎に変えることができる。したがって、本実施の形態のアンテナ装置100によれば、超高速通信だけでなくMIMO伝送容量の向上も図ることができる。
(実施の形態5)
実施の形態1、2では、1つの円形配列フェーズドアレーアンテナ1、1Aを用いて2×2以上の多素子MIMOアンテナを実現することについて説明したが、これに限らない。
2以上の円形配列フェーズドアレーアンテナ1、1Aを用いて、2×2以上の多素子MIMOアンテナを実現してもよい。以下では、2つの円形配列フェーズドアレーアンテナ1Aを用いて、8×8MIMOアンテナを実現する構成等について実施の形態5として説明する。
[アンテナ装置の構成]
本実施の形態におけるアンテナ装置は、組み合わせ円形配列フェーズドアレーアンテナ1Eと、制御部12とを備える。
[組み合わせ円形配列フェーズドアレーアンテナ1E]
組み合わせ円形配列フェーズドアレーアンテナ1Eは、2以上の円形配列フェーズドアレーアンテナから構成され、8×8MIMOアンテナなど多素子MIMOアンテナを実現する。
図37は、実施の形態5における組み合わせ円形配列フェーズドアレーアンテナ1Eの構成の一例を示す図である。
図37に示すように、組み合わせ円形配列フェーズドアレーアンテナ1Eは、Y軸上に間隔D離して配置された2つの円形配列フェーズドアレーアンテナ1Aで構成される。図37の##1、##2で示される2つの円形配列フェーズドアレーアンテナ1Aのそれぞれは実施の形態2で説明した通りである。すなわち、##1、##2で示される2つの円形配列フェーズドアレーアンテナ1Aのそれぞれは、半径aの円周上に45度間隔で配列された8個のアンテナ素子(#1~#8)で構成され、円の略中心に配された寄生素子を有している。8個のアンテナ素子(#1~#8)は、例えば8つの半波長ダイポールアンテナで構成される。ここで、半径aは例えば4.9cmであり、間隔Dは例えば24cmである。また、半波長ダイポールアンテナは、例えば素子長7.5cmからなる。
[制御部12]
制御部12は、2以上の円形配列フェーズドアレーアンテナ1Aのそれぞれにおいて、到来波方向に向いたN/2個のビームを独立に形成する。本実施の形態ではNが8の場合を例に挙げて説明する。なお、制御部12は、その他について、実施の形態1および2と同様のため、詳細な説明を省略する。
[効果等]
以上のように、本実施の形態に係るアンテナ装置によれば、変化する到来波方向に応じて、到来波方向に直交するように分割されたサブアレーの指向性を制御して複数のビームを独立に形成することができる。これにより、8×8MIMOアンテナなど多素子MIMOアンテナを実現でき、多重波伝搬環境において超高速通信かつ大容量通信を行うことができる。
なお、本実施の形態では、2つの円形配列フェーズドアレーアンテナ1Aそれぞれの変化する重みと位相とを実施の形態1で説明した最適化後の重みと位相とし、間隔Dを例えば24cmとしている。これにより、実施の形態3で説明した円形配列フェーズドアレーアンテナ1Aの構成等を変更せずに、8×8MIMOアンテナを実現できる。
また、2つの円形配列フェーズドアレーアンテナ1Aを用いて、8×8MIMOアンテナを実現する場合の例について説明したが、2つの円形配列フェーズドアレーアンテナ1を用いて、8×8MIMOアンテナを実現してもよい。以下も同様である。
<応用例>
図38は、本実施の形態におけるアンテナ装置が車両300に搭載された場合の概念図を示す図である。車両300は、例えばコネクテッドカーであり、ICT端末としての機能を有する自動車である。
図38に示すように、組み合わせ円形配列フェーズドアレーアンテナ1Eは、車両300のルーフ上に搭載される。より具体的には、実施の形態のアンテナ装置すなわち図37の##1、##2で示される2つの円形配列フェーズドアレーアンテナ1Aで構成される組み合わせ円形配列フェーズドアレーアンテナ1Eは、車両300のルーフ上に搭載される。これにより、到来波方向に応じて、到来波方向に直交するように8つに分割されたサブアレーの指向性を制御して複数のビームを独立に形成することできる。つまり、実施の形態3で説明した円形配列フェーズドアレーアンテナ1Aの構成等を変更せずに、車両300に搭載可能な8×8MIMOアンテナを実現できる。
<有効性の確認>
次に、本実施の形態に係るアンテナ装置の有効性の確認を、計算機シミュレーションを使用して行った。
組み合わせ円形配列フェーズドアレーアンテナ1Eにおいて、##1、##2で示される2つの円形配列フェーズドアレーアンテナ1Aの間隔が近すぎる場合、両者の間に発生する電磁的な相互結合の影響を受ける。そして、この場合、各サブアレーの指向性が変化してしまうので、到来波方向にビームを向けることができない。そこで、本実施の形態に係るアンテナ装置において、##1、##2で示される2つの円形配列フェーズドアレーアンテナ1Aの間隔が、電磁的な相互結合の影響を低減できるよう設計されているかを確認した。
<間隔Dおよび指向性の確認>
図39Aは、実施の形態5における間隔Dを変化させたときのサブアレー1の指向性を示す図である。図39Aでは、到来波方向を270度(Y軸の-方向)とし、実線は間隔D=24cm、点線はD=12cm、細実線は、##12で示される円形配列フェーズドアレーアンテナ1Aのときの解析結果を示している。図39Bは、実施の形態5における組み合わせ円形配列フェーズドアレーアンテナ1Eにおけるサブアレー1を示す図である。
ここで、図39Bには、組み合わせ円形配列フェーズドアレーアンテナ1Eを構成する2つの円形配列フェーズドアレーアンテナ1Aのうちの一方(##1)におけるサブアレー1が点線囲いで示されている。本実施の形態に係るアンテナ装置は、到来波方向が270度であるとき、高SNRと低相関とを実現するためにアンテナ素子#1、#8で構成されるサブアレー1を選択するからである。なお、アンテナ素子#1、#8に対する重みをw1=0.65、w8=0.9とし、位相τs=-160度としている。
図39Aより、円形配列フェーズドアレーアンテナ1Aは、電磁的な相互結合の影響が低減されており、2.5dBdの利得を実現できているのがわかる。一方、組み合わせ円形配列フェーズドアレーアンテナ1Eは、y方向に2組の円形配列フェーズドアレーアンテナ1Aが配置されることで到来波方向の利得が0dBd以下に減少していることがわかる。
<間隔Dと伝送容量との関係の確認>
図40は、実施の形態5における間隔Dと8×8MIMO伝送容量との関係を示す図である。図40において黒丸とそれを結ぶ実線は、到来波方向が0度(+X軸)のときの8×8MIMO伝送容量をモンテカルロ解析した結果を示している。同様に、黒四角とそれを結ぶ点線は到来波方向が45度のときの、黒三角とそれを結ぶ細線は到来波方向が90度のときの、8×8MIMO伝送容量をモンテカルロ解析した結果を示している。なお、XPR=50dB、SNR=30dB、解析周波数は2GHz、到来波の広がり角度を30度とした。
図40より、間隔Dが狭いときには伝送容量が劣化し、間隔Dが24cm以上になると伝送容量が収束していることがわかる。ところで、アンテナシステムにはできるだけ小型が望まれるので、本実施の形態では間隔Dを24cmとして説明している。
<伝送容量の向上の確認>
次に、組み合わせ円形配列フェーズドアレーアンテナ1Eを用いて8×8MIMOを構成したアンテナ装置の伝送容量が向上することを確認した。以下では、到来波方向を0度から360度まで変化させたときの8×8MIMO伝送容量の解析を行った。
図41は、比較例における半波長ダイポールを用いて8×8MIMOを構成する解析モデルを示す図である。図41に示す比較例の8×8MIMOの解析モデルは、Y軸上に等間隔(3cm)で配置した4素子半波長ダイポールアレーアンテナ2組からなる8素子半波長ダイポールアレーアンテナである。2組の4素子半波長ダイポールアレーアンテナの間の距離Drefは、24cmとした。なお、本実施の形態のアンテナ装置の解析モデルは、図37に示したものと同様であるので、図示を省略している。なお、実施の形態のアンテナ装置の解析モデルでは、半径aを4.9cm、間隔Dを24cmとしている。そのため、例えばアンテナ素子#2、#7の距離は9cmとなる。
図42は、実施の形態5における到来波方向が変化したときの8×8MIMO伝送容量を示す図である。図42において、黒丸とそれを結ぶ線は、図37に示す本実施の形態のアンテナ装置の解析モデルの8×8MIMO伝送容量を示している。また、黒四角とそれを結ぶ点線は、図41に示す比較例の解析モデルすなわちY軸上配置した8素子半波長ダイポールアレーアンテナの8×8MIMO伝送容量を示している。なお、図42においても、XPR=50dB、SNR=30dB、解析周波数は2GHzとしている。
図42より、本実施の形態のアンテナ装置は、到来波方向によらず安定して70bits/s/Hzの超高速通信を実現できることがわかる。また、本実施の形態のアンテナ装置は、比較例に対して到来波角度が0度および180度のときに11bits/s/Hz、90度および270度のときに27bits/s/Hz、8×8伝送容量が向上することがわかる。
以上のシミュレーション結果より、本実施の形態におけるアンテナ装置は、組み合わせ円形配列フェーズドアレーアンテナ1Eを用いることによって、小型でありながら、到来波方向が変化しても各サブアレーの指向性を制御することにより高い伝送容量を維持できることがわかった。
(変形例1)
実施の形態5では、2つの円形配列フェーズドアレーアンテナ1Aを用いて、8×8MIMOアンテナを実現する場合の例について説明したが、これに限らない。さらに多くの円形配列フェーズドアレーアンテナ1Aを組み合わせることで16×16MIMOアンテナなどの多素子MIMOアンテナを構成してもよい。以下では、複数の円形配列フェーズドアレーアンテナ1Aを用いて、16×16MIMOアンテナおよび32×32MIMOアンテナを実現する構成について、変形例1として説明する。
[アンテナ装置の構成]
本変形例におけるアンテナ装置は、組み合わせ円形配列フェーズドアレーアンテナ1Fまたは1Gと、制御部12(不図示)と、演算部3(不図示)とを少なくとも備える。
[本変形例の組み合わせ円形配列フェーズドアレーアンテナ]
本変形例の組み合わせ円形配列フェーズドアレーアンテナは、5以上の円形配列フェーズドアレーアンテナから構成され、多素子MIMOアンテナを実現する。
<組み合わせ円形配列フェーズドアレーアンテナ1F>
図43は、変形例1における組み合わせ円形配列フェーズドアレーアンテナ1Fの構成の一例を示す図である。図43に示すように、組み合わせ円形配列フェーズドアレーアンテナ1Fは、中心位置に配置された円形配列フェーズドアレーアンテナ1Cと、周りに円状に略等間隔に配置された4つの円形配列フェーズドアレーアンテナ1A(##1~##4)とで構成される。
円形配列フェーズドアレーアンテナ1Cは、実施の形態3で説明した通りの構成であり、到来波を推定するためだけに用いられる。円形配列フェーズドアレーアンテナ1Cは、円上に等間隔に配列されたM個(Mは3以上の自然数)の第1アンテナ素子と、当該円の略中心に配された1個の第2アンテナ素子とからなる。本変形例ではMが8の場合を例示している。
4つの円形配列フェーズドアレーアンテナ1Aは、実施の形態2で説明した通りの構成であり、16×16MIMOアンテナを実現し高速通信を行うために用いられる。##1~##4で示される4つの円形配列フェーズドアレーアンテナ1Aはそれぞれ、変化する到来波方向に応じて、到来波方向に直交するようにサブアレーに分割されて指向性が制御されることで複数のビーム(指向性ビーム)を独立に形成する。
<組み合わせ円形配列フェーズドアレーアンテナ1G>
図44は、変形例1における組み合わせ円形配列フェーズドアレーアンテナ1Gの構成の一例を示す図である。なお、図43と同様の要素には同一の符号を付しており、詳細な説明は省略する。
図44に示すように、組み合わせ円形配列フェーズドアレーアンテナ1Gは、中心位置に配置された円形配列フェーズドアレーアンテナ1Cと、この周りに円状に略等間隔に配置された8つの円形配列フェーズドアレーアンテナ1A(##1~##8)とで構成される。
円形配列フェーズドアレーアンテナ1Cは、組み合わせ円形配列フェーズドアレーアンテナ1Fと同様に、到来波を推定するためだけに用いられる。##1~##8で示される8つの円形配列フェーズドアレーアンテナ1Aは、32×32MIMOアンテナを実現し高速通信を行うために用いられる。##1~##8で示される8つの円形配列フェーズドアレーアンテナ1Aもそれぞれ、変化する到来波方向に応じて、到来波方向に直交するようにサブアレーに分割されて指向性が制御されることで複数のビーム(指向性ビーム)を独立に形成する。
[演算部3]
演算部3は、第1アンテナ素子それぞれの受信信号を第1アンテナ素子の配置に応じた重みをかけて合計した第1信号と、第2アンテナ素子の受信信号である第2信号とを統計解析し、第1信号および第2信号の位相差を算出する。位相差は、到来波方向に略比例する。このようにして、演算部3は、円形配列フェーズドアレーアンテナ1Fに到来する到来波の方向である到来波方向を推定する。なお、演算部3は、その他について実施の形態3と同様のため、詳細な説明は省略する。
[制御部12]
制御部12は、複数の円形配列フェーズドアレーアンテナ1Aのそれぞれにおいて、到来波方向に向いたN/2個のビームを独立に形成する。本変形例ではNが8である場合について説明する。なお、制御部12は、その他について実施の形態1および2と同様のため、詳細な説明を省略する。
[効果等]
以上のように、本変形例に係るアンテナ装置は、4以上の偶数個の円形配列フェーズドアレーアンテナ1Aと、1個の円形配列フェーズドアレーアンテナ1Cとを備え、4以上の円形配列フェーズドアレーアンテナ1Aは、円形配列フェーズドアレーアンテナ1Cを中心とした円状に略等間隔に配置される。
第5世代通信すなわち5Gでは、送受信側に8本のアンテナを使う8×8MIMOが規定されている。そして、将来的には更なる高速通信を実現するために、16×16MIMOなど多素子MIMOの導入が予想される。従って、将来の多素子MIMOに対応できるアンテナ装置を開発する必要がある。
それに対して、本変形例に係るアンテナ装置は、4以上の偶数個の円形配列フェーズドアレーアンテナ1Aと、1個の円形配列フェーズドアレーアンテナ1Cとを備え、4以上の円形配列フェーズドアレーアンテナ1Aは、円形配列フェーズドアレーアンテナ1Cを中心とした円状に略等間隔に配置される。
これにより、本変形例に係るアンテナ装置は、円形配列フェーズドアレーアンテナ1Aの構成を変更せずに個数を増やすだけで、8×8MIMOアンテナだけでなく、16×16MIMOアンテナ、32×32MIMOアンテナなどの多素子MIMOアンテナを実現できる。さらに、本変形例に係るアンテナ装置は、1個の円形配列フェーズドアレーアンテナ1Cを備えることで、到来波方向を推定する機能も実現できる。
さらに、4以上の偶数個の円形配列フェーズドアレーアンテナ1Aの間隔を最適配置することで、実施の形態5で説明したように、円形配列フェーズドアレーアンテナ1A間の相互結合による影響も低減させることができる。
なお、本変形例に係るアンテナ装置は、4以上の偶数個の円形配列フェーズドアレーアンテナ1Aを用いるとして説明したが、4以上の偶数個の円形配列フェーズドアレーアンテナ1を用いてもよい。以下の変形例2でも同様のことがいえる。
(変形例2)
変形例1において、複数の円形配列フェーズドアレーアンテナ1Aのそれぞれは、到来波方向に応じて、到来波方向に直交するようにサブアレーに分割されて指向性が制御されることで、複数の指向性ビームを独立に形成すると説明したが、これに限らない。
複数の円形配列フェーズドアレーアンテナ1Aのそれぞれの指向性ビームの方向を固定し、到来波方向に応じて、到来波方向に直交する指向性ビームを有する円形配列フェーズドアレーアンテナ1Aを選択するとしてもよい。以下、この場合について、変形例2として説明する。
[アンテナ装置の構成]
本変形例におけるアンテナ装置は、組み合わせ円形配列フェーズドアレーアンテナ1Faまたは1Gaと、制御部22と、演算部3(不図示)とを少なくとも備える。以下では、変形例1と異なる点を中心に説明する。
[本変形例の組み合わせ円形配列フェーズドアレーアンテナ]
本変形例の組み合わせ円形配列フェーズドアレーアンテナは、5以上の円形配列フェーズドアレーアンテナから構成され、多素子MIMOアンテナを実現する。
<組み合わせ円形配列フェーズドアレーアンテナ1Fa>
図45は、変形例2における組み合わせ円形配列フェーズドアレーアンテナ1Faの構成の一例を示す図である。
円形配列フェーズドアレーアンテナ1Faの構成は、変形例1で説明した組み合わせ円形配列フェーズドアレーアンテナ1Fと同一である。組み合わせ円形配列フェーズドアレーアンテナ1Faは、4つの円形配列フェーズドアレーアンテナ1Aのそれぞれの指向性ビームの方向が固定されて制御される点で、組み合わせ円形配列フェーズドアレーアンテナ1Fと異なる。
より具体的には、4つの円形配列フェーズドアレーアンテナ1AがXY軸で形成される平面に配置されているとする。この場合、例えば、##1で示される円形配列フェーズドアレーアンテナ1Aの指向性ビームの方向は+X軸方向に、##2で示される円形配列フェーズドアレーアンテナ1Aの指向性ビームの方向は+Y軸方向に固定されているとしてもよい。同様に、##3で示される円形配列フェーズドアレーアンテナ1Aの指向性ビームの方向は-X軸方向に、##4で示される円形配列フェーズドアレーアンテナ1Aの指向性ビームの方向は-Y軸方向に固定されているとしてもよい。
<組み合わせ円形配列フェーズドアレーアンテナ1Ga>
図46は、変形例2における組み合わせ円形配列フェーズドアレーアンテナ1Gaの構成の一例を示す図である。
円形配列フェーズドアレーアンテナ1Gaの構成は、変形例1で説明した組み合わせ円形配列フェーズドアレーアンテナ1Gと同一である。組み合わせ円形配列フェーズドアレーアンテナ1Gaは、8つの円形配列フェーズドアレーアンテナ1Aのそれぞれの指向性ビームの方向が固定されて制御される点で、組み合わせ円形配列フェーズドアレーアンテナ1Gと異なる。
より具体的には、8つの円形配列フェーズドアレーアンテナ1AがXY軸で形成される平面に配置されているとする。この場合、例えば、##1で示される円形配列フェーズドアレーアンテナ1Aの指向性ビームの方向は+X軸方向に、##2で示される円形配列フェーズドアレーアンテナ1Aの指向性ビームの方向は+X軸から+Y軸に対して45度の方向に固定されているとしてもよい。また、##3で示される円形配列フェーズドアレーアンテナ1Aの指向性ビームの方向は+Y軸方向に、##4で示される円形配列フェーズドアレーアンテナ1Aの指向性ビームの方向は+Y軸から-X軸に対して45度の方向に固定されているとしてもよい。
同様に、##5で示される円形配列フェーズドアレーアンテナ1Aの指向性ビームの方向は-X軸方向に、##6で示される円形配列フェーズドアレーアンテナ1Aの指向性ビームの方向は-X軸から-Y軸に対して45度の方向に固定されているとしてもよい。##7で示される円形配列フェーズドアレーアンテナ1Aの指向性ビームの方向は-Y軸方向に、##8で示される円形配列フェーズドアレーアンテナ1Aの指向性ビームの方向は-Y軸から+X軸にに対して45度の方向に固定されているとしてもよい。
[制御部22]
制御部22は、本変形例の組み合わせ円形配列フェーズドアレーアンテナに到来する到来波方向に応じて、スイッチで複数の円形配列フェーズドアレーアンテナ1Aの一を選択する。
図47は、本変形例における制御部22の具体的構成の一例を示す図である。
本変形例では、制御部22は、図47に示すように、##1…##nで示される円形配列フェーズドアレーアンテナ1Aごとに、アッテネータ222と、移相器223と、合成/分配部224とを備える。より具体的には、制御部22は、例えば、##1で示される円形配列フェーズドアレーアンテナ1Aにおいては、アッテネータ222-1と、移相器223-1と、合成/分配部224-1とを備える。また、制御部22は、例えば、##2で示される円形配列フェーズドアレーアンテナ1Aにおいては、アッテネータ222-2と、移相器223-2と、合成/分配部224-2とを備える。そして、制御部22は、例えば、##nで示される円形配列フェーズドアレーアンテナ1Aにおいては、アッテネータ222-nと、移相器223-nと、合成/分配部224-nとを備える。
また、制御部22は、さらに、実現したい多素子のMIMOアンテナに応じた数のスイッチ225を備える。スイッチ225は、例えば4×4のMIMOアンテナを実現する場合には、図47に示すようにch1、ch2、ch3、ch4の4つで構成される。
このように、本変形例の制御部22は、実施の形態1等の制御部12に対して、組み合わせ変更部121が削除されており、到来波方向に応じて##iに示される円形配列フェーズドアレーアンテナ1Aをスイッチ225によって選択する。これにより、4×4MIMOアンテナ等の多素子MIMOアンテナを実現する。
[効果等]
以上のように、本変形例に係るアンテナ装置では、組み合わせ円形配列フェーズドアレーアンテナを構成する円形配列フェーズドアレーアンテナ1Aそれぞれの指向性ビームの方向を固定する。そして、組み合わせ円形配列フェーズドアレーアンテナの中心位置に構成される円形配列フェーズドアレー1Cを用いて推定した到来波方向に応じて、複数の円形配列フェーズドアレー1Aのうちの一をスイッチ225で選択する。
これにより、制御部22を図4に示す制御部12と比較して、簡便な構成とすることができるので、多素子のMIMOアンテナをより容易に実現し易い。
(その他の実施の形態)
なお、本発明は、上述した実施の形態および変形例に限定されない。上述した実施の形態等に対して、この発明と同一の範囲において、あるいは均等の範囲内において、種々の修正や変形を加えることが可能である。
また、上記実施形態等において、各構成要素は専用のハードウェアにより構成されてもよく、あるいは、ソフトウェアにより実現可能な構成要素については、プログラムを実行することによって実現されてもよい。
また、例えば、アンテナ装置等を構成するモジュールを、IC(集積回路)、ASIC(特定用途向け集積回路)、およびLSI(大規模集積)などの形態で実現されるか、ARMなどのCPUに基づくプロセッサおよびPC(パーソナルコンピュータ)などの機械により実現するとしてもよい。これらの各モジュールは、多くの単機能LSIまたは1つのLSIに含まれ得る。ここで用いられた名称はLSIであるが、集積度に応じて、IC、システムLSI、スーパーLSIまたはウルトラLSIと呼称されることもある。さらに、集積方法はLSIに限るものではなく、専用回路または汎用プロセッサなどによっても集積することができる。これには、プログラム命令により指示可能なDSP(デジタル信号プロセッサ)などの特殊なマイクロプロセッサも含まれる。LSIの製造後にプログラム可能なFPGA(フィールド・プログラマブル・ゲート・アレイ)もしくはLSIの接続または配置を再構成できる再構成可能プロセッサを同様の目的で用いることができる。今後は、製造と処理技術の発展に伴い、全く新しい技術がLSIに置き換わるかもしれない。集積はそのような技術によって実現され得る。