[第1の実施形態]
以下、図面を参照して発明を実施するための形態について説明する。各図面において、同一構成部分には同一符号を付し、重複した説明を省略する場合がある。
<画像投射装置の構成>
図1は、本実施形態のプロジェクタ1の外観の一例を示している。(a)は外観の斜視図であり、(b)は投射状態におけるプロジェクタ1の側面図である。
プロジェクタ1は、「画像投射装置」の一例である。プロジェクタ1は、投射画像を生成する光学エンジンが内部に設けられ、出射窓3と、吸気口6と、操作部7と、排気口8と、外部I/F9とを有している。画像投射装置1は、例えば外部I/F9に接続されるパソコンやデジタルカメラから画像データが送信されると、送信された画像データに基づいて光学エンジンが投射画像を生成し、(b)に示されるように、出射窓3からスクリーンSに画像を投射する。操作部7は、操作ボタン7a~7dを有し、操作ボタン7a~7dを通じてプロジェクタ1に対する操作を受け付ける。但し、これに限られるものではなく、例えばタッチパネル機能が搭載された液晶表示装置や有機EL表示装置で操作部7が構成されてもよい。
なお、以下に示す図面において、X1X2方向はプロジェクタ1の幅方向、Y1Y2方向はプロジェクタ1の奥行き方向、Z1Z2方向はプロジェクタ1の高さ方向である。また、以下では、プロジェクタ1の出射窓3側を上、出射窓3とは反対側を下として説明する場合がある。
プロジェクタ1は、例えば投射距離が1~2mで60~80インチのサイズの画像を投射する。スクリーンSの近距離から大画面の画像を投射でき、プロジェクタ1の背後の空間を自由に活用できる。プロジェクタ1は、内部に光源ランプや多数の電子基板を収納しているため、起動後は時間の経過と共にプロジェクタ1の内部温度が上昇する。これはプロジェクタの小型化するほど顕著になる。そのためプロジェクタ1は、吸気口6と排気口8を設け、強制気流により、プロジェクタ1の内部を空冷している。
図2は、本実施形態のプロジェクタ1の機能構成を例示するブロック図である。
図2に示されるように、プロジェクタ1は、電源4と、メインスイッチSW5と、操作部7と、外部I/F9と、システムコントロール部10と、ファン20と、光学エンジン15とを有している。
電源4は、商用電源に接続され、プロジェクタ1の内部回路用に電圧及び周波数を変換して、システムコントロール部10、ファン20、光学エンジン15等に給電する。
メインスイッチSW5は、ユーザによるプロジェクタ1のON/OFF操作に用いられる。電源4が電源コード等を介して商用電源に接続された状態で、メインスイッチSW5がONに操作されると、電源4がプロジェクタ1の各部への給電を開始し、メインスイッチSW5がOFFに操作されると、電源4がプロジェクタ1の各部への給電を停止する。
操作部7は、ユーザによる各種操作を受け付けるボタン等であり、例えばプロジェクタ1の上面に設けられている。操作部7は、例えば投射画像の大きさ、位置、色調、ピントの調整等のユーザによる操作を受け付ける。操作部7が受け付けたユーザ操作は、システムコントロール部10に送られる。
外部I/F9は、例えばパソコン、デジタルカメラ等に接続される接続端子を有し、接続された機器から送信される画像データをシステムコントロール部10に出力する。
システムコントロール部10は、画像制御部11と、移動制御部12とを有する。システムコントロール部10は、例えばCPU,ROM110,RAM等を含み、CPUがRAMと協働してROM110に記憶されているプログラムを実行することで、各部の機能が実現される。
画像制御部11は、画像制御手段の一例であり、外部I/F9から入力される画像データに基づいて光学エンジン15の画像表示ユニット50に設けられているデジタルマイクロミラーデバイスDMD(Digital Micromirror Device(以下、単に「DMD」という))551を制御し、スクリーンSに投射する画像を生成する。
移動制御部12は、画像表示ユニット50において移動可能に設けられている可動ユニット55を移動させ、可動ユニット55に設けられているDMD551の位置を制御する。なお、移動制御部12は、「移動制御手段」の一例である。
移動抵抗異常検知部101は、可動ユニット55が固定ユニット51に対して移動する際に、移動制御部12が出力する電流値を検知し、メモリ103に記憶された閾値等を参照することで、可動ユニット55と固定ユニット51との間の移動抵抗の異常を検知する。メモリ103は、RAM等により実現される。なお、可動ユニット55は、「可動部」の一例であり、固定ユニット51は「固定部」の一例である。移動抵抗異常検知部101は、「異常検知手段」の一例である。
異常時処理部102は、移動抵抗異常検知部101の出力に応じて、可動ユニット55の移動を停止させる等の所定の異常時処理を実行する。なお、異常時処理部102は、「異常時処理手段」の一例である。移動抵抗異常検知部101、異常時処理部102、及びメモリ103については、別途詳述する。
吸気ファン6a、及び排気ファン8aは、システムコントロール部10に制御されて回転し、光学エンジン15の光源30を冷却する。
光学エンジン15は、光源30、照明光学系ユニット40、画像表示ユニット50、投射光学系ユニット60を有し、システムコントロール部10に制御されてスクリーンSに画像を投射する。
光源30は、例えば水銀高圧ランプ、キセノンランプ、LED等であり、システムコントロール部10により制御され、照明光学系ユニット40に光を照射する。
照明光学系ユニット40は、例えばカラーホイール、ライトトンネル、リレーレンズ等を有し、光源30から照射された光を画像表示ユニット50に設けられているDMD551に導く。
画像表示ユニット50は、固定支持されている固定ユニット51、固定ユニット51に対して移動可能に設けられている可動ユニット55を有する。可動ユニット55は、DMD551を有し、システムコントロール部10の移動制御部12によって固定ユニット51に対する位置が制御される。DMD551は、システムコントロール部10の画像制御部11により制御され、照明光学系ユニット40によって導かれた光を変調して投射画像を生成する。
可動ユニット55には、ホール素子590が設けられている。ホール素子590は、固定ユニット51に対する可動ユニット55の位置を検出し、移動制御部12に位置データを出力する。ホール素子590の詳細については別途詳述する。
投射光学系ユニット60は、例えば複数の投射レンズ、ミラー等を有し、画像表示ユニット50のDMD551によって生成される画像を拡大してスクリーンSに投射する。
<光学エンジンの構成>
次に、プロジェクタ1の光学エンジン15の各部の構成について説明する。
図3は、プロジェクタ1の光学エンジン15の構成の一例を示す図である。図3では、プロジェクタ1の外装カバーが外され、プロジェクタ1の内部の光学エンジン15等が観察可能となっている。(a)は、光学エンジン15の全体構成、(b)は、(a)において丸で囲った部分を取り出した構成を示している。
本実施形態では、光学エンジン15は、光源30と、照明光学系ユニット40と、画像表示ユニット50と、投射光学系ユニット60とを有している。光源30で発せられた白色光は、照明光学系ユニット40に照射される。照明光学系ユニット40において、白色光は赤(R)、緑(G)、及び青(B)に分光される。分光された各色の光は画像表示ユニット50に導かれ、画像表示ユニット50で変調されて投射画像が生成される。投射画像は、投射光学系ユニット60によりスクリーンに拡大投射される。
吸気口6の近傍に配置された吸気ファン6aと、排気口8の近傍に設けられた排気ファン8aにより強制気流が生成され、プロジェクタ1の内部が空冷されている。
<照明、及び投射光学系ユニットの構成>
次に、照明、及び投射光学系ユニットの構成について説明する。
図4は、照明光学系ユニット40、及び投射光学系ユニット60の構成の一例を示す断面図である。
照明光学系ユニット40は、カラーホイール41と、ライトトンネル42と、リレーレンズ43と、平面ミラー44と、凹面ミラー45とを有している。光源30からの白色光は、赤(R)、緑(G)、及び青(B)が周方向に敷設された回転体であるカラーホイール41により、各色の光に分光され、ライトトンネル42に導かれる。
ライトトンネル42は、内部を中空とする筒状の部材である。ライトトンネル42に導かれた各色の光は、ライトトンネル42の内部で反射を繰り返すことにより、ライトトンネル42の出口では照度分布が均一となる。すなわち、ライトトンネル42は、各照明光の光量むらを低減する照度均一化手段としての機能を有している。
ライトトンネル42から出射された光は、2枚のレンズで構成されたリレーレンズ43により色収差が補正され、平面ミラー44、及び凹面ミラー45により、DMD551に照明される。
DMD551は、画素単位のマイクロミラーを有し、各マイクロミラーが異なる2つの角度の何れかの状態を維持することができる。DMD551の各マイクロミラーは、各照明光を投射光学系ユニット60へ向けて反射する角度(ON状態)と、各照明光を内部の吸収体へ向けて反射して外部に出射させない角度(OFF状態)との何れかの状態となる。これにより、表示する画素毎に、投射光学系ユニット60に照射する光を制御することができる。
投射光学系ユニット60は、複数の投射レンズから構成され、DMD551からの光をスクリーンSに拡大投影する。
リレーレンズ43、平面ミラー44、凹面ミラー45、及びDMD551と、投射光学系ユニット60における照明光の入射側の部分は、各部品を覆うようにハウジングにより保持されており、かつハウジングの合せ面はシール材にて密閉された防塵構造となっている。
<画像表示ユニット>
図5は、本実施形態の画像表示ユニット50を例示する斜視図である。また、図6は、本実施形態の画像表示ユニット50を例示する側面図である。
図5及び図6に示されるように、画像表示ユニット50は、固定支持されている固定ユニット51、固定ユニット51に対して移動可能に設けられている可動ユニット55を有する。
固定ユニット51は、第1固定板としてのトッププレート511、第2固定板としてのベースプレート512を有する。固定ユニット51は、トッププレート511とベースプレート512とが所定の間隙を介して平行に設けられており、照明光学系ユニット40の下部に固定される。
可動ユニット55は、DMD551、第1可動板としての可動プレート552、第2可動板としての結合プレート553、ヒートシンク554を有し、固定ユニット51に移動可能に支持されている。
可動プレート552は、固定ユニット51のトッププレート511とベースプレート512との間に設けられ、固定ユニット51によってトッププレート511及びベースプレート512と平行且つ表面に平行な方向に移動可能に支持されている。
結合プレート553は、固定ユニット51のベースプレート512を間に挟んで可動プレート552に固定されている。結合プレート553は、上面側にDMD551が固定して設けられ、下面側にヒートシンク554が固定されている。結合プレート553は、可動プレート552に固定されることで、可動プレート552、DMD551、及びヒートシンク554と共に固定ユニット51に移動可能に支持されている。
DMD551は、結合プレート553の可動プレート552側の面に設けられ、可動プレート552及び結合プレート553と共に移動可能に設けられている。DMD551は、可動式の複数のマイクロミラーが格子状に配列された画像生成面を有する。DMD551の各マイクロミラーは、鏡面がねじれ軸周りに傾動可能に設けられており、システムコントロール部10の画像制御部11から送信される画像信号に基づいてON/OFF駆動される。
マイクロミラーは、例えば「ON」の場合には、光源30からの光を投射光学系ユニット60に反射するように傾斜角度が制御される。また、マイクロミラーは、例えば「OFF」の場合には、光源30からの光を不図示のOFF光板に向けて反射する方向に傾斜角度が制御される。
このように、DMD551は、画像制御部11から送信される画像信号によって各マイクロミラーの傾斜角度が制御され、光源30から照射されて照明光学系ユニット40を通った光を変調して投射画像を生成する。
ヒートシンク554は、放熱手段の一例であり、少なくとも一部分がDMD551に当接するように設けられている。ヒートシンク554は、移動可能に支持される結合プレート553にDMD551と共に設けられることで、DMD551に当接して効率的に冷却することが可能になっている。このような構成により、本実施形態に係るプロジェクタ1では、ヒートシンク554がDMD551の温度上昇を抑制し、DMD551の温度上昇による動作不良や故障等といった不具合の発生が低減されている。
(固定ユニット)
図7は、本実施形態の固定ユニット51を例示する斜視図である。また、図8は、本実施形態の固定ユニット51を例示する分解斜視図である。
図7及び図8に示されるように、固定ユニット51は、トッププレート511、ベースプレート512を有する。
トッププレート511及びベースプレート512は、平板状部材から形成され、それぞれ可動ユニット55のDMD551に対応する位置に中央孔513,514が設けられている。また、トッププレート511及びベースプレート512は、複数の支柱515によって、所定の間隙を介して平行に設けられている。
支柱515は、図8に示されるように、上端部がトッププレート511に形成されている支柱孔516に圧入され、雄ねじ溝が形成されている下端部がベースプレート512に形成されている支柱孔517に挿入される。支柱515は、トッププレート511とベースプレート512との間に一定の間隔を形成し、トッププレート511とベースプレート512とを平行に支持する。
また、トッププレート511及びベースプレート512には、支持球体521を回転可能に保持する支持孔522,526がそれぞれ複数形成されている。
トッププレート511の支持孔522には、内周面に雌ねじ溝を有する円筒状の保持部材523が挿入される。保持部材523は、支持球体521を回転可能に保持し、位置調整ねじ524が上から挿入される。ベースプレート512の支持孔526は、下端側が蓋部材527によって塞がれ、支持球体521を回転可能に保持する。
トッププレート511及びベースプレート512の支持孔522,526に回転可能に保持される支持球体521は、それぞれトッププレート511とベースプレート512との間に設けられる可動プレート552に当接し、可動プレート552を移動可能に支持する。
図9は、本実施形態の固定ユニット51による可動プレート552の支持構造を説明するための図である。また、図10は、図9に示されるA部分の概略構成を例示する部分拡大図である。
図9及び図10に示されるように、トッププレート511では、支持孔522に挿入される保持部材523によって支持球体521が回転可能に保持されている。また、ベースプレート512では、下端側が蓋部材527によって塞がれている支持孔526によって支持球体521が回転可能に保持されている。
各支持球体521は、支持孔522,526から少なくとも一部分が突出するように保持され、トッププレート511とベースプレート512との間に設けられる可動プレート552に当接して支持する。可動プレート552は、回転可能に設けられている複数の支持球体521により、トッププレート511及びベースプレート512と平行且つ表面に平行な方向に移動可能に両面から支持される。
また、トッププレート511側に設けられている支持球体521は、可動プレート552とは反対側で当接する位置調整ねじ524の位置に応じて、保持部材523の下端からの突出量が変化する。例えば、位置調整ねじ524がZ1方向に変位すると、支持球体521の突出量が減り、トッププレート511と可動プレート552との間隔が小さくなる。また、例えば、位置調整ねじ524がZ2方向に変位すると、支持球体521の突出量が増え、トッププレート511と可動プレート552との間隔が大きくなる。
このように、位置調整ねじ524を用いて支持球体521の突出量を変化させることで、トッププレート511と可動プレート552との間隔を適宜調整できる。
また、図7及び図8に示されるように、トッププレート511のベースプレート512側の面には、磁石531,532,533,534が設けられている。
図11は、本実施形態のトッププレート511を例示する底面図である。図11に示されるように、トッププレート511のベースプレート512側の面には、磁石531,532,533,534が設けられている。
磁石531,532,533,534は、トッププレート511の中央孔513を囲むように4箇所に設けられている。磁石531,532,533,534は、それぞれ長手方向が平行になるように配置された直方体状の2つの磁石で構成され、それぞれ可動プレート552に及ぶ磁界を形成する。
磁石531,532,533,534は、それぞれ可動プレート552の上面に各磁石531,532,533,534に対向して設けられているコイルとで、可動プレート552を移動させる移動手段を構成する。
なお、上記した固定ユニット51に設けられる支柱515、支持球体521の数や位置等は、可動プレート552を移動可能に支持できればよく、本実施形態に例示される構成に限られるものではない。
(可動ユニット)
図12は、本実施形態の可動ユニット55を例示する斜視図である。また、図13は、本実施形態の可動ユニット55を例示する分解斜視図である。
図12及び図13に示されるように、可動ユニット55は、DMD551、可動プレート552、結合プレート553、ヒートシンク554、保持部材555、DMD基板557を有し、固定ユニット51に対して移動可能に支持されている。
可動プレート552は、上記したように、固定ユニット51のトッププレート511とベースプレート512との間に設けられ、複数の支持球体521により表面に平行な方向に移動可能に支持される。
図14は、本実施形態の可動プレート552を例示する斜視図である。
図14に示されるように、可動プレート552は、平板状の部材から形成され、DMD基板557に設けられるDMD551に対応する位置に中央孔570を有し、中央孔570の周囲にコイル581,582,583,584が設けられている。
コイル581,582,583,584は、それぞれZ1Z2方向に平行な軸を中心として電線が巻き回されることで形成され、可動プレート552のトッププレート511側の面に形成されている凹部に設けられてカバーで覆われている。コイル581,582,583,584は、それぞれトッププレート511の磁石531,532,533,534とで、可動プレート552を移動させる移動手段を構成する。
トッププレート511の磁石531,532,533,534と、可動プレート552のコイル581,582,583,584とは、可動ユニット55が固定ユニット51に支持された状態で、それぞれ対向する位置に設けられている。コイル581,582,583,584に電流が流されると、磁石531,532,533,534によって形成される磁界により、可動プレート552を移動させる駆動力となるローレンツ力が発生する。コイル581~584、及び磁石531~534を有する移動手段は、「電磁アクチュエータ」の一例であり、ローレンツ力は、「駆動力」の一例である。
可動プレート552は、磁石531,532,533,534とコイル581,582,583,584との間で発生する駆動力としてのローレンツ力を受けて、固定ユニット51に対して、XY平面において直線的又は回転するように変位する。
各コイル581,582,583,584に流される電流の大きさ及び向きは、システムコントロール部10の移動制御部12によって制御される。移動制御部12は、各コイル581,582,583,584に流す電流の大きさ及び向きによって、可動プレート552の移動(回転)方向、移動量や回転角度等を制御する。
本実施形態では、第1駆動手段として、コイル581及び磁石531と、コイル584及び磁石534とが、X1X2方向に対向して設けられている。コイル581及びコイル584に電流が流されると、図14に示されるようにX1方向又はX2のローレンツ力が発生する。可動プレート552は、コイル581及び磁石531と、コイル584及び磁石534とにおいて発生するローレンツ力により、X1方向又はX2方向に移動する。
また、本実施形態では、第2駆動手段として、コイル582及び磁石532と、コイル583及び磁石533とが、X1X2方向に並んで設けられ、磁石532及び磁石533は、磁石531及び磁石534とは長手方向が直交するように配置されている。このような構成において、コイル582及びコイル583に電流が流されると、図14に示されるようにY1方向又はY2方向のローレンツ力が発生する。
可動プレート552は、コイル582及び磁石532と、コイル583及び磁石533とにおいて発生するローレンツ力により、Y1方向又はY2方向に移動する。また、可動プレート552は、コイル582及び磁石532と、コイル583及び磁石533とで反対方向に発生するローレンツ力により、XY平面において回転するように変位する。
例えば、コイル582及び磁石532においてY1方向のローレンツ力が発生し、コイル583及び磁石533においてY2方向のローレンツ力が発生するように電流が流されると、可動プレート552は、上面視で時計回り方向に回転するように変位する。また、コイル582及び磁石532においてY2方向のローレンツ力が発生し、コイル583及び磁石533においてY1方向のローレンツ力が発生するように電流が流されると、可動プレート552は、上面視で反時計回り方向に回転するように変位する。
また、可動プレート552には、固定ユニット51の支柱515に対応する位置に、可動範囲制限孔571が設けられている。可動範囲制限孔571は、固定ユニット51の支柱515が挿入され、例えば振動や何らかの異常等により可動プレート552が大きく移動した時に支柱515に接触することで、可動プレート552の可動範囲を制限する。
以上で説明したように、本実施形態では、システムコントロール部10の移動制御部12が、コイル581,582,583,584に流す電流の大きさや向きを制御することで、可動範囲内で可動プレート552を任意の位置に移動させることができる。
なお、移動手段としての磁石531,532,533,534及びコイル581,582,583,584の数、位置等は、可動プレート552を任意の位置に移動させることが可能であれば、本実施形態とは異なる構成であってもよい。例えば、移動手段としての磁石は、トッププレート511の上面に設けられてもよく、ベースプレート512の何れかの面に設けられてもよい。また、例えば、磁石が可動プレート552に設けられ、コイルがトッププレート511又はベースプレート512に設けられてもよい。
また、可動範囲制限孔571の数、位置及び形状等は、本実施形態に例示される構成に限られない。例えば、可動範囲制限孔571は一つであってもよく、複数であってもよい。また、可動範囲制限孔571の形状は、例えば長方形や円形等、本実施形態とは異なる形状であってもよい。
固定ユニット51によって移動可能に支持される可動プレート552の下面側(ベースプレート512側)には、図12に示されるように、結合プレート553が固定されている。結合プレート553は、平板状部材から形成され、DMD551に対応する位置に中央孔を有し、周囲に設けられている折り曲げ部分が3本のねじ591によって可動プレート552の下面に固定されている。
図15は、可動プレート552が外された可動ユニット55を例示する斜視図である。
図15に示されるように、結合プレート553には、上面側にDMD551、下面側にヒートシンク554が設けられている。結合プレート553は、可動プレート552に固定されることで、DMD551、ヒートシンク554と共に、可動プレート552に伴って固定ユニット51に対して移動可能に設けられている。
DMD551は、DMD基板557に設けられており、DMD基板557が保持部材555と結合プレート553との間で挟み込まれることで、結合プレート553に固定されている。保持部材555、DMD基板557、結合プレート553、ヒートシンク554は、図13及び図15に示されるように、固定部材としての段付ねじ560及び押圧手段としてのばね561によって重ねて固定されている。
結合プレート553には、ホール素子590a~590cが設けられている。ここで、ホール素子は、ホール効果を利用して磁界を検出する素子である。対象物の移動量に比例した磁束密度がかかるようにホール素子と対象物を配置すると、ホール素子の出力から対象物の移動量、及び位置を検出することができる。
ホール素子590a~590cは、結合プレート553とともに移動することで、磁石531~534に対する位置を変化させ、位置の変化に比例した電圧を出力する。ホール素子590a~590cの出力により、固定ユニット51に対する可動ユニット55の位置が検出される。
具体的には、ホール素子590aの出力から固定ユニット51に対する可動ユニット55のX1X2方向の位置が検出される。またホール素子590bの出力から固定ユニット51に対する可動ユニット55のY1Y2方向の位置が検出される。ホール素子590b、及び590cの出力から固定ユニット51に対する可動ユニット55の回転角度が検出される。
なお、ホール素子の配置、及び個数は上記に限定されない。例えば、ホール素子を固定ユニット側に設けてもよいし、4個以上のホール素子を設けてもよい。また、可動ユニット55の位置の検出手段は、ホール素子等の磁気センサに限定されず、リニアエンコーダ等の光学センサを用いてもよい。
以下では、ホール素子590a~590cを総称して、ホール素子590と表示する場合がある。
なお、ホール素子590は、「位置検出手段」の一例であり、「磁気センサ」の一例である。
図16は、本実施形態の可動ユニット55のDMD保持構造について説明する図である。図16は、可動ユニット55の側面図であり、可動プレート552及び結合プレート553は図示が省略されている。
図16に示されるように、ヒートシンク554は、結合プレート553に固定された状態で、DMD基板557に設けられている貫通孔からDMD551の下面に当接する突出部554aを有する。なお、ヒートシンク554の突出部554aは、DMD基板557の下面であって、DMD551に対応する位置に当接するように設けられてもよい。
また、DMD551の冷却効果を高めるために、ヒートシンク554の突出部554aとDMD551との間に弾性変形可能な伝熱シートが設けられてもよい。伝熱シートによりヒートシンク554の突出部554aとDMD551との間の熱伝導性が向上し、ヒートシンク554によるDMD551の冷却効果が向上する。
上記したように、保持部材555、DMD基板557、ヒートシンク554は、段付きねじ560及びばね561によって重ねて固定されている。段付きねじ560が締められると、ばね561がZ1Z2方向に圧縮され、図16に示されるZ1方向の力F1がばね561から生じる。ばね561から生じる力F1により、ヒートシンク554はZ1方向に力F2でDMD551に押圧されることとなる。
本実施形態では、段付きねじ560及びばね561は4箇所に設けられており、ヒートシンク554にかかる力F2は、4つのばね561に生じる力F1を合成したものに等しい。また、ヒートシンク554からの力F2は、DMD551が設けられているDMD基板557を保持する保持部材555に作用する。この結果、保持部材555には、ヒートシンク554からの力F2に相当するZ2方向の反力F3が生じ、保持部材555と結合プレート553との間でDMD基板557を保持できるようになる。
段付きねじ560及びばね561には、保持部材555に生じる力F3からZ2方向の力F4が作用する。ばね561は、4箇所に設けられているため、それぞれに作用する力F4は、保持部材555に生じる力F3の4分の1に相当し、力F1と釣り合うこととなる。
また、保持部材555は、図16において矢印Bで示されるように撓むことが可能な部材で板ばね状に形成されている。保持部材555は、ヒートシンク554の突出部554aに押圧されて撓み、ヒートシンク554をZ2方向に押し返す力が生じることで、DMD551とヒートシンク554との接触をより強固に保つことができる。
可動ユニット55は、以上で説明したように、可動プレート552と、DMD551及びヒートシンク554を有する結合プレート553とが、固定ユニット51によって移動可能に支持されている。可動ユニット55の位置は、システムコントロール部10の移動制御部12によって制御される。また、可動ユニット55には、DMD551に当接するヒートシンク554が設けられており、DMD551の温度上昇に起因する動作不良や故障といった不具合の発生が防止されている。
<画像投射>
上記したように、本実施形態に係るプロジェクタ1において、投射画像を生成するDMD551は、可動ユニット55に設けられており、システムコントロール部10の移動制御部12によって可動ユニット55と共に位置が制御される。
移動制御部12は、例えば、画像投射時にフレームレートに対応する所定の周期で、DMD551の複数のマイクロミラーの配列間隔未満の距離だけ離れた複数の位置の間を高速移動するように可動ユニット55の位置を制御する。このとき、画像制御部11は、それぞれの位置に応じてシフトした投射画像を生成するようにDMD551に画像信号を送信する。
例えば、移動制御部12は、X1X2方向及びY1Y2方向にDMD551のマイクロミラーの配列間隔未満の距離だけ離れた位置P1と位置P2との間で、DMD551を所定の周期で往復シフトさせる。このとき、画像制御部11が、それぞれの位置に応じてシフトした投射画像を生成するようにDMD551を制御することで、投射画像の解像度を、DMD551の解像度の約2倍にすることが可能になる。また、DMD551の移動位置を増やすことで、投射画像の解像度をDMD551の2倍以上にすることもできる。
このように、移動制御部12が可動ユニット55と共にDMD551を所定の周期で移動させ、画像制御部11がDMD551に位置に応じた投射画像を生成させることで、DMD551の解像度以上の画像を投射することが可能になる。このような機能を「画素ずらし」と称する。
また、本実施形態に係るプロジェクタ1では、移動制御部12がDMD551を可動ユニット55と共に回転するように制御することで、投射画像を縮小させることなく回転させることができる。例えばDMD551等の画像生成手段が固定されているプロジェクタでは、投射画像を縮小させなければ、投射画像の縦横比を維持しながら回転させることはできない。これに対して、本実施形態に係るプロジェクタ1では、DMD551を回転させることができるため、投射画像を縮小させることなく回転させて傾き等の調整を行うことが可能になっている。
図17は、可動プレート552の移動によるDMD551の移動の一例を説明する図である。(a)はX1X2方向への移動を示し、(b)はY1Y2方向への移動を示している。
(a)では、コイル581、及び584に作用する矢印171の方向へのローレンツ力によりDMD551が矢印172の方向に移動している。また(b)では、コイル582、及び583に作用する矢印173の方向へのローレンツ力によりDMD551が矢印174の方向に移動示している。
以上で説明したように、本実施形態に係るプロジェクタ1では、DMD551が移動可能に構成されることで、投射画像の高解像度化が可能になっている。また、DMD551を冷却するヒートシンク554が、DMD551と共に可動ユニット55に搭載されていることで、DMD551に当接してより効率的に冷却することが可能になり、DMD551の温度上昇が抑制されている。したがって、プロジェクタ1では、DMD551の温度上昇に起因して発生する動作不良や故障といった不具合が低減される。
<可動ユニットの移動抵抗の異常>
上述のように、本実施形態では、可動ユニット55における可動プレート552が、トッププレート511とベースプレート512の間を移動する。また可動プレート552の面とトッププレート511及びベースプレート512の面との間には、それぞれ支持球体521が設けられている。可動プレート552は、支持球体521を転がしながら円滑に移動することができる。
しかし、可動プレート552の面とトッププレート511、又はベースプレート512の面との間にゴミ等の異物が混入したり、プロジェクタ1の運搬時に面同士が衝突して、面にキズが付いたりする場合がある。このような場合、移動時に可動プレート552の面が異物やキズ等に引っ掛かり、局所的に移動抵抗が大きくなる。移動抵抗の異常により、可動プレート552が所望の量だけ移動せず、画素ずらしが正常に行われなくなる場合がある。
一方で、図18は、可動プレート552の可動範囲と、画素ずらしのための可動プレート552のシフト範囲との関係を概念的に説明する図である。図18において、Mx、Myは、それぞれX1X2方向、Y1Y2方向における可動プレート552のサイズを示している。Lx、Lyは、それぞれX1X2方向、Y1Y2方向への可動プレート552の可動量を示している。X1X2方向、Y1Y2方向への可動プレート552の可動範囲は、それぞれMx+Lx、My+Lyである。181は、このような可動範囲を示している。
同様に、画素ずらしのために、X1X2方向、Y1Y2方向に可動プレート552を往復シフトさせるシフト量を、それぞれΔx、Δyとすると、X1X2方向、Y1Y2方向における可動プレート552のシフト範囲は、それぞれMx+Δx、My+Δyとなる。Δx、Δyは、それぞれDMD551の有するマイクロミラーの配列間隔未満の長さである。実線で示された552はシフト前の可動プレート552を示し、破線で示された552はシフト後の可動プレート552を示している。なお、「画素ずらしのためのシフト範囲」を、以下では単に「シフト範囲」と称する場合がある。
図18に示されるように、可動プレート552のシフト範囲は、可動プレート552の可動範囲181の範囲内に包含される。従って、可動プレート552は、可動範囲181内の任意の位置で、画素ずらしのためのシフト、すなわち往復シフトを行うことができる。
例えば、プロジェクタ1の使用において、ユーザは、スクリーンの所望の位置に画像が投射されるように、投射画像を視認しながら、操作部7で可動プレート552を可動範囲181内で移動させ、調整する。その際、例えば、可動プレート552のシフト範囲内の白丸182の位置に異物やキズ等があると、異物やキズ等に起因した移動抵抗の異常により、プロジェクタ1は正常に画素ずらしを行えなくなる場合がある。
一方、例えば、可動プレート552のシフト範囲内ではない黒丸183の位置に異物やキズ等がある場合は、異物やキズ等による移動抵抗の異常の影響を受けず、プロジェクタ1は正常に画素ずらしを行うことができる。
本実施形態のプロジェクタ1は、図2に示されているように、移動抵抗異常検知部101と異常時処理部102とを有し、移動抵抗異常検知部101により、可動プレート552の可動範囲内での移動抵抗の異常と、その発生位置を検知する。そして可動プレート552のシフト範囲内で移動抵抗の異常がある場合には、異常時処理部102は画素ずらしを中止する等の所定の異常時処理を実行する。以下にこの詳細を説明する。
<移動抵抗の異常の検知>
まず、可動ユニット55における移動抵抗の異常の検知方法を、図19~20、及び図2を参照して説明する。
図19は、可動プレート552の移動抵抗の異常の検知方法を説明する図である。(a)は、可動プレート552が固定ユニット51に対してX1X2方向に移動する様子を示している。位置A~Cに変化するにつれ、固定されている固定ユニット51に対し、可動プレート552がX2方向に移動している。上述のように、可動プレート552の位置は、ホール素子590により検出される。移動制御部12は、ホール素子590から位置データのフィードバックを受け、位置データに応じた電流を可動ユニット55のコイル581~584に加えることで、可動プレート552を所望の量だけ移動させる。
(b)及び(c)は、ホール素子590の出力に応じて移動制御部12がコイル581及び584に加える電流値と、可動プレート552の位置との関係を示している。横軸は可動プレート552の位置を表し、縦軸は移動制御部12がコイル581及び584に加える電流値を表している。(b)は、可動プレート552の移動が正常な場合であり、(c)は移動抵抗に異常が生じた場合である。
可動プレート552の移動が正常な場合は、(b)に示されるように、可動プレート552の位置と移動制御部12の電流値は線形な関係になる。これに対し、移動抵抗の異常がある位置では、移動抵抗に対抗するような大きい電流値が必要になる。そのため、(c)の位置A~Bの区間のように移動制御部12の電流値が増大する。従って移動制御部12の電流値を検出することで、移動抵抗の異常と、その発生位置を検知することができる。
なお、(c)の位置A~Bの区間では、移動制御部12の電流値は一旦ピークまで増大し、ピーク後に低下して正常に戻っている。ピーク後にしばらく電流値が増加するのは、可動プレート552の面と、トッププレート511又はベースプレート512の面との間の動摩擦力に対抗する電流が必要になるためである。
図20は、移動抵抗の異常の判断方法の一例を説明する図である。図20の横軸は、可動プレートの位置を表し、縦軸は移動制御部12がコイル581~584に加える電流値を表している。実線で示された201は可動プレート552の移動が正常な場合における移動制御部12の電流値、すなわち正常電流値である。破線で示された202は、移動抵抗の異常を判断するための閾値である。黒丸で示された203は、検出された移動制御部12の電流値、すなわち検出電流値である。一点鎖線で示された204は、検出電流値203と正常電流値201との差が閾値202以上で、移動抵抗が異常と判断される位置である。なお閾値202は、「規定値」の一例である。
図2を参照すると、移動制御部12は、X1X2方向、Y1Y2方向のそれぞれに、可動ユニット55を所定のステップ量ずつ移動させる。その際、ホール素子590は、可動ユニット55の有する可動プレート552の位置を検出し、移動制御部12にフィードバックする。移動制御部12は、可動プレート552の位置に応じた電流を可動ユニット55に出力する。なお、X1X2方向及びY1Y2方向は「交差する所定の2方向」の一例である。
一方、メモリ103は正常電流値201と閾値202を予め記憶している。移動抵抗異常検知部101は、移動制御部12がコイル581~584に加える電流値を検出し、メモリ103を参照して検出電流値と正常電流値との差を算出する。移動抵抗異常検知部101は、検出電流値と正常電流値との差が閾値以上となる位置を、移動抵抗の異常の発生位置として検知する。
図21は、移動抵抗の異常検知の処理の一例を示すフローチャートである。
まずステップS2101において、移動制御部12は、可動プレート552をY1Y2方向の初期位置に移動させる。Y1Y2方向の初期位置は、例えばY1方向における可動範囲の一端である。
続いてステップS2103において、移動制御部12は、可動プレート552をX1X2方向の初期位置に移動させる。X1X2方向の初期位置は、例えばX1方向における可動範囲の一端である。
続いてステップS2105において、移動抵抗異常検知部101は、移動制御部12がコイル581~584に加える電流値を検出する。
続いてステップS2107において、移動抵抗異常検知部101は、メモリ103を参照しながら、検出電流値と正常電流値との差を算出し、差が閾値以上かを判断する。
ステップS2107で、差が閾値以上であると判断した場合は、ステップS2109において移動抵抗異常検知部101は、ホール素子590により検出された可動プレート552の位置データを、移動制御部12を介して受け取る。そして移動抵抗の異常の発生位置としてメモリ103に記憶する。
ステップS2107で、差が閾値以上ではないと判断した場合は、ステップS2111に移行する。
続いてステップS2111において、移動制御部12は、可動プレート552をX2方向に所定のステップ量だけ移動させる。ステップ量はX1X2方向の可動範囲に対し、十分小さい送り量を予め規定しておく。可動範囲に対して十分小さい送り量とは、例えば可動範囲の1%程度の送り量である。
続いて、ステップS2113において、移動制御部12は、X1X2方向における可動プレート552の初期位置からの移動量が可動量Lxより小さいかを判断する。
ステップS2113で可動量Lxより小さいと判断された場合は、ステップS2105に戻り、移動抵抗異常検知部101は、移動制御部12が可動ユニット55に出力する電流値を検出する。
一方、ステップS2113で可動量Lxより小さくないと判断された場合は、ステップS2115において、移動制御部12は可動プレート552をY2方向に所定の送り量だけ移動させる。
続いて、ステップS2117において、移動制御部12は、Y1Y2方向における可動プレート552の初期位置からの移動量が可動量Lyより小さいかを判断する。
ステップS2115で可動量Lyより小さいと判断された場合は、ステップS2103に戻り、移動制御部12は、可動プレート552をX1X2方向の初期位置に移動させる。
一方、ステップS2115で可動量Lyより小さくないと判断された場合、移動抵抗の異常検知の処理は終了する。
以上の処理により、可動プレート552の可動範囲において、移動抵抗の異常の有無と、異常がある場合はその位置を検知することができる。
<異常時処理>
次に、移動抵抗の異常が検知された場合の処理、すなわち異常時処理について説明する。
上述のように、プロジェクタ1の使用において、ユーザは、スクリーンの所望の位置に画像が投射されるように、投射画像を視認しながら、操作部7で可動プレート552を可動範囲内で移動させ、調整する。この場合の投射画像は、画素ずらしが行われていない画像である。調整が終了し、可動プレート552の位置が決定された後に、画素ずらしが開始され、解像度が向上した画像が投射される。
異常時処理部102は、画素ずらしにより解像度が向上した画像の投射が開始される前に、可動プレート552が画像ずらし時に移動抵抗の異常がある位置を通過するかを判断する。
具体的には、異常時処理部102は、ホール素子590により検出された可動プレート552の現在の位置データを、移動制御部12を介して取得する。また異常時処理部102は、移動抵抗の異常がある位置を示す座標データを、メモリ103を参照して取得する。なお、上述したように、メモリ103は移動抵抗の異常の発生位置を記憶している。
図22は、図18と同様に、可動プレート552の可動範囲と画素ずらしのための可動プレート552のシフト範囲との関係を概念的に説明する図である。異常時処理部102は、例えば、可動プレート552の現在の位置として、可動プレート552の中心位置の座標A(xa、ya)を取得する。画素ずらし時に可動プレート552がX1X2方向で通過、すなわちシフトする範囲xsは、xa-(Mx+Δx)/2≦xs≦xa+(Mx+Δx)/2である。一方、画素ずらし時に可動プレート552がY1Y2方向で通過、すなわちシフトする範囲ysは、ya-(My+Δy)/2≦ys≦ya+(My+Δy)/2である。
従って、移動抵抗の異常がある位置B(xb、yb)が上記xs、ysの範囲内であれば、異常時処理部102は、可動プレート552が画像ずらし時に移動抵抗の異常がある位置を通過すると判断する。範囲内になければ、通過しないと判断する。
可動プレート552が移動抵抗の異常がある位置を通過すると判断した場合は、異常時処理部102は、画素ずらしを中止する。
図23は、上記のような異常時処理の一例を示すフローチャートである。
まずステップS2301において、操作部7からの入力信号に基づき、移動制御部12は、可動プレート552を可動範囲内で移動させて投射画像の位置を調整する。
続いてステップS2303において、異常時処理部102は、ホール素子590により検出された可動プレート552の現在位置データを、移動制御部12を介して取得する。
続いてステップS2305において、異常時処理部102は、メモリ103を参照して、移動抵抗の異常がある位置を示す座標データを取得する。
続いてステップS2307において、異常時処理部102は、可動プレート552の現在位置データと、移動抵抗の異常がある位置を示す座標データとを比較し、可動プレート552が画像ずらし時に移動抵抗の異常がある位置を通過するかを判断する。
ステップS2307で、通過すると判断した場合、ステップS2309において、異常時処理部102は画素ずらしを中止する。すなわち異常時処理部102は移動制御部12に画素ずらしの中止を通知し、これに応じて移動制御部12は可動ユニット55の往復シフトを行わない。
ステップS2307で、通過しないと判断した場合、ステップS2311において、異常時処理部102は画素ずらしを開始する。すなわち異常時処理部102は移動制御部12に画素ずらしの開始を通知し、これに応じて移動制御部12は可動ユニット55の往復シフトを開始する。
続いてステップS2313において、プロジェクタ1は画像投射を開始する。この際、ステップS2307で「Yes」と判断された場合は、高解像度化されていない画像が投射される。一方、ステップS2307で「No」と判断された場合は、高解像度化された画像が投射される。
以上説明してきたように、本実施形態のプロジェクタ1は、移動抵抗の異常を検知し、異常がある場合は画素ずらしを行わずに画像を投射する。これにより、画素ずらし機能を有する画像投射装置において、固定部と可動部との間にゴミやキズ等に起因する移動抵抗の異常があっても、投射画像を乱さない画像投射装置を提供することができる。
なお上記では、移動抵抗の異常が検知された場合に、異常時処理部102は、画素ずらしを中止させる例を示したが、これに限定されない。例えば異常時処理部102は、移動抵抗の異常が検知された場合に、画素ずらしを中止したうえで、画像制御部11に異常が検知されたことを通知する。画像制御部11は、通知に応じ、画素ずらしによる高解像度化を実施できない場合があることを示すメッセージを含む画像を生成し、これを投射してユーザにメッセージを伝えるようにしてもよい。
或いは異常時処理部102は、図24に示すようなメッセージを表示してもよい。図24では、投射画像241において、投射画像241の移動を促すメッセージ242が表示されている。
可動プレート552の現在位置データと、移動抵抗の異常がある位置との関係によっては、可動プレート552を移動させることで、可動プレート552が画素ずらし時に移動抵抗の異常がある位置を通過させなくてもよくなる場合がある。このような場合、異常時処理部102は、可動プレート552の現在位置データと移動抵抗の異常がある位置を示す座標データとを比較する。そして、異常がある位置を通過させなくてもよくなる可動プレート552の移動方向を求める。この移動方向に該当する方向に、投射画像241を移動させるように、メッセージ242を表示してユーザに通知する。例えばユーザがメッセージ242を参照して、投射画像241を移動させることで、可動プレート552が画素ずらし時に異常がある位置を通過することを回避できる。
これにより、固定部と可動部との間にゴミやキズ等に起因する移動抵抗の異常があっても、投射画像を乱さず、高解像度化された画像を投射することができる。なお、可動プレート552の移動により投射画像の位置からずれるが、プロジェクタ1の位置、又は姿勢を調整すれば、所望の位置に画像を投射することが可能である。
<第2の実施形態>
次に、第2の実施形態の画像投射装置について説明する。なお、第1の実施の形態において、既に説明した実施の形態と同一構成部についての説明は省略する場合がある。
第1の実施形態では、移動抵抗異常検知部101が移動抵抗の異常があるかの判断を行うための閾値を、検出電流値と正常電流値との差分に対して設定した。本実施形態の画像投射装置1aでは、このような閾値を、可動プレート552の移動に伴う検出電流値の変化から算出された回帰直線の傾き、又は切片の少なくとも一方に対して設定する。
図25は、本実施形態の移動抵抗の異常の判断方法の一例を説明する図である。図25の横軸は、可動プレートの位置pを表し、縦軸は電流値qを表している。実線で示された204は正常電流値の回帰直線である。黒丸で示された203は、検出電流値であり、一点鎖線で示された205は、検出電流値の回帰直線である。
正常電流値の回帰直線をq=a1・p+b1とし、検出電流値の回帰直線をq=a2・p+b2とする。本実施形態における移動抵抗異常検知部101aは、傾きa2が傾きa1に対し、所定の閾値以上の差がある場合に、移動抵抗の異常があると判断する。或いは、切片b2が切片b1に対し、所定の閾値以上の差がある場合に、移動抵抗の異常があると判断する。傾きa2と切片b2の両方を用いて移動抵抗の異常を判断してもよい。
検出電流値と正常電流値の差に対して閾値を設定した場合、検出電流値のノイズの影響で、移動抵抗の異常を誤検知する場合がある。また誤検知を防止するために、処理が複雑化し、演算負荷が増大することがある。閾値を回帰直線の傾き、又は切片の少なくとも一方に対して設定することで、平均化等の作用でノイズの影響を抑制でき、移動抵抗の異常の誤検知を防止することができる。また可動プレート552の移動に伴う全ての正常電流値を記憶する必要がなく、傾き、又は切片のみの記憶ですむため、メモリ103の容量を低減することができる。
なお、これ以外の効果は、第1の実施形態で説明したものと同様である。
<第3の実施形態>
次に、第3の実施形態の画像投射装置について説明する。なお、第1~2の実施の形態において、既に説明した実施の形態と同一構成部についての説明は省略する場合がある。
図26は、本実施形態のプロジェクタ1bの機能構成の一例を示すブロック図である。プロジェクタ1bは、姿勢センサ104を有している。姿勢センサ104は、例えばプロジェクタ1bの姿勢を検出する加速度センサである。姿勢センサ104は、プロジェクタ1bの姿勢を検出し、移動抵抗異常検知部101bに出力する。なお、姿勢センサ104は、「姿勢検出手段」の一例である。
プロジェクタ1bの姿勢が変わると、可動ユニット55に加わる重力の大きさが変化するため、可動ユニット55の移動の負荷が変化する。これにより可動ユニット55を移動させるために、移動制御部12がコイル581~584に加える電流値が変わる。また正常電流値、及び正常電流値に基づく適正な閾値が、プロジェクタ1の姿勢毎で異なってくる。
本実施形態では、プロジェクタ1の姿勢毎で、正常電流値、及び正常電流値に基づく閾値を求めておき、メモリ103bに記憶する。移動抵抗異常検知部101bは、姿勢検出部104の出力に応じた正常電流値、及び閾値を参照し、移動抵抗の異常を検知する。
これによりプロジェクタ1の姿勢による移動抵抗の誤検知を防止することができる。
なお、これ以外の効果は、第1の実施形態で説明したものと同様である。また第2の実施形態と組み合わせることも可能である。
以上、実施形態に係る画像投射装置、画像形成方法について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲内で種々の変形及び改良が可能である。