以下、図面を参照しながら本技術の実施の形態について説明する。なお、説明は以下の順序で行うものとする。
1.本技術の概要
2.システムの構成
3.実効PPFD値の算出の手順
(1)実効PPFD値算出処理
(2)センシング装置の測定例
(3)光化学系反応最大ETR算出処理
(4)炭素還元反応最大ETR算出処理
(5)実効PPFD値等の提示例
4.変形例
5.コンピュータの構成
<1.本技術の概要>
図1は、光に関連する単位を説明する図である。
図1のAは、放射束密度の各波長における単位エネルギー当たりの相対値を示す図である。放射束密度は、波長ごとのエネルギー強度を足し合わせたものである。したがって、どの波長でも同じ値となり、全体としての特性はフラットとなる。なお、光合成に有効な400nm~700nmの波長範囲だけを通すフィルタを用いて測定した放射束密度のことを、光合成放射束密度という。
図1のBは、光合成有効光量子束密度の各波長における単位エネルギー当たりの相対値を示す図である。ここで、植物の光合成は、光のエネルギーではなく、光の粒子である光量子(光子)の数によって左右される。葉緑素(クロロフィル)の吸収波長に対応した400nm~700nmの波長での光量子が、単位時間で、単位面積当たりに入射する個数で示したのが、光合成有効光量子束密度(PPFD:Photosynthetic Photon Flux Density)である。つまり、光合成有効光量子束密度(PPFD)は、光のエネルギーではなく、光の粒子である光量子(光子)の個数で表現した単位である。
図1のCは、照度の各波長における単位エネルギー当たりの相対値を示す図である。照度は、人間の目の感度に合わせた特性を有している。したがって、図1のAに示すようなエネルギーが一定の光が照射された場合には、図1のCに示すように、400nm以下と、700nm以上の波長では、エネルギーがゼロとなる特性を有している。つまり、照度は、植物の光合成とは何ら関係のない単位であり、この単位を用いて植物の光環境を評価することはできない。
植物では、生育を左右する環境条件として光が大変重要な要素となるが、ここでは、光を粒子として考えることが重要であり、そのために、植物に入射する光が、光合成にどれだけ作用するかを示す指標として、図1のBに示した光合成有効光量子束密度(PPFD)が規定されている。以下、光合成有効光量子束密度(PPFD)を、PPFD値とも記述する。
また、植物が光を有効に活用できる光量子の数は、温度、湿度、二酸化炭素(CO2)、栄養素などの環境条件と、植物の種類や状態によって大きく左右される。
例えば、植物にとって有効な光が、500umol/m2である場合を考えてみる。ある日の正午の前後で、植物に対し、2000umol/m2の光が3時間照射され、その後は、太陽がほとんど出なかった場合を想定する。この場合、トータルの光子量は、6000umol/m2(2000umol/m2×3h)になるが、実際に、植物にとって有効であった光子量は、1500umol/m2(500umol/m2×3h)となる。
一方で、植物に対し、500umol/m2の光が6時間照射された場合を想定すると、トータルの光子量は、3000umol/m2(500umol/m2×6h)となる。この場合には、植物にとって有効であった光子量も、3000umol/m2(500umol/m2×6h)となる。
ここで、前者と後者とを比較すれば、有効な光子量がより多くなる後者の方が、より有効な日照を得ていたということができる。このように、植物に対し照射された光の光合成有効光量子束密度(PPFD)が測定できても、測定された光合成有効光量子束密度(PPFD)が、実際に、植物にとって有効に活用されるとは限らない。
(光合成の光化学系反応と炭素還元反応)
図2は、光合成の光化学系反応と炭素還元反応を説明する図である。
図2に示すように、光合成は、光化学系反応と炭素還元反応との2つの段階に大別される。
前段の光化学系反応(光化学反応)は、光エネルギーを化学エネルギーに変換する系である。あるPPFD値となる太陽光が、植物に照射されると、その植物では、光の反射や透過が起こるため、実際に吸収される光の量は制限される。そして、光合成有効放射量(PAR:Photosynthetically Active Radiation)が植物に吸収される割合を、光合成有効放射吸収率(fAPAR:Fraction of Absorbed Photosynthetically Active Radiation)という。
さらに吸収された光は、光化学系I(PSI)と光化学系II(PSII)とに分離され、光化学系反応の量子収率(ΦPSII)で、エネルギー伝達物質としてのニコチンアミドアデニンジヌクレオチドリン酸(NADPH)とアデノシン三リン酸(ATP)が生成され、後段の炭素還元反応のエネルギー源として伝達される。
ただし、光化学系反応の量子収率(ΦPSII)は、光化学系II(PSII)のクロロフィルが吸収した光電子当たりの電子伝達速度を意味している。
また、ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドリン酸(NADPH:nicotinamide adenine dinucleotide phosphate)は、生体内のどこにでも存在し、「還元型」と「酸化型」があり、電子や水素を運ぶ役割を持っている。アデノシン三リン酸(ATP:adenosine triphosphate)は、生体内に広く分布し、リン酸1分子が離れたり、結合したりすることで、エネルギーの放出や貯蔵、あるいは物質の代謝や合成の重要な役割を果たしている。
後段の炭素還元反応には、カルビンサイクル(カルビン回路)と称される回路が存在する。このカルビンサイクルでは、二酸化炭素(CO2)や水(H2O)を取り込み、それらを材料に、前段の光化学系反応で生成されたニコチンアミドアデニンジヌクレオチドリン酸(NADPH)とアデノシン三リン酸(ATP)をエネルギーとして、糖やデンプンが生成される。
ここで、光合成は、光化学系反応と炭素還元反応がシリーズに起こる現象であるから、光化学系反応と炭素還元反応のうち、どちらか一方の速度が遅いと、そこがボトルネックになって、光合成全体の速度が決まるという構造となっている。
具体的には、上述したような、植物にとって有効な光が500umol/m2である場合に、植物に対し、2000umol/m2の光を3時間照射したケースは、図3に示した関係で表すことができる。一方で、植物にとって有効な光が500umol/m2である場合に、植物に対し、500umol/m2の光を6時間照射したケースは、図4に示した関係で表すことができる。
すなわち、図3のケースと、図4のケースとを比較すれば、図3のケースでは、矢印A1乃至A4の幅が徐々に狭まっているのに対し、図4のケースでは、矢印B1乃至B4の幅はそれほど変わっていない。この場合、図3のケースよりも、図4のケースのほうが、有効な光子量がより多くなって、より有効な日照を得ていたことになる。
本技術では、光合成の光化学系反応と炭素還元反応のボトルネックがどこにあるかを判断することで、植物にとって有効な光合成有効光量子束密度(PPFD)を算出できるようにする。以下、このようなPPFD値のことを、実効PPFD値と称する。すなわち、実効PPFD値は、植物に対して照射された光量子のうち、実際に、当該植物の成長に寄与したと考えられる光量子の量を表している。なお、実効PPFD値の単位としては、実効PPFD値と同様に、umol/m2/s又はumol/m2/dayなどを用いることができる。
ここで、実効PPFD値の算出の手順は、図5に示した3つの手順で表すことができる。
すなわち、第1の手順として、光化学系反応から出力されるエネルギーに相当する電子伝達速度(ETR)を、光化学系反応最大ETRとして算出する。この光化学系反応最大ETRは、光化学系反応と炭素還元反応とを切り離したとき、植物の光化学系反応能力で決まる最大の電子伝達速度(ETR)を表している。光化学系反応最大ETRの単位は、umol/m2/sとなる。
次に、第2の手順として、環境や植物の種類から決定される炭素還元反応の最大光合成速度に相当する電子伝達速度(ETR)を、炭素還元反応最大ETRとして算出する。この炭素還元反応最大ETRは、光化学系反応と炭素還元反応とを切り離したとき、植物の炭素還元反応能力で決まる最大の電子伝達速度(ETR)を表している。炭素還元反応最大ETRの単位は、umol/m2/sとなる。
そして、第3の手順として、第1の手順で算出された光化学系反応最大ETRと、第2の手順で算出された炭素還元反応最大ETRとからボトルネックを判断(特定)し、当該ボトルネックに相当する伝達ETRから、それに相当するPPFD値を、実効PPFD値として算出する。この伝達ETRは、光化学系反応最大ETRと炭素還元反応最大ETRから算出される植物の光合成速度に依存する電子伝達速度(ETR)を表している。伝達ETRの単位は、umol/m2/sとなる。
なお、電子伝達速度(ETR:Electron Transport Rate)は、電子伝達複合体による単位時間当たりの酸化還元量(いわゆる電子伝達活性)を表している。光合成電子伝達系には、反応中心複合体(光化学系I、光化学系II、光合成細菌)、シトクロム複合体などがある。プラストシアニン、シトクロムなどの可動性電子伝達体により複合体間の電子のやりとりが行われる。電子伝達速度(ETR)の単位は、umol/m2/sとなる。
以下、本技術による実効PPFD値の算出方法について説明する。
<2.システムの構成>
(実効指標演算システムの構成)
図6は、本技術を適用した実効指標演算システムの一実施の形態の構成を示す図である。
実効指標演算システム10は、測定対象物のセンシングを行い、そのセンシングの結果に基づいて、実効PPFD値等の実効指標を算出するためのシステムである。すなわち、実効指標演算システム10においては、測定対象物として植物(植生)を対象とし、その指標(測定指標)としてPPFD値(光合成有効光量子束密度(PPFD))を求める場合に、実効指標として実効PPFD値が算出される。
図6において、実効指標演算システム10は、センシング装置101、環境センサ102、及び実効指標演算装置103から構成される。センシング装置101、環境センサ102、及び実効指標演算装置103は、ハブ104を介して相互に接続されている。
センシング装置101は、測定対象物をセンシングして、そのセンシングで得られるデータを出力する。ここで、センシングとは、測定対象物を測定することを意味する。また、センシングには、測定対象物を撮像することが含まれる。また、測定対象物を撮像して得られる画像には、可視光から得られる可視画像のほか、赤外光(赤外線)等の可視光以外の光から得られる画像も含まれる。このように、センシングで得られる測定信号には、画像が含まれるが、画像以外の情報であってもよい。
センシング装置101は、測定対象物をセンシングし、その測定結果を、指標測定データとして、ハブ104を介して実効指標演算装置103に出力する。指標測定データは、PPFD値やNDVI値などの指標を求めるためのデータである。ここで、正規化植生指数(NDVI:Normalized Difference Vegetation Index)は、植生の分布状況や活性度を示す指標である。ただし、正規化植生指数(NDVI)は、植生指数の一例である。
なお、センシング装置101の詳細な構成は、図7を参照して後述する。
環境センサ102は、温度や湿度、CO2濃度などの空気環境を計測するためのセンサである。環境センサ102は、測定対象物の周辺の空気中の温度や湿度、CO2濃度をセンシングし、その測定結果を、環境測定データとして、ハブ104を介して実効指標演算装置103に出力する。
実効指標演算装置103は、CPU(Central Processing Unit)やFPGA(Field Programmable Gate Array)等の回路による演算機能を有する装置である。例えば、実効指標演算装置103は、パーソナルコンピュータや専用の端末装置などとして構成される。実効指標演算装置103には、センシング装置101からの指標測定データと、環境センサ102からの環境測定データが、ハブ104を介して入力される。
実効指標演算装置103は、指標測定データ及び環境測定データに基づいて、実効PPFD値を算出する。ここでは、図5に示した手順1乃至手順3に相当する処理を実行することで、PPFD値である指標に対する実効指標として、実効PPFD値を算出することができる。
なお、実効指標演算装置103の詳細な構成は、図8を参照して後述する。
実効指標演算システム10は、以上のように構成される。
(センシング装置の構成)
図7は、図6のセンシング装置101の構成例を示す図である。
図7において、センシング装置101は、レンズ141、露光部142、フィルタ143、及びセンサ144を有する測定部121と、信号処理部145及びI/F部146を有する処理部122とから構成される。
センシング装置101において、測定対象物等の対象物からの光(反射光)は、レンズ141とフィルタ143を介してセンサ144に入射される。
露光部142は、センサ144において、信号電荷が飽和せずにダイナミックレンジ内に入っている状態でセンシングが行われるように、レンズ141等の光学系やアイリス(絞り)による開口量などを調整することで、露光制御を行う。ただし、この露光制御は、実効指標演算装置103からの遠隔制御で行うこともできる。
フィルタ143は、測定対象の指標(測定指標)に応じた光学フィルタである。フィルタ143は、レンズ141を介して入射された光を、センサ144に透過させる。
センサ144は、そのセンサ面に、複数の画素が2次元配列された画素アレイ部を有するセンサである。センサ144は、フィルタ143を通過した光を、画素アレイ部に2次元配列された複数の画素によりセンシングすることで、光の光量に応じた測定信号(測定データ)を、信号処理部145に出力する。
なお、フィルタ143は、センサ144の画素アレイ部に2次元配列される複数の画素の上部に、オンチップフィルタとして構成されるようにすることができる。
ここで、例えば、指標としてPPFD値を算出する場合には、RGB信号が必要になるので、フィルタ143として、RGBフィルタとIRカットフィルタを組み合わせたものが設けられる。この場合、センサ144の画素アレイ部では、例えば、図7のカラーフィルタとしての配列パターン143Aに示すように、ベイヤー配列により、複数の画素を2次元配列することができる。
ここで、ベイヤー配列とは、緑(G)のG画素が市松状に配され、残った部分に、赤(R)のR画素と、青(B)のB画素とが一列ごとに交互に配される配列パターンである。また、カラーフィルタの配列パターンとしては、配列パターン143Aとして示したベイヤー配列に限らず、他の配列パターンが採用されるようにしてもよい。なお、赤(R)、緑(G)、及び青(B)などの可視領域のフィルタを備えることで、ユーザに提示するための画像を撮像でき、それらを同時に提示することが可能になる。
また、例えば、指標として、NDVI値を算出する場合には、R信号とともにIR信号が必要になるので、フィルタ143として、IRフィルタが設けられる。この場合、例えば、実効指標演算システム10において、センシング装置101を2台設けて、一方のセンシング装置101には、フィルタ143として、配列パターン143AからなるRGBフィルタが設けられ、他方のセンシング装置101には、フィルタ143として、配列パターン143BからなるIRフィルタが設けられるようにする。
このとき、他方のセンシング装置101において、センサ144の画素アレイ部では、例えば、図7のカラーフィルタとしての配列パターン143Bに示すように、すべての画素を、赤外領域(IR)の成分に対応したIR画素として、2次元状に配列することができる。なお、本明細書においては、赤外光もカラーの1つであって、カラーフィルタには、赤外光の波長を透過するIRフィルタも含まれるものとする。
なお、上述した説明では、実効指標演算システム10において、センシング装置101を2台設ける場合に用いられるフィルタ143の例を説明したが、1台のセンシング装置101で、PPFD値とNDVI値の算出に対応させる場合には、フィルタ143として、RGBとIRを組み合わせたフィルタが設けられるようにすればよい。
すなわち、この場合、センサ144の画素アレイ部では、例えば、図7のカラーフィルタとしての配列パターン143Cに示すように、赤(R)、緑(G)、及び青(B)の可視光の波長を透過するRGBフィルタに対応したR,G,B画素のほかに、赤外領域(IR)の成分に対応したIR画素が配される。
図7の配列パターン143Cでは、例えば、横方向に4個の画素が配され、縦方向に2個の画素が配された4×2画素(2個のR画素(R1,R2)、2個のG画素(G1,G2)、2個のB画素(B1,B2)、2個のIR画素(IR1,IR2))が、1セットとされる。そして、このような8画素を1セットとして、n(nは1以上の整数)セットを構成する複数の画素が、画素アレイ部に繰り返し配置されることになる。なお、1セット当たりの画素数は、8画素に限定されることなく、例えば、R,G,B,IR画素を1つずつ含んだ4画素を、1セットとした構成などの他の形態を採用することができる。
なお、指標としてPPFD値を算出する場合には、フィルタ143として、RGBフィルタとIRカットフィルタの代わりに、PPFD値に対応した光学フィルタを設けるようにしてもよい。すなわち、このPPFD値に対応した光学フィルタは、後段のセンサ144がPPFD値に応じた光を検出できるようにするためのフィルタである。したがって、フィルタ143を通過した光は、図1のBに示した光合成有効光量子束密度(PPFD)と同様の特性を有することになる。
信号処理部145は、センサ144から出力される測定データに対し、データを並び替える処理などの所定の信号処理を行い、I/F部146に出力する。
なお、本実施の形態では、PPFD値やNDVI値などの指標は、後段の実効指標演算装置103により算出されるとして説明するが、信号処理部145が、CPUやFPGA等の回路などにより構成されるようにすることで、測定データに基づいて、PPFD値やNDVI値などの指標を算出するようにしてもよい。
I/F部146は、外部出力インターフェース回路などにより構成され、信号処理部145から供給される測定データを、指標測定データとして、ハブ104を介して実効指標演算装置103に出力する。
センシング装置101は、以上のように構成される。
なお、以下の説明では、実効指標演算システム10において、センシング装置101が複数設けられる場合があり、その場合には、符号として、「-1」や「-2」を追加して記述することで、区別するものとする。また、センシング装置101内のフィルタ143やセンサ144などについても同様に区別するものとする。
(実効指標演算装置の構成)
図8は、図6の実効指標演算装置103の構成例を示す図である。
図8において、実効指標演算装置103は、I/F部161、処理部162、記憶部163、及び提示部164から構成される。
I/F部161は、外部入力インターフェース回路などにより構成され、センシング装置101から入力される指標測定データと、環境センサ102から入力される環境測定データを、処理部162に供給する。
処理部162は、例えば、CPUやFPGA等の回路などにより構成される。処理部162は、算出部171及び制御部172を含む。
算出部171は、I/F部161から供給される指標測定データ及び環境測定データに対し、記憶部163に記憶されたルックアップテーブル(LUT:Look Up Table)を参照しながら、所定の信号処理を行うことで、実効PPFD値を算出する。
この信号処理の詳細な内容は後述するが、ここでは、図5に示した手順1乃至手順3に相当する処理として、光化学系反応最大ETR算出処理と、炭素還元反応最大ETR算出処理とが実行され、その結果得られる光化学系反応最大ETRと炭素還元反応最大ETRとを比較して、ボトルネックが決定される。そして、当該ボトルネックに応じたETR(伝達ETR)に相当するPPFD値が、実効PPFD値として算出される。
制御部172は、実効指標演算装置103の各部の動作を制御する。例えば、制御部172は、提示部164に表示される、数値データや画像データ等の各種のデータに応じた情報の表示を制御する。また、制御部172は、センシング装置101や環境センサ102などの外部の装置を制御することができる。
記憶部163は、例えば、半導体メモリなどにより構成される。記憶部163は、制御部172からの制御に従い、数値データや画像データ等の各種のデータを記憶する。また、記憶部163には、実効PPFD値を算出するためのルックアップテーブル(LUT)があらかじめ記憶されている。
詳細は後述するが、このルックアップテーブルとしては、例えば、係数算出LUT(LUT1)、fAPAR算出LUT(LUT2)、ΦPSII算出LUT(LUT3)、CO2律速光合成速度LUT(LUT4)、温度補正係数LUT(LUT5)、及び湿度補正係数LUT(LUT6)が記憶される。なお、これらの各値を算出するための参照情報としては、ルックアップテーブルに限らず、例えば、所定の関数が記憶されていてもよい。この場合には、例えば、所定の関数として提供される、線形又は非線形の方程式を解くことで、値を得ることができる。
提示部164は、例えば、LCD(Liquid Crystal Display)やOELD(Organic Electroluminescence Display)などのディスプレイやスピーカ等により構成される。提示部164は、制御部172からの制御に従い、算出部171により算出された実効PPFD値に関する情報を含む提示情報を提示する。また、提示部164は、制御部172からの制御に従い、記憶部163に記憶された提示情報を提示することができる。ここでは、例えば、提示部164がティスプレイとして構成される場合に、実効PPFD値に応じた数値や画像、テキスト情報などを、提示情報として表示することができる。
なお、図8においては、記憶部163と提示部164は、実効指標演算装置103の内部に設けられるとして説明したが、記憶装置や表示装置として、実効指標演算装置103の外部に設けられるようにしてもよい。この場合、算出部171は、ネットワークを介して外部の記憶装置からルックアップテーブルを取得することになる。また、制御部172は、信号処理で得られた数値データや画像データ等の各種のデータに応じた情報を、外部の表示装置に表示させたり、あるいは、外部の記憶装置に記憶させたりすることができる。
実効指標演算装置103は、以上のように構成される。
(実効指標演算システムの他の構成)
ところで、図6に示した実効指標演算システム10では、パーソナルコンピュータ等の実効指標演算装置103が、ハブ104を介したローカル環境で、実効PPFD値を算出していたが、ネットワークを介したクラウド環境で、実効PPFD値が算出されるようにしてもよい。
図9には、実効指標演算システムの他の構成例として、クラウド環境に対応した実効指標演算システム11の構成例を示している。
図9の実効指標演算システム11において、センシング装置101と環境センサ102は、図6のセンシング装置101と環境センサ102と同様に、指標測定データと環境測定データを測定し、ハブ104を介してクライアント装置105に出力する。
クライアント装置105は、パーソナルコンピュータ等から構成され、ハブ104を介して、センシング装置101と環境センサ102から入力される指標測定データと環境測定データを、ルータ106に出力する。
ルータ106は、例えばモバイル用のルータであり、基地局107を介して、インターネット等のネットワーク108に接続することができる。ルータ106は、クライアント装置105から入力される指標測定データと環境測定データを、ネットワーク108を介して、サーバ109に送信する。
サーバ109は、ネットワーク108を介して、クライアント装置105から送信されてくる指標測定データと環境測定データを受信する。ここで、サーバ109は、図8に示した実効指標演算装置103が有する機能のうち、少なくとも、処理部162及び記憶部163と同様の機能を有している。
すなわち、サーバ109において、処理部162の算出部171は、クライアント装置105から受信した指標測定データ及び環境測定データに対し、記憶部163に記憶されたルックアップテーブルを参照しながら、所定の信号処理を行うことで、図5に示した手順1乃至手順3に相当する処理を実行し、実効PPFD値を算出する。
サーバ109が提示部164を有しているか、あるいはサーバ109と提示部164とが通信可能な場合には、算出部171による信号処理で得られた、実効PPFD値に関する情報を含む提示情報を、提示部164に提示させることができる。また、各種の提示情報のデータは、ストレージ110に記憶されるようにしてもよい。サーバ109は、ストレージ110に記憶された各種の提示情報のデータを読み出し、提示部164に提示させることもできる。
実効指標演算システム11は、以上のように構成される。
<3.実効PPFD値の算出の手順>
(1)実効PPFD値算出処理
(実効PPFD値算出処理の流れ)
まず、図10のフローチャートを参照して、図6の実効指標演算システム10により実行される、実効PPFD値算出処理の流れについて説明する。
ステップS101において、センシング装置101及び環境センサ102は、センシングを行い、そのセンシングにより得られたデータを取得する。
ここでは、センシング装置101によるセンシングで得られた指標測定データと、環境センサ102によるセンシングで得られた環境測定データが、ハブ104を介して実効指標演算装置103に出力される。なお、センシング装置101による測定対象物の測定例については、図11乃至図14を参照して後述する。
ステップS102において、実効指標演算装置103の算出部171は、ステップS101の処理で得られたデータに基づいて、光化学系反応最大ETR算出処理を行う。
この光化学系反応最大ETR算出処理では、上述した図5に示した第1の手順に相当する処理が行われ、光化学系反応から出力されるエネルギーに相当する電子伝達速度(ETR)が、光化学系反応最大ETRとして算出される。なお、光化学系反応最大ETR算出処理の詳細は、図15乃至図19を参照して後述する。
ステップS103において、実効指標演算装置103の算出部171は、ステップS101の処理で得られたデータに基づいて、炭素還元反応最大ETR算出処理を行う。
この炭素還元反応最大ETR算出処理では、上述した図5に示した第2の手順に相当する処理が行われ、環境や植物の種類から決定される炭素還元反応の最大光合成速度に相当する電子伝達速度(ETR)が、炭素還元反応最大ETRとして算出される。なお、炭素還元反応最大ETR算出処理の詳細は、図20及び図21を参照して後述する。
ステップS104において、実効指標演算装置103の算出部171は、ステップS102の処理で算出された光化学系反応最大ETRと、ステップS103の処理で算出された炭素還元反応最大ETRとを比較し、その比較結果に応じて、ボトルネックを決定する。
ここでは、光化学系反応の最大値である光化学系反応最大ETRと、炭素還元反応の最大値である炭素還元反応最大ETRとが比較され、より小さいほうが、ボトルネックであると判断される。すなわち、光化学系反応最大ETRのほうが小さければ、現在の光合成速度は、光化学系反応が律速していることになる。逆に、炭素還元反応最大ETRのほうが小さければ、現在の光合成速度は、炭素還元反応が律速していることになる。
ステップS105において、実効指標演算装置103の算出部171は、ステップS104の処理で決定されたボトルネックに応じて、より小さいほうのETR(この量が伝達ETRとして植物を流れ、植物の成長に寄与する)に相当するPPFD値を、実効PPFD値として算出する。この実効PPFD値は、下記の式(1)により算出することができる。
実効PPFD値 = 伝達ETR / (fAPAR × m × ΦPSII) ・・・(1)
ただし、式(1)において、mは、植物に照射される光(太陽光)のうち、PSIIへの分配率であって、約0.5である値を示す。
なお、ステップS104とステップS105の処理が、上述した図5に示した第3の手順に相当する処理となる。
ステップS106において、実効指標演算装置103の制御部172は、ステップS105の処理で算出された実効PPFD値に関する情報を含む提示情報を、提示部164に提示する。
ここでは、提示部164には、実効PPFD値のほか、例えば、光化学系反応最大ETRや炭素還元反応最大ETR、伝達ETR、PPFE値など、当該実効PPFD値に関連する各種の提示情報を、各種の表示形態で表示することができる。なお、実効PPFD値等の提示情報の表示例は、図22乃至図28を参照して後述する。
ステップS107においては、例えばユーザの指示に応じて、処理を終了するかどうかが判定される。ステップS107において、処理を終了しないと判定された場合、処理は、ステップS101に戻り、上述したステップS101乃至S106の処理が繰り返される。
これにより、実効指標演算装置103では、ステップS105の処理で算出される実効PPFD値に関する情報を、記憶部163などに、時系列で蓄積することができる。なお、本明細書において、蓄積とは、一時的又は永続的にデータを記録することを意味する。また、ステップS107において、処理を終了すると判定された場合、図10の実効PPFD値算出処理は終了される。
以上、実効PPFD値算出処理の流れについて説明した。
なお、図10の説明では、ステップS101の処理が、センシング装置101及び環境センサ102により実効され、ステップS102乃至S106の処理が、実効指標演算装置103により実行されるとして説明したが、ステップS102乃至S106の処理は、実効指標演算装置103以外の他の装置が実行するようにしてもよい。
例えば、詳細は後述するが、ステップS102の処理では、PPFD値やNDVI値等の指標を求める必要があるが、この指標を求める処理を、センシング装置101が実行するようにしてもよい。また、ローカル環境としての実効指標演算システム10(図6)の構成ではなく、クラウド環境としての実効指標演算システム11(図9)の構成を採用した場合には、例えば、サーバ109が、ステップS102乃至S106の処理を実行することができる。
(2)センシング装置の測定例
次に、図11乃至図14を参照して、センシング装置101により実行される測定対象物の測定の例について説明する。
(センシング装置の測定時の構成例)
図11には、測定対象物を測定するための測定装置として、移動観測を行う移動測定装置70と、定点観測を行う定点測定装置80を示している。
移動測定装置70は、例えば無人航空機(UAV:Unmanned Aerial Vehicle)であって、プロペラ状の回転翼71が回転することで飛行し、上空から、圃場の植物等の測定対象物1をセンシング(空撮)する。
移動測定装置70は、PPFD値を測定するためのセンシング装置101-1と、NDVI値を測定するためのセンシング装置101-2を有している。また、センシング装置101-1とセンシング装置101-2の前方には、所定の形状(例えば、矩形の形状)からなる基準反射板20が取り付けられている。
これにより、移動測定装置70においては、センシング装置101-1とセンシング装置101-2によりセンシングされる対象物(被写体)として、圃場の植物等の測定対象物1と基準反射板20が、同一の画角内に存在することになる。例えば、基準反射板20としては、反射率が一定となるグレー反射板を用いることができる。
なお、移動測定装置70は、無線操縦のほか、例えば、飛行ルートを座標データとしてあらかじめ記憶しておくことで、GPS(Global Positioning System)などの位置情報を用いて自律飛行するようにしてもよい。また、図11では、移動測定装置70が、回転翼71を有する回転翼機であるとして説明したが、移動測定装置70は、固定翼機であってもよい。
定点測定装置80は、固定脚81によって、圃場の植物等の測定対象物1をセンシングすることが可能な位置に固定される。定点測定装置80は、移動測定装置70と同様に、PPFD値を測定するためのセンシング装置101-1と、NDVI値を測定するためのセンシング装置101-2を有し、その前方には、所定の形状からなる基準反射板20が取り付けられている。
すなわち、センシング装置101-1とセンシング装置101-2は、移動測定装置70又は定点測定装置80の一部として構成され、測定対象物1のセンシングを行い、その結果得られる指標測定データを出力することができる。
ここで、図12のAには、横軸を波長(nm)とし、縦軸を反射率としたときの、基準反射板20(図11)の特性の例を示している。図12のAに示すように、基準反射板20の反射率は、約0.18で一定であり、分光反射率の特性がフラットになっている。
図12のBには、横軸を波長(nm)とし、縦軸を反射率としたときの、測定対象物1(図11)の特性の例を示している。図12のBに示すように、圃場の植物等の測定対象物1の反射率は、700nm付近までは0に近い値となっているが、700nmの近傍で上昇し、700nmを超える範囲では、約0.8(80%)に近い値となっている。
また、センシング装置101-1は、基準反射板20のPPFD値を測定するための指標測定データを出力するが、PPFD値を算出するためには、RGB信号が必要なる。そのため、センシング装置101-1には、フィルタ143-1として、図13のAに示す特性を有するRGBフィルタ(以下、RGBフィルタ143-1と記述する)が設けられる。例えば、RGBフィルタ143-1の配列パターンとしては、図7に示した配列パターン143Aを用いることができる。
図13のAには、横軸を波長(nm)とし、縦軸を透過率としたときの、RGBフィルタ143-1の特性の例を示している。図13のAに示すように、例えば、RGBフィルタ143-1は、450~495nmの青(B)の光の波長を透過するBフィルタと、495~570nmの緑(G)の光の波長を透過するGフィルタと、620~750nmの赤(R)の光の波長を透過するRフィルタから構成される。
一方で、センシング装置101-2は、圃場の植物等の測定対象物1のNDVI値を測定するための指標測定データを出力するが、NDVI値を算出するためには、R信号のほか、IR信号が必要となる。そのため、センシング装置101-2には、フィルタ143-2として、図13のBに示す特性を有するIRフィルタ(以下、IRフィルタ143-2と記述する)が設けられる。例えば、IRフィルタ143-2の配列パターンとしては、図7に示した配列パターン143Bを用いることができる。
図13のBには、横軸を波長(nm)とし、縦軸を透過率としたときの、IRフィルタ143-2の特性の例を示している。図13のBに示すように、例えば、IRフィルタ143-2は、800~940nmの赤外領域(IR)の光の波長を透過する。
(センシング装置の測定時の信号処理の流れ)
次に、図14を参照して、基準反射板20と、測定対象物1と、RGBフィルタ143-1と、IRフィルタ143-2とが、図12及び図13に示した特性を有している場合に、センシング装置101-1とセンシング装置101-2で処理される信号の流れを説明する。
なお、図14においては、基準反射板20又は測定対象物1からの反射光に対し、図中の上側の系列が、RGBフィルタ143-1が取り付けられたセンシング装置101-1で処理される信号の流れを示し、図中の下側の系列が、IRフィルタ143-2が取り付けられたセンシング装置101-2で処理される信号の流れを示している。
図14においては、太陽光(環境光)が基準反射板20に反射し、その反射光が、センシング装置101-1とセンシング装置101-2に入射される。この太陽光の分光特性を、分光特性S1で表している。また、基準反射板20の反射光の分光特性を、分光特性S2で表している。すなわち、基準反射板20は、図12のAに示したフラットな反射特性を有しているので、基準反射板20の反射光の分光特性は、分光特性S2のようになる。
また、太陽光は、圃場の植物等の測定対象物1に反射し、その反射光が、センシング装置101-1とセンシング装置101-2に入射される。測定対象物1の反射光の分光特性を、分光特性S3で表している。すなわち、測定対象物1は、図12のBに示した形状の反射特性を有しているので、測定対象物1の反射光の分光特性は、分光特性S3のようになる。
センシング装置101-1においては、基準反射板20と測定対象物1の反射光が、レンズ141-1に入射され、RGBフィルタ143-1を通過して、センサ144-1のセンサ面に像を結ぶことになる。
センシング装置101-1において、RGBフィルタ143-1の特性を、分光特性S4で表している。この分光特性S4は、図13のAに示したRGBフィルタの透過特性に対応している。そして、基準反射板20の反射光の分光特性S2と、RGBフィルタ143-1の分光特性S4とを重ねた分光特性S6に示すように、センサ144-1は、そのセンサ面で受光された光を、Br,Gr,Rrの成分のレベルとして出力する。すなわち、このBr,Gr,Rrのレベルに応じた信号が、センシング装置101-1により基準反射板20をセンシングして得られたRGBデータ(RGB信号)となる。
また、測定対象物1の反射光の分光特性S3と、RGBフィルタ143-1の分光特性S4とを重ねた分光特性S7に示すように、センサ144-1は、そのセンサ面で受光された光を、Bp,Gp,Rpの成分のレベルとして出力する。すなわち、このBp,Gp,Rpのレベルに応じた信号が、センシング装置101-1により測定対象物1(圃場の植物)をセンシングして得られたRGBデータ(RGB信号)となる。
信号処理部145-1は、センサ144-1からのデータを並び替える処理などを行い、その結果得られるデータを、I/F部146-1を介して出力する。
一方で、センシング装置101-2においては、基準反射板20と測定対象物1の反射光が、レンズ141-2に入射され、IRフィルタ143-2を通過して、センサ144-2のセンサ面に像を結ぶことになる。
センシング装置101-2において、IRフィルタ143-2の特性を、分光特性S5で表している。この分光特性S5は、図13のBに示したIRフィルタの透過特性に対応している。そして、基準反射板20の反射光の分光特性S2と、IRフィルタ143-2の分光特性S5とを重ねた分光特性S8に示すように、センサ144-2は、そのセンサ面で受光された光を、IRrの成分のレベルとして出力する。すなわち、このIRrのレベルに応じた信号が、センシング装置101-2により基準反射板20をセンシングして得られたIRデータ(IR信号)となる。
また、測定対象物1の反射光の分光特性S3と、IRフィルタ143-2の分光特性S5とを重ねた分光特性S9に示すように、センサ144-2は、そのセンサ面で受光された光を、IRpの成分のレベルとして出力する。すなわち、このIRpのレベルに応じた信号が、センシング装置101-2により測定対象物1(圃場の植物)をセンシングして得られたIRデータ(IR信号)となる。
信号処理部145-2は、センサ144-2からのデータを並び替える処理などを行い、その結果得られるデータを、I/F部146-2を介して出力する。
以上のように、センシング装置101-1とセンシング装置101-2によりセンシングが行われることで、測定対象物1と基準反射板20を含むセンシング画像のRGBデータ(RGB信号)とIRデータ(IR信号)とが、指標測定データとして取得される。
なお、図11乃至図14においては、センシング装置101-1とセンシング装置101-2が2台設けられる例を説明したが、センシング装置101の台数は、2台に限定されることはない。
例えば、上述したように、センシング装置101において、センサ144の画素アレイ部に2次元配列される複数の画素が、カラーフィルタとしての配列パターン143C(図7)に対応した画素配列を有するようにすることで、RGB信号のほかに、IR信号を取得することができる。そのため、このようなフィルタ143を用いる場合には、センシング装置101を1台で構成することができる。ただし、センシング装置101-1のように、フィルタ143として、RGBフィルタとIRカットフィルタの組み合わせを用いることで、特殊な光学フィルタを持たない一般的なデジタルカメラやデジタルビデオカメラ等と同様の構成とすることができる。
(3)光化学系反応最大ETR算出処理
(光化学系反応最大ETR算出処理の流れ)
次に、図15のフローチャートを参照して、図10のステップS102に対応する光化学系反応最大ETR算出処理の詳細について説明する。
ステップS121において、実効指標演算装置103の処理部162は、指標測定データとして、センシング装置101-1(図11)によるセンシングで得られたRGBデータと、センシング装置101-2(図11)によるセンシングで得られたIRデータを取得する。すなわち、ここでは、RGBデータとIRデータの画像データが、処理部162に取り込まれることになる。
ステップS122において、実効指標演算装置103の算出部171は、ステップS121の処理で取得されたRGBデータに基づいて、記憶部163に記憶された係数算出LUT(LUT1)を参照して、PPFD値の算出に必要となる係数W1,係数W2,係数W3を取得する。
具体的には、まず、RGBデータ(に対応したセンシング画像)における基準反射板20の領域に対応する各画素から得られる、Br信号、Gr信号、及びRr信号をそれぞれ平均化することで、Br-ave信号、Gr-ave信号、及びRr-ave信号が得られる。次に、この平均化の処理で得られる、Br-ave信号、Gr-ave信号、及びRr-ave信号に基づいて、Br-ave信号とRr-ave信号との比又はBr-ave信号とGr-ave信号との比を算出することで、Br-ave/Rr-ave値又はBr-ave/Gr-ave値が得られる。
ここで、図16のAには、係数算出LUT(LUT1)の例を示している。図16のAに示すように、係数算出LUT(LUT1)には、Br-ave/Rr-ave値又はBr-ave/Gr-ave値と、係数W1,係数W2,係数W3とが対応付けられている。したがって、係数算出LUT(LUT1)から、Br-ave/Rr-ave値又はBr-ave/Gr-ave値から得られる分光特性の傾きに応じた係数W1,係数W2,係数W3を取得することができる。
これらの関係は、下記の式(2)のように表すことができる。
W1, W2, W3 = LUT1(Br-ave / Rr-ave, Br-ave / Gr-ave) ・・・(2)
なお、ここでは、係数算出LUT(LUT1)を参照するに際し、Br-ave信号とRr-ave信号との比、又はBr-ave信号とGr-ave信号との比を用いる場合を説明したが、Gr-ave信号とRr-ave信号との比、すなわち、Gr-ave/Rr-ave値を用いるようにしてもよい。
図15の説明に戻り、ステップS123において、実効指標演算装置103の算出部171は、ステップS121の処理で得られるRGBデータ、及び、ステップS122の処理で得られる係数Wに基づいて、基準反射板20のPPFD値を算出する。
ここでは、下記の式(3)に示すように、Br-ave信号、Gr-ave信号、Rr-ave信号に対し、係数W1,係数W2,係数W3をそれぞれ乗ずることで、B信号のPPFD値(PPFD(b))、G信号のPPFD値(PPFD(g))、R信号のPPFD値(PPFD(r))を求めることができる。
PPFD(b) = W1 × Br-ave
PPFD(g) = W2 × Gr-ave
PPFD(r) = W3 × Rr-ave ・・・(3)
このようにして基準反射板20のPPFD値を算出する理由であるが、次の通りである。すなわち、PPFD値は、測定対象物1の反射率によって変化するものではなく、日向であれば、基準反射板20に照射されるPPFD値も、測定対象物1に照射されるPPFD値も同じ値となる。そして、ここでは、逆にこれを前提にして、反射率が変化しない基準反射板20の反射光を捉えることで、基準反射板20のPPFD値を求めるようにしている。なお、ステップS122,S123の処理で算出されるPPFD値の算出方法の詳細については、図18及び図19を参照して後述する。
ステップS124において、実効指標演算装置103の処理部162は、指標測定データとして、センシング装置101-1(図11)によるセンシングで得られたRGBデータと、センシング装置101-2(図11)によるセンシングで得られたIRデータを取得する。すなわち、ここでは、RGBデータとIRデータの画像データが、処理部162に取り込まれることになる。
ステップS125において、実効指標演算装置103の算出部171は、ステップS124の処理で取得されたRGBデータとIRデータに基づいて、測定対象物1の反射率とNDVI値を算出する。
ここでは、基準反射板20の反射率が既知、すなわち、B,G,R,IRの各成分で、同一の18%の反射率であることがわかっていることとする。そこで、この反射率の値に対し、測定対象物1の反射光に相当する、Bp-ave信号、Gp-ave信号、Rp-ave信号、及びIRp-ave信号と、Br-ave信号、Gr-ave信号、Rr-ave信号、及びIRr-ave信号との比をとることで、測定対象物1の反射率を求めることができる。
なお、Bp-ave信号、Gp-ave信号、Rp-ave信号、及びIRp-ave信号は、RGBデータ(に対応したセンシング画像)における測定対象物1の領域に対応する各画素から得られるBp信号、Gp信号、Rp信号、及びIRp信号をそれぞれ平均化することで得られる。また、Br-ave信号、Gr-ave信号、Rr-ave信号、及びIRr-ave信号は、RGBデータ(に対応したセンシング画像)における基準反射板20の領域に対応する各画素から得られるBr信号、Gr信号、Rr信号、及びIRr信号をそれぞれ平均化することで得られる。
すなわち、測定対象物1に対するB,G,R,IRの各成分の反射率は、下記の式(4)により求めることができる。
Dp(b) = Dr(18%) × Bp-ave / Br-ave
Dp(g) = Dr(18%) × Gp-ave / Gr-ave
Dp(r) = Dr(18%) × Rp-ave / Rr-ave
Dp(ir) = Dr(18%) × IRp-ave / IRr-ave ・・・(4)
そして、この式(4)により求められる値を利用することで、NDVI値を、下記の式(5)により求めることができる。
NDVI値 = (Dp(ir) - Dp(r)) / (Dp(ir) + Dp(r)) ・・・(5)
ただし、式(5)において、Dp(ir)は、赤外領域の反射率を表し、Dp(r)は、可視領域の赤(R)の反射率を表している。このNDVI値(正規化植生指数)は、測定対象物1としての圃場の植物の分布状況や活性度を示す指標となる。
ここで、NDVI値は、R成分とIR成分をパラメータとする植生指数であるため、式(5)においては、式(4)により得られる反射率のうち、Dp(r)とDp(ir)のみが用いられている。また、式(4)により得られる反射率のうち、Dp(b)とDp(g)については、Dp(r)とともに、後述する式(8)によって、B,G,Rの各成分の光合成有効放射吸収率(fAPAR)を求める際に用いられる。
なお、Bp-ave信号などは、センシングで得られるセンシング画像(撮像画像)における、測定対象となる植物が含まれる領域全体から算出してもよいし、あるいは、当該領域を複数の小領域に分けて、小領域ごとに算出されるようにしてもよい。このように小領域ごとに分けることで、例えば、後述する図28の2次元情報を表示する際に、植物の領域ごとの分布図を生成することができる。
ただし、このような処理を行う前提として、センシングで得られるセンシング画像(撮像画像)に含まれる、植物の領域に関する情報をあらかじめ把握しておくことが必要となる。ここでは、例えば、センシング画像に対して、植物の領域を認識するための処理を施すことで、植物の領域に関する情報を得ることができる。この植物の領域を認識するための処理としては、公知の画像認識処理を用いることができる。また、画像認識処理の代わりに、ユーザが、センシング画像から、植物の領域を特定するようにしてもよい。
ステップS126において、実効指標演算装置103の算出部171は、ステップS125の処理で算出された測定対象物1の反射率とNDVI値に基づいて、記憶部163に記憶されたfAPAR算出LUT(LUT2)を参照することで、測定対象物1の光合成有効放射吸収率(fAPAR)を取得する。
ここで、植物(植生)に照射された光は、反射光と、透過光と、吸収光とに分離され、これらの光のうち、光合成に活用されるのは、吸収光のみである。これを、植物の反射率と、透過率と、吸収率との関係で表すと、下記の式(6)のように表すことができる。
1 = (反射率) + (透過率) + (吸収率) ・・・(6)
一般に、植物の葉の反射率と透過率は、同等程度であり、その残りの光が吸収されることになる。しかしながら、葉面積指数(LAI:Leaf Area Index)が、2や3程度になると、葉が重なり合って、透過光の反射と吸収を繰り返し、下記の式(7)に、近づくことになる。なお、葉面積指数(LAI)は、単位地表面積当たりの葉面積の合計値を表している。
1 = (反射率) + (吸収率) ・・・(7)
また、葉面積指数(LAI)の変化は、正規化植生指数(NDVI)と相関があることが知られている。そこで、fAPAR算出LUT(LUT2)として、1 - Dp(反射率)を横軸にとり、NDVI値の大きさに応じて、光合成有効放射吸収率(fAPAR)が変化するルックアップテーブルをあらかじめ用意する。
図16のBには、fAPAR算出LUT(LUT2)を例示している。このfAPAR算出LUT(LUT2)では、NDVI値(葉面積指数(LAI))が大きい場合と、NDVI値(葉面積指数(LAI))が小さい場合のルックアップテーブル(LUT)がそれぞれ用意されている。したがって、fAPAR算出LUT(LUT2)から、測定対象物1の反射率とNDVI値に応じて、測定対象物1の光合成有効放射吸収率(fAPAR)を取得することができる。
これらの関係は、測定対象物1に対するB,G,Rの各成分の光合成有効放射吸収率(fAPAR)を、fAPAR(b),fAPAR(g),fAPAR(r)とすれば、下記の式(8)のように表すことができる。
fAPAR(b) = LUT2(1 - Dp(b))
fAPAR(g) = LUT2(1 - Dp(g))
fAPAR(r) = LUT2(1 - Dp(r)) ・・・(8)
なお、上述したように、fAPARの値を算出するための参照情報としては、fAPAR算出LUT(LUT2)に限らず、例えば、fAPARの値を算出するための関数に値を代入することで、NDVI値から、fAPARの値を直接求めるようにすることができる。
図17には、fAPAR算出関数を例示している。このfAPAR算出関数では、下記の式(8A)に示すように、NDVI値から直接、fAPARの値を算出することができる。
fAPAR = Gain(NDVI) ・・・(8A)
ただし、式(8A)においては、fAPAR(b) = fAPAR(g) = fAPAR(r)の関係を有することになる。また、式(8A)では、Dpの値を用いておらず、上述のfAPAR算出LUT(LUT2)のように、Dpの値とNDVI値を用いた場合と比べれば、若干精度が低下する可能性はあるが、fAPARの値を求めるための処理を簡略化することができる。
図15の説明に戻り、ステップS127において、実効指標演算装置103の算出部171は、記憶部163に記憶されたΦPSII算出LUT(LUT3)を参照して、測定対象物1における光化学系反応の量子収率(ΦPSII)を取得する。
ここで、光化学系反応の量子収率(ΦPSII)は、クロロフィル蛍光測定を行うことで、その様子を観測することができる。すなわち、光化学系反応の量子収率(効率)は、植物の育った場所や環境、季節などにより異なる。そこで、ターゲットとする植物に対し、定期的なクロロフィル蛍光測定を行い、ΦPSII算出LUT(LUT3)として、場所、環境、季節に応じてΦPSIIが変化するLUTをあらかじめ用意する。
図16のCには、ΦPSII算出LUT(LUT3)を例示している。このΦPSII算出LUT(LUT3)では、C3植物について、例えば場所ごとに、春・秋、夏、冬などの各季節に応じたルックアップテーブルが用意されている。したがって、例えば、測定対象物1がC3植物である場合に、ΦPSII算出LUT(LUT3)から、その測定時期や測定場所などに応じて、当該測定対象物1における光化学系反応の量子収率(ΦPSII)を取得することができる。
これらの関係は、下記の式(9)のように表すことができる。
ΦPSII = LUT3(季節、場所、種類) ・・・(9)
なお、C3植物とは、光合成の際に吸収される二酸化炭素(CO2)が、植物体内で最初にどのような有機物に合成されるかにより分類されたものであって、還元的ペントースリン酸回路だけにより光合成炭素同化を行う植物である。また、このような分類には、C3植物のほかに、C4植物やCAM植物なども存在するが、例えばC4植物の測定を行う場合には、C4植物用のΦPSII算出LUT(LUT3)をあらかじめ用意しておく必要がある。
例えば、C3植物には、イネ(稲)やコムギ(小麦)など、ほとんどの植物が含まれる。また、C4植物としてはトウモロコシやサトウキビが、CAM植物としてはサボテンが、代表的な植物として挙げられる。なお、シバ(芝)は、その種類によってC3植物又はC4植物に分類され、例えば、ベント芝は、C3植物とされるが、ノシバやコウライシバは、C4植物とされる。
また、例えば、植物ごとに、季節と場所に応じたデータを蓄積して、データベース化しておいて、当該データベースに蓄積されたデータを利用してΦPSII算出LUT(LUT3)を作成することで、より最適なΦPSII算出LUT(LUT3)を用意することができる。ただし、植物の種類、季節、場所以外のパラメータが含まれるようにしてもよい。また、当該データベースに蓄積されたデータに対する機械学習を行ってもよい。
図15の説明に戻り、ステップS128において、実効指標演算装置103の算出部171は、ステップS121乃至S127の処理で得られたデータに基づいて、測定対象物1における光化学系反応最大ETRを算出する。
ここで、光化学系反応最大ETRの算出方法であるが、まず、植物に照射された光量子量(PPFD値)のうち、当該植物に有効に吸収された光量子量(実際に当該植物の成長に寄与したと考えられる光量子量)を求めるために、ステップS123の処理で得られたPPFD値に対し、ステップS126の処理で得られたfAPARを乗ずる。
次に、PPFD値とfAPARとを乗じて得られた値に対し、植物に照射された光のうち、PSIIへの分配率m(一般的には0.5とみなされる)と、ステップS127の処理で得られた光化学系反応の量子収率(ΦPSII)を乗ずる。これにより、光化学系反応最大ETRが算出される。
すなわち、測定対象物1に対するB,G,Rの各成分の光化学系反応最大ETRを、ETR1(b),ETR1(g),ETR1(r)とすれば、光化学系反応最大ETRは、ETR1として、下記の式(10)と、式(11)を演算することで求められる。
ETR1(b) = PPFD(b) × fAPAR(b) × m ×ΦPSII
ETR1(g) = PPFD(g) × fAPAR(g) × m ×ΦPSII
ETR1(r) = PPFD(r) × fAPAR(r) × m ×ΦPSII ・・・(10)
ETR1 = ETR1(b) + ETR1(g) + ETR1(r) ・・・(11)
なお、植物生理学の分野では、ΦPSIIは、炭素還元反応まで含んで、植物全体を流れる電子伝達速度(ETR)を生成するときの光化学系反応効率を表すことが多い。すなわち、炭素還元反応に流れる電子伝達速度(ETR)の量に応じて、光化学系反応効率も変化する。一方で、本技術では、植物に照射されて吸収された光量子量(PPFD値)から、光化学系反応が最大となるときの光化学系反応効率のことを、ΦPSIIとして定義している。
ステップS128の処理が終了すると、処理は、図10のステップS102に戻り、それ以降の処理が実行される。
以上、光化学系反応最大ETR算出処理の流れについて説明した。この光化学系反応最大ETR算出処理では、光化学系反応から出力されるエネルギーに相当する電子伝達速度(ETR)が、光化学系反応最大ETRとして算出される。
なお、光化学系反応最大ETR算出処理では、センシングの結果得られる撮像画像内に、複数種類の植物が存在する場合には、各植物の領域ごとに、実効PPFD値を求めるために用いるルックアップテーブルを切り替えるようにしてもよい。これにより、1つの画面内に、複数の植物が映っている場合でも、同時に適切な実効PPFD値を提示することが可能となる。
(PPFD値の算出方法の詳細)
ここで、図18乃至図19を参照して、図15のステップS122,S123の処理で算出されるPPFD値の算出方法の詳細について説明する。
(実効指標演算装置の処理部の構成)
図18は、図8の実効指標演算装置103の処理部162(の算出部171)の詳細な構成例を示す図である。
図18において、実効指標演算装置103の算出部171は、PPFD値の算出するために、B/R値算出部221-1、B/G値算出部221-2、G/R値算出部221-3、W1決定部222-1、W2決定部222-2、W3決定部222-3、乗算器223-1、乗算器223-2、及び乗算器223-3を含んでいる。
算出部171においては、センシング装置101-1から入力されるRGBデータから得られるBr-ave信号、Gr-ave信号、及びRr-ave信号のうち、Br-ave信号は、B/R値算出部221-1とB/G値算出部221-2と乗算器223-1に入力される。また、Gr-ave信号は、B/G値算出部221-2とG/R値算出部221-3と乗算器223-2に入力され、Rr-ave信号は、B/R値算出部221-1とG/R値算出部221-3と乗算器223-3に入力される。
B/R値算出部221-1は、そこに入力されるBr-ave信号を、Rr-ave信号で除算し、その結果得られるBr-ave/Rr-ave値を、W1決定部222-1乃至W3決定部222-3のそれぞれに出力する。
B/G値算出部221-2は、そこに入力されるBr-ave信号を、Gr-ave信号で除算し、その結果得られるBr-ave/Gr-ave値を、W1決定部222-1乃至W3決定部222-3のそれぞれに出力する。
G/R値算出部221-3は、そこに入力されるGr-ave信号を、Rr-ave信号で除算し、その結果得られるGr-ave/Rr-ave値を、W1決定部222-1乃至W3決定部222-3のそれぞれに出力する。
W1決定部222-1は、そこに入力されるBr-ave/Rr-ave値、Br-ave/Gr-ave値、又はGr-ave/Rr-ave値に応じた係数W1を決定し、乗算器223-1に出力する。乗算器223-1は、そこに入力されるBr-ave信号に、W1決定部222-1からの係数W1を乗じる。
W2決定部222-2は、そこに入力されるBr-ave/Rr-ave値、Br-ave/Gr-ave値、又はGr-ave/Rr-ave値に応じた係数W2を決定し、乗算器223-2に出力する。乗算器223-2は、そこに入力されるGr-ave信号に、W2決定部222-2からの係数W2を乗じる。
W3決定部222-3は、そこに入力されるBr-ave/Rr-ave値、Br-ave/Gr-ave値、又はGr-ave/Rr-aveに応じた係数W3を決定し、乗算器223-3に出力する。乗算器223-3は、そこに入力されるRr-ave信号に、W3決定部222-3からの係数W3を乗じる。
ここで、B信号(Br-ave信号)、G信号(Gr-ave信号)、R信号(Rr-ave信号)の各値のそれぞれに対し、係数W1,係数W2,係数W3をそれぞれ乗じる理由について説明する。図19には、PPFD値と、RGBの色成分の値との関係を示している。図19のAは、縦軸を分光放射輝度(W/sr・m2/nm)とし、横軸を波長(nm)としたときの屋外における太陽光の分光特性を示している。また、図19のBは、縦軸をRGB信号の信号レベルとし、横軸を波長(nm)としたときの図7の配列パターン143Aのカラーフィルタを備えたセンサから出力されるRGB信号を示している。
図19のAにおいては、時間や季節、天候などの条件に応じた太陽光の分光特性として、夏の太陽光、夕方の太陽光、日陰の太陽光、及びくもりの太陽光の分光特性を示している。このとき、PPFD値は、太陽光の各波長のレベルに、各波長を乗じた値の積分値として得ることができる。すなわち、PPFD値は、次の式(12)により算出される。
なお、この式(12)において、Aは、分光放射輝度(W/sr・m2/nm)を表し、λ(nm)は、波長を表している。また、λ=400nm~700nmは、光合成有効光量子束密度(PPFD)の葉緑素(クロロフィル)の吸収波長に対応している。さらに、C1は、係数である。
図19のAにおいては、夏の太陽光のPPFD値として1500umol、夕方の太陽光のPPFD値として660umol、日陰の太陽光のPPFD値として500umol、くもりの太陽光のPPFD値として100umolがそれぞれ算出されている。このように、太陽光の分光特性、具体的には、波長を横軸、分光放射輝度を縦軸とし、分光放射輝度を0~1の範囲に正規化した場合のグラフの傾きによって、PPFD値は大きく異なっている。
ここで、図19のBに示すように、図7の配列パターン143Aでは、入射光が、B,G,Rの画素ごとに対応する波長帯域の信号が積分された値が、センサから出力される。ここで、RGBの信号から、PPFD値を求めるためには、B信号、G信号、R信号の各値に対し、それぞれの係数W1,係数W2,係数W3を乗じて、PPFD値として求められるべき値と同等の結果が得られるように、係数W1,係数W2,係数W3を制御すればよい。
ここで、センシング装置101-1においては、フィルタ143-1が、RGBフィルタ(RGBフィルタ143-1)とIRカットフィルタから構成され、センサ144-1からの出力がRGBの信号となる。
そのため、センシング装置101-1からのRGBデータを処理する実効指標演算装置103の算出部171においても、B信号(Br-ave信号)、G信号(Gr-ave信号)、R信号(Rr-ave信号)の各値に対し、それぞれの係数W1,係数W2,係数W3を乗じて、PPFD値として求められるべき値と同等の結果が得られるように、係数W1,係数W2,係数W3を制御すればよいことになる。
すなわち、実効指標演算装置103の算出部171においては、次の式(13)の関係を満たすように、係数W1,係数W2,係数W3を制御すればよいと言える。
PPFD = C2 × (W1 × B + W2 × G + W3 × R) ・・・(13)
なお、この式(13)において、B,G,Rは、B信号(Br-ave信号),G信号(Gr-ave信号),R信号(Rr-ave信号)の各値をそれぞれ表し、W1,W2,W3は、係数W1,係数W2,係数W3をそれぞれ表している。また、C2は、係数である。
ここで、図18の算出部171において、W1決定部222-1は、Br-ave/Rr-ave値、Br-ave/Gr-ave値、又はGr-ave/Rr-ave値に応じた係数W1を決定している。同様に、W2決定部222-2は、Br-ave/Rr-ave値、Br-ave/Gr-ave値、又はGr-ave/Rr-ave値に応じた係数W2を決定し、W3決定部222-3は、Br-ave/Rr-ave値、Br-ave/Gr-ave値、又はGr-ave/Rr-ave値に応じた係数W3を決定している。
すなわち、W1決定部222-1乃至W3決定部222-3では、センシング装置101-1からのRGBデータから得られるBr-ave信号、Gr-ave信号、Rr-ave信号の各値から、Br-ave信号とRr-ave信号との比、Br-ave信号とGr-ave信号との比、又はGr-ave信号とRr-ave信号との比を算出することで、その比の値(Br-ave/Rr-ave値、Br-ave/Gr-ave値、又はGr-ave/Rr-ave値)から、太陽光の分光特性の傾き(に相当する値)を得るすることができる。
そして、実効指標演算装置103においては、記憶部163に、太陽光の分光特性の傾き(Br-ave/Rr-ave値、Br-ave/Gr-ave値、又はGr-ave/Rr-ave値から得られる分光特性の傾き)と、係数W1,係数W2,係数W3とを対応付けた係数算出LUT(LUT1)を記憶しておくようにする。これにより、算出部171のW1決定部222-1乃至W3決定部222-3では、この係数算出LUT(LUT1)から、Br-ave/Rr-ave値、Br-ave/Gr-ave値、又はGr-ave/Rr-ave値から得られる分光特性の傾きに応じた係数W1乃至係数W3を決定することができる。
すなわち、W1決定部222-1では、係数算出LUT(LUT1)を参照することで、Br-ave/Rr-ave値等から得られた分光特性の傾きに応じた係数W1が決定される。その結果、乗算器223-1では、Br-ave信号に、W1決定部222-1により決定された係数W1が乗じられ、B信号のPPFD値(W1×Br-ave)が求められる。
また、W2決定部222-2では、係数算出LUT(LUT1)を参照することで、Br-ave/Rr-ave値等から得られた分光特性の傾きに応じた係数W2が決定される。その結果、乗算器223-2では、Gr-ave信号に、W2決定部222-2により決定された係数W2が乗じられ、G信号のPPFD値(W2×Gr-ave)が求められる。
また、W3決定部222-3では、係数算出LUT(LUT1)を参照することで、Br-ave/Rr-ave値等から得られた分光特性の傾きに応じた係数W3が決定される。その結果、乗算器223-3では、Rr-ave信号に、W3決定部222-3により決定された係数W3が乗じられ、R信号のPPFD値(W3×Rr-ave)が求められる。
そして、算出部171では、上述の式(13)に従い、乗算器223-1からの出力(W1×Br-ave)と、乗算器223-2からの出力(W2×Gr-ave)と、乗算器223-3からの出力(W3×Rr-ave)が加算されることで、PPFD値(W1×Br-ave + W2×Gr-ave + W3×Rr-ave)が算出される。
以上、PPFD値の算出方法の詳細について説明した。
なお、ここでは、例えば、グレー反射板等の分光反射特性がフラットな基準反射板を用いた場合を例に説明したが、分光反射特性がフラットではない領域(例えば、スタジアムにおけるアンツーカなど)を基準反射板(基準反射領域)として用いる場合には、当該基準反射領域の反射の影響で、センシング装置101-1から出力されるRGBデータは、グレー反射板などを用いた場合とは異なる。しかしながら、この場合でも、アンツーカ等の分光反射特性がフラットではない基準反射領域に応じた係数算出LUT(LUT1)をあらかじめ用意して、PPFD値の算出の際には、当該係数算出LUT(LUT1)を用いることで、グレー反射板等の分光反射特性がフラットな基準反射板を用いた場合のPPFD値と同じ結果を得ることができる。
(4)炭素還元反応最大ETR算出処理
炭素還元反応は、カルビンサイクル(カルビン回路)内で、3つの反応過程を経る反応である。第1の反応過程は、二酸化炭素(CO2)を、CO2受容体の炭素骨格に連結させるカルボキシレーション反応である。第2の反応過程は、光化学的に生産されたニコチンアミドアデニンジヌクレオチドリン酸(NADPH)とアデノシン三リン酸(ATP)のエネルギーと、還元力を使って炭水化物(糖やデンプン)を生成する還元反応である。第3の反応過程は、CO2受容体であるリブロース-1,5-二リン酸を生成する再生産反応である。
これらの反応は、CO2濃度や温度、湿度、植物の種類によって、その反応速度が大きく異なる。なお、植物の特性であるが、例えば、C3植物、C4植物、及びCAM植物の分類だけでなく、植物の種類によって異なる特性を有している。これらの要素を網羅的に把握することは困難であるが、植物の種類を固定し、さらに限られた環境内であれば、その変化の様子を測定することは可能である。
この種の測定方法としては、一般にガス交換測定方法が用いられ、光やCO2濃度、温度、湿度を制御しつつ、CO2濃度の変化をとらえることで、炭素還元反応の光合成速度を測定することができる。そして、この測定方法を利用することで、CO2律速光合成速度LUT(LUT4)、温度補正係数LUT(LUT5)、及び湿度補正係数LUT(LUT6)を作成することができる。
例えば、植物の種類、季節、場所ごとに、CO2濃度に依存する(光化学系反応に律速しない)炭素還元反応の光合成速度(ETR)を、ある温度と湿度において測定することで、CO2濃度と光合成速度とを対応付けたCO2律速光合成速度LUT(LUT4)を作成することができる。同様に、植物の種類、季節、場所ごとに、温度と湿度を変化させた場合に、その変化量を、それぞれ、補正係数Tと補正係数Fとすることで、温度と補正係数Tとを対応付けた温度補正係数LUT(LUT5)、及び、湿度と補正係数Fとを対応付けた湿度補正係数LUT(LUT6)を作成することができる。
(炭素還元反応最大ETR算出処理の流れ)
ここで、図20のフローチャートを参照して、図10のステップS103に対応する炭素還元反応最大ETR算出処理の詳細について説明する。
ステップS141において、実効指標演算装置103の処理部162は、環境センサ102(図6)によるセンシングで得られた環境測定データとして、CO2濃度と、温度と、湿度のデータを取得する。
ステップS142において、実効指標演算装置103の算出部171は、記憶部163に記憶されたCO2律速光合成速度LUT(LUT4)を参照して、ステップS141の処理で得られたCO2濃度に律速する光合成速度を取得する。
図21のAには、CO2律速光合成速度LUT(LUT4)を例示している。このCO2律速光合成速度LUT(LUT4)では、C3植物のA植物について、例えば、季節と場所ごとに、CO2濃度と光合成速度とを対応付けたルックアップテーブルが複数用意されている。したがって、例えば、測定対象物1がC3植物のA植物である場合に、CO2律速光合成速度LUT(LUT4)から、その測定時期や測定場所などに応じて、測定されたCO2濃度に律速する光合成速度(ETR)を取得することができる。
これらの関係は、下記の式(14)のように表すことができる。
ETR@CO2 = LUT4(CO2濃度) ・・・(14)
図20の説明に戻り、ステップS143において、実効指標演算装置103の算出部171は、記憶部163に記憶された温度補正係数LUT(LUT5)を参照して、ステップS141の処理で得られた温度に応じた補正係数Tを取得する。
図21のBには、温度補正係数LUT(LUT5)を例示している。この温度補正係数LUT(LUT5)では、C3植物のA植物について、例えば、季節と場所ごとに、温度と補正係数Tとを対応付けたルックアップテーブルが複数用意されている。したがって、例えば、測定対象物1がC3植物のA植物である場合に、温度補正係数LUT(LUT5)から、その測定時期や測定場所に応じて、測定された温度に応じた補正係数Tを取得することができる。
これらの関係は、下記の式(15)のように表すことができる。
T = LUT5(温度) ・・・(15)
図20の説明に戻り、ステップS144において、実効指標演算装置103の算出部171は、記憶部163に記憶された湿度補正係数LUT(LUT6)を参照して、ステップS141の処理で得られた湿度に応じた補正係数Fを取得する。
図21のCは、湿度補正係数LUT(LUT6)を例示している。この湿度補正係数LUT(LUT6)では、C3植物のA植物について、例えば、季節と場所ごとに、湿度と補正係数Fとを対応付けたルックアップテーブルが複数用意されている。したがって、例えば、測定対象物1がC3植物のA植物である場合に、湿度補正係数LUT(LUT6)から、その測定時期や測定場所に応じて、測定された湿度に応じた補正係数Fを取得することができる。
これらの関係は、下記の式(16)のように表すことができる。
F = LUT6(温度) ・・・(16)
図20の説明に戻り、ステップS145において、実効指標演算装置103の算出部171は、ステップS141乃至S144の処理で得られたデータに基づいて、測定対象物1における炭素還元反応最大ETRを算出する。
ここで、炭素還元反応最大ETRの算出方法であるが、CO2濃度に律速する光合成速度(ETR)に対し、温度の補正係数Tと湿度の補正係数Fを乗じることで求められる。すなわち、炭素還元反応最大ETRを、ETR2とすれば、下記の式(17)を演算することで求められる。
ETR2 = ETR@CO2 × T × F ・・・(17)
ステップS145の処理が終了すると、処理は、図10のステップS103に戻り、それ以降の処理が実行される。
以上、炭素還元反応最大ETR算出処理の流れについて説明した。この炭素還元反応最大ETR算出処理では、環境や植物の種類から決定される炭素還元反応の最大光合成速度に相当する電子伝達速度(ETR)が、炭素還元反応最大ETRとして算出される。
なお、炭素還元反応最大ETR算出処理では、光化学系反応最大ETR算出処理と同様に、センシングの結果得られる撮像画像内に、複数種類の植物が存在する場合には、各植物の領域ごとに、実効PPFD値を求めるために用いるルックアップテーブルを切り替えることができる。これにより、1つの画面内に、複数の植物が映っている場合でも、同時に適切な実効PPFD値を提示することが可能となる。
(5)実効PPFD値等の提示例
次に、図22乃至図28を参照して、図10のステップS106の処理で表示される実効PPFD値に関する情報を含む提示情報の提示例について説明する。
本技術の発明者は、実際のある日において、環境の違いにより、圃場の植物等の測定対象物1のPPFD値と、その実効PPFD値がどのように変化するのかを確認するために、以下の(a)乃至(d)の環境下で、シミュレーションを行った。
(a)環境A:日向、1日の平均気温15度
(b)環境B:日陰、1日の平均気温15度
(c)環境C:日向、1日の平均気温3度
(d)環境D:日陰、1日の平均気温3度
以下、環境A乃至Dの環境下でのシミュレーションの結果得られたデータに対応する提示情報の提示例(表示例)を示すものとする。ただし、ここでの測定対象物1は、植物であるものとする。
(5-1)環境A(日向、平均気温15度)の表示例
図22は、環境AにおけるPPFD値と実効PPFD値等の表示例を示す図である。
図22において、横軸は、時間を示し、ある日の朝の6:00から次の日の6:00までの24時間を、30分単位の目盛りで刻んでいる。縦軸は、異なる線種からなる線L1乃至L5で表された、環境Aのシミュレーションの結果得られたデータの値を示し、その単位は、umol/m2/sとされる。なお、これらの軸の関係は、後述する図23乃至図25においても同様とされる。
環境Aは、植物が日向に存在し、その周辺の1日の平均気温が15度となる。このような環境下におけるシミュレーションの結果として、線L1Aは、植物の日向部分に照射された太陽光のPPFD値(日向・PPFD値)の変化を示している。線L2Aは、植物の日向部分に照射された太陽光が、植物の光化学系反応でエネルギーに変換されたときの光化学系反応最大ETR(日向・光化学系反応最大ETR)の変化を示している。
線L3Aは、平均気温15度等の環境に応じて決定される、植物の炭素還元反応最大ETR(炭素還元反応最大ETR(平均気温15度))の変化を示している。線L4Aは、環境Aでの伝達ETR(日向・伝達ETR(平均気温15度))の変化を示している。すなわち、線L2Aで示される日向・光化学系反応最大ETRと、線L3Aで示される炭素還元反応最大ETR(平均気温15度)とが比較され、その値が小さいほうが、ボトルネックであると判断され、植物中を伝達する伝達ETRが決定される。
ここでは、日向・光化学系反応最大ETRよりも、炭素還元反応最大ETR(平均気温15度)のほうが、その値が小さいので、炭素還元反応最大ETR(平均気温15度)が、ボトルネックであると判断され、日向・伝達ETR(平均気温15度)とされる。その結果、図22において、線L4Aは、線L3Aの一部と重なっている。
そして、線L4Aは、日向・伝達ETR(平均気温15度)であって、実際に植物の成長に寄与した値を示しており、この線L4Aの内側の部分(図22の斜線で示した部分)の面積が、植物の成長量に比例することになる。なお、厳密には、植物の成長は、光補償点、光飽和点など、糖が転流する仕組みによっても左右されることになる。
線L5Aは、環境Aでの実効PPFD値(日向・実効PPFD値(平均気温15度))の変化を示している。線L5Aで示される日向・実効PPFD値(平均気温15度)は、線L4Aで示される日向・伝達ETR(平均気温15度)の値を、植物の日向部分に照射された太陽光の照射量に換算することで得られる。
(5-2)環境B(日陰、平均気温15度)の表示例
図23は、環境BにおけるPPFD値と実効PPFD値等の表示例を示す図である。
環境Bは、植物が日陰に存在し、その周辺の1日の平均気温が15度となる。このような環境下におけるシミュレーションの結果として、線L1Bは、植物の日陰部分に照射された太陽光のPPFD値(日陰・PPFD値)の変化を示している。線L2Bは、植物の日陰部分に照射された太陽光が、植物の光化学系反応でエネルギーに変換されたときの光化学系反応最大ETR(日陰・光化学系反応最大ETR)の変化を示している。
線L3Bは、平均気温15度等の環境に応じて決定される、植物の炭素還元反応最大ETR(炭素還元反応最大ETR(平均気温15度))の変化を示している。線L4Bは、環境Bでの伝達ETR(日陰・伝達ETR(平均気温15度))の変化を示している。すなわち、ここでは、炭素還元反応最大ETR(平均気温15度)よりも、日陰・光化学系反応最大ETRのほうが、その値が小さいので、日陰・光化学系反応最大ETRが、ボトルネックであると判断され、日陰・伝達ETR(平均気温15度)とされる。その結果、図23において、線L4Bは、線L2Bの一部と重なっている。
そして、線L4Bは、日陰・伝達ETR(平均気温15度)であって、実際に植物の成長に寄与した値を示しており、この線L4Bの内側の部分(図23の斜線で示した部分)の面積が、植物の成長量に比例することになる。線L5Bは、環境Bでの実効PPFD値(日陰・実効PPFD値(平均気温15度))の変化を示し、線L4Bで示される日陰・伝達ETR(平均気温15度)の値を、植物の日陰部分に照射された太陽光の照射量に換算することで得られる。
(5-3)環境C(日向、平均気温3度)の表示例
図24は、環境CにおけるPPFD値と実効PPFD値等の表示例を示す図である。
環境Cは、植物が日向に存在し、その周辺の1日の平均気温が3度となる。このような環境下におけるシミュレーションの結果として、線L1Cは、植物の日向部分に照射された太陽光のPPFD値(日向・PPFD値)の変化を示している。線L2Cは、植物の日向部分に照射された太陽光が、植物の光化学系反応でエネルギーに変換されたときの光化学系反応最大ETR(日向・光化学系反応最大ETR)の変化を示している。
線L3Cは、平均気温3度等の環境に応じて決定される、植物の炭素還元反応最大ETR(炭素還元反応最大ETR(平均気温3度))の変化を示している。線L4Cは、環境Cでの伝達ETR(日向・伝達ETR(平均気温3度))の変化を示している。すなわち、ここでは、日向・光化学系反応最大ETRよりも、炭素還元反応最大ETR(平均気温3度)のほうが、その値が小さいので、炭素還元反応最大ETR(平均気温3度)が、ボトルネックであると判断され、日向・伝達ETR(平均気温3度)とされる。その結果、図24において、線L4Cは、線L3Cの一部と重なっている。
そして、線L4Cは、日向・伝達ETR(平均気温3度)であって、実際に植物の成長に寄与した値を示しており、この線L4Cの内側の部分(図24の斜線で示した部分)の面積が、植物の成長量に比例することになる。線L5Cは、環境Cでの実効PPFD値(日向・実効PPFD値(平均気温3度))の変化を示し、線L4Cで示される日向・伝達ETR(平均気温3度)の値を、植物の日向部分に照射された太陽光の照射量に換算することで得られる。
(5-4)環境D(日陰、平均気温3度)の表示例
図25は、環境DにおけるPPFD値と実効PPFD値等の表示例を示す図である。
環境Dは、植物が日陰に存在し、その周辺の1日の平均気温が3度となる。このような環境下におけるシミュレーションの結果として、線L1Dは、植物の日陰部分に照射された太陽光のPPFD値(日陰・PPFD値)の変化を示している。線L2Dは、植物の日陰部分に照射された太陽光が、植物の光化学系反応でエネルギーに変換されたときの光化学系反応最大ETR(日陰・光化学系反応最大ETR)の変化を示している。
線L3Dは、平均気温3度等の環境に応じて決定される、植物の炭素還元反応最大ETR(炭素還元反応最大ETR(平均気温3度))の変化を示している。線L4Dは、環境Dでの伝達ETR(日陰・伝達ETR(平均気温3度))の変化を示している。すなわち、ここでは、炭素還元反応最大ETR(平均気温3度)よりも、日陰・光化学系反応最大ETRのほうが、その値が小さいので、日陰・光化学系反応最大ETRが、ボトルネックであると判断され、日陰・伝達ETR(平均気温3度)とされる。その結果、図25において、線L4Dは、線L2Dの一部と重なっている。
そして、線L4Dは、日陰・伝達ETR(平均気温3度)であって、実際に植物の成長に寄与した値を示しており、この線L4Dの内側の部分(図25の斜線で示した部分)の面積が、植物の成長量に比例することになる。線L5Dは、環境Dでの実効PPFD値(日陰・実効PPFD値(平均気温3度))の変化を示し、線L4Dで示される日陰・伝達ETR(平均気温3度)の値を、植物の日陰部分に照射された太陽光の照射量に換算することで得られる。
(環境A乃至Dのシミュレーション結果の比較)
ここで、図22乃至図25に示した環境A乃至Dのシミュレーション結果を比較すれば、次のようになる。
すなわち、PPFD値と光化学系反応最大ETRは、植物に照射される太陽光に応じて決定されるため、図22の環境Aと図24の環境Cでは、その環境が共に日向となるので、日向・PPFD値(線L1A,線L1C)と、日向・光化学系反応最大ETR(線L2A,線L2C)がそれぞれ一致している。
一方で、炭素還元反応最大ETRは、気温に左右されるため、図22の環境Aと図24の環境Cでは、その平均気温が、15度と3度で異なっているので、線L3Aで示される炭素還元反応最大ETR(平均気温15度)と、線L3Cで示される炭素還元反応最大ETR(平均気温3度)は異なっている。
図23の環境Bと図25の環境Dでは、その環境が共に日陰となるので、日陰・PPFD値(線L1B,線L1D)と、日陰・光化学系反応最大ETR(線L2B,線L2D)がそれぞれ一致している。なお、図23の環境B及び図25の環境Dと、図22の環境A及び図24の環境Cとでは、縦軸の目盛りの単位が異なっているが、日陰の環境のほうが、日向の環境よりも、PPFD値と光化学系反応最大ETRが小さくなる。
一方で、図23の環境Bと図25の環境Dでは、その平均気温が、15度と3度で異なっているので、線L3Bで示される炭素還元反応最大ETR(平均気温15度)と、線L3Dで示される炭素還元反応最大ETR(平均気温3度)は異なっている。
また、図22の環境Aと図23の環境Bは、その平均気温が共に15度となるので、縦軸の目盛りの単位が異なっているが、線L3Aで示される炭素還元反応最大ETR(平均気温15度)と、線L3Bで示される炭素還元反応最大ETR(平均気温15度)は一致している。同様に、図24の環境Cと図25の環境Dは、その平均気温が共に3度となるので、縦軸の目盛りの単位が異なっているが、線L3Cで示される炭素還元反応最大ETR(平均気温3度)と、線L3Dで示される炭素還元反応最大ETR(平均気温3度)は一致している。
ここで、図22の環境A乃至図25の環境Dにおける、線L5Aと、線L5Bと、線L5Cと、線L5Dとで示される実効PPFD値を比較すれば、次のようになる。すなわち、図22の環境Aにおける線L5Aで示される日向・実効PPFD値(平均気温15度)の値が最も大きく、500(umol/m2/s)を超える値を示している。逆に、図25の環境Dにおける線L5Dで示される日陰・実効PPFD値(平均気温3度)の値が、最も小さい値となっている。
(5-5)環境A乃至DのPPFD値の積算の表示例
図26は、環境A乃至DのPPFD値の積算の表示例を示す図である。
図26においては、環境A乃至環境Dの環境ごとに、各環境におけるPPFD値の1日の積算値をヒストグラムで示している。したがって、図26の縦軸の単位は、mol/m2/dayとされる。
上述したように、PPFD値は、植物に照射される太陽光に応じて決定される。そのため、図26において、環境Aと環境Cは、その環境が共に日向となるので、PPFD値の1日の積算値が一致している。また、環境Bと環境Dは、その環境が共に日陰となるので、PPFD値の1日の積算値が一致している。
また、図26において、環境A及び環境Cと、環境B及び環境Dとでは、日向の環境のほうが、日陰の環境よりも、PPFD値の1日の積算値が大きくなっている。
(5-6)環境A乃至Dの実効PPFD値の積算の表示例
図27は、環境A乃至Dの実効PPFD値の積算と、太陽光活用率の表示例を示す図である。
図27においては、環境A乃至環境Dの環境ごとに、各環境における実効PPFD値の1日の積算値をヒストグラムで示し、左側の縦軸の単位は、mol/m2/dayとされる。また、図27では、環境A乃至環境Dの環境ごとに、各環境における太陽光の活用度を折れ線グラフで示し、縦軸の単位は、パーセント(%)とされる。
実効PPFD値は、伝達ETRの値を、植物に照射された光の照射量に換算して得られるPPFD値であるから、この積分量も、植物の成長量に寄与した量に比例している。その点で、環境Aのときに、植物の成長が最も大きかったことが分かる。
ここで、共に日向で、1日の平均気温が異なる環境Aと環境Cとを比較すれば、環境Aの実効PPFD値の積算値が約13(mol/m2/day)であるのに対し、環境Cの実効PPFD値の積算値は、約7(mol/m2/day)であり、それらの積算値の差は倍近くになる。
また、共に日陰で、1日の平均気温が異なる環境Bと環境Dとを比較すれば、環境Bの実効PPFD値の積算値が約4(mol/m2/day)であるのに対し、環境Dの実効PPFD値の積算値は、約3(mol/m2/day)であり、それらの積算値には大きな差がない。
このように、実効PPFD値を分析することで、同じ光の照射量でかつ日向であっても、気温によって、植物の成長に大きな差が生じているのに対し、同じ光の照射量でかつ日陰では、気温によって、植物の成長量は大きく変わらないことが分かる。
例えば、図26に示したPPFD値を分析するだけでは、環境Aと環境Cは、PPFD値の1日の積算値が一致しており、気温によって植物の成長に差が生じているかどうかは分からないが、図27に示した実効PPFD値を分析することで、実効PPFD値の積算値の差が倍近くあり、気温によって植物の成長に差が生じていることが分かる。
また、図27において、折れ線グラフは、実効PPFD値を、PPFD値で除算して得られる太陽光の活用度(%)を、環境A乃至環境Dの環境ごとに示している。この折れ線グラフからは、共に日向となる環境Aと環境Cでは、実効PPFD値は大きくなるものの、照射された太陽光から得られるPPFD値に比べると、その活用度は小さい。一方で、共に日陰となる環境Bと環境Dでは、実効PPFD値は小さいが、太陽光の活用度は大きくなる。
ここで、日向の植物は、強すぎる太陽光のほとんどを、熱や蛍光として消費しているが、この消費量が大き過ぎると、植物の光阻害という弊害にも繋がると言われている。この太陽光の活用度の状態は、植物のストレス状態を分析する場合にも役立つことが想定される。
(5-7)2次元情報としての実効PPFD値の表示例
図28は、2次元情報としての実効PPFD値の表示例を示す図である。
図28には、繰り返しパターンで2次元配列された複数の画素を有するセンサ144によるセンシングで得られるデータに基づいて、実効PPFD値とPPFD値を、2次元情報(2次元画像)として表示した場合の例を示している。
図28のAは、例えば、測定対象物1としての圃場の植物の領域(植生エリア)を、横方向に12分割し、かつ、縦方向に8分割した場合における、12×8分割された領域ごとの実効PPFD値の1日の積算値を表している(ヒストグラムのグラフの各柱(棒)が、1日当たりの各領域の実効PPFD値を表している)。すなわち、図28のAに示した3次元のグラフにおいて、XY平面により、12×8分割された各領域が表され、Z軸方向により、各領域の実効PPFD値の大きさが表される(単位:mol/m2/day)。このように、実効PPFD値を2次元情報(例えばXY平面の情報)として表示することで、例えば圃場の植物の領域のような広い領域であっても、植物にとって有効なPPFD値を提示することができる。
また、図28のBは、測定対象物1としての圃場の植物の領域であって、12×8分割された領域ごとのPPFD値の1日の積算値を表している。すなわち、図28のBの12×8の各領域と、図28のAの12×8の各領域とは対応しており、ユーザの操作などに応じて、図28のAの実効PPFD値の2次元情報と、図28のBのPPFD値の2次元情報とを切り替えることができる。なお、図28のAの実効PPFD値の2次元情報と、図28のBのPPFD値の2次元情報とは、同時に表示されるようにしてもよい。これにより、ユーザは、圃場の植物の領域ごと、あるいは圃場の植物の領域の全体に渡って、実効PPFD値とPPFD値とを比較することができる。
すなわち、上述したように、測定されたPPFD値が、実際に、植物にとって有効に活用されるとは限らず、そのため、本技術では、植物によって有効なPPFD値として、実効PPFD値を算出できるようにしているが、この実効PPFD値の積算値と、PPFD値の積算値とを同時に、あるいは切り替えて表示することで、例えば、植物にとって必要な光量が照射されたのかどうかを、容易に把握することができる。
具体的には、上述した説明では、図3や図4の例として、植物にとって有効な光が500umol/m2である場合に、植物に対し、2000umol/m2の光を3時間照射したケースと、植物にとって有効な光が500umol/m2である場合に、植物に対し、500umol/m2の光を6時間照射したケースでは、有効な光子量がより多くなる後者のケースのほうが、より有効な日照を得ていたことを述べた。このような2つのケースについても、実効PPFD値とPPFD値の積算値を、図28に示したような表示形態で表示させることで、どちらのケースがより有効な日照を得ていたかなどを容易に把握することが可能となる。
なお、図28に示した実効PPFD値とPPFD値の2次元表示は、2次元情報を提示するための表示形態の一例であって、他の表示形態で、実効PPFD値とPPFD値の2次元情報を表示するようにしてもよい。
例えば、実効PPFD値の2次元情報(図28のA)と、PPFD値の2次元情報(図28のB)とを、領域ごとに重畳表示させるようにしてもよい。このような重畳表示が提示されることで、ユーザは、領域ごとの実効PPFD値とPPFD値との差分を、直感的に認識することができる。また、例えば、圃場の植物等の撮像画像に対し、実効PPFD値の2次元情報(図28のA)及びPPFD値の2次元情報(図28のB)の少なくとも一方を重畳表示させるようにしてもよい。このような重畳表示が提示されることで、ユーザは、実際の植物の状態と、実効PPFD値又はPPFD値との関係を把握することができる。
また、例えば、実効PPFD値やPPFD値の2次元情報の表示は、図28に示したように、ヒストグラムのグラフの各柱(棒)を重畳表示するほか、例えば色や輝度の変更など、グラフの各柱を識別可能な表示形態であれば、他の表示形態で表現されるようにしてもよい。さらに、例えば、実効PPFD値やPPFD値の2次元情報の表示は、その値が所定の基準値を上回る又は下回る部分のみを表示したり、あるいは、当該部分のみを強調表示したりするようにしてもよい。その際、基準値は、例えば、任意の入力値や測定対象領域の平均値などを用いることができる。
また、ここでは、2次元情報として、実効PPFD値とPPFD値が提示される場合を説明したが、光合成有効放射吸収率(fAPAR)の値を、同様に2次元表示するようにしてもよい。
以上のように、提示情報として、実際に植物の成長に寄与したPPFD値を、実効PPFD値として提示(表示)することができるため、様々な角度から、測定対象物1としての植物の生育を分析することが可能となる。すなわち、植物の光合成は、光のエネルギーではなく、光の粒子である光量子の数に影響を受けることが知られている。しかしながら、植物が光を有効に活用できる光量子の数は、二酸化炭素濃度(CO2濃度)、温度、湿度、栄養素などの環境条件と、植物の種類や状態によって、大きく左右される。そこで、本技術では、このような環境条件と、植物の種類や状態から、植物が有効に活用できると想定されるPPFD値を予測することで、実効PPFD値を算出して表示している。
なお、図22乃至図28に示した表示例は、PPFD値や実効PPFD値等のデータの統計値を提示するための表示形態の一例であって、他の表示形態で、PPFD値や実効PPFD値等のデータの統計値を表示するようにしてもよい。また、このようなデータを、図28に示したように、1日単位や1週間単位、1ヶ月単位などの所定の時間範囲で集計することで、例えば、植物の成長に重要な日照に関するデータを蓄積することが可能となる。これにより、例えば、測定対象物1としての植物ごとに、例えば1日単位や1週間単位などの共通の時間の単位で、PPFD値や実効PPFD値等のデータを集計することができる。
<4.変形例>
(基準反射板の他の例)
上述した説明では、基準反射板20は、グレー反射板等の分光反射特性がフラットな基準反射板を用いるとして説明したが、反射率が既知であれば、移動可能な板状の形状に限らず、固定された所定の領域あってもよい。例えば、スタジアムの芝を測定する場合に、アンツーカを基準反射領域として、利用することができる。そして、例えば、アンツーカなどの分光反射特性がフラットではない領域を基準反射領域として利用する場合には、当該基準反射領域に応じた係数算出LUT(LUT1)をあらかじめ用意する必要があるのは、先に述べた通りである。
なお、アンツーカは、サッカー場等のスタジアムで、測定対象物(測定対象領域)となる芝の領域の周囲の領域に形成され、反射特性がほぼ一定であり、あらかじめ測定しておくことが可能であるので、基準反射領域(リファレンスエリア)として利用することができる。
なお、基準反射板20としては、所定の反射率を有する基準反射板を作成し、それを利用するようにしてもよい。この場合においても、基準反射板は、任意の位置に設置することが可能であるが、例えば、図11に示したように、所定の反射率を有する基準反射板を、測定対象物1と同時にセンシング可能な位置に設置することができる。また、基準反射板20(基準反射領域)は、測定対象物1とは時間的に別のタイミングでセンシングしてもよい。
(センサの具体例)
上述した説明では、センサ144(図7)が、複数の画素が2次元配列された画素アレイ部を有するセンサであるとして説明したが、このセンサとしては、例えば、1次元のラインセンサやイメージセンサ等の各種のセンサを含めることができる。なお、イメージセンサには、例えば、CMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)イメージセンサや、CCD(Charge Coupled Device)イメージセンサ等の撮像素子が含まれる。
(他の植生指標)
また、上述した説明では、植物を測定対象物1としたときの指標(植生指数)として、正規化植生指数(NDVI値)を一例に説明したが、正規化植生指数(NDVI値)以外の他の植生指数が測定されるようにしてもよい。例えば、他の植生指数としては、比植生指数(RVI:Ratio Vegetation Index)や差植生指数(DVI:Difference Vegetation Index)などを用いることができる。
ここで、比植生指数(RVI値)は、下記の式(18)を演算することで算出される。
RVI = IR / R ・・・(18)
また、差植生指数(DVI値)は、下記の式(19)を演算することで算出される。
DVI = IR - R ・・・(19)
ただし、式(18)と、式(19)において、IRは、赤外領域の反射率を表し、Rは、可視領域の赤の反射率を表している。なお、ここでは、IRとRをパラメータとする植生指数のみを例示しているが、赤以外の他の可視領域の光の反射率などをパラメータとして用いて他の植生指数を測定することは、勿論可能である。また、スペクトルの比率は、RとIRとの組み合わせには限られるものではない。センサ144からは、RGBIRの出力として、RとIR以外のGやB等、他の波長帯域の成分が出力される場合に、それらの値を用いるようにしてもよい。
(センシング装置の測定時の他の構成例)
上述した説明では、センシング装置101が、移動観測を行う移動測定装置70(図11)、又は定点観測を行う定点測定装置80(図11)に搭載される場合を説明したが、センシング装置101によって、測定対象物1と基準反射板20をセンシングすることができれば、あらゆる構成を採用することができる。
例えば、センシング装置101は、人工衛星に搭載されるようにしてもよい。この人工衛星において、センシング装置101によるセンシング(人工衛星からの撮像)で得られる指標測定データ(例えば衛星画像に応じた測定値)は、所定の通信経路を介して実効指標演算装置103に送信される。そして、実効指標演算装置103において、算出部171は、人工衛星に搭載されたセンシング装置101から送信されてくる指標測定データに基づいて、人工衛星から測定された測定対象物1(例えば圃場の植物)の指標(PPFD値)を求めることができる。
<5.コンピュータの構成>
上述した一連の処理(図10の実効PPFD値算出処理のステップS102乃至S106の処理)は、ハードウェアにより実行することもできるし、ソフトウェアにより実行することもできる。一連の処理をソフトウェアにより実行する場合には、そのソフトウェアを構成するプログラムが、コンピュータにインストールされる。図29は、上述した一連の処理をプログラムにより実行するコンピュータのハードウェアの構成例を示す図である。
コンピュータ1000において、CPU(Central Processing Unit)1001、ROM(Read Only Memory)1002、RAM(Random Access Memory)1003は、バス1004により相互に接続されている。バス1004には、さらに、入出力インターフェース1005が接続されている。入出力インターフェース1005には、入力部1006、出力部1007、記録部1008、通信部1009、及び、ドライブ1010が接続されている。
入力部1006は、キーボード、マウス、マイクロフォンなどよりなる。出力部1007は、ディスプレイ、スピーカなどよりなる。記録部1008は、ハードディスクや不揮発性のメモリなどよりなる。通信部1009は、ネットワークインターフェースなどよりなる。ドライブ1010は、磁気ディスク、光ディスク、光磁気ディスク、又は半導体メモリなどのリムーバブル記憶媒体1011を駆動する。
以上のように構成されるコンピュータ1000では、CPU1001が、ROM1002や記録部1008に記録されているプログラムを、入出力インターフェース1005及びバス1004を介して、RAM1003にロードして実行することにより、上述した一連の処理が行われる。
コンピュータ1000(CPU1001)が実行するプログラムは、例えば、パッケージメディア等としてのリムーバブル記憶媒体1011に記録して提供することができる。また、プログラムは、ローカルエリアネットワーク、インターネット、デジタル衛星放送といった、有線又は無線の伝送媒体を介して提供することができる。
コンピュータ1000では、プログラムは、リムーバブル記憶媒体1011をドライブ1010に装着することにより、入出力インターフェース1005を介して、記録部1008にインストールすることができる。また、プログラムは、有線又は無線の伝送媒体を介して、通信部1009で受信し、記録部1008にインストールすることができる。その他、プログラムは、ROM1002や記録部1008に、あらかじめインストールしておくことができる。
ここで、本明細書において、コンピュータがプログラムに従って行う処理は、必ずしもフローチャートとして記載された順序に沿って時系列に行われる必要はない。すなわち、コンピュータがプログラムに従って行う処理は、並列的あるいは個別に実行される処理(例えば、並列処理あるいはオブジェクトによる処理)も含む。また、プログラムは、1のコンピュータ(プロセッサ)により処理されるものであってもよいし、複数のコンピュータによって分散処理されるものであってもよい。
なお、本技術の実施の形態は、上述した実施の形態に限定されるものではなく、本技術の要旨を逸脱しない範囲において種々の変更が可能である。例えば、上述した複数の実施の形態の全て又は一部を組み合わせた形態を採用することができる。
なお、本技術は、以下のような構成をとることができる。
(1)
センサによるセンシングで得られる測定対象物に関する測定値に基づいて、前記測定対象物に入射する光に関する指標として、前記入射する光のうち、前記測定対象物に有効に活用された光の程度を表す実効指標を算出する算出部を備える
情報処理装置。
(2)
前記測定対象物は、植物であり、
前記実効指標は、前記植物の伝達ETR(Electron Transport Rate)を、前記植物に入射した光の照射量に換算して得られる指標である
(1)に記載の情報処理装置。
(3)
前記算出部は、光化学系反応最大ETR及び炭素還元反応最大ETRに基づいて、前記伝達ETRを算出する
(2)に記載の情報処理装置。
(4)
前記算出部は、前記光化学系反応最大ETRと前記炭素還元反応最大ETRとを比較し、小さい方を、前記伝達ETRとする
(3)に記載の情報処理装置。
(5)
前記測定対象物は、植物であり、
前記測定値は、前記植物の反射光に基づく値であり、
前記算出部は、前記植物の反射光に基づく値に基づいて、光合成有効放射吸収率(fAPAR)を算出する
(1)乃至(4)のいずれかに記載の情報処理装置。
(6)
前記算出部は、前記光合成有効放射吸収率(fAPAR)に基づいて、前記実効指標を算出する
(5)に記載の情報処理装置。
(7)
前記算出部は、前記植物に入射する光に関する測定指標、光合成有効放射吸収率(fAPAR)、及び、光化学系反応の量子収率(ΦPSII)に基づいて、前記光化学系反応最大ETRを算出する
(3)に記載の情報処理装置。
(8)
前記算出部は、前記センサによるセンシングで得られる前記植物に対する測定値に基づいて、前記測定指標を算出する
(7)に記載の情報処理装置。
(9)
前記算出部は、測定時期、測定場所、及び、前記植物の種類のいずれかに基づいて、前記光化学系反応の量子収率(ΦPSII)を算出する
(7)又は(8)のいずれかに記載の情報処理装置。
(10)
前記算出部は、前記植物の周辺の環境情報に基づいて、前記炭素還元反応最大ETRを算出する
(3)に記載の情報処理装置。
(11)
前記植物の周辺の環境情報は、二酸化炭素濃度(CO2濃度)、温度、及び、湿度である
(10)に記載の情報処理装置。
(12)
前記植物に入射する光に関する測定指標、及び、前記実効指標のうちの少なくとも一方に応じた提示情報の提示を制御する制御部をさらに備える
(3)に記載の情報処理装置。
(13)
前記提示情報は、2次元情報である
(12)に記載の情報処理装置。
(14)
前記制御部は、ユーザの操作に応じて、前記測定指標の2次元情報と、前記実効指標の2次元情報の一方の選択的な提示を制御する
(13)に記載の情報処理装置。
(15)
前記制御部は、前記光化学系反応最大ETR、前記炭素還元反応最大ETR、及び、前記伝達ETRのうちの少なくとも1つの提示を制御する
(12)に記載の情報処理装置。
(16)
前記制御部は、前記測定指標、及び、前記実効指標は、異なる時間に測定された複数の測定値に基づいて算出される
(12)に記載の情報処理装置。
(17)
前記植物に入射する光に関する指標としての測定指標は、前記植物に入射する光が光合成に作用する程度を示す指標である
(2)に記載の情報処理装置。
(18)
前記測定指標は、光合成有効光量子束密度(PPFD:Photosynthetic Photon Flux Density)であり、
前記実効指標は、前記PPFD値のうち、植物の成長に寄与したPPFD値を表した実効PPFD値である
(17)に記載の情報処理装置。
(19)
情報処理装置の情報処理方法において、
前記情報処理装置が、
センサによるセンシングで得られる測定対象物に関する測定値に基づいて、前記測定対象物に入射する光に関する指標として、前記入射する光のうち、前記測定対象物に有効に活用された光の程度を表す実効指標を算出するステップを含む
情報処理方法。
(20)
コンピュータを、
センサによるセンシングで得られる測定対象物に関する測定値に基づいて、前記測定対象物に入射する光に関する指標として、前記入射する光のうち、前記測定対象物に有効に活用された光の程度を表す実効指標を算出する算出部を備える情報処理装置
として機能させるためのプログラム。