JP7001026B2 - 車両用通信装置 - Google Patents

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Description

本開示は、車両内通信ネットワークに接続する通信装置に関する。
従来、オフィスや家庭などではイーサネット(登録商標)による通信ネットワークが広く使用されている。また、近年では車両においても、通信速度向上等の観点から、イーサネットの導入が進んでいる(例えば特許文献1)。
一般的に、イーサネットに規格に準拠した通信を実施する機能を有する装置(以降、通信装置)は、物理層を提供するPHY部と、媒体アクセス制御を実行するMAC部と、を備える。なお、一般的に通信装置は複数のPHY部を備えるとともに、各PHY部に対応するように複数のMAC部を備える。
MAC部は、PHY部等から入力されるクロック信号に基づいて動作する。例えば、PHY部とMAC部とがMII(Media Independent Interface)によって通信するように構成されている場合、MAC部は当該MAC部と接続されているPHY部から入力されるクロック信号に基づいてPHY部とデータの送受信を実施する。また、RMII(Reduced MII)では、MAC部はPHY部とは別途用意されているクロック発生器が出力するレファレンスクロック信号を用いてPHY部とデータの送受信を実施する。なお、ここでの通信装置には、ルータやスイッチのほかに、コンピュータ等の情報処理装置も含まれる。
以降では便宜上、MIIにおけるPHY部やRMIIにおけるクロック発生器など、MAC部がPHY部とデータの送受信を実施するためのクロック信号を出力する構成のことをクロック出力源と称する。また、MAC部がPHY部とデータの送受信を実施するためのクロック信号が流れる信号線のことをクロックラインと称する。
特開2018-56679号公報
通信装置においては、通信ケーブルに重畳した外部ノイズによって、クロック出力源に不具合が生じ、当該クロック出力源に連なるクロックラインが一定のレベルに固着してしまう事象(以降、クロック固着現象)が起こりうる。特に、車両においてはアクチュエータ等のノイズ源が多いため、オフィスや学校、家庭等(以降、オフィス等)の環境に比べて、ノイズが通信ケーブルに重畳しやすい。故に、車両で使用される通信装置(つまり車両用通信装置)においては、オフィス等で使用される一般的な通信装置に比べて、上記のクロック固着現象が起こりやすい。なお、車両用通信装置とは、例えば電子制御装置(以降、ECU:Electronic Control Unit)である。また、ルータやスイッチングハブといった中継装置もまた車両用通信装置に含まれる。
そして、車両用通信装置においてクロック固着現象が生じた場合、当該クロック固着現象が生じているクロックラインに接続しているMAC部は、PHY部へデータを送信したり、PHY部から出力されるデータを受信したりできなくなる。これに伴い、車両用通信装置は、当該MAC部を介して他の通信装置とデータを送信したり、データを受信したりできなくなる。
一方、車載ECUの中には、安全性の観点からリアルタイムに情報を共有するべき組み合わせも存在する。そのため、車両用通信装置におけるクロック固着現象はなるべく早期に解消したいという需要がある。
なお、オフィス等で使用される通信装置(つまり一般向けの通信装置)であれば、仮にクロック固着現象による不具合が発生した場合であっても、電源ボタンの長押し等によってユーザが手動で当該通信装置を再起動させるといった処置をとることができる。しかしながら、ECUや中継装置などの車載通信装置は、車両内部に格納されており、ドライバ等のユーザが簡単に操作できる構成ではない。
本開示は、この事情に基づいて成されたものであり、その目的とするところは、MAC部が動作するためのクロック信号の固着を自動で解消可能な車両用通信装置を提供することにある。
その目的を達成するための車両用通信装置は、一例として、イーサネット規格に準拠して通信を行う車両用通信装置であって、媒体アクセス制御を実行するMAC部(41)と、MAC部が動作するためのクロック信号を監視するクロック監視部(42)と、クロック監視部によってクロック信号が停止していることが検出された場合に、クロック信号を出力する構成としてのクロック出力源を再起動させる復帰処理部(51)と、を備える。
上記の構成によれば、MAC部が動作するためのクロック信号が固着した場合には、クロック監視部によってクロック信号の停止が検出され、復帰処理部が、クロック出力源を再起動させる。クロック信号が停止する場合とは、通信ケーブルに重畳した外部ノイズによってクロック出力源に不具合が生じていることが想定されるため、クロック出力源を再起動させれば、クロックラインの固着は解消することが期待できる。つまり、上記の構成によれば、MAC部が動作するためのクロック信号の固着を自動で解消することができる。
なお、特許請求の範囲に記載した括弧内の符号は、一つの態様として後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示すものであって、本開示の技術的範囲を限定するものではない。
車載通信システム100の概略的な構成を示す図である。 中継装置2の構成を示すブロック図である。 クロック監視部42及び復帰処理部51の作動を説明するための図である。 クロック監視部42の作動を説明するための図である。 クロック固着解消処理の一例を示すフローチャートである。 中継装置2の構成の変形例を示すブロック図である。 復帰処理部51の作動態様の変形例を説明するためのフローチャートである。 復帰処理部51の作動態様の変形例を説明するためのフローチャートである。
以下、本開示の実施形態について図を用いて説明する。図1は、本開示に係る車載通信システム100の構成例を示す図である。車載通信システム100は、車両に構築されている通信システムである。本実施形態の車載通信システム100は、車載イーサネットの規格に従って構成されている。なお、イーサネットは登録商標である。以下では、イーサネット通信プロトコルに準拠したデータ通信をイーサネット通信という。また、以降における通信フレームとは、イーサネット通信プロトコルに従った通信フレーム(いわゆるイーサネットフレーム)を指す。
車載通信システム100は少なくとも1つの中継装置2と、ノードとしての複数の電子制御装置(以降、ECU:Electronic Control Unit)2と、を備えている。図1に示す車載通信システム100は一例として、6つのECU1と、2つの中継装置2とを備えている。2つの中継装置2を区別する場合には、中継装置2a、2bと記載する。また、6つのECU1のそれぞれを区別する場合には、ECU1a~1fと記載する。
ECU1a~1cはそれぞれ通信ケーブル9を介して中継装置2aと相互通信可能に接続されている。ECU1d~1fはそれぞれ通信ケーブル9を介して中継装置2bと相互通信可能に接続されている。中継装置2aと中継装置2bもまた通信ケーブル9を介して互いに相互通信可能に接続されている。通信ケーブル9は、たとえば、ツイストペアケーブルである。
なお、車載通信システムを構成するECU1や中継装置2の数は一例であり、適宜変更可能である。また、図1に示す車載通信システム100のネットワークトポロジは一例であってこれに限らない。車載通信システム100のネットワークトポロジは、メッシュ型や、スター型、バス型、リング型などであってもよい。ネットワーク形状も適宜変更可能である。
種々のECU1は、前述の通り、通信ケーブル9を介して中継装置2と接続されている。複数のECU1はそれぞれ異なる機能を提供する。例えばECU1aは自動運転機能を提供するECU(いわゆる自動運転ECU)である。また、ECU1bは、外部サーバと無線通信することによってECUのソフトウェアを更新するためのプログラムを取得し、当該プログラムを用いて、当該プログラムの適用対象となるECUのソフトウェアアップデートを実行するECUである。ECU1cは、車載通信システム100が外部ツールと有線接続する際のゲートウェイとしての機能を提供するECUである。ここでの外部ツールとは、有線通信によって対象ECUのソフトウェアの更新や書き換えを行うためのツール(いわゆるリプログラミングツール)や、診断ツール(いわゆるダイアグツール)を指す。中継装置2には様々な機能を提供するECU1がノードとして接続されうる。
各ECU1は、中継装置2を介して他のECU1とイーサネット通信プロトコルに従ったデータの送受信を実行する。それぞれのECU1は、直接的には、中継装置2とのみ通信を行う。なお、中継装置2に接続されるノードは、センサなど、ECU1以外のものでもよい。ノードは、ユーザや点検者によって車載通信システム100への接続状態を動的に変更可能な外部ツールであってもよい。中継装置2もまた、別の観点によればノードに相当しうる。例えば中継装置2aにとって中継装置2bは自装置に接続するノードの1つに該当する。ECU1や中継装置2などにはそれぞれ固有の識別情報(MACアドレス)が付与されている。
中継装置2は、或る通信ケーブル9から入力された通信フレームを、当該通信フレームの宛先に応じた通信ケーブル9に送出する装置である。中継装置2は図2に示すように、複数のPHY3と、制御部4と、マイクロコンピュータ(以降、マイコン5)とを備えている。
PHY3は、通信ケーブル9と接続される構成であって、OSI参照モデルにおける物理層を提供する。PHY3は、通信ケーブル9と電気的に接続されるポート31を備える。本実施形態では一例として1つのPHY3には、1本の通信ケーブル9が接続されるように構成されている。つまり、各PHY3は、通信ケーブル9と接続するためのポート31を1つずつ備える。
例えば中継装置2aが備える或る1つのPHY3は、通信ケーブル9を介してECU1aと接続されており、他の1つのPHY3は、通信ケーブル9を介してECU1bと接続されている。その他、中継装置2aは、通信ケーブル9を介してECU1cと接続されているPHY3や、中継装置2bと接続されているPHY3などを備える。
中継装置2が備えるPHY3の数は、中継装置2が接続可能なノードの数に相当する。本実施形態の中継装置2は一例として、最大6つのノードとイーサネット通信可能なように、6つのPHY3を備える。なお、他の構成として、中継装置2が備えるPHY3の数は4や8などであっても良い。また、PHY3は、ポート31を複数備えるものであってもよい。例えばPHY3は、2つのポート31を備えていてもよい。
中継装置2が備える複数のポート31にはそれぞれ固有のポート番号が設定されている。便宜上、中継装置2が備える複数のポート31を区別する場合には、そのポート31に設定されているポート番号Kを用いて第Kポートと記載する。例えば、第1ポートはポート番号が1番に設定されているポート31を指し、第2ポートはポート番号が2番に設定されているポート31を指す。
PHY3は、概略的には、自分自身と接続している通信ケーブル9(以降、接続ケーブル)から入力された信号を、制御部4で処理可能なデジタル信号に変換して制御部4(具体的にはMAC41)に出力する。また、PHY3は、制御部4から入力されたデジタル信号を、通信ケーブル9へ伝送可能な電気信号に変換アナログ信号に変換した上で所定の通信ケーブル9に出力する。その他、PHY3は、上記の信号形式の変換処理に加えて、フレーム符号化、シリアルパラレル変換、信号波形変換などを行う。PHY3はアナログ回路などを備えたIC、すなわち、ハードウェア回路である。各PHY3と制御部4(具体的にはMAC41)とは、別途後述するように、MII(Media Independent Interface)規格で通信するように構成されている。PHY3はPHY部に相当する。
制御部4は、複数のPHY3のそれぞれと接続されているとともに、マイコン5とも相互通信可能に接続されている。制御部4は、OSI参照モデルにおける第2層(データリンク層)~第3層(いわゆるネットワーク層)の機能を実行できるようにプログラムされている。制御部4は、機能ブロックとして、複数のMAC41と、複数のクロック監視部42と、スイッチ処理部43と、第3層提供部L3と、を備える。MAC41は、イーサネット通信プロトコルにおける媒体アクセス制御(Medium Access Control)を実施する構成である。MAC41は、複数のPHY3のそれぞれに対して用意されている。つまり、MAC41はPHY3と同数用意されている。複数のMAC41はそれぞれ異なる1つのPHY3と接続されている。MAC41は媒体アクセス制御部に相当する。
MAC41は、当該MAC41と接続しているPHY3から入力された通信フレーム(以降、受信フレームとも記載)をスイッチ処理部43に提供する。加えて、MAC41はスイッチ処理部43から入力された通信フレームを、当該MAC41に対応するPHY3に出力し、通信ケーブル9へと送出させる。なお、MAC41は、PHY3と協働してCSMA/CD(Carrier Sense Multiple Access/Collision Detection)を実施する。MAC41は、IEEE802.3にて規定されている機能を提供するように構成されていれば良い。MAC41がMAC部に相当する。
クロック監視部42は、PHY3からMAC41へ入力されるクロック信号を監視する構成である。クロック監視部42は、例えば、MAC41毎(換言すればPHY3毎)に用意されている。つまり、制御部4は、各MAC41/PHY3に対応するように、複数のクロック監視部42を備える。クロック監視部42の詳細については別途後述する。
スイッチ処理部43は、MAC41から入力された通信フレームを、当該通信フレームに含まれる宛先MACアドレスとアドレステーブルに基づいて、該通信フレームを送出するべきPHY3(厳密にはポート31)を特定する。そして、特定したPHY3に対応するMAC41へ当該通信フレームを出力することにより、受信フレームの中継を実施する。アドレステーブルは、各PHY3(具体的には各ポート31)に接続しているノードのMACアドレスを示すデータである。各PHY3に接続しているMACアドレスについてはラーニングブリッジやARP(Address Resolution Protocol)など、多様な方法で学習される。ここではアドレステーブルの生成方法についての詳細な説明は省略する。なお、PHY3毎の接続先のMACアドレスを学習する機能(以降、アドレステーブル更新機能)は、制御部4が備えていてもよいし、マイコン5が備えていても良い。
第3層提供部L3はIP(Internet Protocol)アドレスを用いた中継処理を実施する構成である。換言すれば、第3層提供部L3は、異なるネットワーク間での通信フレームの中継を実施する。なお、OSI参照モデルにおける第3層の機能は、マイコン5が備えていても良い。中継装置2内における機能配置は適宜変更可能である。
当該制御部4は、例えばFPGA(field-programmable gate array)を用いて実現されている。なお、制御部4は、ASIC(application specific integrated circuit)を用いて実現されていても良い。また、制御部4は、MPUや、CPU、GPUを用いて実現されていても良い。なお、上記の機能を備える制御部4は、スイッチ(換言すればスイッチングハブ)や、ルータとして作動する構成に相当する。
マイコン5は、CPU、ROM、RAMI/O、およびこれらの構成を接続するバスラインなどを備えた汎用的なコンピュータである。ROMには、汎用的なコンピュータを、マイコン5として機能させるためのプログラムが格納されている。CPUが、RAMの一時記憶機能を利用しつつ、ROMに記憶されたプログラムを実行することで、マイコン5は、OSI参照モデルにおける第4層から第7層までの機能を提供する。
すなわち、マイコン5は、第4層から第7層までの各層に対応する第4層提供部L4、第5層提供部L5、第6層提供部L6、及び第7層提供部L7を備える。第4層提供部L4は、第4層(つまりトランスポート層)としての処理を実行する構成であり、プログラム間通信や、データ転送保証などを実行する。第5層提供部L5は、第5層(つまりセッション層)としての処理を実行する構成である。第6層提供部L6は、第6層(つまりプレゼンテーション層)としての処理を実行する構成である。第7層提供部L7は、第7層(つまりアプリケーション層)としての処理を実行する構成である。このような構成は、第4層~第7層をソフトウェア処理によって実現される構成に相当する。なお、CPUが実行するプログラムを記憶する記憶媒体はROMに限られず、非遷移的実体的記録媒体(non-transitory tangible storage medium)に記憶されていればよい。
また、マイコン5は、別途図3に示すように、復帰処理部51を備える。復帰処理部51は、クロック監視部42からの通知に基づいて所定のクロック固着解消処理を実行する。当該復帰処理部51の作動の詳細については別途後述する。
<クロック監視部42に係る構成及び作動について>
次に図3を用いて、クロック監視部42に係る構成及び作動について説明する。本実施形態のMAC41はPHY3とMIIによってデータの送受信を実施するように構成されている。すなわち、PHY3は、送信クロック出力端子P11、送信データ入力端子P12、受信クロック出力端子P13、及び受信データ出力端子P14を備える。また、MAC41は、送信クロック入力端子P21、送信データ出力端子P22、受信クロック入力端子P23、及び受信データ入力端子P24を備える。その他、MAC41は、MIIによる通信を実施するための構成として、送信制御部411及び受信制御部412を備える。その他、PHY3はリセット入力端子P15を備える。
送信クロック出力端子P11は送信クロック入力端子P21と信号線で接続されており、送信データ入力端子P12は送信データ出力端子P22と信号線で接続されている。受信クロック出力端子P13は受信クロック入力端子P23と信号線で接続されており、受信データ出力端子P14は受信データ入力端子P24と信号線で接続されている。便宜上、送信クロック出力端子P11と送信クロック入力端子P21とを接続する信号線のことを送信クロックラインLn1と称する。また、受信クロック出力端子P13は受信クロック入力端子P23と信号線のことを受信クロックラインLn2と称する。
なお、MAC41は、送信イネーブル信号を出力するための端子や、有効な受信データを受信していることを示す信号が入力されるための端子などを備える(何れも図示略)。また、MAC41は、キャリア検出信号用の入力端子や、衝突検出信号用の入力端子など、多様な信号の入力/出力するための端子を備えうる。
PHY3は、正常に動作している場合、送信クロック出力端子P11から、所定の周波数(例えば25MHz)の送信クロック信号(図中 TX_CLK)を逐次出力する。送信クロック出力端子P11から出力された送信クロック信号は、MAC41の送信クロック入力端子P21に入力される。送信クロック信号は、MAC41の送信制御部411を動作させるためのクロックである。
送信制御部411は、スイッチ処理部43から入力された通信フレームをPHY3に出力するための処理を実行する構成である。送信制御部411は、送信クロック信号が入力されていることに基づいて、スイッチ処理部43から入力された通信フレームを構成するデータを4ビットずつ、PHY3に出力する。図中に示すTXDは、4ビットの送信データを表している。送信データは、MAC41の送信データ出力端子P22から出力され、PHY3の送信データ入力端子P12へと入力される。PHY3に入力された送信データは、図示しない送信回路によって変調等の処理が施されて通信ケーブル9へと送出される。
なお、送信クロック信号が停止している場合、送信制御部411は動作を停止する。そのため、中継装置2は、或るPHY3の送信クロック出力端子P11の出力が一定のレベル(例えばハイレベル/ローレベル)に固着してしまっている場合、当該PHY3に接続する他の通信装置へ向けたデータを送信できなくなってしまう。
また、PHY3は、正常に動作している場合、受信クロック出力端子P13から所定の周波数(例えば25MHz)の受信クロック信号(図中 TX_CLK)を逐次出力する。受信クロック出力端子P13から出力された受信クロック信号は、MAC41の受信クロック入力端子P23に入力される。受信クロック信号は、MAC41の受信制御部412を動作させるためのクロックである。また、PHY3は、通信ケーブル9から入力されているデータを受信し、受信データ出力端子P14から4ビットずつ出力する。受信データ出力端子P14から出力された受信データ(図中 RXD)は、MAC41の受信データ入力端子P24に入力される。
MAC41の受信制御部412は、PHY3から提供される受信データをスイッチ処理部43に出力するための処理を実行する構成である。受信制御部412は、受信クロック信号が入力されていることに基づいて動作し、受信データ入力端子P24に入力されているデータを取得する。なお、受信クロック信号が停止している場合には、受信制御部412は動作を停止する。そのため、受信クロック信号が停止している場合には、受信データ出力端子P14から受信データが出力されていても、受信制御部412は当該データを受信しない。故に、中継装置2は、或るPHY3の受信クロック出力端子P13の出力が一定のレベル(例えばハイレベル)に固着している場合には、中継装置2は、当該PHY3に接続する他の通信装置からのデータを受信することができなくなる。
以降では便宜上、受信クロック信号と送信クロック信号とを互いに区別しない場合には、クロック信号と記載する。また、送信クロック出力端子P11と受信クロック出力端子P13を区別しない場合には単にクロック出力端子と記載する。なお、一般的に、中継装置2には、システムクロックなど、複数種類のクロック信号が存在するが、ここでのクロック信号とは、MAC41の送信制御部411や受信制御部412が動作するためのクロック信号を指す。クロック信号を出力するPHY3は、クロック出力源に相当する。
クロック監視部42は、送信クロック信号や受信クロックラインの固着を検出するための構成である。本実施形態のクロック監視部42はより細かい構成として、送信クロック監視部421と、受信クロック監視部422とを備える。
送信クロック監視部421は、送信クロック出力端子P11の出力信号が入力されるように構成されている。例えば送信クロック監視部421は、送信クロックラインLn1と電気的に接続されている。送信クロック監視部421は、送信クロックラインLn1に印加されている電圧を逐次監視して、送信クロック信号の停止を検出する。なお、送信クロックラインLn1に印加されている電圧を逐次監視することは、MAC41の送信クロック入力端子P21に入力されている信号や、PHY3の送信クロック出力端子P11から出力されている信号を逐次監視することに相当する。
送信クロック監視部421は、送信クロック出力端子P11からパルス信号が定期的に入力されることに基づいてPHY3が正常動作していると判断する。また、送信クロック監視部421は、送信クロック出力端子P11から定期的なパルス信号が入力されなくなったことに基づいてPHY3の異常動作を検出する。例えば、送信クロック監視部421は図4に示すように、所定の待機時間Tq以上、立ち上がりエッジが観測されない場合、送信クロックラインが固着していると判定する。送信クロックラインが固着している状態とは、送信クロック出力端子P11の出力が、ハイレベルやローレベルなど一定のレベルに固まっている状態に相当する。送信クロックラインが固着していると判定することは、送信クロックラインの固着を検出することに相当する。
送信クロックラインが固着していると判定するためのパラメータである待機時間Tqは、例えば、PHY3が正常に動作している場合の立ち上がりエッジの間隔Tpの4倍などに設定されていればよい。待機時間Tqの具体的な値は適宜設計されれば良い。待機時間Tqは、パルス信号の立ち上がり間隔Tpよりも長い値に設定されていればよい。なお、送信クロック信号の立ち上がりエッジが所定の待機時間Tq以上観測されない場合とは、所定の待機時間Tq以上、送信クロック信号が一定のレベル(例えばハイレベルやローレベル)のままとなっている場合に相当する。
送信クロック監視部421は、送信クロックラインの固着を検出すると、マイコン5に対して、異常通知データを出力する。異常通知データは、監視対象とするPHY3の送信クロックラインが固着していることを示すデータである。異常通知データには、中継装置2が備える複数のPHY3のうちの何れのPHY3にクロックラインの固着が生じているのかを示す情報が含まれていることが好ましい。本実施形態では一例として中継装置2が備える各PHY3には固有の識別番号(以降、PHY番号)が予め設定されており、送信クロック監視部421は、クロックラインが固着しているPHY3のPHY番号を通知するように構成されている。なお、クロックラインの固着が生じているPHY3とは、クロック出力端子の出力レベルが一定のレベルに張り付いている状態のPHY3を指す。
マイコン5の復帰処理部51は、送信クロック監視部421から入力された異常通知データに基づいて、クロックラインの固着が生じているPHY3に対してリセット信号を出力する。このようにマイコン5は、クロック監視部42によって正常に動作していないことが検出されたPHY3に対してリセット信号を出力して再起動させる。これにより、クロックラインの固着が生じたPHY3を正常な状態へと復帰させる。なお、リセット信号の出力処理は、PHY3の作動を正常化するために復帰処理部51が実施する処置の一例である。PHY3の作動を正常化するために復帰処理部51が実施する処置の内容はこれに限らない。復帰処理部51の作動態様の詳細については別途後述する。
受信クロック監視部422は、受信クロックラインLn2に印加されている電圧を逐次監視して、受信クロックラインの固着を検出する構成である。受信クロック監視部422は、受信クロック出力端子P13の出力信号が入力されるように構成されている。例えば受信クロック監視部422は、受信クロックラインLn2と電気的に接続されている。なお、受信クロックラインLn2に印加されている電圧を逐次監視することは、MAC41の受信クロック入力端子P23への入力信号や、PHY3の受信クロック出力端子P13からの出力信号を逐次監視することに相当する。
受信クロック監視部422が、受信クロックラインの固着を検出する方法は、送信クロック監視部421が送信クロックラインの固着を検出する方法と同様とすることができる。すなわち、受信クロック監視部422は所定の待機時間Tq以上、立ち上がりエッジが観測されない場合、受信クロック信号が停止していると判定する。受信クロック監視部422は、受信クロックラインが固着していると判定すると、マイコン5に異常通知データを出力する。異常通知データの内容は、送信クロック監視部421が出力する異常通知データと同様である。
なお、送信クロック監視部421や受信クロック監視部422は、クロック信号の立ち上がりエッジの間隔が短すぎたり、長すぎたりする場合にも、PHY3が異常動作していると判定するように構成されていても良い。以降において送信クロック監視部421や受信クロック監視部422を区別しない場合には単にクロック監視部42と記載する。
<クロック固着解消処理>
ここでは図5に示すフローチャートを用いて復帰処理部51がクロック監視部42等と協働して実施するクロック固着解消処理について説明する。クロック固着解消処理は、クロックラインの固着が生じているPHY3の正常な状態へと復帰させる処理である。復帰処理部51は、クロック監視部42から異常通知データが入力されたことに基づいてクロック固着解消処理を実行する。本実施形態の吸収体量推定処理は一例としてステップS101~S109を備える。なお、復帰処理部51がクロック固着解消処理を実行する条件は適宜変更可能である。例えば、復帰処理部51は、一定時間以内に、同一のPHY3においてクロック信号の停止が複数回検出された場合に、当該クロック固着解消処理を実行するように構成されていても良い。
まずステップS101では復帰処理部51が、クロックラインの固着が検出されているPHY3(以降、対象PHY)に対してリセット信号を出力する。対象PHYは、例えば、異常通知データに含まれるPHY番号によって特定されれば良い。ステップS101の処理が完了して、所定のPHY起動時間が経過すると、ステップS102を実行する。PHY起動時間は、PHY3の再起動にかかる時間の想定値である。PHY起動時間の具体的な値は適宜設計されれば良い。対象PHYが対象PHY部に相当する。
なお、本実施形態では一例としてマイコン5から対象PHYへ直接的にリセット信号を入力するように構成されているものとするが、これに限らない。マイコン5が制御部4に対して対象PHYをリセットするように指示し、制御部4がマイコン5からの指示に基づいて対象PHYをリセットするように構成されていても良い。
ステップS102では、対象PHYに対応するクロック監視部42が、対象PHYから正常にクロック信号が出力されているか否かを判定する。対象PHYに対応するクロック監視部42とは、複数のクロック監視部42のうち、対象PHYが出力するクロック信号を監視するように構成されているクロック監視部42である。換言すれば、対象PHYのクロック出力端子と接続されているクロック監視部42が、対象PHYに対応するクロック監視部42に相当する。
対象PHYが正常にクロック信号を出力しているか否かの判断は、クロックラインが固着しているか否かの判断と同様に実施すれば良い。対象PHYが正常にクロック信号を出力していることが確認できた場合にはステップS102を肯定判定して本フローを終了する。一方、対象PHYが正常にクロック信号を出力していない場合、つまり、まだ対象PHYのクロックラインが固着している場合にはステップS102を否定判定してステップS103を実行する。
ステップS103では復帰処理部51が、電源回路6と協働して、対象PHYへの電力供給を一時的に遮断することにより、対象PHYをハードウェア的に再起動(つまりハードウェアリブート)させる。具体的には、復帰処理部51は電源回路6に対して、対象PHYへの電力供給を遮断させる制御信号を出力する。そして、その所定時間経過後に、電源回路6に対し、対象PHYへの電力供給させる制御信号を出力する。ステップS103での処理が完了するとステップS104を実行する。
ステップS104ではステップS102と同様に、対象PHYに対応するクロック監視部42が、対象PHYから正常にクロック信号が出力されているか否かを判定する。対象PHYが正常にクロック信号を出力していることが確認できた場合にはステップS104を肯定判定して本フローを終了する。一方、対象PHYが正常にクロック信号を出力していない場合にはステップS104を否定判定してステップS105を実行する。
ステップS105では復帰処理部51が、制御部4を再起動させてステップS106に移る。ステップS106ではステップS102と同様に、対象PHYに対応するクロック監視部42が、対象PHYから正常にクロック信号が出力されているか否かを判定する。対象PHYが正常にクロック信号を出力していることが確認できた場合にはステップS106を肯定判定して本フローを終了する。一方、対象PHYが正常にクロック信号を出力していない場合にはステップS106を否定判定してステップS107を実行する。
ステップS107では復帰処理部51が、マイコン5を含む中継装置2自身を再起動させてステップS108に移る。以降では便宜上、自装置としての中継装置2を再起動させることを、装置再起動とも記載する。
ステップS108ではステップS102と同様に、対象PHYに対応するクロック監視部42が、対象PHYから正常にクロック信号が出力されているか否かを判定する。対象PHYが正常にクロック信号を出力していることが確認できた場合にはステップS108を肯定判定して本フローを終了する。一方、対象PHYが正常にクロック信号を出力していない場合にはステップS108を否定判定してステップS109を実行する。
ステップS109では復帰処理部51が、PHY固着通知処理を実行する。PHY固着通知処理は、PHY3の異常(具体的にはクロックラインの固着)をユーザ又は外部装置に通知する処理である。PHY固着通知処理は、MAC42の動作させるためのクロック信号に異常が生じていることを通知する処理に相当する。例えば復帰処理部51はPHY固着通知処理として、図示しない無線通信装置と協働して、車両を管理するセンタに向けて中継装置2のPHY3に異常が生じていることを通知する。あるいは、復帰処理部51は、PHY固着通知処理として、車両内に構築されている通信ネットワークに異常が生じていることを、ディスプレイやインジケータ、スピーカ等を介して通知する。ステップS109での処理が完了すると本フローを終了する。
<実施形態のまとめ>
上述した構成では、例えば通信ケーブル9に重畳したノイズの影響によって、当該通信ケーブル9に拙速するPHY3のクロックラインが固着した場合には、クロック監視部42が当該事象の発生を検出し、復帰処理部51が対象PHYを再起動させる。このような構成によれば、中継装置2は自動的に対象PHYを正常な状態へ復帰させることができる。また、PHY3のクロックラインが固着した場合であっても、ドライバ等のユーザが手動操作によって中継装置2を再起動させる必要がない。
加えて、上記の実施形態では、クロック固着解消処理として、対象PHYのみを個別に再起動させることによって対象PHYの正常化を試みる(ステップS101、S103)。このような構成によれば、対象PHYを再起動させている間も、クロックラインの固着が検出されていない他のPHY3を経由する装置間の通信は継続される。故に、装置再起動を実行する場合に比べて、車載通信システム100への影響を低減することができる。
また、対象PHYのみを個別に再起動させるための方法として、リセット信号による再起動と、電源の遮断及び再投入による再起動の2つの方法を試みる。このように、対象PHYを複数のアプローチで再起動させる構成によれば、対象PHYが正常な状態に復帰する可能性を高めることができる。
ところで、装置再起動を実行した場合には、当該中継装置2が提供する機能(例えば通信フレームの中継機能)が一時的に停止してしまう。当然、中継装置2による中継機能が停止すると、当該中継装置2に接続する複数のECU1が他のECU1と通信不能となってしまう。つまり、ECU1間の通信に影響を与えてしまう。そのため、走行中においては、中継装置2を再起動させることはなるべく避けたいといった事情がある。
そのような事情に対して、上記の構成では、ステップ107として装置再起動を実行する前に、まずは、対象PHYのみを再起動させることによって対象PHYの正常化を試みる(ステップS101、S103)。そして、対象PHYの個別的な再起動によってクロックラインの固着が解消された場合には、装置再起動は実行しない。このように、対象PHYのみを再起動させることによって対象PHYの正常化を試みた後の予備手段として装置再起動を実行する構成によれば、クロックラインの固着を解消するために、装置全体を再起動させる頻度を抑制することができる。なお、本実施形態の復帰処理部51はクロック固着解消処理としてステップS101~S109を実行する態様を開示したが、これに限らない。クロック固着解消処理はステップS101だけであってもよいし、ステップS13だけであってもよい。また、ステップS107だけであっても良い。クロック固着解消処理の内容は適宜変更可能である。
以上、本開示の実施形態を説明したが、本開示は上述の実施形態に限定されるものではなく、以降で述べる種々の変形例も本開示の技術的範囲に含まれ、さらに、下記以外にも要旨を逸脱しない範囲内で種々変更して実施することができる。例えば下記の種々の変形例は、技術的な矛盾が生じない範囲において適宜組み合わせて実施することができる。なお、前述の実施形態で述べた部材と同一の機能を有する部材については、同一の符号を付し、その説明を省略する。また、構成の一部のみに言及している場合、他の部分については先に説明した実施形態の構成を適用することができる。
[変形例1]
上述した実施形態では複数のMAC41のそれぞれに対して個別にクロック監視部42を設けた構成を開示したが、これに限らない。1つのクロック監視部42が複数のMAC41へ入力されるクロック信号を監視するように構成されていても良い。換言すれば、図6に示すように、複数のクロック監視部42は1つのモジュールに統合されていてもよい。
[変形例2]
復帰処理部51は、クロック監視部42からの通知に基づき、クロックラインが固着しているPHY3の数(以降、固着PHY数)を特定し、固着PHY数に応じて、クロック固着解消処理として実行する処置の内容を変更するように構成されていても良い。例えば復帰処理部51は、図7に示すように、固着PHY数が所定の装置リセット閾値未満であるか否かを判断する(ステップS201)。そして、固着PHY数が装置リセット閾値未満である場合には、クロック固着が生じているPHY3を個別に再起動させる(ステップS202)。ステップS202としてPHYを個別に再起動させる手段としては、リセット信号の入力や、電源制御などを採用することができる。ステップS202の処理が、個別再起動処理に相当する。一方、固着PHY数が所定の装置リセット閾値以上である場合には(ステップS201 NO)、自装置としての中継装置2を再起動させる(ステップS203)。
装置リセット閾値は、例えば2、3、4、5など、2以上の値に設定されていれば良い。例えば装置リセット閾値は2に設定される。そのような設定態様によれば、クロック固着が生じているPHY3が1つの場合には、当該PHY3単体を再起動させる一方、クロック固着が生じているPHY3が複数である場合には、中継装置2そのものを再起動させる(ステップS203)。
ところで、PHY3にクロック固着が生じる原因としては、例えば、当該PHY3に接続する通信ケーブル9に重畳したノイズが考えられる。仮に、通信ケーブル9に重畳したノイズによってクロック固着が生じたのであれば、クロック固着が観測されるPHY3は1つとなることが期待される。通信ケーブル9はそれぞれ異なる態様で設けられており、ノイズの重畳態様も通信ケーブル9毎に異なるためである。そのため、複数のPHY3において同時にクロック固着が生じている場合には、逆説的に、クロック固着が生じた原因は、通信ケーブル9に重畳しているノイズではなく、装置自身の異常である可能性が高い。
本変形例は上記の点に着眼して創出されたものであって、本変形例の復帰処理部51によれば、クロック固着が生じた原因に応じた処置を実行することになり、より迅速に中継装置2を正常な状態へと復帰させることが可能となる。なお、装置リセット閾値は、別の観点によれば、クロック固着が、通信ケーブルに重畳しているノイズによって生じているのか、装置自体の異常であるかを切り分けるためのパラメータに相当する。上記の制御態様は、固着PHY数が装置リセット閾値未満である場合には、クロック固着の原因は通信ケーブルに重畳しているノイズであると見なしてクロック固着解消処理を実行する態様に相当する。
[変形例3]
上述したように、中継装置2の再起動を実行すると、中継装置2の起動が完了するまで、当該中継装置2に接続するECU1は他のECU1と通信不能となってしまう。そのため、中継装置2が仮に自動運転機能を提供するECU1など、車両の走行を制御するECU1と接続されている場合には、車両が走行している間に装置再起動を実行することは好ましくない。復帰処理部51は、例えば車両が停車している場合など、当該中継装置2の中継機能が停止してもよい状況においてのみ、装置再起動を実行するように構成されていることが好ましい。
本変形例は当該技術的思想に基づいて創出されたものであって、本変形例に係る復帰処理部51は、装置全体の再起動を実行する必要が生じた場合には、図8に示すフローチャートに沿うように作動する。なお、装置全体の再起動を実行する必要が生じた場合とは、例えば、図5のステップS106が否定判定されてステップS107に移った場合や、図7のステップS201が否定判定されてステップS203に移った場合などである。
本変形例の復帰処理部51は、当該中継装置2が使用されている車両に搭載されている種々のECU1から提供される車両情報に基づいて、現在の車両の状態が、所定の再起動許可条件を充足しているか否かを判定する(ステップS301)。ステップS301を実行する復帰処理部51が車両状態判断部に相当する。
ここでの車両情報とは、例えば車速や、シフトポジション、パーキングブレーキのオン/オフ、車両の現在位置、ブレーキペダルの踏み込み状態などを指す。再起動許可条件とは、復帰処理部51が装置再起動を実行するための条件である。再起動許可条件は予め設定されている。例えば再起動条件は、車速が0km/hであって、かつ、シフトポジションがパーキングポジションに設定されていることである。そのような設定によれば、復帰処理部51はシフトポジションがパーキングポジションに設定されている状態での停車中に、装置再起動が実行するようになる。
車両の状態が再起動許可条件を充足している場合には(ステップS301 YES)、当該中継装置2に接続するECU1や他の中継装置2に対して、装置単位での再起動を実行することを通知する(ステップS302)。そして、装置の再起動を実行する(ステップS303)。
一方、現在の車両の状態が再起動許可条件を充足していない場合には(ステップS301 NO)、装置再起動の実行を保留にして、再起動準備処理を実行する(ステップS304)。例えば、車両を退避エリアまで走行するようにドライバに提案したり、自動運転ECUに対して退避エリアで停車するように指示する。再起動準備処理は、車両の状態を所定の再起動許可条件を充足する状態へと移行させるための処理である。再起動準備処理の具体的な内容は、再起動許可状態の内容に応じて適宜設計されれば良い。
上記の構成によれば、車両の走行中に、急に中継装置2が再起動を実行することはない。所定の再起動許可状態になってから再起動を実行するため、ECU1間の通信に与える影響や、車両の走行制御に与える影響を抑制することができる。なお、再起動許可条件には、車両の現在位置が所定の退避エリアに存在することを含んでいても良い。退避エリアは、他の交通の妨げとならずに停車可能な場所である。退避エリアには、例えば、故障車・緊急車両・道路管理車両等が、停車することを目的に道路の路肩に設置されているスペースである非常駐車帯や、車両同士が行き違いを行うためのスペースである待避所が含まれる。車両が退避エリアに存在するか否かは、GNSS(Global Navigation Satellite System)受信機による測位結果と、退避エリアの情報を含む地図データとを用いて特定されれば良い。
[変形例4]
復帰処理部51は、マイコン5や制御部4が、PHY3のクロック信号が停止し得る特定の処理を実行している場合には、クロック固着解消処理を実行しないように構成されていても良い。PHY3のクロック信号が停止し得る特定の処理を実行している場合とは、例えば、マイコン5の起動中や、制御部4のリプログラミング中、制御部4の起動中、PHY3を意図的に停止させている場合、PHY3の起動中などである。このような構成によれば、PHY3の不具合以外の要因でクロック信号が停止する場合には、クロック固着解消処理は実行されない。つまり、不必要にクロック固着解消処理を実行することを抑制できる。
[変形例5]
上述した各機能の配置態様は一例であって適宜変更可能である。例えば復帰処理部51は、制御部4が備えていても良いし、クロック監視部42が備えていても良い。復帰処理部51は、制御部4とマイコン5との協働によって実現されていても良い。また、クロック監視部42は、マイコン5が備えていてもよい。MAC41は、制御部4とは独立したチップとして実現されていても良い。
[変形例6]
上述した実施形態等では、中継装置2に適用した態様を開示したが、これに限らない。ECU1など、種々の車両用通信装置に適用可能である。ここでの車両用通信装置とは、イーサネット規格に準拠した通信を実施可能に構成されている車両用の装置を指す。例えば種々のECU1や、中継装置2、物体認識装置等の周辺監視センサなどが車両用通信装置に該当しうる。
なお、自動運転機能を提供するECU1にとっての再起動許可条件とは、例えば、車両が停車していることや、運転席乗員に運転権限を移譲していることなどに設定されていればよい。また、車両の走行を制御するECU1にとっての再起動許可条件には、車両が停車中であることが含まれていることが好ましい。そのような設定によれば、車両が停車するまではECU1の再起動が保留となり、走行制御に影響を与える恐れを低減することができる。各ECU1は、ソフトウェアアップデートの実行中は再起動を実行しないように構成されていることが好ましい。つまり、再起動実行条件にはソフトウェアアップデート中ではないことが含まれていることが好ましい。仮に、ソフトウェアアップデート中に再起動の必要が生じた場合には、再起動準備処理として、アップデート処理を途中又は最初から実行アップデートに係るデータを保存した上で、再起動処理を実行するように構成されていることが好ましい。
[変形例7]
以上では、PHY3とMAC41とがMIIによって通信するように構成されている態様への適用例を開示したが、本開示の適用範囲はこれに限定されない。PHY3とMAC41とはRMII(Reduced MII)やRGMII(Reduced Gigabit MII)などによって通信するように構成されていても良い。その場合、クロック監視部42は、MAC41に入力されるリファレンスクロックを監視するように構成されていればよい。
<付言>
中継装置2が提供する手段および/または機能は、実体的なメモリ装置に記録されたソフトウェアおよびそれを実行するコンピュータ、ソフトウェアのみ、ハードウェアのみ、あるいはそれらの組合せによって提供することができる。中継装置2が備える機能の一部又は全部はハードウェアとして実現されても良い。或る機能をハードウェアとして実現する態様には、1つ又は複数のICなどを用いて実現する態様が含まれる。また、中継装置2が備える機能の一部又は全部が、ハードウェアである電子回路によって提供される場合、それは多数の論理回路を含むデジタル回路、またはアナログ回路によって提供することができる。ECU1が提供する手段および/または機能についても同様である。
100 車載通信システム、1・1a~1f ECU、2・2a~2b 中継装置、3 PHY(PHY部、クロック出力源)、4 制御部、5 マイコン、9 通信ケーブル、31 ポート、41 MAC(MAC部)、42 クロック監視部、43 スイッチ処理部、51 復帰処理部、L3 第3層提供部、L4 第4層提供部、L5 第5層提供部、L6 第6層提供部、L7 第7層提供部、S301 車両状態判断部

Claims (10)

  1. イーサネット規格に準拠して通信を行う車両用通信装置であって、
    媒体アクセス制御を実行するMAC部(41)と、
    前記MAC部が動作するためのクロック信号を監視するクロック監視部(42)と、
    前記クロック監視部によって前記クロック信号が停止していることが検出された場合に、前記クロック信号を出力するクロック出力源を再起動させる復帰処理部(51)と、を備える車両用通信装置。
  2. 請求項1に記載の車両用通信装置であって、
    複数のPHY部(3)と、
    複数の前記PHY部のそれぞれに対応する複数の前記MAC部と、を備え、
    複数の前記PHY部はそれぞれ前記クロック出力源として、対応する前記MAC部に対して前記クロック信号を出力するように構成されており、
    前記クロック監視部は、複数の前記PHY部のそれぞれが出力する前記クロック信号を監視するように構成されている車両用通信装置。
  3. 請求項2に記載の車両用通信装置であって、
    前記復帰処理部は、前記クロック監視部によって前記クロック信号の出力が停止していることが検出されている前記PHY部を再起動させるように構成されている車両用通信装置。
  4. 請求項2又は3に記載の車両用通信装置であって、
    前記復帰処理部は、前記クロック監視部によって前記クロック信号の出力が停止していることが検出されている前記PHY部の数が所定の装置リセット閾値未満である場合には、前記クロック信号の出力が停止していることが検出されている前記PHY部を個別に再起動させるように構成されている車両用通信装置。
  5. 請求項2から4の何れか1項に記載の車両用通信装置であって、
    前記復帰処理部は、前記クロック監視部によって前記クロック信号の出力が停止していることが検出されている前記PHY部の数が所定の装置リセット閾値以上である場合には、自装置を再起動するように構成されている車両用通信装置。
  6. 請求項2から5の何れか1項に記載の車両用通信装置であって、
    前記復帰処理部は、
    前記クロック監視部によって前記クロック信号の出力が停止していることが検出されている前記PHY部である対象PHY部に対してリセット信号を出力することで当該対象PHY部を再起動させるとともに、
    当該リセット信号に基づく再起動後においても前記対象PHY部による前記クロック信号の出力が停止したままである場合には、当該PHY部への電力供給を一時的に遮断することにより再起動させるように構成されている車両用通信装置。
  7. 請求項2から6の何れか1項に記載の車両用通信装置であって、
    前記復帰処理部は、
    前記クロック監視部によって前記クロック信号の出力が停止していることが検出されている前記PHY部である対象PHY部を個別に再起動させる個別再起動処理を実行するとともに、
    前記個別再起動処理の実行後においても前記対象PHY部による前記クロック信号の出力が停止したままである場合には、自装置を再起動させるように構成されている車両用通信装置。
  8. 請求項5又は7に記載の車両用通信装置であって、
    自装置が使用されている車両の現在の状態が、自装置の再起動を実行してよい状態であるか否かを判断する車両状態判断部(S301)を備え、
    前記復帰処理部は、前記車両状態判断部によって前記車両の状態が自装置の再起動を実行してよい状態ではないと判断している間は、自装置の再起動を保留にするように構成されている車両用通信装置。
  9. 請求項5、7、及び8の何れか1項に記載の車両用通信装置は、当該装置が使用されている車両の走行制御を行う電子制御装置として構成されており、
    前記復帰処理部は、前記車両が走行している状態において、自装置の再起動を実行する必要が生じた場合には、前記車両が停車するまで自装置の再起動を保留するように構成されている車両用通信装置。
  10. 請求項5、7、及び8の何れか1項に記載の車両用通信装置は、自動運転機能を提供する電子制御装置として構成されており、
    前記復帰処理部は、自動運転中において自装置の再起動を実行する必要が生じた場合には、運転権限を運転席の乗員に移譲するまで自装置の再起動を保留にし、運転権限を運転席の乗員に移譲した後に自装置の再起動を実行するように構成されている車両用通信装置。
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