以下、図1~図7を参照して本発明の実施形態について説明する。本発明の実施形態に係る車両制御装置は、自動運転機能を有する車両(自動運転車両)に適用される。まず、自動運転車両の構成について説明する。図1は、本実施形態に係る車両制御装置が適用される自動運転車両101(単に車両と呼ぶ場合もある)の走行駆動系の概略構成を示す図である。車両101は、ドライバによる運転操作が不要な自動運転モードでの走行だけでなく、ドライバの運転操作による手動運転モードでの走行も可能である。
図1に示すように、車両101は、エンジン1と、変速機2とを有する。エンジン1は、スロットルバルブ11を介して供給される吸入空気とインジェクタ12から噴射される燃料とを適宜な割合で混合し、点火プラグ等により点火して燃焼させ、これにより回転動力を発生する内燃機関(例えばガソリンエンジン)である。なお、ガソリンエンジンに代えてディーゼルエンジン等、各種エンジンを用いることもできる。吸入空気量はスロットルバルブ11により調節され、スロットルバルブ11の開度は、電気信号により作動するスロットル用アクチュエータ13の駆動によって変更される。スロットルバルブ11の開度およびインジェクタ12からの燃料の噴射量(噴射時期、噴射時間)はコントローラ40(図2)により制御される。
変速機2は、エンジン1と駆動輪3との間の動力伝達径路に設けられる自動変速機であり、エンジン1からの回転を変速し、かつエンジン1からのトルクを変換して出力する。変速機2で変速された回転は駆動輪3に伝達され、これにより車両101が走行する。なお、エンジン1の代わりに、あるいはエンジン1に加えて、駆動源としての走行用モータを設け、電気自動車やハイブリッド自動車として車両101を構成することもできる。
変速機2は、例えば複数の変速段(例えば6段)に応じて変速比を段階的に変更可能な有段変速機である。なお、変速比を無段階に変更可能な無段変速機を、変速機2として用いることもできる。図示は省略するが、トルクコンバータを介してエンジン1からの動力を変速機2に入力してもよい。変速機2は、例えばドグクラッチや摩擦クラッチなどの係合機構21を備え、油圧制御装置22が油圧源から係合機構21への油の流れを制御することにより、変速機2の変速段を目標変速段に変更することができる。目標変速段は、予め定められたシフトマップに従い、車速と要求駆動力とに応じて決定される。油圧制御装置22は、電気信号により作動するソレノイドバルブなどの変速機用のバルブ機構(便宜上、変速用アクチュエータ23と呼ぶ)を有し、変速用アクチュエータ23の作動に応じて係合機構21への圧油の流れを変更することで、適宜な変速段を設定できる。
図2は、油圧制御装置22の概要を示す図である。図2に示すように、油圧制御装置22は、油圧源としての油圧ポンプ22aを有する。油圧ポンプ22aは、エンジン1の出力軸に機械的に連結され、エンジン1の動力により駆動される。変速用アクチュエータ23は、制御弁として例えばソレノイド231aへの通電時に閉鎖し、非通電時に開放するノーマルオープン型の電磁弁231と、ソレノイド232aへの通電時に開放し、非通電時に閉鎖するノーマルクローズ型の電磁弁232とを有する。なお、図示は省略するが、変速用アクチュエータ23は、電磁弁231,232以外にも複数の制御弁(電磁比例弁や油圧切換弁等)を有する。
電磁弁231,232のソレノイド231a,232aには、コントローラ40(図2)からの指令に応じて、車両101に搭載された二次電池としてのバッテリ24から電力が供給され、これによりソレノイド231a,232aが励磁または消磁される。ソレノイド231a,232aの双方が消磁された状態では、油圧ポンプ22aの吐出油が電磁弁231を介して係合機構21に供給され、これにより所定の変速段が確立される。したがって、仮にバッテリ24からソレノイド231a,232aへの電力供給が断たれたとしても、車両101は所定変速段で走行することが可能である。
所定変速段は、車両101の発進および加速走行が容易で、かつ、一般道での通常走行を行うことが可能なレベルまで車速を上昇させることが可能な変速段である。本実施形態のように有段変速機を用いる場合の所定変速段としては、例えば2速段が好ましい。以下では、変速用アクチュエータ23への通電が断たれたときに実現可能な所定変速段を2速段として説明する。
図3は、自動運転車両101を制御する車両制御システム100の全体構成を概略的に示すブロック図である。図3に示すように、車両制御システム100は、コントローラ40と、コントローラ40にそれぞれ電気的に接続された外部センサ群31と、内部センサ群32と、入出力装置33と、GPS装置34と、地図データベース35と、ナビゲーション装置36と、通信ユニット37と、走行用のアクチュエータACとを主に有する。
外部センサ群31は、車両101の周辺情報である外部状況を検出する複数のセンサの総称である。例えば外部センサ群31には、車両101の全方位の照射光に対する散乱光を測定して車両101から周辺の障害物までの距離を測定するライダ、電磁波を照射し反射波を検出することで車両101の周辺の他車両や障害物等を検出するレーダ、車両101に搭載され、CCDやCMOS等の撮像素子を有して自車両の周辺(前方、後方および側方)を撮像するカメラなどが含まれる。
内部センサ群32は、車両101の走行状態を検出する複数のセンサの総称である。例えば内部センサ群32には、車両101の車速を検出する車速センサ、車両101の前後方向の加速度および左右方向の加速度(横加速度)をそれぞれ検出する加速度センサ、エンジン1の回転数を検出するエンジン回転数センサ、車両101の重心の鉛直軸回りの回転角速度を検出するヨーレートセンサ、スロットルバルブ11の開度(スロットル開度)を検出するスロットル開度センサなどが含まれる。手動運転モードでのドライバの運転操作、例えばアクセルペダルの操作、ブレーキペダルの操作、ステアリングの操作等を検出するセンサも内部センサ群32に含まれる。
入出力装置33は、ドライバから指令が入力されたり、ドライバに対し情報が出力されたりする装置の総称である。例えば入出力装置33には、操作部材の操作によりドライバが各種指令を入力する各種スイッチ、ドライバが音声で指令を入力するマイク、ドライバに表示画像を介して情報を提供する表示部、ドライバに音声で情報を提供するスピーカなどが含まれる。各種スイッチには、自動運転モードおよび手動運転モードのいずれかを指令する手動自動切換スイッチ33aが含まれる。
手動自動切換スイッチ33aは、例えばドライバが手動操作可能なスイッチとして構成され、スイッチ操作に応じて、自動運転機能を有効化した自動運転モードまたは自動運転機能を無効化した手動運転モードへの切換指令を出力する。手動自動切換スイッチ33aの操作によらず、所定の走行条件が成立したときに、手動運転モードから自動運転モードへの切換、あるいは自動運転モードから手動運転モードへの切換が指令されるようにしてもよい。すなわち、手動自動切換スイッチ33aが自動的に切り換わることで、モード切換が手動ではなく自動で行われるようにしてもよい。
GPS装置34は、複数のGPS衛星からの測位信号を受信するGPS受信機を有し、GPS受信機が受信した信号に基づいて車両101の絶対位置(緯度、経度など)を測定する。
地図データベース35は、ナビゲーション装置36に用いられる一般的な地図情報を記憶する装置であり、例えばハードディスクにより構成される。地図情報には、道路の位置情報、道路形状(曲率など)の情報、交差点や分岐点の位置情報が含まれる。なお、地図データベース35に記憶される地図情報は、コントローラ40の記憶部42に記憶される高精度な地図情報とは異なる。
ナビゲーション装置36は、ドライバにより入力された目的地までの道路上の目標経路を探索するとともに、目標経路に沿った案内を行う装置である。目的地の入力および目標経路に沿った案内は、入出力装置33を介して行われる。入出力装置33を介さずに、目的地を自動的に設定することもできる。目標経路は、GPS装置34により得られた自車両の現在位置と、地図データベース35に記憶された地図情報とに基づいて演算される。
通信ユニット37は、インターネット回線などの無線通信網を含むネットワークを介して図示しない各種サーバと通信し、地図情報および交通情報などを定期的に、あるいは任意のタイミングでサーバから取得する。取得した地図情報は、地図データベース35や記憶部42に出力され、地図情報が更新される。取得した交通情報には、渋滞情報や、信号が赤から青に変わるまでの残り時間等の信号情報が含まれる。
アクチュエータACは、車両101の走行動作に関する各種機器を作動するための走行用アクチュエータである。アクチュエータACには、エンジン1のスロットルバルブ11の開度(スロットル開度)を調整するスロットル用アクチュエータ13、係合機構21への油の流れを制御して変速機2の変速段を変更する変速用アクチュエータ23、制動装置を作動するブレーキ用アクチュエータ、およびステアリング装置を駆動する操舵用アクチュエータなどが含まれる。
コントローラ40は、電子制御ユニット(ECU)により構成される。なお、エンジン制御用ECU、変速機制御用ECU等、機能の異なる複数のECUを別々に設けることができるが、図2では、便宜上、これらECUの集合としてコントローラ40が示される。コントローラ40は、CPU等の演算部41と、ROM,RAM,ハードディスク等の記憶部42と、入出力インターフェース等の図示しないその他の周辺回路とを有するコンピュータを含んで構成される。
記憶部42には、車線の中央位置の情報や車線位置の境界の情報等を含む高精度の詳細な地図情報が記憶される。より具体的には、地図情報として、道路情報、交通規制情報、住所情報、施設情報、電話番号情報等が記憶される。道路情報には、高速道路、有料道路、国道などの道路の種別を表す情報、道路の車線数、各車線の幅員、道路の勾配、道路の3次元座標位置、車線のカーブの曲率、車線の合流ポイントおよび分岐ポイントの位置、道路標識等の情報が含まれる。交通規制情報には、工事等により車線の走行が制限または通行止めとされている情報などが含まれる。記憶部42には、変速動作の基準となるシフトマップ(変速線図)、各種制御のプログラム、プログラムで用いられる閾値等の情報も記憶される。
演算部41は、自動走行に関する機能的構成として、自車位置認識部43と、外界認識部44と、行動計画生成部45と、走行制御部46とを有する。
自車位置認識部43は、GPS装置34で得られた車両101の位置情報および地図データベース35の地図情報に基づいて、地図上の車両101の位置(自車位置)を認識する。記憶部42に記憶された地図情報(建物の形状などの情報)と、外部センサ群31が検出した車両101の周辺情報とを用いて自車位置を認識してもよく、これにより自車位置を高精度に認識することができる。なお、道路上や道路脇の外部に設置されたセンサで自車位置を測定可能であるとき、そのセンサと通信ユニット37を介して通信することにより、自車位置を高精度に認識することもできる。
外界認識部44は、ライダ、レーダ、カメラ等の外部センサ群31からの信号に基づいて車両101の周囲の外部状況を認識する。例えば車両101の周辺を走行する周辺車両(前方車両や後方車両)の位置や速度や加速度、車両101の周囲に停車または駐車している周辺車両の位置、および他の物体の位置や状態などを認識する。他の物体には、標識、信号機、道路の境界線や停止線、建物、ガードレール、電柱、看板、歩行者、自転車等が含まれる。他の物体の状態には、信号機の色(赤、青、黄)、歩行者や自転車の移動速度や向きなどが含まれる。
行動計画生成部45は、例えばナビゲーション装置36で演算された目標経路と、自車位置認識部43で認識された自車位置と、外界認識部44で認識された外部状況とに基づいて、現時点から所定時間先までの車両101の走行軌道(目標軌道)を生成する。目標経路上に目標軌道の候補となる複数の軌道が存在するときには、行動計画生成部45は、その中から法令を順守し、かつ効率よく安全に走行する等の基準を満たす最適な軌道を選択し、選択した軌道を目標軌道とする。そして、行動計画生成部45は、生成した目標軌道に応じた行動計画を生成する。
行動計画には、現時点から所定時間T(例えば5秒)先までの間に単位時間Δt(例えば0.1秒)毎に設定される走行計画データ、すなわち単位時間Δt毎の時刻に対応付けて設定される走行計画データが含まれる。走行計画データは、単位時間Δt毎の車両101の位置データと車両状態のデータとを含む。位置データは、例えば道路上の2次元座標位置を示す目標点のデータであり、車両状態のデータは、車速を表す車速データと車両101の向きを表す方向データなどである。走行計画は単位時間Δt毎に更新される。
図4は、行動計画生成部45で生成された行動計画の一例を示す図である。図4では、自車両101が車線変更して前方車両102を追い越すシーンの走行計画が示される。図4の各点Pは、現時点から所定時間T先までの単位時間Δt毎の位置データに対応し、これら各点Pを時刻順に接続することにより、目標軌道103が得られる。なお、行動計画生成部45では、追い越し走行以外に、走行車線を変更する車線変更走行、走行車線を逸脱しないように車線を維持するレーンキープ走行、減速走行または加速走行等に対応した種々の行動計画が生成される。
走行制御部46は、自動運転モードにおいて、行動計画生成部45で生成された目標軌道103に沿って自車両が走行するように各アクチュエータACを制御する。例えば、単位時間Δt毎に図4の各点Pを自車両101が通過するように、スロットル用アクチュエータ13、変速用アクチュエータ23、ブレーキ用アクチュエータ、および操舵用アクチュエータをそれぞれ制御する。
より具体的には、走行制御部46は、自動運転モードにおいて、行動計画生成部45で生成された行動計画のうち、目標軌道103(図4)上の単位時間Δt毎の各点Pの車速に基づいて、単位時間Δt毎の加速度(目標加速度)を算出する。さらに、道路勾配などにより定まる走行抵抗を考慮してその目標加速度を得るための要求駆動力を算出する。そして、例えば内部センサ群32により検出された実加速度が目標加速度となるようにアクチュエータACをフィードバック制御する。なお、手動運転モードでは、走行制御部46は、内部センサ群32により取得されたドライバからの走行指令(アクセル開度等)に応じて各アクチュエータACを制御する。
例えば変速機2の制御に関し、走行制御部46は、予め記憶部42に記憶された変速動作の基準となるシフトマップを用いて、変速用アクチュエータ23に制御信号を出力し、これにより変速機2の変速動作を制御する。より具体的には、車速と要求駆動力とにより定まるシフトマップに従い目標変速段を設定し、変速機2の変速段がこの目標変速段となるように変速用アクチュエータ23を制御する。
ところで、例えば自動運転モードで走行中に、バッテリ24の劣化や充電容量(SOC)の不足等によりバッテリ24の電圧(電源電圧)が低下すると、車両制御システム100を構成する各部に必要な電力を供給できずに、自動運転の継続が困難となるおそれがある。この場合には、車両異常時に適した目的地(整備工場や自宅、あるいは安全地帯等)まで車両101を余裕をもって自走させるために、車両101の走行距離をできるだけ延ばすことが好ましい。この点を考慮し、本実施形態は、以下のように車両制御装置を構成する。
図5は、本発明の実施形態に係る車両制御装置50の要部構成を示すブロック図である。この車両制御装置50は、車両101の走行動作を制御するための装置であり、図3の車両制御システム100の一部を構成する。図5に示すように、車両制御装置50は、コントローラ40と、コントローラ40にそれぞれ接続された電圧計32aと、手動自動切換スイッチ33aと、ディスプレイ33bと、アクチュエータACとを有する。
電圧計32aは、バッテリ24に設けられ、バッテリ24の電圧(電源電圧V)を検出する機器であり、図3の内部センサ群32の一部を構成する。ディスプレイ33bは、運転席に面して設けられ、各種の警報を表示する機器であり、図3の入出力装置33の一部を構成する。ディスプレイ33bを介してドライバに警報情報が報知される。
コントローラ40は、機能的構成として、警報制御部51と、変速機制御部52と、退避走行制御部53と、記憶部42と、を有する。
記憶部42には、予め複数の電源電圧の閾値Va,Vb,Vcが記憶される。Vaは、自動運転モードで運転中に、電源電圧Vの低下に伴い自動運転モードから手動運転モードへの運転モードの切換操作をドライバに促すための閾値である。
閾値Vbは、手動運転モードに切り換えられた状態で、所定変速段(2速段)に変速機2を切り換えるための閾値である。すなわち、バッテリ24から変速用アクチュエータ23への電力供給が断たれたときに実現可能な変速段に、変速機2を強制的に切り換えるための閾値であり、VbはVaよりも小さい。なお、変速機2が2速段に強制的に切り換えられた状態での走行モードを、リンプホームモードと呼ぶ。
閾値Vcは、手動運転モードへの切換操作が促されたにも拘わらず、ドライバが手動運転モードへの切換操作を行わずに自動運転モードが継続されているときに、リンプホームモードに切り換えるための閾値である。VcはVaよりも小さく、例えばVbと等しい。なお、VcはVbより大きくてもよく、小さくてもよい。
警報制御部51は、自動運転モードで走行中において、電圧計32aにより検出された電源電圧Vと記憶部42に記憶された閾値Vaとの大小を判定する。そして、電源電圧Vが閾値Va以下と判定されると、ディスプレイ33bに警報信号を出力する。ディスプレイ33bに警報信号が出力されると、ディスプレイ33bには所定のメッセージが警報情報として表示される。所定のメッセージには、電源電圧Vが低下したことにより自動運転モードから手動運転モードへ切り換える必要がある旨が含まれる。
すなわち、自動運転モードにおける走行中は、車両制御システム100が周囲を監視して自動走行を行うため、多数のセンサ等に電力を供給する必要がある。このため、自動運転モードでの電力消費量は、手動運転モードでの電力消費量よりも大きい。したがって、電力消費量を低減するために、警報制御部51は、手動運転モードへの切換を促すメッセージをディスプレイ33bに表示させ、これによりドライバに手動運転モードへの切換の必要性を報知する。なお、警報制御部51は、運転モードが手動運転モードに切り換えられるまで、ディスプレイ33b上に警報情報を継続して表示させる。
変速機制御部52は、手動運転モードにおいて電圧計32aにより検出された電源電圧Vが閾値Vb以下であるか否か、および自動運転モードにおいて電圧計32aにより検出された電源電圧Vが閾値Vc以下であるか否かを判定する。そして、電源電圧Vが閾値Vb,Vcより大きいときは、変速機2が予め定められたシフトマップに従い車速と要求駆動力とに応じた目標変速段となるように、変速用アクチュエータ23に制御信号を出力する。一方、変速機制御部52は、手動運転モードにおいて電源電圧Vが閾値Vb以下のとき、および自動運転モードにおいて電源電圧Vが閾値Vc以下のとき、変速機2を2速段に切り換えるとともに、2速段を維持する。以降、変速機2の変速のための電力が不要となるため、節電が可能である。
退避走行制御部53は、自動運転モードで走行中において、電圧計32aにより検出された電源電圧Vが閾値Vc以下であるとき、変速用アクチュエータ23以外のアクチュエータAC(スロットル用アクチュエータ13、ブレーキ用アクチュエータ、操舵用アクチュエータ等)に制御信号を出力し、車両101を自動運転で安全地帯まで退避走行させる。すなわち、退避走行制御部53は、当初の目的地とは異なる安全地帯(路肩等)を目的地として設定し、リンプホームモードのまま自動運転で安全地帯まで車両101を走行させる。そして、車両101が安全地帯に達すると、自動運転を停止し、安全地帯に車両101を駐車させる。
図6は、予め記憶されたプログラムに従い図5のコントローラ40のCPUで実行される処理の一例を示すフローチャートである。このフローチャートに示す処理は、例えば車両101のエンジンキースイッチのオンにより開始され、所定周期で繰り返される。
図6に示すように、まず、ステップS1で、電圧計32aおよび手動自動切換スイッチ33aからの信号を読み込む。次いで、ステップS2で、電圧計32aにより検出された電源電圧Vが閾値Va以下か否かを判定する。ステップS2で肯定されるとステップS3に進み、否定されると処理を終了する。ステップS3では、現在の運転モードが手動運転モードであるか否かを判定する。すなわち、手動自動切換スイッチ33aの操作により自動運転モードから手動運転モードに切り換えられたか否かを判定する。
ステップS3で肯定されるとステップS4に進み、電圧計32aにより検出された電源電圧Vが閾値Vb以下か否かを判定する。ステップS4で肯定されるとステップS5に進み、否定されると処理を終了する。ステップS5では、変速用アクチュエータ23に制御信号を出力し、変速段を2速段に切り換える。これにより、走行モードがリンプホームモードに切り換わる。
一方、ステップS3で否定されるとステップS6に進み、ディスプレイ33bに警報信号を出力する。これによりディスプレイ33b上に、電源電圧Vの低下により運転モードを手動運転モードに切り換えるべき旨のメッセージが表示される。次いで、ステップS7で、電圧計32aにより検出された電源電圧Vが閾値Vc以下か否かを判定する。ステップS7で肯定されるとステップS8に進み、否定されると処理を終了する。ステップS8では、変速用アクチュエータ23に制御信号を出力し、変速段を2速段に切り換える。次いで、ステップS9で、アクチュエータACに制御信号を出力し、リンプホームモードのまま安全地帯まで車両101を走行させる。
図7は、本実施形態に係る車両制御装置50の動作の一例を示すタイムチャートである。図7には、電源電圧Vと変速段の時間経過に伴う変化の特性を示す。図7に示すように、自動運転モードで走行中に、時点t1で、充電容量の低下等により電源電圧Vが閾値Vaまで低下すると、ディスプレイ33bに手動運転モードへの切換を促す警報情報が表示される(ステップS6)。その直後に、ドライバが手動自動切換スイッチ33aを操作して運転モードを手動運転モードに切り換えると、切換前よりも電力消費量が減少する。これにより図7の実線に示すように、電源電圧Vの降下の割合(特性の傾き)が小さくなる。
手動運転モードに切り換えられた状態では、ドライバが手動運転により車両101を目的地(整備工場や自宅等)に向けて走行させる。このとき、電源電圧Vが閾値Vbに低下するまでは、変速機2は車速と要求駆動力とに応じて自動的に切り換えられる。時点t2で、電源電圧Vが閾値Vbまで低下すると、変速機2が2速段に切り換えられて変速段が2速段に固定される(ステップS5)。このため、変速機2を変速させるための電力が不要となり、図7の実線に示すように、電源電圧Vの降下の割合がさらに小さくなる。以降、車両101はリンプホームモードで走行し、時点t3で、電源電圧Vが閾値Vdまで低下すると、車両101が走行不能となる。
このように本実施形態では、電源電圧Vが閾値Va以下になると、電源電圧Vの低下をドライバに報知して運転モードの手動運転モードへの切換を促す。これにより、ドライバが手動自動切換スイッチ33aを操作して運転モードが手動運転モードに切り換えられるようになるため、電力消費量が減少し、車両101の走行距離を延ばすことができる。
一方、手動運転モードへの切換を促したにも拘らず、ドライバが運転モードを切り換えない場合、図7の点線に示すように電源電圧Vの傾きが大きい。この場合には、その後、電源電圧Vが閾値Vc以下になると、変速機2が2速段に切り換えられ、車両101はリンプホームモードで安全地帯に退避走行する(ステップS8,ステップS9)。
本実施形態によれば以下のような作用効果を奏することができる。
(1)車両制御装置50は、車両101に搭載された変速機2を駆動するための変速用アクチュエータ23を制御する変速機制御部52と、電源電圧Vを検出する電圧計32aと、自動運転モードから手動運転モードへの切換を指令する手動自動切換スイッチ33aと、自動運転モードで走行中に、電圧計32aにより検出された電源電圧Vが閾値Vaまで低下すると、ドライバに対する手動運転モードへの切換を促す警報情報をディスプレイ33bに表示させる警報制御部51と、を備える(図5)。変速機制御部52は、ディスプレイ33bに警報情報が表示された後、手動自動切換スイッチ33aにより手動運転モードへの切換が指令されてから、電圧計32aにより検出された電源電圧Vが閾値Vaよりも小さい閾値Vbまで低下すると、変速機2を2速段に固定して走行モードをリンプホームモードに切り換えるように変速用アクチュエータ23を制御する(図6)。
この構成により、電源電圧Vが閾値Vaまで低下したときにドライバの操作により手動運転モードに切り換えられるようになるため、自動運転モードで走行を継続するときよりも電力消費量が低減し、車両101の走行距離を延ばすことができる。また、電源電圧Vがさらに閾値Vbまで低下すると、変速機2の自動変速が禁止されて変速機2が2速段に固定されるため、電力消費量を一層低減することができる。
(2)リンプホームモードにおける目標変速段である2速段は、変速用アクチュエータ23が非通電状態のときに確立する変速段である。このため、電源電圧Vが低下した場合であっても、変速機2を2速段に維持することができ、車両101の安定した走行が可能である。また、2速段は、車両101の発進走行や加速走行等を容易に行うことができる変速段であるため、リンプホームモードにおける良好な走行が可能である。
(3)変速機制御部52は、警報制御部51からの指令によりディスプレイ33bに警報情報を表示させた後、手動自動切換スイッチ33aにより手動運転モードへの切換が指令されずに、電圧計32aにより検出された電源電圧Vが閾値Vaよりも小さい閾値Vcまで低下すると、変速機2を2速段に切り換えるように変速用アクチュエータ23を制御する(図6)。これにより、例えばドライバが警報情報の表示に気付かずに手動運転モードへの切換操作がなされなかった場合、自動運転モードでの走行が継続されるが、変速段を固定することにより、電力消費量を抑えた状態で自動運転モードにより安全地帯へ退避走行することが可能である。
上記実施形態は種々の形態に変形することができる。以下、変形例について説明する。上記実施形態では、二次電池としてのバッテリ24に設けられた電圧計32aにより電源電圧を検出するようにしたが、電圧計以外を用いて例えば計算により電源電圧を検出(推定)するようにしてもよく、電圧検出部の構成は上述したものに限らない。上記実施形態では、手動自動切換スイッチ33aにより運転モードの切換を指令するようにしたが、少なくとも自動運転モードから手動運転モードへの切換を指令するのであれば、モード切換指令部の構成はいかなるものでもよい。上記実施形態では、電源電圧Vが閾値Va(第1所定値)まで低下すると、警報制御部51からの指令によりディスプレイ33bに警報情報を表示するようにしたが、スピーカを介して音声で警報を出力するようにしてもよく、警報出力部の構成は上述したものに限らない。
上記実施形態では、変速機制御部52が、車両101に搭載された変速機2を駆動するための変速用アクチュエータ23を制御するようにした。例えば、変速機制御部52が、警報が出力されても手動運転モードへの切換が指令されずに電源電圧Vが閾値Vaよりも小さい閾値Vc(第3所定値)まで低下すると、変速機2を2速段に固定するようにしたが、アクチュエータ制御部の構成はこれに限らない。すなわち、警報が出力された後、手動運転モードへの切換が指令されてから電源電圧Vが閾値Vaよりも小さい閾値Vb(第2所定値)まで低下すると、変速機の変速比を所定の変速比に固定するようにアクチュエータを制御するのであれば、アクチュエータ制御部の構成はいかなるものでもよい。変速機は無段変速機でもよく、所定の変速比は、2速段に対応した変速比に限らない。
以上の説明はあくまで一例であり、本発明の特徴を損なわない限り、上述した実施形態および変形例により本発明が限定されるものではない。上記実施形態と変形例の1つまたは複数を任意に組み合わせることも可能であり、変形例同士を組み合わせることも可能である。