本開示の自動制動装置の好ましい実施の形態について、図面を参照して、以下に説明する。
図1は、本開示の第1実施形態にかかる自動制動装置が適用された車11の構成を示すブロック図である。第1実施形態の車11は、カメラ21、車輪速センサ22、車高センサ31、AEB-ECU41および制動装置51を備えている。なお、AEBとは、Autonomous Emergency Brakingの頭字語であり、ECUは、Electric Control Unitの頭字語である。なお、本実施形態において、前方は、車11の進行方向を指し、左右は、車11の進行方向を向いて左右を指す。
カメラ21は、車11の前方の画像を撮影する撮影装置である。カメラ21は、たとえばCCDやCMOSなどの撮像素子を有しており、所定の撮影領域を所定のフレームレートで撮影する。カメラ21は、車11の前部の車幅方向中央付近に取り付けられている。カメラ21は、ステレオカメラであって、車幅方向に離れた2つのレンズを有し、各レンズを通して入力される画像をそれぞれ撮像素子によって画像データとして取得する。つまり、カメラ21は、一対の画像データを取得する。この一対の画像データは、AEB-ECU41において、両眼視差を再現して立体的な空間把握を可能にするデータである。カメラ21が撮影した画像データは、AEB-ECU41に出力される。
車輪速センサ22は、車11の各車輪の車輪速を検出するセンサである。車輪速センサ22は、車11の各車輪にそれぞれ1つずつ配置されている。車輪速センサ22は、各車輪の車軸の回転速度をそれぞれ検出し、検出した回転速度に基づいて各車輪の車輪速を算出する。車輪速センサ22は、検出した各車輪速をAEB-ECU41に出力する。なお、車輪速センサ22は、検出した各車輪速から車11の車速を算出して、算出した車速をAEB-ECU41に出力するように構成されていてもよい。
車高センサ31は、車11の車高を検出するセンサである。車高センサ31は、車11の各車輪付近にそれぞれ1つずつ配置されており、各車輪付近の車11の車高を検出する。車高センサ31は、検出した各車高の検出値をAEB-ECU41に出力する。
AEB-ECU41は、自動制動を行うための電子制御ユニットであり、CPUおよびメモリを備えたマイクロコンピュータによって実現されている。AEB-ECU41は、各センサからの入力信号に基づいて、車11の障害物との衝突可能性を判断する。そして、障害物との衝突の可能性が高いときに、制動装置51に自動ブレーキを作動させる。車11のロール方向の傾きが大きいほど、車11の重心が左右方向にずれていることになり、偏向挙動が大きくなる。このことから、本実施形態においては、AEB-ECU41は、車11のロール方向の傾きを検出し、検出した車11のロール方向の傾きに応じて、自動ブレーキを作動させる上限速度である作動速度を設定するように構成されている。AEB-ECU41は、その機能構成として、障害物検出部411、車速検出部412、衝突可能性判断部413、傾き検出部414、作動速度設定部415および制動指示部416を含んでいる。
障害物検出部411は、カメラ21から入力される一対の画像データを画像処理することで、車11の前方の障害物を検出するとともに、当該障害物の位置や動き、形状、距離を特定する。また、障害物検出部411は、車11に対する障害物の相対速度を特定する。本実施形態においては、障害物検出部411は、カメラ21の画像データから他車、建造物および歩行者などを障害物として検出する。なお、障害物検出部411は、AEB-ECU41とは別のユニット(たとえば画像処理ユニット)に設けられていてもよい。この場合、この画像処理ユニットからAEB-ECU41に障害物に関する各種情報が入力される。
車速検出部412は、車輪速センサ22からの入力信号(各車輪速)に基づいて、車11の速度を検出する。なお、車輪速センサ22から車11の車速がAEB-ECU41に入力される場合には、車速検出部412がなくてもよい。
衝突可能性判断部413は、障害物との衝突の可能性を判断する。衝突可能性判断部413は、障害物検出部411が検出した障害物に関する各種情報に基づいて、車11が当該障害物と衝突する可能性が高いか否かを判断する。衝突可能性判断部413による衝突可能性の判断方法は、特に限定されないが、たとえば、次のように行われる。それは、衝突可能性判断部413は、障害物検出部411が特定した相対速度に対応する衝突回避閾値を図示しないメモリから読み出す。衝突回避閾値は、運転者による制動または操舵によって障害物との衝突を回避できる距離であるか否かを判断するための閾値である。衝突回避閾値は、相対速度の大きさによって異なり、相対速度の絶対値が大きいほど大きくなる。メモリには、相対速度の絶対値と衝突回避閾値との対応関係を示す衝突回避閾値テーブルが記憶されている。衝突可能性判断部413は、障害物検出部411が特定した障害物との距離と、読み出した衝突回避閾値とを比較する。そして、その距離が衝突回避閾値以下の場合、衝突の可能性が高いと判断する。一方、その距離が衝突回避閾値より大きい場合、衝突の可能性が低いと判断する。
傾き検出部414は、車高センサ31から入力される各車高の検出値に基づいて、車11のロール方向の傾きを検出する。ロール方向とは、車11のロール軸周りの回転方向である。本実施形態においては、傾き検出部414は、車11のロール方向の傾きとして、車11のロール角を検出する。ロール角とは、車11のロール軸周りの回転角度である。たとえば車11に積載される荷物が右側に偏っている場合、車11の右側の車高が低くなり、このときのロール角は正の値となる。一方、車11に積載される荷物が左側に偏っている場合、車11の左側の車高が低くなり、このときのロール角は負の値となる。なお、ロール角の正負の方向は反対であってもよい。また、ロール角の大きさ(絶対値)が大きいほど、車11が左右のいずれかに大きく傾いていることになる。車11のロール方向の傾きは、上記した積載された荷物の偏りだけでなく、同乗者の乗車位置によっても生じる。たとえば、同乗者が運転席側の後部座席に座っており、助手席および助手席側の後部座席には座っていない場合、運転席側の重量が大きくなるので、車11の運転席側の車高が低くなる。
作動速度設定部415は、自動ブレーキを作動させる上限速度である作動速度を設定する。本実施形態においては、作動速度設定部415は、傾き検出部414によって検出された、車11のロール方向の傾き、すなわち、ロール角に基づいて、作動速度を設定する。具体的には、作動速度設定部415は、ロール角の大きさ(絶対値)が0°以上第1ロール判定閾値未満である場合、作動速度を高速(たとえば80km/h)とし、ロール角の大きさ(絶対値)が第1ロール判定閾値以上第2ロール判定閾値未満である場合、作動速度を中速(たとえば60km/h)とし、ロール角の大きさ(絶対値)が第2ロール判定閾値以上である場合、作動速度を低速(たとえば30km/h)とする。なお、第1ロール判定閾値は0よりも大きい値であり、第2ロール判定閾値は第1ロール判定閾値よりも大きい値である。よって、作動速度設定部415は、ロール角の大きさ(絶対値)が大きいほど、作動速度が小さくなるように、作動速度を設定する。なお、上記した高速、中速、低速の値は、一例であって上記したものに限定されない。また、高速、中速、低速の3段階に限らず、2段階に変わるように構成してもよいし、4段階以上に変わるように構成してもよい。また、作動速度設定部415は、区分線形関数を用いた区分線形補間をすることで、あるいは、所定の演算式を演算することで、傾き検出部414が検出したロール角の大きさに応じて、作動速度を線形的に変化させてもよい。
制動指示部416は、車11が障害部に衝突する可能性が高く、かつ、車11の車速が上記作動速度以下であるときに、制動装置51に対して自動ブレーキを作動させるように指示する。本実施形態においては、制動指示部416は、制動装置51に自動減速信号を出力することで、自動ブレーキの作動を指示する。なお、制動指示部416は、制動装置51に自動減速信号を出力するとともに、自動ブレーキが作動することを、図示しない表示装置や図示しない警報装置を介して、運転者に報知してもよい。
制動装置51は、AEB-ECU41(制動指示部416)から自動ブレーキの作動が指示されると、自動ブレーキを作動させ、車11に制動力を与える。制動装置51は、ブレーキECU511およびブレーキアクチュエータ512を含んでいる。ブレーキECU511は、AEB-ECU41(制動指示部416)から自動減速信号を入力されたときに、ブレーキアクチュエータ512を駆動して図示しないブレーキ機構を作動させる。これにより、ブレーキ機構によって車11に制動力が与えられ、自動ブレーキが作動する。
次に、第1実施形態にかかる自動制動装置が適用された車11の作用効果について説明する。
本実施形態によれば、AEB-ECU41において、傾き検出部414は、車高センサ31の検出値に基づき、車11のロール方向の傾きとして、ロール角を検出する。そして、作動速度設定部415は、車11のロール方向の傾き(ロール角)に応じて、作動速度を設定している。上記するように、車11のロール方向の傾きが大きいほど、車11の重心が左右方向にずれているので、自動ブレーキが作動したときの偏向挙動が大きくなる。よって、作動速度設定部415は、車11のロール方向の傾きが大きく、偏向挙動が大きくなる場合には、作動速度を小さく(低速に)設定する。これにより、自動ブレーキが作動した場合に、偏向挙動による偏向量を抑制できる。したがって、自動ブレーキの作動時の偏向挙動によって生じる事故の可能性を抑制できる。また、偏向挙動が大きくならない場合には、作動速度を大きく(高速に)設定できるので、車速が大きい場合にも自動ブレーキを作動させることができる。したがって、障害物への衝突の可能性を抑制できる。
なお、第1実施形態では、傾き検出部414は、車11のロール方向の傾き(ロール角)を検出する場合を示したが、これに変えて、車11のピッチ方向の傾き(ピッチ角)を検出するようにしてもよい。ピッチ方向とは、車11のピッチ軸周りの回転方向である。ピッチ角とは、車11の左右方向の軸周りの回転角度である。なお、自動でヘッドライトの照射範囲(上下方向)を調整するヘッドライトオートレベリングシステムと呼ばれるシステムにおいて、このような車11のピッチ角の検出が行われている。本変形例においては、作動速度設定部415は、傾き検出部414が検出した、車11のピッチ方向の傾き、すなわち、ピッチ角に基づいて、作動速度を設定する。具体的には、作動速度設定部415は、ピッチ角の大きさ(絶対値)が0°以上第1ピッチ判定閾値未満である場合、作動速度を高速(たとえば80km/h)とし、ピッチ角の大きさ(絶対値)が第1ピッチ判定閾値以上第2ピッチ判定閾値未満である場合、作動速度を中速(たとえば60km/h)とし、ピッチ角の大きさ(絶対値)が第2ピッチ判定閾値以上である場合、作動速度を低速(たとえば30km/h)とする。車11のピッチ方向の傾きによっても、偏向挙動が大きくなったり小さくなったりするので、車11のピッチ方向の傾きに応じて作動速度を設定することで、自動ブレーキが作動したときの偏向量を抑制することができる。
なお、車11の傾きを検出する傾斜センサを備えておき、傾き検出部414が、この傾斜センサの検出値に基づいて、車11のロール角や車11のピッチ角を検出するようにしてもよい。
図2は、本開示の第2実施形態にかかる自動制動装置が適用された車12の構成を示すブロック図である。なお、本実施形態において、上記第1実施形態と同一あるいは類似の構成要素には、同じ符号を付して、その説明を省略する。第2実施形態にかかる自動制動装置は、第1実施形態にかかる自動制動装置と比較して、上記作動速度の設定方法が異なる。
発明者の試験により、自動ブレーキの作動時の偏向挙動は、車12の重心のずれが同じであっても、タイヤのグリップ力の低下に伴い大きくなるという知見が得られた。また、一般的に、装着タイヤがスタッドレスタイヤである場合、サマータイヤである場合と比べてグリップ力が低いことが知られている。これらのことから、本実施形態においては、車12のタイヤがサマータイヤであるかスタッドレスタイヤであるかのタイヤ種別を判定し、この判定結果に基づいて作動速度を設定している。
本実施形態にかかる車12は、装着タイヤがサマータイヤであるかスタッドレスタイヤであるかのタイヤ種別を判定するために、上記車11と比較して、車高センサ31の代わりに、操舵角センサ32、ヨーレートセンサ33および加速度センサ34を備えている。また、本実施形態にかかるAEB-ECU41は、上記第1実施形態にかかるAEB-ECU41と比較して、傾き検出部414の代わりに、タイヤ状態判定部417を含んでいる。
操舵角センサ32は、運転者によるステアリングホイールの操舵角を検出するセンサである。操舵角センサ32は、検出した操舵角をAEB-ECU41に出力する。
ヨーレートセンサ33は、車12に作用するヨーレートを検出するセンサである。ヨーレートセンサ33は、検出したヨーレートをAEB-ECU41に出力する。
加速度センサ34は、車12の加速度を検出するセンサである。本実施形態においては、加速度センサ34は、少なくとも車12の幅方向に対する加速度を検出する。すなわち、加速度センサ34は、車12にかかる横方向加速度Gを検出する。加速度センサ34は、検出した横方向加速度GをAEB-ECU41に出力する。なお、加速度センサ34は、さらに、車12の前後方向に対する加速度および車12の上下方向に対する加速度を検出するものであってもよい。
AEB-ECU41は、上記するように、傾き検出部414の代わりに、タイヤ状態判定部417を含んでいる。
タイヤ状態判定部417は、車12のタイヤの状態を判定するものである。本実施形態においては、タイヤ状態判定部417は、車12のタイヤの状態として、装着タイヤがサマータイヤであるかスタッドレスタイヤであるかのタイヤ種別を判定する。タイヤ状態判定部417は、車速検出部412が検出した車速、操舵角センサ32が検出した操舵角およびヨーレートセンサ33が検出したヨーレートに基づいて、車12にかかる横方向加速度G’を推算する。そして、推算した横方向加速度G’と加速度センサ34が検出した横方向加速度G(実際の横方向加速度G)とに基づいて、車12のタイヤ種別を判定する。上記するように装着タイヤがスタッドレスタイヤである場合、サマータイヤである場合と比べてグリップ力が低い。また、グリップ力が低いほど、検出された横方向加速度Gと推算された横方向加速度G’との差が大きくなる。そこで、タイヤ状態判定部417は、推算した横方向加速度G’から、検出した横方向加速度Gを減算して(G’-G)、当該減算値がタイヤ種別判定閾値より大きい場合にタイヤ種別がスタッドレスタイヤであると判定し、タイヤ種別判定閾値以下の場合にはタイヤ種別がサマータイヤであると判定する。たとえば、タイヤ状態判定部417は、車12がカーブを走行する度に上記減算値を算出する。そして、タイヤ状態判定部417は、所定期間ごとの上記減算値の平均値を算出し、当該平均値によって、車12のタイヤ種別を判定する。なお、タイヤ状態判定部417は、上記減算値を算出する度に車12のタイヤ種別を判定してもよいし、上記減算値を算出する度に車12のタイヤ種別の仮判定を行い、そして、所定回数分の当該仮判定結果に基づいて、サマータイヤであると判定された回数とスタッドレスタイヤであると判定された回数のうち多い方を車12のタイヤ種別と判定してもよい。
本実施形態においては、作動速度設定部415は、タイヤ状態判定部417によるタイヤ種別の判定結果に基づいて、作動速度を設定する。具体的には、作動速度設定部415は、タイヤ状態判定部417によって車12のタイヤがサマータイヤであると判定された場合、作動速度を高速(たとえば80km/h)とし、車12のタイヤがスタッドレスタイヤであると判定された場合、作動速度を低速(たとえば30km/h)とする。よって、作動速度設定部415は、車12のタイヤがスタッドレスタイヤである場合には、作動速度を小さく設定し、車12のタイヤがサマータイヤである場合には、作動速度を大きく設定する。作動速度設定部415は、タイヤ状態判定部417が車12のタイヤ状態の判定を行う度に、作動速度を設定する。
本実施形態によれば、タイヤ状態判定部417は、車12のタイヤがサマータイヤであるかスタッドレスタイヤであるかのタイヤ種別を判定している。上記するように、スタッドレスタイヤは、サマータイヤよりもグリップ力が低く、タイヤ種別がスタッドレスタイヤである場合、自動ブレーキによる偏向挙動が大きくなる。よって、タイヤ状態判定部417によって装着タイヤがスタッドレスタイヤであると判定された場合、作動速度設定部415によって作動速度を小さく設定することで、自動ブレーキが作動したときの偏向量を抑制することができる。一方、タイヤ状態判定部417によって装着タイヤがサマータイヤであると判定された場合、自動ブレーキが作動しても偏向量が大きくならないので、作動速度設定部415によって作動速度を大きく設定して、障害物に衝突する可能性を抑制することができる。
第2実施形態では、タイヤ状態判定部417は、推算された横方向加速度G’から、検出された横方向加速度Gを減算した値に基づいて、車12のタイヤがサマータイヤであるかスタッドレスタイヤであるかのタイヤ種別を判定し、作動速度設定部415がこのタイヤ種別の判定結果に基づいて、作動速度を設定する場合を示したが、これに限定されず、次のようにしてもよい。すなわち、タイヤ状態判定部417が、推算された横方向加速度G’から、検出された横方向加速度Gを減算し、作動速度設定部415がその減算値に応じて作動速度を設定するようにしてもよい。すなわち、車12のタイヤ種別の判定を行わなくてもよい。具体的には、作動速度設定部415は、減算値が第1横G判定閾値未満である場合、作動速度を高速(たとえば80km/h)とし、減算値が第1横G判定閾値以上第2横G判定閾値未満である場合、作動速度を中速(たとえば60km/h)とし、減算値が第2横G判定閾値以上である場合、作動速度を低速(たとえば30km/h)とする。なお、第2横G判定閾値は第1横G判定閾値よりも大きい値である。よって、作動速度設定部415は、減算値が小さいほど作動速度を大きく設定し、減算値が大きいほど作動速度を小さく設定する。減算値が大きいほど、すなわち、検出された横方向加速度Gが推算された横方向加速度G’よりも小さいほど、タイヤのグリップ力が低下していると判断できるため、偏向挙動が大きくなる傾向がある。よって、減算値が大きいほど、作動速度を小さく設定することで、自動ブレーキ作動時の偏向量を抑制することができる。
図3は、本開示の第3実施形態にかかる自動制動装置が適用された車13の構成を示すブロック図である。なお、本実施形態において、上記第2実施形態と同一あるいは類似の構成要素には、同じ符号を付して、その説明を省略する。本実施形態における自動制動装置は、上記第2実施形態と比較して、車13のタイヤ状態の判定方法が異なる。
上記するようにタイヤのグリップ力の低下に伴い、自動ブレーキの作動時の偏向挙動が大きくなる。また、タイヤの空気圧が低下している状態では、適正な空気圧である場合よりもグリップ力が低下する。これらのことから、本実施形態においては、車13のタイヤの空気圧が低下しているか否かを判定し、この判定結果に基づいて作動速度を設定している。よって、上記車12においては、タイヤ状態判定部417は、タイヤの状態として、車12の装着タイヤがサマータイヤであるかスタッドレスタイヤであるかのタイヤ種別を判定したが、本実施形態にかかる車13においては、タイヤ状態判定部417は、タイヤの状態として、タイヤの空気圧が低下しているか否かを判定している。
本実施形態においては、車13は、タイヤの空気圧を検出するために、第2実施形態にかかる車12と比較して、操舵角センサ32、ヨーレートセンサ33および加速度センサ34の代わりに、空気圧センサ35を備えている。
空気圧センサ35は、車13の各タイヤの空気圧を検出するセンサである。空気圧センサ35は、車13のタイヤごとにそれぞれ1つずつ配置されており、たとえばタイヤの空気注入口のバルブに取り付けられている。空気圧センサ35は、検出した各タイヤの空気圧を無線通信によってAEB-ECU41に送信する。空気圧センサ35によって検出された各タイヤの空気圧の情報は、たとえば運転者にタイヤのパンクを報知するTPMS(タイヤプレッシャーモニタリングシステム)でも用いられている。
本実施形態においては、タイヤ状態判定部417は、タイヤの状態として、車13のタイヤの空気圧が低下しているか否かを判定する。タイヤ状態判定部417は、空気圧センサ35から各タイヤの空気圧の検出値が入力される。そして、入力された各タイヤの空気圧の検出値に基づいて、各タイヤの空気圧の少なくとも1つが空気圧低下判定閾値以下の場合に、タイヤの空気圧が低下していると判定する。この空気圧低下判定閾値は、たとえば車13ごとに規定された空気圧の適正値に基づいて、設定される。なお、タイヤ状態判定部417は、4つのタイヤの空気圧の平均値が空気圧低下判定閾値以下の場合に、タイヤの空気圧が低下していると判定してもよい。タイヤ状態判定部417は、空気圧センサ35から各タイヤの空気圧の検出値が入力される度に各タイヤの空気圧が低下しているか否かを判定してもよいし、所定期間の間に入力されたタイヤごとの空気圧の平均値を算出して、この平均値によって、タイヤの空気圧が低下しているか否かを判定してもよい。
本実施形態においては、作動速度設定部415は、タイヤ状態判定部417によるタイヤ状態(タイヤの空気圧が低下しているか否か)の判定結果に応じて、作動速度を設定する。具体的には、作動速度設定部415は、タイヤ状態判定部417によってタイヤの空気圧が低下していると判定された場合、自動ブレーキの作動速度を低速(たとえば30km/h)とする。一方、タイヤの空気圧が低下していないと判定された場合、自動ブレーキの作動速度を高速(たとえば80km/h)とする。よって、作動速度設定部415は、車13のタイヤの空気圧が低下していると判定された場合には、作動速度を小さく設定し、車13のタイヤの空気圧が低下していないと判定された場合には、作動速度を大きく設定する。
本実施形態によれば、タイヤ状態判定部417は、車13のタイヤの空気圧が低下しているか否かを判定している。上記するように、タイヤの空気圧が低下している状態では、適正な空気圧である場合よりもグリップ力が低くなるので、自動ブレーキによる偏向挙動が大きくなる。よって、タイヤ状態判定部417によって車13のタイヤの空気圧が低下していると判定された場合、作動速度設定部415によって作動速度を小さく設定することで、自動ブレーキが作動したときの偏向量を抑制することができる。一方、タイヤ状態判定部417によってタイヤの空気圧が低下していないと判定された場合、自動ブレーキが作動しても偏向量が大きくならないので、作動速度設定部415によって作動速度を大きく設定して、障害物に衝突する可能性を抑制することができる。
第3実施形態では、タイヤ状態判定部417は、タイヤの状態として、車13のタイヤの空気圧が低下しているか否かを判定したが、これに限定されず、各タイヤの空気圧にばらつきがあるか否かを判定してもよい。各タイヤの空気圧にばらつきがある場合、各タイヤの空気圧が均等である場合よりもグリップ力が低下する。したがって、タイヤ状態判定部417が、空気圧センサ35から入力される各タイヤの空気圧に基づいて、各タイヤの空気圧にばらつきがあるか否かを判定する。そして、作動速度設定部415は、各タイヤの空気圧にばらつきがあると判定された場合、自動ブレーキの作動速度を自動ブレーキの作動速度を低速(たとえば30km/h)とする。一方、各タイヤの空気圧にばらつきがないと判定された場合、自動ブレーキの作動速度を高速(たとえば80km/h)とする。よって、作動速度設定部415は、車13のタイヤの空気圧にばらつきがあると判定された場合には、作動速度を小さく設定し、車13のタイヤの空気圧にばらつきがないと判定された場合には、作動速度を大きく設定する。なお、タイヤ空気圧のばらつきの検出方法は、特に限定されないが、たとえば、次のように行われる。それは、タイヤ状態判定部417は、例えば左側の前後のタイヤの空気圧の平均と右側の前後のタイヤの空気圧の平均との差分がばらつき判定閾値以上ある場合にばらつきがあると判定して、ばらつき判定閾値未満である場合にはばらつきがないと判定する。
第1実施形態ないし第3実施形態では、障害物検出部411が、カメラ21から入力される画像データに基づいて、障害物を検出する場合を説明したが、障害物の検出方法は、これに限定されない。たとえば、カメラ21の代わりに、レーザレーダ、ミリ波レーダ、超音波センサおよび単眼カメラを適宜備えておき、障害物検出部411が、これらからの入力データに基づいて、障害物の検出、および、当該障害物の位置や動き、形状、距離、相対速度などの特定を行ってもよい。
本開示に係る自動制動装置は、上記した実施形態に限定されるものではない。本開示の自動制動装置の各部の具体的な構成は、種々に設計変更自在である。