JP6993897B2 - 炭化ホウ素の製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、炭化ホウ素の製造方法に関する。
炭化ホウ素(BC)は、もっとも硬い材料の1つとして知られており、量産も可能であるため、軽量・高強度の素材として注目されている。従来、炭化ホウ素は、その粉末を成型し、成型体として使用されていたが、粉末の形状により、成型体の強度に影響を与えることが知られている。また、炭化ホウ素の合成方法としては、2000℃以上の高温で、酸化ホウ素又はホウ酸と炭素を固相法により反応させて合成する方法が存在する。
また、特許文献1には、炭素源としての糖類とホウ素源としてのホウ酸または酸化ホウ素を溶媒中に溶解した後、該溶媒を除去して炭素源とホウ素源の混合粉末を形成し、これを200℃~1100℃で加熱反応させてB-O-Cの結合体からなる非晶質体を生成させ、続いてこの前駆体を1300℃以上で加熱することによってBC結晶体を得る、炭化ホウ素の製造方法が開示されている。
一方、炭化ホウ素を合成する際に、所定の形状を呈した焼成体を得る試みも存在する。例えば、特許文献2には、ビスコース中にホウ素源を分散させた懸濁液を紡糸して、ホウ素源がセルロースマトリックス中に存在する素繊維を得た後、その素繊維を1800℃~2300℃の高温で熱処理して炭化ホウ素繊維を得る、炭化ホウ素セラミック繊維の製造方法が開示されている。
特開2003-277039号公報 特許第5319767号公報
しかしながら、特許文献1の製造方法は、溶解、乾燥後に2段階の焼成を経る必要があり工程が煩雑であると共に、所定の形状の炭化ホウ素を得るには、さらに追加の工程を必要とする。また特許文献2の方法では、ビスコース懸濁液を紡糸する工程を含んでいるため、プロセスが複雑であると共に、従来の製造方法同様に2000℃を越える高温での焼成を要する。さらに、最終的に得られる炭化ホウ素繊維は糸状の連続体であるため、成型体を作成するための原料としては検討の余地がある。
本発明は、上記の課題に鑑み、所望の形状の炭化ホウ素を簡便に得ることができる、炭化ホウ素の製造方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、ホウ素源が表面に均一に付着した所望の形状を有する固体炭素源を不活性ガス雰囲気下又は還元ガス雰囲気下で焼成することにより、所望の形状の炭化ホウ素が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
即ち、本発明の炭化ホウ素の製造方法は、
ホウ酸及び/又は酸化ホウ素からなるホウ素源を溶液状態から析出させて所望の形状を有する固体炭素源に付着させる付着工程と、
前記付着工程を経た固体炭素源を不活性ガス雰囲気下又は還元ガス雰囲気下で焼成する焼成工程と、
を有することを特徴とする。
上記の製造方法によれば、ホウ素源を付着させた固体炭素源を焼成することで、焼成後も固体炭素源の形状をある程度保持することができるため、所定の形状の固体炭素源を用いることにより、所望の形状の炭化ホウ素を得ることができる。
なお、このような簡便な製造方法で所望の形状の炭化ホウ素が得られる理由の詳細は不明であるが、次のように考えられる。一般に、酸化ホウ素と炭素源の反応は、下記の反応式(1)に従うことが知られている。また、ホウ酸は加熱により脱水し、酸化ホウ素が生成することが知られている。
2B+7C→BC+6CO↑ ・・・(1)
上記の反応式(1)による反応を想定した場合、ホウ素源中のホウ素原子と固体炭素源中の炭素原子のモル比は、4:7となる。本発明では、ホウ素源を溶液状態(図1(a)参照)から固体炭素源の表面に析出させるため、付着工程を経た固体炭素源(図1(b)参照)でもこのモル比がほぼ維持されている。そして、固体炭素源の表面付近に存在するホウ素源が、未反応のまま残存することなく、化学量論的に炭素源と反応することで、所定の組成を有しつつ、所望の形状の炭化ホウ素(図1(c)参照)が得られると考えられる。
本発明によれば、所望の形状の炭化ホウ素を得ることができる。
本発明の炭化ホウ素の製造方法における、各原料と焼成体の状態を模式的に示す図面であり、(a)は溶液中の原料の状態を示し、(b)はホウ素源を付着させた固体炭素源の状態を示し、(c)は得られる炭化ホウ素の状態を示している。 実施例1で得られた繊維状の炭化ホウ素(炭化ホウ素ファイバー)の走査型電子顕微鏡(SEM)写真であり、(a)は繊維の集合状態を示し、(b)は繊維を拡大した形状を示し、(c)は繊維の表面の形状を示している。 実施例1で得られた焼成体のX線回折(XRD)測定の結果を示すチャートであり、炭化ホウ素(BC)単相で構成されている。 比較例5で得られた焼成体のX線回折(XRD)測定の結果を示すチャートであり、炭化ホウ素(BC)と炭素(C)と同定不明の結晶相から構成されている。
[炭化ホウ素]
本発明の製造方法から得られる炭化ホウ素は、炭化ホウ素の結晶相を主相とするものであり、その全てが、またはほとんど全てが炭化ホウ素の結晶相のみからなる。
炭化ホウ素の結晶相を「主相とする」とは、X線回折(XRD)測定において、同定されたピークの全てが、またはほとんど全てが炭化ホウ素由来であることを意味する。ここで、「ほとんど全て」とは、炭化ホウ素として同定されない微小な回折ピークが認められるか、又は小さなハロー状のバックグランドから非晶質相が少量混在することが否定できないことを意味する。
炭化ホウ素は、理想的には化学式:BCで表されるが、本発明の製造方法から得られる「炭化ホウ素」とは、化学式:B3.5C~B10Cで表される、含有される炭素原子量が10質量%~24質量%までの広い組成範囲にわたる固溶体を指す概念である。この固溶体に含まれる個々の炭化ホウ素の化学式については、X線回折(XRD)測定による同定が困難であり、炭素分析計などを用いた炭素量の定量結果から同定することができる。
上記のとおり、本発明の製造方法から得られる炭化ホウ素は、炭素原子の含有量が10質量%(B10C)~24質量%(B3.5C)であり、好ましくは炭素原子の含有量が18.2質量%(BC)~21.7質量%(BC)である。
また、本発明の製造方法から得られる炭化ホウ素は、一次粒子が結合した多結晶体であり、かかる一次粒子の平均粒径は、50nm~1000nmが好ましい。なお、平均粒径とは、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いた観察における、数十個の粒子の粒径(長軸の長さ)の測定値の平均値を意味する。
さらに、本発明の製造方法から得られる炭化ホウ素は、原料として使用する固体炭素源の形状に由来する形状を有することができ、固体炭素源の形状により、粒状、球状、繊維状、針状、棒状、板状、細板状、などの任意の形状を取り得る。
[製造方法]
本発明の炭化ホウ素の製造方法は、以下で詳述する付着工程と焼成工程とを有している。なお、図1(a)~(c)は、本発明の製造方法の付着工程(図1(a)~(b))と焼成工程(図1(c))における各原料と焼成体の状態を模式的に示しているが、各寸法の比率などは正確ではない。
(付着工程)
本発明における付着工程は、ホウ酸及び/又は酸化ホウ素からなるホウ素源を溶液状態から析出させて固体炭素源に付着させる工程である。つまり、図1(a)に示すように、溶液中ではホウ素源が溶解し、固体炭素源は溶解していない状態であり、付着工程を経ることで、図1(b)に示すように、ホウ素源が析出して固体炭素源の表面全体に均一に付着した状態となる。
なお、本発明において、固体炭素源が水酸基等を有する場合、当該水酸基とホウ酸とが反応し得るが、本発明における「付着」は、両者が化学反応した状態を包含するものである。
ホウ素源としては、オルトホウ酸、メタホウ酸、酸化ホウ素からなる群より選ばれる1種以上を用いることができる。これらは必要に応じて加熱しながら、水等の溶媒に溶解させることができる。その際、原料比を精度よく制御するために、完全に溶解させることが好ましい。また、溶解を促進するため、溶液を加熱することが好ましい。
固体炭素源としては、使用する溶媒に不溶性であることが好ましい。また、固体炭素源は、炭素材料、若しくは不活性ガス雰囲気下又は還元ガス雰囲気下での加熱により炭化する材料であればよく、炭素からなる固体材料、炭化水素からなる固体材料、炭水化物からなる固体材料などが挙げられる。具体的には、セルロース、アルキルセルロース、アセチルセルロースなどのセルロース類、カーボン繊維、カーボンブラック、グラファイトなどのカーボン類、ノボラック、レゾール等のフェノール樹脂類、又は石油ピッチや石炭ピッチ等のピッチ系材料などが好ましい。
なかでも、化学量論的な反応を低い焼成温度で行なう観点から、セルロース類等の炭水化物からなる固体材料が好ましい。
固体炭素源の形状としては、粒状、球状、繊維状、針状、棒状、板状、細板状、などの任意の形状を取り得る。
付着工程で使用される前記ホウ素源中のホウ素原子と前記固体炭素源中の炭素原子のモル比(B:C)は、14:25~10:14であることが好ましく、4:7~10:17であることがより好ましい。また、付着後のホウ素源中のホウ素原子と固体炭素源中の炭素原子のモル比(B:C)もこれと同じ範囲が好ましい。
上記のホウ素原子と炭素原子のモル比(B:C)であれば、ホウ素原子の全てが炭化ホウ素となり、また炭化ホウ素とならなかった炭素は、上記反応式(1)のように、ホウ素源に含まれる酸素によって焼失するため、次工程の焼成工程では炭化ホウ素のみを得ることができる。
固体炭素源にホウ素源を付着させる方法としては、加熱により溶媒を蒸発乾固させる方法、容器中で加熱・減圧により溶媒を蒸発乾固させる方法、固体炭素源に溶液を塗布又は含浸した後、溶媒を蒸発させる方法、これらを繰り返す方法などが挙げられる。
なお、ホウ素源の溶解時における溶液中の濃度(固体炭素源は含まない)は、付着工程における蒸発乾固の効率の観点から、3質量%~25質量%が好ましい。
(焼成工程)
本発明における焼成工程は、前記付着工程を経た固体炭素源を不活性ガス雰囲気下又は還元ガス雰囲気下で焼成する工程である。この焼成工程を経ることで、ホウ素源と固体炭素源が上記反応式(1)に代表される化学反応を生じて、炭化ホウ素を得ることができる。
その際、固体炭素源の形状が、得られる焼成体の形状として保持されていることが好ましい。その結果、得られる炭化ホウ素の形状を、固体炭素源の形状によって、ある程度制御することができる。
焼成温度としては、反応率を十分高めながら低温で焼成する観点から、1300℃~1900℃が好ましく、1300℃~1800℃がより好ましく、1300℃~1500℃が更に好ましい。なお、焼成時間としては、焼成温度にもよるが、30分~20時間が好ましく、2時間~10時間がより好ましい。
焼成は、不活性ガス雰囲気下、又は還元ガス雰囲気下で行なわれ、アルゴンガス、ネオンガス、窒素ガス、一酸化炭素又はその混合ガスが使用できる。なお、ガスを置換して反応の進行を促進する観点から、不活性ガス又は還元ガスを流動・置換させながら焼成を行なうのが好ましい。
焼成前の固体炭素源の形状を炭化ホウ素として保持するために、付着工程で得られた表面にホウ素源が析出した固体炭素源を、型に入れて加圧しながら焼成してもよい。この際の焼成温度は、上記と同じ1300℃~1900℃であって、圧力は1MPa~30MPaが好ましく、5MPa~20MPaがより好ましい。なお、この加圧焼成で用いる型は、不純物の混入や熱膨張の観点から、カーボン、窒化ケイ素、炭化珪素、炭化ホウ素製が好ましい。
本発明では付着工程を経た後、焼成工程の前に仮焼工程を行なうことも可能である。その場合、例えば300℃~800℃で10分間~3時間だけ加熱を行なえばよい。仮焼工程についても、不活性ガス雰囲気下又は還元ガス雰囲気下で行なうのが好ましい。
焼成工程で得られた炭化ホウ素は、水で洗浄してもよい。この水洗浄によって、炭化ホウ素中にホウ素源が残存していても、それを除去することができる。かかる水洗浄に用いる水量は、焼成工程で得られた焼成物100質量部に対して、洗浄水の温度が25度の場合は100質量部~1000質量部、洗浄水の温度が80℃の場合は50質量部~300質量部である。
なお、洗浄後の炭化ホウ素は、必要により乾燥する。乾燥手段は、恒温乾燥、温風乾燥、真空乾燥、凍結乾燥等が挙げられる。
[実施例]
以下、実施例及び比較例を参照して、本発明を更に具体的に説明する。ただし、本発明は、各実施例及び比較例の内容に限定されない。なお、各実施例及び比較例における各種物性等の測定は、次のようにして行なった。
<SEM(走査型電子顕微鏡)写真撮影>
実施例及び比較例で得られた焼成体について、SEM観察を行ない、各倍率(スケールは写真中に示す)における典型的な画像について写真撮影を行なった。
また、一次粒子の平均粒径は、SEM写真においてランダムに選択した20個の一次粒子を対象として、粒子の長軸の長さを測定し、その平均値を求めた。
<X線回折(XRD)による同定>
実施例及び比較例で得られた焼成体について、粉末試料成形機(TK-750、東京科学製)にて、70kgwの圧力でプレスした粉末X線回折測定用試料を準備した。次いで、得られた各測定用試料について、X線回折測定装置(D8-Advance、BRUKER製)で測定を行った。その際の測定条件は、ターゲットCuKα、管電圧35kV、管電流350mA、走査範囲10~80°(2θ)、ステップ幅0.02°、およびスキャンスピード0.13秒/ステップとした。得られたチャートより、各ピーク(2θ)に対応する面間隔を有する結晶相を対応付けることで、結晶相の同定を行なった。
<炭素原子の定量分析>
実施例及び比較例で得られた焼成体について、炭素・硫黄分析装置(EMIA-220V2、堀場製作所製)により、炭素原子の質量を定量し、予め測定した全質量を基準として、炭素原子の質量%を算出した。
[実施例1](炭化ホウ素ファイバー、目標B:Cモル比4:1、焼成温度1400℃)
オルトホウ酸(関東科学製、99.5%)2.472gとセルロース繊維(繊維長100μm~1000μm、繊維幅1μm~15μm)1.89gを(原料のB:Cモル比は4:7)、容器中の水30gに入れ、これを50℃以上に温め、オルトホウ酸を全て溶解させた。オルトホウ酸を溶解した後に、更に加熱することで水分を蒸発させて蒸発乾固させ、セルロース繊維の表面にホウ酸が析出・被覆した、ホウ酸とセルロースの混合物を得た。このとき、ホウ酸はほぼ全てセルロース繊維に付着した状態となっていたため、混合物におけるB:Cモル比は原料のモル比とほぼ同じとなる。
その後、管状電気炉を用いて、乾燥させたホウ酸とセルロースの混合物を、不活性ガス(アルゴン)をフローしながら1400℃に加熱しつつ6時間保持させることで、ファイバー状の焼成体を得た。この焼成体のSEM写真を図2に示す。また、X線回折(XRD)測定で得られたチャートを図3に示す。
これらの結果から、約100nmの一次粒子が存在する繊維長が100μm~1000μm、繊維幅が1μm~15μmの炭化ホウ素ファイバーが得られていることが分かった。
更に、表1に、X線回折(XRD)測定による同定結果と炭素含有量の測定結果を、ファイバー状の焼成体の製造条件と共に示した。また、表1には、目標B:Cモル比に対応する理論炭素含有率(質量%)を示した(例えば、B:Cモル比4:1の場合、炭素含有率は、21.7質量%となる)。
[実施例2](目標B:Cモル比4.5:1の例)
実施例1において、原料の仕込み比を変えることで、目標B:Cモル比4:1を目標B:Cモル比4.5:1に変更すること以外は、全て実施例1と同じ条件でファイバー状の焼成体を作製し、同じ条件で物性等の測定を行なった。その結果を表1に示す。
[実施例3](目標B:Cモル比5:1の例)
実施例1において、原料の仕込み比を変えることで、目標B:Cモル比4:1を目標B:Cモル比5:1に変更すること以外は、全て実施例1と同じ条件でファイバー状の焼成体を作製し、同じ条件で物性等の測定を行なった。その結果を表1に示す。
[実施例4](目標B:Cモル比3.5:1の例)
実施例1において、原料の仕込み比を変えることで、目標B:Cモル比4:1を目標B:Cモル比3.5:1に変更すること以外は、全て実施例1と同じ条件でファイバー状の焼成体を作製し、同じ条件で物性等の測定を行なった。その結果を表1に示す。
[実施例5](焼成温度1800℃の例)
実施例1において、焼成温度1400℃を1800℃に変更すること以外は、全て実施例1と同じ条件でファイバー状の焼成体を作製し、同じ条件で物性等の測定を行なった。その結果を表1に示す。
[比較例1](焼成温度1000℃の例)
実施例1において、焼成温度1400℃を1000℃に変更すること以外は、全て実施例1と同じ条件でファイバー状の焼成体を作製し、同じ条件で物性等の測定を行なった。その結果を表1に示す。
[比較例2](焼成温度1200℃の例)
実施例1において、焼成温度1400℃を1200℃に変更すること以外は、全て実施例1と同じ条件でファイバー状の焼成体を作製し、同じ条件で物性等の測定を行なった。その結果を表1に示す。
[比較例3](目標B:Cモル比2:1の例)
実施例1において、原料の仕込み比を変えることで、目標B:Cモル比4:1を目標B:Cモル比2:1に変更すること以外は、全て実施例1と同じ条件でファイバー状の焼成体を作製し、同じ条件で物性等の測定を行なった。その結果を表1に示す。
[比較例4](目標B:Cモル比6:1の例)
実施例1において、原料の仕込み比を変えることで、目標B:Cモル比4:1を目標B:Cモル比6:1に変更すること以外は、全て実施例1と同じ条件でファイバー状の焼成体を作製し、同じ条件で物性等の測定を行なった。その結果を表1に示す。
[比較例5](焼成温度2200℃、レーヨン繊維の例)
特許文献1(特許第5319767号公報)に記載されているように、焼成温度2200℃で、酸化ホウ素が付着したレーヨン繊維を焼成してファイバー状の焼成体を得た。その際、水50gに対して酸化ホウ素を50g添加し、酸化ホウ素のスラリーを得、そのスラリーにレーヨン繊維(ダイワボウレーヨン製不織布を解繊した。)を10分間浸漬し、酸化ホウ素が付着したレーヨン繊維を得た。
つまり、実施例1において、上記のように調製した酸化ホウ素が付着したレーヨン繊維を用いて、焼成温度2200℃で焼成すること以外は、全て実施例1と同じ条件でファイバー状の焼成体を作製し、同じ条件で物性等の測定を行なった。その結果を表1に示す。また、X線回折(XRD)測定で得られたチャートを図4に示す。
Figure 0006993897000001
表1の結果が示すように、実施例1~5については、理論炭素含有率(質量%)とほぼ同じ炭素含有率(質量%)の測定結果となっており、目標B:Cモル比がほぼ達成できていることが分かった。そして、XRDによる同定結果から、炭化ホウ素(BC)の結晶相のみが得られた。
一方、焼成温度が1000℃である比較例1及び1200℃である比較例2では、酸化ホウ素の結晶相と炭素の結晶相が生じていた。また、目標B:Cモル比2:1である比較例3では、炭素の結晶相と同定不明の結晶相が生じていた。目標B:Cモル比6:1である比較例4では、同定不明の結晶相が生じていた。更に、焼成温度2200℃である比較例5では、目標B:Cモル比からのズレが生じると共に、炭素の結晶相と同定不明の結晶相が生じていた。
このように、特許5319767号記載のように、高温で焼成する方法では、BC以外の異相が見られた。本発明においては、原料の仕込み時に酸化ホウ素を溶解し繊維と均一混合することにより、低い焼成温度でBCの単一相を得ることができた。
1 : 固体炭素源(セルロース繊維)
2 : 炭素源(ホウ酸)
3 : 炭化ホウ素(炭化ホウ素ファイバー)

Claims (6)

  1. ホウ酸及び/又は酸化ホウ素からなるホウ素源を溶液状態から析出させて固体炭素源に付着させる付着工程と、
    前記付着工程を経た固体炭素源を不活性ガス雰囲気下又は還元ガス雰囲気下で焼成する焼成工程と、
    を有し、
    前記焼成工程が、1300℃~1900℃で行なわれ、
    前記付着工程で使用される前記ホウ素源中のホウ素原子と前記固体炭素源中の炭素原子のモル比(B:C)が10:17~10:14であり、
    前記付着工程を経た固体炭素源は、前記ホウ素源が析出して固体炭素源の表面全体に均一に付着した状態であり、
    前記固体炭素源の形状が、得られる焼成体の形状として保持されている
    、炭化ホウ素の製造方法。
  2. 前記焼成工程が、1300℃~1500℃で行なわれる、請求項1に記載の炭化ホウ素の製造方法。
  3. 前記固体炭素源は、セルロース類、カーボン類、フェノール樹脂類、又はピッチ系材料である、請求項1又は2に記載の炭化ホウ素の製造方法。
  4. 前記固体炭素源は、セルロース類である、請求項1~3のいずれか1項に記載の炭化ホウ素の製造方法。
  5. 前記溶液状態における前記ホウ素源の濃度は、3質量%~25質量%である、請求項1~4のいずれか1項に記載の炭化ホウ素の製造方法。
  6. 前記固体炭素源の形状は、粒状、球状、繊維状、針状、棒状、板状、又は細板状である、請求項1~5のいずれか1項に記載の炭化ホウ素の製造方法。
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