JP6993313B2 - 建物の壁構造、壁の施工方法、および補強具 - Google Patents

建物の壁構造、壁の施工方法、および補強具 Download PDF

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Description

本発明は、たとえば倉庫などの建物の壁の施工方法、および補強具に関し、特に、軽量鉄骨を採用した建物の壁構造、壁の施工方法、および補強具に関する。
軽量鉄骨を採用した建物の壁の柱材(スタッド)としては、閉鎖断面である角型鋼や、一辺に開口を有する開放断面のC型鋼(溝型鋼)が用いられる。
たとえば住戸間を仕切る界壁の柱材としては、特開平8-82026号公報(特許文献1)および実開平7-29111号公報(特許文献2)に示されるように、略溝型のスタッドが用いられている。これらの文献では、スタッド内に、上下方向に一定間隔で複数のスペーサを嵌め込むことで、スタッドの変形を抑制している。
一方で、たとえば倉庫の外壁および間仕切り壁など、比較的強度を必要とする壁には、角型鋼が柱材として用いられることが一般的である。
特開平8-82026号公報 実開平7-29111号公報
上述のように、比較的強度を必要とする壁には、角型鋼が柱材として用いられることが一般的であるが、角型鋼はC型鋼よりも高価である。そのため、壁の製造コストを抑えるためには、壁の柱材を角型鋼からC型鋼に変更することが有効であると考えられる。
しかしながら、このようなC型のスタッドは角型のスタッドよりも強度が低いため、C型のスタッドに面外方向の高荷重が加えられた場合、スタッドは、捻じれにより上下のランナー内で回転し、ランナーから脱落するおそれがある。したがって、強度を要する壁の柱材として、C型のスタッドをそのまま(単体で)採用することは困難である。
また、特許文献1および2に示されるように、複数のスペーサを嵌め入れたスタッドが、住宅等の柱材として用いられることがあるが、C型鋼に従来のスペーサを嵌め込むだけでは壁の強度を十分に向上させることができない。
本発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであって、その目的は、壁のコストの低減および強度の向上を図ることのできる建物の壁構造、壁の施工方法を提供することである。
また、このような壁構造に用いられる補強具を提供することも、他の目的とする。
この発明のある局面に従う建物の壁構造は、上下方向に互いに間隔をあけて配置された一対のランナーと、上端部および下端部が一対のランナーにそれぞれ嵌め入れられ、一対の縁部を有する複数のC型のスタッドと、スタッドの上端部および下端部の少なくとも一方に取り付けられ、一対の縁部間の距離が縮まる方向にスタッドが縮小変形することを防止するための補強具とを備える。補強具は、スタッドの一対の縁部の一方面側に配置される一対の第1板状部、および、一対の縁部の他方面側において第1板状部と略平行に配置される一対の第2板状部を含み、スタッドの縁部が、補強具の第1板状部および第2板状部に挟み込まれている。
好ましくは、補強具は、スタッドの一対の縁部間に位置し、一対の第1板状部および一対の第2板状部に連結された本体部をさらに含む。
好ましくは、本体部は、縁部の一方面側に配置され、本体部と各第2板状部との境界部が、縁部の端面に対面状態で配置されている。
好ましくは、第1板状部は、取り付け状態において、第2板状部よりも上方または下方に位置しており、第2板状部の上下方向長さは、第1板状部の上下方向長さよりも長い。
好ましくは、第1板状部と第2板状部との間の間隔は、スタッドの板厚寸法よりも小さい。
第1板状部および第2板状部の少なくとも一方は、縁部に対面する対向面に凸部を有していることが望ましい。この場合、一方の板状部の凸部の頂点と他方の板状部の対向面との間隔、または、第1および第2板状部それぞれの凸部の頂点間の距離が、スタッドの板厚寸法よりも小さい。
一対の第1板状部が、第2板状部よりも上方位置に設けられている場合、補強具は、第2板状部よりも下方位置において本体部に連結され、縁部の一方面に沿って配置される一対の第3板状部をさらに含むことが望ましい。この場合、スタッドの縁部は、一方面側に位置する第1板状部および第3板状部と、他方面側に位置する第2板状部とによって挟み込まれていることがより望ましい。
この発明の他の局面に従う建物の壁の施工方法は、上下方向に互いに間隔をあけて一対のランナーを配置する工程と、一対の第1板状部、および、第1板状部と略平行に配置される一対の第2板状部を含む補強具を準備する工程と、一対の縁部を有するC型のスタッドの端部に、一対の縁部間の距離が許容値を越えて縮まることを防止するために、第1板状部および第2板状部によって縁部を挟み込んで補強具を取り付ける工程と、補強具が取り付けられたスタッドの端部をランナーに嵌め入れる工程とを備える。
好ましくは、補強具を取り付ける工程において、スタッドの上下方向の端縁から補強具がスタッドの縁部に差し込まれる。
この発明のさらに他の局面に従う補強具は、一対のランナーによって上端部および下端部が保持されるC型のスタッド用の補強具であって、スタッドの一対の縁部の一方面側に配置される一対の第1板状部と、スタッドの一対の縁部の他方面側において第1板状部と略平行に配置される一対の第2板状部とを備える。この補強具は、第1板状部および第2板状部によって縁部を挟み込んだ状態でスタッドに取り付けられ、一対の縁部間の距離が縮まる方向にスタッドが縮小変形することを防止する。
好ましくは、第1板状部と第2板状部との間の間隔は、スタッドの板厚寸法よりも小さい。
本発明によれば、壁のコストの低減および強度の向上を図ることができる。
本発明の実施の形態に係る壁構造の概略構成を模式的に示す図である。 本発明の実施の形態に係る壁構造の要部を模式的に示す斜視図である。 本発明の実施の形態において、スタッドの上端部に補強具が取り付けられた状態を示す斜視図である。 図3のIV-IV線に沿って切断した補強具の取り付け構造の断面図である。 本発明の実施の形態における補強具の平面図である。 図5のVI-VI線に沿って切断した補強具の断面図である。 本発明の実施の形態における補強具の取り付け方法を模式的に示す図である。 本発明の実施の形態の変形例1における補強具を模式的に示す平面図である。 図8のIX-IX線に沿って切断した補強具の断面図である。 本発明の実施の形態の変形例2における補強具がスタッドの上端部に取り付けられた状態を模式的に示す斜視図である。 本発明の実施の形態の変形例3における補強具がスタッドの上端部に取り付けられた状態を模式的に示す斜視図である。 本発明の実施の形態の変形例4における補強具がスタッドの上端部に取り付けられた状態を模式的に示す斜視図である。
本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中同一または相当部分には同一符号を付してその説明は繰返さない。
(壁構造の概略構成について)
図1および図2を参照して、本実施の形態に係る壁構造1の概略構成について説明する。壁構造1は、建物内において隣り合う2つの空間を仕切る間仕切り壁(区画壁)Wの構造である。なお、図1および図2に示す仮想面90は、隣り合う2つの空間を仕切る仕切り面である。図1および図2には、この仕切り面90の縦方向(上下方向)が矢印A1で示され、仕切り面90の横方向(左右方向)が矢印A2で示されている。また、図2には、仕切り面90に直交する方向が矢印A3で示されている。矢印A3の方向は、間仕切り壁Wの面外方向に相当する。
壁構造1は、上下方向に互いに間隔をあけて配置される一対のランナー2,3と、一対のランナー2,3によって保持され、互いに間隔をあけて配置される複数のスタッド4とを備える。
ランナー2は、間仕切り壁Wの下端に位置し、ランナー3は、間仕切り壁Wの上端に位置する。各ランナー2,3は、略U字状断面を有している。つまり、ランナー2は、幅方向両端部に一対の鍔部22を有している。同様に、ランナー3は、幅方向両端部に一対の鍔部32を有している。ランナー2,3の幅方向は、仕切り面90に直交する方向に一致する。
各鍔部22の下端は、梁などの躯体部91の上面に面接触する底面部21に連結されている。各鍔部32の上端は、梁などの躯体部92の下面に面接触する天面部31に連結されている。
各スタッド4は、その上端部および下端部が一対のランナー3,2にそれぞれ嵌め入れられている。スタッド4は、外形が略長方形状(矩形形状)のC型鋼であり、一対の長辺部のうちの一方(一辺部)に、上下方向に延びる開口40が形成されている。つまり、スタッド4は、開口を有しない長辺部41と、長辺部41に直交する一対の短辺部42と、開口40の幅方向両側に位置する一対の縁部43とを含む。一対の縁部43は、互いに対面する端面を有している。
スタッド4は、長辺部41が仕切り面90に直交する方向(面外方向)に一致するように強軸配置される。この場合、スタッド4の短辺部42に対して面材80(図1)が固定される。面材80はたとえば石膏ボードである。以下の説明において、スタッド4の上端部および下端部がランナー3,2にそれぞれ嵌め入れられた状態を、スタッド4の設置状態という。
スタッド4としては、一般に流通しているC型鋼が採用されており、その規定の外形幅寸法(長辺部41の規定の幅寸法)はたとえば100mmである。この場合、ランナー2,3の鍔部22,32間の間隔もたとえば100mmである。スタッド4の開口40の規定の幅寸法はたとえば60mmであり、各縁部43の規定の幅寸法はたとえば20mmである。スタッド4の板厚寸法(図4に示す寸法D1)は、1.2mm以上であることが望ましく、1.6mm以上であることがより望ましい。
このようなスタッド4は、たとえば板厚1.2mmの角型鋼よりも安価であるため、角型鋼を柱材とするよりも、間仕切り壁Wのコストを低減させることができる。
一方で、このようなC型のスタッド4の面外方向における耐荷重性は、角型鋼よりも低い。そのため、本実施の形態では、各スタッド4の下端部および上端部に、1個ずつ補強具5が取り付けられている。補強具5は、スタッド4の一対の縁部43間の距離が縮まる方向にスタッド4が縮小変形することを防止する。すなわち、補強具5は、一対の縁部43の端面間の間隔が規定の開口幅寸法未満となることを防止する。
なお、スタッド4の上端部に取り付けられる補強具5は、その少なくとも一部(上部)がランナー3の鍔部32の下端高さよりも上に位置していればよい。同様に、スタッド4の下端部に取り付けられる補強具5は、その少なくとも一部(下部)がランナー2の鍔部22の上端高さよりも下に位置していればよい。
(補強具の取り付け構造について)
図3~図6を参照して、スタッド4の設置状態における補強具5の取り付け構造について説明する。図3は、図2に示す領域IIIを拡大して示した図であり、スタッド4の上端部に補強具5が取り付けられた状態を示す斜視図である。図4は、図3のIV-IV線に沿って切断した補強具5の取り付け構造の断面図である。図5は、補強具5の平面図である。図6は、図5のVI-VI線に沿って切断した補強具5の断面図である。
図3および図4に示される、スタッド4の設置状態におけるスタッド4の外形幅L1は、上述の規定の外形幅寸法(たとえば100mm)に相当する。同様に、スタッド4の設置状態におけるスタッド4の開口幅L2は、上述した開口40の規定の幅寸法に相当する。
図3および図4に示されるように、補強具5は、平面視において略矩形形状であり、スタッド4の一対の縁部43に跨って配置されている。補強具5の横幅寸法L11は、スタッド4の規定の外形幅寸法(L1)よりも小さく、かつ、スタッド4の規定の開口幅寸法(L2)よりも大きい。補強具5の縦寸法L13は、典型的には、ランナー3の鍔部32の長さ寸法以下である。
補強具5は、スタッド4の一対の縁部43間に位置する本体部51と、本体部51の幅方向両端部に連結され、縁部43の表面に沿って配置される二対の表側板状部(第1板状部および第3板状部)52,53と、本体部51の幅方向両端部に連結され、縁部43の裏面に沿って配置される一対の裏側板状部(第2板状部)54とを含む。スタッド4の縁部43は、補強具5の表側板状部52,53と裏側板状部54とによって挟み込まれている。
補強具5は、左右対称に形成されている。そのため、板状部52~54の各対は、略同じ上下方向長さを有し、かつ、上下方向において互いに略同じ位置に設けられている。
補強具5は、たとえば金属製の一枚の薄板を加工することによって形成されている。そのため、本実施の形態において、表側板状部52,53と裏側板状部54とは上下方向に重なることなく配置されている。つまり、表側板状部52,53と裏側板状部54とは表裏方向において対面しない。図3に示されるように、一対の表側板状部52は、一対の裏側板状部54よりも上に位置し、他の一対の表側板状部53は、一対の裏側板状部54よりも下に位置している。
本体部51は、スタッド4の縁部43の表面側に位置する板状部である。そのため、本体部51と表側板状部52,53とは面一状に連なる。これに対し、本体部51と各裏側板状部54との間には、これらに交差して表裏方向に延びる境界部55が介在している。一対の境界部55もまた、略同じ上下方向長さを有し、かつ、上下方向において互いに略同じ位置に設けられている。
各境界部55と本体部51との交差角度は、略直角である。略直角とは、80°以上100°以下である。なお、各境界部55と本体部51との交差角度は、100°を超える鈍角であってもよい。また、各境界部55は湾曲形状であってもよい。
二つの境界部55の外側面の間隔(幅方向の最大距離)L12は、スタッド4の規定の開口幅寸法(L2)と略一致するように定められている。そのため、スタッド4の設置状態において、境界部55の外側面は、縁部43の端面と接触(面接触または線接触)する。なお、スタッド4の加工精度等によっては、スタッド4の設置状態において、境界部55の外側面と縁部43の端面との間に若干の隙間が存在してもよい。つまり、スタッド4の設置状態において、境界部55が、スタッド4の縁部43の端面に対面状態で配置されていれば、境界部55の外側面は縁部43の端面と接することなく近接していてもよい。
図5を参照して、上側の表側板状部52の長さ寸法L15と、下側の表側板状部53の長さ寸法L16とは、略等しい。裏側板状部54の長さ寸法L14は、上下二つの表側板状部52,53の長さ寸法L15,L16を足した寸法よりも大きいことが望ましい。具体的には、裏側板状部54の長さ寸法L14がたとえば30mmであり、表側板状部52,53の長さ寸法L15,L16がたとえば10mmである。この場合、スタッド4の縁部43の端面に突き当たる境界部55の面積を比較的大きくすることができるため、スタッド4の側面に外方から大きな力が加えられた場合(以下「負荷時」ともいう)においても、本体部51および境界部55によってスタッド4の一対の縁部43を効果的に突っ張ることができる。
図6を参照して、表側板状部52,53と裏側板状部54との間の間隔D12は、スタッド4の板厚寸法D1(図4)よりも小さい。これにより、補強具5の取り付け状態において、表側板状部52,53および裏側板状部54によって、スタッド4の縁部43が確りと挟持される。
本実施の形態では、表側板状部52,53の裏面(つまり、表側板状部52,53が縁部43の表面に対面する対向面)と裏側板状部54の表面(つまり、裏側板状部54が縁部43の裏面に対面する対向面)との間の間隔D11はスタッド4の板厚寸法D1よりも若干大きいが、図6に示されるように、表側板状部52,53の裏面には突起としての凸部56が設けられている。補強具5は、この凸部56の頂点と裏側板状部54の表面との間隔D12が、スタッド4の板厚寸法D1(図4)よりも小さくなるように形成されている。
具体的には、スタッド4の板厚寸法D1が1.6mmとすると、間隔D11がたとえば2.0mmであり、間隔D12がたとえば1.5mmである。このように、各表側板状部52,53が凸部56を有することで、スタッド4の縁部43と凸部56との間に摩擦抵抗が生じるため、ビス等の固定具を用いなくても、補強具5が自重で落下することを防止することができる。
(間仕切り壁の施工方法について)
次に、間仕切り壁Wの施工方法について簡単に説明する。本実施の形態において、間仕切り壁Wの施工方法は、一対のランナー2,3を配置する工程P1、補強具5を準備する工程P2、スタッド4の上端部および下端部に補強具5をそれぞれ取り付ける工程P3、補強具5が取り付けられたスタッド4の上端部および下端部を、ランナー3,2にそれぞれ嵌め入れる工程P4を含む。なお、工程P1と工程P2およびP3との施工順序は逆であってもよい。
工程P3においては、図7に示されるように、補強具5は、上下に起立した状態で、スタッド4の上下方向の端縁からスタッド4の縁部43に差し込まれる(叩き込まれる)。上述のように、補強具5の表側板状部52,53の裏面と裏側板状部54の表面との間隔D11自体は、スタッド4の板厚寸法D1よりも若干大きい。したがって、補強具5を取り付ける際に、下側の表側板状部53と裏側板状部54とに縁部43が挟み込まれた状態で、スタッド4の長手方向に沿って補強具5をスライドさせることができる。
また、補強具5の表側板状部52,53は、裏面側に凸部56を有しているため、補強具5を所望の位置でスタッド4に仮止めすることができる。なお、スタッド4の上端部に取り付けられる補強具5は、スタッド4の上端を少し余して配置される。
ここで、スタッド4は、上述のように開口40を有するC型鋼である。そのため、ランナー2,3に設置する前(仕入れ時)におけるスタッド4の開口幅L22(図7)は、規定の開口幅寸法(L2)よりも大きくなっていることが多い。そのため、ランナー2,3に設置する前のスタッド4の開口40側の外形幅L21(図7)は、一般的に、規定の外形幅寸法(L1)よりも2~3mm程度大きくなることが多い。
工程P3において、スタッド4の上端部および下端部に補強具5を取り付けた段階においては、スタッド4の外形幅および開口幅は特に変化しない。そのため、この段階では、補強具5の各境界部55とスタッド4の縁部43の端面との間に、たとえば1~2mm程度の隙間Cが存在する。
補強具5は、補強具5の凸部56とスタッド4の縁部43の表面との摩擦抵抗によってスタッド4に取り付けられているだけであるため、工程P4において、スタッド4を若干傾けて、開口40が無い方の長辺部41から先にランナー3に嵌め入れた場合、自然と開口40がある方の長辺部が幅方向に縮められる。つまり、スタッド4は、一対の縁部43が互いに近づく方向に撓み、幅方向において徐々に縮められる。これにより、補強具5の境界部55の外側面が、スタッド4の一対の縁部43の端面に当接(または近接)するため、スタッド4の設置前における補強具5の各境界部55とスタッド4の縁部43の端面との間の隙間C(図7)が略0mmとなる。
補強具5が取り付けられたスタッド4がランナー3に嵌め入れられると、スタッド4の外形幅L1および開口幅L2(図3)は、それぞれ、設置前の外形幅L21および開口幅L22よりも小さくなり、規定の外形幅寸法および開口幅寸法と等しくなる。
このように、本実施の形態における補強具5は、ランナー3に嵌め込む際にはスタッド4の幅方向の若干の縮小変形を許容する。したがって、特別な力を加えなくても、補強具5が取り付けられたスタッド4の上端部を、簡単にランナー3に嵌め込むことができる。なお、スタッド4の下端部も同様に、簡単に下側のランナー2に嵌め込むことができる。
(負荷時における補強具の機能について)
図1に示すような間仕切り壁Wに面外方向の荷重が加わり、図4に示すようにスタッド4の一方の側面に外方から大きな力が加えられた場合における補強具5の機能について説明する。上述のように、補強具5は、スタッド4の上端部および下端部にのみ(つまり、ランナー3,2に嵌め入れられた部分にのみ)取り付けられている。
平常時において、補強具5の境界部55がスタッド4の縁部43の端面に対面状態で配置されている。したがって、スタッド4の一方の側面に大きな力が加えられたとしても、縁部43の端面は境界部55に突き当たるため、一対の縁部43間の間隔(開口幅)が、一対の境界部55の外側面の間隔L12よりも小さくなることが阻止される。つまり、一対の縁部43の間隔が規定の開口幅寸法(L2)未満となることが阻止される。
また、スタッド4の縁部43が、互いに平行な表側板状部52,53の裏面および裏側板状部54の表面に挟み込まれているため、縁部43自体の変形を防止しながら一対の縁部43を突っ張ることができる。
このように、補強具5は、縁部43間の距離が広がる方向においてはスタッド4の変形を規制せず、縁部43間の距離が縮まる方向にのみスタッド4の変形を規制する。したがって、本実施の形態の補強具5によれば、上述のようにランナー3に嵌め込む際にはスタッド4の若干の縮小変形を許容するが、負荷時において、スタッド4の縁部43間の距離が許容値を越えて縮まることを防止することができる。その結果、負荷時に、外形幅L1が規定の外形幅寸法未満になるようなスタッド4の縮小変形を防止することができる。
また、スタッド4の設置状態において、補強具5によってスタッド4の幅方向の縮小変形を防止することができるため、負荷時においても、スタッド4とランナー2,3との嵌合状態を維持することができる。したがって、スタッド4がランナー2,3内で回転することによるランナー2,3からの離脱を防止することができる。その結果、間仕切り壁Wの柱材としてC型鋼であるスタッド4を用いたとしても、間仕切り壁Wの強度を向上させることができる。
また、補強具5の取り付け状態において、一対の境界部55が同じ高さ範囲に位置するため、一対の境界部55によってスタッド4の一対の縁部43を平衡状態で突っ張ることができる。これにより、負荷時における補強具5自体の回転を防止することができる。したがって、補強具5をビス等でスタッド4に完全に固定しなくても、負荷時においても一対の縁部43間の間隔を適切に保持することができる。
また、本実施の形態において、境界部55は、本体部51と略直角で交差しているため、縁部43の端面により境界部55の外側面が勢いよく内側に向かって押されたとしても、縁部43の変形を防止または抑制することができる。
また、大きな負荷が間仕切り壁Wに加えられて、仮に、スタッド4に多少捻じれが生じたとしても、表側板状部52,53と裏側板状部54との間隔D12が縁部43の厚み(スタッド4の板厚寸法D1)よりも小さいため、補強具5は縁部43から簡単に外れない。そのため、スタッド4の捻じれにより補強具5が多少ずり落ちたとしても、補強具5を、ずれた位置で留まらせることができる。したがって、本実施の形態によれば、スタッド4の捻じれに起因して、スタッド4がランナー2,3から抜け落ちたり、面材80が脱落したりすることを防止または抑制することができる。
このことから、間仕切り壁Wの構造を、高い耐荷重性を要する倉庫の間仕切り壁に採用することができる。すなわち、本実施の形態における間仕切り壁Wは、倉庫業法で規定された強度、すなわち2500N/m以上の荷重にも耐えることができる。
また、本実施の形態では、補強具5が一枚の薄板を加工して形成されているため、補強具5の製造コストを低く抑えることができる。
なお、本実施の形態では、補強具5は、その本体部51が縁部43の表面側に位置するように取り付けられた例を示したが、本体部51が縁部43の裏面側に位置するように、表裏逆に取り付けられてもよい。この場合、上述の表側板状部52,53を裏側板状部、裏側板状部54を表側板状部と読み替えればよい。
また、スタッド4の縁部43間に取り付けられる補強具の構成は、上記のような構成に限定されない。以下に、補強具の他の構成例を、本実施の形態の変形例として説明する。
(変形例1)
図8は、本実施の形態の変形例1における補強具5Aを模式的に示す平面図である。図9は、図8のIX-IX線に沿って切断した補強具5Aの断面図である。
図8および図9に示されるように、補強具5Aは、二枚の薄板が溶接されて形成されている。本変形例においては、略同じ大きさおよび形状の二枚の薄板が板厚方向に重ねられて溶接されている。表側の薄板は、幅方向一端から他端まで段差なく平坦状である。これに対し、裏側の薄板は、幅方向両端部が表側の薄板から離れる方向に略L字状に折り曲げられている。
この場合、二枚の薄板が重なる部分が本体部51Aを構成する。具体的には、本体部51Aは、スタッド4の縁部43よりも表面側の位置に配置される表側の薄板と、スタッド4の縁部43と同じ表裏方向位置に配置される裏側の薄板とで構成される。
また、表側の薄板のうち本体部51の両側部に位置する部分が表側板状部52Aを構成し、裏側の薄板のうち表側板状部52Aと平行であって表側板状部52Aから離れて位置する部分が裏側板状部54Aを構成する。一対の境界部55は、裏側の薄板における裏側板状部54Aと本体部51Aとの間に形成される。各表側板状部52Aは、裏面側に少なくとも1つの凸部56を有している。
本変形例においては、表側板状部52Aおよび裏側板状部54Aの上下方向位置が重なり、両者は互いに対面する。したがって、本変形例によれば、表側板状部52Aおよび裏側板状部54Aによるスタッド4の縁部43の挟持力が向上する。また、本変形例によれば、補強具5Aは二枚の薄板が溶接されて形成されるため、補強具5Aの加工を簡易化することができる。
なお、上記実施の形態のように補強具が一枚の薄板により形成される場合であっても、補強具の本体部は、表裏方向においてスタッド4の縁部43と同じ位置に配置されていてもよい。
(変形例2)
図10は、本実施の形態の変形例2における補強具5Bがスタッド4の上端部に取り付けられた状態を模式的に示す斜視図である。
補強具5Bは、上記実施の形態で示した補強具5と同様に、本体部51、表側板状部52,53、裏側板状部54、境界部55、および凸部56を有するとともに、スタッド4の一対の縁部43の上端にそれぞれ引っ掛けられる一対のフック57を有している。これにより、間仕切り壁Wに大きな負荷が加えられた結果、スタッド4が多少捻じれたとしても、補強具5Bの脱落をより確実に防止することができる。なお、スタッド4の下端はランナー2の底面部21に載置されるため、このような補強具5Bの構成は、スタッド4の上端部用の構成として採用してもよい。
(変形例3)
図11は、本実施の形態の変形例3における補強具5Cがスタッド4の上端部に取り付けられた状態を模式的に示す斜視図である。平面視における補強具5Cの大きさおよび形状は、上記実施の形態の補強具5と略同じである。また、補強具5Cも、補強具5と同様に、一枚の薄板により形成されている。
上記実施の形態の補強具5は、二対の表側板状部52,53と一対の裏側板状部54とを有するものであったが、補強具5Cは、一対の表側板状部52と二対の裏側板状部54とを有している。そのため、本変形例においては、二対の境界部55が形成されている。この補強具5Cは、スタッド4の側部に負荷が加えられた場合に、スタッド4の縁部43の端面と接触する部分(つまり境界部55)の面積が上記補強具5よりも増えるため、スタッド4の縮小変形を効果的に防止することができる。
なお、本変形例においても、各表側板状部52は裏面側に1つの凸部56を有していることとするが、本変形例では、本体部51の両横に一つずつしか表側板状部52が存在しない。そのため、各表側板状部52は、裏面側に複数の凸部56を有していることが望ましい。複数の凸部56は、上下方向に互いに間隔をあけて設けられることが望ましい。これにより、補強具5Cのずり落ちを防止することができる。
あるいは、本変形例では、表側板状部52の凸部56に加えて/代えて、本体部51の両横に二つずつ存在する裏側板状部54が、表面側に一つの凸部を有していてもよい。なお、前述の実施の形態および変形例1,2の補強具においても同様に、裏側板状部54が凸部を有していてもよい。
(変形例4)
図12は、本実施の形態の変形例4における補強具5Dがスタッド4の上端部に取り付けられた状態を模式的に示す斜視図である。平面視における補強具5Dの大きさおよび形状は、上記実施の形態の補強具5と略同じであり、補強具5Dもまた、一枚の薄板により形成されている。
上記実施の形態の補強具5は、二対の表側板状部52,53と一対の裏側板状部54とを有するものであったが、補強具5Dは、一対の表側板状部52と一対の裏側板状部54とを有している。本変形例において、本体部51の幅方向一方側と他方側とで、表側板状部52および裏側板状部54の上下方向位置が逆になっている。具体的には、本体部51の幅方向一方側(紙面左側)においては、表側板状部52が裏側板状部54よりも上に位置するのに対し、本体部51の幅方向他方側(紙面右側)においては、裏側板状部54が表側板状部52よりも上に位置する。そのため、縁部43の端面に対面する一対の境界部55の上下方向位置がずれており、補強具5Dの取り付け状態において一対の境界部55は一部分だけが同じ高さ範囲に位置している。
本変形例の場合、補強具5Dの両側部がビス70によりスタッド4に固定されていることが望ましい。ビス70は、各表側板状部52を貫通してスタッド4の縁部43に固定されている。これにより、負荷時において補強具5Dに作用する回転力を、ビス70によって受け止めることができる。その結果、補強具5Dの脱落を防止または抑制することができる。
(他の変形例)
上記実施の形態および各変形例では、スタッド4の外形は略長方形状であることとしたが、略正方形状であってもよい。
また、補強具5は、スタッド4の上端部および下端部の少なくとも一方に取り付けられていればよい。
上記実施の形態および各変形例に示した壁構造は、倉庫の間仕切り壁Wに適した構造であるとして説明したが、限定的ではない。たとえば、倉庫の外壁であってもよいし、倉庫以外の建物の壁の構造であってもよい。
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
1 壁構造、2,3 ランナー、4 スタッド、5,5A,5B,5C,5D 補強具、21 底面部、22,32 鍔部、31 天面部、40 開口、41 長辺部、42 短辺部、43 縁部、51,51A 本体部、52,53,52A 表側板状部、54,54A 裏側板状部、55 境界部、56 凸部、57 フック、70 ビス、80 面材、90 仕切り面(仮想面)91,92 躯体部、C 隙間、W 間仕切り壁。

Claims (3)

  1. 一対の鍔部を有し、断面が略U字状であるランナーを配置する工程と、
    一対の縁部を有し、前記ランナーの前記鍔部間の間隔と略同じ外形幅のC型のスタッドの端縁から、前記一対の縁部を突っ張るための突っ張り部と前記縁部の厚みよりも表側部材と裏側部材との間隔を小さくした挟持部とを有する補強具を、前記スタッドの長手方向にスライドさせて、前記挟持部の前記表側部材および前記裏側部材の間に前記縁部を差し込み、設置状態において前記補強具の少なくとも一部が前記ランナーの鍔部の高さ範囲内に位置するように、前記スタッドの端部に前記補強具を取り付ける工程と、
    前記表側部材および前記裏側部材と前記縁部との摩擦力によって前記補強具が取り付けられた前記スタッドの端部を、前記ランナーの一対の鍔部間に嵌め入れる工程とを備え
    前記取り付ける工程において、前記補強具は、前記スタッドの前記縁部と前記突っ張り部との間に隙間をあけた状態で取り付けられ、
    前記嵌め入れる工程において、前記スタッドの端部は、前記隙間の分だけ幅方向に縮小変形可能である、建物の壁の施工方法。
  2. 前記スタッドの板厚寸法は、1.2mm以上である、請求項1に記載の建物の壁の施工方法。
  3. 一対の鍔部を有し、断面が略U字状であるランナーと、
    一対の縁部を有し、前記ランナーの前記鍔部間の間隔と略同じ外形幅のC型のスタッドと
    記一対の縁部を突っ張るための突っ張り部と、前記縁部の厚みよりも表側部材と裏側部材との間隔を小さくした挟持部とを有し、前記スタッドの端縁から差し込まれて前記表側部材および前記裏側部材と前記縁部との摩擦力によって前記スタッドの端部に取り付けられる補強具とを備え、
    前記補強具が取り付けられた前記スタッドの端部が、取り付け状態における前記スタッドの前記縁部と前記突っ張り部との間の隙間の分だけ前記スタッドの端部を幅方向に縮小変形可能に、前記ランナーの一対の鍔部間に嵌め入れられており、
    前記補強具の少なくとも一部が、前記ランナーの鍔部の高さ範囲内に位置している、建物の壁構造。
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