JP6990139B2 - 移植材料の製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、移植材料の製造方法に関する。
ヒト表皮細胞をシート状に培養した表皮細胞シートが実用化されている。しかしながら、表皮細胞シートは、製品が生細胞の状態であるため、輸送時や保存時の管理が煩雑でコストが高く、保存可能な期間が短いなどの課題がある。
そこで、例えば、コラーゲン等の培養皮膚用基材上で皮膚細胞を培養し、培養皮膚用基材に皮膚細胞を保持した状態で凍結乾燥によって細胞を死滅させて、生理活性物質の一部を人工皮膚中に温存させた人工皮膚を製造することが提案されている(特許文献1参照)。特許文献1の人工皮膚では、早期にしかも良好に皮膚欠損組織を再建できかつ培養皮膚などに比べて安価に安定に流通および長期間保存できるとしている。
特開平9-173362号公報
しかしながら、特許文献1で用いる凍結乾燥では、高価な真空凍結乾燥装置を必要とするため、製造コストが増加することがあった。また、特許文献1ではコラーゲン等の培養皮膚用基材により強度を得ているが、細胞シートに適用する場合には、凍結時の氷晶形成を抑制するために温度下降曲線をコントロールしてシートの強度を得る必要があり、温度管理等が煩雑であった。
本発明はこのような課題を解決するためになされたものであり、高価な真空凍結乾燥装置を必要とせず安価に製造でき、かつ長期間保存できる移植材料の製造方法を提供することを目的とする。
本発明の移植材料の製造方法は、上述の主目的を達成するために以下の手段を採った。
本発明の移植材料の製造方法は、哺乳動物皮膚由来の細胞をシート状に培養した細胞シートを、送風乾燥、加温乾燥、自然乾燥及び化学乾燥のうちの1以上で前記細胞が死滅するまで乾燥させる工程を含む。
本発明の移植材料の製造方法では、高価な真空凍結乾燥装置を必要とせず安価に製造でき、かつ長期間保存できる移植材料の製造方法を提供することができる。
実施例1の乾燥時間と含水量との関係を示すグラフ。 実施例1の乾燥時間と生細胞密度との関係を示すグラフ。 実施例1及び比較例1の生理活性物質の定量結果を示すグラフ。 実施例1~3の生理活性物質の定量結果を示すグラフ。
本発明の移植材料の製造方法は、哺乳動物皮膚由来の細胞(例えば表皮細胞や線維芽細胞)をシート状に培養した細胞シートを、送風乾燥、加温乾燥、自然乾燥及び化学乾燥のうちの1以上で前記細胞が死滅するまで乾燥させる乾燥工程を含む。この移植材料の製造方法では、凍結乾燥は行わない。この製造方法は、例えば、(a)細胞準備工程と、(b)培養工程と、(c)細胞シート作製工程と、(d)乾燥工程、(e)包装工程とを含むものとしてもよい。
(a)細胞準備工程
この工程では、健常な哺乳動物から皮膚組織(例えば表皮組織および/または真皮組織)を採取し、採取した組織から細胞を分離し、培養対象細胞(例えば表皮細胞や線維芽細胞)を準備する。このとき、トリプシンなどの酵素を用いて組織から培養対象細胞を分離してもよい。また、皮膚組織(例えば真皮組織)を組織片の状態で基材(例えばプラスティック基材)上に置き、組織片から遊走する細胞を培養対象細胞(例えば線維芽細胞)として分離してもよい。哺乳動物とはヒトを含むあらゆる哺乳動物を意味する。
(b)培養工程
この工程では、組織から分離した細胞を培養する。この工程では、例えばヒト表皮細胞を培養する場合、不活化したフィーダー細胞(例えばマウス由来線維芽細胞)を基材(例えばプラスティック基材)上にあらかじめ播種し、そこに培養対象細胞(ヒト表皮細胞)を播種してフィーダー細胞と共培養することが好ましい。培地は、たとえばウシ胎児血清(FBS)を含むダルベッコ変法イーグル最少必須培地(DMEM)を使用し、定期的に新鮮な培地に交換する。培養増殖させた細胞は、コンフルエントに達する前にトリプシン等の酵素を用いて基材より剥離し、新たな培養容器に低密度で播種することにより培養を継続してもよい。必要に応じ、凍結保護剤(グリセロール、ジメチルスルホキシド(DMSO)など)を含む凍結液に細胞を懸濁後、凍結保存してもよい。凍結保存は、-150℃以下の温度で保存することが好ましく、例えば、液体窒素中、液体窒素気相中又は超低温冷凍庫で保存することができる。凍結保存した細胞は必要時に解凍し、培養を再開すればよい。培養工程では、最終的に、培養容器(例えば培養フラスコ)内で細胞がコンフルエントに達するまで培養を継続する。
(c)細胞シート作製工程
この工程では、コンフルエントまで培養した細胞シートを、ディスパーゼなどの酵素を用いて基材から剥離する。その際、支持体を細胞シート上(基材とは反対側の面)に配置し、細胞シートの周縁を支持体に接着又は懸架させて剥離してもよい。支持体を用いることで、細胞シートの収縮を抑制できるし、細胞シートを把持しやすくなる。支持体の大きさや形状は特に限定されないが、細胞シートの収縮を抑制でき、細胞シートの把持が容易になるような大きさや形状が好ましく、例えば細胞シートよりひとまわり小さい薄板状のものが好ましい。支持体の形状は、例えば、角板状、円盤状、枠状などの種々の形状であってもよい。支持体の材質は、たとえばセルロース製の不織布や非固着性の創傷被覆材とすることができる。必要に応じて乾燥工程の前に細胞シートを支持体から剥脱してもよい。また、乾燥時に細胞シートの収縮が懸念される場合などには、細胞シートを支持体に接着又は懸架させたまま乾燥工程に用いてもよい。この工程で得られる細胞シートの厚みは、例えば50μm以下であり、多くは10μm以上30μm以下である。細胞シートの厚みの測定は、例えばパラフィン切片を作製し、HE染色を行い、各切片の厚さを画像解析ソフトWinRoofを用いて測定する。3箇所の視野×各視野(切片の長さ400μm)5カ所の計15カ所で測定した厚みの平均値を細胞シートの厚みとする。
(d)乾燥工程
この工程では、送風乾燥、加温乾燥、自然乾燥及び化学乾燥のうちの1以上で、細胞が死滅するまで細胞シートを乾燥させて移植材料を得る。細胞が死滅したか否かは、以下のように確認する。乾燥させた細胞シートをトリプシンで処理して細胞を分離し、再び工程(b)と同様に培養容器に播種し(再播種)、フィーダー細胞と共培養する。細胞が増殖する場合には細胞が死滅しておらず、細胞が増殖しない場合には細胞が死滅していると判断することができる(以下では、再播種試験とも称する)。
この工程では、細胞シートを、含水量3μg/cm2以上100μg/cm2以下まで乾燥することが好ましい。含水量3μg/cm2以上であれば容易に乾燥できるし、含水量100μg/cm2以下まで乾燥すれば細胞がより確実に死滅する。
この工程では、例えば、室温(1℃以上30℃以下)や常温(15℃以上25℃以下)で乾燥を行うものとしてもよい。また、10℃以上45℃以下の温度や、25℃以上45℃以下の温度で乾燥を行うものとしてもよい。10℃以上では効率的に乾燥することができるため好ましく、45℃以下ではタンパク質が変質しにくいため好ましい。なお、タンパク質の変性を抑える観点からは、乾燥温度が低いことが好ましく、例えば40℃以下が好ましく、35℃以下がより好ましい。乾燥時間は、例えば30分以上120分以下としてもよく、45分以上120分以下としてもよい。乾燥条件にもよるが、乾燥時間が30分以上であれば細胞が死滅する場合が多く、45分以上であれば細胞がより確実に死滅し、120分以下であれば製造にかかる時間をより短くできる。
自然乾燥では、例えば、シリコーン、セルロース、酢酸セルロースやテフロン(テフロンは登録商標)などの乾燥台座に細胞シートを置き、室温環境で静置して乾燥させてもよい。この場合、静置時間を45分以上とすれば、より確実に乾燥できる。送風乾燥では、自然乾燥と同様に乾燥台座に細胞シートを置き、室温環境で細胞シートに向けて送風することで乾燥させてもよい。このとき、例えば、25℃以上45℃以下の温風を送風し、温風乾燥をしてもよい。加温乾燥では、自然乾燥と同様に乾燥台座に細胞シートを置き、雰囲気及び乾燥台座の少なくとも一方を加熱することで乾燥させてもよい。加温乾燥では、例えば、25℃以上45℃以下まで雰囲気を加熱してもよい。このとき、上記送風乾燥と同様に、細胞シートに向けて送風することで乾燥させてもよい。自然乾燥や、送風乾燥、加温乾燥では、適宜、湿度管理などを行ってもよい。乾燥は、乾燥台座を用いずに吊して乾燥を行っても良い。
化学乾燥では、細胞シートを有機溶媒と接触させ、化学脱水した後に乾燥させる。有機溶媒は、極性溶媒としてもよいし非極性溶媒としてもよく、エタノール、イソプロパノールあるいはアセトンなどを用いることができる。化学乾燥では、有機溶媒に細胞シートを十分な時間及び量で含浸させて脱水した後、上述した自然乾燥、送風乾燥、加温乾燥などと同様の方法で細胞シートを乾燥させてもよい。なお、化学乾燥では、化学物質の残留が懸念されるが、化学脱水を行わない場合に比べて、短い時間で乾燥することができる。
(e)包装工程
この工程では、乾燥細胞シート(移植材料)を、包装する。このとき、乾燥台座から剥脱し、あるいは乾燥台座に接着させた状態で包装容器に封入してもよいし、支持体に接着又は懸架させた状態で包装容器に封入してもよい。包装容器としては、水分を透過しない材質で構成されたものや、包装容器内に乾燥剤が封入されたものなど、移植材料の含水量が過度に高くなることを防ぐ構造のものが好ましい。また、移植材料は、乾燥工程で細胞が死滅しているため、包装前あるいは包装後に、γ線照射などにより滅菌を行ってもよい。包装後に滅菌することで、移植時まで滅菌状態を維持できるとともに、培養工程や乾燥工程において求められるクリーン環境の要件を包装後に滅菌しない場合よりも緩和できる。
こうして得られた移植材料は、包装容器から取り出したのち、以下のように用いることができる。例えば、移植材料を乾燥したままの状態で患部に適用し、滅菌生理食塩水またはその他の等張液で浸潤させてもよい。また、使用前に移植材料を滅菌生理食塩水またはその他の等張液に1分以上浸漬し、浸潤させたのち患部に適用してもよい。患部に移植材料を適用するにあたり、移植材料が支持体に接着又は懸架されている場合にはその支持体を用いて移植材料を運搬してもよいし、移植材料が乾燥台座に保持されている場合にはその乾燥台座を移動用支持体として用いてもよい。また、支持体や乾燥台座がない場合には移植材料単体を把持して運搬してもよい。移植材料が支持体に懸架されている場合、患部に移植材料を適用する前に支持体を取り除いてもよいし、適用後に支持体を取り除いてもよいし、支持体として非固着性の創傷被覆材を使用している場合は、支持体を除去せずドレッシング材として使用してもよい。こうして移植材料を移植した後、非固着性のドレッシング材で被覆して湿潤環境を維持することで、皮膚欠損組織が再建される。
次に、本発明の製造方法で得られた移植材料について説明する。この移植材料は、例えば、哺乳動物皮膚由来の細胞をシート状に培養した細胞シートを、細胞が死滅するまで乾燥して得られた移植材料であって、生細胞を含まず、細胞間を接着していた膜タンパク質や細胞外マトリックスなどの生理活性物質を含んでいる。細胞シートとして表皮細胞シートを用いた場合、細胞外マトリックスは、培養時に基材に接着していた側(基底層側)の面に多く存在しており、コラーゲンなどで構成されている。この移植材料は、含水量が3μg/cm2以上100μg/cm2以下であることが好ましい。この移植材料は、患者本人の細胞(自家細胞)を用いたものとしてもよいし、患者以外の細胞(他家細胞(同種細胞))を用いたものとしてもよい。
以上説明した移植材料の製造方法によれば、移植材料を安価に製造でき、かつ長期間保存できる移植材料を提供できる。より具体的には、凍結乾燥のように高価な真空凍結乾燥機などもいらないし、一定の温度をかけ続ければ乾燥状態になるため工程管理も煩雑でない。また、凍結乾燥と同等以上の有効性を発揮する移植材料を得ることができる。さらに、凍結乾燥では、凍結開始から乾燥完了までに20時間以上が必要となるが(例えば特許文献1の実施例参照)、本発明では例えば120分以下などの短時間で乾燥を行うことができる。得られた移植材料は、例えば、熱傷、創傷、褥瘡または皮膚潰瘍などの皮膚欠損創において、広範囲でかつ真皮の深部に達する皮膚欠損に使用できる。
なお、本発明の移植材料は、培養細胞をそのまま用いるのではなく、乾燥して用いるため、生着はしない。しかし、生体親和性が高く、厚みも極めて薄く、創表面に完全に密着して被覆するため、創傷治癒に必要な湿潤環境を維持するとともに外界からの刺激や細菌の進入を防ぐ効果が期待される。さらに細胞から産生される種々の生理活性物質によって良性肉芽組織の形成を促進し、皮膚欠損が深部にいたらない場合には表皮を含む皮膚の再建を促進できる。
なお、本発明は上述した実施形態に何ら限定されることはなく、本発明の技術的範囲に属する限り種々の態様で実施し得ることはいうまでもない。例えば、上述した製造方法は、細胞準備工程、培養工程、細胞シート作製工程、乾燥工程及び包装工程を含むものとしたが、乾燥工程以外の工程を省略してもよい。具体的には、細胞準備工程を省略し、市販の研究用細胞など、別途用意された細胞を培養工程に用いてもよい。また、細胞シート作製工程より前の工程を省略し、製品化された細胞シートなど、別途用意された細胞シートを乾燥工程に用いてもよい。また、包装工程を省略し、移植材料が変質しないような環境に保存してもよい。
以下には、本発明の製造方法を用いて移植材料を製造した例について、実施例として説明する。なお、本発明は、以下の実施例に何ら限定されることはなく、本発明の技術的範囲に属する限り種々の態様で実施し得ることはいうまでもない。
1.移植材料の製造
[実施例1]
<表皮細胞シートの作製>
健常なヒトの皮膚組織よりトリプシンなどの酵素を用いて表皮細胞を分離した(工程(a))。
分離した細胞を、プラスティック製の培養フラスコ(培養面の寸法は112mm×134mm)に事前に準備した不活化フィーダー細胞(3T3細胞:マウス由来線維芽細胞)と共に培養した。培地は、ウシ胎児血清(FBS)を含むダルベッコ変法イーグル最少必須培地(DMEM)を使用し、定期的に新鮮な培地に交換した。培養して増殖させた表皮細胞は、コンフルエントに達する前にトリプシンを用いて基材から剥離し、新たな培養フラスコに低密度で播種することにより培養を継続した。こうした培養を繰り返し、最終的には、培養フラスコ内で表皮細胞がコンフルエントになるまで培養を継続した(工程(b))。
表皮細胞をコンフルエントまで培養して得られた表皮細胞シートを、ディスパーゼ等の酵素を用いて培養フラスコから剥離した。その際、表皮細胞シートの周縁にほぼ一致するか、表皮細胞シートの周縁より小さな支持体を用い、表皮細胞シートの周縁を支持体に接着又は懸架させて、培養フラスコから剥離した。支持体としては、セルロース製の不織布を使用した(工程(c))。表皮細胞シート自体の厚みは10~30μmであった。
<表皮細胞シートの乾燥/乾燥細胞シートの作製>
剥離した表皮細胞シートを、送風乾燥により乾燥させた。送風乾燥は、シリコーンシート製の乾燥台座に表皮細胞シートを置き、25℃の風に90分間表皮細胞シートをさらすことで乾燥させ、乾燥細胞シートを得た(工程(d))。このときの乾燥速度は、0.15g/h・cm2であった。
[実施例2]
表皮細胞シートの乾燥/乾燥細胞シートの作製において、送風乾燥(加温送風乾燥)にあたり、乾燥台座の一方(表皮細胞シートを載置する面)を45℃に加熱し、45分間表皮細胞シートを送風にさらした以外は、実施例1と同様とした。
[実施例3]
表皮細胞シートの乾燥/乾燥細胞シートの作製において、加温送風乾燥に先立って、表皮細胞シートをイソプロパノールと接触させて、化学脱水した。それ以外は、実施例2と同様とした。
[比較例1]
表皮細胞シートの乾燥/乾燥細胞シートの作製において、送風乾燥に代えて、凍結乾燥を行った以外は、実施例1と同様とした。凍結乾燥では、まず-80℃の超低温冷凍庫で約24時間凍結し、それを真空凍結乾燥機にて乾燥させ、乾燥細胞シートを得た。
2.移植材料の評価
<乾燥細胞シートの含水量>
得られた乾燥細胞シートの含水量を以下のようにして測定した。メタノールに乾燥細胞シートを2時間浸漬して水分を抽出後、0.45μmフィルターでろ過を行い、得られたろ液をガスクロマトグラフィー質量分析法(GC/MS)にて測定した。
その結果、実施例1、3の乾燥細胞シートの含水量は、各々6.5μg/cm2、8.0μg/cm2であった。
参考として、図1に、実施例1の乾燥工程における乾燥時間と水分濃度(含水量)との関係を示す。図1には、45℃で90分乾燥させた実施例2(加温90分)の含水量も示した。図1より、乾燥時間が45分以上であれば、含水量は同程度であることがわかった。また、加温によって、含水量が若干少なくなることがわかった。
<細胞が死滅していることの確認>
以下のように、再播種試験を行い、細胞が死滅していることを確認した。まず、乾燥細胞シートをトリプシンにより分散し、得られた細胞懸濁液(細胞シート25cm2分)をフィーダー細胞をあらかじめ播種した培養フラスコ(培養面積25cm2)に播種し、CO2インキュベーターに入れて37℃、10%CO2の条件下で培養した。培養フラスコ内の培地は、定期的に新鮮なものに交換した。コンフルエントに達するか培養14日目に達するかのいずれかを満たしたときに培地を除去し、1%ローダミンB染色液を添加して60分以上処理し、水道水で十分に染色液を洗浄して風乾させ、表皮細胞で被覆された面積を評価した。その結果、実施例1~3の乾燥細胞シートでは、表皮細胞での被覆率が0%であった。すなわち、再播種試験で細胞が増殖しなかった。このことから、細胞が死滅していることが確認された。
参考として、図1に示した各サンプルについて、再播種試験結果を検討した。その結果、乾燥時間が0分、5分、15分のものでは、被覆率は100%であったのに対して、乾燥時間が45分、90分、加温90分(45℃で90分乾燥)、一晩のものでは、被覆率は0%であった。以上より、乾燥時間45分以上では、より確実に細胞を死滅させられることがわかった。
また、参考として、図2に、実施例1の乾燥工程における乾燥時間と生細胞密度との関係を示す。生細胞密度は、以下に示す染色試験により測定した。まず、乾燥細胞シートをトリプシンで処理し、細胞を分離してトリパンブルーで染色し、血球計算板を用いて計数した。白く見える細胞(生細胞)が1つでも確認される場合には細胞が死滅しておらず、白く見える細胞が1つも確認されず全て青く見える細胞(死細胞)しか確認されない場合には細胞が死滅していると判断できる。図2より、乾燥時間が0分から15分までの間に生細胞密度が急激に減少し、乾燥時間が45分以上では生細胞が確認されないことがわかった。図2より、乾燥時間が30分の時点でも、細胞は死滅していると推察された。
<生理活性物質の定量>
表皮細胞から放出される生理活性物質は、それぞれ役割が明らかにされつつあり、創傷治癒等の効果が得られることが知られている。特に、培養した表皮細胞は、正常な表皮よりも多くの生理活性物質を放出していると言われている。乾燥細胞シートの創傷治癒効果を検討するため、以下のように生理活性物質の定量を行った。
得られた乾燥細胞シートを、RIPAバッファーなど界面活性剤やプロテアーゼ阻害剤を含む細胞溶解液に浸漬し、4℃で約24時間浸漬後、必要に応じホモジナイズ処理や超音波処理を施し、タンパク質を抽出した。遠心後の上清を検体とし、マルチプレックスサスペンションアレイ法(Bio-Plex:BIO-RAD社、Luminex assay:R&D社)により種々の生理活性物質を定量した。
図3に実施例1及び比較例1の生理活性物質の定量結果を示す。図3では表皮細胞シート(乾燥前)が放出する量を100%とした。図3より、実施例1の乾燥細胞シートでは、凍結乾燥した比較例1の乾燥細胞シートや、乾燥前の表皮細胞シートと同等の生理活性物質を含有することが確認された。
図4に実施例1~3の生理活性物質の定量結果を示す。図4より、45℃の送風乾燥を行った実施例2や、化学乾燥を行った実施例3では、25℃の送風乾燥を行った実施例1よりも生理活性物質の放出量が若干少なかった。しかし、いずれも生理活性物質を放出しており、創傷治癒効果が期待できることがわかった。
<物性評価>
得られた乾燥細胞シートを、生理食塩水に1分間浸漬し、含水細胞シートを得た。含水細胞シートは、乾燥前の表皮細胞シートのような状態に戻る。含水細胞シートの質感について官能試験を行い、柔軟性を評価した。その結果、実施例1~3の含水細胞シートは、乾燥前の表皮細胞シートと同等の柔軟性を有していた。なお、実施例1~3のうち、化学脱水を行った実施例3では、実施例1,2に比してやや硬質であった。このような柔軟性を有する移植材料では、移植創面の複雑な凹凸に極めてよく追従することができるため、実施例1~3の移植材料は、乾燥していない表皮細胞シート(生細胞で構成された表皮細胞シート)と同程度に創傷治癒効果に貢献するものと考えられる。
<動物実験>
実施例1~3の乾燥細胞シートを、乾燥した状態のままマウスの全層欠損部に適用し、生理食塩水で浸潤させて、経過を観察した。その結果、無移植群に比べ明らかな創傷治癒促進効果が確認できた。なお、動物実験では、異種動物の細胞から製造した移植材料を用いたが、同種動物の細胞から製造した移植材料を用いた場合でも同様の効果が得られると推察され、本発明の移植材料は、患者と同種動物の細胞から製造したものであることが好ましい。
なお、例えば、上述した特許文献1では、コラーゲン等の培養皮膚用基材に皮膚細胞を保持した状態で乾燥しており、培養皮膚用基材の厚みは0.3~30mmと厚い。このため、良好な状態で十分に培養皮膚用基材まで乾燥させるには、凍結乾燥が必要と考えられる。これに対して、本発明では、乾燥させる必要のある基材を有さないため、凍結乾燥を用いなくても良好に乾燥できたものと推察される。
以上より、本発明の移植材料の製造方法では、移植材料を安価に製造でき、かつ長期間保存できる移植材料を提供できるだけでなく、凍結乾燥した移植材料と同等以上の有効性を発揮する移植材料を提供できることがわかった。
本発明は、例えば再生医療の分野に利用可能である。

Claims (4)

  1. 哺乳動物皮膚由来の細胞をシート状に培養した細胞シートを、送風乾燥、加温乾燥、自然乾燥及び化学乾燥のうちの1以上で前記細胞が死滅するまで乾燥させる工程を含む、移植材料の製造方法。
  2. 前記細胞シートを、含水量3μg/cm2以上100μg/cm2以下まで乾燥する、請求項1に記載の移植材料の製造方法。
  3. 前記細胞シートは、表皮細胞シートである、請求項1又は2に記載の移植材料の製造方法。
  4. 請求項1~3のいずれか1項に記載の移植材料の製造方法であって、
    前記細胞シートを乾燥させる工程に先立って、不活化したフィーダー細胞をプラスティック基材上にあらかじめ播種し、哺乳動物皮膚由来の前記細胞を共培養し、その後前記細胞シートを剥離することによって、前記細胞シートを得る工程を含む、移植材料の製造方法。
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