JP6988317B2 - タイヤ用ゴム組成物及び空気入りタイヤ - Google Patents

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Description

本発明は、タイヤ用ゴム組成物及び空気入りタイヤに関する。
近年、車両走行時の低燃費性の面から、タイヤの発熱性(ヒステリシスロス)を低減することが求められている。これに対し、タイヤのトレッド部を構成するゴム成分に、シリカを配合して、タイヤの発熱性を低減する方法が知られている。
しかし、シリカはゴム成分との親和性が低く、また、シリカ同士の凝集性が高いため、ゴム成分に単にシリカを配合してもシリカが分散せず、発熱性を低減する効果が十分に得られないという問題があった。特に、重荷重タイヤ用ゴム組成物等の天然ゴムを主なゴム成分とするタイヤ用ゴム組成物の場合、シリカの分散性が特に悪く、上述した問題が顕著に見られた。
このようななか、例えば、特許文献1の実施例には、天然ゴムとメルカプト系シランカップリング剤とを併用する重荷重タイヤ用ゴム組成物が開示されている。上記特許文献1によれば、上記タイヤ用ゴム組成物は、シリカの分散性(シリカ分散性)に優れ、低発熱性に優れたタイヤを製造し得る旨が記載されている。
特開2016−30815号公報
昨今、環境問題および資源問題などから、タイヤの発熱性のさらなる低減が求められ、それに伴い、シリカを含有するタイヤ用ゴム組成物にはシリカの分散性(シリカ分散性)のさらなる向上が求められている。また、製造効率の観点から、加工性のさらなる向上(粘度の低減)も求められている。
このようななか、本発明者が、特許文献1の実施例を参考にタイヤ用ゴム組成物を調製したところ、そのシリカ分散性及び加工性は昨今要求されているレベルを必ずしも満たすものではないことが明らかになった。
そこで、本発明は、上記実情を鑑みて、シリカ分散性及び加工性に優れるタイヤ用ゴム組成物、及び、上記タイヤ用ゴム組成物を用いて製造された空気入りタイヤを提供することを目的とする。
本発明者は、上記課題について鋭意検討した結果、メルカプト系シランカップリング剤とともに、ビニル結合含有量が50質量%以上であるスチレンブタジエンポリマー及びブタジエンポリマーからなる群より選択される少なくとも1種のポリマー成分を特定量配合することで、上記課題が解決できることを見出し、本発明に至った。
すなわち、本発明者は、以下の構成により上記課題が解決できることを見出した。
(1) ジエン系成分と、シリカと、メルカプト系シランカップリング剤とを含有し、
上記ジエン系成分が、天然ゴム及びイソプレンゴムからなる群より選択される少なくとも1種のゴム成分と、ビニル結合含有量が50質量%以上且つ重量平均分子量が100,000以上である、スチレンブタジエンポリマー及びブタジエンポリマーからなる群より選択される少なくとも1種のポリマー成分とを含み、
上記ジエン系成分中、上記ゴム成分の含有量が、50質量%以上であり、
上記ポリマー成分の含有量が、上記ゴム成分の含有量に対して、10質量%以上であり、
上記シリカの含有量が、上記ジエン系成分100質量部に対して、30質量部以上であり、
上記メルカプト系シランカップリング剤の含有量が、上記シリカの含有量に対して、4質量%以上である、タイヤ用ゴム組成物。
(2) 上記ポリマー成分が、ビニル結合含有量が90質量%以上且つ重量平均分子量が100,000以上である、ブタジエンポリマーである、上記(1)に記載のタイヤ用ゴム組成物。
(3) 上記メルカプト系シランカップリング剤が、後述する式(1)の平均組成式で表されるポリシロキサン、又は、後述する式(A3)で表される繰り返し単位および後述する式(A4)で表される繰り返し単位を有する共重合物である、上記(1)又は(2)に記載のタイヤ用ゴム組成物。
(4) 上記(1)〜(3)のいずれかに記載のタイヤ用ゴム組成物をキャップトレッドに配置した空気入りタイヤ。
以下に示すように、本発明によれば、シリカ分散性及び加工性に優れるタイヤ用ゴム組成物、及び、上記タイヤ用ゴム組成物を用いて製造された空気入りタイヤを提供することができる。
本発明の空気入りタイヤの実施態様の一例を表すタイヤの部分断面概略図である。
以下に、本発明のタイヤ用ゴム組成物及び上記タイヤ用ゴム組成物を用いて製造された空気入りタイヤについて説明する。
なお、本明細書において「〜」を用いて表される数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値を下限値および上限値として含む範囲を意味する。
また、本発明のタイヤ用ゴム組成物に含有される各成分は、1種を単独でも用いても、2種以上を併用してもよい。ここで、各成分について2種以上を併用する場合、その成分について含有量とは、特段の断りが無い限り、合計の含有量を指す。
[タイヤ用ゴム組成物]
本発明のタイヤ用ゴム組成物(以下、単に「本発明の組成物」とも言う)は、ジエン系成分と、シリカと、メルカプト系シランカップリング剤とを含有する。
ここで、上記ジエン系成分は、天然ゴム及びイソプレンゴムからなる群より選択される少なくとも1種のゴム成分と、ビニル結合含有量が50質量%以上且つ重量平均分子量が100,000以上である、スチレンブタジエンポリマー及びブタジエンポリマーからなる群より選択される少なくとも1種のポリマー成分とを含む。
また、上記ジエン系成分中、上記ゴム成分の含有量は50質量%以上であり、上記ポリマー成分の含有量は上記ゴム成分の含有量に対して10質量%以上である。
また、上記シリカの含有量は、上記ジエン系成分100質量部に対して30質量部以上である。
また、上記メルカプト系シランカップリング剤の含有量は、上記シリカの含有量に対して4質量%以上である。
本発明の組成物はこのような構成をとるため、上述した効果が得られるものと考えらえる。その理由は明らかではないが、およそ以下のとおりと推測される。
上述のとおり、本発明の組成物は、ジエン系成分と、シリカと、メルカプト系シランカップリング剤とを含有し、上記ジエン系成分は、天然ゴム及びイソプレンゴムからなる群より選択される少なくとも1種のゴム成分と、ビニル結合含有量が50質量%以上且つ重量平均分子量が100,000以上である、スチレンブタジエンポリマー及びブタジエンポリマーからなる群より選択される少なくとも1種のポリマー成分とを含む。
ここで、メルカプト系シランカップリング剤は、シリカ分散性の向上には寄与するものの、ゴム成分のラジカルの発生を促進するため、メルカプト系シランカップリング剤を用いた場合加工性が低下するという問題がある。一方で、本発明の組成物はビニル結合含有量が高いポリマー成分を含有するため、ポリマー成分のビニル結合がメルカプト系シランカップリング剤のメルカプト基に反応し、ラジカルの発生が抑制される。結果として、本発明の組成物は、優れた加工性を示すものと考えられる。
また、本発明の組成物は天然ゴム等を主なゴム成分とするため、上述のとおり通常であればシリカの分散性が悪い。しかしながら、本発明の組成物においては、ポリマー成分がメルカプト系シランカップリング剤を介してシリカと結合するとともに、このようにシリカに結合したポリマー成分が天然ゴム等のゴム成分に相溶するため、ゴム成分中にシリカが均一に分散するものと考えられる。
以上のような理由から、本発明の組成物は、優れたシリカ分散性と加工性を示すものと推測される。
以下、本発明の組成物に含有される各成分について詳述する。
〔ジエン系成分〕
本発明の組成物に含有されるジエン系成分は、天然ゴム及びイソプレンゴムからなる群より選択される少なくとも1種のゴム成分と、ビニル結合含有量が50質量%以上且つ重量平均分子量が100,000以上である、スチレンブタジエンポリマー及びブタジエンポリマーからなる群より選択される少なくとも1種のポリマー成分とを含む。
ここで、上記ジエン系成分中、上記ゴム成分の含有量は50質量%以上であり、上記ポリマー成分の含有量は上記ゴム成分の含有量に対して10質量%以上である。
<ゴム成分>
上述のとおり、本発明の組成物に含有されるジエン系成分は、天然ゴム(NR)及びイソプレンゴム(IR)からなる群より選択される少なくとも1種のゴム成分を含む。
(分子量)
ゴム成分であるNR又はIRの重量平均分子量(Mw)は特に制限されないが、シリカ分散性、加工性がより優れ、また、耐熱性、耐寒性、耐劣化性が優れる理由から、200,000〜3,000,000であることが好ましく、300,000〜2,000,000であることがより好ましく、400,000〜1,500,000であることがさらに好ましい。
なお、本明細書において、数平均分子量(Mn)および重量平均分子量(Mw)は、以下の条件のゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)測定により得られる標準ポリスチレン換算値とする。
以下、「シリカ分散性、加工性がより優れ、また、耐熱性、耐寒性、耐劣化性が優れる」ことを「本発明の効果がより優れる」とも言う。
・溶媒:テトラヒドロフラン
・検出器:RI検出器
(含有量)
ジエン系成分中、上記ゴム成分の含有量は50質量%以上である。なかでも、本発明の効果がより優れる理由から、60質量%以上であることが好ましく、70質量%以上であることがより好ましく、80質量%以上であることがさらに好ましい。上限は、本発明の効果がより優れる理由から、90%以下であることが好ましい。
<ポリマー成分>
上述のとおり、本発明の組成物に含有されるジエン系成分は、ビニル結合含有量が50質量%以上且つ重量平均分子量が100,000以上である、スチレンブタジエンポリマー及びブタジエンポリマーからなる群より選択される少なくとも1種のポリマー成分を含む。上記ポリマー成分は、本発明の効果がより優れる理由から、ブタジエンポリマーであるのが好ましい。
(スチレン単位含有量)
ポリマー成分であるスチレンブタジエンポリマーのスチレン単位含有量は特に制限されないが、本発明の効果がより優れる理由から、10〜40質量%であることが好ましく、20〜30質量%であることがより好ましい。
なお、スチレン単位含有量とは、スチレンブタジエンポリマー全体に対する、スチレン由来の繰り返し単位の割合(質量%)を表す。
(ビニル結合含有量)
ポリマー成分であるスチレンブタジエンポリマー又はブタジエンポリマーのビニル結合含有量は、50質量%以上である。なかでも、本発明の効果がより優れる理由から、60質量%以上であることが好ましく、70質量%以上であることがより好ましく、80質量%以上であることがさらに好ましく、90質量%以上であることが特に好ましい。上限は、本発明の効果がより優れる理由から、95質量%以下であることが好ましい。
なお、本明細書においてスチレンブタジエンポリマーのビニル結合含有量とは、スチレンブタジエンポリマー全体に対する、ブタジエン由来のビニル結合を有する繰り返し単位の割合(質量%)を表す。同様に、本明細書においてブタジエンポリマーのビニル結合含有量とは、ブタジエンポリマー全体に対する、ブタジエン由来のビニル結合を有する繰り返し単位の割合(質量%)を表す。
例えば、スチレンブタジエンポリマーが、スチレン単位含有量が40質量%であり、ブタジエン単位含有量(スチレンブタジエンポリマー全体に対するブタジエン由来の繰り返し単位の割合)が60質量%であり、ブタジエンに由来する繰り返し単位のうちビニル結合を有する繰り返し単位が占める割合が90モル%である場合、スチレンブタジエンポリマーのビニル結合含有量は54質量%(=60質量%×0.9)である。
(分子量)
ポリマー成分であるスチレンブタジエンポリマー又はブタジエンポリマーのMwは、100,000以上である。なかでも、本発明の効果がより優れる理由から、100,000〜2,000,000であることが好ましく、150,000〜1,000,000であることがより好ましく、200,000〜800,000であることがさらに好ましい。
分子量の測定方法は上述のとおりである。
(立体規則性)
ポリマー成分であるブタジエンポリマーの立体規則性は特に制限されないが、本発明の効果がより優れる理由から、シンジオタクチックであることが好ましい。
(メルトマスフローレイト)
ポリマー成分であるスチレンブタジエンポリマー又はブタジエンポリマーのメルトマスフローレイト(MFR)は特に制限されないが、本発明の効果がより優れる理由から、1〜100g/10分であるのが好ましく、2〜10g/10分であるのがより好ましく、3〜5g/10分であるのがさらに好ましい。
なお、メルトマスフローレイト(MFR)は、JIS K 7210:1999に規定する「プラスチック−熱可塑性プラスチックのメルトマスフローレイト(MFR)の試験方法」に準じ、温度150℃、荷重21.2Nの条件で測定した値とする。
(融点)
ポリマー成分であるスチレンブタジエンポリマー又はブタジエンポリマーの融点は特に制限されないが、本発明の効果がより優れる理由から、50〜150℃であることが好ましく、60〜100℃であることがより好ましく、70〜90℃であることがさらに好ましい。なお、融点は1気圧における融点を指す。
(含有量)
上記ポリマー成分の含有量は上述したゴム成分の含有量に対して10質量%以上である。上限は、本発明の効果がより優れる理由から、100質量%以下であることが好ましく、50質量%以下であることがより好ましく、30質量%以下であることがさらに好ましい。
ジエン系成分中の上記ポリマー成分の含有量(ジエン系成分を100質量%としたときの上記ポリマー成分の質量%)は、本発明の効果がより優れる理由から、5〜40質量%であることが好ましく、5〜30質量%であることがより好ましく、10〜20質量%であることがさらに好ましい。
<その他のゴム成分>
ジエン系成分は上述したゴム成分及びポリマー成分のいずれにも該当しないその他のゴム成分をさらに含有していてもよい。
そのようなその他のゴム成分としては、上述したポリマー成分以外のブタジエンゴム、上述したポリマー成分以外のスチレンブタジエンゴム、アクリロニトリル−ブタジエン共重合ゴム(NBR)、ブチルゴム(IIR)、ハロゲン化ブチルゴム(Br−IIR、Cl−IIR)、クロロプレンゴム(CR)などが挙げられる。
その他のゴム成分の含有量は特に制限されないが、本発明の効果がより優れる理由から、ジエン系成分中、30質量%未満であることが好ましく、20質量%未満であることがより好ましく、10質量%未満であることがさらに好ましい。
〔シリカ〕
本発明の組成物に含有されるシリカは特に制限されず、タイヤ等の用途でゴム組成物に配合されている従来公知の任意のシリカを用いることができる。
上記シリカとしては、例えば、湿式シリカ、乾式シリカ、ヒュームドシリカ、珪藻土などが挙げられる。上記シリカは、1種のシリカを単独で用いても、2種以上のシリカを併用してもよい。
<CTAB吸着比表面積>
シリカのセチルトリメチルアンモニウムブロマイド(CTAB)吸着比表面積は特に制限されないが、本発明の効果がより優れる理由から、100〜300m/gであることが好ましく、150〜250m/gであることがより好ましく、160〜240m/gであることがさらに好ましい。
ここで、CTAB吸着比表面積は、シリカ表面へのCTAB吸着量をJIS K6217−3:2001「第3部:比表面積の求め方−CTAB吸着法」にしたがって測定した値とする。
<含有量>
本発明の組成物において、シリカの含有量は、ジエン系成分100質量部に対して、30質量部以上である。上限は特に制限されないが、本発明の効果がより優れる理由から、200質量部以下であることが好ましく、150質量部以下であることがより好ましい。
〔メルカプト系シランカップリング剤〕
本発明の組成物に含有されるメルカプト系シランカップリング剤(メルカプト基を有するシランカップリング剤)は、メルカプト基(−SH)および加水分解性基を有するシラン化合物であれば特に制限されない。なお、本明細書において、メルカプト基が保護された保護化メルカプト基はメルカプト基には該当しない。
上記加水分解性基は特に制限されないが、例えば、アルコキシ基、フェノキシ基、カルボキシル基、アルケニルオキシ基などが挙げられる。なかでも、本発明の効果がより優れる理由から、アルコキシ基であることが好ましい。加水分解性基がアルコキシ基である場合、アルコキシ基の炭素数は、1〜16であることが好ましく、1〜4であることがより好ましい。炭素数1〜4のアルコキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基などが挙げられる。
上記メルカプト系シランカップリング剤は、メルカプト基以外の有機官能基を有していてもよい。
そのような有機官能基としては特に制限されないが、例えば、エポキシ基、ビニル基、アクリロイル基、メタクリロイル基、アミノ基などが挙げられる。
上記メルカプト系シランカップリング剤の具体例としては、メルカプトプロピルトリメトキシシラン、メルカプトプロピルトリエトキシシランなどが挙げられる。
<好適な態様>
上記メルカプト系シランカップリング剤は、本発明の効果がより優れる理由から、ポリシロキサン構造(−Si−O−)を有するメルカプト系シランカップリング剤であることが好ましい。
また、上記メルカプト系シランカップリング剤は、本発明の効果がより優れ、また、耐熱性、耐劣化性がより優れる理由から、後述する式(A1)で表される化合物、後述する式(1)の平均組成式で表されるポリシロキサン(特定ポリシロキサン)、又は、後述する式(A3)で表される繰り返し単位および後述する式(A4)で表される繰り返し単位を有する共重合物であることが好ましく、上記式(A1)で表される化合物、又は、上記特定ポリシロキサンであることがより好ましく、上記特定ポリシロキサンであることがさらに好ましい。
(式(A1)で表される化合物)
Figure 0006988317
上記式(A1)中、R11は、炭素数1〜8のアルコキシ基を表し、なかでも、炭素数1〜3のアルコキシ基が好ましい。炭素数1〜3のアルコキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基などが挙げられる。なお、lが2以上の整数である場合に複数あるR11はそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。
上記式(A1)中、R12は、炭素数4〜30の直鎖状のポリエーテル基を表す。ポリエーテル基とは、エーテル結合を2以上有する基であり、その具体例としては、例えば、構造単位−R−O−R−を合計して2個以上有する基が挙げられる。ここで、RおよびRは、それぞれ独立して、直鎖状もしくは分岐状のアルキレン基、直鎖状もしくは分岐状のアルケニレン基、直鎖状もしくは分岐状のアルキニレン基、または、置換もしくは無置換のアリーレン基を表す。なかでも、直鎖状のアルキレン基であることが好ましい。なお、mが2である場合の複数あるR12はそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。
炭素数4〜30の直鎖状のポリエーテル基の好適な態様としては、例えば、下記式(A2)で表される基が挙げられる。
Figure 0006988317
上記式(A2)中、R21は、直鎖状のアルキル基、直鎖状のアルケニル基、または、直鎖状のアルキニル基を表し、なかでも直鎖状のアルキル基が好ましい。上記直鎖状のアルキル基としては、炭素数1〜20の直鎖状のアルキル基が好ましく、炭素数8〜15の直鎖状のアルキル基がより好ましい。炭素数8〜15の直鎖状のアルキル基の具体例としては、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基などが挙げられ、なかでもトリデシル基が好ましい。
上記式(A2)中、R22は、直鎖状のアルキレン基、直鎖状のアルケニレン基、または、直鎖状のアルキニレン基を表し、なかでも直鎖状のアルキレン基が好ましい。上記直鎖状のアルキレン基としては、炭素数1〜2の直鎖状のアルキレン基が好ましく、エチレン基がより好ましい。
上記式(A2)中、pは、1〜10の整数を表し、3〜7であることが好ましい。
上記式(A2)中、*は、結合位置を示す。
上記式(A1)中、R13は、水素原子または炭素数1〜8のアルキル基を表す。
上記式(A1)中、R14は炭素数1〜30のアルキレン基を表し、なかでも炭素数1〜12のアルキレン基が好ましく、炭素数1〜5のアルキレン基がより好ましい。炭素数1〜5のアルキレン基の具体例としては、例えばメチレン基、エチレン基、プロピレン基などが挙げられる。
上記式(A1)中、lは1〜3の整数を表し、なかでも、本発明の効果がより優れる理由から、3であることが好ましい。上記式(A1)中、mは0〜2の整数を表す。nは0〜1の整数を表す。l、mおよびnはl+m+n=3の関係式を満たす。
(特定ポリシロキサン)
(A)(B)(C)(D)(RSiO(4−2a−b−c−d−e)/2 (1)
(式(1)中、Aはスルフィド基を含有する2価の有機基を表す。Bは炭素数5〜10の1価の炭化水素基を表す。Cは加水分解性基を表す。Dはメルカプト基を含有する有機基を表す。Rは炭素数1〜4の1価の炭化水素基を表す。a〜eは、0≦a<1、0≦b<1、0<c<3、0<d<1、0≦e<2、0<2a+b+c+d+e<4の関係式を満たす。)
式(1)は、ポリシロキサンの平均組成を表す。すなわち、ポリシロキサンのSi原子に直接結合する基の種類、及び、各基の平均の数を表す。
式(1)中のSiはポリシロキサンのSi原子を表す。また、式(1)中のOはポリシロキサンのO原子を表す。なお、O原子は2価の基であり、必ず2つのSi原子(ポリシロキサンのSi原子)に結合する。式(1)中の(4−2a−b−c−d−e)/2は、ポリシロキサンのSi原子にポリシロキサンのO原子が結合する平均の数を表す。
式(1)中のA、B、C、D及びRはいずれもポリシロキサンのSi原子に結合する基を表す。なお、Aは2価の基であり、必ず2つのSi原子(ポリシロキサンのSi原子)に結合する。式(1)中のa、b、c、d及びeはそれぞれポリシロキサンのSi原子に結合するA、B、C、D及びRの平均の数を表す。
ポリシロキサンのSi原子に直接結合する各基の合計(a×2+b+c+d+e+((4−2a−b−c−d−e)/2)×2)が4(Si原子の価数)になることから分かるように、ポリシロキサンのSi原子には、A、B、C、D、R及びO以外の基は直接結合しない。なお、上記合計の計算において、a及び(4−2a−b−c−d−e)/2)を2倍にするのは、A及びOが2価の基であるからである。
上記式(1)中、Aはスルフィド基を含有する2価の有機基(以下、「スルフィド基含有有機基」とも言う)を表す。なかでも、本発明の効果がより優れる理由から、下記式(2)で表される基であることが好ましい。
−(CH2n−Sx−(CH2n (2)
上記式(2)中、nは1〜10の整数を表し、なかでも、本発明の効果がより優れる理由から、2〜4の整数であることが好ましい。
上記式(2)中、xは1〜6の整数を表し、なかでも、本発明の効果がより優れる理由から、2〜4の整数であることが好ましい。
上記式(2)中、*は、結合位置を示す。
上記式(2)で表される基の具体例としては、例えば、−CH2−S2−CH2−C24−S2−C24−C36−S2−C36−C48−S2−C48−CH2−S4−CH2−C24−S4−C24−C36−S4−C36−C48−S4−C48などが挙げられる。
本発明の効果がより優れる理由から、Aに含有されるスルフィド基はテトラスルフィド基(−S−)であることが好ましい。
上記式(1)中、Bは炭素数5〜10の1価の炭化水素基を表し、その具体例としては、例えば、ヘキシル基、オクチル基、デシル基などが挙げられる。
上記式(1)中、Cは加水分解性基を表し、その具体例としては、例えば、アルコキシ基、フェノキシ基、カルボキシル基、アルケニルオキシ基などが挙げられる。なかでも、本発明の効果がより優れる理由から、下記式(3)で表される基であることが好ましい。
−OR2 (3)
上記式(3)中、R2は炭素数1〜20のアルキル基、炭素数6〜10のアリール基、炭素数6〜10のアラルキル基(アリールアルキル基)または炭素数2〜10のアルケニル基を表し、なかでも、本発明の効果がより優れる理由から、炭素数1〜5のアルキル基であることが好ましい。上記炭素数1〜20のアルキル基の具体例としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘキシル基、オクチル基、デシル基、オクタデシル基などが挙げられる。上記炭素数6〜10のアリール基の具体例としては、例えば、フェニル基、トリル基などが挙げられる。上記炭素数6〜10のアラルキル基の具体例としては、例えば、ベンジル基、フェニルエチル基などが挙げられる。上記炭素数2〜10のアルケニル基の具体例としては、例えば、ビニル基、プロぺニル基、ペンテニル基などが挙げられる。
上記式(3)中、*は、結合位置を示す。
上記式(1)中、Dはメルカプト基を含有する有機基を表す。なかでも、本発明の効果がより優れる理由から、下記式(4)で表される基であることが好ましい。
−(CH2m−SH (4)
上記式(4)中、mは1〜10の整数を表し、なかでも、本発明の効果がより優れる理由から、1〜5の整数であることが好ましい。
上記式(4)中、*は、結合位置を示す。
上記式(4)で表される基の具体例としては、−CH2SH、−C24SH、−C36SH、−C48SH、−C510SH、−C612SH、−C714SH、−C816SH、−C918SH、−C1020SHが挙げられる。
上記式(1)中、Eは炭素数1〜4の1価の炭化水素基を表す。
上記式(1)中、a〜eは、0≦a<1、0≦b<1、0<c<3、0<d<1、0≦e<2、0<2a+b+c+d+e<4の関係式を満たす。
上記特定ポリシロキサンは、本発明の効果がより優れる理由から、aが0よりも大きい(0<a)ことが好ましい。すなわち、スルフィド基含有有機基を有することが好ましい。なかでも、本発明の効果がより優れる理由から、0<a≦0.50であることが好ましい。
上記式(1)中、bは、本発明の効果がより優れる理由から、0.10≦b≦0.89であることが好ましい。
上記式(1)中、cは、本発明の効果がより優れる理由から、1.2≦c≦2.0であることが好ましい。
上記式(1)中、dは、本発明の効果がより優れる理由から、0.1≦d≦0.8であることが好ましい。
上記特定ポリシロキサンは、本発明の効果がより優れる理由から、上記式(1)中、Aが上記式(2)で表される基であり、上記式(1)中のCが上記式(3)で表される基であり、上記式(1)中のDが上記式(4)で表される基であるポリシロキサンであることが好ましい。
上記特定ポリシロキサンの重量平均分子量は、本発明の効果がより優れる理由から、500〜2300であるのが好ましく、600〜1500であるのがより好ましい。本願における特定ポリシロキサンの分子量は、トルエンを溶媒とするゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)によりポリスチレン換算で求めたものである。
上記特定ポリシロキサンの酢酸/ヨウ化カリウム/ヨウ素酸カリウム添加−チオ硫酸ナトリウム溶液滴定法によるメルカプト当量は、加硫反応性に優れるという観点から、550〜700g/molであるのが好ましく、600〜650g/molであるのがより好ましい。
上記特定ポリシロキサンは、本発明の効果がより優れる理由から、シロキサン単位(−Si−O−)を2〜50個有するものであることが好ましい。
なお、上記特定ポリシロキサンの骨格には、ケイ素原子以外の金属(例えば、Sn、Ti、Al)は存在しない。
上記特定ポリシロキサンを製造する方法は特に限定されないが、第1の好適な態様としては、下記式(6)で表される有機ケイ素化合物と、下記式(7)で表される有機ケイ素化合物とを加水分解縮合する方法が挙げられる。また、第2の好適な態様としては、下記式(5)で表される有機ケイ素化合物と、下記式(6)で表される有機ケイ素化合物と、下記式(7)で表される有機ケイ素化合物とを加水分解縮合する方法が挙げられる。また、第3の好適な態様としては、下記式(5)で表される有機ケイ素化合物と、下記式(6)で表される有機ケイ素化合物と、下記式(7)で表される有機ケイ素化合物と、下記式(8)で表される有機ケイ素化合物とを加水分解縮合する方法が挙げられる。
なかでも、本発明の効果がより優れる理由から、上記第2の好適な態様であることが好ましい。
Figure 0006988317
上記式(5)中、R51は炭素数1〜20のアルキル基、炭素数6〜10のアリール基または炭素数2〜10のアルケニル基を表し、なかでも、本発明の効果がより優れる理由から、炭素数1〜5のアルキル基であることが好ましい。上記炭素数1〜20のアルキル基の具体例としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘキシル基、オクチル基、デシル基、オクタデシル基などが挙げられる。上記炭素数6〜10のアリール基の具体例としては、例えば、フェニル基、トリル基、ナフチル基などが挙げられる。炭素数2〜10のアルケニル基の具体例としては、例えば、ビニル基、プロペニル基、ペンテニル基などが挙げられる。
上記式(5)中、R52は炭素数1〜10のアルキル基または炭素数6〜10のアリール基を表す。上記炭素数1〜10のアルキル基の具体例としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘキシル基、オクチル基、デシル基などが挙げられる。上記炭素数6〜10のアリール基の具体例は上記R51と同じである。
上記式(5)中、nの定義および好適な態様は、上記nと同じである。
上記式(5)中、xの定義および好適な態様は、上記xと同じである。
上記式(5)中、yは1〜3の整数を表す。
上記式(5)で表される有機ケイ素化合物の具体例としては、例えば、ビス(トリメトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(トリメトキシシリルプロピル)ジスルフィド、ビス(トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィドなどが挙げられる。
Figure 0006988317
上記式(6)中、R61の定義、具体例および好適な態様は、上記R51と同じである。
上記式(6)中、R62の定義、具体例および好適な態様は、上記R52と同じである。
上記式(6)中、zの定義は、上記yと同じである。
上記式(6)中、pは5〜10の整数を表す。
上記式(6)で表される有機ケイ素化合物の具体例としては、例えば、ペンチルトリメトキシシラン、ペンチルメチルジメトキシシラン、ペンチルトリエトキシシラン、ペンチルメチルジエトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン、ヘキシルメチルジメトキシシラン、ヘキシルトリエトキシシラン、ヘキシルメチルジエトキシシラン、オクチルトリメトキシシラン、オクチルメチルジメトキシシラン、オクチルトリエトキシシラン、オクチルメチルジエトキシシラン、デシルトリメトキシシラン、デシルメチルジメトキシシラン、デシルトリエトキシシラン、デシルメチルジエトキシシランなどが挙げられる。
Figure 0006988317
上記式(7)中、R71の定義、具体例および好適な態様は、上記R51と同じである。
上記式(7)中、R72の定義、具体例および好適な態様は、上記R52と同じである。
上記式(7)中、mの定義および好適な態様は、上記mと同じである。
上記式(7)中、wの定義は、上記yと同じである。
上記式(7)で表される有機ケイ素化合物の具体例としては、例えば、α−メルカプトメチルトリメトキシシラン、α−メルカプトメチルメチルジメトキシシラン、α−メルカプトメチルトリエトキシシラン、α−メルカプトメチルメチルジエトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、γ−メルカプトプロピルメチルジエトキシシランなどが挙げられる。
Figure 0006988317
上記式(8)中、R81の定義、具体例および好適な態様は、上記R51と同じである。
上記式(8)中、R82の定義、具体例および好適な態様は、上記R52と同じである。
上記式(8)中、vの定義は、上記yと同じである。
上記式(8)中、qは1〜4の整数を表す。
上記式(8)で表される有機ケイ素化合物の具体例としては、例えば、メチルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルエチルジエトキシシラン、プロピルトリメトキシシラン、プロピルメチルジメトキシシラン、プロピルメチルジエトキシシランなどが挙げられる。
上記特定ポリシロキサンを製造する際には必要に応じて溶媒を用いてもよい。溶媒としては特に限定されないが、具体的にはペンタン、ヘキサン、ヘプタン、デカンなどの脂肪族炭化水素系溶媒、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサンなどのエーテル系溶媒、ホルムアミド、ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドンなどのアミド系溶媒、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素系溶媒、メタノール、エタノール、プロパノールなどのアルコール系溶媒などが挙げられる。
上記特定ポリシロキサンを製造する際には必要に応じて触媒を用いてもよい。触媒としては、例えば、塩酸、酢酸などの酸性触媒、アンモニウムフルオリドなどのルイス酸触媒、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素カリウム、炭酸カルシウム、ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシドなどのアルカリ金属塩、トリエチルアミン、トリブチルアミン、ピリジン、4−ジメチルアミノピリジンなどのアミン化合物などが挙げられる。
上記触媒は、金属としてSn、TiまたはAlを含有する有機金属化合物でないことが好ましい。このような有機金属化合物を使用した場合、ポリシロキサン骨格に金属が導入されて、上記特定ポリシロキサン(骨格には、ケイ素原子以外の金属(例えば、Sn、Ti、Al)は存在しない)が得られないことがある。
上記特定ポリシロキサンを製造する際に使用される有機ケイ素化合物として、メルカプト基を有するシランカップリング剤[例えば、式(7)で表される有機ケイ素化合物]及びスルフィド基又はメルカプト基を有するシランカップリング剤以外のシランカップリング剤[例えば、式(6)や式(8)で表される有機ケイ素化合物]を併用する際、メルカプト基を有するシランカップリング剤とスルフィド基又はメルカプト基を有するシランカップリング剤以外のシランカップリング剤との混合比(モル比)(メルカプト基を有するシランカップリング剤/スルフィド基又はメルカプト基を有するシランカップリング剤以外のシランカップリング剤)は、本発明の効果がより優れる理由から、1.1/8.9〜6.7/3.3であるのが好ましく、1.4/8.6〜5.0/5.0であるのがより好ましい。
上記特定ポリシロキサンを製造する際に使用される有機ケイ素化合物として、メルカプト基を有するシランカップリング剤[例えば、式(7)で表される有機ケイ素化合物]及びスルフィド基を有するシランカップリング剤[例えば、式(5)で表される有機ケイ素化合物]を併用する際、メルカプト基を有するシランカップリング剤とスルフィド基を有するシランカップリング剤との混合比(モル比)(メルカプト基を有するシランカップリング剤/スルフィド基を有するシランカップリング剤)は、本発明の効果がより優れる理由から、2.0/8.0〜8.9/1.1であるのが好ましく、2.5/7.5〜8.0/2.0であるのがより好ましい。
上記特定ポリシロキサンを製造する際に使用される有機ケイ素化合物として、メルカプト基を有するシランカップリング剤[例えば、式(7)で表される有機ケイ素化合物]、スルフィド基を有するシランカップリング剤[例えば、式(5)および/またはで表される有機ケイ素化合物]、及びスルフィド基又はメルカプト基を有するシランカップリング剤以外のシランカップリング剤[例えば、式(6)や式(8)で表される有機ケイ素化合物]を併用する際、メルカプト基を有するシランカップリング剤の量は、前3者の合計量(モル)中の10.0〜73.0%であるのが好ましい。スルフィド基を有するシランカップリング剤の量は、前3者の合計量中の5.0〜67.0%であるのが好ましい。スルフィド基又はメルカプト基を有するシランカップリング剤以外のシランカップリング剤の量は、前3者の合計量中の16.0〜85.0%であるのが好ましい。
(式(A3)で表される繰り返し単位および式(A4)で表される繰り返し単位を有する共重合物)
Figure 0006988317
上記式(A3)および(A4)中、R31およびR41は、それぞれ独立に、炭素数1〜5のアルキレン基を表し、その具体例としては、メチレン基、エチレン基、プロピレン基などが挙げられる。なかでも、プロピレン基が好ましい。複数あるR31およびR41はそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。
上記式(A3)および(A4)中、R32およびR42は、それぞれ独立に、直鎖状もしくは分岐状の炭素数1〜30のアルキレン基、直鎖状もしくは分岐状の炭素数2〜30のアルケニレン基、または、直鎖状もしくは分岐状の炭素数2〜30のアルキニレン基を表し、なかでも、炭素数3〜20のものが好ましい。R32が末端である場合、R32は、水素原子、直鎖状もしくは分岐状の炭素数1〜30のアルキル基、直鎖状もしくは分岐状の炭素数2〜30のアルケニル基、または、直鎖状もしくは分岐状の炭素数2〜30のアルキニル基を表し、なかでも、炭素数3〜20のものが好ましい。R42が末端である場合、R42の定義、具体例および好適な態様は、上記R32と同じである。複数あるR32およびR42はそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。
上記式(A3)および(A4)中、R33およびR43は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、直鎖状もしくは分岐状の炭素数1〜30のアルキル基、直鎖状もしくは分岐状の炭素数2〜30のアルケニル基、直鎖状もしくは分岐状の炭素数2〜30のアルキニル基、直鎖状もしくは分岐状の炭素数1〜30のアルキル基であって末端に水酸基もしくはカルボキシル基を有するもの、または、直鎖状もしくは分岐状の炭素数2〜30のアルケニル基であって末端に水酸基もしくはカルボキシル基を有するものを表す。R43は、末端に水酸基を有する基であることが好ましい。R32およびR33は、R32とR33とで環を形成していてもよい。R42およびR43は、R42とR43とで環を形成していてもよい。複数あるR33およびR43はそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。
34は、炭素数1〜13のアルキル基を表し、なかでも、炭素数3〜10のアルキル基が好ましい。炭素数3〜10のアルキル基の具体例としては、たとえばヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基などが挙げられる。複数あるR34はそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。
<含有量>
本発明の組成物において、メルカプト系シランカップリング剤の含有量は、上述したシリカの含有量に対して、4質量%以上である。なかでも、本発明の効果がより優れる理由から、5〜30質量%であることが好ましく、6〜20質量%であることがより好ましく、7〜15質量%であることがさらに好ましい。
本発明の組成物において、メルカプト系シランカップリング剤の含有量は、本発明の効果がより優れる理由から、ジエン系成分100質量部に対して、1〜30質量部であることが好ましく、2〜20質量部であることがより好ましく、3〜15質量部であることがさらに好ましい。
〔任意成分〕
本発明の組成物は、必要に応じて、その効果や目的を損なわない範囲でさらに他の成分(任意成分)を含有することができる。
上記任意成分としては、例えば、カーボンブラック、メルカプト系シランカップリング剤以外のシランカップリング剤、テルペン樹脂(好ましくは、芳香族変性テルペン樹脂)、熱膨張性マイクロカプセル、充填剤、酸化亜鉛(亜鉛華)、ステアリン酸、老化防止剤、ワックス、加工助剤、オイル、液状ポリマー、熱硬化性樹脂、加硫剤(例えば、硫黄)、加硫促進剤などのゴム組成物に一般的に使用される各種添加剤などが挙げられる。
<カーボンブラック>
本発明の組成物は、本発明の効果がより優れる理由から、カーボンブラックを含有するのが好ましい。
上記カーボンブラックは特に限定されず、例えば、SAF−HS、SAF、ISAF−HS、ISAF、ISAF−LS、IISAF−HS、HAF−HS、HAF、HAF−LS、FEF、GPF、SRF等の各種グレードのものを使用することができる。
上記カーボンブラックの窒素吸着比表面積(NSA)は特に制限されないが、本発明の効果がより優れる理由から、50〜200m/gであることが好ましく、70〜150m/gであることがより好ましい。
ここで、窒素吸着比表面積(NSA)は、カーボンブラック表面への窒素吸着量をJIS K6217−2:2001「第2部:比表面積の求め方−窒素吸着法−単点法」にしたがって測定した値である。
上記カーボンブラックの含有量は特に制限されないが、本発明の効果がより優れる理由から、上記ジエン系成分100質量部に対して1〜100質量部であることが好ましく、5〜50質量部であることがより好ましい。
〔用途〕
本発明の組成物はタイヤ(特に、重荷重タイヤ)の製造に好適に用いられる。
[空気入りタイヤ]
本発明の空気入りタイヤは、上述した本発明の組成物を用いて製造された空気入りタイヤ(特に、重荷重タイヤ)である。なかでも、本発明の組成物をタイヤトレッド(キャップトレッド)に配置した空気入りタイヤであることが好ましい。
図1に、本発明の空気入りタイヤの実施態様の一例を表すタイヤの部分断面概略図を示すが、本発明の空気入りタイヤは図1に示す態様に限定されるものではない。
図1において、空気入りタイヤは左右一対のビード部1およびサイドウォール部2と、両サイドウォール部2に連なるタイヤトレッド部3からなり、左右一対のビード部1間にスチールコードが埋設されたカーカス層4が装架され、カーカス層4の端部がビードコア5およびビードフィラー6の廻りにタイヤ内側から外側に折り返されて巻き上げられている。タイヤトレッド部3においては、カーカス層4の外側に、ベルト層7がタイヤ1周に亘って配置されている。ベルト層7の両端部には、ベルトクッション8が配置されている。空気入りタイヤの内面には、タイヤ内部に充填された空気がタイヤ外部に漏れるのを防止するために、インナーライナー9が設けられ、インナーライナー9を接着するためのタイゴム10が、カーカス層4とインナーライナー9との間に積層されている。
なお、タイヤトレッド部3は上述した本発明の組成物により形成されている。
本発明の空気入りタイヤは、例えば従来公知の方法に従って製造することができる。また、タイヤに充填する気体としては、通常のまたは酸素分圧を調整した空気の他、窒素、アルゴン、ヘリウムなどの不活性ガスを用いることができる。
以下、実施例により、本発明についてさらに詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
〔タイヤ用ゴム組成物の調製〕
下記表1に示す成分を、同表に示す割合(質量部)で配合した。なお、ゴム成分が油展品である場合、下記表1のゴム成分の質量部は油展オイルを除いた正味のゴムの量(質量部)を表す。
具体的には、まず、下記表1に示す成分のうち硫黄および加硫促進剤を除く成分を、1.7リットルの密閉式バンバリーミキサーを用いて140℃付近に温度を上げてから、5分間混合した後に放出し、室温まで冷却してマスターバッチを得た。さらに、上記バンバリーミキサーを用いて、得られたマスターバッチに硫黄および加硫促進剤を混合し、タイヤ用ゴム組成物を得た。
〔評価〕
得られたタイヤ用ゴム組成物について下記のとおり評価を行った。
<ペイン効果>
得られたタイヤ用ゴム組成物(未加硫)を、歪せん断応力測定機(RPA2000、α−テクノロジー社製)に設置し、170℃で10分間加硫した後、歪0.28%の歪せん断弾性率G′と歪30.0%の歪せん断弾性率G′とを測定し、その差G′0.28(MPa)−G′30.0(MPa)をペイン効果として算出した。
結果を表1に示す。結果は標準例を100とする指数で表した。指数が小さいほど、シリカ分散性に優れる。実用上、95以下であることが好ましい。
<粘度>
得られたタイヤ用ゴム組成物について、JIS K6300−1:2013に準じ、L形ロータを使用し、予熱時間1分、ロータの回転時間4分、試験温度100℃の条件で、ムーニー粘度を測定した。
結果を表1に示す。結果は標準例を100とする指数で表した。指数が小さいほど粘度が小さく、加工性に優れる。
Figure 0006988317
表1中、各成分の詳細は以下のとおりである。
・NR:TSR20(Tg:−62℃)
・Tufdene1000:スチレンブタジエンゴム(スチレン単位含有量:18質量%、ビニル結合含有量:8.2質量%、Mw:290,000、旭化成社製)
・NS116:スチレンブタジエンゴム(スチレン単位含有量:23質量%、ビニル結合含有量:56質量%、Mw:510,000、日本ゼオン社製)
・RB810:シンジオタクチック1,2−ポリブタジエン(ブタジエンポリマー)(ビニル結合含有量:90質量%、MFR:3g/10分(150℃、21.2N)、融点:71℃、比重:0.90、Mw:230,000、JSR社製)
・RB820:シンジオタクチック1,2−ポリブタジエン(ブタジエンポリマー)(ビニル結合含有量:92質量%、MFR:3g/10分(150℃、21.2N)、融点:95℃、比重:0.91、Mw:220,000、JSR社製)
・シリカ:ULTRASIL 9100GR(CTAB吸着比表面積:200m/g、Evonik社製)
・カーボンブラック:ショウブラックN339(キャボットジャパン社製)
・ステアリン酸:ビーズステアリン酸(日油社製)
・亜鉛華:酸化亜鉛3種(正同化学工業社社製)
・老化防止剤:オゾノン6C(精工化学社製)
・Si69:Si69(ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド)
・Si263:Si263(3−メルカプトプロピルトリエトキシシラン)
・特定ポリシロキサン:下記のとおり合成した特定ポリシロキサン
撹拌機、還流冷却器、滴下ロート及び温度計を備えた2Lセパラブルフラスコにビス(トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド(信越化学工業製 KBE−846)107.8g(0.2mol)、γ―メルカプトプロピルトリエトキシシラン(信越化学工業製 KBE−803)190.8g(0.8mol)、オクチルトリエトキシシラン(信越化学工業製 KBE−3083)442.4g(1.6mol)、エタノール190.0gを納めた後、室温にて0.5N塩酸37.8g(2.1mol)とエタノール75.6gの混合溶液を滴下した。その後、80℃にて2時間攪拌した。その後、濾過、5%KOH/EtOH溶液17.0gを滴下し80℃で2時間攪拌した。その後、減圧濃縮、濾過することで褐色透明液体のポリシロキサン480.1gを得た。GPCにより測定した結果、平均分子量は840であり、平均重合度は4.0(設定重合度4.0)であった。また、酢酸/ヨウ化カリウム/ヨウ素酸カリウム添加−チオ硫酸ナトリウム溶液滴定法によりメルカプト当量を測定した結果、730g/molであり、設定通りのメルカプト基含有量であることが確認された。以上より、下記平均組成式で示される。
(−C−S−C−)0.071(−C170.571(−OC1.50(−CSH)0.286SiO0.75
得られたポリシロキサンを特定ポリシロキサンとする。
・NXT−Z45:NXT−Z45(モメンティブ社製)(上述した式(A3)で表される繰り返し単位および上述した式(A4)で表される繰り返し単位を有する共重合物)
・オイル:エキストラクト4号S(昭和シェル石油社製)
・硫黄:金華印油入微粉硫黄(硫黄の含有量95.24質量%、鶴見化学工業社製)
・加硫促進剤CZ:大内新興化学工業社製ノクセラーCZ−G
表1から分かるように、メルカプト系シランカップリング剤とビニル結合含有量が50質量%以上であるスチレンブタジエンポリマー及びブタジエンポリマーからなる群より選択される少なくとも1種のポリマー成分とを併用する実施例1〜6は、メルカプト系シランカップリング剤を含有するが上記ポリマー成分を含有しない標準例及び比較例3と比較して、優れたシリカ分散性を示した。なかでも、上記ポリマー成分のビニル結合含有量が80質量%以上である実施例2〜6は、より優れたシリカ分散性及び加工性を示した。そのなかでも、上記ポリマー成分の融点が90℃以下である実施例2〜3及び5〜6は、さらに優れたシリカ分散性及び加工性を示した。
実施例2と3との対比(ポリマー成分の含有量のみが異なる態様同士の対比)から、上記ポリマー成分の含有量がゴム成分の含有量に対して20質量%以上である実施例3は、より優れたシリカ分散性及び加工性を示した。
また、実施例2と5と6との対比(メルカプト系シランカップリング剤の種類のみが異なる態様同士の対比)から、メルカプト系シランカップリング剤が、上述した特定ポリシロキサン、又は、上述した式(A3)で表される繰り返し単位および上述した式(A4)で表される繰り返し単位を有する共重合物である、実施例5及び6は、より優れた加工性を示した。なかでも、メルカプト系シランカップリング剤が、上述した特定ポリシロキサンである実施例5は、さらに優れたシリカ分散性及び加工性を示した。
一方、上記ポリマー成分を含有するがメルカプト系シランカップリング剤を含有しない比較例2は、シリカ分散性が不十分であった。
また、メルカプト系シランカップリング剤と上記ポリマー成分とを併用するが、上記ポリマー成分の含有量がゴム成分の含有量に対して10質量%未満である比較例4は、シリカ分散性が不十分であった。
標準例と比較例1〜2と実施例2との対比から、メルカプト系シランカップリング剤又は上記ポリマー成分を含有しない標準例及び比較例1〜2と比較して、メルカプト系シランカップリング剤と上記ポリマー成分とを併用する実施例2は、優れた加工性を示した。
1 ビード部
2 サイドウォール部
3 タイヤトレッド部
4 カーカス層
5 ビードコア
6 ビードフィラー
7 ベルト層
8 ベルトクッション
9 インナーライナー
10 タイゴム

Claims (4)

  1. ジエン系成分と、シリカと、メルカプト系シランカップリング剤とを含有し、
    前記ジエン系成分が、天然ゴム及びイソプレンゴムからなる群より選択される少なくとも1種のゴム成分と、ビニル結合含有量が50質量%以上且つ重量平均分子量が100,000以上であるブタジエンポリマーであるポリマー成分とを含み、前記ポリマー成分の融点が90℃以下であり、
    前記ジエン系成分中、前記ゴム成分の含有量が、80質量%以上であり、
    前記ポリマー成分の含有量が、前記ゴム成分の含有量に対して、10質量%以上であり、
    前記シリカの含有量が、前記ジエン系成分100質量部に対して、30質量部以上であり、
    前記メルカプト系シランカップリング剤の含有量が、前記シリカの含有量に対して、4質量%以上である、タイヤ用ゴム組成物。
  2. 前記ポリマー成分が、ビニル結合含有量が90質量%以上且つ重量平均分子量が100,000以上である、ブタジエンポリマーである、請求項1に記載のタイヤ用ゴム組成物。
  3. 前記メルカプト系シランカップリング剤が、下記式(1)の平均組成式で表されるポリシロキサン、又は、下記式(A3)で表される繰り返し単位および下記式(A4)で表される繰り返し単位を有する共重合物である、請求項1又は2に記載のタイヤ用ゴム組成物。
    (A)(B)(C)(D)(RSiO(4−2a−b−c−d−e)/2 (1)
    (式(1)中、Aはスルフィド基を含有する2価の有機基を表す。Bは炭素数5〜10の1価の炭化水素基を表す。Cは加水分解性基を表す。Dはメルカプト基を含有する有機基を表す。Rは炭素数1〜4の1価の炭化水素基を表す。a〜eは、0≦a<1、0≦b<1、0<c<3、0<d<1、0≦e<2、0<2a+b+c+d+e<4の関係式を満たす。)
    Figure 0006988317
    式(A3)および(A4)中、R31およびR41は、それぞれ独立に、炭素数1〜5のアルキレン基を表す。
    32およびR42は、それぞれ独立に、直鎖状もしくは分岐状の炭素数1〜30のアルキレン基、直鎖状もしくは分岐状の炭素数2〜30のアルケニレン基、または、直鎖状もしくは分岐状の炭素数2〜30のアルキニレン基を表す。R32が末端である場合、R32は、水素原子、直鎖状もしくは分岐状の炭素数1〜30のアルキル基、直鎖状もしくは分岐状の炭素数2〜30のアルケニル基、または、直鎖状もしくは分岐状の炭素数2〜30のアルキニル基を表す。R42が末端である場合、R42は、水素原子、直鎖状もしくは分岐状の炭素数1〜30のアルキル基、直鎖状もしくは分岐状の炭素数2〜30のアルケニル基、または、直鎖状もしくは分岐状の炭素数2〜30のアルキニル基を表す。
    33およびR43は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、直鎖状もしくは分岐状の炭素数1〜30のアルキル基、直鎖状もしくは分岐状の炭素数2〜30のアルケニル基、直鎖状もしくは分岐状の炭素数2〜30のアルキニル基、直鎖状もしくは分岐状の炭素数1〜30のアルキル基であって末端に水酸基もしくはカルボキシル基を有するもの、または、直鎖状もしくは分岐状の炭素数2〜30のアルケニル基であって末端に水酸基もしくはカルボキシル基を有するもの、を表す。
    32およびR33は、R32とR33とで環を形成していてもよい。
    42およびR43は、R42とR43とで環を形成していてもよい。
    34は、炭素数1〜13のアルキル基を表す。
    複数あるR31、R32、R33、R34、R41、R42およびR43はそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。
  4. 請求項1〜3のいずれか1項に記載のタイヤ用ゴム組成物をキャップトレッドに配置した空気入りタイヤ。
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