本発明に係る走行経路設定装置を用いた自動走行システムの実施形態を図面に基づいて説明する。
この自動走行システムは、図1に示すように、作業車両としてトラクタ1を適用しているが、トラクタ以外の、乗用田植機、コンバイン、乗用草刈機、ホイールローダ、除雪車等の乗用作業車両、及び、無人草刈機等の無人作業車両に適用することができる。
この自動走行システムは、図1及び図2に示すように、トラクタ1に搭載された自動走行ユニット2、及び、自動走行ユニット2と通信可能に通信設定された携帯通信端末3を備えている。携帯通信端末3には、タッチ操作可能な液晶パネル4等を有するタブレット型のパーソナルコンピュータやスマートフォン等を採用することができる。
図1に示すように、トラクタ1は、その後部に3点リンク機構5を介して、作業装置の一例であるロータリ耕耘装置6が昇降可能かつローリング可能に連結されることにより、ロータリ耕耘仕様に構成されている。トラクタ1の後部には、ロータリ耕耘装置6に代えて、プラウ、播種装置、散布装置、等の作業装置を連結することができる。
図1に示すように、トラクタ1には、駆動可能な操舵輪として機能する左右の前輪7、駆動可能な左右の後輪8、搭乗式の運転部を形成するキャビン9、コモンレールシステムを備えた電子制御式のディーゼルエンジン(以下、エンジンと称する)10が備えられている。また、トラクタ1には、図2に示すように、エンジン10からの動力を変速する電子制御式の変速装置11、左右の前輪7を操舵する全油圧式のパワーステアリング機構12、左右の後輪8を制動する左右のサイドブレーキ(図示せず)、左右のサイドブレーキの油圧操作を可能にする電子制御式のブレーキ操作機構13、ロータリ耕耘装置6への伝動を断続する作業クラッチ(図示せず)、作業クラッチの油圧操作を可能にする電子制御式のクラッチ操作機構14、ロータリ耕耘装置6を昇降駆動する電子油圧制御式の昇降駆動機構15、トラクタ1の自動走行等に関する各種の制御プログラム等を有する車載電子制御ユニット16、トラクタ1の車速を検出する車速センサ17、前輪7の操舵角を検出する舵角センサ18、及び、トラクタ1の現在位置及び現在方位を測定する測位ユニット19等が備えられている。
なお、エンジン10には、電子ガバナを備えた電子制御式のガソリンエンジンを採用してもよい。変速装置11には、油圧機械式無段変速装置(HMT)、静油圧式無段変速装置(HST)、または、ベルト式無段変速装置等を採用することができる。パワーステアリング機構12には、電動モータを備えた電動式のパワーステアリング機構12等を採用してもよい。
図1に示すように、キャビン9の内部には、パワーステアリング機構12を介した左右の前輪7の手動操舵を可能にするステアリングホイール20、及び、ユーザ用の座席21が備えられている。また、図示は省略するが、変速装置11の手動操作を可能にする変速レバー、左右のサイドブレーキの人為操作を可能にする左右のブレーキペダル、及び、ロータリ耕耘装置6の手動昇降操作を可能にする昇降レバー等が備えられている。
図2に示すように、車載電子制御ユニット16は、変速装置11の作動を制御する変速制御部16a、左右のサイドブレーキの作動を制御する制動制御部16b、ロータリ耕耘装置6の作動を制御する作業装置制御部16c、予め設定された自動走行用の目標走行経路P(例えば、図3参照)等を記憶する不揮発性の車載記憶部16d、及び、自動走行時に左右の前輪7の目標操舵角を設定してパワーステアリング機構12に出力する操舵角設定部16e、等を有している。
図1及び図2に示すように、測位ユニット19には、全地球航法衛星システム(GNSS:Global Navigation Satellite System)の一例であるGPS(Global Positioning System)を利用してトラクタ1の現在位置と現在方位とを測定する衛星航法装置22、及び、3軸のジャイロスコープ及び3方向の加速度センサ等を有してトラクタ1の姿勢や方位等を測定する慣性計測装置(IMU:Inertial Measurement Unit)23、等が備えられている。GPSを利用した測位方法には、DGPS(Differential GPS:相対測位方式)やRTK−GPS(Real Time Kinematic GPS:干渉測位方式)等がある。本実施形態においては、移動体の測位に適したRTK−GPSが採用されている。そのため、圃場周辺の既知位置には、RTK−GPSによる測位を可能にする基準局24が設置されている。
トラクタ1と基準局24とのそれぞれには、GPS衛星25から送信された電波を受信するGPSアンテナ26,27、及び、トラクタ1と基準局24との間における測位データを含む各種データの無線通信を可能にする通信モジュール28,29、等が備えられている。これにより、衛星航法装置22は、トラクタ側のGPSアンテナ26がGPS衛星25からの電波を受信して得た測位データと、基地局側のGPSアンテナ27がGPS衛星25からの電波を受信して得た測位データとに基づいて、トラクタ1の現在位置及び現在方位を高い精度で測定することができる。また、測位ユニット19は、衛星航法装置22と慣性計測装置23とを備えることにより、トラクタ1の現在位置、現在方位、姿勢角(ヨー角、ロール角、ピッチ角)を高精度に測定することができる。
図2に示すように、携帯通信端末3には、液晶パネル4等の作動を制御する各種の制御プログラム等を有する端末電子制御ユニット30、及び、トラクタ側の通信モジュール28との間における測位データを含む各種データの無線通信を可能にする通信モジュール31、等が備えられている。端末電子制御ユニット30は、トラクタ1を自動走行させるための走行案内用の目標走行経路P(例えば、図3参照)を設定する走行経路設定部32、及び、ユーザが入力した各種の入力データや走行経路設定部32が設定した目標走行経路P等を記憶する不揮発性の端末記憶部33、等を有している。
走行経路設定部32は、走行領域S内に目標走行経路P(例えば、図3参照)を設定しており、目標走行経路Pの設定の仕方については後述する。走行経路設定部32にて設定された目標走行経路Pは、液晶パネル4に表示可能であり、車体データ及び圃場データ等と関連付けた経路データとして端末記憶部33に記憶されている。経路データには、目標走行経路Pの方位角、及び、目標走行経路Pでのトラクタ1の走行形態等に応じて設定された目標エンジン回転数や目標車速、等が含まれている。
このようにして、走行経路設定部32が目標走行経路Pを設定すると、端末電子制御ユニット30が、携帯通信端末3からトラクタ1に経路データを転送することで、トラクタ1の車載電子制御ユニット16が、経路データを取得することができる。車載電子制御ユニット16は、取得した経路データに基づいて、測位ユニット19にて自己の現在位置(トラクタ1の現在位置)を取得しながら、目標走行経路Pに沿ってトラクタ1を自動走行させることができる。測位ユニット19にて取得するトラクタ1の現在位置については、リアルタイム(例えば、数秒周期)でトラクタ1から携帯通信端末3に送信されており、携帯通信端末3にてトラクタ1の現在位置を把握している。
経路データの転送に関しては、トラクタ1が自動走行を開始する前の段階において、経路データの全体を端末電子制御ユニット30から車載電子制御ユニット16に一挙に転送することができる。また、例えば、目標走行経路Pを含む経路データを、データ量の少ない所定距離ごとの複数の経路部分に分割することもできる。この場合には、トラクタ1が自動走行を開始する前の段階においては、経路データの初期経路部分のみが端末電子制御ユニット30から車載電子制御ユニット16に転送され、自動走行の開始後は、トラクタ1がデータ量等に応じて設定された経路取得地点に達するごとに、その地点に対応する以後の経路部分のみの経路データが端末電子制御ユニット30から車載電子制御ユニット16に転送するようにしてもよい。
トラクタ1の自動走行を開始する場合には、例えば、ユーザがスタート地点にトラクタ1を移動させて、各種の自動走行開始条件が満たされると、携帯通信端末3にて、ユーザが液晶パネル4を操作して自動走行の開始を指示することで、携帯通信端末3は、自動走行の開始指示をトラクタ1に送信する。これにより、トラクタ1では、車載電子制御ユニット16が、自動走行の開始指示を受けることで、測位ユニット19にて自己の現在位置(トラクタ1の現在位置)を取得しながら、目標走行経路Pに沿ってトラクタ1を自動走行させる自動走行制御を開始する。
自動走行制御には、変速装置11の作動を自動制御する自動変速制御、ブレーキ操作機構13の作動を自動制御する自動制動制御、左右の前輪7を自動操舵する自動操舵制御、及び、ロータリ耕耘装置6の作動を自動制御する作業用自動制御、等が含まれている。
自動変速制御においては、変速制御部16aが、目標車速を含む目標走行経路Pの経路データと測位ユニット19の出力と車速センサ17の出力とに基づいて、目標走行経路Pでのトラクタ1の走行形態等に応じて設定された目標車速がトラクタ1の車速として得られるように変速装置11の作動を自動制御する。
自動制動制御においては、制動制御部16bが、目標走行経路Pと測位ユニット19の出力とに基づいて、目標走行経路Pの経路データに含まれている制動領域において左右のサイドブレーキが左右の後輪8を適正に制動するようにブレーキ操作機構13の作動を自動制御する。
自動操舵制御においては、トラクタ1が目標走行経路Pを自動走行するように、操舵角設定部16eが、目標走行経路Pの経路データと測位ユニット19の出力とに基づいて左右の前輪7の目標操舵角を求めて設定し、設定した目標操舵角をパワーステアリング機構12に出力する。パワーステアリング機構12が、目標操舵角と舵角センサ18の出力とに基づいて、目標操舵角が左右の前輪7の操舵角として得られるように左右の前輪7を自動操舵する。
作業用自動制御においては、作業装置制御部16cが、目標走行経路Pの経路データと測位ユニット19の出力とに基づいて、トラクタ1が作業経路P1(例えば、図3参照)の始端等の作業開始地点に達するのに伴ってロータリ耕耘装置6による耕耘が開始され、かつ、トラクタ1が作業経路P1(例えば、図3参照)の終端等の作業終了地点に達するのに伴ってロータリ耕耘装置6による耕耘が停止されるように、クラッチ操作機構14及び昇降駆動機構15の作動を自動制御する。
このようにして、トラクタ1においては、変速装置11、パワーステアリング機構12、ブレーキ操作機構13、クラッチ操作機構14、昇降駆動機構15、車載電子制御ユニット16、車速センサ17、舵角センサ18、測位ユニット19、及び、通信モジュール28、等によって自動走行ユニット2が構成されている。
この実施形態では、キャビン9にユーザ等が搭乗せずにトラクタ1を自動走行させるだけでなく、キャビン9にユーザ等が搭乗した状態でトラクタ1を自動走行させることも可能となっている。よって、キャビン9にユーザ等が搭乗せずに、車載電子制御ユニット16による自動走行制御により、トラクタ1を目標走行経路Pに沿って自動走行させることができるだけでなく、キャビン9にユーザ等が搭乗している場合でも、車載電子制御ユニット16による自動走行制御により、トラクタ1を目標走行経路Pに沿って自動走行させることができる。
キャビン9にユーザ等が搭乗している場合には、車載電子制御ユニット16にてトラクタ1を自動走行させる自動走行状態と、ユーザ等の運転操作に基づいてトラクタ1を走行させる手動走行状態とに切り替えることもできる。よって、自動走行状態にて目標走行経路Pを自動走行している途中に、自動走行状態から手動走行状態に切り替えることができ、逆に、手動走行状態にて走行している途中に、手動走行状態から自動走行状態に切り替えることもできる。手動走行状態と自動走行状態との切り替えについては、例えば、座席21の近傍に、自動走行状態と手動走行状態とに切り替えるための切替操作部を備えることができるとともに、その切替操作部を携帯通信端末3の液晶パネル4に表示させることもできる。また、車載電子制御ユニット16による自動走行制御中に、ユーザがステアリングホイール20を操作すると、自動走行状態から手動走行状態に切り替えることができる。
以下、走行経路設定部32による目標走行経路Pの設定について説明する。
走行経路設定部32が目標走行経路Pを設定するに当たり、携帯通信端末3の液晶パネル4に表示された目標走行経路設定用の入力案内に従って、ユーザが作業車両や作業装置の種類や機種等の車体データを入力しており、入力された車体データが端末記憶部33に記憶されている。目標走行経路Pの設定対象となる走行領域Sを圃場としており、携帯通信端末3の端末電子制御ユニット30は、圃場の形状や位置を含む圃場データを取得して端末記憶部33に記憶している。
圃場データの取得について説明すると、ユーザ等が運転操作してトラクタ1を実際に走行させることで、端末電子制御ユニット30は、測位ユニット19にて取得するトラクタ1の現在位置等から圃場の形状や位置等を特定するための位置情報を取得することができる。端末電子制御ユニット30は、取得した位置情報から圃場の形状及び位置を特定し、その特定した圃場の形状及び位置を含む圃場データを取得している。
例えば、トラクタ1が圃場の外周部を周回走行するように、ユーザ等がトラクタ1を運転操作して、圃場の角部に相当する地点等にトラクタ1を位置させる。これにより、端末電子制御ユニット30は、測位ユニット19の出力に基づいて、圃場の角部に相当する地点等の位置情報を取得しており、複数の地点の位置情報から圃場の形状を特定し、その特定した圃場を走行領域Sとして設定している。図3では、矩形状の走行領域Sが特定された例を示している。圃場の位置については、例えば、圃場の出入口等にトラクタ1を位置させたときに、端末電子制御ユニット30が、測位ユニット19にて取得するトラクタ1の現在位置から圃場の位置を特定している。
特定された圃場の形状や位置等を含む圃場データが端末記憶部33に記憶されると、走行経路設定部32は、端末記憶部33に記憶されている圃場データや車体データを用いて、目標走行経路Pを設定する。目標走行経路Pを設定するために、図2に示すように、端末電子制御ユニット30は、走行領域S内にトラクタ1が所定の作業(例えば、耕耘等の作業)を行うための作業領域Rを設定する作業領域設定部34、及び、目標走行経路Pを設定する走行経路設定部32、等を有している。
図3に示すように、作業領域設定部34にて設定する作業領域Rは、トラクタ1を自動走行させながら、所定の作業(例えば、耕耘等の作業)を行う領域となっている。作業領域設定部34は、例えば、車体データに含まれる旋回半径やトラクタ1の前後幅及び左右幅等から、トラクタ1を旋回走行させるために必要となる旋回走行用のスペースや、トラクタ1が走行領域S外に飛び出す等の障害がないように確保すべき安全用のスペース等を求めている。作業領域設定部34は、図3に示すように、走行領域Sの外周部の内側に求めたスペース分を確保する状態で、走行領域Sの内側に作業領域Rを設定している。
作業領域設定部34にて作業領域Rを設定した上で、走行経路設定部32は、図3に示すように、車体データや圃場データ等を用いて、目標走行経路Pを設定している。例えば、目標走行経路Pは、同じ直進距離を有して作業幅に対応する一定距離をあけて平行に配置設定された複数の作業経路P1と、隣接する作業経路P1の始端と終端とに亘る転回経路P2とを有している。複数の作業経路P1は、トラクタ1を自動走行させながら、所定の作業を行うための経路であり、図3に示すものでは、トラクタ1を前進させる直線状の経路が例示されている。転回経路P2は、トラクタ1の走行方向を転換させるための経路であり、作業経路P1の終端と隣接する次の作業経路P1の始端とを連結している。図3に示すものでは、転回経路P2が、トラクタ1の走行方向を180度転換させるために、トラクタ1を旋回走行させるUターン経路が例示されている。このようにして、隣接する作業経路P1同士は、走行方向がお互いに反対側となるように設定されており、トラクタ1が、複数の作業経路P1を往復走行しながら、所定の作業を行う目標走行経路Pが設定されている。ちなみに、図3に示す目標走行経路Pは、あくまで一例であり、どのような目標走行経路を設定するかは適宜変更が可能である。
走行経路設定部32にて目標走行経路Pを設定するに当たり、走行領域S内に障害物C(図4参照)が存在すると、障害物Cに対してトラクタ1をどのように走行させるか等、障害物Cに対する対処方法を取ることが求められる。そこで、図2に示すように、端末電子制御ユニット30には、目標走行経路Pにおいて障害物Cの存在位置に相当する部位に対して、障害物用の障害物走行モードを設定する障害物走行モード設定部35が備えられている。
障害物Cとしては、例えば、鉄塔、砂利、ぬかるみ等の各種のものが考えられる。鉄塔や砂利は、トラクタ1の衝突や作業装置の故障等を招く可能性があるので、障害物Cを回避して走行する必要のある障害物である。それに対して、障害物Cがぬかるみであると、トラクタ1の走行自体が行えないような深いぬかるみであれば、障害物Cを回避して走行する必要があるが、ぬかるみの程度によっては障害物Cを回避して走行する必要が無いものもある。例えば、走行速度を落とせば所定の作業を行いながら走行可能なぬかるみや、ユーザ等の運転操作に委ねて走行すべきぬかるみ等がある。このように、障害物Cといっても、障害の度合い等が同じではなく、複数種の障害物Cが存在する。
そこで、例えば、障害物Cの種類を、回避して走行する必要性がある第1障害物C1と、トラクタ1の車速を制限すればトラクタ1が所定の作業を行いながら走行可能な第2障害物C2と、トラクタ1をどのように走行させるかをユーザ等の運転操作に委ねる第3障害物C3との3種類に分けている。図4では、走行領域S内において、第1障害物C1と第2障害物C2と第3障害物C3が存在する場合を示している。
障害物用の障害物走行モードとして、障害物Cの種類に応じて、走行形態が異なる複数種の障害物走行モードが備えられ、例えば、障害物Cの種類と同数の障害物走行モードが有している。第1障害物C1に対応する障害物走行モード(図4中、左側参照)は、第1障害物C1を回避する回避経路P3に沿ってトラクタ1を自動走行させる走行形態を取る回避経路モードとしている。第2障害物C2に対応する障害物走行モード(図4中、中央側参照)は、車速を制限する状態で目標走行経路Pに沿ってトラクタ1を自動走行させる走行形態を取る車速制限モードとしている。第3障害物C3に対応する障害物走行モード(図4中、右側参照)は、自動走行を解除して手動操作による走行に切り替えてトラクタ1を走行させる走行形態を取る手動切替モードとしている。回避経路モードは、回避経路P3を走行させるモードとなっているが、車速制限モードと手動切替モードとは、回避経路P3を走行させない非回避経路モードとなっている。
このように、障害物Cの種類に応じた複数種の障害物走行モードを有するので、障害物走行モード設定部35は、目標走行経路Pにおいて障害物Cの存在位置に相当する部位に対して、複数種の障害物走行モードから選択した1つの障害物走行モードを設定している。走行経路設定部32にて設定された目標走行経路Pは、端末電子制御ユニット30により液晶パネル4に表示されており、目標走行経路Pが表示された液晶パネル4に対して、障害物Cの存在位置、及び、複数種の障害物走行モードのうち、どの障害物走行モードを選択するかをユーザ等が入力可能となっている。障害物走行モード設定部35は、ユーザ等の入力情報に基づいて、目標走行経路Pにおいて障害物Cの存在位置に相当する部位に対して、複数種の障害物走行モードから選択した1つの障害物走行モードを設定している。
障害物Cの存在位置の入力については、例えば、障害物Cの存在位置に対する隣接箇所等にトラクタ1を位置させることで、端末電子制御ユニット30が、測位ユニット19の出力により障害物Cの存在位置に対する隣接箇所等の位置情報を取得して、その位置情報を液晶パネル4に表示可能としている。これにより、ユーザ等は、液晶パネル4の画面上において、取得した隣接箇所等の位置情報に基づいて、障害物Cの存在位置を特定し、その特定した障害物Cの存在位置を入力することができる。また、障害物Cの存在位置に対する隣接箇所等の位置情報を取得しなくても、ユーザ等の目視等により、走行領域S内の障害物Cの存在位置を特定し、その特定した障害物Cの存在位置を液晶パネル4に入力することもできる。
障害物走行モードの選択については、例えば、ユーザ等の目視により、障害物Cがどの種類の障害物Cであるかを判断することができ、その判断結果に基づいて、障害物走行モードを選択することができる。例えば、鉄塔等、回避して走行する必要性のある第1障害物C1であれば、ユーザ等が回避経路モードを選択することができる。また、ぬかるみであれば、ユーザ等は、そのぬかるみの程度によって第2障害物C2であるか第3障害物C3であるかを判断して、車速制限モード又は手動切替モードを選択することができる。
上述の如く、障害物走行モード設定部35は、ユーザ等の入力情報に基づいて、複数種の障害物走行モードから選択した障害物走行モードを設定しているが、ユーザ等の入力情報によらず、複数種の障害物走行モードから自動的に選択した障害物走行モードを設定することもできる。
例えば、ユーザ等の運転操作によりトラクタ1を走行領域S内で走行させたときに、端末電子制御ユニット30は、トラクタ1に備えられた各種のセンサの出力等に基づいて、トラクタ1がスリップしているか否か等、トラクタ1の走行状態を取得することができる。また、端末電子制御ユニット30が、測位ユニット19の出力に基づいて、トラクタ1の位置情報を取得できるので、トラクタ1の位置情報とその位置情報を取得したタイミングでのトラクタ1の走行状態とを関連付けることで、走行領域S内のどの位置でトラクタ1がどのような走行状態であるかを認識することができる。これにより、障害物走行モード設定部35は、取得したトラクタ1の走行状態、及び、関連付けられた位置情報に基づいて、目標走行経路Pにおいて障害物Cの存在位置に相当する部位に対して、複数種の障害物走行モードから1つの障害物走行モードを選択し、その選択した障害物走行モードを設定することができる。例えば、障害物走行モード設定部35は、取得したトラクタ1の走行状態からトラクタ1のスリップ率が最大許容率以上となり、トラクタ1の走行自体が行い難いぬかるみ等の第1障害物C1であると判別すると、回避経路モードを選択して設定することができる。車速制限モード及び手動切替モードについても、どのようなスリップ率であれば車速制限モード又は手動切替モードを選択するかの関係を予め設定しておくことで、障害物走行モード設定部35は、取得したトラクタ1の走行状態からトラクタ1のスリップ率を取得すると、そのスリップ率、及び、予め設定した関係を用いて、車速制限モード又は手動切替モードを選択して設定することができる。
また、トラクタ1に、圃場の状況等を撮像するカメラ等の撮像装置を備えることで、ユーザ等の運転操作によりトラクタ1を走行領域S内で走行させたときに、端末電子制御ユニット30は、撮像装置の撮像情報から、圃場の状況を取得することができる。このときも、端末電子制御ユニット30が、測位ユニット19の出力に基づいて、トラクタ1の位置情報を取得できるので、トラクタ1の位置情報とその位置情報を取得したタイミングでの撮像装置の撮像情報とを関連付けることで、走行領域S内のどの位置でどの撮像情報を得られたのかを認識することができる。これにより、障害物走行モード設定部35は、取得した撮像情報、及び、関連付けられた位置情報に基づいて、圃場(走行領域S)内のどの位置がどのような状況であるかを判別することができる。よって、障害物走行モード設定部35は、目標走行経路Pにおいて障害物Cの存在位置に相当する部位に対して、判別結果である圃場の状況に応じて複数種の障害物走行モードから1つの障害物走行モードを選択し、その選択した障害物走行モードを設定することができる。
障害物走行モードの設定について、図4、及び、図5のフローチャートに基づいて説明を加える。
まず、走行経路設定部32にて目標走行経路Pが設定された上で、障害物走行モード設定部35は、ユーザ等の入力情報等に基づいて、走行領域S内に障害物Cが存在するか否かを判定している(ステップ#1、#2)。
障害物走行モード設定部35は、走行領域S内に障害物Cが存在すると判定すると、ユーザ等の入力情報等に基づいて、その障害物Cがどの種類の障害物Cであるか等の判定を行い、複数種の障害物走行モードから1つの障害物走行モードを選択して設定している(ステップ#2のYesの場合、ステップ#3)。
図4に示すように、走行領域Sの左側に第1障害物C1が存在する場合には、障害物走行モード設定部35が、第1障害物C1の存在位置に対応する作業経路P1の一部に、回避経路モードを設定している。回避経路モードでは、障害物走行モード設定部35が、第1障害物C1を回避するための回避経路P3を生成している(ステップ#4のYesの場合、ステップ#5)。回避経路P3は、図4に示すように、第1障害物C1の横幅方向の端部から所定距離だけ離れた位置に作業経路P1に平行な直線状の平行部位P3aと、その平行部位P3aの経路長さ方向の端部と作業経路P1の端部とを接続する湾曲状の接続部位P3bとを有している。ちなみに、所定距離は、トラクタ1の最小旋回半径やトラクタ1の左右幅等を用いて設定することができる。
また、障害物走行モード設定部35は、図4に示すように、回避経路P3を生成するのに合わせて、所定の作業を行わない状態でトラクタ1を自動走行させる非作業領域Vを第1障害物C1の存在位置に対応して設定している。障害物走行モード設定部35は、非作業領域Vを設定するに当たり、非作業領域Vの開始地点W1及び終了地点W2を作業経路P1や回避経路P3上に設定している。図4に示すものでは、非作業領域Vが、回避経路P3に加えて、作業経路P1の並び方向で回避経路P3に隣接する作業経路P1(図4中、一番左側の作業経路P1及び左から四番目に位置する作業経路P1)の一部を含む状態で設定されている例を示している。これにより、作業経路P1の並び方向で回避経路P3に隣接する作業経路P1に沿ってトラクタ1を自動走行させる途中に、所定の作業を行わずにトラクタ1を自動走行させることになる。
図4に示すように、走行領域Sの中央側に第2障害物C2が存在する場合には、障害物走行モード設定部35が、第2障害物C2の存在位置に対応する作業経路P1の一部に、車速制限モードを設定している。車速制限モードでは、障害物走行モード設定部35が、第2障害物C2の存在位置に対応する作業経路P1の一部に対して、車速制限領域Tを設定している(ステップ#6のYesの場合、ステップ#7)。
障害物走行モード設定部35は、図4に示すように、第2障害物C2の存在位置を基準として、第2障害物C2の外周部を囲む状態で第2障害物C2よりも大きな領域を車速制限領域Tとして設定し、車速制限領域Tの開始地点T1及び終了地点T2を作業経路P1上に設定している。そして、障害物走行モード設定部35は、目標走行経路Pのうち、車速制限領域Tに含まれる経路(作業経路P1)を、トラクタ1の車速を所定車速以下に制限する車速制限用経路P4に設定している。所定車速については、経路データに含まれる目標車速に対して所定車速だけ減速させた速度を所定車速として自動的に設定したり、ユーザ等の操作により自由に所定車速を設定することもできる。
障害物走行モード設定部35は、障害物走行モードを設定するだけでなく、トラクタ1の車速が所定車速以下に制限される旨をユーザ等に報知する所定の報知作動を行う車速制限用の報知領域を、目標走行経路Pにおいて第2障害物C2の存在位置に相当する部位に対して設定している(ステップ#7)。例えば、図4に示すように、障害物走行モード設定部35は、車速制限領域Tと同じ領域を報知領域として設定することができる。また、例えば、障害物走行モード設定部35は、車速制限領域Tに加えて、車速制限領域Tよりも作業経路P1の手前箇所を含む領域を報知領域として設定することもでき、どのような領域を報知領域として設定するかは適宜変更が可能である。
図4に示すように、走行領域Sの右側に第3障害物C3が存在する場合には、障害物走行モード設定部35が、第3障害物C3の存在位置に対応する作業経路P1の一部に、手動切替モードを設定している。手動切替モードでは、障害物走行モード設定部35が、第2障害物C2の存在位置に対応する作業経路P1の一部に対して、手動切替領域Uを設定している(ステップ#8のYesの場合、ステップ#9)。
例えば、障害物走行モード設定部35は、目標走行経路Pのうち、手動切替領域Uに含まれる経路(作業経路P1)を、トラクタ1の自動走行を解除してユーザ等による手動操作による走行に切り替える手動切替用経路P5に設定可能としている。手動切替領域Uの開始地点U1及び終了地点U2は、作業経路P1上に設定されている。
障害物走行モード設定部35は、車速制限モードを選択して設定する場合と同様に、トラクタ1の走行が自動走行から手動走行に切り替えられる旨をユーザ等に報知する所定の報知作動を行う手動切替用の報知領域を、目標走行経路Pにおいて第3障害物C3の存在位置に相当する部位に対して設定している(ステップ#9)。例えば、図4に示すように、障害物走行モード設定部35は、手動切替領域Uと同じ領域を報知領域として設定することができる。また、例えば、障害物走行モード設定部35は、手動切替領域Uの開始地点U1だけを報知領域として設定することもでき、どのような領域を報知領域として設定するかは適宜変更が可能である。
このようにして、走行経路設定部32にて目標走行経路Pを設定する際に、走行領域S内に障害物Cが存在すると、目標走行経路Pにおいて障害物Cの存在位置に相当する部位に対して、障害物走行モード設定部35にて複数種の障害物走行モードから選択された1つの障害物走行モード(回避経路モード、車速制限モード、手動切替モードのいずれか)が選択されている。これにより、トラクタ1の自動走行制御を行う際には、目標走行経路Pにおいて障害物Cの存在位置に相当する部位を走行するときに、設定された障害物走行モードの走行形態を取るように、トラクタ1の走行が制御される。
トラクタ1の自動走行制御について、図4、及び、図6のフローチャートに基づいて説明を加える。
基本的には、車載電子制御ユニット16が、経路データに基づいて目標走行経路Pに沿ってトラクタ1を自動走行させるように、自動走行制御を行う(ステップ#11)。そして、目標走行経路Pの一部に障害物走行モードが設定されていると、その障害物走行モードの走行形態を取るようにトラクタ1の走行が制御される。
図4の左側に示すように、目標走行経路Pにおいて、第1障害物C1に対応する回避経路モードが設定されている部位を走行するときには、車載電子制御ユニット16が、回避経路P3に沿ってトラクタ1を自動走行させるように、自動走行制御を行う(ステップ#12のYesの場合、ステップ#13)。
車載電子制御ユニット16は、トラクタ1が回避経路P3の開始地点である非作業領域Vの開始地点W1に到達すると、ロータリ耕耘装置6を上昇させてロータリ耕耘装置6の作動を停止させることで、ロータリ耕耘装置6による耕耘等の所定の作業を停止するように、作業装置制御部16cによってクラッチ操作機構14及び昇降駆動機構15を制御している。よって、車載電子制御ユニット16は、所定の作業を停止した状態で回避経路P3に沿ってトラクタ1が自動走行するように、自動走行制御を行っている。
そして、車載電子制御ユニット16は、トラクタ1が回避経路P3に沿って自動走行することで、回避経路P3の終了地点である非作業領域Vの終了地点W2に到達すると、ロータリ耕耘装置6を下降させてロータリ耕耘装置6を作動させることで、ロータリ耕耘装置6による耕耘等の所定の作業を再開させるように、作業装置制御部16cによってクラッチ操作機構14及び昇降駆動機構15を制御している。このようにして、回避経路P3に沿う自動走行が終了すると、車載電子制御ユニット16は、所定の作業を行う状態で作業経路P1に沿ってトラクタ1を自動走行させるように、自動走行制御を行っている。
ここで、図4に示すものでは、非作業領域Vが、作業経路P1の並び方向で回避経路P3に隣接する作業経路P1(図4中、一番左側の作業経路P1及び左から四番目に位置する作業経路P1)の一部を含む状態で設定されている。そこで、所定の作業を行う状態で作業経路P1に沿ってトラクタ1を自動走行させている途中に、トラクタ1が非作業領域Vの開始地点W1に到達すると、ロータリ耕耘装置6を上昇させてロータリ耕耘装置6の作動を停止させることで、ロータリ耕耘装置6による耕耘等の所定の作業を停止するように、作業装置制御部16cによってクラッチ操作機構14及び昇降駆動機構15を制御している。よって、車載電子制御ユニット16は、所定の作業を停止した状態で作業経路P1に沿ってトラクタ1が自動走行するように、自動走行制御を行うことになる。そして、トラクタ1が非作業領域Vの終了地点W2に到達すると、ロータリ耕耘装置6を下降させてロータリ耕耘装置6を作動させることで、ロータリ耕耘装置6による耕耘等の所定の作業を再開させるように、作業装置制御部16cによってクラッチ操作機構14及び昇降駆動機構15を制御している。このようにして、作業経路P1であっても、非作業領域V内であれば、所定の作業を停止した状態で作業経路P1に沿ってトラクタ1を自動走行させている。
図4の中央側に示すように、目標走行経路Pにおいて、第2障害物C2に対応する車速制限モードが設定されている部位を走行するときには、車速制限モード用の報知領域内にトラクタ1が位置すると、端末電子制御ユニット30や車載電子制御ユニット16等が所定の報知作動を行う(ステップ#14のYesの場合、ステップ#15)。所定の報知作動としては、例えば、端末電子制御ユニット30が、液晶パネル4にてトラクタ1の車速が所定車速以下に制限される内容の表示を行う。また、車載電子制御ユニット16が、トラクタ1の表示部(図示省略)にてトラクタ1の車速が所定車速以下に制限される内容の表示を行うとともに、トラクタ1の報知ブザー等を作動させるようにしている。このようにして、報知作動を行う報知部として、端末電子制御ユニット30、液晶パネル4、車載電子制御ユニット16、トラクタ1の表示部、トラクタ1の報知ブザー等が備えられている。
図4に示すように、測位ユニット19にて出力されるトラクタ1の現在位置が車速制限領域Tの開始地点T1に到達すると、車載電子制御ユニット16が、トラクタ1の車速を、経路データに含まれる目標車速から所定車速以下に制限している(ステップ#16)。車載電子制御ユニット16は、トラクタ1の車速を所定車速以下に制限するとともに、所定の作業を行う状態で、作業経路P1に沿ってトラクタ1が自動走行するように、自動走行制御を行っている。測位ユニット19にて出力されるトラクタ1の現在位置が車速制限領域Tの終了地点T2に到達すると、車載電子制御ユニット16が、トラクタ1の車速を、所定車速以下から経路データに含まれる目標車速に復帰させており、車速制限領域Tから引き続いて作業経路P1に沿ってトラクタ1が自動走行するように、自動走行制御を行っている。これにより、トラクタ1は、車速を制限する状態で自動走行しながら所定の作業を行うことができるので、第2障害物C2に適した対処方法を取りながら、トラクタ1の自動走行を行うことができる。
図4の右側に示すように、目標走行経路Pにおいて、第3障害物C3に対応する手動切替モードが設定されている部位を走行するときには、車速制限モード用の報知領域内にトラクタ1が位置すると、端末電子制御ユニット30や車載電子制御ユニット16等が所定の報知作動を行う(ステップ#17のYesの場合、ステップ#18)。所定の報知作動としては、例えば、端末電子制御ユニット30が、液晶パネル4にてトラクタ1の走行が自動走行から手動走行に切り替えられる内容の表示を行う。また、車載電子制御ユニット16が、トラクタ1の表示部(図示省略)にてトラクタ1の走行が自動走行から手動走行に切り替えられる内容の表示を行うとともに、トラクタ1の報知ブザー等を作動させるようにしている。
測位ユニット19にて出力されるトラクタ1の現在位置が手動切替領域Uの開始地点U1に到達すると、車載電子制御ユニット16が、トラクタ1を走行停止させて、自動走行制御を解除(中断)させ、ユーザ等の運転操作によるトラクタ1の走行を可能としている(ステップ#19)。これにより、ユーザ等の運転操作によって、手動切替領域Uの開始地点U1から終了地点U2へのトラクタ1の走行が可能となる。
例えば、図4に示すように、ユーザ等の運転操作によって、トラクタ1を所定の作業を行わない状態で手動切替用経路P5に沿って走行させることが可能である。また、ユーザ等の運転操作によって、トラクタ1を第3障害物C3を回避して手動切替領域Uの開始地点U1から終了地点U2へ走行させることも可能である。このように、手動切替領域Uでは、トラクタ1を開始地点U1から終了地点U2へ走行させるために、どのような走行形態を取るかをユーザ等の判断に委ねている。ユーザ等の運転操作によりトラクタ1が手動切替領域Uの終了地点U2に移動されると、ユーザが液晶パネル4等を操作して自動走行の再開を指示することで、車載電子制御ユニット16が、作業経路P1に沿ってトラクタ1を自動走行させる自動走行制御を再開する。これにより、トラクタ1は、ユーザ等の判断にてトラクタ1を走行させることができるので、第3障害物C3を適した対処方法を取りながら、トラクタ1の走行を行うことができる。
図4に示すものでは、障害物Cを、第1障害物C1と第2障害物C2と第3障害物C3との3種類とし、障害物走行モードについても、回避経路モード、車速制限モード、手動切替モードの3種類を備えたものを例示したが、障害物Cの種類を何種類にするかは適宜変更が可能であり、障害物Cの種類の数に応じて、障害物走行モードを備える数も変更可能である。
第1障害物C1と第2障害物C2と第3障害物C3との3種類以外の障害物Cとして、例えば、所定の作業を行うことができないが、走行だけは可能な砂利やぬかるみ等の障害物Cもある。このような障害物Cに対応する障害物走行モードとして、所定の作業を行わない状態で目標走行経路Pに沿ってトラクタ1を自動走行させる障害物走行モードを備えることができる。この障害物走行モードを選択して設定する場合には、障害物走行モード設定部35が、図4の非作業領域Vと同様に、所定の作業を行わない状態で目標走行経路Pに沿ってトラクタ1を自動走行させる非作業領域を設定することができる。そして、自動走行制御では、設定された非作業領域にトラクタ1が到達すると、所定の作業を行わない状態で目標走行経路Pに沿ってトラクタ1を自動走行させる。
所定の作業を行うことができないが、走行だけは可能である障害物Cにおいて、車速を制限した方が良い場合もある。この場合には、障害物走行モードとして、所定の作業を行わず、且つ、車速を制限する状態で目標走行経路Pに沿ってトラクタ1を自動走行させる障害物走行モードを備えることができる。
また、トラクタ1の自動走行の障害とはならないが、走行路面の状況が悪い悪路となっている場合も障害物Cに含めることができる。このような障害物Cに対応する障害物走行モードとして、悪路である旨を報知する報知作動を行う状態で目標走行経路Pに沿ってトラクタ1を自動走行させる障害物走行モードを備えることができる。この障害物走行モードを選択して設定する場合には、障害物走行モード設定部35が、車速制限モードや手動切替モードと同様に、悪路である旨を報知する報知作動を行う状態で目標走行経路Pに沿ってトラクタ1を自動走行させる領域を設定することができる。そして、自動走行制御では、設定された領域にトラクタ1が到達すると、報知作動を行う状態で目標走行経路Pに沿ってトラクタ1を自動走行させる。
上述の如く、障害物走行モード設定部35により障害物走行モードの設定を行うが、図2に示すように、障害物走行モード設定部35による障害物走行モードの設定を解除させる障害物走行モード解除部36が備えられている。例えば、図4の左側に示すように、障害物走行モード設定部35が回避経路モードを設定している場合には、第1障害物C1を回避する回避経路P3をトラクタ1が自動走行するので、作業経路P1からその横幅方向に大きく外れた位置まで回避することになり、走行距離が長くなる等の不利を生じる可能性がある。また、第1障害物C1の存在位置に対応して非作業領域Vを設定することで、所定の作業を行うことができない領域が大きくなる可能性もある。よって、ユーザ等は、障害物走行モード設定部35による障害物走行モードの設定を解除させたい場合があり、その要望に応えるべく、障害物走行モード解除部36が備えられている。
障害物走行モード設定部35による障害物走行モードの設定を解除させるか否かについては、ユーザ等が選択することができる。そこで、障害物走行モード設定部35による障害物走行モードの設定を解除させたい場合には、ユーザ等が液晶パネル4等により解除用の入力操作を行うと、障害物走行モード解除部36は、ユーザ等による解除用の入力操作に基づいて、障害物走行モード設定部35による障害物走行モードの設定を解除させている。例えば、自動走行を開始する前にユーザ等が解除用の入力操作を行えば、自動走行を開始する前に障害物走行モード設定部35による障害物走行モードの設定を解除させることができる。また、自動走行中であっても、ユーザ等が解除用の入力操作を行えば、障害物走行モード設定部35による障害物走行モードの設定を解除させることができる。
障害物走行モード解除部36が障害物走行モード設定部35による障害物走行モードの設定を解除させている場合には、車載電子制御ユニット16が、目標走行経路Pに沿ってトラクタ1が自動走行するように、自動走行制御を行う。このときの自動走行制御でのトラクタ1の車速は、経路データに含まれる目標車速になるようにしている。
〔別実施形態〕
本発明の他の実施形態について説明する。
尚、以下に説明する各実施形態の構成は、それぞれ単独で適用することに限らず、他の実施形態の構成と組み合わせて適用することも可能である。
(1)作業車両の構成は種々の変更が可能である。
例えば、作業車両は、エンジン10と走行用の電動モータとを備えるハイブリット仕様に構成されていてもよく、また、エンジン10に代えて走行用の電動モータを備える電動仕様に構成されていてもよい。
例えば、作業車両は、左右の後輪8に代えて左右のクローラを備えるセミクローラ仕様に構成されていてもよい。
例えば、作業車両は、左右の後輪8が操舵輪として機能する後輪ステアリング仕様に構成されていてもよい。
(2)上記実施形態では、障害物走行モードとして、回避経路モード、車速制限モード、手動切替モード等、トラクタ1の走行形態が異なる複数種の障害物走行モードを備えた例を示したが、例えば、所定の作業を行うか否か、作業装置をどのように作動させるか等、作業形態が異なる複数種の障害物走行モードを備えることもでき、どのような障害物モードを備えるか、また、障害物走行モードの数については適宜変更が可能である。
例えば、図1に示すように、作業装置としてロータリ耕耘装置6を備える場合には、異なる作業形態を取る複数種の障害物走行モードとして、耕耘深さが異なる作業形態を取る複数種の障害物走行モードや、ロータリ耕耘装置6の回転速度が異なる作業形態を取る複数種の障害物走行モード等を備えることができる。
(3)上記実施形態では、図4に示すように、走行領域S内に、第1障害物C1と第2障害物C2と第3障害物C3とが存在する場合を例示しているが、走行領域S内に、いくつの障害物Cが存在するか、どのような位置に障害物Cが存在するかは、圃場等の条件によって異なるので、障害物走行モードの設定の仕方については、図4に示したものに限るものではない。
(4)上記実施形態では、走行経路設定部32や障害物走行モード設定部35等を端末電子制御ユニット30に備え、本発明に係る走行経路設定装置を携帯通信端末3に備えた場合を例示しているが、走行経路設定装置をどのような機器や装置に備えるかは適宜変更が可能である。例えば、走行経路設定部32や障害物走行モード設定部35等を車載電子制御ユニット16に備え、走行経路設定装置をトラクタ1に備えることもできる。また、走行経路設定部32や障害物走行モード設定部35等を含む走行経路設定装置を、各種の情報を携帯通信端末3やトラクタ1と通信自在な外部の管理サーバ等に備えることもできる。