本発明の樹脂発泡シートの巻回体(以下、単に「本発明の巻回体」と称する場合がある)は、下記式(1)より求められる値が150%以下である。
(圧縮応力公差)/(圧縮応力の中心値)×100 (1)
式(1)中、「圧縮応力公差」とは、両端を除き、巻回体の軸方向における一方の端部から他方の端部まで20mm毎に、圧縮治具を巻回体表面から中心方向に10mm押し込んだ際の応力を測定し、得られた全ての応力の最大値と最小値の差をいう。また、「圧縮応力の中心値」とは、両端を除き、巻回体の軸方向における一方の端部から他方の端部まで20mm毎に、圧縮治具を巻回体表面から中心方向に10mm押し込んだ際の応力を測定し、得られた全ての応力を小さい順に並べたときの中央に位置する値をいう。なお、本明細書において、「巻回体の幅方向」は、巻回体の軸方向であり、樹脂発泡シートが巻き付けられている方向に直交する方向を示す。
圧縮応力公差及び圧縮応力の中心値を得る方法について、図1を用いて具体的に説明する。図1は、樹脂発泡シートの巻回体の、圧縮応力公差及び圧縮応力の中心値を得る際に測定する圧縮応力の測定箇所を示す概略図である。まず、巻回体1の幅方向における一方の端部2から他方の端部3方向に20mm移動した箇所(周方向においては任意の箇所)で圧縮応力を測定する。次に、圧縮応力を測定した箇所から他方の端部3方向に20mm移動した箇所で圧縮応力を測定する。これを繰り返し、測定箇所から他方の端部3方向に20mm移動した箇所が、他方の端部3から一方の端部2方向に20mmの範囲内になる前まで圧縮応力の測定を行う。即ち、図1に示される巻回体表面に向かう矢印の箇所において圧縮応力の測定を行い、一方の端部2及び他方の端部3から20mmよりも内側の箇所では圧縮応力の測定を行わない。そして、得られた全ての圧縮応力のうちの最大値と最小値の差を「圧縮応力公差」とし、得られた全ての応力を小さい順に並べたときの中央に位置する値を「圧縮応力の中心値」とする。なお、測定数が偶数の場合、得られた全ての応力を小さい順に並べたときの中央に位置する2つの値の平均値を「圧縮応力の中心値」とする。
上記圧縮応力は、巻回体表面を10mm押し込んだ際の応力である。当該圧縮応力は、具体的には20mmΦの円盤形圧縮冶具を1分あたり20mmの圧縮速度で巻回体表面を10mm押し込み測定される。
本発明の巻回体の、上記式(1)より求められる値は、150%以下であり、好ましくは100%以下、より好ましくは80%以下、さらに好ましくは70%以下である。上記値が150%以下であると、巻回体の幅方向全体にわたって圧縮応力の中心値からのバラツキが小さく、巻回体の表面付近で圧縮応力がなるべく均一となるため、切断加工後にシワや竹の子状の変形が生じにくい。上記値の下限は、0%であってもよいが、5%であってもよい。なお、本発明の巻回体の上記式(1)より求められる値が上記範囲内であることは、巻回体の周方向における少なくとも1点において満たされればよい。
上記式(1)より求められる値が150%以下である巻回体は、例えば、樹脂発泡シートの厚み精度を高くすること、樹脂発泡シートを巻き付ける際の張力を調整すること、樹脂発泡シートの引張強度を調整すること等を採用して総合的に調整することにより得られる。
樹脂発泡シートの厚み精度は、例えば、後述の式(2)より求められる値を小さくすること、より具体的には樹脂組成物を発泡して形成された樹脂発泡シート(原反)の厚み精度の向上、原反のスライス加工の実施及びその精度の向上、加熱溶融処理の実施及びその精度の向上等により高くなる傾向がある。なお、原反の厚み精度は、樹脂発泡シートを形成する樹脂組成物の均一性や発泡条件の均一性、樹脂組成物を押し出す装置(例えば環状ダイ等)の精度に依存しやすい。また、スライス加工の精度は、スライス加工装置の精度の他、樹脂発泡体の均一性にも依存しやすい。さらに、表面溶融処理の精度は、表面溶融処理を行う装置の精度の他、加熱温度や処理速度にも依存しやすい。
本発明の巻回体の上記圧縮応力公差の、上記式(1)より求められる値を得る際に測定した圧縮応力の最小値に対する割合は、特に限定されないが、200%以下(例えば、0〜200%)であることが好ましく、より好ましくは150%以下、さらに好ましくは100%以下である。樹脂発泡シートの厚みが薄いほど圧縮応力の最小値に対する圧縮応力公差の割合は大きくなる傾向があるが、本発明の巻回体は、樹脂発泡シートの厚みが薄い場合(例えば、50〜500μmの場合)であっても、上記割合を200%以下とすることが可能であり、これによって、上記式(1)により求められる値をより小さくすることができる。
本発明の巻回体の、上記式(1)より求められる値を得る際に測定した圧縮応力は、特に限定されないが、0.1〜100N/cm2が好ましく、より好ましくは0.5〜50N/cm2、さらに好ましくは1〜30N/cm2である。上記圧縮応力が上記範囲内であると、巻回体において樹脂発泡シートが適度にしっかりと巻き付けられているため、切断加工後にシワや竹の子状の変形がより生じにくい。
本発明の巻回体の上記圧縮応力の中心値の、上記式(1)より求められる値を得る際に測定した圧縮応力の最大値と最小値の合計に対する割合は、特に限定されないが、20〜80%が好ましく、より好ましくは30〜70%、さらに好ましくは40〜60%である。上記割合を上記範囲内とすることにより、圧縮応力のバラツキをより小さくし、且つ上記式(1)より求められる値をより小さくすることができる。
本発明の巻回体の上記圧縮応力公差は、特に限定されないが、25N/cm2以下(例えば、0〜25N/cm2)が好ましく、より好ましくは15N/cm2以下、さらに好ましくは9N/cm2以下、特に好ましくは7N/cm2以下である。上記圧縮応力公差が25N/cm2以下であると、巻回体の幅方向全体にわたって圧縮応力のバラツキが小さく、巻回体の表面付近で圧縮応力がなるべく均一となるため、切断加工後にシワや竹の子状の変形がより生じにくい。
本発明の巻回体の上記圧縮応力の中心値は、特に限定されないが、0.5〜25N/cm2が好ましく、より好ましくは3〜18N/cm2、さらに好ましくは5〜12N/cm2である。上記圧縮応力の中心値が上記範囲内であると、巻回体の幅方向全体にわたって圧縮応力のバラツキが小さく、巻回体の表面付近で圧縮応力がなるべく均一となるため、切断加工後にシワや竹の子状の変形がより生じにくい。
本発明の巻回体の幅方向の長さ(即ち、図1における一方の端部2から他方の端部3までの長さ)は、特に限定されないが、200mm以上が好ましく、より好ましくは300mm以上、さらに好ましくは400mm以上、特に好ましくは500mm以上である。上記幅方向の長さが大きくなるほど圧縮応力のバラツキが大きくなり切断加工後にシワや竹の子状の変形が発生しやすくなる傾向があるが、本発明の巻回体は、上記幅方向の長さが200mm以上であっても、切断加工後にシワや竹の子状の変形が発生しにくい。なお、上記長さの上限は、特に限定されないが、1200mmが好ましく、より好ましくは1000mmである。
本発明の巻回体は、芯材を有していてもよい。本発明の巻回体が芯材を有する場合、本発明の巻回体は、芯材と、該芯材に巻回された樹脂発泡シートとを有する。
本発明の巻回体が芯材を有する場合、芯材の外周の表面から巻回体の表面までの最短距離は、特に限定されないが、11mm以上であることが好ましく、より好ましくは15mm以上、さらに好ましくは18mm以上である。上記芯材の外周の表面から巻回体の表面までの距離が長くなるほど圧縮応力のバラツキが大きくなり切断加工後にシワや竹の子状の変形が発生しやすくなる傾向があるが、本発明の巻回体は、芯材の外周の表面から巻回体の表面までの最短距離が11mm以上であっても、切断加工後にシワや竹の子状の変形が発生しにくい。なお、上記最短距離の上限は、特に限定されないが、60cmが好ましく、より好ましくは30cmである。
上記芯材の外周の表面から巻回体の表面までの最短距離は、図1におけるRで示される。樹脂発泡シートは幅方向および流れ方向に厚みのばらつきがあるため、芯材の外周の表面から巻回体の表面までの距離は、巻回体の周方向の位置によって異なる。上記芯材の外周の表面から巻回体の表面までの最短距離は、巻回体の周方向の位置によって異なる距離のうちの最小の値である。
(樹脂発泡シート)
本発明の巻回体は、樹脂発泡シートが巻回された形態を有する。上記樹脂発泡シートは、特に限定されないが、下記式(2)より求められる値が40%以下であることが好ましく、より好ましくは25%以下、さらに好ましく15%以下、特に好ましくは10%以下である。
(厚み公差)/(厚みの中心値)×100 (2)
式(2)中、「厚み公差」とは、樹脂発泡シートの長さ方向の1点で、両端を除き、幅方向における一方の端部から他方の端部まで幅方向20mm毎に厚みを測定し、さらに上記長さ方向の1点から長さ方向に1m移動した点で一方の端部から他方の端部まで幅方向20mm毎に厚みを測定し、得られた全ての測定値の最大値と最小値の差をいう。また、「厚みの中心値」とは、樹脂発泡シートの長さ方向の1点で、両端を除き、幅方向における一方の端部から他方の端部まで幅方向20mm毎に厚みを測定し、さらに上記長さ方向の1点から長さ方向に1m移動した点で一方の端部から他方の端部まで幅方向20mm毎に厚みを測定し、得られた全ての測定値を小さい順に並べたとき中央に位置する値をいう。
厚み公差及び厚みの中心値を得る方法について、図2を用いて具体的に説明する。図2は、樹脂発泡シートの巻回体の厚み公差及び厚みの中心値を得る際に測定する厚みの測定箇所を示す概略図である。図2に示す樹脂発泡シートの巻回体は、巻回体1から樹脂発泡シートの一部を巻き出した状態又は樹脂発泡シートを完全に巻き取る直前の状態である。まず、樹脂発泡シートの幅方向における一方の端部2から他方の端部3方向に20mm移動した箇所(長さ方向においては任意の箇所)の厚みを測定する。次に、厚みを測定した箇所から幅方向における他方の端部3方向に20mm移動した箇所で厚みを測定する。これを繰り返し、測定箇所から他方の端部3方向に20mm移動した箇所が、他方の端部3から一方の端部2方向に20mmの範囲内になる前まで厚みの測定を行う。そして、これらの厚みの測定箇所から長手方向に1m移動した箇所において、同様に、樹脂発泡シートの一方の端部2から他方の端部3方向に20mm間隔で厚みを測定する。即ち、図2に示される樹脂発泡シート表面に向かう矢印の箇所において厚みの測定を行う。そして、得られた全ての厚みのうちの最大値と最小値の差を「厚み公差」とし、得られた全ての厚みを小さい順に並べたときの中央に位置する値を「厚みの中心値」とする。なお、測定数が偶数の場合、得られた全ての厚みを小さい順に並べたときの中央に位置する2つの値の平均値を「厚みの中心値」とする。なお、樹脂発泡シートの厚みの測定は、図2に示すような樹脂発泡シートが巻回されていない箇所において行うことには限定されない。
上記式(2)より求められる値が40%以下であると、発泡シートの幅方向全体にわたって厚みの中心値からのバラツキが小さいため、巻回体の幅方向の圧縮応力のバラツキがより小さくなる傾向がある。上記値の下限は、0%であってもよいが、5%であってもよい。なお、樹脂発泡シートの上記式(2)より求められる値が上記範囲内であることは、樹脂発泡シートの長手方向における少なくとも1つの任意の箇所において満たされればよい。
樹脂発泡シートの厚みは、特に限定されないが、0.05〜0.50mmが好ましく、より好ましくは0.07〜0.40mm、さらに好ましくは0.10〜0.25mmである。上記厚みが薄くなるほど圧縮応力のバラツキが大きくなり切断加工後にシワや竹の子状の変形が発生しやすくなる傾向があるが、本発明の巻回体は、上記厚みが0.50mm以下であっても、切断加工後にシワや竹の子状の変形が発生しにくい。
樹脂発泡シートの長さは、特に限定されないが、5m以上(例えば、5〜1000m)が好ましく、より好ましくは30m以上(例えば、30〜500m)、さらに好ましくは50m以上(例えば、50〜300m)である。
樹脂発泡シートの引張強度(引張強さ)は、特に限定されないが、0.5MPa以上(例えば、0.5〜15MPa)が好ましく、より好ましくは0.7MPa以上(例えば、0.7〜10MPa)である。上記引張強度が0.5MPa以上であると、強度に優れるため、破断することなく強固に巻き付けることが可能であり、巻回体の幅方向の圧縮応力のバラツキがより小さくなる傾向がある。上記引張強度は、樹脂発泡シートの長さ方向の引張強度であり、JIS K 6767(1999)に基づいて求められる。
樹脂発泡シートの少なくとも一方の面の表面被覆率は、特に限定されないが、40%以上が好ましく、より好ましくは45%以上、さらに好ましくは50%以上である。上記表面被覆率が40%以上であると、巻き取り時のシワの発生、特に高速での巻き取り時のシワの発生を抑制し、巻取安定性が向上する傾向がある。また、厚み精度が向上する傾向がある。
上記表面被覆率は、表面に存在する非孔部(表面に存在する孔ではない部分、バルク、非発泡状態の部分)の割合を示す指標であり、下記式(3)で定義される。なお、表面被覆率が100%であれば、その面には孔部が存在しないこととなる。
表面被覆率(%)=[(表面の面積)−(表面に存在する孔の面積)]/(表面の面積
)×100 (3)
上記樹脂発泡シートは樹脂を含有する発泡体(樹脂発泡体)から構成される。なお、上記樹脂発泡体に含まれる樹脂は、特に限定されないが、熱可塑性樹脂が好ましい。上記熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリオレフィン系樹脂、スチレン系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリアミドイミド、ポリウレタン、ポリイミド、ポリエーテルイミド、アクリル系樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリフッ化ビニル、アルケニル芳香族樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリカーボネート、ポリアセタール、ポリフェニレンスルフィド等が挙げられる。中でも、ポリオレフィン系樹脂が好ましい。即ち、上記樹脂発泡シートは、ポリオレフィン系樹脂発泡シートであることが好ましい。ポリオレフィン系樹脂は、厚みの薄い樹脂発泡シートを得やすく、また厚みの薄い樹脂発泡シートほど巻回体の切断加工後のシワや竹の子状の変形が起こりやすいため、ポリオレフィン系樹脂を用いた場合により有効となる。上記樹脂は、一種のみを使用してもよいし、二種以上を使用してもよい。
上記ポリオレフィン系樹脂は、単独重合体(ホモポリマー)であってもよく、二種以上のモノマーを含む共重合体(コポリマー)であってもよい。また、上記ポリオレフィン系樹脂が共重合体である場合、ランダムコポリマーやブロックコポリマーであってもよい。上記ポリオレフィン系樹脂は、一種のみを使用してもよいし、二種以上を使用してもよい。
上記ポリオレフィン系樹脂としては、特に限定されないが、α−オレフィンを必須のモノマー成分として構成(形成)されたポリマー、すなわち、分子中(1分子中)に、少なくともα−オレフィンに由来する構成単位を有するポリマーであることが好ましい。上記ポリオレフィン系樹脂は、例えば、α−オレフィンのみから構成されたポリマーであってもよいし、α−オレフィンと、α−オレフィン以外のモノマー成分から構成されたポリマーであってもよい。
上記α−オレフィンとしては、例えば、炭素数2〜8のα−オレフィン(例えば、エチレン、プロピレン、ブテン−1、ペンテン−1、ヘキセン−1、4−メチル−ペンテン−1、へプテン−1、オクテン−1等)が挙げられる。上記α−オレフィンは、一種のみを使用してもよいし、二種以上を使用してもよい。
上記α−オレフィン以外のモノマー成分としては、例えば、酢酸ビニル、アクリル酸、アクリル酸エステル、メタクリル酸、メタクリル酸エステル、ビニルアルコール等のエチレン性不飽和単量体が挙げられる。上記α−オレフィン以外のモノマー成分は、一種のみを使用してもよいし、二種以上を使用してもよい。
上記ポリオレフィン系樹脂としては、例えば、低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン、ポリプロピレン(プロピレンホモポリマー)、エチレンとプロピレンとの共重合体、エチレンとエチレン以外のα−オレフィンとの共重合体、プロピレンとプロピレン以外のα−オレフィンとの共重合体、エチレンとプロピレンとエチレン及びプロピレン以外のα−オレフィンとの共重合体、プロピレンとエチレン性不飽和単量体との共重合体等が挙げられる。
上記ポリオレフィン系樹脂は、特に限定されないが、発泡倍率の高いポリオレフィン系樹脂発泡体が得られる点から、直鎖状のポリオレフィンであることが好ましい。
上記ポリオレフィン系樹脂としては、耐熱性の点から、プロピレンを必須のモノマー成分として構成されたポリマー(ポリプロピレン系樹脂)、すなわち、少なくともプロピレンに由来する構成単位を有するポリマーが好ましい。上記ポリプロピレン系樹脂としては、例えば、ポリプロピレン(プロピレンホモポリマー)、エチレンとプロピレンの共重合体、プロピレンとプロピレン以外のα−オレフィンとの共重合体等が挙げられる。上記プロピレン以外のα−オレフィンは、一種のみを使用してもよいし、二種以上を使用してもよい。
上記ポリオレフィン系樹脂中のα−オレフィンの含有量は、特に限定されないが、例えば、上記ポリオレフィン系樹脂を構成するモノマー成分全量(100重量%)に対して、0.1〜10重量%が好ましく、より好ましくは1〜5重量%である。
樹脂発泡シートを構成する樹脂発泡体における上記樹脂の含有量は、特に限定されないが、樹脂発泡体の重量(100重量%)に対して、10重量%以上が好ましく、より好ましくは20重量%以上、さらに好ましくは30重量%以上である。上記含有量の上限は、特に限定されないが、100重量%であってもよく、好ましくは80重量%、より好ましくは50重量%である。
樹脂発泡体は、上記ポリオレフィン系樹脂の他に、ゴム、熱可塑性エラストマー等のエラストマー成分を含有することが好ましい。エラストマー成分を含有すると、樹脂発泡体の弾性が向上し、衝撃吸収性が向上しやすい。
上記ゴムとしては、特に限定されないが、例えば、天然ゴム、ポリイソブチレン、イソプレンゴム、クロロプレンゴム、ブチルゴム、ニトリルブチルゴム等の天然又は合成ゴムが挙げられる。上記ゴムは、一種のみを使用してもよいし、二種以上を使用してもよい。
上記熱可塑性エラストマーとしては、特に限定されないが、例えば、エチレン−プロピレン共重合体エラストマー、エチレン−プロピレン−ジエン共重合体エラストマー、エチレン−酢酸ビニル共重合体エラストマー、ポリブテンエラストマー、ポリイソブチレンエラストマー、塩素化ポリエチレンエラストマー等の熱可塑性オレフィン系エラストマー;スチレン−ブタジエン−スチレン共重合体エラストマー、スチレン−イソプレン−スチレン共重合体エラストマー、スチレン−イソプレン−ブタジエン−スチレン共重合体エラストマー、これらの水素添加物等の熱可塑性スチレン系エラストマー;熱可塑性ポリエステル系エラストマー;熱可塑性ポリウレタン系エラストマー;熱可塑性アクリル系エラストマー等が挙げられる。上記熱可塑性エラストマーは、一種のみを使用してもよいし、二種以上を使用してもよい。
上記エラストマー成分としては、中でも、熱可塑性オレフィン系エラストマーが好ましく、特に好ましくはポリオレフィン系樹脂成分とオレフィン系ゴム成分とがミクロ相分離した構造を有するオレフィン系エラストマーである。該ポリオレフィン系樹脂成分とオレフィン系ゴム成分とがミクロ相分離した構造を有するオレフィン系エラストマーとしては、ポリプロピレン(PP)とエチレン−プロピレンゴム(EPM)又はエチレン−プロピレン−ジエンゴム(EPDM)とからなるエラストマーが好ましい。但し、上記ミクロ相分散した構造を有するオレフィン系エラストマー中のポリオレフィン系樹脂成分は、上述の樹脂発泡体に含まれる樹脂としての熱可塑性樹脂には含まれず、エラストマー成分に含まれるものとする。上記ポリオレフィン系樹脂成分とオレフィン系ゴム成分の質量比は、相溶性の点から、ポリオレフィン系樹脂成分/オレフィン系ゴム成分=90/10〜10/90であることが好ましく、より好ましくは80/20〜20/80である。
樹脂発泡シートを構成する樹脂発泡体がエラストマー成分を含有する場合、樹脂発泡体におけるエラストマー成分の含有量は、特に限定されないが、樹脂発泡体の重量(100重量%)に対して、0重量%を超えて70重量%以下が好ましく、より好ましくは20〜60重量%、さらに好ましくは20〜50重量%である。
樹脂発泡体は、さらに、軟化剤を含有することが好ましい。特に、上記エラストマー成分と共に軟化剤を含有することが好ましい。軟化剤を含有すると、樹脂発泡シートの加工性、柔軟性を向上させることができる。上記軟化剤は、一種のみを使用してもよいし、二種以上を使用してもよい。
上記軟化剤としては、特に限定されず、ゴム製品に一般的に用いられる軟化剤が挙げられる。上記軟化剤の具体例としては、パラフィン系、ナフテン系、芳香族系等の鉱物油;プロセスオイル、潤滑油、流動パラフィン、石油アスファルト、ワセリン等の石油系物質;コールタール、コールタールピッチ等のコールタール類;ヒマシ油、アマニ油、ナタネ油、大豆油、ヤシ油等の脂肪油;トール油、蜜ロウ、カルナウバロウ、ラノリン等のロウ類;石油樹脂、クマロンインデン樹脂、アタクチックポリプロピレン等の合成高分子物質;ジオクチルフタレート、ジオクチルアジペート、ジオクチルセバケート等のエステル化合物;マイクロクリスタリンワックス、サブ(ファクチス)、液状ポリブタジエン、変性液状ポリブタジエン、液状チオコール、液状ポリイソプレン、液状ポリブテン、液状エチレン・α−オレフィン系共重合体等が挙げられる。中でも、鉱物油、液状ポリイソプレン、液状ポリブテン、液状エチレン・α−オレフィン系共重合体が好ましく、より好ましくは液状ポリイソプレン、液状ポリブテン、液状エチレン・α−オレフィン系共重合体である。
樹脂発泡体が軟化剤を含有する場合、樹脂発泡体中の上記軟化剤の含有量は、特に限定されないが、樹脂100重量部に対して、1〜200重量部が好ましく、より好ましくは5〜100重量部、さらに好ましくは10〜50重量部である。上記含有量が10重量部以上であると、樹脂発泡シートの加工性、柔軟性がより向上する傾向がある。上記含有量が100重量部以下であると、樹脂との分散性が向上する傾向がある。
樹脂発泡体がエラストマー成分と共に軟化剤を含有する場合、樹脂発泡体中の上記軟化剤の含有量は、特に限定されないが、エラストマー成分100重量部に対して、1〜200重量部が好ましく、より好ましくは5〜100重量部、さらに好ましくは10〜50重量部である。上記含有量が1重量部以上であると、樹脂発泡シートの加工性、柔軟性がより向上する傾向がある。上記含有量が100重量部以下であると、エラストマー成分との混練時の分散性が向上する傾向がある。
樹脂発泡体は、本発明の効果を損なわない範囲で、上記各成分の他に、添加剤を含有していてもよい。上記添加剤としては、例えば、老化防止剤、耐候剤、紫外線吸収剤、分散剤、可塑剤、着色剤(顔料、染料等)、帯電防止剤、界面活性剤、張力改質剤、流動性改質剤、滑剤、酸化防止剤、充填剤、補強剤、表面処理剤、収縮防止剤、加硫剤、難燃剤等が挙げられる。上記添加剤は、一種のみを使用してもよいし、二種以上を使用してもよい。
上記難燃剤は、樹脂発泡体の難燃性を向上させることができる。このため、難燃剤を含有する樹脂発泡体は、電気又は電子機器用途等の難燃性が要求される用途にも用いることができる。上記難燃剤は、パウダー状であってもよいし、パウダー状以外の形態をしていてもよい。パウダー状の難燃剤としては、無機難燃剤が好ましい。無機難燃剤としては、例えば、臭素系難燃剤、塩素系難燃剤、リン系難燃剤、アンチモン系難燃剤、ノンハロゲン−ノンアンチモン系無機難燃剤等が挙げられる。ここで、塩素系難燃剤や臭素系難燃剤は、燃焼時に人体に対して有害で機器類に対して腐食性を有するガス成分を発生し、また、リン系難燃剤やアンチモン系難燃剤は、有害性や爆発性等の問題がある。このため、無機難燃剤としては、ノンハロゲン−ノンアンチモン系無機難燃剤が好ましい。ノンハロゲン−ノンアンチモン系無機難燃剤としては、例えば、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、酸化マグネシウム・酸化ニッケルの水和物、酸化マグネシウム・酸化亜鉛の水和物等の水和金属化合物等が挙げられる。なお、水和金属化合物は表面処理されていてもよい。上記難燃剤は、一種のみを使用してもよいし、二種以上を使用してもよい。
上記難燃剤は、難燃性を有し、且つ発泡倍率の高い樹脂発泡体が得られる点から、後述の気泡核剤としての機能も有することが好ましい。気泡核剤としての機能を有する難燃剤としては、例えば、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム等が挙げられる。
樹脂発泡体が難燃剤を含有する場合、樹脂発泡体中の難燃剤の含有量は、特に限定されないが、上記樹脂100重量部に対して、1〜150重量部が好ましく、より好ましくは5〜120重量部である。
上記滑剤は、樹脂発泡体を形成する樹脂組成物の流動性を向上でき、熱劣化を抑制することもできる場合がある。上記滑剤としては、例えば、流動パラフィン、パラフィンワックス、マイクロワックス、ポリエチレンワックス等の炭化水素系滑剤;ステアリン酸、ベヘニン酸、12−ヒドロキシステアリン酸等の脂肪酸系滑剤;ステアリン酸ブチル、ステアリン酸モノグリセリド、ペンタエリスリトールテトラステアレート、硬化ヒマシ油、ステアリン酸ステアリル等のエステル系滑剤等が挙げられる。上記滑剤は、一種のみを使用してもよいし、二種以上を使用してもよい。
樹脂発泡体が滑剤を含有する場合、樹脂発泡体中の滑剤の含有量は、特に限定されないが、上記樹脂100重量部に対して、0.1〜10重量部が好ましく、より好ましくは0.5〜5重量部である。
樹脂発泡体の見掛け密度(密度)は、特に限定されないが、0.02〜0.30g/cm3が好ましく、より好ましくは0.025〜0.25g/cm3、さらに好ましくは0.03〜0.20g/cm3である。上記見掛け密度が0.02g/cm3以上であると、十分な強度を確保できる傾向がある。上記見掛け密度が0.30g/cm3以下であると、良好な柔軟性となる傾向がある。
なお、本明細書において、樹脂発泡シートを構成する樹脂発泡体に含まれる各成分(例えば、樹脂、エラストマー成分、軟化剤、添加剤等)の含有量は、合計が100重量%以下となるように、それぞれ、記載の範囲内から適宜選択することができる。
樹脂発泡体の気泡構造(セル構造)は、特に限定されないが、独立気泡構造、半連続半独立気泡構造(独立気泡構造と連続気泡構造とが混在している気泡構造であり、その割合は特に限定されない)が好ましく、より好ましくは半連続半独立気泡構造である。樹脂発泡体の独立気泡構造部の割合は、特に限定されないが、柔軟性の点から、樹脂発泡体の体積(100%)に対して、40%以下が好ましく、より好ましくは30%以下である。気泡構造は、例えば、発泡成形の際に、樹脂組成物に含浸させる発泡剤の量や圧力により発泡倍率を調節することにより、制御することができる。
樹脂発泡体の気泡構造における平均セル径(平均気泡径)は、特に限定されないが、10〜150μmが好ましく、より好ましくは30〜120μmである。上記平均セル径が10μm以上であると、衝撃吸収性(クッション性)が向上する傾向がある。上記平均セル径が150μm以下であると、微細なセルを有する発泡体となる傾向がある。さらに、微小なクリアランスに用いることが可能となり、防塵性が向上する傾向がある。
上記樹脂発泡シート(樹脂発泡体)は、樹脂組成物を発泡させることにより形成される。上記樹脂組成物は、上記樹脂を含む組成物である。上記樹脂組成物は、必要に応じて、上記エラストマー成分、上記軟化剤、及び上記添加剤を含んでいてもよい。
上記樹脂組成物は、さらに、気泡核剤(発泡核剤)、結晶核剤を含んでいてもよい。中でも、上記樹脂組成物は、気泡核剤を含むことが好ましい。気泡核剤を含むと、上記樹脂組成物を発泡させることにより、均一で微細なセル構造を有する樹脂発泡シートが得られやすい。
上記気泡核剤としては、例えば、粒子が挙げられる。該粒子としては、例えば、タルク、シリカ、アルミナ、ゼオライト、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、硫酸バリウム、酸化亜鉛、酸化チタン、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、マイカ、モンモリロナイト等のクレイ、カーボン粒子、グラスファイバー、カーボンチューブ等が挙げられる。上記気泡核剤は、一種のみを使用してもよいし、二種以上を使用してもよい。
上記気泡核剤としての粒子の平均粒子径(粒径)は、特に限定されないが、0.1〜20μmが好ましい。上記平均粒子径が0.1μm以上であると、気泡核剤としての機能をより十分に発揮する傾向がある。上記平均粒子径が20μm以下であると、発泡成形時によりガス抜けしにくくなる傾向がある。
上記樹脂組成物が気泡核剤を含有する場合、樹脂組成物中の気泡核剤の含有量は、特に限定されないが、樹脂100重量部に対して、0.5〜125重量部が好ましく、より好ましくは1〜120重量部である。
上記樹脂組成物は、上記樹脂、必要に応じて、上記エラストマー成分、上記軟化剤、上記気泡核剤、及び上記添加剤を、混練することにより作製することができる。例えば、上記樹脂組成物は、一軸(単軸)混練押出機や二軸混練押出機等公知の溶融混練押出装置により混練し、押し出すことにより得ることができる。
上記エラストマー成分及び軟化剤を用いる場合、上記エラストマー成分及び軟化剤は、予め混合しておいたもの(エラストマー成分及び軟化剤の混合物)を樹脂等と混合してもよい。上記エラストマー成分及び軟化剤の混合物中の、軟化剤の含有量は、特に限定されないが、エラストマー成分中の樹脂成分(例えば、ポリオレフィン系樹脂成分)100重量部に対して、1〜200重量部が好ましく、より好ましくは5〜100重量部、さらに好ましくは10〜50重量部である。なお、軟化剤の含有量が200重量部以下であると、エラストマー成分との混練時に分散性がより良好となる傾向がある。
上記エラストマー成分及び軟化剤の混合物は、上記添加剤(特に、老化防止剤、耐候剤、紫外線吸収剤、分散剤、可塑剤、着色剤、帯電防止剤、界面活性剤、張力改質剤、流動性改質剤)を含んでいてもよい。
上記エラストマー成分及び軟化剤の混合物中の添加剤の含有量は、特に限定されないが、例えば、エラストマー成分中の樹脂成分(例えば、ポリオレフィン系樹脂成分)100重量部に対して、0.01〜100重量部が好ましく、より好ましくは0.05〜50重量部、さらに好ましくは0.1〜30重量部である。なお、上記含有量が0.01重量部以上であると、添加剤を添加することによる効果をより発現しやすくなる。
上記エラストマー成分及び軟化剤の混合物のメルトフローレート(MFR)(230℃)は、特に限定されないが、良好な成形性を得る点より、3〜10g/10分が好ましく、より好ましくは4〜9g/10分である。
上記エラストマー成分及び軟化剤の混合物における「JIS A硬度」は、特に限定されないが、30〜90°が好ましく、より好ましくは40〜85°である。上記「JIS A硬度」が30°以上であると、高発泡倍率の樹脂発泡体が得やすい。また、上記「JIS A硬度」が90°以下であると、柔軟な樹脂発泡体が得やすい。なお、本明細書における「JIS A硬度」は、ISO7619(JIS K6253)に基づき測定された硬度をいうものとする。
上記樹脂組成物は、特に限定されないが、例えば、ストランド状、シート状、平板状、ペレット状(例えば、ストランド状に押し出された樹脂組成物を水冷又は空冷し、適当な長さに裁断したペレット状)等が挙げられる。中でも、生産性の点から、ペレット状が好ましい。
上記樹脂組成物を発泡させる方法としては、物理的発泡方法や化学的発泡方法が挙げられる。上記物理的発泡方法は、低沸点液体(発泡剤)を樹脂組成物に含浸(分散)させ、次に発泡剤を揮発させることによりセル(気泡)を形成させる方法である。また、上記化学的発泡方法は、樹脂組成物に添加した化合物の熱分解により生じたガスによりセルを形成させる方法である。中でも、樹脂発泡シートの汚染を回避する点、微細で均一な気泡構造の得やすさの点より、物理的発泡方法が好ましく、発泡剤として高圧のガスを用いる物理的発泡方法がより好ましい。
物理的発泡方法において用いられる上記発泡剤としては、特に限定されないが、微細で且つセル密度の高い気泡構造の得やすさの点から、ガスが好ましく、特に、樹脂発泡シートを構成する樹脂(上記樹脂組成物が含有する樹脂)に対して不活性なガス(不活性ガス)が好ましい。
上記不活性ガスは、特に限定されないが、例えば、二酸化炭素、窒素ガス、空気、ヘリウム、アルゴン等が挙げられる。特に、上記不活性ガスは、樹脂組成物への含浸量が多く、含浸速度の速い点から、二酸化炭素が好ましい。上記不活性ガスは、一種のみを使用してもよいし、二種以上を使用してもよい。
上記発泡剤の混合量(含有量、含浸量)は、特に限定されないが、上記樹脂組成物の総重量(100重量%)に対して、2〜10重量%が好ましい。
上記不活性ガスは、樹脂組成物への含浸速度を速めるという点から、含浸時に超臨界状態であることが好ましい。即ち、上記樹脂発泡シートは、上記樹脂組成物を、超臨界流体を用いて発泡させることにより形成されることが好ましい。上記不活性ガスが超臨界流体(超臨界状態)であると、樹脂組成物への溶解度が増大し、高濃度の含浸(混入)が可能である。また、高濃度で含浸することが可能であるため、含浸後に圧力を急激に降下させた際には、気泡核の発生が多くなり、その気泡核が成長してできる気泡の密度や気孔率が同じであっても大きくなるため、微細な気泡を得ることができる。なお、二酸化炭素の臨界温度は31℃、臨界圧力は7.4MPaである。
発泡剤としてガスを用いる物理的発泡方法としては、樹脂組成物に高圧のガス(例えば、不活性ガス等)を含浸させた後、減圧(例えば大気圧まで)する工程(圧力を解放する工程)を経て発泡させることにより形成する方法が好ましい。具体的には、樹脂組成物を成形することにより未発泡成形物を得て、該未発泡成形物に高圧のガスを含浸させた後、減圧(例えば大気圧まで)する工程を経て発泡させることにより形成する方法や、溶融した樹脂組成物にガス(例えば、不活性ガス等)を加圧状態下で含浸させた後、減圧(例えば大気圧まで)して発泡させるとともに成形に付して形成する方法等が挙げられる。
すなわち、樹脂発泡シートを形成する場合には、上記樹脂組成物を、シート状等の適宜な形状に成形して未発泡樹脂成形体(未発泡成形物)とした後、この未発泡樹脂成形体に、高圧のガスを含浸させ、圧力を解放することにより発泡させる方式(バッチ方式)で行ってもよく、また、上記樹脂組成物を高圧条件下、高圧のガスと共に混練し、成形すると同時に圧力を解放し、成形と発泡を同時に行う方式(連続方式)で行ってもよい。
上記バッチ方式において、未発泡樹脂成形体を形成する方法は、特に限定されないが、例えば、樹脂組成物を、単軸押出機、二軸押出機等の押出機を用いて成形する方法;樹脂組成物を、ローラ、カム、ニーダ、バンバリ型等の羽根を設けた混練機を使用して均一に混練しておき、熱板のプレス等を用いて所定の厚さにプレス成形する方法;樹脂組成物を、射出成形機を用いて成形する方法等が挙げられる。また、未発泡樹脂成形体の形状は、特に限定されないが、例えば、シート状、ロール状、板状等が挙げられる。上記バッチ方式では、所望の形状や厚さの未発泡樹脂成形体が得られる適宜な方法により樹脂組成物が成形に処される。
上記バッチ方式では、未発泡樹脂成形体を耐圧容器中に入れて、高圧のガスを注入(導入、混入)し、未発泡樹脂成形体中にガスを含浸させるガス含浸工程、十分にガスを含浸させた時点で圧力を解放し(通常、大気圧まで)、樹脂組成物中に気泡核を発生させる減圧工程を経て、気泡構造が形成される。
上記連続方式では、樹脂組成物を押出機(例えば、単軸押出機、二軸押出機等)や射出成形機を使用して混練しながら、高圧のガスを注入(導入、混入)し、十分に高圧のガスを樹脂組成物に含浸させる混練含浸工程、押出機の先端に設けられたダイス等を通して樹脂組成物を押し出すことにより圧力を解放し(通常、大気圧まで)、成形と発泡を同時に行う成形減圧工程により樹脂組成物が発泡成形に処される。
上記バッチ方式や連続方式では、必要に応じて、加熱により気泡核を成長させる加熱工程が設けられてもよい。なお、加熱工程を設けずに、室温で気泡核を成長させてもよい。さらに、気泡を成長させた後、必要により冷水等により急激に冷却し、形状を固定化させてもよい。高圧のガスの導入は、連続的に行ってもよく不連続的に行ってもよい。なお、気泡核を成長させる際の加熱の方法は、特に限定されないが、ウォーターバス、オイルバス、熱ロール、熱風オーブン、遠赤外線、近赤外線、マイクロ波等の公知乃至慣用の方法が挙げられる。
上記バッチ方式のガス含浸工程や上記連続方式の混練含浸工程において、ガスを含浸させるときの圧力は、ガスの種類や操作性等を考慮して適宜選択されるが、例えば、5MPa以上(例えば、5〜100MPa)が好ましく、より好ましくは7MPa以上(例えば、7〜100MPa)である。すなわち、上記樹脂組成物に、圧力5MPa以上(例えば、圧力5〜100MPa)のガスを含浸させることが好ましく、圧力7MPa以上(例えば、圧力7〜100MPa)の不活性ガスを含浸させることがより好ましい。ガスの圧力が、5MPa以上であると、発泡時の気泡成長を適度に抑制し、セルが大きくなりすぎるのを抑制できる傾向がある。これは、圧力が高いと、ガスの含浸量が低圧時に比べて相対的に多くなり、気泡核形成速度が速く形成される気泡核数が多くなるため、1気泡あたりのガス量を抑え、気泡径が極端に大きくなりにくいことによる。また、5MPa以上の圧力領域では、含浸圧力を少し変化させてもセル径、気泡密度が大きく変化しにくく、セル径及び気泡密度の制御が容易となりやすい。
また、上記バッチ方式におけるガス含浸工程や上記連続方式における混練含浸工程で、ガスを含浸させるときの温度(含浸温度)は、用いるガスや樹脂の種類によって異なり、広い範囲で選択できるが、操作性等を考慮した場合、10〜350℃が好ましい。より具体的には、バッチ方式での含浸温度は、10〜250℃が好ましく、より好ましくは40〜240℃であり、さらに好ましくは60〜230℃である。また、連続方式では、含浸温度は、60〜350℃が好ましく、より好ましくは100〜320℃であり、さらに好ましくは150〜300℃である。なお、高圧のガスとして二酸化炭素を用いる場合には、超臨界状態を保持するため、含浸時の温度(含浸温度)は32℃以上(特に40℃以上)であることが好ましい。また、ガスを含浸させた後、発泡成形する前に、ガスを含浸させた樹脂組成物を、発泡成形に適した温度(例えば、150〜190℃)まで冷却してもよい。
さらに、上記バッチ方式や上記連続方式において、減圧工程(圧力を解放する工程)での減圧速度は、特に限定されないが、均一で微細なセルを有する気泡構造を得る点から、好ましくは5〜300MPa/秒である。
気泡核を成長させるために、加熱工程を設ける場合には、加熱温度は、例えば、40〜250℃が好ましく、より好ましくは60〜250℃である。
なお、上記樹脂発泡シートの気泡構造、密度、相対密度は、構成する樹脂の種類に応じて、樹脂組成物を発泡成形する際の発泡方法や発泡条件(例えば、発泡剤の種類や量、発泡の際の温度や圧力や時間等)を選択することにより調整される。
得られた樹脂発泡シートは、スライス加工を施されてもよい。具体的には、上記樹脂組成物を発泡させて発泡体(樹脂発泡シート)を得た後、該発泡体の両面側の表面をスライス加工されることが好ましい。上記樹脂発泡シートは、表面付近に、内部と比較して密度の高い層状部分(内部と比較して発泡倍率の低い層状部分、スキン層)を有することが多い。スライス加工によればこの層状部分を除くことができ、樹脂発泡シート表面に内部の気泡構造を露出させて、開口部を設けることができる。また、スライス加工により、厚み精度の向上を図ることができ、これにより厚み精度が向上するので、上記式(1)より求められる値が小さくなる傾向がある。
得られた樹脂発泡シートは、さらに、表面を加熱溶融処理されてもよい。具体的には、上記樹脂組成物を発泡させて発泡体(樹脂発泡シート)を得た後(必要に応じてスライス加工を施された後)、該樹脂発泡シートの表面を加熱溶融処理されてもよい。このように、厚み方向の表面を溶融させることで、柔軟性の低下を最小限に抑えつつ、長さ方向の引張強さを高くして破断や千切れ等の発生を抑制し、樹脂発泡シートを容易に連続して得ることができる。また、発泡部分が非発泡状態(バルク)に戻ることで、表面の粗さ(厚みの誤差)が小さくなり厚み精度が向上するので、上記式(1)より求められる値が小さくなる傾向がある。なお、本明細書において、上記樹脂組成物を発泡させることにより得られる樹脂発泡シートであって、加熱溶融処理する前の発泡体を「発泡構造体」と称する場合がある。
加熱溶融処理は、特に限定されないが、厚み精度を高くし、上記式(1)より求められる値を小さくしやすい点より、上記発泡構造体の少なくとも一方の面について全体的に施されることが好ましい。すなわち、上記樹脂発泡シートは、上記樹脂組成物を発泡させることにより発泡構造体を得た後、該発泡構造体の片面又は両面に加熱溶融処理を施すことにより得られることが好ましい。また、同じ面に加熱溶融処理を2回以上施してもよい。
上記加熱溶融処理としては、特に限定されないが、例えば、熱ロールによるプレス処理、レーザー照射処理、加熱されたロール上での接触溶融処理、フレーム処理等が挙げられる。熱ロールによるプレス処理の場合、熱ラミネーター等を用いて処理を行うことができる。なお、ロールの材質としては、ゴム、金属、フッ素系樹脂(例えば、テフロン(登録商標))等が挙げられる。
上記加熱溶融処理の際の温度は、特に限定されないが、樹脂発泡シートに含まれる樹脂の軟化点又は融点より15℃低い温度以上(より好ましくは樹脂発泡シートに含まれる樹脂の軟化点又は融点より12℃低い温度以上)であること好ましく、また、樹脂発泡シートに含まれる樹脂の軟化点又は融点より20℃高い温度以下(より好ましくは樹脂発泡シートに含まれる樹脂の軟化点又は融点より10℃高い温度以下)であることが好ましい。加熱溶融処理の際の温度が構成する樹脂の軟化点又は融点より15℃低い温度以上であると、加熱溶融処理を効率よく施せる点で好ましい。そして、十分な加熱溶融処理を行うことができ、樹脂発泡シートの厚み精度がより向上する傾向がある。また、加熱溶融処理の際の温度が、構成する樹脂の軟化点又は融点より20℃高い温度以下であると、収縮してシワ等が発生することを抑制できる傾向がある。
樹脂発泡シートに含まれる樹脂がポリオレフィン系樹脂の場合、上記加熱溶融処理の際の温度は、具体的には、100〜300℃が好ましく、より好ましくは150〜250℃、さらに好ましくは170〜230℃である。
また、加熱溶融処理の処理時間としては、処理温度にもよるが、例えば、0.1秒〜10秒程度が好ましく、好ましくは0.5秒〜7秒程度である。処理時間が上記範囲内であると、溶融に十分な時間が確保でき、また、過剰な加熱によるシワ等の発生を抑制できる傾向がある。そして、十分な加熱溶融処理を行うことができ、樹脂発泡シートの厚み精度がより向上する傾向がある。
特に、上記加熱溶融処理は、圧縮応力公差や厚み公差を小さくし、上記式(1)より求められる値を小さくしやすい点より、発泡構造体の通過するギャップ(隙間、間隔)を調整できる加熱溶融処理装置を用いることが好ましい。
このような加熱溶融処理装置としては、例えば、ギャップを調整可能な加熱ロール(熱誘電ロール)を有する連続処理装置が挙げられる。
上記樹脂発泡シートは、樹脂発泡シート以外の層(他の層)が積層されていてもよい。上記樹脂発泡シートが他の層と積層されている場合、本発明の巻回体において、樹脂発泡シートは、他の層が積層された積層体として巻回されている。
上記他の層は、上記樹脂発泡シートの片面側にのみ設けられていてもよいし、両面側に設けられていてもよい。さらに、上記他の層は、単層であってもよいし、複数の層からなる積層体であってもよい。
上記他の層としては、例えば、粘着剤層、中間層(例えば密着性を向上させる下塗り層等)、基材層(例えばフィルム層、不織布層等)等が挙げられる。
上記粘着剤層を構成する粘着剤としては、特に限定されないが、例えば、アクリル系粘着剤、ゴム系粘着剤(天然ゴム系粘着剤、合成ゴム系粘着剤等)、シリコーン系粘着剤、ポリエステル系粘着剤、ウレタン系粘着剤、ポリアミド系粘着剤、エポキシ系粘着剤、ビニルアルキルエーテル系粘着剤、フッ素系粘着剤等が挙げられる。上記粘着剤は、一種のみを使用してもよいし、二種以上を使用してもよい。なお、上記粘着剤は、エマルジョン系粘着剤、溶剤系粘着剤、ホットメルト型粘着剤、オリゴマー系粘着剤、固系粘着剤等のいずれの形態の粘着剤であってもよい。
また、上記粘着剤層は、少なくとも1層の下層を介して、上記樹脂発泡シートの少なくとも一方の面側に形成されていてもよい。このような下層としては、例えば、中間層、下塗り層、基材層等が挙げられる。
なお、本発明の巻回体における樹脂発泡シートは、他の層が積層されていないことが好ましい。特に、本発明の巻回体は、上記芯材と該芯材に巻回された上記樹脂発泡シートのみからなることが好ましい。樹脂発泡シートに他の層として所定の強度を有する層が積層されている場合、巻回体の切断加工後に外観異常や竹の子状の変形は比較的生じにくい。しかしながら、本発明の巻回体は、上記他の層が積層されていない場合(例えば、芯材と該芯材に巻回された上記樹脂発泡シートのみからなる場合)であっても、切断後の外観異常や竹の子状の変形が生じにくい。従って、上記のように樹脂発泡シートに他の層として所定の強度を有する層を積層することは不要となるため、他の層を貼り合わせる手間やコストを低減することが可能となる。
(巻回体)
上記樹脂発泡シート(上記他の層が積層されている場合は他の層との積層体)をロール状に巻回することにより、本発明の巻回体が得られる。
上記巻回は、芯材に樹脂発泡シート又は積層体を巻き付けることにより行うことが好ましい。巻き付ける際の張力は、特に限定されないが、1〜20N/200mmが好ましく、より好ましくは2〜10N/200mmである。上記張力が上記範囲内であると、樹脂発泡シートに適度な張力がかかり、上記式(1)より求められる値が小さくなる傾向がある。また、巻き付ける際に樹脂発泡シートが変形しにくい。
上記巻き付けの際の速度(引き取り速度)は、特に限定されないが、1〜50m/minが好ましく、より好ましくは5〜30m/minである。なお、巻き付ける際の張力が上記範囲内であり且つ引き取り速度が上記範囲内であることがさらに好ましい。
以下に実施例を挙げて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例により何ら制限されるものではない。
ポリプロピレン[メルトフローレート(MFR):0.35g/10min]:45重量部、熱可塑性オレフィン系エラストマー(ポリオレフィン系エラストマー)と軟化剤(パラフィン系伸展油)の混合物(MFR(230℃):6g/10分、JIS A硬度:79°、軟化剤をポリオレフィン系エラストマー100重量部に対して30重量部配合):55重量部、水酸化マグネシウム:10重量部、カーボン(商品名「旭♯35」、旭カーボン(株)製):10重量部、ステアリン酸モノグリセリド:1重量部、及び脂肪酸アミド(ラウリン酸ビスアミド):1.5重量部を、(株)日本製鋼所(JSW)製の二軸混練機にて、200℃の温度で混練した後、ストランド状に押出し、水冷後ペレット状に成形した。このペレットを、(株)日本製鋼所製の単軸押出機に投入し、220℃の雰囲気下、13(注入後12)MPaの圧力で、二酸化炭素ガスを注入した。二酸化炭素ガスは、ペレット全量に対して5.6重量%の割合で注入した。二酸化炭素ガスを十分飽和させた後、発泡に適した温度まで冷却し、ダイから円筒状に押出して、発泡体の内側表面を冷却するマンドレルと、押出機の環状ダイから押し出された円筒状の発泡体の外側表面を冷却する発泡体冷却用エアリングの間を通過させ、直径の一部を切断してシート状に展開して長尺発泡体原反を得た。この長尺発泡体原反において、平均セル径は55μm、見掛け密度は0.041g/cm3であった。
この長尺発泡体原反を所定の幅に切断し(スリット加工)、連続スライス装置(スライスライン)を用いて、1面ずつ表面の低発泡層を剥がしとり、樹脂発泡体A(厚み0.30mm、幅550mm)を得た。
(実施例1)
上記樹脂発泡体Aを、誘導発熱ロールの温度を200℃、ギャップを0.20mmにセットした上記連続処理装置内を通過させることにより、片面を熱で溶融処理して、スリット加工し、その後巻き取って、巻回体を得た。なお、引き取り速度は、20m/minとした。
次に、上記巻回体を巻き戻して、誘導発熱ロールの温度を200℃、ギャップを0.10mmにセットした上記連続処理装置内を通過させることにより、溶融処理がされていない面(未処理面)を熱で溶融処理して、スリット加工し、その後巻き取って、両面が熱溶融処理された樹脂発泡シートを得た。なお、引き取り速度は、20m/minとした。
これを外径87mmの巻き芯(芯材)に、巻き付け張力が5N/200mmとなる様、100m巻回し、巻回体を得た。得られた巻回体の、巻き芯の外周の表面から巻回体の表面までの最短距離は35mmであった。
(比較例1)
上記樹脂発泡体Aを、誘導発熱ロールの温度を160℃、ギャップを0.20mmにセットした上記連続処理装置内を通過させることにより、片面を熱で溶融処理して、スリット加工し、その後巻き取って、巻回体を得た。なお、引き取り速度は、20m/minとした。
次に、上記巻回体を巻き戻して、誘導発熱ロールの温度を160℃、ギャップを0.10mmにセットした上記連続処理装置内を通過させることにより、溶融処理がされていない面(未処理面)を熱で溶融処理して、スリット加工し、その後巻き取って、両面が熱溶融処理された樹脂発泡体シートを得た。なお、引き取り速度は、20m/minとした。
これを外径87mmの巻き芯(芯材)に、巻き付け張力が5N/200mmとなる様、100m巻回し、巻回体を得た。得られた巻回体の、巻き芯の外周の表面から巻回体の表面までの最短距離は34mmであった。
[評価]
実施例及び比較例で得られた巻回体について、下記の測定及び評価を行った。
(圧縮応力)
巻回体表面の周方向の1点(N1列)で一方の端部から他方の端部まで、一方の端部から幅方向20mmの箇所を測定位置1とし、測定位置1から幅方向に20mm毎に、他方の端部から20mmの範囲内になる前まで(9箇所)、10mm押し込んだ際の圧縮応力を測定した。そして、得られた全ての測定値から、最大値、最小値、圧縮応力公差、圧縮応力の中心値、及び圧縮応力公差/圧縮応力の中心値を求めた。結果を表1に示す。表1中、圧縮応力の単位はNである。
なお、圧縮応力の測定の条件は、下記の通りである。
測定装置:商品名「万能テンシロン RTG−1210」、(株)エイ・アンド・デイ製
圧縮治具:直径(φ)20mmの円柱
圧縮速度:20mm/min
(厚み)
巻回体の周方向の1点(N1列)で一方の端部から他方の端部まで、一方の端部から幅方向20mmの箇所を測定位置1とし、測定位置1から幅方向に20mm毎に、他方の端部から20mmの範囲内になる前まで(9箇所)厚みを測定した。さらに、上記周方向の1点から周方向に1m移動した点(N2列)で一方の端部から他方の端部まで、上記と同様に幅方向20mm毎に厚みを測定した。そして、得られた全ての測定値から、最大値、最小値、厚み公差、厚みの中心値、及び厚み公差/厚みの中心値を求めた。結果を表2に示す。表2中、厚みの単位はμmである。
なお、厚みの測定には、測定端子の直径(φ)20mmである1/100ダイヤルゲージを用いた。
(巻きズレ、シワ)
巻回体を幅が50mmとなるように切断した際の、巻きズレ及びシワの発生の有無を目視で観察した。なお、切断幅(50mm)に対して30%以上である15mm以上幅方向にズレがある場合を、巻きズレが発生したものと判断した(図3参照)。実施例1で得られた巻回体は、切断後に巻きズレの変形及びシワが確認されなかった。一方、比較例1で得られた巻回体は、切断後に竹の子状の巻きズレが確認された。