以下、図面を参照してこの発明の実施形態について説明する。
図1および図2を参照して、この発明の一実施形態に係る懸架装置10は、緩衝器12の圧縮時に減衰力を発生させる装置であり、たとえば自動二輪車のフロントフォークに適用される。
懸架装置10は、緩衝器12を含む。緩衝器12は、アウターチューブ14、インナーチューブ16、主シリンダ18、主ピストン20、仕切部22および減衰力発生部24を含み、作動油を用いて圧縮時に減衰力を発生させる。
アウターチューブ14およびインナーチューブ16は、両端開口の円筒状に形成され、インナーチューブ16は、アウターチューブ14と同軸上に設けられる。インナーチューブ16は、アウターチューブ14に対して軸方向に相対的に摺動可能にアウターチューブ14に挿入され、アウターチューブ14の下端部から下方に突出する。アウターチューブ14内およびインナーチューブ16内には、作動油が充填されている。また、アウターチューブ14内の上部には、ガスが充填されている。インナーチューブ16の側面には、インナーチューブ16の内外に作動油を流通させるための貫通孔16aが形成される。
図4を参照して、アウターチューブ14の下端部の内側においてインナーチューブ16には、円筒状のスライドメタル26、環状のワッシャ28および略環状のオイルシール30が嵌められる。オイルシール30は、たとえばゴム等の樹脂材料からなる。オイルシール30には、オイルシール30をインナーチューブ16の外周面に押圧するためのリングバネ32が取り付けられる。また、オイルシール30の下端部を支持するようにサークリップ34が取り付けられ、オイルシール30の下方への移動が規制される。ワッシャ28は、オイルシール30によってアウターチューブ14に押圧され、ワッシャ28の下方への移動が規制される。スライドメタル26の下端部は、ワッシャ28によって支持され、スライドメタル26の下方への移動が規制される。アウターチューブ14の下端部においてサークリップ34よりも下方には、アウターチューブ14の内周面とインナーチューブ16の外周面との間を塞ぐようにダストシール36が取り付けられる。ダストシール36は、被覆部材36aおよび被覆部材36aに埋設される略円筒状の埋設部材36bを含む。被覆部材36aは、たとえばゴム等の樹脂材料からなる。埋設部材36bは、たとえば金属からなり、被覆部材36aをアウターチューブ14に押圧する。被覆部材36aの下端部にはリングバネ38が取り付けられる。スライドメタル26、オイルシール30およびダストシール36は、インナーチューブ16の外周面に対して摺動可能になるように設けられる。また、図3を参照して、アウターチューブ14の内周面において軸方向の中央よりやや上方には、円筒状のスライドメタル40が、インナーチューブ16の外周面を摺動可能に設けられる。これらによって、インナーチューブ16はアウターチューブ14に対して軸方向に相対的に移動可能となる。
図4を参照して、インナーチューブ16の内側には、両端開口の円筒状に形成される主シリンダ18が設けられる。主シリンダ18の側面には、貫通孔18aが形成される。主シリンダ18内には、アウターチューブ14に連動しかつ主シリンダ18内を相対的に摺動する主ピストン20が設けられる。
主ピストン20は、その中央部において軸方向に延びる中空部20aを含む。また、主ピストン20には、中空部20aの外側において軸方向に貫通する複数(この実施形態では3つ)の流路20bおよび複数(この実施形態では3つ)の流路20cが形成される。流路20bと流路20cとは、中空部20aの周りに交互に設けられる。主ピストン20の上端部には、複数の流路20bを上方から覆う(蓋する)ように弁プレート42が設けられる。複数の流路20cは、弁プレート42によって覆われず(蓋されず)、開口されている。弁プレート42は、複数の中空円板状の板バネからなる。その状態の主ピストン20の中空部20aには、コネクタ44の下部が挿入される。コネクタ44は、筒状に形成され、その下部において軸方向に延びる流路44aと、径方向に延びかつ流路44aに連通される流路44bと、その上部に設けられる凹部44cとを含む。弁プレート42とコネクタ44との間には環状のワッシャ46が介挿される。コネクタ44の下端部には、カラー48,50が嵌められ、ナット52によって取り付けられる。これによって、主ピストン20がコネクタ44に固定される。主ピストン20の下端部には、複数の流路20cを下方から覆う(蓋する)ように弁プレート54が設けられる。複数の流路20bは、弁プレート54によって覆われず(蓋されず)、開口されている。弁プレート54は、中空円板状の板バネからなる。弁プレート54は、カラー48に取り付けられた弁バネ56によって支持され、上方に付勢される。主ピストン20の外周面には、ピストンリング58が設けられる。
コネクタ44の上部の凹部44cには、ピストンロッド60の下端部が取り付けられる。したがって、主ピストン20は、コネクタ44を介してピストンロッド60に接続される。ピストンロッド60にはコネクタ44よりも上方においてバネ受け部62が嵌められ、コネクタ44とバネ受け部62とによってコイルバネからなるバネ64が支持される。ピストンロッド60にはバネ受け部62よりも上方において平ワッシャ66が嵌められる。
主シリンダ18の上端部には、キャップ68が取り付けられる。キャップ68は、軸方向に延びかつピストンロッド60が挿通される貫通孔68aを有し、貫通孔68aの内周面には、円筒状のスライドメタル70が設けられる。主シリンダ18内の主ピストン20とキャップ68との間に油室Aが形成される。
図3を参照して、アウターチューブ14の上端部には、中空筒状のフォークボルト74が取り付けられる。フォークボルト74の外周部には、アウターチューブ14の内周面に接触するように、Oリング76が設けられる。フォークボルト74は、フォークボルト74の上部において下方に凹む凹部74a、フォークボルト74の下部において上方に凹む凹部74b、および凹部74aと凹部74bとを連通するようにフォークボルト74を貫通する貫通孔74cを有する。
凹部74aおよび貫通孔74cには、フォークボルト74を挿通するように中空筒状のバネ調整ボルト78が嵌め込まれる。バネ調整ボルト78と凹部74aの底部との間には、環状のセンタープレート80が設けられ、凹部74aの底部には、センタープレート80に接触するようにOリング82が設けられる。バネ調整ボルト78の外周部には、凹部74aの側面に接触するようにOリング84が設けられる。バネ調整ボルト78には、下方からワッシャ86および平ワッシャ88が嵌め込まれ、さらにナット90が螺合される。また、バネ調整ボルト78の下部内方には、ピストンロッド60の上端部が取り付けられ、ピストンロッド60には、バネ調整ボルト78の下端面に接触するようにナット92が取り付けられる。これによって、ピストンロッド60は、アウターチューブ14と連動し、コネクタ44を介してピストンロッド60に接続された主ピストン20も、アウターチューブ14と連動する。
図3および図4を参照して、ピストンロッド60、バネ調整ボルト78およびコネクタ44の内方には、軸方向に進退可能なプランジャ94が挿入される。プランジャ94は、シャフト部96、弁部98および調整部100を有する。シャフト部96は軸方向に延びる。調整部100は、シャフト部96の上端部に接続され、バネ調整ボルト78に螺合される。調整部100の外周部には、バネ調整ボルト78の内周面に接触するようにOリング102が設けられる。また、調整部100を径方向に貫通する貫通孔100a内には、バネ104および複数のボール106が設けられ、バネ104によって複数のボール106がバネ調整ボルト78の内周面に押し付けられる。弁部98はシャフト部96の下端部に接触するように設けられ、弁部98の下端部は、流路44a,44b内に臨む。弁部98には、軸方向において弁部98とコネクタ44とに挟まれるコイルバネからなるバネ108が嵌め込まれる。これによって、シャフト部96と弁部98と調整部100とが一体化される。バネ調整ボルト78には、キャップ109が取り付けられる。プランジャ94において、調整部100を回転させれば、シャフト部96および弁部98を軸方向に進退させることができ、流路44a,44b内の流路面積を変更でき、流路44a,44bを介して油室Aと油室B(後述)との間を作動油が流通するときの抵抗を調整できる。これらによって、減衰力発生部24を補助する補助的減衰力発生部を構成できる。
図5を参照して、主シリンダ18内には、主ピストン20よりもバネ138(ブラケット132)(後述)側に仕切部22が設けられる。主シリンダ18内において主ピストン20と仕切部22との間には、油室Bが形成される。
この実施形態では、仕切部22は、油室Bに作動油を流入可能なチェックバルブとして構成され、軸方向に延びる複数の貫通孔22aを有しかつ断面略U字状に形成される仕切部本体22bと、複数の貫通孔22aの上面に設けられる中空円板状の弁体22cと、ワッシャ22dと、弁バネ22eとを含む。仕切部22の中央には、ブラケット132に固定されかつ軸方向に延びるシャフト110の上端部が、ボルト111によって取り付けられる。ここで、ボルト111と仕切部本体22bとの間にはワッシャ22dが挟まれ、ワッシャ22dと弁体22cとの間に設けられた弁バネ22eによって、弁体22cが下方に付勢される。このような仕切部22では、作動油は、仕切部22を通って油室B内に流入できるが、油室Bから仕切部22を通って流出できない。仕切部22の外周部には、ピストンリング112およびOリング114が設けられる。仕切部22は、ブラケット132に固定されるインナーチューブ16に連動しかつ主シリンダ18内を相対的に摺動する。すなわち、仕切部22は、インナーチューブ16に対して移動不能にかつ主シリンダ18に対して相対的に摺動可能である。
図4を参照して、減衰力発生部24は、アウターチューブ14に対してインナーチューブ16が圧縮方向に相対的に摺動するときに油室Bから油室Aに作動油を流出させることによって減衰力を発生するために主ピストン20に設けられ、弁プレート42を含む。
緩衝器12に圧縮方向の力が作用した場合には、主ピストン20は、主シリンダ18に対して下方に移動し、仕切部22に近づく。それにより、油室Bの容積が減少し、油室Aの容積が増加する。その結果、油室B内の作動油が、流路20bを介して油室Aに流入する。ここで、上述したように、弁プレート54は、複数の流路20bを覆っていないので、油室B内の作動油が流路20bに流入する。また、作動油が流路20bから油室Aに流入する際には、作動油の油圧によって弁プレート42が弾性変形して開弁し、作動油は、流路20bの開弁された箇所から油室Aに流入する。このとき、作動油は弁プレート42の抵抗を受けつつ流通するので、緩衝器12において減衰力が発生する。このように、減衰力発生部24は、緩衝器12の圧縮時に油室Bから油室Aに作動油を流出させることによって減衰力を発生するように構成される。
一方、緩衝器12に伸長方向の力が作用した場合には、主ピストン20は、主シリンダ18に対して上方に移動し、仕切部22から遠ざかる。それにより、油室Aの容積が減少し、油室Bの容積が増加する。その結果、油室A内の作動油が、複数の流路20cを介して油室Bに流入する。上述したように、弁プレート42は、複数の流路20cを覆っていないので、油室A内の作動油が流路20cに流入する。ここで、弁バネ56としては、比較的小さな力で容易に伸縮するコイルバネが用いられる。そのため、弁バネ56は、弁プレート54を介して流路20b内の作動油から与えられる力によって容易に弾性変形する。したがって、弁プレート54は、流路20c内の作動油の力によって容易に下方に移動することができる。この場合、流路20cから油室Bに流入する作動油は、弁プレート54の抵抗をほとんど受けることなく流通することができる。したがって、油室Aから油室Bに作動油が流入する際には減衰力はほとんど発生しない。
図3を参照して、フォークボルト74の凹部74bには、中空筒状のスクリュー116が螺合される。スクリュー116は、バネ調整ボルト78とともに回転可能となるようにバネ調整ボルト78と噛み合う。スクリュー116の下端部には中空筒状のバネ受け部118が取り付けられ、キャップ68の上端部には環状のバネ受け部120(図4参照)が設けられる。バネ受け部118と120との間に、ピストンロッド60と同軸上にかつ軸方向に伸縮可能なコイルバネからなるバネ122が設けられる。バネ122の内方には、ピストンロッド60に嵌められたバネガイド124が設けられる。バネガイド124によってバネ122の位置を安定させることができる。ピストンロッド60におけるバネガイド124の上方と下方にはサークリップ126が取り付けられ、バネガイド124が支持される。
図5を参照して、主シリンダ18の下端部には、キャップ128が取り付けられる。キャップ128は、軸方向に貫通しかつシャフト110が挿通される貫通孔128aと、貫通孔128aの周りにおいて軸方向に貫通する複数の貫通孔128bとを含む。キャップ128の下端部には、環状のバネ受け部130が設けられる。
インナーチューブ16の下端部には、ブラケット132が取り付けられる。ブラケット132は、その上端から下方に向かって円柱状に凹む凹部132aと、凹部132aよりも小さい直径を有しかつ凹部132aの底面から下方に向かって円柱状に凹む凹部132bと、凹部132bよりも小さい直径を有しかつ凹部132bの底面から下方に向かって円柱状に凹む凹部132cと、凹部132cよりも小さい直径を有しかつ凹部132cの底面から下方に向かって円柱状に凹む凹部132dと、凹部132cに連通する断面L字状の空洞部132eと、凹部132bに連通する円柱状の空洞部132fと、柱状に凹みかつ空洞部132eと132fとを連通する凹部132gとを含む。凹部132a,132b,132c,132dは同軸上に形成される。インナーチューブ16の下端部は、凹部132aに取り付けられる。ブラケット132の下端部には、車軸(図示せず)を取り付けるための取付孔132hが形成される。凹部132aの内周部には、インナーチューブ16の下端部外周面に接触するようにOリング134が設けられる。凹部132aの底面および凹部132bの側面には、環状のバネ受け部136が設けられる。バネ受け部130と136との間には、軸方向に伸縮可能なコイルバネからなるレート切換え用のバネ138が設けられる。
このようにして、緩衝器12内において、バネ122およびバネ138が主シリンダ18を挟んで直列的に設けられる。バネ122は、インナーチューブ16のアウターチューブ14に対する軸方向の相対的な摺動に連動して軸方向に伸縮する。バネ138は、バネ122よりもインナーチューブ16(ブラケット132)側に設けられ、バネ122とともに軸方向に伸縮可能となる。言い換えれば、主シリンダ18は、バネ138が主シリンダ18を介してバネ122に連動可能となるように、バネ122とバネ138との間に設けられる。
図5を参照して、緩衝器12内のインナーチューブ16側には、副シリンダ140が設けられる。副シリンダ140は、インナーチューブ16の内側に設けられ、インナーチューブ16と同軸上にかつ軸方向に延びるように、ブラケット132の凹部132cに取り付けられる。ブラケット132の凹部132cの内周部には、副シリンダ140の下端部外周面に接触するようにOリング142が設けられる。副シリンダ140は、その上端部(アウターチューブ14側端部)の内面において、上方に向かって拡径する拡径部140aを有する。拡径部140aの内周部にはサークリップ144が設けられる。
副シリンダ140内には、副シリンダ140内を相対的に摺動する副ピストン146が設けられる。副ピストン146は、その中央において軸方向に延びる貫通孔146aを有し、貫通孔146aにはシャフト110が挿通される。シャフト110の下端部は、ブラケット132の凹部132dに取り付けられる。副ピストン146の外周面には、副シリンダ140の内周面に接触するように、ピストンリング148およびOリング150が設けられる。副ピストン146の内周面には、シャフト110の外周面に接触するように、スライドメタル152およびOリング154が設けられる。副ピストン146とサークリップ144との間には、カラー155が設けられる。インナーチューブ16と副シリンダ140とシャフト110とは、同軸上に設けられる。
副ピストン146の上部には、中空円筒状のロッド部156の下端部が取り付けられる。ロッド部156は、シャフト110によって貫通され、副ピストン146からアウターチューブ14側に延びる。ロッド部156の上端部には、キャップ128が取り付けられる。したがって、副ピストン146は、ロッド部156、キャップ128およびバネ受け部130を介して、バネ138に連結される。言い換えれば、バネ138と副ピストン146とを連動させるためにバネ138のバネ122側端部と副ピストン146とを連結する連結部157は、ロッド部156、キャップ128およびバネ受け部130を含む。
副シリンダ140、シャフト110、副ピストン146およびブラケット132の凹部132cによって油室Cが形成される。インナーチューブ16、連結部157、副ピストン146、副シリンダ140およびブラケット132によって油室Dが形成される。ブラケット132には、副シリンダ140内のロッド部156とは反対側のエリア(油室C)と、緩衝器12内の副シリンダ140の外側のエリア(油室D)との間を、作動油が流通するための流路158、および流路158を開閉する開閉部160が設けられる。
流路158は、空洞部132e,132f、凹部132g、筒状部162の貫通孔162b(後述)および筒状部162の内部によって形成される。
開閉部160は、凹部132gに挿入される筒状部162と、流路158(凹部132g)において筒状部162の下方に設けられるボール164と、流路158を開閉するためにボール164を位置決めする位置決め部166とを含む。筒状部162は、軸方向に延びる中空部162aと、中空部162aと空洞部132gとを連通するために径方向に貫通する貫通孔162bと、先端部に設けられるシール面162cとを含む。位置決め部166は、流路158を閉じるようにボール164を筒状部162のシール面162c(流路158)に押し付けるコイルバネからなるバネ168と、流路158を開くためにバネ168の弾発力に抗してボール164をバネ168側に押し戻す押圧部170とを含む。筒状部162の外周面には、凹部132gの内周面に接触するようにOリング172,174が設けられる。押圧部170は、シャフト部176および調整部178を有し、筒状部162に螺合される。シャフト部176は軸方向に延びる。調整部178は、シャフト部176の上端部に接続される。調整部178の外周部には、筒状部162の内周面に接触するようにOリング180が設けられる。調整部178を径方向に貫通する貫通孔178a内には、バネ182および複数のボール184が設けられ、バネ182によって複数のボール184が筒状部162の内周面に押し付けられる。筒状部162の上端部には、キャップ186が取り付けられる。このような開閉部160において、調整部178を回転させれば、シャフト部176を軸方向に進退させることができ、流路158を開閉できる。流路158が閉じられ油室C内の作動油が封止されると副ピストン146は副シリンダ140内を摺動不能となるとともにバネ138は伸縮不能となり、一方、流路158が開かれると副ピストン146は副シリンダ140内を摺動可能となるとともにバネ138は伸縮可能となる。
上述の実施形態では、アウターチューブ14が第1チューブに相当する。インナーチューブ16が第2チューブに相当する。バネ122が第1バネに相当する。バネ138が第2バネに相当する。バネ168が第3バネに相当する。主シリンダ18が第2シリンダに相当する。副シリンダ140が第1シリンダに相当する。主ピストン20が第2ピストンに相当する。副ピストン146が第1ピストンに相当する。
このような懸架装置10において開閉部160が流路158を開けている場合、最伸長時には図1に示す状態、中間時には図6に示す状態、最圧縮時には図7に示す状態となる。
図8(a)を参照して、開閉部160が流路158を開けている場合において、緩衝器12が圧縮されると、主シリンダ18内を主ピストン20が下方に摺動し、油室Aの容積が広くなり、油室Bの容積が狭くなる。このとき、油室B内の作動油が主ピストン20および減衰力発生部24を通って油室Aに移動し、圧縮側減衰力を発生させる。また、油室Aの容積の増加量と油室Bの容積の減少量との差に応じて、油室A内の作動油が主シリンダ18の貫通孔18aを通って主シリンダ18の外側に移動する。さらに、油室C内の作動油は、流路158を通って油室Dに移動可能であるので、主シリンダ18の下方への移動に伴って、連結部157を介して副ピストン146が副シリンダ140内を下方に摺動すると、油室C内の作動油は、流路158を通って油室Dに移動する。さらに、油室D内の作動油は、キャップ128の貫通孔128bを通って、主シリンダ18内の仕切部22とキャップ128との間に形成される油室Eに移動するとともに、インナーチューブ16とバネ受け部130との隙間を通って、主シリンダ18の外部にも移動できる。
一方、図8(b)を参照して、開閉部160が流路158を開けている場合において、緩衝器12が伸長されると、主シリンダ18内を主ピストン20が上方に摺動し、油室Aの容積が狭くなり、油室Bの容積が広くなる。このとき、油室A内の作動油が主ピストン20を通って油室Bに移動するとともに、油室Eの作動油がチェックバルブとして構成される仕切部22を通って油室Bに移動する。また、油室Aの容積の減少量と油室Bの容積の増加量との差に応じて、主シリンダ18の外側の作動油が主シリンダ18の貫通孔18aを通って油室A内に移動する。さらに、油室D内の作動油は、流路158を通って油室Cに移動可能であるので、主シリンダ18の上方への移動に伴って、連結部157を介して副ピストン146が副シリンダ140内を上方に摺動すると、油室D内の作動油は、流路158を通って油室Cに移動する。さらに、油室E内の作動油が、キャップ128の貫通孔128bを通って油室Dに移動するとともに、主シリンダ18の外側の作動油が、インナーチューブ16とバネ受け部130との隙間を通って油室Dに移動できる。
流路158を開いている場合には、上述のような作動油の流れに伴って、バネ122および138が伸縮され、緩衝器12のバネレートは、バネ122のバネレートとバネ138のバネレートとが合成された低レートに設定される。
また、懸架装置10において開閉部160が流路158を閉じている場合、最伸長時には図5に示す状態(ボール164が2点鎖線の位置にある状態)、最圧縮時には図9に示す状態となる。
図10(a)を参照して、副ピストン146が副シリンダ140内において上死点に位置する状態で開閉部160が流路158を閉じている場合において、緩衝器12が圧縮されると、主シリンダ18内を主ピストン20が下方に摺動し、油室Aの容積が広くなり、油室Bの容積が狭くなる。このとき、油室B内の作動油が主ピストン20および減衰力発生部24を通って油室Aに移動し、圧縮側減衰力を発生させる。また、油室Aの容積の増加量と油室Bの容積の減少量との差に応じて、油室A内の作動油が主シリンダ18の貫通孔18aを通って主シリンダ18の外側に移動する。しかし、斜線部分(油室Cおよび流路158)が密閉され、油室C内の作動油は、流路158を通って油室Dに移動不能であるので、副ピストン146は副シリンダ140内を下方に摺動せず、油室Cおよび油室D内の作動油は移動しない。
一方、図10(b)を参照して、副ピストン146が副シリンダ140内において上死点に位置する状態で開閉部160が流路158を閉じている場合において、緩衝器12が伸長されると、主シリンダ18内を主ピストン20が上方に摺動し、油室Aの容積が狭くなり、油室Bの容積が広くなる。このとき、油室A内の作動油が主ピストン20を通って油室Bに移動する。また、油室Aの容積の減少量と油室Bの容積の増加量との差に応じて、主シリンダ18の外側の作動油が主シリンダ18の貫通孔18aを通って油室A内に移動する。しかし、斜線部分(油室Cおよび流路158)が密閉され、油室D内の作動油は流路158を通って油室Cに移動不能であり、バネ138は圧縮されていないので、副ピストン146は副シリンダ140内を上方に摺動せず、油室Cおよび油室D内の作動油は移動しない。
流路158を閉じている場合には、上述のような作動油の流れに伴って、バネ122および138のうちバネ122のみが伸縮され、緩衝器12のバネレートは、バネ122のバネレートとなり、高レートに設定される。
このような懸架装置10によれば、バネ122,138、副シリンダ140、副ピストン146および連結部157が、緩衝器12内に設けられる。開閉部160によって流路158が閉じられると、油室Cと油室Dとの間を作動油が流通不能となる。すると、副ピストン146は副シリンダ140内を摺動不能となり、それに伴って、副ピストン146に連結部157を介して連結されるバネ138も伸縮不能となる。したがって、アウターチューブ14とインナーチューブ16との軸方向の相対的な移動による緩衝器12の伸縮に伴って、緩衝器12内のバネ122およびバネ138のうちバネ122だけが伸縮する。この場合、バネ122のバネレート(高レート)に基づいて緩衝器12の反力が得られる。一方、開閉部160によって流路158が開かれると、油室Bと油室Cとの間を作動油が流路158を介して流通可能になる。すると、副ピストン146は副シリンダ140内を摺動可能となり、それに伴って、副ピストン146に連結部157を介して連結されるバネ138も伸縮可能となる。したがって、アウターチューブ14とインナーチューブ16との軸方向の相対的な移動による緩衝器12の伸縮に伴って、緩衝器12内のバネ122およびバネ138の両方が伸縮する。この場合、バネ122のバネレートとバネ138のバネレートとが合成されたバネレート(低レート)に基づいて緩衝器12の反力が得られる。このようにして、懸架装置10の寸法を抑制しつつバネ反力を変更できる。
位置決め部166によってボール164を、流路158を閉じる位置または開く位置に容易に位置決めできる。
バネ168によってボール164を流路158に押しつけると、流路158が閉じられる。流路158を閉じた状態のボール164に対してバネ168の弾発力に抗して押圧部170によってボール164を押し戻すと、流路158が開かれる。このように流路158を容易に開閉できる。
バネ138が縮んでいる状態でボール164によって流路158が閉じられても、バネ138の弾発力によって副ピストン146に対してアウターチューブ14方向に力が加わると、副シリンダ140内に発生する負圧によってボール164がバネ168の弾発力に抗して吸引され、流路158が開かれる。すると、副シリンダ140内に作動油が流入可能となり、副ピストン146が副シリンダ140内をアウターチューブ14側に摺動するとともに、バネ138が伸長される。このようにボール164、バネ168および押圧部170は、流路158を閉じている状態においてリリーフバルブとして機能する。したがって、たとえば緩衝器12のストローク中央で流路158が開閉部160によって閉じられた場合でも、緩衝器12の伸長工程時には流路158が開かれ副シリンダ140内部に作動油を供給することが可能となる。その後、緩衝器12の圧縮工程に切替われば、バネ168および副シリンダ140の内圧上昇によってボール164が押され、ボール164によって再び流路158が閉じられる。これにより、たとえば懸架装置10を搭載した車両に運転者が乗車した状態など緩衝器12がある程度ストロークした状態で、ボール164によって流路158が閉じられても、流路158が開かれている場合と同様に緩衝器12を伸長でき、緩衝器12としてのストロークが犠牲になることを防ぐことができる。
副シリンダ140に拡径部140aを設けると、副ピストン146が副シリンダ140内において上死点に達した際に、副ピストン146と拡径部140aとの間に比較的大きなギャップを設けることができ、また、副ピストン146の外周にOリング150を取り付けたとき、副シリンダ140によるOリング150の締め付けは緩くなる。したがって、たとえば、このような懸架装置10を搭載した車両を長時間走行させた後、副ピストン146を上死点に位置させかつ流路158を閉じて副シリンダ140内を密閉した状態で懸架装置10を長期間放置した場合であっても、ブレーキ熱の伝播による副シリンダ140内の作動油の体積膨張によって起こる内圧上昇を抑制でき、副シリンダ140やOリング150の破損を抑制できる。また、組立時において副ピストン146の外周にOリング150を取り付け易くなり、給油時において副シリンダ140からのエア抜きが容易になる。
上述の作用効果は、後述する懸架装置10a,10bにおいても同様に奏することができる。
アウターチューブ14に対してインナーチューブ16が相対的に摺動して緩衝器12が圧縮すると、アウターチューブ14に連動するピストン20がシリンダ18内を相対的にインナーチューブ16方向に摺動する。このとき、シリンダ18内においてピストン20と仕切部22との間で形成される油室Bの油圧が、緩衝器12内における油室Bの外側のエリアの油圧より大きくなり、油室Bから油室Aにピストン20および減衰力発生部24を介して作動油を流出させることによって減衰力が発生する。このようにして圧縮工程時に容易に減衰力を発生できる懸架装置10において、懸架装置10の寸法を抑制しつつバネ反力を変更できる。また、流路158が開かれている場合、バネ138が伸縮可能になるので、緩衝器12の圧縮工程時および伸長工程時にピストン20およびシリンダ18はインナーチューブ16に対して同じ方向に移動する。これによって、ピストン20およびシリンダ18相互の摺動距離は緩衝器12のストローク(アウターチューブ14およびインナーチューブ16相互の摺動距離)より短くなり、ピストン20のシリンダ18に対する摺動速度は圧縮工程時および伸長工程時における緩衝器12の圧縮速度および伸長速度より小さくなる。したがって、シリンダ18を固定する場合と比較して、ピストン20およびシリンダ18相互の摺動による磨耗を少なくできる。
圧縮工程時にアウターチューブ14とインナーチューブ16との相対的な移動に連動してシリンダ18およびピストン20が軸方向に移動しても、仕切部22は、インナーチューブ16に対して移動不能であるので、シリンダ18内においてピストン20と仕切部22との間で形成される油室Bの作動油が十分に圧縮される。したがって、油室Bの油圧が、緩衝器12内における油室Bの外側のエリアの油圧より確実に大きくなり、十分な減衰力が得られる。
伸長工程時にはチェックバルブとして構成された仕切部22を介してシリンダ18内の油室Bに作動油を素早く供給できる。したがって、高速ストロークにおける伸長工程時であっても、シリンダ18内の油室Bに作動油を素早く供給でき、油室B内の作動油が不足することを防止して、高速ストロークへの応答性を向上できる。特に、流路158が開かれている場合の伸長工程時において緩衝器12のストロークに伴ってシリンダ18が軸方向に移動可能な場合に効果的である。また、圧縮工程時にはチェックバルブとして構成された仕切部22は即座に閉じられ、油室Bは圧縮側減衰力を発生させる圧力室となる。
ついで、図11〜図14を参照して、この発明の他の実施形態に係る懸架装置10aについて説明する。懸架装置10aは、緩衝器12aの伸長時に減衰力を発生させる装置であり、たとえば自動二輪車のフロントフォークに適用される。
懸架装置10aは緩衝器12aを含む。緩衝器12aは、アウターチューブ14、インナーチューブ16、主シリンダ188、主ピストン20、仕切部として機能するキャップ68および減衰力発生部190を含み、作動油を用いて伸長時に減衰力を発生させる。
図13および図14を参照して、主シリンダ188は、両端開口の円筒状に形成され、インナーチューブ16の内側に設けられる。主シリンダ188の側面には、貫通孔188a,188bが形成される(図11参照)。主シリンダ188内には、アウターチューブ14に連動しかつ主シリンダ188内を相対的に摺動する主ピストン20が設けられる。但し、この実施形態と図1に示す実施形態とでは、主ピストン20の向きが逆になる。したがって、主ピストン20の上端部には、複数の流路20cを上方から覆う(蓋する)ように弁プレート54が設けられる。複数の流路20bは、弁プレート54によって覆われず(蓋されず)、開口されている。主ピストン20とコネクタ44との間にカラー48が挟まれるように、主ピストン20の中空部20aには、コネクタ44の下部が挿入される。弁プレート54は、カラー48に取り付けられた弁バネ56によって支持され、下方に付勢される。さらに、主ピストン20の下端部には、複数の流路20bを下方から覆う(蓋する)ように弁プレート192が設けられる。複数の流路20cは、弁プレート192によって覆われず(蓋されず)、開口されている。弁プレート192は、複数の中空円板状の板バネからなる。コネクタ44の下端部には、カラー50が嵌められ、ナット194によって取り付けられる。ナット194には、軸方向に貫通する複数の貫通孔194aが設けられる。
主シリンダ188の上端部には、キャップ68が取り付けられる。この実施形態では、キャップ68は、主ピストン20からみて副シリンダ206(後述)とは反対側において主シリンダ188に設けられる仕切部として機能する。主シリンダ188内において主ピストン20とキャップ68との間には、油室A1が形成される。主シリンダ188内において主ピストン20とバネ受け部218(後述)との間には、油室B1が形成される。
減衰力発生部190は、アウターチューブ14に対してインナーチューブ16が伸長方向に相対的に摺動するときに油室A1から作動油を流出させることによって減衰力を発生するために主ピストン20に設けられ、弁プレート192を含む。
緩衝器12aに伸長方向の力が作用した場合には、主シリンダ188に対して主ピストン20が上方に移動する。それにより、油室A1の容積が減少し、油室B1の容積が増加する。その結果、油室A1内の作動油が、流路20bを介して油室B1に流入する。このとき、減衰力発生部190は、図1に示す実施形態において緩衝器12が圧縮される場合の減衰力発生部24と同様に機能して、緩衝器12aの伸長時に油室A1から油室B1に作動油を流出させることによって減衰力を発生させる。
一方、緩衝器12aに圧縮方向の力が作用した場合には、主シリンダ188に対して主ピストン20が下方に移動する。それにより、油室B1の容積が減少し、油室A1の容積が増加する。その結果、油室B1内の作動油が、流路20cを介して油室A1に流入する。このとき、図1に示す実施形態において緩衝器12の伸長時に油室Aから油室Bに作動油が流入する際と同様に、緩衝器12aの圧縮時に油室B1から油室A1に作動油が流入する際には減衰力はほとんど発生しない。
図12を参照して、この実施形態において、アウターチューブ14の上端部に取り付けられるフォークボルト196は、図1に示す実施形態のフォークボルト74より軸方向の寸法が小さい。また、この実施形態におけるピストンロッド198およびプランジャ200のシャフト部202は、図1に示す実施形態におけるピストンロッド60およびシャフト部96より短い。
図14を参照して、インナーチューブ16の下端部には、ブラケット204が取り付けられる。ブラケット204は、その上端から下方に向かって円柱状に凹む凹部204aと、凹部204aよりも小さい直径を有しかつ凹部204aの底面から下方に向かって円柱状に凹む凹部204bと、凹部204bよりも小さい直径を有しかつ凹部204bの底面から下方に向かって円柱状に凹む凹部204cと、凹部204cよりも小さい直径を有しかつ凹部204cの底面から下方に向かって円柱状に凹む凹部204dと、凹部204dに連通する柱状の空洞部204eと、凹部204aに連通する断面L字状の空洞部204fと、柱状に凹みかつ空洞部204eと204fとを連通する凹部204gとを含む。凹部204a,204b,204c,204dは同軸上に形成される。ブラケット204の下端部には、車軸(図示せず)を取り付けるための取付孔204hが形成される。
凹部204aにはインナーチューブ16の下端部が取り付けられ、凹部204bには、主シリンダ188の下端部が取り付けられ、凹部204cには、副シリンダ206の下端部が取り付けられる。インナーチューブ16、主シリンダ188および副シリンダ206は、軸方向に延びかつ同軸上に形成される。このようにして主シリンダ188は、ブラケット204に直接固定され、インナーチューブ16に対して移動不能に設けられる。凹部204cの内周部には、副シリンダ206の下端部外周面に接触するようにOリング208が設けられる。また、凹部204gには、開閉部160が設けられる。
副シリンダ206は、その上端部(アウターチューブ14側端部)の内面において、上方に向かって拡径する拡径部206aを有する。副シリンダ206内には、副シリンダ206内を相対的に摺動する副ピストン210が設けられる。副ピストン210は、その中央において凹部210aを有する。副ピストン210の外周面には、副シリンダ206の内周面に接触するように、ピストンリング212およびOリング214が設けられる。
副ピストン210の凹部210aには、軸方向に延びる円柱状のロッド部216の下端部が取り付けられる。ロッド部216の上端部は、円板状のバネ受け部218に取り付けられる。バネ受け部218は、その中央に設けられる凹部218aと、凹部218aの周りに設けられる複数の貫通孔218bとを有し、主シリンダ188の内周面を摺動可能に設けられる。バネ受け部218の凹部218aに、ロッド部216の上端部が取り付けられる。バネ受け部218の外周面にはピストンリング220が設けられる。このようなロッド部216とバネ受け部218とによって、副ピストン210とバネ228(後述)とが連結される連結部222が構成される。
図13および図14を参照して、ナット194の下面には、バネ受け部224が設けられ、バネ受け部218とバネ受け部224との間にコイルバネからなるバネ226が設けられる。また、バネ受け部218とブラケット204の凹部204bの底面との間にコイルバネからなるレート切換え用のバネ228が設けられる。このようにして、緩衝器12内において、バネ226およびバネ228がバネ受け部218を挟んで直列的に設けられる。バネ226は、インナーチューブ16のアウターチューブ14に対する軸方向の相対的な摺動に連動して軸方向に伸縮する。バネ228は、バネ226よりもインナーチューブ16(ブラケット204)側に設けられ、バネ226とともに軸方向に伸縮可能となる。
バネ226、バネ228、副シリンダ206および連結部222は、主シリンダ188内において主ピストン20よりもインナーチューブ16側に設けられる。
副シリンダ206内において副ピストン210とブラケット204の凹部204cとの間には、油室C1が形成される。
また、ブラケット204において、副シリンダ206内のロッド部216とは反対側のエリア(油室C1)と、緩衝器12a内の主シリンダ188の外側のエリア(油室D1)との間を、作動油が流通するための流路230が形成される。流路230は、空洞部204e,204f、凹部204d,204g、筒状部162の貫通孔162bおよび筒状部162の内部によって形成される。
なお、懸架装置10aにおいて、図1に示す実施形態の懸架装置10と同様の構成要素については、同一の符号を付することによって、その説明は省略する。また、アウターチューブ14の下端部とインナーチューブ16との間の構造については、図1に示す実施形態と同様であるので、図1に示す実施形態についての説明を参照することによって容易に理解できよう。
上述の実施形態では、アウターチューブ14が第1チューブに相当する。インナーチューブ16が第2チューブに相当する。バネ226が第1バネに相当する。バネ228が第2バネに相当する。バネ168が第3バネに相当する。主シリンダ188が第2シリンダに相当する。副シリンダ206が第1シリンダに相当する。主ピストン20が第2ピストンに相当する。副ピストン210が第1ピストンに相当する。
図15(a)を参照して、開閉部160が流路230を開けている場合において、緩衝器12aが伸長されると、主シリンダ188内を主ピストン20が上方に摺動し、油室A1の容積が狭くなり、油室B1の容積が広くなる。このとき、油室A1内の作動油が主ピストン20および減衰力発生部190を通って油室B1に移動し、伸長側減衰力を発生させる。また、油室A1の容積の減少量と油室B1の容積の増加量との差に応じて、主シリンダ188の外側の油室D1内の作動油が主シリンダ188の貫通孔188aを通って油室B1に移動する。また、主ピストン20の上方への移動に伴って、連結部222を介して副ピストン210が副シリンダ206内を上方に摺動すると、油室B1内の作動油は、バネ受け部218の貫通孔218b、バネ受け部218の下方の油室E1および主シリンダ188の貫通孔188bを通って、主シリンダ188の外側の油室D1に移動する。油室E1は、主シリンダ188内においてバネ受け部218とブラケット204の凹部204bとの間に形成される。さらに、油室D1内の作動油は、流路230を通って油室C1に移動する。
一方、図15(b)を参照して、開閉部160が流路230を開けている場合において、緩衝器12aが圧縮されると、主シリンダ188内を主ピストン20が下方に摺動し、油室B1の容積が狭くなり、油室A1の容積が広くなる。このとき、油室B1内の作動油は、主ピストン20を通って油室A1に移動するとともに、油室B1の容積の減少量と油室A1の容積の増加量との差に応じて、主シリンダ188の貫通孔188aを通って主シリンダ188の外側の油室D1に移動する。また、主ピストン20の下方への移動に伴って、連結部222を介して副ピストン210が副シリンダ206内を下方に摺動すると、油室C1内の作動油は、流路230を通って油室D1に移動する。さらに、油室D1内の作動油の一部は、主シリンダ188の貫通孔188bを通って油室E1に移動し、油室E1内の作動油は、バネ受け部218の貫通孔218bを通って油室B1に移動する。
流路230を開いている場合には、上述のような作動油の流れに伴って、バネ226および228が伸縮され,緩衝器12aのバネレートは、バネ226のバネレートとバネ228のバネレートとが合成された低レートに設定される。
図16(a)を参照して、副ピストン210が副シリンダ206内において上死点に位置する状態で開閉部160が流路230を閉じている場合において、緩衝器12aが伸長されると、主シリンダ188内を主ピストン20が上方に摺動し、油室A1の容積が狭くなり、油室B1の容積が広くなる。このとき、油室A1内の作動油が主ピストン20および減衰力発生部190を通って油室B1に移動し、伸長側減衰力を発生させる。また、油室A1の容積の減少量と油室B1の容積の増加量との差に応じて、主シリンダ188の外側の油室D1内の作動油が主シリンダ188の貫通孔188aを通って油室B1に移動する。しかし、斜線部分(油室C1および流路230)が密閉され、油室D1内の作動油は流路230を通って油室C1に移動不能であり、バネ228は圧縮されていないので、副ピストン210は副シリンダ206内を上方に摺動せず、油室C1内の作動油は移動しない。
一方、図16(b)を参照して、副ピストン210が副シリンダ206内において上死点に位置する状態で開閉部160が流路230を閉じている場合において、緩衝器12aが圧縮されると、主シリンダ188内を主ピストン20が下方に摺動し、油室B1の容積が狭くなり、油室A1の容積が広くなる。このとき、油室B1内の作動油は、主ピストン20を通って油室A1に移動するとともに、油室B1の容積の減少量と油室A1の容積の増加量との差に応じて、主シリンダ188の貫通孔188aを通って主シリンダ188の外側の油室D1に移動する。しかし、斜線部分(油室C1および流路230)が密閉され、油室C1内の作動油は、流路230を通って油室D1に移動不能であるので、副ピストン210は副シリンダ206内を下方に摺動せず、油室C1内の作動油は移動しない。
流路230を閉じている場合には、上述のような作動油の流れに伴って、バネ226および228のうちバネ226のみが伸長され、緩衝器12aのバネレートは、バネ226のバネレートとなり、高レートに設定される。
このような懸架装置10aによれば、緩衝器12aが伸長すると、アウターチューブ14に連動する主ピストン20が主シリンダ188内を相対的にアウターチューブ14方向に摺動する。このとき、主シリンダ188内の主ピストン20と仕切部として機能するキャップ68との間に形成される油室A1の油圧が、緩衝器12a内における油室A1の外側のエリアの油圧より大きくなり、油室A1から主ピストン20および減衰力発生部190を介して作動油を油室B1に流出させることによって減衰力が発生する。このようにして伸長工程時に容易に減衰力を発生できる懸架装置10aにおいて、懸架装置10aの寸法を抑制しつつバネ反力を変更できる。また、バネ226,228、副シリンダ206、連結部222、副ピストン210および仕切部であるキャップ68を主シリンダ188内において主シリンダ188の軸方向に並ぶように配置できるので、アウターチューブ14およびインナーチューブ16の径方向の寸法を抑制した懸架装置10aを得ることができる。
さらに、図17を参照して、この発明のその他の実施形態に係る懸架装置10bについて説明する。懸架装置10bは、緩衝器12bの伸長時に減衰力を発生させる装置であり、たとえば自動二輪車のフロントフォークに適用される。
懸架装置10bは緩衝器12bを含む。緩衝器12bは、アウターチューブ14、インナーチューブ16、主シリンダ232、主ピストン20、仕切部として機能するキャップ234、減衰力発生部190およびシャフト236を含み、作動油を用いて伸長時に減衰力を発生させる。
主シリンダ232は、両端開口の円筒状に形成され、インナーチューブ16の内側において副シリンダ246(後述)よりもアウターチューブ14側に位置する。主シリンダ232の側面には、貫通孔232aが形成される。図19を参照して、主シリンダ232内には、アウターチューブ14に連動しかつ主シリンダ232内を相対的に摺動する主ピストン20が設けられる。但し、この実施形態と図1に示す実施形態とでは、主ピストン20の向きが逆になり、この実施形態では、ナット194に代えてナット52を用いる点を除いて図11に示す実施形態と同様に構成される。
主シリンダ232の上端部には、キャップ234が取り付けられる。この実施形態では、キャップ234は、主ピストン20からみて副シリンダ246とは反対側において主シリンダ232に設けられる仕切部として機能する。主シリンダ232内において主ピストン20とキャップ234との間には、油室A2が形成される。主シリンダ232内において主ピストン20とキャップ244(後述)との間には、油室B2が形成される。
減衰力発生部190は、アウターチューブ14に対してインナーチューブ16が伸長方向に相対的に摺動するときに油室A2から作動油を流出させることによって減衰力を発生するために主ピストン20に設けられ、弁プレート192を含み、図11に示す実施形態における減衰力発生部190と同様に機能する。
この実施形態におけるピストンロッド238およびプランジャ240のシャフト部242は、図1に示す実施形態におけるピストンロッド60およびシャフト部96より短い。
図20を参照して、主シリンダ232の下端部には、キャップ244が取り付けられる。キャップ244は、断面略U字状に形成され、その中央に凹部244aを有する。キャップ244の凹部244aには、軸方向に延びるシャフト236の上端部が取り付けられ、シャフト236の下端部は、ブラケット132の凹部132dに取り付けられる。また、ブラケット132の凹部132aには、インナーチューブ16の下端部が取り付けられ、凹部132cには、副シリンダ246の下端部が取り付けられる。インナーチューブ16、副シリンダ246およびシャフト236は、軸方向に延びかつ同軸上に形成される。主シリンダ232は、副シリンダ246および副ピストン146に挿通されるシャフト236を介してブラケット132に支持され、インナーチューブ16に対して移動不能に固定される。
副シリンダ246は、その上端部(アウターチューブ14側端部)の内面において、上方に向かって拡径する拡径部246aを有する。副シリンダ246内には、副シリンダ246内を相対的に摺動する副ピストン146が設けられる。
副ピストン146の上部には、中空円筒状のロッド部248の下端部が取り付けられる。ロッド部248は、シャフト236によって貫通され、副ピストン146からアウターチューブ14側に延び、ロッド部248の上端部にはキャップ128が取り付けられる。この実施形態では、キャップ128はバネ受け部として機能する。
図18〜図20を参照して、バネ受け部118とキャップ128との間には、中空円筒状のカラー250とコイルバネからなるバネ252とが直列的に設けられる。また、キャップ128の下面に設けられたバネ受け部130とブラケット132の凹部132a,132bに設けられたバネ受け部136との間には、コイルバネからなるレート切換え用のバネ254が設けられる。このようにして、緩衝器12b内において、バネ252およびバネ254がキャップ128およびバネ受け部130を挟んで直列的に設けられる。バネ252は、インナーチューブ16のアウターチューブ14に対する軸方向の相対的な摺動に連動して軸方向に伸縮する。バネ254は、バネ252よりもインナーチューブ16(ブラケット132)側に設けられ、バネ252とともに軸方向に伸縮可能となる。
また、副ピストン146は、ロッド部248、キャップ128およびバネ受け部130を介して、バネ254に連結される。言い換えれば、バネ254と副ピストン146とを連動させるためにバネ254のバネ252側端部と副ピストン146とを連結する連結部256は、ロッド部248、キャップ128およびバネ受け部130を含む。バネ252,254および連結部256は、インナーチューブ16内において主シリンダ232の外部に設けられる。
なお、懸架装置10bにおいて、図1に示す実施形態の懸架装置10と同様の構成要素については、同一の符号を付することによって、その説明は省略する。また、アウターチューブ14の下端部とインナーチューブ16との間の構造については、図1に示す実施形態と同様であるので、図1に示す実施形態についての説明を参照することによって容易に理解できよう。
上述の実施形態では、アウターチューブ14が第1チューブに相当する。インナーチューブ16が第2チューブに相当する。バネ252が第1バネに相当する。バネ254が第2バネに相当する。バネ168が第3バネに相当する。主シリンダ232が第2シリンダに相当する。副シリンダ246が第1シリンダに相当する。主ピストン20が第2ピストンに相当する。副ピストン146が第1ピストンに相当する。
図21(a)を参照して、開閉部160が流路158を開けている場合において、緩衝器12bが伸長されると、主シリンダ232内を主ピストン20が上方に摺動し、油室A2の容積が狭くなり、油室B2の容積が広くなる。このとき、油室A2内の作動油が主ピストン20および減衰力発生部190を通って油室B2に移動し、伸長側減衰力を発生させる。また、油室A2の容積の減少量と油室B2の容積の増加量との差に応じて、主シリンダ232の外側の油室E2内の作動油が主シリンダ232の貫通孔232aを通って油室B2に移動する。油室E2は、緩衝器12b内の主シリンダ232の外側のエリアである。また、主ピストン20の上方への移動に伴って、連結部256を介して副ピストン146が副シリンダ246内を上方に摺動すると、インナーチューブ16内のキャップ128とキャップ244との間に形成される油室E2が狭くなり、油室E2内の作動油は、キャップ128の貫通孔128b、およびインナーチューブ16とバネ受け部130との隙間を通って、油室D2に移動する。さらに、油室D2内の作動油は、流路158を通って油室C2に移動する。油室C2は、副シリンダ246内において副ピストン146とブラケット132の凹部132cとの間に形成される。油室D2は、インナーチューブ16、連結部256、副ピストン146、副シリンダ246およびブラケット132によって形成される。
一方、図21(b)を参照して、開閉部160が流路158を開けている場合において、緩衝器12bが圧縮されると、主シリンダ232内を主ピストン20が下方に摺動し、油室B2の容積が狭くなり、油室A2の容積が広くなる。このとき、油室B2内の作動油は、主ピストン20を通って油室A2に移動するとともに、油室B2の容積の減少量と油室A2の容積の増加量との差に応じて、主シリンダ232の貫通孔232aを通って主シリンダ232の外側の油室E2に移動する。また、主ピストン20の下方への移動に伴って、連結部256を介して副ピストン146が副シリンダ246内を下方に摺動すると、油室E2が広くなり、油室C2内の作動油は、流路158を通って油室D2に移動する。さらに、油室D2内の作動油は、キャップ128の貫通孔128b、およびインナーチューブ16とバネ受け部130との隙間を通って油室E2に移動する。
流路158を開いている場合には、上述のような作動油の流れに伴って、バネ252および254が伸縮され,緩衝器12bのバネレートは、バネ252のバネレートとバネ254のバネレートとが合成された低レートに設定される。
図22(a)を参照して、副ピストン146が副シリンダ246内において上死点に位置する状態で開閉部160が流路158を閉じている場合において、緩衝器12bが伸長されると、主シリンダ232内を主ピストン20が上方に摺動し、油室A2の容積が狭くなり、油室B2の容積が広くなる。このとき、油室A2内の作動油が主ピストン20および減衰力発生部190を通って油室B2に移動し、伸長側減衰力を発生させる。また、油室A2の容積の減少量と油室B2の容積の増加量との差に応じて、主シリンダ232の外側の油室E2内の作動油が主シリンダ232の貫通孔232aを通って油室B2に移動する。しかし、斜線部分(油室C2および流路158)が密閉され、油室D2内の作動油は流路158を通って油室C2に移動不能であり、バネ254は圧縮されていないので、副ピストン146は副シリンダ246内を上方に摺動せず、油室C2および油室D2内の作動油は移動しない。
一方、図22(b)を参照して、副ピストン146が副シリンダ246内において上死点に位置する状態で開閉部160が流路158を閉じている場合において、緩衝器12bが圧縮されると、主シリンダ232内を主ピストン20が下方に摺動し、油室B2の容積が狭くなり、油室A2の容積が広くなる。このとき、油室B2内の作動油は、主ピストン20を通って油室A2に移動するとともに、油室B2の容積の減少量と油室A2の容積の増加量との差に応じて、主シリンダ232の貫通孔232aを通って主シリンダ188の外側の油室E2に移動する。しかし、斜線部分(油室C2および流路158)が密閉され、油室C2内の作動油は、流路158を通って油室D2に移動不能であるので、副ピストン146は副シリンダ246内を下方に摺動せず、油室C2および油室D2内の作動油は移動しない。
流路158を閉じている場合には、上述のような作動油の流れに伴って、バネ252および254のうちバネ252のみが伸長され、緩衝器12bのバネレートは、バネ252のバネレートとなり、高レートに設定される。
このような懸架装置10bによれば、緩衝器12bが伸長すると、アウターチューブ14に連動する主ピストン20が主シリンダ232内を相対的にアウターチューブ14方向に摺動する。このとき、主シリンダ232内において主ピストン20と仕切部として機能するキャップ234との間で形成される油室A2の油圧が、緩衝器10b内における油室A2の外側のエリアの油圧より大きくなり、油室A2から主ピストン20および減衰力発生部190を介して作動油を油室B2に流出させることによって減衰力が発生する。このようにして伸長工程時に容易に減衰力を発生できる懸架装置10bにおいて、懸架装置10bの寸法を抑制しつつバネ反力を変更できる。また、バネ252および254はインナーチューブ16内において主シリンダ232の外部に設けられるので、バネ252および/またはバネ254を長くすることにより緩衝器12bのストロークを長くすることが容易になり、緩衝器12bのストロークを長くする必要がない場合には緩衝器12bの軸方向の寸法を抑制した懸架装置10bを容易に得ることができる。したがって、設計自由度の高い懸架装置10bを得ることができる。
なお、図1に示す実施形態において仕切部22は、チェックバルブとして構成されたが、これに限定されず、チェックバルブとして構成されなくてもよい。
図17に示す実施形態において、キャップ244は、図1に示す実施形態における仕切部22と同様のチェックバルブとして構成されてもよい。
図17に示す実施形態において、カラー250とバネ252との位置が入れ替えられてもよい。
上述の実施形態では、位置決め部166の押圧部170は、シャフト部176および調整部178を有し、筒状部162に螺合され、調整部178を回転させて流路158を開閉する場合について説明したが、これに限定されない。位置決め部の押圧部は、筒状部に螺合されることなく、手動またはモータやソレノイド等を用いて自動で進退させて流路158を開閉するようにしてもよい。
上述の実施形態に係る懸架装置10,10a,10bは、上下逆に配置されてもよく、斜めや水平方向に配置されてもよい。
上述の実施形態に係る複数の懸架装置10,10a,10bをフロントフォークに適用する場合、圧縮側減衰力を発生させる懸架装置10と、伸長側減衰力を発生させる周知の懸架装置とを組み合わせてもよく、圧縮側減衰力を発生させる周知の懸架装置と、伸長側減衰力を発生させる懸架装置10a(10b)とを組み合わせてもよく、懸架装置10と懸架装置10a(10b)とを組み合わせてもよい。
この発明は、自動二輪車のフロントフォークだけではなく、リアサスペンションに適用されてもよい。また、この発明は、自動二輪車以外の任意の輸送機器に適用できる。たとえば、この発明は、不整地走行用車両(ALL−TERRAIN VEHICLE)、スノーモービル等の鞍乗り型車両にも適用でき、三輪または四輪以上の鞍乗り型車両にも適用できる。