しかしながら、上記特許文献1に示されるような従来のエアドロップハンマを用いた鍛造作業は、作業者の勘やコツに頼らざるを得ない作業であり、安定した鍛造を行うには、作業者の熟練度が必要になる。
そこで、エアドロップハンマを用いた鍛造の作業結果のデータを有効活用して、望ましいペダルの踏み方(ペダルの踏み代(踏み幅)、ペダルを踏む速さ、ペダルを踏む速さの変化のさせ方等)を調べるという対策が考えられる。しかしながら、ベテランの作業者による鍛造作業であっても、出来上がった製品の品質には、バラツキがあることから、ベテランの作業者でも、必ずしも、同じようなペダルの踏み方をしているとは限らない。また、鍛造の作業結果の履歴データから、望ましいペダルの踏み方を判断するには、特有の経験則や改善スキルを持つ人間の判断や勘に頼る部分が多く、人間が、鍛造の作業結果の履歴データから、望ましいペダルの踏み方を判断することは、実際には難しい。また、仮に、望ましいペダルの踏み方が分かったとしても、作業者が、その踏み方の通りに、ペダル操作を行うことは難しい。従って、作業者がペダルを踏んで鍛造作業を行う方式ではなく、エアドロップハンマのバルブを自動的に移動させて、自動的に鍛造の型打ちを行うことが望ましい。そして、自動的に安定して最適な型打ちを行うためには、最適なバルブの変位制御用のデータを得る必要がある。
本発明は、上記課題を解決するものであり、最適な型打ちを行うためのバルブの変位制御用のデータを得ることが可能なエアドロップハンマ学習システム、及びエアドロップハンマのバルブ変位制御学習プログラムを提供することを目的とする。
上記課題を解決するために、本発明の第1の態様によるエアドロップハンマ学習システムは、ラムを圧縮空気で加速させて落下させることにより鍛造を行うエアドロップハンマと、前記エアドロップハンマとネットワークを介して通信を行うコンピュータとを備えたエアドロップハンマ学習システムであって、前記エアドロップハンマは、前記ラムに連結されたピストンを有し、このピストンを前記圧縮空気で動かすことにより前記ラムを下降させるエアシリンダと、前記エアシリンダ内の空気の流れを、前記ラムの下降側と前記ラムの上昇側のいずれかに切り換えるバルブと、前記バルブの変位を検出するバルブ変位検出手段と、前記エアシリンダ内に流入する圧縮空気の空圧を検出する空圧検出手段と、前記バルブ変位検出手段により検出された前記バルブの変位のデータと、前記空圧検出手段により検出された空圧のデータとを、ネットワークを介して前記コンピュータに送信するハンマ側送信手段とを備え、前記コンピュータは、前記ハンマ側送信手段から送信された、前記バルブの変位のデータと前記空圧のデータとに基づいて、機械学習を行い、前記バルブの好ましい移動のさせ方の特徴量を求める学習手段と、前記学習手段により求めた、前記バルブの好ましい移動のさせ方の特徴量に基づいて、前記バルブの変位制御用のデータを算出するバルブ変位制御データ算出手段と、前記バルブ変位制御データ算出手段により算出された、前記バルブの変位制御用のデータを記憶するバルブ制御データ記憶手段とを備える。
このエアドロップハンマ学習システムにおいて、前記コンピュータは、前記バルブ制御データ記憶手段に記憶された前記バルブの変位制御用のデータを、ネットワークを介して前記エアドロップハンマに送信するためのコンピュータ側送信手段をさらに備え、前記エアドロップハンマは、前記コンピュータからネットワークを介して受信した、前記バルブの変位制御用のデータに基づいて、前記バルブを自動的に移動させるバルブ移動手段をさらに備えることが望ましい。
このエアドロップハンマ学習システムにおいて、前記エアドロップハンマによる鍛造直前の加熱された金属素材の温度を検出する加熱素材温度検出手段をさらに備え、前記ハンマ側送信手段は、前記バルブの変位のデータと前記空圧のデータに加えて、前記加熱素材温度検出手段により検出された金属素材の温度のデータを、ネットワークを介して前記コンピュータに送信し、前記学習手段は、前記バルブの変位のデータと前記空圧のデータに加えて、前記加熱素材温度検出手段により検出された金属素材の温度のデータに基づいて、機械学習を行い、前記バルブの好ましい移動のさせ方の特徴量を求めてもよい。
このエアドロップハンマ学習システムにおいて、前記学習手段は、前記バルブの変位のデータと前記空圧のデータに加えて、前記金属素材の温度のデータに基づいて、ニューラルネットワークにより、前記バルブの好ましい移動のさせ方の特徴量を求めてもよい。
本発明の第2の態様によるエアドロップハンマ学習システムは、ラムを圧縮空気で加速させて落下させることにより鍛造を行うエアドロップハンマと、前記エアドロップハンマとネットワークを介して通信を行うコンピュータとを備えたエアドロップハンマ学習システムであって、前記エアドロップハンマは、前記ラムに連結されたピストンを有し、このピストンを前記圧縮空気で動かすことにより前記ラムを下降させるエアシリンダと、前記エアシリンダ内の空気の流れを、前記ラムの下降側と前記ラムの上昇側のいずれかに切り換えるバルブと、前記バルブの変位を検出するバルブ変位検出手段と、前記エアドロップハンマ周辺の気温を検出する気温検出手段と、前記バルブ変位検出手段により検出された前記バルブの変位のデータと、前記気温検出手段により検出された気温のデータとを、ネットワークを介して前記コンピュータに送信するハンマ側送信手段とを備え、前記コンピュータは、前記ハンマ側送信手段から送信された、前記バルブの変位のデータと前記気温のデータとに基づいて、機械学習を行い、前記バルブの好ましい移動のさせ方の特徴量を求める学習手段と、前記学習手段により求めた、前記バルブの好ましい移動のさせ方の特徴量に基づいて、前記バルブの変位制御用のデータを算出するバルブ変位制御データ算出手段と、前記バルブ変位制御データ算出手段により算出された、前記バルブの変位制御用のデータを記憶するバルブ制御データ記憶手段とを備える。
このエアドロップハンマ学習システムにおいて、前記コンピュータは、前記バルブ制御データ記憶手段に記憶された前記バルブの変位制御用のデータを、ネットワークを介して前記エアドロップハンマに送信するためのコンピュータ側送信手段をさらに備え、前記エアドロップハンマは、前記コンピュータからネットワークを介して受信した、前記バルブの変位制御用のデータに基づいて、前記バルブを自動的に移動させるバルブ移動手段をさらに備えることが望ましい。
このエアドロップハンマ学習システムにおいて、前記エアドロップハンマによる鍛造直前の加熱された金属素材の温度を検出する加熱素材温度検出手段をさらに備え、前記ハンマ側送信手段は、前記バルブの変位のデータと前記気温のデータに加えて、前記加熱素材温度検出手段により検出された金属素材の温度のデータを、ネットワークを介して前記コンピュータに送信し、前記学習手段は、前記バルブの変位のデータと前記気温のデータに加えて、前記加熱素材温度検出手段により検出された金属素材の温度のデータに基づいて、機械学習を行い、前記バルブの好ましい移動のさせ方の特徴量を求めてもよい。
このエアドロップハンマ学習システムにおいて、前記学習手段は、前記バルブの変位のデータと前記気温のデータに加えて、前記金属素材の温度のデータに基づいて、ニューラルネットワークにより、前記バルブの好ましい移動のさせ方の特徴量を求めてもよい。
本発明の第3の態様によるエアドロップハンマ学習システムは、ラムを圧縮空気で加速させて落下させることにより鍛造を行うエアドロップハンマと、前記エアドロップハンマとネットワークを介して通信を行うコンピュータとを備えたエアドロップハンマ学習システムであって、前記エアドロップハンマは、前記ラムに連結されたピストンを有し、このピストンを前記圧縮空気で動かすことにより前記ラムを下降させるエアシリンダと、前記エアシリンダ内の空気の流れを、前記ラムの下降側と前記ラムの上昇側のいずれかに切り換えるバルブと、前記バルブの変位を検出するバルブ変位検出手段と、前記バルブ変位検出手段により検出された前記バルブの変位のデータを、ネットワークを介して前記コンピュータに送信するハンマ側送信手段とを備え、前記コンピュータは、現在の季節の情報を取得する季節情報取得手段と、前記ハンマ側送信手段から送信された前記バルブの変位のデータと、前記季節情報取得手段で取得した季節の情報とに基づいて、機械学習を行い、前記バルブの好ましい移動のさせ方の特徴量を求める学習手段と、前記学習手段により求めた、前記バルブの好ましい移動のさせ方の特徴量に基づいて、前記バルブの変位制御用のデータを算出するバルブ変位制御データ算出手段と、前記バルブ変位制御データ算出手段により算出された、前記バルブの変位制御用のデータを記憶するバルブ制御データ記憶手段とを備える。
このエアドロップハンマ学習システムにおいて、前記コンピュータは、前記バルブ制御データ記憶手段に記憶された前記バルブの変位制御用のデータを、ネットワークを介して前記エアドロップハンマに送信するためのコンピュータ側送信手段をさらに備え、前記エアドロップハンマは、前記コンピュータからネットワークを介して受信した、前記バルブの変位制御用のデータに基づいて、前記バルブを自動的に移動させるバルブ移動手段をさらに備えることが望ましい。
このエアドロップハンマ学習システムにおいて、前記エアドロップハンマによる鍛造直前の加熱された金属素材の温度を検出する加熱素材温度検出手段をさらに備え、前記ハンマ側送信手段は、前記バルブの変位のデータに加えて、前記加熱素材温度検出手段により検出された金属素材の温度のデータを、ネットワークを介して前記コンピュータに送信し、前記学習手段は、前記バルブの変位のデータと前記季節の情報に加えて、前記加熱素材温度検出手段により検出された金属素材の温度のデータに基づいて、機械学習を行い、前記バルブの好ましい移動のさせ方の特徴量を求めてもよい。
本発明の第4の態様によるエアドロップハンマのバルブ変位制御学習プログラムは、コンピュータに、エアドロップハンマにおける、バルブの変位のデータとエアシリンダ内に流入する圧縮空気の空圧のデータとを、前記エアドロップハンマ側からネットワークを介して受信して、記憶装置に記憶する機能と、前記記憶装置に記憶された、前記バルブの変位のデータと前記空圧のデータとに基づいて、前記バルブの好ましい移動のさせ方の特徴量を機械学習する機能とを実現させるための、エアドロップハンマのバルブ変位制御学習プログラムである。
このエアドロップハンマのバルブ変位制御学習プログラムにおいて、前記バルブの変位のデータと前記空圧のデータに加えて、前記エアドロップハンマによる鍛造直前の加熱された金属素材の温度のデータを、ネットワークを介して受信して、前記記憶装置に記憶し、前記記憶装置に記憶された、前記バルブの変位のデータ、前記空圧のデータ、及び前記金属素材の温度のデータに基づいて、前記バルブの好ましい移動のさせ方の特徴量を機械学習することが望ましい。
本発明の第5の態様によるエアドロップハンマのバルブ変位制御学習プログラムは、コンピュータに、エアドロップハンマにおける、バルブの変位のデータと気温のデータとを、前記エアドロップハンマ側からネットワークを介して受信して、記憶装置に記憶する機能と、前記記憶装置に記憶された、前記バルブの変位のデータと前記気温のデータとに基づいて、前記バルブの好ましい移動のさせ方の特徴量を機械学習する機能とを実現させるための、エアドロップハンマのバルブ変位制御学習プログラムである。
このエアドロップハンマのバルブ変位制御学習プログラムにおいて、前記バルブの変位のデータと前記気温のデータに加えて、前記エアドロップハンマによる鍛造直前の加熱された金属素材の温度のデータを、ネットワークを介して受信して、前記記憶装置に記憶し、前記記憶装置に記憶された、前記バルブの変位のデータ、前記気温のデータ、及び前記金属素材の温度のデータに基づいて、前記バルブの好ましい移動のさせ方の特徴量を機械学習することが望ましい。
本発明の第6の態様によるエアドロップハンマのバルブ変位制御学習プログラムは、コンピュータに、エアドロップハンマにおけるバルブの変位のデータを、前記エアドロップハンマ側からネットワークを介して受信して、記憶装置に記憶する機能と、現在の季節の情報を取得して、記憶装置に記憶する機能と、前記記憶装置に記憶された、前記バルブの変位のデータと前記季節の情報とに基づいて、前記バルブの好ましい移動のさせ方の特徴量を機械学習する機能とを実現させるための、エアドロップハンマのバルブ変位制御学習プログラムである。
本発明の第1の態様によるエアドロップハンマ学習システムによれば、コンピュータが、エアドロップハンマ側から送信された、バルブの変位のデータとエアシリンダ内に流入する圧縮空気の空圧のデータとに基づいて、機械学習を行い、バルブの好ましい移動のさせ方の特徴量を求めた上で、このバルブの好ましい移動のさせ方の特徴量に基づいて、バルブの変位制御用のデータを算出する。ここで、上記のエアシリンダ内に流入する圧縮空気の空圧は、その時点における気温に応じて変化するので、上記のように、バルブの変位のデータとエアシリンダ内に流入する圧縮空気の空圧のデータとに基づいて、機械学習を行うことで、その時点における気温を考慮した、バルブの好ましい移動のさせ方の特徴量を求めることができる。従って、上記のように、このバルブの好ましい移動のさせ方の特徴量に基づいて、バルブの変位制御用のデータを算出することにより、その時点における気温を考慮した、最適なバルブの変位制御用のデータを得ることができる。これにより、このバルブの変位制御用のデータに基づいて、バルブを自動的に移動させることで、安定して最適な鍛造型打ちを行うことができる。
本発明の第2の態様によるエアドロップハンマ学習システムによれば、コンピュータが、エアドロップハンマ側から送信された、バルブの変位のデータと気温のデータとに基づいて、機械学習を行い、バルブの好ましい移動のさせ方の特徴量を求めた上で、このバルブの好ましい移動のさせ方の特徴量に基づいて、バルブの変位制御用のデータを算出する。上記のように、バルブの変位のデータと気温のデータとに基づいて、機械学習を行うことで、その時点における気温を考慮した、バルブの好ましい移動のさせ方の特徴量を求めることができる。従って、上記のように、このバルブの好ましい移動のさせ方の特徴量に基づいて、バルブの変位制御用のデータを算出することにより、その時点における気温を考慮した、最適なバルブの変位制御用のデータを得ることができる。これにより、このバルブの変位制御用のデータに基づいて、バルブを自動的に移動させることで、安定して最適な鍛造型打ちを行うことができる。
本発明の第3の態様によるエアドロップハンマ学習システムによれば、コンピュータが、エアドロップハンマ側から送信されたバルブの変位のデータと、季節の情報とに基づいて、機械学習を行い、バルブの好ましい移動のさせ方の特徴量を求めた上で、このバルブの好ましい移動のさせ方の特徴量に基づいて、バルブの変位制御用のデータを算出する。上記のように、バルブの変位のデータと季節の情報とに基づいて、機械学習を行うことで、その時点における気温を考慮した、バルブの好ましい移動のさせ方の特徴量を求めることができる。従って、このバルブの好ましい移動のさせ方の特徴量に基づいて、バルブの変位制御用のデータを算出することにより、その時点における気温を考慮した、最適なバルブの変位制御用のデータを得ることができる。これにより、このバルブの変位制御用のデータに基づいて、バルブを自動的に移動させることで、安定して最適な鍛造型打ちを行うことができる。
本発明の第4の態様によるエアドロップハンマのバルブ変位制御学習プログラムによれば、コンピュータに、エアドロップハンマにおける、バルブの変位のデータとエアシリンダ内に流入する圧縮空気の空圧のデータとに基づいて、バルブの好ましい移動のさせ方の特徴量を機械学習させることができる。ここで、上記のエアシリンダ内に流入する圧縮空気の空圧は、その時点における気温に応じて変化するので、上記のように、バルブの変位のデータとエアシリンダ内に流入する圧縮空気の空圧のデータとに基づいて、機械学習を行うことで、その時点における気温を考慮した、バルブの好ましい移動のさせ方の特徴量を求めることができる。
本発明の第5の態様によるエアドロップハンマのバルブ変位制御学習プログラムによれば、コンピュータに、エアドロップハンマにおける、バルブの変位のデータと気温のデータとに基づいて、バルブの好ましい移動のさせ方の特徴量を機械学習させることができる。これにより、その時点における気温を考慮した、バルブの好ましい移動のさせ方の特徴量を求めることができる。
本発明の第6の態様によるエアドロップハンマのバルブ変位制御学習プログラムによれば、コンピュータに、エアドロップハンマにおけるバルブの変位のデータと、季節の情報とに基づいて、バルブの好ましい移動のさせ方の特徴量を機械学習させることができる。これにより、その時点における気温を考慮した、バルブの好ましい移動のさせ方の特徴量を求めることができる。
以下、本発明を具体化した実施形態によるエアドロップハンマ学習システム、及びエアドロップハンマのバルブ変位制御学習プログラムについて、図面を参照して説明する。
まず、本発明の第1の実施形態によるエアドロップハンマ学習システムにおけるエアドロップハンマの構成について、図1を参照して説明する。エアドロップハンマ1は、ラム17を圧縮空気で加速させて落下させることにより鍛造を行う装置である。エアドロップハンマ1は、その基台の部分であるアンビル11と、アンビル11の上側に設けられたフレーム12と、フレーム12に支持されたシリンダブロック13とを備えている。このシリンダブロック13は、エアシリンダ14を有している。エアシリンダ14は、ラム17に連結されたピストン15を有し、このピストン15を圧縮空気で動かすことによりラム17を下降又は上昇させる。ピストン15の下面側には、外部に力を伝えるためのピストンロッド16が取り付けられており、このピストンロッド16の下端には、ラム17が連結されている。フレーム12の内側面には、ラム17を案内するためのラムガイド18が設けられている。このラムガイド18の下端には、上型(上側の金型(ダイ))19が取り付けられている。一方、下型(下側の金型)20は、ソーブロック36に取り付けられている。このソーブロック36は、上記のアンビル11上に設けられた、下型20の固定用のブロックである。
また、エアドロップハンマ1は、エアシリンダ14内の空気の流れを、ラム17の下降側と上昇側のいずれかに切り換えるバルブ21(制御弁)を有している。バルブ21は、弁軸22を有している。この弁軸22は、後述するバルブ操作機構27の一部を構成している。また、シリンダブロック13内には、エアシリンダ14内のピストン15上部へ通じる配管23と、エアシリンダ14内のピストン15下部へ通じる配管24とが設けられている。このエアドロップハンマ1では、バルブ21の好ましい移動のさせ方の特徴量の機械学習を行う時(機械学習モード時)には、作業者が、足踏み式のペダル28を踏み下げると、ペダル28に連結されたバルブ操作機構27を介して、弁軸22とバルブ21が下方に移動し、このバルブ21の移動により、吸気用配管25と配管23とがバルブ21を介してつながる。これにより、吸気用配管25からエアシリンダ14内のピストン15上部に圧縮空気が供給されて、上型19を取り付けたラム17が下に移動して棒材6(請求項における「金属素材」)を打撃するようになっている。一方、この機械学習モード時に、作業者が、上記のペダル28を離すと、ペダル28が上に戻って、バルブ操作機構27を介して弁軸22とバルブ21が上方に移動し、このバルブ21の移動により、バルブ21を介して、排気用配管26と配管23、及び吸気用配管25と配管24とがつながる。これにより、排気用配管26から圧縮空気が抜けると共に、吸気用配管25からエアシリンダ14内のピストン15下部に圧縮空気が供給されて、ラム17が上に移動する。
また、エアドロップハンマ1は、バルブ21の変位を検出するためのレーザー変位センサであるバルブ変位計29(請求項における「バルブ変位検出手段」)と、エアシリンダ14内に流入する圧縮空気の空圧を検出する圧力センサであるエア圧力計30(請求項における「空圧検出手段」)と、エアドロップハンマ1周辺の気温を検出する温度計31(請求項における「気温検出手段」)とを備えている。
また、エアドロップハンマ1は、ラム17の変位を検出するためのレーザー変位センサである第1ラム変位計32と第2ラム変位計33とを備えている。第1ラム変位計32と第2ラム変位計33からの出力値は、制御盤2(図2参照)に送られて、ラム17の下死点における速度vの算出に用いられる。さらに、エアドロップハンマ1は、ネットワークを介して制御盤2及びサーバ50(図2参照)との間で、各種のデータの送受信を行うための送受信回路34を備えている。この送受信回路34は、請求項における「ハンマ側送信手段」に相当する。
また、電気炉5からエアドロップハンマ1のソーブロック36への棒材6の搬送は、シュート7により行われる。電気炉5の出口には、鍛造直前の加熱された棒材6の温度を検出するための放射温度計4(請求項における「加熱素材温度検出手段」)が配設されている。
次に、図2を参照して、第1の実施形態によるエアドロップハンマ学習システム10について説明する。エアドロップハンマ学習システム10は、上記のエアドロップハンマ1と、このエアドロップハンマ1の制御用の制御盤2と、ネットワーク(通信回線3及びインターネット49)を介して制御盤2及びエアドロップハンマ1と通信を行うサーバ50(請求項における「コンピュータ」)とを備えている。エアドロップハンマ1と制御盤2との間は、有線又は無線の通信回線3で接続されており、制御盤2とサーバ50との間は、インターネット49で接続されている。サーバ50は、いわゆるクラウド上のサーバである。このサーバ50は、エアドロップハンマ1周辺の各種検出装置からの情報を受信すると共に、これらの検出装置から受信した情報に基づく、バルブ21(図1参照)の好ましい移動のさせ方の特徴量の機械学習を行い、この機械学習の結果に基づいて、最適なバルブ21の変位制御用のデータを算出する。
次に、図2中のエアドロップハンマ1、制御盤2、及びサーバ50が有する各電気的ブロックについて説明する。エアドロップハンマ1は、上記のバルブ変位計29、エア圧力計30、第1ラム変位計32、第2ラム変位計33、及び送受信回路34に加えて、モータ41(請求項における「バルブ移動手段」)を有している。モータ41は、サーバ50からネットワークと制御盤2を介して受信した、バルブ21の変位制御用のデータ(以下、「バルブ変位制御データ」という)に基づいて、バルブ21を自動的に移動させる。
上記の制御盤2は、その制御用のCPU43と、表示装置であるモニタ44と、メモリ46と、ネットワークを介して上記のエアドロップハンマ1及びサーバ50に対するデータの送受信を行うための送受信回路47とを備えている。また、制御盤2は、今回の型打ち後の製品についての良否の判別結果の入力等を行うための操作部45を備えている。
上記のサーバ50は、ネットワークを介して上記のエアドロップハンマ1及び制御盤2に対するデータの送受信を行うための送受信回路51(請求項における「コンピュータ側送信手段」)と、サーバ50全体の制御と演算を行うためのCPU52(請求項における「バルブ変位制御データ算出手段」)と、メモリ53(請求項における「バルブ制御データ記憶手段」、及び「記憶装置」)とを有している。サーバ50のCPU52は、エア圧力計30の出力データ、放射温度計4で検出された棒材の温度のデータ、及びバルブ変位計29により検出されたバルブ21の変位のデータを、エアドロップハンマ1(の送受信回路34)からネットワークを介して受信して、これらのデータを、エア圧力データ54、放射温度計データ55、及びバルブ変位データ56として、メモリ53に記憶する。メモリ53は、これらのデータに加えて、バルブ変位制御学習プログラム57を記憶している。このバルブ変位制御学習プログラム57は、上記のバルブ変位データ56と、エア圧力データ54と、放射温度計データ55とに基づいて、機械学習を行い、バルブ21の好ましい移動のさせ方の特徴量を求めるためのプログラムである。このバルブ変位制御学習プログラム57とCPU52とが、請求項における学習手段に相当する。また、メモリ53は、上記の機械学習により求めたバルブ21の好ましい移動のさせ方の特徴量に基づいて算出された、バルブ21の変位制御用のデータを、バルブ変位制御データ59として記憶している。
次に、本エアドロップハンマ学習システム10における処理の流れについて説明する。まず、このエアドロップハンマ学習システム10における機械学習の仕組みについて説明する。エアドロップハンマ1側の作業者が、ペダル28を操作して、型打ち鍛造を行うと、制御盤2側の作業者は、型打ち後の製品が、不良品であるか否かを判別して、その判別結果を、制御盤2の操作部45から入力する。具体的には、制御盤2側の作業者は、型打ち後の製品が、問題のない製品(良品)であると判別した場合には、操作部45におけるOKボタンを押下し、不良品であると判別した場合には、操作部45におけるNGボタンを押下する。これにより、上記の型打ち時にエアドロップハンマ1側の各検出機器で検出した検出データ(少なくとも、バルブ変位計29、エア圧力計30、及び放射温度計4で検出した検出データ(バルブ変位データ、エア圧力データ、及び放射温度計データ))に、上記の良否判別結果情報(OK又はNGのデータ)が付加されて、この良否判別結果情報付加後の検出データが、制御盤2から、インターネット49を介して、サーバ50に送信される。
なお、エアドロップハンマ1側からネットワークを介してサーバ50に送信される検出データのうち、バルブ変位データについては、制御盤2のCPU43が、バルブ変位計29からの出力値を、例えば、0.001秒毎にサンプリングして、測定データのノイズを除去するために、5点〜10点のサンプリング値の平均値を算出した上で、この平均値をサーバ50に送信する。なお、以下の説明では、説明を簡単にするために、このサンプリング値の平均値を、単に(各サンプリング点における)サンプリング値という。
サーバ50のCPU52は、制御盤2から受信したバルブ変位データ(各サンプリング点におけるサンプリング値)、エア圧力データ、放射温度計データ、及び上記の良否判別結果情報を、メモリ53に記憶する。そして、サーバ50のCPU52は、バルブ変位制御学習プログラム57に従って、メモリ53に記憶した、エア圧力データ54、放射温度計データ55、バルブ変位データ56、及び良否判別結果情報58(OK又はNGのデータ)に基づき、バルブ21の好ましい移動のさせ方の特徴量を機械学習する。ここで、エアシリンダ14内に流入する圧縮空気の空圧は、その時点における気温に応じて変化するので、上記のように、機械学習の基になるデータに、エア圧力データ54(エアシリンダ14内に流入する圧縮空気の空圧のデータ)を含めることにより、その時点における気温を考慮した、バルブ21の好ましい移動のさせ方の特徴量を求めることができる。
上記のバルブ21の好ましい移動のさせ方とは、作業者が望ましいペダル28の踏み方(ペダル28の踏み代(踏み幅)、ペダル28を踏む速さ、ペダル28を踏む速さの変化のさせ方)をした時のバルブ21の移動のさせ方であって、ラム17の下死点における打撃エネルギー((1/2)mv2)が最適になる(ラム17の下死点における(ラム17の)速度v(m/s)が最適な速さになる)バルブ21の移動のさせ方である。なお、気温が高い程、エアシリンダ14内に流入する圧縮空気の空圧は大きくなるので、最適な打撃エネルギーを得るためのバルブ21の移動速度(ペダル28を踏む速さに相当)は、遅くても良い。また、気温が高い程、最適な打撃エネルギーを得るためのバルブ21の(上下方向の)総移動量(ペダル28の踏み代に相当)は、小さくても良い。本実施形態における機械学習の方法は、教師あり学習とも言えるが、より正確に言うと、上記の良否の判別結果情報(OK又はNGのデータ)を用いた強化学習である。
次に、サーバ50のCPU52は、これまでの強化学習の結果(バルブ21の好ましい移動のさせ方の特徴量)に基づいて、これまでのところ、最適と思われるバルブ21の変位制御用のデータを算出して、算出したバルブ21の変位制御用のデータを用いて、メモリ53におけるバルブ変位制御データ59を更新する。
なお、制御盤2側の作業者は、上記の型打ち後の製品に、欠肉、打痕、傷、厚さ不良、及び打損による不良等がある場合に、型打ち後の製品が、不良品であると判別する。ここで、欠肉とは、鍛造後の製品の一部が欠けていることを意味する。この欠肉は、型打ちの強さが足らず、金型の彫り込みに鉄が充満されない場合等に発生する。また、上記の(製品の)打痕は、主に、方案跳ねにより発生する。ここで、方案跳ねとは、鍛造の型打ちをして、上型が上方へ移動した時に、型打ちした方案(製品)が飛び跳ねることを意味する。この方案跳ねは、上型が上方へ移動した時に、型打ちした方案(製品)が上型に張り付いて引っ張られることや、型打ち時における下型の振動及び反力に起因して、生じる。そして、この方案跳ねにより、方案(製品)が飛び跳ねて落下した時に、金型と方案(製品)とがぶつかって、型打ち後の製品に生じる凹みが、上記の打痕である。また、上記の打損による不良とは、方案がずれた状態で型打ちした時に発生する不良である。
また、制御盤2側の作業者は、上記の型打ち後の製品の良否の判別基準に加えて、制御盤2のモニタ44に表示される、ラム17の下死点における(ラム17の)速度vを参照して、型打ち後の製品の良否を判別するようにしてもよい。この場合におけるラム17の下死点における速度vは、第1ラム変位計32と第2ラム変位計33で検出したデータに基づいて、制御盤2のCPU43により算出される。なお、制御盤2側の作業者が、制御盤2のモニタ44に表示される、ラム17の下死点における(ラム17の)速度vのみに基づいて、型打ち後の製品の良否を判別するようにしてもよい。また、制御盤2側の作業者の代わりに、制御盤2のCPU43が、ラム17の下死点における(ラム17の)速度vのみに基づいて、型打ち後の製品の良否を自動的に判別するようにしてもよい。
次に、上記のバルブ変位制御学習プログラム57を用いて行われる機械学習の例について、説明する。例えば、サーバ50のCPU52は、今回の型打ちで、エアドロップハンマ1側から受信した検出データに付加された良否判別結果情報58が、良(OK)の場合に限り、この検出データ(バルブ変位データ(各サンプリング点におけるサンプリング値)、エア圧力データ、及び放射温度計データ)を、機械学習に利用する。また、サーバ50のCPU52は、エアドロップハンマ1側から受信した検出データに含まれるエア圧力データの圧力レベル別に、バルブ21の好ましい移動のさせ方の特徴量を機械学習することが望ましい。これは、上記のように、エアシリンダ14内に流入する圧縮空気の空圧は、その時点における気温に応じて変化するので、上記のように、エア圧力データ(エアシリンダ14内に流入する圧縮空気の空圧のデータ)の圧力レベル別に、バルブ21の好ましい移動のさせ方の特徴量を機械学習することにより、その時点における気温(及び季節)を考慮した、バルブ21の好ましい移動のさせ方の特徴量を求めることができるからである。このように、エア圧力データの圧力レベル別に、バルブ21の好ましい移動のさせ方の特徴量を機械学習させた場合には、機械学習の結果である、バルブ21の好ましい移動のさせ方の特徴量を、エア圧力データの圧力レベル別(実際には、気温のレベル別、又は夏季か冬季かといった季節別)に得ることができる。また、この場合には、強化学習の結果(バルブ21の好ましい移動のさせ方の特徴量)に基づいて算出される最適なバルブ変位制御データ59も、エア圧力データの圧力レベル別(気温のレベル別、又は季節別)に得ることができる。
なお、サーバ50が、エアドロップハンマ1側から受信した検出データのうち、エア圧力データだけではなく、放射温度計データも、レベル分けに使用するようにしても良い。すなわち、サーバ50のCPU52が、エア圧力データの圧力レベル別で、かつ、棒材6の温度別に、バルブ21の好ましい移動のさせ方の特徴量を求めるようにしても良い。これにより、強化学習の結果に基づいて算出される最適なバルブ変位制御データ59も、エア圧力データの圧力レベル別(気温のレベル別、又は季節別)で、かつ、棒材6の温度別に、得ることができる。
これに対して、サーバ50のCPU52は、エアドロップハンマ1側から受信する検出データのうち、バルブ変位データ(各サンプリング点におけるサンプリング値)以外のデータ(エア圧力データ及び放射温度計データ)を、レベル分けに使用するのではなく、各バルブ変位データ(のサンプリング値)の補正に使用して、補正後の各バルブ変位データ(のサンプリング値)を用いて、バルブ21の好ましい移動のさせ方の特徴量を機械学習してもよい。この場合には、サーバ50のCPU52は、まず、今回の型打ち時に検出したエア圧力データ54と放射温度計データ55とを用いて、各サンプリング点におけるバルブ変位データを、エア圧力データ54と放射温度計データ55とが平均的な値である場合(エアシリンダ14内に流入する圧縮空気の空圧と、鍛造直前の加熱された棒材6の温度とが平均的な値である場合)における、各サンプリング点におけるバルブ変位データに補正する。そして、サーバ50のCPU52は、バルブ変位制御学習プログラム57を用いて、上記の補正後のバルブ変位データに基づき、エア圧力データ54と放射温度計データ55とが平均的な値である場合における、バルブ21の好ましい移動のさせ方の特徴量を機械学習する。
ただし、このように、エア圧力データ54と放射温度計データ55とが平均的な値である場合における特徴量を求めた場合には、この特徴量に基づいて算出されるバルブ変位制御データ59も、エア圧力データ54と放射温度計データ55とが平均的な値である場合における、最適なバルブ変位制御データ59となる。従って、この平均的なバルブ変位制御データ59に基づいて、モータ41を駆動するためには、このバルブ変位制御データ59を、その時点におけるエアドロップハンマ1側のエア圧力計30と放射温度計4による検出値に合わせて補正し、補正後のバルブ変位制御データを用いて、モータ41を駆動する必要がある。
次に、バルブ変位制御学習プログラム57を用いて行われる機械学習が、ニューラルネットワークを用いた機械学習である場合の例について、図3を参照して説明する。このニューラルネットワーク60は、入力層に入力されるデータに対して、バルブ21の好ましい移動のさせ方の特徴量が出力層から出力されるように、機械学習により、ニューラルネットワーク60の各層のニューロン間の重み付け係数W1、W2、W3・・・Wnを最適化するものである。ここで、上記の好ましい移動のさせ方の特徴量とは、例えば、バルブ21の(上下方向の)総移動量(ペダル28の踏み代に相当)、バルブ21の平均移動速度(ペダル28を踏む速さに相当)、バルブ21の移動速度の変化のさせ方(ペダル28を踏む速さの変化のさせ方に相当)等である。また、ニューラルネットワーク60の入力層に入力されるデータは、今回の型打ち時に、バルブ変位計29で採取した各サンプリング点におけるバルブ変位データ56のみであってもよいし、各サンプリング点におけるバルブ変位データ56に加えて、エア圧力データ54、及び放射温度計データ55であってもよい。
ただし、バルブ変位計29で採取した各サンプリング点におけるバルブ変位データ56のみを入力データとする場合には、以下のいずれかの手法を採用する。一つ目の方法は、エア圧力データ54と放射温度計データ55のレベル毎に、機械学習の対象になるニューラルネットワーク60を分けるという方法である。この一つ目の方法では、機械学習の結果として取得される、ニューラルネットワーク60の学習済モデルが、エア圧力データ54と放射温度計データ55のレベル毎に生成される。
また、二つ目の方法は、これらのバルブ変位データ56を、今回の型打ち時に検出したエア圧力データ54と放射温度計データ55とを用いて、エア圧力データ54と放射温度計データ55とが平均的な値である場合における、バルブ変位データに補正した上で、補正後のバルブ変位データを入力層に入力するという方法である。これにより、エア圧力データ54と放射温度計データ55とが平均的な値である場合における、バルブ21の好ましい移動のさせ方の特徴量(平均的な特徴量)を得ることができる。この二つ目の方法を採用する場合には、この特徴量に基づいて算出されるバルブ変位制御データ59も、エア圧力データ54と放射温度計データ55とが平均的な値である場合における、最適なバルブ変位制御データ59となる。従って、この(平均的なエア圧力データ54と放射温度計データ55に対応した)バルブ変位制御データ59を、その時点におけるエアドロップハンマ1側のエア圧力計30と放射温度計4による検出値に合わせて補正し、補正後のバルブ変位制御データを用いて、モータ41を駆動する必要がある。
本実施形態におけるエアドロップハンマ学習システム10のエアドロップハンマ1では、上記の機械学習モード時(バルブ21の好ましい移動のさせ方の特徴量の機械学習を行う時)には、作業員がペダル28を足で踏んで操作することにより、型打ちを行う。一方、自動制御モード時(機械学習の結果を用いて、ラム17による型打ちを自動的に行う時)には、機械学習の結果を用いて算出したバルブ変位制御データ59に基づいて、バルブ21をモータ41で自動的に移動させることにより、型打ちを行う。上記の機械学習モードと自動制御モードとの切り替え時には、制御盤2側の作業者が、モードの切り替え指示を、操作部45により行うと共に、エアドロップハンマ1側の作業者が、後述する手動自動切換連結部68(図4、及び図6(a)〜(c)参照)を用いて、手動(機械学習モード)と、自動(自動制御モード)との切り替え(ペダル28とバルブ21との連結と解除の切り換え)を行う。
次に、図2に加えて、図4及び図5を参照して、上記の自動制御モード時における、自動的な型打ちを行うための構成について説明する。制御盤2のCPU43は、サーバ50から送られた、機械学習の結果を反映した(最適な)バルブ変位制御データ59を受信すると、このバルブ変位制御データ59に基づいて、その時点における、エア圧力計30と放射温度計4による検出値のレベル(圧縮空気の空圧のレベル、及び鍛造直前の加熱された棒材6の温度のレベル)に応じた、モータ制御信号を、エアドロップハンマ1のモータ41に送信する。これにより、モータ41が駆動されて、図5に示されるリンク61と弁軸22を介して、バルブ21が自動的に昇降する。
次に、図5を参照して、上記のバルブ21を自動的に昇降させるための機構について説明する。リンク61は、モータ軸41aと弁軸22とを連結させるための部材であり、第1リンク部61aと第2リンク部61bから構成されている。なお、第1リンク部61aと第2リンク部61bとの間は、軸72bによって、回動可能に軸支されており、第2リンク部61bと弁軸22との間は、軸72aによって、回動可能に軸支されている。
図5中の締結部材71aと締結部材71bは、モータ軸41aに締結されている。また、モータ軸41aは、取付け部材73a、73bによって、シリンダブロック13に取り付けられている。そして、上記の締結部材71aは、第1リンク部61aに連結されており、図中の矢印に示すように、モータ軸41aが、右回転(時計回り方向に回転)すると、この回転に連動して、第1リンク部61aも、右回転する。これにより、第2リンク部61bが下方に移動するので、この第2リンク部61bに連結された弁軸22及びバルブ21も、下方に移動する。一方、モータ軸41aが、左回転(反時計回り方向に回転)すると、この回転に連動して、第1リンク部61aも、左回転する。これにより、第2リンク部61bが上方に移動するので、この第2リンク部61bに連結された弁軸22及びバルブ21も、上方に移動する。
自動制御モード時には、図4及び図6(a)〜(c)に示される手動自動切換連結部68における、シャフト66とバー64との連結を解除した上で、上記のモータ41とリンク61を用いて、バルブ21を自動的に昇降させることにより、自動制御の型打ちを行う。一方、機械学習モード時には、手動自動切換連結部68における、シャフト66とバー64とを連結させた上で、作業員がペダル28を足で踏んで操作することにより、バルブ21を昇降させて、いわゆる手動で、ラム17による型打ちを行う。
次に、上記の手動自動切換連結部68の説明の前段として、図1及び図4に示すバルブ操作機構27の構成について、説明する。このバルブ操作機構27は、足踏み式のペダル28とバルブ21とを連結するための機構である。バルブ操作機構27は、上記の弁軸22及びリンク61に加えて、バー62、バー69、カム67、バー63、バー64、レバー65、及びシャフト66を有している。上記のバー62及びバー69は、リンク61とカム67とを連結するための部材であり、バー63、バー64、及びレバー65は、カム67とシャフト66とを連結するための部材である。レバー65には、手動自動切換連結部68が設けられている。また、シャフト66には、ペダル28が取り付けられている。
次に、図6(a)〜(c)を参照して、上記の手動自動切換連結部68について説明する。手動自動切換連結部68は、レバー65の軸受け部75に設けられている。この手動自動切換連結部68は、キー76と、キー止め板77と、ボルト78a、78bから構成されている。作業者は、レバー65の軸受け部75にシャフト66を連結する時(手動で型打ち作業を行う時)には、図6(b)に示すように、シャフト66に設けられた凹部66aにキー76を挿入した上で、キー止め板77をキー76の凹部に挿入して、キー止め板77をボルト78a、78bで固定する。これにより、シャフト66が、レバー65に連結される。一方、上記の自動制御の型打ちを行う時には、作業者は、レバー65の軸受け部75とシャフト66との連結を解除するために、ボルト78a、78bをキー止め板77から外して、キー76を、シャフト66に設けられた凹部66aから取り出す。これにより、シャフト66のレバー65(の軸受け部75)への連結が解除される。
上記のように、第1の実施形態のエアドロップハンマ学習システム10によれば、サーバ50のCPU52が、バルブ変位制御学習プログラム57に従って、エアドロップハンマ1側から送信された、バルブ21の変位のデータ(バルブ変位データ56)とエアシリンダ14内に流入する圧縮空気の空圧のデータ(エア圧力データ54)とに基づいて、機械学習を行い、バルブ21の好ましい移動のさせ方の特徴量を求めた上で、このバルブ21の好ましい移動のさせ方の特徴量に基づいて、バルブ21の変位制御用のデータ(バルブ変位制御データ59)を算出する。ここで、上記のエアシリンダ14内に流入する圧縮空気の空圧は、その時点における気温に応じて変化するので、上記のように、バルブ21の変位のデータとエアシリンダ14内に流入する圧縮空気の空圧のデータとに基づいて、機械学習を行うことで、その時点における気温を考慮した、バルブ21の好ましい移動のさせ方の特徴量を求めることができる。従って、上記のように、このバルブ21の好ましい移動のさせ方の特徴量に基づいて、バルブ21の変位制御用のデータを算出することにより、その時点における気温を考慮した、最適なバルブ21の変位制御用のデータ(バルブ変位制御データ59)を得ることができる。これにより、このバルブ21の変位制御用のデータに基づいて、バルブ21を自動的に移動させることで、安定して最適な鍛造型打ちを行うことができる。
また、第1の実施形態のエアドロップハンマ学習システム10によれば、サーバ50のCPU52が、バルブ変位制御学習プログラム57に従って、エアドロップハンマ1側から送信された、バルブ21の変位のデータとエアシリンダ14内に流入する圧縮空気の空圧のデータとに加えて、放射温度計4で検出された棒材の温度のデータに基づいて、機械学習を行い、バルブ21の好ましい移動のさせ方の特徴量を求めるようにした。これにより、その時点における気温だけではなく、鍛造直前の加熱された棒材の温度を考慮した、バルブ21の好ましい移動のさせ方の特徴量を求めることができる。従って、このバルブ21の好ましい移動のさせ方の特徴量に基づいて、バルブ21の変位制御用のデータを算出することにより、その時点における気温と棒材の温度を考慮した、最適なバルブ21の変位制御用のデータ(バルブ変位制御データ59)を得ることができる。
また、第1の実施形態のバルブ変位制御学習プログラム57は、サーバ50に、エアドロップハンマ1における、バルブ21の変位のデータとエアシリンダ14内に流入する圧縮空気の空圧のデータとを、エアドロップハンマ1側からネットワークを介して受信して、メモリ53に記憶する機能と、メモリ53に記憶された、バルブ21の変位のデータ(バルブ変位データ56)と空圧のデータ(エア圧力データ54)とに基づいて、バルブ21の好ましい移動のさせ方の特徴量を機械学習する機能とを実現させるための、エアドロップハンマ1のバルブ変位制御学習プログラムである。ここで、上記のエアシリンダ14内に流入する圧縮空気の空圧は、その時点における気温に応じて変化するので、上記のように、バルブ21の変位のデータ(バルブ変位データ56)と空圧のデータ(エア圧力データ54)とに基づいて、機械学習を行うことで、その時点における気温を考慮した、バルブ21の好ましい移動のさせ方の特徴量を求めることができる。
次に、図7を参照して、本発明の第2の実施形態のエアドロップハンマ学習システム80について、説明する。上記図2に示される第1の実施形態では、エアドロップハンマ1側のエア圧力計30からの出力値が、ネットワークを介して、サーバ50に送られて、サーバ50のメモリ53に、エア圧力データ54として記憶された。これに対して、図7に示される第2の実施形態のエアドロップハンマ学習システム80では、エアドロップハンマ1側のエア圧力計30からの出力値の代わりに、エアドロップハンマ1側の温度計31からの出力値(温度計31によるエアドロップハンマ1周辺の気温の検出値)が、ネットワークを介して、サーバ50に送られて、サーバ50のメモリ53に、気温データ81として記憶される。そして、第2の実施形態のエアドロップハンマ学習システム80では、サーバ50のCPU52は、バルブ変位制御学習プログラム57に従って、メモリ53に記憶した、気温データ81、放射温度計データ55、バルブ変位データ56、及び良否判別結果情報58(OK又はNGのデータ)に基づき、バルブ21の好ましい移動のさせ方の特徴量を機械学習する。
第2の実施形態のエアドロップハンマ学習システム80は、上記の点以外は、第1の実施形態のエアドロップハンマ学習システム10と同様である。従って、図7における温度計31及び気温データ81以外の構成要素については、図2と同じ符号を付して、その説明を省略する。第2の実施形態における温度計31は、請求項における気温検出手段に相当する。
第2の実施形態のエアドロップハンマ学習システム80によれば、第1の実施形態のエアドロップハンマ学習システム10と同様に、その時点における気温と鍛造直前の加熱された棒材の温度とを考慮した、バルブ21の好ましい移動のさせ方の特徴量を求めることができる。従って、このバルブ21の好ましい移動のさせ方の特徴量に基づいて、バルブ21の変位制御用のデータを算出することにより、その時点における気温と棒材の温度を考慮した、最適なバルブ21の変位制御用のデータ(バルブ変位制御データ59)を得ることができる。
また、第2の実施形態のバルブ変位制御学習プログラム57は、サーバ50に、エアドロップハンマ1における、バルブ21の変位のデータと気温のデータとを、エアドロップハンマ1側からネットワークを介して受信して、メモリ53に記憶する機能と、メモリ53に記憶された、バルブ21の変位のデータ(バルブ変位データ56)と気温のデータ(気温データ81)とに基づいて、バルブ21の好ましい移動のさせ方の特徴量を機械学習する機能とを実現させるための、エアドロップハンマ1のバルブ変位制御学習プログラムである。第2の実施形態のバルブ変位制御学習プログラム57によれば、その時点における気温を考慮した、バルブ21の好ましい移動のさせ方の特徴量を求めることができる。
次に、図8及び図9を参照して、本発明の第3の実施形態のエアドロップハンマ学習システム85と、このエアドロップハンマ学習システム85による機械学習の結果を利用したエアドロップハンマ制御システム90について、説明する。上記第1の実施形態では、機械学習時における各種データの検出に用いたエアドロップハンマ1を、機械学習結果を用いた自動制御の対象としても用いた場合の例を示したが、第3の実施形態では、機械学習時における各種データの検出に用いるエアドロップハンマ1と、機械学習結果を用いた自動制御の対象となるエアドロップハンマ91とを分けた場合の例を示す。
図2に示される第1の実施形態のエアドロップハンマ学習システム10と、図8に示される第3の実施形態のエアドロップハンマ学習システム85との相違点は、第3の実施形態におけるエアドロップハンマ学習システム85では、エアドロップハンマ1が、図2に示されるモータ41を有していない点と、サーバ50が、メモリ53に記憶したバルブ変位制御データ59を、ネットワークを介してエアドロップハンマ1に送信しない点である。第3の実施形態では、図9に示される自動制御対象のエアドロップハンマ91のモータ41の駆動制御信号は、サーバ50のメモリ53に記憶されたバルブ変位制御データ59ではなく、制御盤92のメモリ94に記憶されたバルブ変位制御データ95に基づいて生成される。言い換えると、自動制御対象のエアドロップハンマ91は、制御盤92からネットワークを介して受信したバルブ変位制御データ95に基づいて、モータ41により、バルブ21を自動的に移動させる。
従って、第3の実施形態では、請求項における「コンピュータ」が、サーバ50と制御盤92の複数のコンピュータから構成されており、制御盤92の送受信回路93とメモリ94とが、請求項における「コンピュータ側送信手段」と「バルブ制御データ記憶手段」に相当し、自動制御対象のエアドロップハンマ91のモータ41が、請求項における「バルブ移動手段」に相当する。なお、図8のエアドロップハンマ学習システム85による機械学習の結果を反映した、サーバ50のバルブ変位制御データ59は、ネットワーク、又はUSB等の記憶デバイスを用いて、サーバ50から、エアドロップハンマ制御システム90における制御盤92のメモリ94にコピーされる。
変形例:
なお、本発明は、上記の各実施形態の構成に限られず、発明の趣旨を変更しない範囲で種々の変形が可能である。次に、本発明の変形例について説明する。
変形例1:
上記の各実施形態における図面では、機械学習時における各種データの検出に用いるエアドロップハンマ1が1つの場合の例を示したが、機械学習の基になる検出データの送信元のエアドロップハンマ1は、複数であることが好ましい。何故なら、検出データの送信元のエアドロップハンマ1が多い方が、バルブ21の好ましい移動のさせ方の特徴量をより正確に求めることができるので、この正確な特徴量に基づいてバルブ21の変位制御用のデータを算出することにより、より正確なバルブ21の変位制御用のデータ(バルブ変位制御データ59)を得ることができるからである。
変形例2:
また、上記第2の実施形態では、サーバ50が、エアドロップハンマ1側から送信された、バルブ21の変位のデータと、放射温度計4で検出された棒材の温度のデータと、温度計31で検出された気温のデータとに基づいて、機械学習を行い、バルブ21の好ましい移動のさせ方の特徴量を求めるようにした。けれども、温度計31で検出された気温のデータの代わりに、制御盤2の操作部45又はサーバ50の操作部等から入力された現在の季節の情報(現在の季節を表すコード等の情報)を用いてもよい。すなわち、サーバ50が、エアドロップハンマ1側から送信された、バルブ21の変位のデータと、放射温度計4で検出された棒材の温度のデータと、操作部45等から入力された季節の情報とに基づいて、機械学習を行うようにしてもよい。現在の季節の情報が、制御盤2の操作部45から入力されたものである時には、サーバ50の送受信回路51が、請求項における「季節情報取得手段」に相当する。また、現在の季節の情報が、サーバ50の操作部(不図示)から入力されたものである時には、サーバ50の操作部が、請求項における「季節情報取得手段」に相当する。
変形例3:
また、上記の各実施形態では、機械学習の処理を行うサーバが、クラウド上のサーバ50である場合の例を示したが、エアドロップハンマ1が配設された工場の構内に配置されたサーバ等のコンピュータに、バルブ21の好ましい移動のさせ方の特徴量を機械学習させてもよい。
変形例4:
また、上記の各実施形態では、機械学習の基になる、エアドロップハンマ1側の検出データに、放射温度計4で検出された棒材の温度のデータが含まれる場合の例を示したが、本発明は、これに限られず、例えば、機械学習の基になる、エアドロップハンマ1側の検出データが、バルブ21の変位のデータ(バルブ変位データ56)と、エアシリンダ14内に流入する圧縮空気の空圧のデータ(エア圧力データ54)だけであってもよいし、バルブ21の変位のデータと、温度計31からの出力値(気温データ81)だけであってもよい。
変形例5:
また、上記の各実施形態では、レーザー変位センサであるバルブ変位計29により、バルブ21の変位を直接検出する場合の例を示したが、バルブ21自体の変位を直接検出する代わりに、弁軸22の変位を各種の変位検出用のセンサで検出することにより、バルブ21の変位を間接的に検出してもよい。この場合における各種の変位検出用のセンサも、請求項における「バルブ変位検出手段」に相当する。また、バルブ21自体の変位を直接検出する代わりに、バルブ操作機構27を介してバルブ21を移動させるためのペダル28の上下方向の変位を検出することにより、バルブ21の変位を間接的に検出してもよい。この場合におけるペダル28の変位検出用のセンサも、請求項における「バルブ変位検出手段」に相当する。
変形例6:
また、上記の各実施形態では、モータ41を用いて、バルブ21を移動させる場合の例を示したが、油圧を用いて、バルブ21を移動させてもよい。