JP6982438B2 - デンプン分解酵素、それをコードする核酸、及びその利用 - Google Patents

デンプン分解酵素、それをコードする核酸、及びその利用 Download PDF

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本発明はデンプン分解酵素、これをコードする核酸、これを用いた組み換えベクター及び形質転換体、デンプン分解酵素を製造する方法、並びにデンプン分解酵素を用いたデンプンの分解方法及びアルコール発酵方法に関する。
近年、生活様式の多様化や消費者の鮮度志向、外食産業の急激な発達により、生産・流通・消費の各段階において大量の食品が廃棄されている。食料自給率の低い日本において、膨大な量の食品廃棄物は深刻な状況にある(非特許文献1)。この現状を改善する方策の1つとして、食品廃棄物を原料としたバイオエタノールの製造が挙げられる。これにより食品廃棄物の焼却・埋め立てに使われるコストを抑え、廃棄物からバイオエタノールを製造することで(非特許文献2)、食料と競合しないエネルギー生産システムを作り上げることができる。近年の傾向として、製造されたバイオエタノールは主に輸送燃料に利用されており(非特許文献3)、カーボンニュートラルな社会を構築する一翼を担っている。
食品廃棄物からバイオエタノールを製造する際し、デンプンをターゲットとした例でいうと、水和・好熱性酵素を用いたデンプンの液化・糖化の後、酵母によりエタノール発酵を行い、濃縮することによりバイオエタノールを獲得する(SHF:Separate Hydrolysis and Fermentation)。しかし、この方法では、高温処理を必要とし、膨大な熱エネルギーを要することが課題となる(非特許文献3)。この課題の解決策として、バイオマスを糖化しながら同時にエタノールを発酵するプロセスが注目されている(SSF:Simultaneous Saccharification and Fermentation)(非特許文献4)。本プロセスは、酵母の生育環境において、糖化と発酵を同時に行うため、熱エネルギーコストを省くことが可能である。さらに、SHFプロセスと比較して時間当たりのエタノール生産量が高いということが明らかとなっている(非特許文献5、非特許文献6)。しかしながら、このプロセスの運用には、酵母の最適生育環境において生デンプン分解能を有する酵素が必要である。従来の好熱性酵素はこの条件下において、十分な活性を保持できないのが現状である。
ところで、ミミズは環形動物門貧毛目の生物で、地球上で3,000〜7,000種存在するといわれている。その内の1種である赤ミミズ(Lumbricus rubellus)の凍結乾燥粉末からは、血栓溶解酵素が単離され、血栓溶解剤としての利用が進められている(非特許文献7〜9等)。ミミズの注目すべき点は、土壌中の有機物を摂取し、腸内に分泌する多くの酵素と腸内微生物群によって分解され、非常に栄養価の高い糞を排泄するということである(非特許文献10)。また、ミミズには有機物を分解しコンポスト化する働きがある(ミミズコンポスト)。コンポスト化に用いられているミミズは限られており、中でもエイセニア・フェティダ(Eisenia fetida、 E. fetidaと略称することがある)がよく用いられている(非特許文献11、12)。現在までに、E. fetida由来の糖質加水分解酵素群のスクリーニングが行われ(非特許文献13)、糖質加水分解酵素の存在が明らかにされている。その中には、比較的穏和な環境下で生デンプンを分解するアミラーゼの存在を明らかになっている。特許文献1には、E. fetida由来の生デンプン分解酵素が記載されている。
特開2008−72985号公報
農林水産省 食品産業環境対策室「食品廃棄物等の利用状況等(平成22年度推計)」<概念図>http://www.maff.go.jp/j/shokusan/recycle/syoku_loss/pdf/syokuhinhaikifuro22.pdf Rebecca Anne Davis. (2008) Parameter Estimation for Simultaneous Saccharification and Fermentation of Food Waste Into Ethanol Using Matlab Simulink. Appl Biochem Biotechnol, 147:11-21 大聖泰弘「『図解』バイオエタノール最前線」〔改訂版〕工業調査会(2008) 久松眞「バイオエタノール研究最前線 ―バイオマスの糖化と発酵のマッチングが勝負―・」三重大学大学院 生物資源学研究科 資源循環学科http://www.chart.co.jp/subject/rika/scnet/40/sc40-2.pdf F Alfani, A Gallifuoco, A Saporosi, A Spera, M Cantarella. (2000) Comparison of SHF and SSF processes for the bioconversion of steam-exploded wheat straw. Journal of Industrial Microbiology and Biotechnology. 25:184-192 Deliana Dahnum, Sri Octavia Tasum, Eka Triwahyuni, Muhammad Nurdin, Haznan Abimanyu. (2015) Comparison of SHF and SSF processes using enzyme and dry yeast for optimization of bioethanol production from empty fruit bunch. Energy Procedia. 68:107-116 Nakajima.N., Mihara.H., Sumi.H. (1993) Characterization of Potent Fibrinolytic Enzyme in Earthworm, Lumbricus rubellus. Biosci. Biotech. Biochem. 57:1726-1730 Nakajima.N., Sugimoto.M., Ishihara.K., Nakamura.K., Hamada.H. (1999) Further Characterization of Earthworm Serine Proteases: Cleavage Specificity Against Peptide Substrates and on Autolysis. Biosci. Biotech. Biochem. 63: 2031-2033 Zhao.J., Li.L., Wu.C., He.R.Q. (2003) Hydrolysis of fibrinogen and plasminogen by immobilized earthworm fibrinolytic enzyme II from Eisenia fetida. Int. J. Biol. Macromol. 32: 165-171 Canellas.L.P., Olivarse.F.L., Okorokova-Facanha.A.L., Facanha.A.R. (2002) Humic Acids Isolated from Earthworm Compost Enhance Root Elongation, Lateral Root Emergence, and Plasma Membrane H+-ATPase Activity in Maize Roots. J. Plant Physiol. 130: 1951-1957 Appelhof.M.「だれでもできるミミズで生ごみリサイクル」合同出版(2002) 佐原みどり「生ゴミを食べてもらうミミズ御殿の作り方」VOICE (2002) Ueda M, Asano T, Nakazawa M, Miyatake K, Inouye K (2008) Purification and characterization of novel raw-starch-digesting and cold-adapted alpha-amylases from Eisenia foetida. Comp. Biochem. Physiol. B Biochem. Mol. Biol. 150:125-130
α-アミラーゼはα-1,4結合のグルコース鎖をエンド型に加水分解する酵素である。また、デンプンからのバイオエタノール製造工程において、分子量の急激な低下による液化を担う酵素でもある。上記のとおり、E. fetida由来α-アミラーゼが生デンプンを分解することが明らかとなっている。しかし、その酵素のアミノ酸配列や活性、安定性等の詳細な特性、さらにはSSFプロセスへの適合性や、リコンビナント酵素としての活用性についてはは十分には解明されていない。
そこで本発明は、デンプンの分解において高い活性を示すデンプン分解酵素、これをコードする核酸、これを用いた組み換えベクター及び形質転換体、デンプン分解酵素を製造する方法、並びにデンプン分解酵素を用いたデンプンの分解方法及びアルコール発酵方法の提供を目的とする。また、デンプン分解酵素のアミノ酸配列を決定し、これをコードする核酸を特定することで、特定の宿主による形質転換体を作製する等、リコンビナント酵素に係る応用技術に資することを目的とする。さらに、そのリコンビナント酵素の諸特性を明らかにすることで、材料の豊富化やアプリケーションの多様化につなげることを目的とする。
上記課題は下記の手段により解決された。
<1> 下記の(a)〜(c)の何れかに記載のアミノ酸配列を有するデンプン分解酵素。
(a)配列番号2に記載のアミノ酸配列;
(b)配列番号2に記載のアミノ酸配列において1〜数個のアミノ酸が置換、欠失、挿入、及び/又は付加したアミノ酸配列を有し、かつデンプン分解酵素活性を有するアミノ酸配列;
(c)配列番号2に記載のアミノ酸配列と90%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列を含み、かつデンプン分解酵素活性を有するアミノ酸配列
<2> 下記の(d)〜(g)の全てに記載の性質を有するデンプン分解酵素。
(d)最適pH:5.0である;
(e)pH安定性:pH8.0〜9.0の条件下で4℃で24時間処理した後におけるpH5.0及び37℃での残存活性が、80%以上であり、pH10.0の条件下で4℃で24時間処理した後におけるpH5.0及び37℃での残存活性が、80%以下である;
(f)温度依存性:最適温度での活性を100%としたとき、20℃での活性が60%以下であり、50℃での活性が80%以上であり、60℃での活性が35%以下である;
(g)温度安定性:37℃での活性において、インキュベート前の活性に対して、10℃で30分インキュベート後の活性が90%以上であり、60℃で30分インキュベート後の活性が60%以下である
<3> さらに、(h)に記載の性質を有する、<2>に記載のデンプン分解酵素。
(h)生米デンプン分解能:下記反応条件で120分以上反応させたときの生米デンプン分解能が0.05g/L以上であり、240分反応させたときの生米デンプン分解能が0.1g/L以上である
反応条件:0.4%可溶性デンプンを用いて0.1M acetate buffer(pH 5.0)、30℃の条件下にて0.6U/mlに調整後、同条件下にて不溶性である生米デンプンを用いて分解能を比較した
<4> さらに、(i)に記載の性質を有する、<2>又は<3>に記載のデンプン分解酵素。
(i)エタノール存在下での活性:エタノール濃度15%での活性が不存在下での活性の80%以下であり、エタノール濃度20%での活性が不存在下での活性の60%以下である
<5> さらに、(j)に記載の性質を有する、<2>〜<4>の何れか一項に記載のデンプン分解酵素。
(j)エタノール安定性:37℃で30分インキュベートするに当たり、エタノール濃度を20質量%としたときの活性がエタノール不存在下の150%以上であり、40質量%としたときの活性がエタノール不存在下の150%以上である
<6> さらに、(k)に記載の性質を有する、<2>〜<5>の何れか一項に記載のデンプン分解酵素。
(k)NaClに対する影響:2M NaCl存在下での活性が不存在化の活性より低い
<7> <1>に記載のデンプン分解酵素をコードする核酸。
<8> 下記の(m)〜(o)の何れかに記載の核酸。
(m)配列番号1に記載の塩基配列を有する核酸;
(n)配列番号1に記載の塩基配列において1〜数個の塩基が置換、欠失、挿入、及び/又は付加した塩基配列を有し、かつデンプン分解酵素をコードする核酸;
(o)配列番号1に記載の塩基配列を有する核酸とストリンジェントな条件下においてハイブリダイズする塩基配列を有し、かつデンプン分解酵素をコードする核酸
<9> <7>又は<8>に記載の核酸を有する組み換えベクター。
<10> <7>又は<8>に記載の核酸あるいは<9>に記載の組み換えベクターを有する形質転換体。
<11> 宿主が酵母である、<10>に記載の形質転換体。
<12> <10>又は<11>に記載の形質転換体を培養することによりデンプン分解酵素を産生することを含む、<1>から<6>の何れか一項に記載のデンプン分解酵素を製造する方法。
<13> <1>から<6>の何れか一項に記載のデンプン分解酵素によってデンプンを処理することを含む、デンプンの分解方法。
<14> <1>から<6>の何れか一項に記載のデンプン分解酵素によってデンプンを糖化し、得られた糖化物を発酵させることを含む、アルコール発酵方法。
<15> 酵母を用いて糖化物を発酵させる、<14>に記載のアルコール発酵方法。
本発明により、デンプンの分解において高い活性を示すデンプン分解酵素、これをコードする核酸、これを用いた組み換えベクター及び形質転換体、デンプン分解酵素を製造する方法、並びにデンプン分解酵素を用いたデンプンの分解方法及びアルコール発酵方法の提供をすることができる。また、デンプン分解酵素のアミノ酸配列を決定し、これをコードする核酸を特定することで、特定の宿主による形質転換体を作製する等、リコンビナント酵素に係る応用技術に資することができる。さらに、そのリコンビナント酵素の諸特性を明らかにすることで、材料の豊富化やアプリケーションの多様化につなげることができる。
SHFプロセスとSSFプロセスを対比したアルコール製造のフローチャートである。 pPICZα A (Invitrogen Cat. no. V195-20)の配列を示す図である。 pPICZα A-Ef-Amy I(a)、pPICZα A-Ef-Amy II(b)の配列を示す図である。 Ef-Amy IIの予想されるアミノ酸配列の特徴を示す図である。 Ef-Amy IとEf-Amy IIの進化的関係を表すために近接接合法を用いて作製した分子系統樹(様々なアミラーゼ系酵素の分子系統樹)である。 TOYOPEARL DEAE-650Mによる培養上清の陰イオン交換クロマトグラフィー(rEf-Amy I)の結果を示すグラフである。 HisTrap FFによるTOYOPEARL DEAE-650M活性画分のアフィニティークロマトグラフィー(rEf-Amy I)の結果を示すグラフである。 SDS-PAGE(rEf-Amy I)の結果を示す。 HisTrap FFによる限外濾過後のアフィニティークロマトグラフィー(rEf-Amy II)の結果を示すグラフである。 SDS-PAGE(rEf-Amy II)の結果を示す図面代用写真である。 TLC分析によるrEf-Amy I(a)とrEf-Amy II(b)の生デンプン分解産物の測定結果を示す。 rEf-Amy Iの酵素活性(a)と安定性(b)に及ぼすpHの影響を示すグラフである。 rEf-Amy IIの酵素活性(a)と安定性(b)に及ぼすpHの影響を示すグラフである。 Ef-Amy IとEf-Amy IIの酵素活性(a)と安定性(b)に及ぼす温度の影響を示すグラフである。 低温条件下でのrEf-Amy I(a)とrEf-Amy II(b)のアミラーゼ活性を示すグラフである。 各種生デンプンに対する基質特異性を示すグラフ(a:rEf-Amy I、b:rEf-Amy II)である。 塩化物(NaCl、KCl)に対する影響を示すグラフ(a:rEf-Amy I、b:rEf-Amy II)である。 各種のデンプン分解酵素による生米デンプン分解能の比較を示すグラフである。 Ef-Amy IとEf-Amy IIのエタノール存在下での酵素活性(a)と安定性(b)を示すグラフである。 E. coli DH5αを形質転換することで構築したpPICZα A-opt Ef-Amy IIの配列を示す図である。 optimized Ef-Amy II(成熟型)の塩基配列(配列番号14)とアミノ酸配列(配列番号15)である。 コドンの最適化前(A)と最適化後(B)のrEf-Amy IIのSDS-PAGEの結果を示す。
以下において、本発明の内容について詳細に説明する。
<デンプン分解酵素>
本発明の一実施形態におけるデンプン分解酵素は下記の(a)〜(c)の何れかに記載の要件を満たす。
(a)配列番号2に記載のアミノ酸配列;
(b)配列番号2に記載のアミノ酸配列において1〜数個のアミノ酸が置換、欠失、挿入、及び/又は付加したアミノ酸配列を有し、かつデンプン分解酵素活性を有するアミノ酸配列;
(c)配列番号2に記載のアミノ酸配列と90%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列を含み、かつデンプン分解酵素活性を有するアミノ酸配列:
条件(b)における、「アミノ酸配列において1〜数個のアミノ酸が置換、欠失、挿入、及び/又は付加したアミノ酸配列」における「1〜数個」の範囲は特には限定されないが、例えば、1〜20個、好ましくは1〜10個、より好ましくは1〜7個、さらに好ましくは1〜5個、特に好ましくは1〜3個程度を意味する。
条件(c)の配列同一性は92%以上であることが好ましく、94%以上であることがより好ましく、95%以上であることがさらに好ましく、96%以上であることが一層好ましく、97%以上であることがより一層好ましく、98%以上であることがさらに一層好ましく、99%以上であることが特に好ましい。
本発明の別の実施形態におけるデンプン分解酵素は下記の(d)〜(g)の全ての要件を満たす。
(d)最適pH:5.0である(ただし、最適pHは+0.3以下−1.0以上で許容され、さらには+0.2以下−0.8以上で許容され、とくには+0.1以下−0.6以上で許容される);
最適pHは、例えば、pH 4.0〜9.0までの各bufferを用いて、37℃における活性を測定することにより評価することができる。基質は可溶性デンプンを使用し、以下に示すbufferで活性を測定するう。0.1 M acetate buffer(pH 4.0〜6.0)、0.1 M phosphate buffer(pH 6.0〜8.0)、0.1 M Tris-HCl buffer(pH 8.0〜9.0)
(e)pH安定性:pH8.0〜9.0の条件下で4℃で24時間処理した後におけるpH5.0及び37℃での残存活性が、80%以上であり、pH10.0の条件下で4℃で24時間処理した後におけるpH5.0及び37℃での残存活性が、80%以下(好ましくは75%以下)である;
pH安定性は、pH 4.0〜11.0までの各bufferに酵素液を加え、4℃で24時間処理した後、acetate buffer(pH 5.0)を用いて37℃における残存活性を測定することにより評価することができる。基質は可溶性デンプンを使用し、以下に示すbufferで24 h処理する。0.1 M acetate buffer(pH 4.0〜6.0)、0.1 M phosphate buffer(pH 6.0〜8.0)、0.1 M Tris-HCl buffer(pH 8.0〜9.0)、0.1 M carbonate-bicarbonate buffer(pH 9.0〜11.0)
(f)温度依存性:最適温度での活性を100%としたとき、20℃での活性が60%以下(好ましく50%以下)であり、50℃での活性が80%以上(好ましくは90%以上)であり、60℃での活性が35%以下(好ましくは30%以下)である;温度依存性は、さらに、30℃での活性が70%以下であることが好ましく、60℃での活性が40%以下(より好ましくは30%以下)であることが好ましい;
温度依存性は、0.1 M acetate buffer(pH 5.0)中で10℃〜80℃の各温度における活性を測定することにより評価することができる。基質は可溶性デンプンを用いる。
(g)温度安定性:37℃での活性において、インキュベート前の活性に対して、10℃で30分インキュベート後の活性が90%以上であり、60℃で30分インキュベート後の活性が60%以下(好ましくは40%以下、より好ましくは20%以下、さらに好ましくは10%以下、一層好ましくは5%以下)である。
温度安定性は、酵素液を0.1 M Tris-HCl buffer(pH 8.0)中で10℃〜80℃の各温度にて30 minインキュベート後直ちに氷冷し、0.1 M acetate buffer(pH 5.0)中で37℃にて残存活性を測定することにより評価することができる。基質は可溶性デンプンを用いる。
本実施形態のデンプン分解酵素においては、さらに、(h)に記載の性質を有することが好ましい。
(h)生米デンプン分解能:下記反応条件で120分以上反応させたときの生米デンプン分解能が0.05g/L以上(好ましくは0.08g/L以上、より好ましくは0.1g/L以上)であり、240分反応させたときの生米デンプン分解能が0.1g/L以上(好ましくは0.12g/L以上、より好ましくは0.15g/L以上)である;さらに、生米デンプン分解能がBacillus licheniformis由来(BLA)のα−アミラーゼより高活性であることが好ましい;
反応条件:0.4%可溶性デンプンを用いて0.1M acetate buffer(pH 5.0)、30℃の条件下にて0.6U/mlに調整後、同条件下にて不溶性である生米デンプンを用いて分解能を比較した。
本実施形態のデンプン分解酵素においては、さらに、(i)に記載の性質を有することが好ましい。
(i)エタノール存在下での活性:エタノール濃度15%での活性が不存在下での活性の80%以下(好ましくは70%以下)であり、エタノール濃度20%での活性が不存在下での活性の60%以下(好ましくは55%以下)である。
エタノール存在下での活性は、反応系に各終濃度となるようエタノールを添加し、0.1 M acetate buffer(pH 5.0)を用いて37℃における活性を測定することにより評価することができる。基質は可溶性デンプンを用いる。
本実施形態のデンプン分解酵素においては、さらに、(j)に記載の性質を有することが好ましい。
(j)エタノール安定性:37℃で30分インキュベートするに当たり、エタノール濃度を20質量%としたときの活性がエタノール不存在下の150%以上(好ましくは175%以上、より好ましくは200%以上)であり、40質量%としたときの活性がエタノール不存在下の150%以上(好ましくは175%以上)である。
エタノール安定性は、0.1 M Tris-HCl buffer(pH 8.0)に酵素液と各エタノール濃度になるようにエタノールを加え、37℃で30 minインキュベート後、直ちに5 min以上氷冷した。その後、0.1 M acetate buffer(pH 5.0)を用いて37℃で残存活性を測定することにより評価することができる。基質は可溶性デンプンを用いる。
本実施形態のデンプン分解酵素においては、さらに、(k)に記載の性質を有することが好ましい。
(k)NaClに対する影響:2M NaCl存在下での活性が不存在化の活性より低い(好ましくは95%以下)。
NaClに対する影響は、酵素液に終濃度2MとなるようNaClを加え、4℃で24 h処理した後、0.1 M acetate buffer(pH 5.0)を用いて37℃における残存活性を測定することにより評価することができる。基質は可溶性デンプンを用いる。
本実施形態のデンプン分解酵素においては、さらに、(l1)及び/又は(l2)に記載の性質を有することが好ましい。
(l1)Ag+、Fe2+の存在下での活性が、非存在下の活性の25%以上である(好ましくは35%以上、より好ましくは45%以上、さらに好ましくは55%以上)
Ag+、Fe2+の存在下での活性は、0.1 M Tris-HCl buffer(pH 8.0)に酵素液を添加後、終濃度1 mMとなるように各金属イオン溶液を加え4℃で24 h静置後、0.1 M acetate buffer(pH 5.0)を用いて37℃における残存活性を測定することにより評価することができる。基質は可溶性デンプンを用いる。
(l2)うるち米(Japonica rice)に対する活性を100%としたとき、インディカ米(Indica rice)の活性がより低い(好ましくは、95%以下である)
上記の活性は、うるち米またはインディカ米を0.1 M acetate buffer(pH 5.0)を用いて37℃の条件下で酵素と反応させ、その活性を比較することにより評価することができる。
なお、本明細書において、デンプン分解酵素とは、デンプンの構造を任意の箇所で分解する作用を有するタンパク質又はポリペプチドの総称である。具体的には、デンプンのグルコース単位が連結したグルコシド結合を加水分解するもであることが好ましく、α-1,4結合及び/又はα1,6結合のグルコース鎖をエンド型に加水分解する酵素であることがより好ましく、α-1,4結合のグルコース鎖をエンド型に加水分解する酵素であることがさらに好ましい。また、デンプンからのバイオエタノール製造工程において、分子量の急激な低下による液化を担う酵素であることが好ましい。
<核酸>
本発明の一実施形態は、上記デンプン分解酵素のアミノ酸配列をコードする核酸である。
本発明に係る核酸の別の実施形態においては、下記の(m)〜(o)の何れかに記載の核酸であることが好ましい。
(m)配列番号1に記載の塩基配列を有する核酸;
(n)配列番号1に記載の塩基配列において1〜数個の塩基が置換、欠失、挿入、及び/又は付加した塩基配列を有し、かつデンプン分解酵素をコードする核酸;
(o)配列番号1に記載の塩基配列を有する核酸とストリンジェントな条件下においてハイブリダイズする塩基配列を有し、かつデンプン分解酵素をコードする核酸。
上記した「塩基配列において1〜数個の塩基が置換、欠失、挿入、及び/又は付加した塩基配列」における「1〜数個」の範囲は特には限定されないが、例えば、1〜60個、好ましくは1〜30個、より好ましくは1〜20個、さらに好ましくは1〜10個、特に好ましくは1〜5個程度を意味する。
上記した「ストリンジェントな条件下においてハイブリダイズする塩基配列」とは、DNAをプローブとして使用し、コロニー・ハイブリダイゼーション法、プラークハイブリダイゼーション法、あるいはサザンブロットハイブリダイゼーション法等を用いることにより得られるDNAの塩基配列であることが好ましく、例えば、コロニーあるいはプラーク由来のDNA又は該DNAの断片を固定化したフィルターを用いて、0.7〜1.0MのNaCl存在下、65℃でハイブリダイゼーションを行った後、0.1〜2×SSC溶液(1×SSC溶液は、150mM塩化ナトリウム、15mMクエン酸ナトリウム)を用い、65℃条件下でフィルターを洗浄することにより同定できるDNA等を挙げることができる。ハイブリダイゼーションは、公知の方法に準じて行うことができる。
ストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNAとしては、プローブとして使用するDNAの塩基配列と一定以上の相同性(配列同一性)を有するDNAが挙げられ、例えば70%以上、好ましくは80%以上、より好ましくは90%以上、さらに好ましくは93%以上、特に好ましくは95%以上、最も好ましくは98%以上の相同性を有するDNAが挙げられる。
本発明の核酸の取得方法は特に限定されない。本明細書中の配列表の配列番号1に記載したアミノ酸配列の情報に基づいて適当なブローブやプライマーを調製し、それらを用いて、cDNAライブラリーやゲノムDNAライブラリをスクリーニングすることにより本発明の遺伝子を単離することができる。
PCR(Polymerase Chain Reaction)法により本発明の核酸を取得することもできる。例えば、上記の菌株の染色体DNA又はcDNAライブラリーを鋳型として使用し、所定の配列番号に記載した塩基配列を増幅できるように設計したプライマーを使用してPCRを行うことができる。PCRの反応条件は適宜設定することができ、例えば、必要によりcDNAを94〜98℃で3分間処理し、プライマーを付与して、94〜98℃で10〜30秒間、55〜62℃で5〜30秒間、68〜72℃で8秒〜2分間からなる反応工程を1サイクルとして、例えば25〜35サイクル行った後、必要により68〜72℃で5分間おき、必要によりDNAポリメラーゼを付与して4℃で無期限に静置する条件などを挙げることができる。次いで、増幅されたDNA断片を、所望の宿主で増幅可能な適切なベクター中にクローニングすることができる。上記したブローブ又はプライマーの調製、cDNAライブラリーの構築、cDNAライブラリーのスクリーニング、並びに目的遺伝子のクローニングなどの操作は当業者に既知であり、適宜定法に準じて行うことができる。
<組み換えベクター>
本発明の好ましい実施形態に係る上記の核酸はこれを組み込んだ組み換えベクターとすることができる。ベクターの種類は発現ベクターでも非発現ベクターでもよく、目的に
応じて選ぶことができる。クローニングベクターとしては、ファージベクター、プラスミドベクター等いずれでも使用できる。具体的には、メタノール資化性酵母(Pichia pastoris)、Z pPICZα A (Invitrogen Cat. no. V195-20)が挙げられる。
発現ベクターとしては、宿主細胞において自立複製可能であるか、あるいは宿主細胞の染色体中へ組込み可能であるものを使用することが好ましい。また、発現ベクターとしては、本発明の遺伝子を発現できる位置にプロモーターを含有しているものが使用されることが好ましい。
細菌を宿主細胞として用いる場合は、本発明の遺伝子を発現させるための発現ベクターは該細菌中で自立複製可能であると同時に、プロモーター、リボソーム結合配列、上記DNA及び転写終結配列より構成された組換えベクターであることが好ましい。プロモーターを制御する遺伝子が含まれていてもよい。
プロモータは、選択された宿主細胞中で転写活性を示す塩基配列であり、宿主細胞と相同又は非相同の蛋白をコードする遺伝子に由来する。塩基配列の転写を行なうために、特に細菌性宿主中で転写を行なうために適するプロモータを設計ないし選定することが好ましい。例えば、公知のプロモータを基礎として、所望のプロモーターを設計してもよい。また本願で有用な発現ベクターには適切な転写ターミネーターが含まれ、真核生物では、アルファ−アミラーゼ変異体をコードする塩基配列に作動可能に結合したポリアデニル化配列が含まれることが好ましい。ターミネーター配列及びポリアデニル化配列は、プロモータと同じ供給源から得ることができる。ベクターはさらに、対象とする宿主細胞中でのベクターの複製を可能にする塩基配列を備えることが好ましい。また、ベクターは選択マーカーを備えることが好ましい。選択マーカーは、任意に公知のものを選択することができる。ベクターはさらに、アスペルギルス選択マーカー、ハイグロマイシン耐性を高めるマーカーが含まれていてもよい。
細胞内発現は、例えば宿主にある種の細菌を用いる場合等に有利であるが、一般的には、変異体の発現は細胞外の培地へ行なうことが好ましい。通常、発現されたプロテアーゼの培地への分泌を可能にする前領域を備えることが好ましい。所望により、各前領域をコードする塩基配列を置換することにより、この前領域を別の前領域、又はシグナル配列で置き換えることができる。酵素、プロモータ、ターミネーター、その他の要素をそれぞれコードするの核酸(塩基配列)又はその構築体(以下、核酸構築体という)をライゲートし、複製に必要な情報を有するベクターにこれらを挿入するための方法は公知である。
<形質転換体>
本発明の好ましい実施形態に係る核酸を有する形質転換体は、上記した組み換えベクター(好ましくは発現ベクター)を宿主に導入することにより作製することができる。微生物や細胞は、発現ベクターを含み、デンプン分解酵素の組換え産出の宿主として用いられることが好ましい。宿主は形質転換されていることが好ましい。宿主の染色体への組み込みは、例えば相同又は非相同組換え等の公知の方法で行なうことができる。あるいは、発現ベクターで形質転換することもできる。哺乳類や昆虫等の高等な有機体の細胞でもよいが、好ましくは例えば細菌や菌類等の微生物の細胞である。細菌の宿主細胞の具体例としては、Agrobacterium属、Alicyclobacillus属、Anabaena属、Anacystis属、Arthrobacter属、Azobacter属、Bacillus属、Brevibacterium属、Chromatium属、Clostridium属、Corynebacterium属、Escherichia属、Erwinia属、Kluyveromyces属、Methylobacterium属、Microbacterium属、Pachysolen属、Phormidium属、Pichia属、Pseudomonas属、Rhodobacter属、Rhodopseudomonas属、Rhodospiri11um属、Saccharomyces属、Serratia属、Schizosaccharomyces属、Scenedesmun属、Streptomyces属、Synnecoccus属、Schwanniomyces属、Trichosporon属、Zymomonas属、Zymobacter属等に属する微生物を挙げることができる。細菌宿主へ組換えベクターを導入する方法としては、例えば、カルシウムイオンを用いる方法やプロトプラスト法等を挙げることができる。
酵母宿主の具体例としては、サッカロミセス・セレビシェ(Saccharomyces cerevisae)、シゾサッカロミセス・ポンベ(Schizosaccharomyces pombe)、クリュイベロミセス・ラクチス(Kluyveromyces lactis)、トリコスポロン・プルランス(Trichosporon pu11ulans)、シュワニオミセス・アルビウス(Schwanniomyces a11uvius)、ピキア・パストリス(Pichia pastoris)、ピキア・スティピティス(Pichia stipitis)、パチソン・タノフィラス(Pachysolen tannophilus)、クリュイベロミセス・フラジリス(Kluyveromyces fragilis)、クリュイベロミセス・マルキサナス(Kluyveromyces marxianus)、及びこれらの改良株が挙げられる。酵母宿主への組み換えベクターの導入方法としては、例えば、エレクトロポレーション法、スフェロブラスト法、酢酸リチウム法等を挙げることができる。
<デンプン分解酵素の産生>
本発明のデンプン分解酵素は、上記の形質転換体を培養することにより産生することができる。具体的には、上記のようにして作製した形質転換体を培養し、培養物中に酵素(タンパク質、ポリペプチド)を生成蓄積させ、該培養物より酵素を採取することにより必要により組み換えたタンパク質として単離することができる。形質転換体が大腸菌等の原核生物、酵母菌等の真核生物である場合、これら微生物を培養する培地は、該微生物が資化し得る炭素源、窒素源、無機塩類等を含有し、形質転換体の培養を効率的に行える培地であれば天然培地、合成培地のいずれでもよい。培養は、好気的条件下で行うことが好ましく、形質転換体に適合した公知の条件に従って行うことができる。
形質転換体の培養物から、デンプン分解酵素を単離精製するには、通常のタンパク質の単離、精製法を用いればよい。例えば、タンパク質が、細胞内に溶解状態で発現した場合には、培養終了後、細胞を遠心分離により回収し水系緩衝液に懸濁後、超音波破砕機、フレンチプレス、マントンガウリンホモゲナイザー、ダイノミル等により細胞を破砕し、無細胞抽出液を得る。該無細胞抽出液を遠心分離することにより得られた上清から、通常のタンパク質の単離精製法、すなわち、溶媒抽出法、硫安等による塩析法、脱塩法、有機溶媒による沈殿法、ジエチルアミノエチル(DEAE)セファロース、陰イオン交換クロマトグラフィー法、陽イオン交換クロマトグラフィー法、疎水性クロマトグラフィー法、分子篩を用いたゲルろ過法、アフィニティークロマトグラフィ一法、クロマトフォーカシング法、等電点電気泳動等の電気泳動法等の手法を単独あるいは組み合わせて用い、精製標品を得ることができる。
また、該タンパク質が細胞内に不溶体を形成して発現した場合は、同様に細胞を回収後破砕し、遠心分離を行うことにより得られた沈殿画分より、通常の方法により該タンパク質を回収後、該タンパク質の不溶体をタンパク質変性剤で可溶化することが好ましい。該可溶化液を、タンパク質変性剤を含まないあるいはタンパク質変性剤の濃度がタンパク質が変性しない程度に希薄な溶液に希釈、あるいは透析し、該タンパク質を正常な立体構造に構成させた後、上記と同様の単離精製法により精製標品を得ることができる。
<デンプンの処理及びアルコール発酵>
本発明に係る上記各実施形態のデンプン分解酵素は、これを用いることによってデンプンを処理し、分解することができる。なかでも、デンプン分解酵素によってデンプンを糖化し、得られた糖化物を発酵させることが好ましい。糖化物を発酵させるには、上述した本発明の好ましい実施形態に係る核酸を導入した形質転換体(酵母)を用いることが好ましい。本発明により、リコンビナント酵素を用いた各試験によりその諸特性が明らかになった。この特性を利用して、活性が高まる条件を設定してデンプンを分解したり、温度やpHなでの感受性を利用した選択的な処理を行うことができる。
上述のように、本発明の上記実施形態に係るデンプン分解酵素は、これを用いることよってデンプンを糖化し、得られた糖化物を発酵させることができる。これが可能化されることによる利点は大きく、冒頭に述べたように、SSF(Simultaneous Saccharification and Fermentation)に利用して、デンプンを糖化しながら同時にエタノールを発酵することができる。このプロセスにより、酵母の最適生育環境(例えば30℃前後、pH5.0付近)において、糖化と発酵を同時に行うため、80℃〜90℃を要するSHF(Separate Hydrolysis and Fermentation)に比べ、熱エネルギーを大幅に低減することができる。図1はSHFとSSFのアルコール製造プロセスを対比して示したフローチャートである。SSFを採用することにより、工程数及び加熱処理が大幅に削減され、製造の効率化につながることが分かる。さらに、SSFでは、SHFプロセスと比較して時間当たりのエタノール生産量が高くなる可能性もあり、その利点は一層顕著となる。
本発明においては、必要により、上記の非特許文献1〜13及び下記の各文献を適宜参照することができ、その記載は本明細書に組み込まれる。
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(52)政府広報オンライン もったいない!食べられるのに捨てられる「食品ロス」を減らそうhttp://www.gov-online.go.jp/useful/article/201303/4.html
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以下に、実施例に基づいて本発明に関してさらに詳細に説明するが、これにより本発明が限定して解釈されるものではない。
<実施例1>
Eisenia fetida由来生デンプン分解酵素遺伝子のクローニングと異種発現
(1)実験概要
シマミミズ (Eisenia fetida) の凍結乾燥粉末抽出液中に、キチナーゼやセルラーゼ、アミラーゼなど様々な糖質加水分解酵素の存在が確認されている(Ueda et al., 2008:非特許文献13、以下、このように著者名,発行年度で表記する)。本実施例では、このE. fetidaから生デンプン分解酵素遺伝子を取得し、異種宿主(Pichia pastoris)で発現させることを目的として実験を行った。なお、今回の実験では構築したE. fetida EST データベースより、GH Family 13の候補遺伝子である、c7174遺伝子とc12319遺伝子を選択した。
(2)実験方法
1-2-1 実験材料
・シマミミズ(Eisenia fetida)
実験に使用したE. fetida は、長根産業(北海道)から購入した。E. fetidaを水で洗浄後、20℃で1晩絶食させた。その後、凍結乾燥し、乳鉢で細かく破砕し、mRNA抽出に使用した。
〜メタノール資化性酵母(Pichia pastoris)を利用した発現系〜
EasySelect Pichia Expression Kit (Invitrogen) を用いて、P. pastoris発現系を構築した。
・メタノール資化性酵母 (Pichia pastoris GS115株)
本実施例では、P. pastoris GS115株を使用した。P. pastoris は、メタノール資化性酵母である。メタノール資化には、アルコールオキシダーゼ (AOX) が必要となり、P. pastoris ではAOX1遺伝子とAOX1プロモーターにより、AOXが生産され、メタノールを資化できる。本菌体の異種発現系はAOX1プロモーターの下流に目的の遺伝子配列を挿入することによって、メタノール資化時に目的の遺伝子を強力に誘導し、発現させるというシステムである。
また、GS115株はHIS4遺伝子に変異をいれ、ヒスチジン要求株としたものである。
・培地組成
YPD (Yeast extract peptone dextrose)培地
1% yeast extract
2% peptone
2% dextrose(glucose)
YPDS+Zeocin寒天培地
1% yeast extract
2% peptone
2% dextrose(glucose)
1M sorbitol
2% agar
100 mg/ml Zeocin (final conc.)
BMGY培地
1% yeast extract
2% peptone
100 mM potassium phosphate, pH 6.0
1.34% YNB
4×10-5 % biotin
1% glycerol
BMMY培地
1% yeast extract
2% peptone
100 mM potassium phosphate, pH 6.0
1.34% YNB
4×10-5 % biotin
0.5% methanol
2×TY培地
1.6% bacto triptone
1% yeast extract
2.5% NaCl
・ベクター
pPICZα A (Invitrogen Cat. no. V195-20)(図2参照)
目的タンパク質のN末端側に α-factor シグナルペプチドを付加することにより、目的タンパク質を細胞外に分泌させることができる、細胞外分泌発現用ベクターである。また、C末端側に付加された6×Hisの存在により、His-Tag融合タンパク質として目的タンパク質を発現させることができる。形質転換体の選択はZeocinを用いて行った。
・基質
アミラーゼの発現確認には、基質として可溶性デンプン(関東化学)と生デンプンを用いた。なお、使用した生デンプンとは生米デンプンであり、3度水で洗浄し、遠心分離後、凍結乾燥したものを使用した。
1-2-2 シマミミズ凍結乾燥粉末からのtotal RNA抽出
1.凍結乾燥させたシマミミズ粉末80 mgに1 mlのISOGEN IIを加え、溶解させた。
2.0.4 mlのRNase free waterを加え、15秒間激しく混合した後、室温で15 min放置した。
3.15,000 rpmで15 min遠心分離し、上清を回収した。
4.5 μlのp-Bromoanisoleを加え、ボルテックスで15秒間混合した後、室温で5 min放置した。
5.15,000 rpmで10 min遠心分離し、上清を回収した。
6.0.4 mlの75%エタノールを加え、数回の転倒混和後、室温で10 min放置した。
7.15,000 rpmで10 min遠心分離し、上清を除去した。
8.沈殿に0.5 mlの75%エタノールを加え、10,000 rpmで3 min遠心分離した。
9.8の操作をもう1度繰り返した。
10.上清を完全に除去し、5〜10 min風乾した。
11.沈殿にRNase free waterを加え、ピペッティングで溶解させ、total RNA溶液(1 μg/μl)とした。
1-2-3 First Strand cDNA合成
1.マイクロチューブにRNA/Primer mix溶液を調製した。
Figure 0006982438
2.65℃で5 minインキュベートした後、すぐに氷上へ戻し1 min以上静置した。
3.cDNA synthesis mixを調製した。
Figure 0006982438
4.0 μlのcDNA synthesis mixをRNA/Primer mixに加えた。
5.以下のような条件でRT-PCRを行い、反応物をcDNAとした。
50℃ 50 min
70℃ 15 min
4℃ ∞
1-2-4 c7174遺伝子の全長塩基配列の取得
c7174遺伝子の全長塩基配列情報は2013年に山之内らが取得したものを使用した(山之内 佑輔 2013、参考文献(51)、以下、このように著者名,発行年度で表示する、他の文献も同様である)。以下に山之内らが全長c7174遺伝子配列取得用に設計したプライマーとPCR組成、条件を示す。
・c7174遺伝子全長配列情報取得用プライマー(上から配列番号3,4)
Figure 0006982438
〜全長c7174遺伝子配列取得用PCR〜
1-2-3において取得したcDNAを鋳型とし、上記プライマーを用いたPCRを行った。
Figure 0006982438
上記PCRにより取得したc7174遺伝子配列は、以降 Ef-Amy I と表記する。
1-2-5 c12319遺伝子の全長配列の取得
トランスクリプトーム解析の情報からプライマーを設計し、c12319遺伝子の全長配列情報の取得を試みた。なお、c12319遺伝子のPCRにおいて非特異的な増幅が見られたため、Nested PCRを用いて全長配列の取得を試みた。また、鋳型には1-2-3において取得したcDNAを用いた。
・全長c12319遺伝子配列取得用プライマー(上から配列番号5〜8)
Figure 0006982438
・PCR(第一段階)
Figure 0006982438
増幅産物は下記に示すアガロースゲル電気泳動とゲル抽出により精製した。
・アガロースゲル電気泳動
PCR産物を6×loadind bufferと混和し、1.0%アガロースゲルにより電気泳動(100 V、20 min)を行い、増幅断片の長さを確認した。
泳動buffer:1×TAE
50×TAE(Tris-Acetate-EDTA 1 L中)
Tris base 242 g
Acetic acid 57.1 ml
EDTA・2Na 18.6 g
1.0%アガロースゲル
Agarose S(和光純薬) 1.0 g
1×TAE 100 ml
エチジウムブロマイド 1.0 μl
・ゲル抽出
1%アガロースゲルにてPCR反応液全量を電気泳動し、目的部分のゲルをカッターにより切り取り、QIAquick(登録商標)gel extraction kit(QIAGEN)によるゲル抽出・精製を行った。操作は添付されてあるプロトコルに従った。
・PCR(第二段階)
第一段階のゲル抽出産物を10倍希釈したものを鋳型として用いた。
Figure 0006982438
上記PCRにより取得した増幅産物を精製し、シークエンス解析を行うことでc12319遺伝子配列情報を取得した。ここで得られたc12319遺伝子配列は以降 Ef-Amy II と表記する。
1-2-6 P. pastoris発現ベクター(pPICZα A)のマルチクローニングサイトの開裂
インサートDNA断片を導入可能な状態にするため、pPICZα Aのマルチクローニングサイトの開裂を行った。制限酵素としてはEcoR IとXba Iを用いてマルチクローニングサイトの開裂を行った。
制限酵素処理後は1-2-5に従いゲル抽出を行うことで、開裂したpPICZα Aベクターを取得した。
1-2-7 Ef-Amy IとEf-Amy IIのインサート断片の取得
Ef-Amy Iに関しては1-2-4、Ef-Amy IIに関しては1-2-5に取得した情報をもとに、シグナルペプチドを除いた成熟配列を取得できるようプライマーを設計した。Ef-Amy Iのインサート断片は、1-2-3において合成されたcDNAを鋳型として調製し、Ef-Amy IIのインサート断片は、1-2-5で取得した増幅産物を10倍希釈したものを鋳型として調製した。
〜インサート断片の調製用プライマーとPCR(Ef-Amy I)(上から配列番号9,10)〜
Figure 0006982438
Figure 0006982438
〜インサート断片の調製用プライマーとPCR(Ef-Amy II)(上から配列番号11,12)〜
Figure 0006982438
Figure 0006982438
取得したインサートDNAは、それぞれゲル抽出により精製し、以降の操作に用いた。
1-2-8 P. pastoris発現用ベクターの構築
1-2-6において開裂したpPICZα Aに、1-2-7において調整したインサート断片をそれぞれ挿入し、発現用ベクターを構築した。今回はIn-Fusionクローニングを用い、E. coli DH5αを形質転換することでP. pastoris発現用ベクターの構築と取得を目指した。
〜In-Fusionクローニング〜
In-Fusion(登録商標) HD Cloning Kit( Clontech社 )に従い、1-2-7において獲得したインサートDNAのIn-Fusionクローニングを行った。
〜形質転換(大腸菌)〜
1.大腸菌(E. coli DH5α)コンピテントセルとIn-Fusionクローニング産物を穏やかに混和後、30 min氷上にて静置した。
2.42℃、45 secのヒートショックを行った。
3.再度氷上に戻し、2 minほど静置した。
4.室温のLB培地を加えた。
5.37℃にて3 h振盪させた。
6.LB+Zeocinプレートにスプレッドし、37℃で一晩インキュベートすることでコロニーを形成させた。
形成したコロニーをいくつかピックアップし、コロニーPCRによりインサート断片の存在を確認した。
〜コロニーPCR〜
Ef-Amy Iの確認に関しては1-2-5で設計したpPICZα A-Ef-Amy I-Fwと3'AOX1プライマーを使用し、Ef-Amy IIの確認に関してはpPICZα A-Ef-Amy II-Fwと3'AOXプライマーを使用した。なお、用いたプライマー以外は反応組成・条件共に同じため、今回はEf-Amy Iの導入確認のみを示した。
(配列番号13)
Figure 0006982438
Figure 0006982438
PCR後、アガロースゲル電気泳動を行い、挿入断片を確認した。以降の実験には確認した形質転換体を用いた。
1-2-9 構築したベクターの大量取得
構築したベクターを有する形質転換体を培養し、培養後の菌体からプラスミド抽出することで、発現用ベクターの大量取得を行った。形質転換体の培養は、40 mlの2×TY培地2本を用いて培養し、PureYield Plasmid Midiprep System 25 preps (Promega Lot no. 293710) を用いてプラスミド抽出を行った。プラスミド抽出後、プラスミドの濃縮のために、以下に示す方法でエタノール沈殿を行った。
〜エタノール沈殿〜
1.プラスミド抽出溶液に対して0.6倍量のイソプロパノールを加えた。
2.1.に対して1/10量の3 M酢酸ナトリウムを加え転倒混和した。
3.室温で10 min放置後、15,000 rpmにて15 min遠心分離した。
4.上清を捨て、1 mlの70%エタノールを加え軽く転倒混和後、15,000 rpmにて5 min遠心分離した。
5.上清を完全に除去し、沈殿を風乾させた。
6.1 μg/μlとなるよう滅菌MilliQ水を加え、沈殿を溶解させた。
ここで取得したベクターは、それぞれpPICZα A-Ef-Amy I(図3(a))、pPICZα A-Ef-Amy II(図3(b))とした。
1-2-10 構築したベクターのリニア化
P. pastoris形質転換システムは構築したベクターがゲノムに相同組み換えされる。相同組み換え効率を上げ、環状ベクターの量を減らすためにもリニア化が必要である。そこで、1-2-9において取得したベクターをpPICZα A-Ef-Amy IはSac I、pPICZα A-Ef-Amy IIはBgl IIを用いて構築ベクターをリニア化した。
Figure 0006982438
制限酵素処理後の反応液は、フェノール/クロロホルム/イソアミルアルコール(25:24:1) を用いて精製し、得られたリニアベクターをエレクトロポレーション法による形質転換に使用した。
1-2-11 P. pastorisコンピテントセルの作製
P. pastorisの形質転換は、エレクトロポレーション法により行った。本項では形質転換で使用するP. pastoris GS115株のコンピテントセルの作製を行った。
1.5 mlのYPD培地にP. pastoris GS115株のシングルコロニーを植菌し、28℃で終夜培養した。
2.250 mlのYPD培地に、前培養から250 μlの培養液を植え継ぎ、OD600が1.3-1.5になるまで、28℃で終夜培養した。
3.培養液を500 ml容量の遠沈管に移し、1,500×g, 5 min, 4℃で遠心分離し、沈殿を250 mlの冷滅菌MilliQ水に懸濁した。
4.3.と同様に遠心分離し、沈殿を冷滅菌MilliQ水125 mlに懸濁した。
5.3.と同様に遠心分離し、沈殿を冷1 M sorbitol 10 mlに懸濁した。
6.3.と同様に遠心分離し、沈殿を冷1 M sorbitol 500 μlに懸濁した。
1-2-12 エレクトロポレーション法による酵母の形質転換
1-2-11で獲得したP. pastorisコンピテントセルに1-2-10にて獲得したリニアベクターを導入することでP. pastoris GS115株を形質転換した。形質転換には、エレクトロポレーション法を用い、方法は以下のように行った。また、エレクトロポレーション装置は、1.5 kV, 50 μF, 186 Ωの設定で使用した。
1.コンピテントセル80 μlと1-2-10で処理した各リニアベクター( pPICZα A -EF-Amy I、pPICZα A-EF-Amy II ) 10 μlをそれぞれ混合し、冷えた0.2 cmエレクトロポレーションキュベットに移した。
2.BTX Electro cell manipulator ECM 600 ( Genetronics Inc. ) を用いてキュベットに1回ずつパルスを印加した。
3.冷1 M sorbitol 1 mlをキュベットに添加し、キュベットから4 ml容チューブに移し、30℃で1-2 hインキュベートした。
4.1 ml YPD培地を添加し、30℃で4 h振盪しながらインキュベートした。
5.インキュベート後、YPDS+ 100 μg/ml Zeocinプレートにスプレッドし、28℃で2日間培養した。
1-2-13 Zeocin耐性によるマルチコピー形質転換体の選抜
1-2-12による形質転換で得られたシングルコロニーをピックアップし、終濃度100/500/ 1000/ 2000 μg/ml Zeocinを含むYPDSプレートにストリークした。28℃でインキュベートすることで、高濃度Zeocin含有培地に生育したEf-Amy IとEf-Amy II のマルチコピー形質転換体を選抜した。
1-2-14 P. pastorisによる目的酵素の発現
1-2-13において選抜したマルチコピー形質転換体から以降の手順に従い培養上清に目的酵素を発現させた。
1.25 mlのBMGY培地に選抜した形質転換株のシングルコロニーをそれぞれ植菌し、28℃、200-230 rpmでOD600が2-6になるまで2日間培養した。
2.培養液を50 ml容ファルコンチューブに移し、1,500-3,000×g, 5 min, 室温で遠心分離した。
3.沈殿を少量のBMMY培地に懸濁し、200 mlのBMMY培地にそれぞれ植え継いだ。
4.17℃でEf-Amy I導入株は8日間、Ef-Amy II導入株は7日間、200-230 rpmで培養した。
5.メタノールによる誘導を維持するため、24 hごとに100%メタノールを終濃度0.5%となるように添加した。また、メタノールを添加する直前に1 mlずつ培養液をサンプリングした。
6.培養終了後、培養液を3,000×g, 15 min, 4℃で遠心分離し、上清を回収した。培養上清中の目的タンパク質の活性はSomogyi-Nelson法(Michael Somogyi 1952)よって確認した。
1-2-15 Somogyi-Nelson法(Michael Somogyi 1952)
Sample、Blank共に酵素液を10 μl、rEf-Amy Iは0.1 M acetate buffer(pH 5.5)、rEf-Amy IIは0.1 M acetate buffer(pH 5.0)を50 μlずつ入れ、Sampleのみ基質(0.4%可溶性デンプン溶液、若しくは0.4%生デンプン懸濁溶液)を50 μl添加後、37℃で15 min反応させた。反応後、Sample、Blank共にソモギー試薬を100 μlずつ、Blankにのみ基質を50 μl加えた後、100℃で10 min煮沸し反応を停止させた。Sample、Blank共に10 min以上水冷後、ネルソン試薬を100 μlずつ加え、20 min放置し発色させた。20 min後、蒸留水1.0 mlを加えてよく混和し、655 nmの波長で吸光度を測定した。酵素活性はソモギ・ネルソンの検量線から得られた式を用いて求めた。なお、1 unitは1分間に1 μmolのグルコースに相当する還元糖を遊離する酵素量とした。
(3)結果
1-3-1 トランスクリプトーム解析
E. fetida のトランスクリプトーム解析の結果、他の生物由来のα-アミラーゼとの相同性を確認できたのは10種類のcontig配列であった。
表10は、他の生物由来の α-アミラーゼとの相同性を確認できたシマミミズのcontig No. を示したものである。本結果は、E. fetida から構築したESTデータベースであり、生デンプン分解酵素の存在を確認している(Ueda et al., 2008)。RPKM値はその生物における発現量を示しており、表10からアミラーゼをコードするc7174遺伝子の発現量は多いことが確認できた。また、c12319遺伝子はc7174遺伝子と同一生物のActinoplanes sp. 由来α-アミラーゼと高い相同性を有しているにも関わらず、その発現量はc7174遺伝子と比較して劣ることが明らかとなった。
E. fetida由来GH family 13のトランスクリプトーム解析の結果
Figure 0006982438
E value:低いほどProtein IDに示す生物由来の酵素との相同性が高いことを示す
Reads Per Kilobase of exon model per Million mapped reads( RPKM )値:高いほどその生物における発現量が多いことを示す
1-3-2 Ef-Amy IとEf-Amy IIの配列情報とその解析
今回新たに取得したEf-Amy IIの遺伝子配列(1521 bp)とアミノ酸配列(506aa)を配列表の配列番号1及び2に示した。なお、配列番号2のアミノ酸配列では、先頭のシグナル領域(図4参照)は省略して示している。Ef-Amy IIの予想されるアミノ酸配列の特徴を図4に示した。
1番目のメチオニンから17番目のアラニンがシグナルペプチドであると推測された。そのため、Ef-Amy IとEf-Amy IIのインサート用DNAは、シグナルペプチド領域を除いた成熟配列を作製した。また、PubMedのProtein Blastを用いた相同性検索の結果から、Ef-Amy IとEf-Amy IIの118番目のアスパラギンと183番目のアスパラギン酸とに他生物由来のアミラーゼのCa2+ binding siteと相同性が見られた。さらに、α-アミラーゼファミリーの高度保存領域から、Ef-Amy IとEf-Amy IIともに213番目と316番目のアスパラギン酸、249番目のグルタミン酸が触媒残基であると推測した。また、Ef-Amy Iは423番目、Ef-Amy IIは419番目のトリプトファン以降のC末端にかけた領域がC末端ドメインであると示唆された。
〜相同性検索の結果〜
Ef-Amy IとEf-Amy IIのアミノ酸配列をPubMedのProtein Blastにより相同性検索を行った。Siganus cuniculus(アナウサギ)由来のα-アミラーゼ (AHN13897.1) のアミノ酸配列とEf-Amy Iは55%、Ef-Amy IIは56%の相同性を示し、Xenopus (Silurana) tropicalis(アフリカツメガエル)由来の α-アミラーゼ (XP_002938902.1) のアミノ酸配列とEf-Amy Iは56%、Ef-Amy IIは55%の相同性を示した。また、Ef-Amy IとEf-Amy II間は89%の相同性を有していることを確認した。
1-3-3 P. pastorisを用いたリコンビナント酵素の発現確認
発現ホストとしてはP. pastoris GS115株を用い、発現用ベクターとしてpPICZα Aを使用した。pPICZα Aベクターに存在する細胞外分泌シグナルであるα-factorの存在により目的酵素は培養上清に分泌される。そこで、培養上清の活性測定とSDS-PAGEによる分析を行うことでリコンビナント酵素の発現を確認する予定であったが、SDS-PAGEではバンドが薄く確認できなかったため、今回は培養上清の活性のみで発現を確認した。
回収した2種の形質転換体(Ef-Amy IとEf-Amy II導入株)の培養上清を用いて、アミラーゼ活性を1-2-15に示す方法で測定したところ、可溶性デンプンのみならず、不溶性である生デンプンにも活性を示した。この結果から、宿主由来の培養液のみでは生デンプンに活性を示さないため、2種のリコンビナント酵素(rEf-Amy IとrEf-Amy II)の発現を確認した。
(4)考察
本実施例では、c7174遺伝子(Ef-Amy I)と、トランスクリプトーム解析の結果から新たに取得したc12319遺伝子(Ef-Amy II)を用いてP. pastorisを宿主とした異種発現系を構築した。
Blastを用いてEf-Amy IとEf-Amy IIの遺伝子配列情報から得られた全長アミノ酸配列を相同性検索したところ、Siganus cuniculus (アナウサギ, AHN13897.1) やXenopus (Silurana) tropicalis(アフリカツメガエル, XP_002938902.1)などの動物由来 α-アミラーゼ (GH Family 13)と高い相同性が見られた。また、Ca2+ bindingに関与するアミノ酸残基(118番目のアスパラギンと183番目のアスパラギン酸)と触媒残基(213番目と316番目のアスパラギン酸、249番目のグルタミン酸)の存在も確認できた。これらの触媒残基は下記に示したα-アミラーゼの反応機構(MacGregor et al., 2001)において、求核攻撃や酸/塩基触媒を行うアミノ酸と考えられる。例えば、豚膵臓由来α-アミラーゼにおいてはD197が求核残基として、E233が酸/塩基触媒残基として機能すると考察している(Qian et al., 2001)。これらの結果から、Ef-Amy IとEf-Amy IIはGH family 13の α-アミラーゼをコードしている配列であることが示唆された。
Figure 0006982438
次に、Ef-Amy IとEf-Amy IIの進化的関係を表すため、図5に近接接合法を用いて作製した分子系統樹を(MEGA: Molecular Evolutionary Genetics Analysis softwareのConstruct Neighbor-Joining Tree)、[表11]に酵素の種類とその由来生物、アクセスナンバーを示した。Ef-Amy IとEf-Amy IIはS. cuniculus、X. tropicalis由来α-アミラーゼとPorcin pancreatic、Human pancreatic由来α-アミラーゼの間の進化度合であることが示唆された。また、Boostrap methodを利用して図5の信頼性を評価したところ、Ef-Amy IとEf-Amy II間でBoostrap値は100であり、進化的にも同様の酵素であることが推測された。
分子系統樹に用いた酵素の起源とアクセスナンバー
Figure 0006982438
rEf-Amy IとrEf-Amy IIの発現確認の結果、今回発現した2種のリコンビナント酵素は生デンプン分解酵素であることが判明した。生デンプン分解酵素はStarch Binding Domain(SBD)を有するとされており、この結果から両酵素ともSBDを有していると示唆された。α-アミラーゼのSBDの知見として、以前であればSBDはC末端側に存在するとされていた(Machovic et al., 2006)。しかし、N末端側にSBDを有するRhizopus oryzae由来グルコアミラーゼの報告(Ashikari et al., 1986)や、C末端側にSBDが繰り返し存在するBacillus sp.由来α-アミラーゼ(Sumitani et al., 2000)等が発見されている。そのため、現在では配列上の検討だけでなく、立体構造やSBDドメインのみの発現からデンプン吸着能を調査する必要がある。よって、Ef-Amy IとEf-Amy IIの配列情報から、SBDを判断することは困難であると判断した。SBDと思われる配列は、疎水性相互作用が強く表れるβ-シート構造をとることが多いため(Machovic et al., 2006)、今後はその部分を異種発現させ、機能を調べることでEf-Amy IとEf-Amy IIにおけるSBD領域の特定が可能ではないかと推測した。
rEf-Amy Iとアミノ酸配列上の相同性が89%にも達するrEf-Amy IIであるが、Amy Iの内部アミノ酸配列とは一致しなかった。以上の点を踏まえ、rEf-Amy IとAmy I、並びにrEf-Amy IとrEf-Amy IIの諸性質の比較を実施例2で行うこととする。
<実施例2>
2種のリコンビナント生デンプン分解酵素の精製と諸性質の解明
(1)実験概要
実施例1においてP. pastorisを宿主とした異種発現系を構築したrEf-Amy IとrEf-Amy IIの諸性質を解明すべく、メタノールによる誘導培養後の上清から目的酵素を精製した。その後、生デンプンの分解様式や分解活性、pH、温度、金属イオンに対する影響などを調査し、単離・精製したアミラーゼとの比較検討を行うとともに、2種のリコンビナント酵素の諸性質を解明することを目的として実施例を行った。
(2)実験方法
2-2-1 2種のリコンビナント生デンプン分解酵素の精製
○rEf-Amy Iの精製
実施例1において回収した培養上清を数時間ポリエチレングリコール(PEG)を用いて濃縮し、20 mM Tris-HCl buffer(pH 8.0)を外液として一晩透析をすることで、バッファー交換並びに脱塩を行った。透析後、陰イオン交換カラムクロマトグラフィー(TOYOPEARL DEAE-650M)に供し、その活性画分をアフィニティーカラムクロマトグラフィー(HisTrap FF)に供することで精製を行った。
○rEf-Amy II
実施例1において回収した培養上清はMinimate(商品名) Tangential Flow Filtration (TFF) Capsule (Pall Co.) (MW : 30 kDa) を用いて濃縮、並びに20 mM Tris-HCl buffer(pH 8.0)へのバッファー交換を行った。その後、アフィニティークロマトグラフィー(HisTrap FF)に供することで精製を行った。
〜陰イオン交換カラムクロマトグラフィー〜
20 mM Tris-HCl buffer(pH 8.0)にて平衡化したTOYOPEARL DEAE-650M(2.5×10 cm、25 ml)に供し、同緩衝液で洗浄後、0から1.0 Mの濃度勾配をつけたNaClを含む同緩衝液にて溶出を行った。
〜アフィニティーカラムクロマトグラフィー〜
20 mM イミダゾールと0.5 M NaClを含む20 mM Tris-HCl buffer(pH 8.0)にて平衡化したHisTrap FF(1 ml)に供し、同緩衝液で洗浄後、0.5 M イミダゾールと0.5 M NaClを含む20 mM Tris-HCl buffer(pH 8.0)にて溶出を行った。
2-2-2 タンパク質の定量法
精製過程のタンパク質は、UVmini-1240(SHIMADZU)を用いて280 nmの吸光度を測定することで求めた。また、培養上清の色が残っており、上記測定器による測定が困難な場合Pierce BCA Protein Assay Kit(Thermo Fisher Scientific)を用いて、付属のプロトコルに従いタンパク質濃度を求めた。
2-2-3 SDS-PAGE (Laemmli UK. 1970)
1.SDS-PAGEのアクリルアミド濃度は分離ゲルを10%として、running gelとstacking gelを表12のとおり試薬を混合して作製した。
2.サンプル24 μlと5× sample buffer 6 μlを混合して3 min煮沸した。
3.この内20 μlをゲルにアプライし、電気泳動は1枚当たり20 mA、300 Vで行った。分子量マーカーには、Unstained Protein Molecular Weight Marker ( Bio-Rad ) を使用した。
4.泳動終了後、Coomassie Brilliant Blue(CBB)G-250で染色し、10% 酢酸で脱色した。
Figure 0006982438
2-2-4 TLC(薄層クロマトグラフィー)分析
生米デンプンを精製したrEf-Amy IとrEf-Amy IIを用いて、37℃の条件下で1 h、2 h、4 h、8 h、12 h、24 h、48 h、72 h反応させ、各時間の生成糖を薄層クロマトグラフィーにより分析した。薄層クロマトグラフィーはTLCプレート シリカゲル6(MERCK)に各時間の反応液をスポットし、常温で、クロロホルム:酢酸:水=5:7:1の展開溶媒で数回展開を行った後、ドラフト内で乾燥させ、20%硫酸エタノールを噴霧し、120℃で30 min放置し糖検出を行った。
2-2-5 pHによる影響
〜最適pH〜
pH 4.0〜9.0までの各bufferを用いて、37℃における活性を測定した。なお、基質は可溶性デンプンを使用し、以下に示すbufferで活性を測定した。0.1 M acetate buffer(pH 4.0〜6.0)、0.1 M phosphate buffer(pH 6.0〜8.0)、0.1 M Tris-HCl buffer(pH 8.0〜9.0)
〜pH安定性〜
pH 4.0〜11.0までの各bufferに酵素液を加え、4℃で24 h処理した後、rEf-Amy Iはacetate buffer(pH 5.5)、rEf-Amy IIはacetate buffer(pH 5.0)を用いて37℃における残存活性を測定した。なお、基質は可溶性デンプンを使用し、以下に示すbufferで24 h処理した。0.1 M acetate buffer(pH 4.0〜6.0)、0.1 M phosphate buffer(pH 6.0〜8.0)、0.1 M Tris-HCl buffer(pH 8.0〜9.0)、0.1 M carbonate-bicarbonate buffer(pH 9.0〜11.0)
2-2-6 温度による影響
〜最適温度〜
rEf-Amy Iは0.1 M acetate buffer(pH 5.5)、rEf-Amy IIは0.1 M acetate buffer(pH 5.0)中で10℃〜80℃の各温度における活性を測定した。なお、基質は可溶性デンプンを用いた。
〜温度安定性〜
各酵素液を0.1 M Tris-HCl buffer(pH 8.0)中で10℃〜80℃の各温度にて30 minインキュベート後直ちに氷冷し、rEf-Amy Iは0.1 M acetate buffer(pH 5.5)、rEf-Amy IIは0.1 M acetate buffer(pH 5.0)中で37℃にて残存活性を測定した。なお、基質は可溶性デンプンを用いた。
2-2-7 低温条件下でのアミラーゼ活性
rEf-Amy I は0.1 M acetate buffer(pH 5.5)、rEf-Amy IIは0.1 M acetate buffer(pH 5.0)における4℃と37℃の活性を比較した。なお、基質は可溶性デンプンを用いた。
2-2-8 金属イオンによる影響
0.1 M Tris-HCl buffer(pH 8.0)に酵素液を添加後、終濃度1 mMとなるように各金属イオン溶液を加え4℃で24 h静置後、rEf-Amy Iは0.1 M acetate buffer(pH 5.5)、rEf-Amy IIは0.1 M acetate buffer(pH 5.0)を用いて37℃における残存活性を測定した。なお、基質は可溶性デンプンを用いた。
2-2-9 各種生デンプンに対する基質特異性
各種生デンプン(うるち米、小麦、甘藷、馬鈴薯、トウモロコシ、ヤシ、インディカ米、キャッサバ)をrEf-Amy Iは0.1 M acetate buffer(pH 5.5)、rEf-Amy II は0.1 M acetate buffer(pH 5.0)を用いて37℃の条件下で反応させ、その活性を比較した。
2-2-10 塩化物に対する影響
PD10カラムを使用し脱塩した精製済み酵素液(20 mM Tris-HCl buffer (pH 8.0))に終濃度0〜4 MとなるようNaCl、若しくはKClを加え、4℃で24 h処理した。その後、rEf-Amy Iは0.1 M acetate buffer(pH 5.5)、rEf-Amy IIは0.1 M acetate buffer(pH 5.0)を用いて37℃における残存活性を測定した。なお、基質は可溶性デンプンを用いた。
2-2-11 生米デンプン分解能の比較
基質である生米デンプンは1-2-1と同じものを使用した。0.4%可溶性デンプンを用いて0.1 M acetate buffer (pH 5.0)、30℃の条件下にて0.6 U/mlに調整後、同条件化にて不溶性である生米デンプンを用いて分解能を比較した。反応時間は15、30、60、120、240 minとしてそれぞれの時間における還元糖量をSomogyi-Nelson法を用いて測定した。生米デンプン分解能の比較を行うため用いた酵素は、シマミミズ由来生デンプン分解酵素(rEf-Amy I、rEf-Amy II)、A. oryzae由来α-アミラーゼ(SIGMA)、Bacillus sp.由来α-アミラーゼ(SIGMA)、Bacillus licheniformis由来α-アミラーゼ(SIGMA)である。
2-2-12 エタノールに対する影響
SSFプロセスはデンプン質の蒸煮工程を省くことで、生成物の粘度を抑えることができるため、発酵もろみの段階でエタノール濃度が15%程度まで上昇する。本項では上昇するエタノール濃度に対する影響を調査した。
〜エタノールに対する安定性〜
0.1 M Tris-HCl buffer(pH 8.0)に各酵素液と各エタノール濃度になるようにエタノールを加え、37℃で30 minインキュベート後、直ちに5 min以上氷冷した。その後、rEf-Amy Iは0.1 M acetate buffer(pH 5.5)、rEf-Amy IIは0.1 M acetate buffer(pH 5.0)を用いて37℃で残存活性を測定した。なお、基質は可溶性デンプンを用いた。
〜反応時のエタノールによる影響〜
反応系に各終濃度となるようエタノールを添加し、rEf-Amy Iは0.1 M acetate buffer(pH 5.5)、rEf-Amy IIは0.1 M acetate buffer(pH 5.0)を用いて37℃における活性を測定した。なお、基質は可溶性デンプンを用いた。
(3)結果
2-3-1 rEf-Amy IとrEf-Amy IIの精製
○rEf-Amy Iの精製
200 ml BMMY培地で8日間、17℃にて培養後、その上清を回収し、PEG濃縮を行った。数時間のPEG濃縮後、内液を20 mM Tris-HCl buffer(pH 8.0)として透析を一晩行うことでバッファー交換をした。透析後の培養上清をTOYOPEARL DEAE-650Mに供したところ、単一な生デンプン分解活性のピークが見られた(図6)。その後、ピーク付近のFraction No. 15〜20を回収し、HisTrap FFに供したところ図7のような結果となった。Fraction No. 3〜4を回収し、SDS-PAGE分析の結果から目的位置付近に単一なバンドが見受けられたためここで精製を完了した(図8)。
○rEf-Amy IIの精製
200 ml BMMY培地で7日間、17℃にて培養後、その上清を回収しMinimate(商品名) Tangential Flow Filtration (TFF) Capsule (Pall Co.) (MW : 30 kDa) を用いて濃縮、並びに20 mM Tris-HCl buffer(pH 8.0)へのバッファー交換を行った。その後、濃縮溶液をHisTrap FFに供したところ、単一な生デンプン分解活性を確認した(図9)。Fraction No. 4〜5を回収し、SDS-PAGEによる分析の結果から目的位置付近に単一なバンドが見受けられたためここで精製を完了とした(図10)。
rEf-Amy IとrEf-Amy IIは共に生デンプン分解作用を有していたが、最終精製後の比活性を測定したところ、どちらも3±1.5 U/mg程度であった。
2-3-2 TLC分析による生デンプン分解様式
精製した2種のリコンビナント酵素の生デンプン分解様式をTLC(薄層クロマトグラフィー)により分析した(図11)。両酵素とも反応初期(1 h〜2 h)はG3やG4のオリゴ糖が観測されG1はあまり観測されなかった。反応中期(4 h〜12 h)にかけては主にG2やG3のオリゴ糖が生成し、rEf-Amy IIではG1も生成されていた。反応後期(24 h〜72 h)ではG2やG3に加えてG1も観測されており、rEf-Amy IIにおいては生成したG3の大部分がG2とG1に分解されていたことが明らかとなった。本結果から、両酵素は生デンプンを単糖まで分解可能なアミラーゼであると判明した。
2-3-3 pHによる影響
rEf-Amy Iの最適pHは5.5であり、pH 8.0〜10.0の範囲で安定であった(図12)。
rEf-Amy IIの最適pHは5.0であり、pH 8.0〜pH 9.0の範囲で安定であった(図13)。
2-3-4 温度による影響
rEf-Amy Iの最適温度は40℃であり、rEf-Amy IIの最適温度は50℃であった(図14(a))。また、rEf-Amy Iは20〜50℃の範囲において85%以上の高い活性を保持していた。次に、rEf-Amy Iが60℃以下の温度で安定であったことに対し、rEf-Amy IIは40℃以下で安定であることが明らかとなった(図14(b))。この結果より、rEf-Amy IよりrEf-Amy IIの方が温度に対する感受性が高いことが判明した。
2-3-5 低温条件下でのアミラーゼ活性
4℃と37℃間のアミラーゼ活性を比較したところ、rEf-Amy Iは4℃で37℃の45.7%の活性が保持されていたが(図15(a))、rEf-Amy IIは22.0%の活性を保持していた(図15(b))。
2-3-6 金属イオンに対する影響
終濃度が1 mMとなるように添加した金属イオンに対する残存活性を測定したところ、rEf-Amy IでのみAg+、Fe2+存在下において残存活性が大きく低下していた。2種のリコンビナント酵素の共通点はAl3+、Hg2+の存在下で残存活性が大きく低下していたことが挙げられる。また、一般的にアミラーゼの安定性に寄与していると考えられているCa2+の存在下と、金属イオンとキレートするEDTA存在下においては両酵素とも特筆すべき影響は見受けられなかった。
金属イオンに対する影響
Figure 0006982438
2-3-7 各種生デンプンに対する基質特異性
うるち米を100%として各種生デンプンに対する活性を測定したところ、rEf-Amy Iのみインディカ米に対してうるち米の2.2倍高い活性を示した。しかし、rEf-Amy IとrEf-Amy II共に他の生デンプンに対しての活性はほとんど見られなかった(図16)。
2-3-8 塩化物イオンに対する影響
終濃度0〜4 Mの各塩化物(NaCl、KCl)に対する影響を調査したところ、両酵素とも2 Mの各塩化物において80%程度かそれ以上の残存活性を有していた。また、rEf-Amy Iは2 MのNaCl存在下で最も残存活性が高く、4 MのNaCl処理後も100%近い残存活性を有していた(図17)。
2-3-9 生米デンプン分解能の比較
rEf-Amy IとrEf-Amy II、並びに市販の生デンプン分解能を有するα-アミラーゼを可溶性デンプンにて0.6 U/mlに調整後、不溶性である生米デンプンの分解能を比較した(図18)。使用した市販のα-アミラーゼはA. oryzae由来(AOA)、Bacillus sp.由来(BSA)、Bacillus licheniformis由来(BLA)であり、各時間の遊離した還元糖量を測定することで分解能の比較を行った。その結果、rEf-Amy IはAOAやBSAと同等の生デンプン分解能であったが、rEf-Amy IIはBLA以上の生デンプン分解能を有することが明らかとなった。
2-3-10 エタノールに対する影響
エタノール濃度0%の状態を100%としてエタノールに対する影響を調べたところ、rEf-Amy Iは15%のエタノール濃度存在下においても高い活性を保持していたが、rEf-Amy IIは10%のエタノール濃度から酵素活性が低下した(図19(a))。また、両酵素とも40%のエタノール濃度に対しても安定であった(図19(b))。
(4)考察
本実施例ではP. pastoriの培養上清から、カラムクロマトグラフィーにて精製した2種の生デンプン分解リコンビナント酵素の諸性質を決定した。
温度に対してrEf-Amy IIはrEf-Amy Iよりも感受性が高く、また2-3-9において判明したように生デンプン分解能の強さがrEf-Amy Iに対してrEf-Amy IIは高かった。
それぞれの生デンプン切断様式はTLCを用いて調査したが、マルトトリオースやマルトテトラオースは検出されたが、それ以上のマルトオリゴ糖は検出されなかった。そのため、切断様式(エンド型、エキソ型)の判断は正確に行うことはできないが、不溶性の生デンプンに対する親和性よりも可溶性となったマルトオリゴ糖に対する親和性が高かったため、切断様式はエンド型であるが2-3-2のような結果になったと考えられる。この点は、今後マルトオリゴ糖を基質として分解様式を調べる必要がある。また、両酵素は3糖のオリゴ糖を2糖と1糖に分解可能であったため、両酵素とも糖化まで分解可能なアミラーゼであると判明した。
pHにおいて、一般的な動物由来のアミラーゼの最適pHはpH 7.0付近である(後藤 章 1984)が、rEf-Amy IIはpH 5.0で最も活性が高かった。
金属イオンに対する影響から、一般的なα-アミラーゼはCa2+により安定性が向上する(Machius et al., 1995)とされているが、rEf-Amy IIはCa2+とEDTAにより残存活性が大きく変化することはなかった。よって、両酵素ともCa2+に影響を受けないα-アミラーゼであると示唆された。しかし、この点はタンパク質の高次構造内にCa2+結合部位をいくつも有する、又はEDTAにより除去できないような立体構造内部にCa2+結合部位が存在している酵素も存在するため(Boel et al., 1989)、本実験では活性上昇にCa2+が必須ではないということが推定された。
rEf-Amy IIはうるち米の方に活性が高く、両酵素間で生デンプン基質に対する特異性が多少異なることが明らかとなった。これは、アミロース含量によるものであると推測し、rEf-Amy Iはアミロース(α-1,4グルコシド結合)部分を特異的かつ迅速に切断可能であるが、rEf-Amy IIはその点の特異性が低く、アミロース部分だけでなくアミロペクチン(α-1,6グルコシド結合も多く含む)部分も分解できることから、両酵素の差が生まれたのではないかと考察した。
リコンビナント酵素の産業利用を視野に入れ、SSFプロセス条件下での機能を検討した。まず、生デンプン分解能を有する3種のα-アミラーゼとの分解能をSSFプロセス条件下(30℃、pH 5.0)において比較した。その際、可溶性デンプンを用いて0.6 U/mlに酵素活性を調整した。その結果、rEf-Amy IIが最も高い生デンプン分解能を示し、その分解能は産業用酵素として用いられるBLA以上であることが判明した。対してrEf-Amy IはSSFプロセス条件下ではAOAやBSAと同程度の分解能であった。生デンプンに対する比活性は同程度にも関わらず、両酵素間でこの差が見られた理由としては、2-3-7の結果とも照合すると生デンプンに対する作用部位の差と考えた。rEf-Amy IとrEf-Amy IIはその11%のアミノ酸配列の差から、rEf-Amy Iは生デンプンのα-1,4結合を、rEf-Amy IIはα-1,4とα-1,6結合を含む領域を標的として分解していると推測した。そのため、作用部位の多いrEf-Amy IIの方がrEf-Amy Iよりも生デンプン分解能が高いという結果になったと考えられる。
次に、SSFプロセス条件下でのエタノール濃度における酵素活性と安定性に及ぼす影響を調査した。SHFプロセスの場合、発酵もろみの精製の際に糖化産物が過多であると、溶液の粘度増加から配管送りが困難になるため、持込み可能な糖化産物量に制限があり、発酵もろみのエタノール濃度は10%前後となる。しかし、SSFプロセス条件下の場合、粘度の上昇があまり見られないため、15%前後のエタノールを含む発酵もろみを得ることができる(大聖 泰弘 2008)。エタノールに対する安定性を調査した結果、0〜20%のエタノール存在下にかけて安定性が向上し、40%のエタノール存在下においてもエタノール非存在下と比較して安定性は向上していた。この傾向はGH Family 5に属する、Bacillus pumilus GBSW19由来β-マンナナーゼ(BpMan)においても観測されている(Zang et al., 2015)。その文献には、安定性が向上した詳細な機構は述べられていないが、BpManがエタノール生産に適した酵素であると考察されており、rEf-Amy IIも同様にバイオエタノール生産に適した酵素であることが示唆された。
以上のことから、rEf-Amy IIは30℃、pH 5.0付近において生デンプンの高い分解活性を有しており、その分解能はSSFプロセスを考慮した実験系において産業用酵素と肩を並べる、若しくは上回る性能であった。
<実施例3>
コドンの最適化によるPichia pastoris異種発現系の改良
(1)実験概要
一般的に、細胞内で合成されるタンパク質とそのtRNA の間には相対関係があるとされており(Ikemura et al., 1982)、異種発現においては発現ホストの好むコドン配列にすることで発現量が上昇するとされている。この原因はtRNAの存在量と翻訳速度との関係と考えられている(Dana et al., 2014)が、近年コドンの最適化にはmRNAの安定性を高めることも報告もされている(Presnyak et al., 2015)。そこで、mRNAの安定性を高めるという側面からも、今回はP. pastoris のコドンに最適化したrEf-Amy IIを取得することとした。
(2)実験方法
3-2-1 pPICZα A-optimaized Ef-Amy IIの構築
rEf-Amy IIの異種発現系が構築されているP. pastoris に対するコドンを最適化することで、それぞれのリコンビナント酵素の発現量上昇を狙った。その際、最適化した各酵素遺伝子の断片をつなぐため、あらかじめ50塩基程度オーバーラップさせておき、optimized Ef-Amy IIの獲得に向けてoverlap extension PCR を行った。なお、コドンの最適化はThermo Fisher Scientific 社のGene Art サービスから行い、今回はシグナルペプチドを除いた成熟配列のみの最適化を試みた。
得られたDNA断片をIn-Fusion クローニングし、E. coli DH5αを形質転換することで、pPICZα A-opt Ef-Amy II(図20)を構築した。
以降の操作は<実施例1>の実験操作に準じ、P. pastoris GS115株を宿主とした異種発現系を構築した。なお、BMMY 培地(200 ml)による本培養期間は両酵素とも7日間で行った。また、精製は両酵素とも2-2-1に記すrEf-Amy IIの精製方法に従った。
(3)結果
3-3-1 Ef-Amy IIのコドンの最適化
P. pastorisを対象としたコドンの最適化により獲得した配列として、図21にoptimized Ef-Amy IIを示した。これらの配列は、P. pastorisにおいて使用頻度の低いコドンから高いコドンへ置換し、GC含量を50%程度に保つような配列となっていた。
3-3-2 コドンの最適化による発現量の比較
3-3-1においてコドンを最適化したoptimized Ef-Amy IIを含むP. pastoris形質転換体の誘導培養後、培養上清と最終精製におけるタンパク質量と活性を測定し、最適化前後でその値を比較した(rEf-Amy II:表14)。rEf-Amy IIは、最終精製後のタンパク質量は、0.143 mgから0.171 mgへと増加していた。また、コドンの最適化による培養上清と最終精製後のSDS-PAGEにおける違いを図22(rEf-Amy II)に示した。なお、各ウェルには20 μlと一定量のサンプルをアプライした。
Table 4-2. コドンの最適化によるrEf-Amy IIの発現量の比較
Figure 0006982438
(4)考察
本実施例ではrEf-Amy IIのコドンを、P. pastorisにおいて使用頻度の高いコドンに置換することで発現量の向上を目指した。その結果、rEf-Amy IIは多少の向上がみられた。

Claims (10)

  1. 下記の(a)〜(c)の何れかに記載のアミノ酸配列を有するデンプン分解酵素。
    (a)配列番号2に記載のアミノ酸配列;
    (b)配列番号2に記載のアミノ酸配列において1〜20個のアミノ酸が置換、欠失、挿入、及び/又は付加したアミノ酸配列を有し、かつデンプン分解酵素活性を有するアミノ酸配列;
    (c)配列番号2に記載のアミノ酸配列と90%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列を含み、かつデンプン分解酵素活性を有するアミノ酸配列。
  2. 請求項1に記載のデンプン分解酵素をコードする核酸。
  3. 下記の(m)〜(o)の何れかに記載の核酸。
    (m)配列番号1に記載の塩基配列を有する核酸;
    (n)配列番号1に記載の塩基配列において1〜20個の塩基が置換、欠失、挿入、及び/又は付加した塩基配列を有し、かつデンプン分解酵素をコードする核酸;
    (o)配列番号1に記載の塩基配列を有する核酸とストリンジェントな条件下においてハイブリダイズし、配列番号1に記載の塩基配列と90%以上の配列同一性を有する塩基配列を有し、かつデンプン分解酵素をコードする核酸
  4. 請求項2又は3に記載の核酸を有する組み換えベクター。
  5. 請求項2又は3に記載の核酸あるいは請求項に記載の組み換えベクターを有する形質転換体。
  6. 宿主が酵母である、請求項5に記載の形質転換体。
  7. 請求項5又は6に記載の形質転換体を培養することによりデンプン分解酵素を産生することを含む、請求項1に記載のデンプン分解酵素を製造する方法。
  8. 請求項1に記載のデンプン分解酵素によってデンプンを処理することを含む、デンプンの分解方法。
  9. 請求項1に記載のデンプン分解酵素によってデンプンを糖化し、得られた糖化物を発酵させることを含む、アルコール発酵方法。
  10. 酵母を用いて糖化物を発酵させる、請求項9に記載のアルコール発酵方法。
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