JP6982358B1 - 金属糖質錯体 - Google Patents

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Abstract

下記一般式(1)で表されるL−グルコース誘導体。【化1】[式(1)中、X1は−SAuR1基を示し、X2,X3,X4及びX5は、それぞれ独立に、−OR2基、−NH2基又はフッ素原子を示す。R1は配位子を示し、R2は水素原子又は有機基を示す。]

Description

本発明は、金属糖質錯体に関する。
近年、がんの非侵襲的な治療法として、ハイパーサーミア(温熱療法)が注目を集めている。ハイパーサーミアは、がん細胞(悪性腫瘍細胞)が正常細胞よりも熱に弱いことを利用して、患部を加熱することでがん細胞を死滅させたりがん細胞周囲の環境を変える、もしくはがん治療の効果を増強することにより、患者生存率の向上を図る方法である(例えば、非特許文献1参照)。ハイパーサーミアにおける加熱方法としては、例えば、ラジオ波(RF波)を患部に照射する方法が挙げられる。これは高周波ハイパーサーミア治療と呼ばれる。
ところで、通常のラジオ波を患部に照射する方法では、がん細胞を選択的に加熱することが難しく、周囲の正常細胞も加熱されてしまうため、エネルギー効率が悪い、患者への負担が大きい等といった問題がある。これに対して、特許文献1では、磁性粒子等をRF吸収エンハンサー(増感薬物)として腫瘍(患部)に誘導し、RF波による加熱効率を向上させる方法が提案されている。RF吸収エンハンサーを腫瘍に誘導する方法としては、例えば、流体の一部として腫瘍に注射等で直接的に導入する方法や、MRIを用いて患部に誘導する方法等が提案されている。
特表2007−536016号公報
Killock, D. Nature Reviews Clinical Oncology, 15: 266, 2018.
しかしながら、特許文献1等の従来の方法では、腫瘍のみに選択的にRF吸収エンハンサーを誘導することが困難である、あるいは深部のがん、特に膵臓がんのがん細胞にRF吸収エンハンサーを誘導することが困難である等といった問題がある。
そこで本発明は、がん細胞に選択的に取り込まれ、高周波ハイパーサーミア治療時に、標的部位に選択的に熱を発生させることが可能となり得る増感薬物を提供することを目的の一つとする。
また、がんの一般的な治療法の一つとして、抗がん剤を用いる方法が知られている。一般に抗がん剤は、がん細胞のみならず、正常細胞にも作用し、結果として強い副作用が現れる。この副作用をどのように低減させるかががんの治療における課題となってきた。これに対して、がん細胞が特異的に発現している分子を把握して、がん細胞の増殖や転移を抑える分子標的薬が注目を集めている。分子標的薬によれば、古典的な抗がん剤による副作用の抑制が期待される。しかしながら、実際にはがん細胞が特異的に発現すると称する分子は正常細胞にも発現しており、また分子標的薬は想定とは異なる分子にも作用するなど、副作用は少なからず発生する。言うまでもなくヒトの体は細胞の集合である。細胞である限り、その活動のエネルギー源や増殖には炭素源を必要とする。そこで、我々の生体内にある特定の蛋白や分子を標的とするのではなく、細胞に取り込まれる側の分子を標識することによりがんを識別する方法が、近年再注目されている(Ono K. et al., Cancers 2020)。
ところで、正常細胞に対しては低毒性であり、且つがん細胞に選択的に取り込まれ毒性を呈するような化合物があれば、副作用の低減が期待される。そこで本発明は、正常細胞に対しては低毒性であり、且つがん細胞に選択的に取り込まれ毒性を呈する化合物を提供することを他の目的とする。
上記課題を解決するために本発明者等は鋭意検討した結果、以下の一般式(1)で表されるL−グルコース誘導体を見出すに至った。
Figure 0006982358
[式(1)中、Xは−SAuR基を示し、X,X,X及びXは、それぞれ独立に、−OR基、−NH基又はフッ素原子を示す。Rは配位子を示し、Rは水素原子又は有機基を示す。]
かかるL−グルコース誘導体によれば、実施例で示されているとおり、がん細胞に選択的に取り込まれ得る。当該L−グルコース誘導体の存在下では、実施例で示されているとおり、RF波による加熱効率が向上するので、増感薬物として機能し得る。当該L−グルコース誘導体は、実施例で示されているとおり、正常細胞に対しては低毒性であり、且つがん細胞に対する選択性を高める効果が期待される。
本発明のL−グルコース誘導体により上述の効果を奏する理由は必ずしも明らかでないが、本発明者等による考察を以下に示す。
L−グルコースは、天然にはあまり目にすることのない分子であるが、天然に広く存在するブドウ糖であるD−グルコースの光学異性体である。D−グルコースは、細胞膜に存在するグルコーストランスポーター(GLUTやSGLT)を介して細胞内に取り込まれ、エネルギー源もしくは炭素源となる一方、L−グルコースは、グルコーストランスポーターを通過できないものと考えられており、正常細胞にはほとんど取り込まれないとされている。
一方、本発明のL−グルコース誘導体は、少なくともその一部はがん細胞に選択的に取り込まれる可能性がある。
これに加えて、本発明のL−グルコース誘導体は、分子中に金原子(Au)を含むため、加熱効果が得られる可能性があるのではないかと考えた。さらに、本発明のL−グルコース誘導体は、分子中に金原子(Au)を含むため、がん細胞中に取り込まれた際に、金原子ががん細胞に対して顕著な毒性を呈する可能性がある。
本発明によれば、がん細胞に選択的に取り込まれ、高周波ハイパーサーミア治療時に、標的部位に選択的に熱を発生させることが可能となり得る増感薬物を提供することができる。さらに、本発明によれば、正常細胞に対しては低毒性であり、且つがん細胞に選択的に取り込まれ毒性を呈するような化合物を提供することができる。
RF波照射ユニットを示す模式図である。 培養日数4DIV(Days In Vitro)のMIN6に対してLGGを投与した際の死細胞数の割合を示す図である。 (A)は培養日数5DIVのMIN6の、(B)は培養日数5DIVのMIN6に対してLGGを投与した後の細胞の、(C)は培養日数5DIVのMIN6に対してPHTをあらかじめ前投与した後LGGを一定時間投与した細胞の、それぞれ代表的な光学顕微鏡写真である。 図3の光学顕微鏡写真の拡大図である。 PHT存在下及び非存在下においてLGGを投与した際の生細胞の活性を表す蛍光マーカーCalcein(カルセイン)の蛍光強度で評価した結果を示す図である。 培養日数19DIVのMIN6に対してLGGを投与した際の死細胞数の割合を示す図である。
以下、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。ただし、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。
本実施形態のL−グルコース誘導体は、下記一般式(1)で表される構造を有する。
Figure 0006982358
[式(1)中、Xは−SAuR基を示し、X,X,X及びXは、それぞれ独立に、−OR基、−NH基又はフッ素原子を示す。Rは配位子を示し、Rは水素原子又は有機基を示す。]
グルコース誘導体にはD体及びL体が存在するが、一般式(1)で表される構造はL体のグルコース誘導体である。また、グルコース誘導体には、アノマー異性体、すなわちXがエカトリアル方向に向いているアノマーとXがアキシャル方向に向いているアノマーが存在し得るが、本実施形態のL−グルコース誘導体はこれらの混合物であってもよい。
における配位子としては、例えば、ホスフィン配位子、チオラート配位子、オレフィン配位子等が挙げられる。
は、ホスフィン配位子であると好ましく、トリアルキルホスフィン配位子であるとより好ましく、トリエチルホスフィン配位子であると更に好ましい。
における有機基としては、例えば、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、アシル基等が挙げられる。これらの基は更に別の置換基を有していてもよい。有機基の炭素数は、例えば、1〜10とすることができ、1〜5であると好ましく、1〜3であるとより好ましい。
は、水素原子、アルキル基又はアシル基であると好ましく、水素原子又はアシル基であるとより好ましく、水素原子又はアセチル基であると更に好ましい。
一般式(1)で表されるL−グルコース誘導体は、例えばL体の糖又はその誘導体から合成することができる。L体の糖又はその誘導体の具体例としては、L−グルコース、L−マンノース、L−ガラクトース、1,2:5,6−ジ−O−イソプロピリデン−α−L−グルコフラノース等が挙げられる。
L体の糖又はその誘導体から一般式(1)で表されるL−グルコース誘導体を合成する方法としては、例えば、実施例に記載の方法等が挙げられる。実施例に記載の方法の各工程を適宜組み合わせたり、従来公知の方法で置換基を導入したりすることにより、種々の誘導体を合成することができる。
一般式(1)で表されるL−グルコース誘導体は、高周波ハイパーサーミア治療時に利用する増感薬物として好適に利用し得る。高周波ハイパーサーミア治療には、従来公知の装置を用いることができる。
一般式(1)で表されるL−グルコース誘導体は、高周波ハイパーサーミア治療におけるRF波の照射前又は照射中に投与することができる。
一般式(1)で表されるL−グルコース誘導体を増感薬物として用いた高周波ハイパーサーミア治療は、がんの治療、特に膵臓がん、脳腫瘍、乳がん、子宮がん等の種々のがんの治療に有効となり得る。
一般式(1)で表されるL−グルコース誘導体を用いることにより、がんの治療、特に膵臓がん、脳腫瘍、乳がん、子宮がん等の種々のがんの治療に有効となり得る。
一般式(1)で表されるL−グルコース誘導体は、例えば、経口剤(錠剤、顆粒剤、散剤、カプセル剤、シロップ剤等)、舌下錠、注射剤(静脈内投与用、筋肉内投与用、皮下投与用、腹腔内投与用、関節内投与用、硬膜外投与用)、あるいは、子宮頸部や口腔内、皮膚など局所に直接適用する形で投与することができる。
以下、実施例に基づいて本発明を更に具体的に説明するが、本発明は実施例に何ら限定されるものではない。なお、合成した化合物の構造は、UPLC−MS、H−NMR、13C−NMR等を用いて同定した。なお、実施例中で使用した略語と化合物名の関係を以下に示す。
KSAc: チオ酢酸 S−カリウム
NaOMe: ナトリウムメトキシド
EtPAuCl: クロロ(トリエチルホスフィン)金(I)
DMF: N,N−ジメチルホルミアミド
HOBt: 1−ヒドロキシベンゾトリアゾール
WSC HCl: 1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩
TMSOTf: トリフルオロメタンスルホン酸 トリメチルシリル
THF: テトラヒドロフラン
参考合成例
化合物Aの合成
ペンタ−O−アセチル−β−D−グルコピラノース(化合物1A)を出発原料として、以下の反応式に従って、化合物Aを合成した。
Figure 0006982358
(1)化合物2Aの合成
Figure 0006982358
100mLナスフラスコにて、化合物1A(6.0g,15.4mmol)、ジクロロメタン36mLを仕込み、25%臭化水素−酢酸を6.0mL添加した。室温にて終夜撹拌した後、水15mLを加えて分液操作を行った。得られた有機層を飽和重曹水15mL、Brine15mLで洗浄した後、硫酸ナトリウムで乾燥、濃縮した。これにより、無色オイル状の化合物2Aを7.9g得た。これ以上の精製は行わず、次の工程へと進めた。
(2)化合物3Aの合成
Figure 0006982358
100mLコルベンにて、化合物2A(6.3g)、アセトン30mL、KSAc(3.5g,30.7mmol)を仕込み、室温にて4時間撹拌した。反応液を濃縮した後、酢酸エチル50mL、水30mLを加えて分液操作を行った。有機層を集めた後、Brine30mLで洗浄、硫酸ナトリウムで乾燥させた。溶液を濃縮することで、褐色オイル状の6.7gの粗生成物を得た。シリカゲル140g、展開溶媒:ヘプタン/酢酸エチル=2:1〜3:2にて精製した。目的のフラクションを濃縮した後、ヘプタン200mLで洗浄、ろ過することで、淡桃色固体の化合物3Aを3.9g(収率63%(2工程))得た。
(3)化合物Aの合成
Figure 0006982358
500mLコルベンにて、化合物3A(1.5g,3.7mmol)、メタノール150mLを仕込み、氷冷下、内温4℃にて5MNaOMeメタノール溶液0.89mLを添加した。室温にて2時間撹拌した後、EtPAuCl(1.4g,4.0mmol)を添加した。室温にて1時間撹拌した後、反応溶液を濃縮することで、無色オイル状の粗生成物を688mg得た。シリカゲル14.5g(まぶし1.5g)、展開溶媒:酢酸エチル/メタノール=9:1〜4:1にて精製し、目的のフラクションを濃縮した。濃縮残渣をメタノール20mLに溶かし、活性炭を600mg加えて1時間撹拌、セライトろ過し、化合物A((1−チオ−β−D−グルコピラノシド)(S−トリエチルホスフィン)金(I))を得た。
化合物3A(500mg,1.2mmol)から出発し、同様の方法で得た化合物Aと合わせて、無色アモルファスの化合物Aを1.7g(収率63%(2工程))得た。
[比旋光度測定]
化合物A50.7mgをメタノールに溶かし、5.00mLとした。セル長100mmのセルを用いて、比旋光度を10回測定し、最大値と最小値を外した平均値をとったところ、その平均値は+7.28度であった。
実施例1
化合物Bの合成
L−(−)−グルコース(化合物1B)を出発原料として、以下の反応式に従って、化合物Bを合成した。
Figure 0006982358
化合物2Bの合成
Figure 0006982358
200mLナスフラスコに、化合物1B(5.0g,27.6mmol)、ピリジン50mLを仕込み、無水酢酸を15.7mL添加した。室温にて終夜撹拌した後、酢酸エチル200mL、水100mLを加えて分液操作を行った。得られた有機層を1M塩酸50mL、Brine50mLで洗浄し濃縮した。これにより、無色オイル状の化合物2Bを12.1g得た。これ以上の精製は行わず、次の工程へと進めた。
化合物3Bの合成
Figure 0006982358
200mLナスフラスコにて、化合物2B(12.1g)、ジクロロメタン60mLを仕込み、25%臭化水素−酢酸を10mL添加した。室温にて終夜撹拌した後、水100mL、クロロホルム100mLを加えて分液操作を行った。得られた有機層を飽和重曹水100mL、Brine100mLで洗浄した後、硫酸ナトリウムで乾燥、濃縮した。これにより、無色オイル状の化合物3Bを15.9g得た。これ以上の精製は行わず、次の工程へと進めた。
化合物4Bの合成
Figure 0006982358
300mLナスフラスコにて、化合物3B(15.9g)、アセトン55mL、KSAc(6.4g,55.6mmol)を仕込み、室温にて4時間撹拌した。反応液を濃縮した後、酢酸エチル100mL、水100mLを加えて分液操作を行った。有機層を集めた後、Brine30mLで洗浄、硫酸ナトリウムで乾燥させた。溶液を濃縮することで、褐色オイル状の11.3gの粗生成物を得た。シリカゲル200g、展開溶媒:トルエン/酢酸エチル=9:1〜5:1にて精製することで、橙色固体の化合物4Bを5.1g(収率45%(3工程))得た。
化合物Bの合成
Figure 0006982358
300mLコルベンにて、化合物4B(4.1g,10.1mmol)、メタノール100mLを仕込み、氷冷下、内温4℃にて5MNaOMeメタノール溶液2.42mLを添加した。室温にて2時間撹拌した後、EtPAuCl(3.18g,9.0mmol)を添加した。室温にて1時間撹拌した後、反応溶液を濃縮することで、無色オイル状の粗生成物を5.8g得た。シリカゲル100g(まぶし6.0g)、展開溶媒:酢酸エチル/メタノール=9:1〜4:1にて精製し、目的のフラクションを濃縮することで化合物B((1−チオ−β−L−グルコピラノシド)(S−トリエチルホスフィン)金(I))を2.5g(収率49%)得た。
[比旋光度測定]
化合物B50.5mgをメタノールに溶かし、5.00mLとした。セル長100mmのセルで、20℃で、比旋光度を10回測定し、最大値と最小値を外した平均値をとったところ−8.73度であった。なお、既知のD体である化合物Aの比旋光度(+7.28度)と比較して、化合物BがL体であることが確認された。
実施例2
化合物Cの合成
実施例1の化合物4Bを出発原料として、以下の反応式に従って、化合物Cを合成した。
Figure 0006982358
(1)化合物5Cの合成
Figure 0006982358
アルゴン気流下、100mLナスフラスコに、化合物4B(19.0g)及びDMF(19.0mL)を仕込んだ。NaHCO(0.06g)及び(2S,3S)−1,4−ジメルカプトブタン−2,3−ジオール(1.80g)を添加し、室温で2時間攪拌した。LC/MSで原料の消失を確認後、反応溶液に水/トルエン(20mL/20mL)を添加し、分液した。有機層に無水NaSOを加え、ろ過後、ろ液をエバポレーターで減圧濃縮し、黄色溶液(3.09g)を得た。これ以上の精製は行わず、次の工程へと進めた。
(2)化合物Cの合成
Figure 0006982358
アルゴン気流下、100mLナスフラスコに化合物5C(3.1g)、CHCl(14.0mL)及び水(14.0mL)を仕込んだ。氷冷下、EtPAuCl(1.6g)及びKCO(0.77g)を添加した。室温に戻した後、1時間攪拌した。水(30.0mL)を添加し、CHCl(30.0mL)で二回抽出した。無水MgSOを加え、ろ過後、ろ液をエバポレーターで減圧濃縮し、黄色溶液(3.6g)を得た。粗体(3.6g)を中性シリカゲル(60−210μm,64g)を用いて、展開溶媒:ヘプタン/酢酸エチル=1:1〜1:3にて精製し、目的のフラクションを濃縮することで、白桃色固体の化合物C((2,3,4,6−テトラ−O−アセチル−1−チオ−β−L−グルコピラノシド)(S−トリエチルホスフィン)金(I))を2.03g(収率64%)得た。
[比旋光度測定]
化合物C101.2mgをメタノール10.0mLに溶かし、濃度1.01mg/mLのサンプル溶液を調製した。セル長100mmのセルを用いて、20℃で、比旋光度を10回測定し、最大値と最小値を外した平均値をとったところ+56.1度であった。なお、化合物CのD体であるオーラノフィンの比旋光度は−52度であり(Green Chemistry, 2015, 17, 4, 2545-2551参考)、化合物CがL体であることが確認できた。
実施例3
化合物Dの合成
L−(−)−グルコース(化合物1B)を出発原料として、以下の反応式に従って、化合物Dを合成した。
Figure 0006982358
化合物2Dの合成
Figure 0006982358
500mLナスフラスコにて、化合物1B(23.0g,128mmol)、DMF220mLを仕込み、ベンズアルデヒドジメチルアセタール(22.3g,147mmol)、CSA(2.97g,12.8mmol)を添加した。室温にて終夜攪拌した後、トリエチルアミン10mLを加えて反応を停止させた。反応溶液をパス温60℃で、減圧濃縮することで、黄色オイル状の化合物2Dを50.2g得た。これ以上の精製は行わず、次の工程へと進めた。
化合物3Dの合成
Figure 0006982358
500mLナスフラスコにて、化合物2D(50.2g)、ピリジン300mLを仕込んだ。氷冷下、無水酢酸60.5mL(640mmol)を添加した。室温にて終夜攪拌した後、反応溶液を酢酸エチル200mL、水300mL混合溶液に注加した。分液操作を行った後、得られた有機層を1M塩酸200mLで洗浄した。さらに、有機層を飽和重曹水200mLで洗浄した。有機層を硫酸ナトリウムで乾燥させた後、減圧濃縮した。トルエン200mLで3回共沸することで、黄色固体の粗生成物(化合物3D)を56.1g得た。これ以上の精製は行わず、次の工程へと進めた。
化合物4Dの合成
Figure 0006982358
1Lコルベンにて、化合物3D(56.1g)、酢酸400mL、水100mLを仕込み、内温60℃にて1時間攪拌した。反応溶液をバス温50℃にて減圧濃縮した後、クロロホルム300mL、飽和重曹水400mLを加えて分液操作を行った。さらに、クロロホルム100mLにて、10回抽出した。得られた有機層を硫酸マグネシウムで乾燥させた後、減圧濃縮することで、褐色オイル状の粗生成物を43.3g得た。シリカゲル900g、展開溶媒:クロロホルム/メタノール=100:0〜95:5にて精製した。目的のフラクションを濃縮、40℃にて減圧乾燥することで、白色アモルファスの化合物4Dを19.5g得た。
AcOBtの合成
Figure 0006982358
アルゴン雰囲気下、300mLナスフラスコにて、HOBt(10.3g,76.0mmol)、ジクロロメタン100mLを仕込み、WSC HCl(15.3g,79.8mmol)、酢酸(4.78mL,83.6mmol)を添加した。室温にて1時間攪拌した後、化合物5Dの合成に用いた。
化合物5Dの合成
Figure 0006982358
アルゴン雰囲気下、500mLコルベンにて、化合物4D(19.4g,63.3mmol)、ジクロロメタン200mLを仕込み、トリエチルアミン(11.0mL,76.0mmol)を添加した。氷冷下、内温40℃にてAcOBtを滴下した。この際、内温は60℃に上昇した。室温にて2時間撹枠した後、水200mLを加えて分液操作を行った。さらに、ジクロロメタン100mLで3回抽出した。得られた有機層を硫酸マグネシウムで乾燥、減圧濃縮することで、黄色オイル状の粗生成物を29.1g得た。シリカゲル600g、展開溶媒へ:プタン/酢酸エチル=1:1〜1:2にて精製した。目的のフラクションを40℃で減圧濃縮、乾燥させることで、無色オイル状の化合物5Dを13.2g(収率60%)を得た。
化合物6Dの合成
Figure 0006982358
アルゴン雰囲気下、300mLナスフラスコにて、化合物5D(8.5g,24.4mmol)、ジクロロメタン(超脱水)60mLを仕込んだ。氷冷下、内温4℃にて、30%臭化水素−酢酸を30mL滴下した。同温度にて30分間攪拌した後、氷水30mLに反応溶液を注加した。分液操作を行った後、ジクロロメタン30mLで2回抽出した。得られた有機層を硫酸マグネシウムで乾燥させた後、バス温30℃にて減圧濃縮した。これにより、無色オイル状の化合物6Dを10.5g得た。これ以上の精製は行わず、次の工程へと進めた。
化合物7Dの合成
Figure 0006982358
300mLナスフラスコにて、化合物6D(10.5g)、アセトン90mL、KSAc(3.1g,26.8mmol)を仕込み、室温にて3時間攪拌した。反応液を濃縮した後、酢酸エチル200mL、水100mLを加えて分液操作を行った。さらに酢酸エチル100mLで抽出した後、有機層を硫酸ナトリウムで乾燥させた。溶液を減圧濃縮することで、褐色オイル状の粗生成物を7.6g得た。シリカゲル160g、展開溶媒:トルン/酢酸エチル=4:1〜2:1にて精製することで、黄色固体の化合物7Dを4.4g(収率50%(2工程))得た。
化合物8Dの合成
Figure 0006982358
30mLナスフラスコにて、アルゴン雰囲気下、化合物7D(150mg,0.412mmol)、ジクロロメタン2.0mLを仕込んだ。氷冷下、2,6−ルチジン(88.2mg,0.823mmmol)、TMSOTf(0.10mL,0.535mmol)を添加し、同温度にて3時間攪拌した。クロロホルム10mL、水10mLの混合溶液に反応溶液を注加し、分液操作を行った。得られた有機層を硫酸マグネシウムで乾燥させた。この有機層を減圧濃縮することで、オイル状の粗生成物を300mg得た。シリカゲル10g、展開溶媒:へプタン/酢酸エチル=4:1〜2:1にて精製することで、無色固体の化合物8Dを115mg(収率64%)得た。
化合物9Dの合成
Figure 0006982358
30mLナスフラスコにて、化合物8D(111mg,0.254mmol)、DMF1.0mLを仕込み、重曹(3.2mg,0.038mmol)、ジチオトレイトール(66.7mg,0.432mmol)添加した。室温に2時間攪拌した後、トルエン10mL、水10mLを加えて分液操作を行った。さらにトルエン10mLにて2回抽出した。得られた有機層を硫酸マグネシウムで乾燥させた後、溶液を減圧濃縮した。これにより、黄色オイル状の化合物9Dを140mg得た。これ以上の精製は行わず、次の工程へと進めた。
化合物10Dの合成
Figure 0006982358
30mLナスフラスコにて、化合物9D(140mg)、ジクロロメタン1.0mL、水1.0mLを仕込んだ。氷冷下、炭酸カリウム(40mg,0.305mmol)、EtPAuCl(90mg,0.267mmol)を添加した。室組にて1時間攪拌した後、クロロホルム10mL、水10mLを加えて分液操作を行った。得られた有機層を硫酸マグネシウムで乾燥させた後、減圧濃縮することでオイル状の粗生成物を300mg得た。シリカゲル10g、展開溶媒へプタン/酢酸エチル=4:1〜1:1にて精製した。目的のフラクションを濃縮、乾燥させることで、無色オイル状の化合物10Dを55.7mg(収率32%(2工程))得た。さらに、化合物14を41.9mg(収率65%)回収した。
化合物Dの合成
Figure 0006982358
30mLナスフラスコにて、水1.0mL、酢酸0.10mLを仕込んだ。氷冷下、化合物10D(29.0mg,0.041mmol)のTHF溶液(1.0mL)を滴下した。同温度にて1時間攪拌した後、反応溶液に酢酸エチル10mL、飽和重曹水10mLを添加して分液操作を行った。得られた有機層を硫酸マグネシウムで乾燥させた後、減圧濃縮することで化合物D((2,3,6−トリ−O−アセチル−1−チオ−β−L−グルコピラノシド)(S−トリエチルホスフィン)金(I))を24.4mg(収率94%)得た。
<化合物の評価>
実施例で得られた化合物について、以下に示す試験を行った。
[RF波照射試験]
本発明のL−グルコース誘導体による温度上昇効果を確認するために、図1に示すRF波照射ユニット10を用いて、ラジオ波(RF波)照射試験を行った。RF波照射ユニット10は、高周波発生器1と、高周波発生器1に接続された上部電極3及び下部電極5と、上部電極3と下部電極5との間で発生する電磁波を遮蔽するための電磁シールド7とを備える。上部電極3と下部電極5との間に試料Sを設置して、上部電極3と下部電極5の間で電磁波(RF波)を照射すると電気力線LEFが発生し、RF波照射試験を行うことができる。RF波照射の条件は、周波数(13.56MHz)とした。
RF照射をしながら試料Sの温度を正確に測定するために光ファイバー温度計FL−2000(安立計器製)を用いた。温度センターFS100(安立計器製)の先端を試料Sの中心部に挿入して温度測定を行った。
試料Sとしては、化合物D((2,3,6−トリ−O−アセチル−1−チオ−β−L−グルコピラノサト)(S−トリエチルホスフィン)金(I))を所定の金原子濃度(金原子として0ppm,308.9ppm)で含有する水含有ゲルを用いた。水含有ゲルは生体組織のモデルであり、化合物Dは金原子を含むL−グルコース誘導体である。
具体的には、化合物Dを含有させたゲルをポリスチレン製容器中に封入したサンプルを試料Sとして用いた。当該サンプルは以下の手順で調製した。上部電極3と下部電極5で挟み込んだとき、電極間距離が28mmとなるポリスチレン製容器に所定濃度の化合物Dを含む水含有ゲルを封入した。
化合物Dを含まない場合(金原子として0ppm)と化合物を含む場合(金原子として308.9ppm)について、30℃から35℃に上昇するために要した時間から昇温速度(℃/min)を求めた。化合物Dを含まない場合、昇温速度は平均2.5(℃/min)、標準誤差SEは0.06℃であった。化合物Dを含む場合、昇温速度は平均2.9(℃/min)、標準誤差SEは0.12℃であった。これらの結果から、化合物Dを含まない場合と比べて化合物Dを含む場合に昇温速度が増大することが確認できた。
<L−グルコース誘導体投与試験>
マウスの膵β細胞の腫瘍化(インスリノーマ)細胞株MIN6(Miyazaki J. et al., Endocrinology 127: 126-132, 1990)を用いて、以下の実験を行なった。ここで、すべての実験は、96穴のウェルのなかに約1000個のMIN6細胞を前もって入れ、上記化合物B(以下LGGと呼ぶ)を投与する実験と、上記化合物A(以下DGGと呼ぶ)を投与する対照実験について、外的擾乱が極力ないように配慮して行なった。
なおマウス膵臓に由来するMIN6細胞はヘテロな細胞集団であり(Yamato, E. et al., PLoS One 8: e61211, 2013)、培養開始後4−5DIV程度までは、正常細胞すなわちインスリンを産生する膵臓ランゲルハンス氏島β細胞が主たる割合を占めており、病理学で言うところの悪性細胞の性質を示す細胞が一部存在するもののその割合は小さい。一方、培養日数が例えば10DIVを過ぎ、全体として細胞状態が悪化する時期になると、悪性細胞の割合が相対的に増えると推定される(Sasaki, A. et al., Human Cell 2016, 29, 37-45)。
Vitro下での培養日数が4DIV (Days In Vitro)のMIN6に対して、LGGを投与した。LGGは、L−グルコースの1位OH基が−SAuP(C基に置換したL−グルコース誘導体である。対照実験として、DGGを投与する実験も行なった。DGGは、D−グルコースの1位OH基が−SAuP(C基に置換したD−グルコース誘導体である。
具体的には、培養日数が4DIVであるMIN6に対して、LGGとDGGとを、0〜1000μM投与して90分経過したのち、それらの濃度の関数として、死細胞マーカーPI(Propidium Iodide)により評価した死細胞数の割合を測定した。その結果を図2に示す。図2中、横軸は、DGGないしLGGの濃度を示しており、縦軸は、PI蛍光の細胞ごとの平均強度の総和を示している。ただし、縦軸は、濃度1000μMの死細胞数を各well内の全細胞数であると仮定し、全細胞数の蛍光強度によって規格化したときの値(%)である。折れ線は、Eye guideである。
図2の内挿から、DGGを投与したときには、その濃度が1μM程度を超えると、PIで評価した細胞死が少なくとも本実験で用いた基準で検出可能になると推定される。DGGは公知化合物であり、その細胞毒性は細胞内に入った金原子(Au)によるものと考えられている(Sutton B.M. et al., J. Med. Chem. 15: 1095-98, 1972; Wu, B. et al., J. Med. Chem. 62: 7751-68, 2019)。図2から、細胞がPIで評価された核異常について、50% effective dose(50%有効量)を呈するDGGの濃度は、1μMから10μMの間と観測される。
一方、LGGを投与したときには、その濃度が10μMを越えると、PIで評価した細胞死が検出可能になると推定される。本実験条件では、50% effective doseを呈するDGGの濃度は、10μMから100μMの間と観測されることから、LGGは膵臓ランゲルハンス氏島β細胞株に代表されるような正常細胞に対して、DGGに比して約10倍(約1桁)、安全性が高いと推定される。
ここで、図2で明らかに示されたLGGによる細胞死が、たしかにLGGが細胞内に取り込まれたことによって引き起こされたものであるかを検証するために、更なる実験を行った。具体的には、フロレチン(phloretin、以下PHTと呼ぶ)存在下でLGGを投与して、細胞死が阻害されるかどうかを実験した。
PHTは、水チャネルやグルコーストランスポーターなど多様な膜輸送蛋白に対する阻害剤として機能する(Ono K. et al., Cancers 12: 850, 2020)。ある物質(ここではLGG)の効果が、「PHTにより阻害された」ということは、その物質(すなわちLGG)が上記の膜輸送蛋白を介して、少なくとも一部は細胞内に輸送されており、その輸送がPHTにより阻害されたことを示唆する(Ono K. et al., Cancers 12: 850, 2020)。すなわち、PHT存在下でMIN6細胞に対してL−グルコース誘導体を適用すると、PHTによる非トランスポーター型輸送機構の阻害効果によって、ヘテロな細胞集団の中に一部存在する「L−グルコース誘導体を取り込み可能な細胞」へのLGGの取り込みが阻害されるたものと推定される。
具体的な実験としては、培養日数が5DIVであるMIN6について、(A)LGGを投与しなかった場合(対照実験)、(B)100μMのLGGを10min間投与した場合、(C)あらかじめ150μMのPHTを投与した後に100μMのLGGを10min間投与した場合、のそれぞれについて、光学顕微鏡により細胞状態を観察した。その結果をそれぞれ図3A〜Cに示し、図3中のa〜iの拡大図(拡大図同士の縮尺は全て同一)を図4a〜iに示す。
図3B、及びその拡大図である図4eでは、一部の細胞において細胞質の一部が細胞外に突出した特徴的な形態が認められる(矢印参照)。このような形態は図3A、及びその拡大図である図4a〜dでは観測されなかったものであり、細胞状態の悪化が示唆される。一方、図3C、及びその拡大図である図4f〜iでは、細胞状態の悪化を示す細胞がほとんど認められない。
さらに、PHT存在下及び非存在下において、LGGの細胞への影響を定量的に解析した。具体的には、上述の図3の場合と同様に、MIN6(5DIV)について、(A)LGGを投与しなかった場合(Control)、(B)100μMのLGGを10min間投与した場合(LGG)、(C)あらかじめ150μMのPHTを投与した後に100μMのLGGを10min間投与した場合(LGG+PHT)、のそれぞれについて、生細胞の活性を表す蛍光マーカーCalcein(カルセイン)の蛍光強度で評価した。その結果を図5に示す。図5中、Error barは標準誤差SEを、括弧内の数値は解析したROIの数を示す。
なお、Calceinの蛍光強度は、細胞内の加水分解酵素エステラーゼの活性を反映しており、Calceinの蛍光強度の低下は細胞状態の悪化を示す。図の縦軸は、細胞に設定した関心領域(ROI)あたりのCalceinの平均蛍光強度 (arbitrary unit, A.U.)を示す。統計解析には、Bonferroni-Dunn testを用いた。
図5における左(Control)の棒(bar)と中央(LGG)の棒の実験群の比較から、LGGは、MIN6細胞の活性を有意に低下させたことがわかる。さらに中央(LGG)の棒と右(LGG+PHT)の棒の実験群の比較から、PHTによりLGGに起因する細胞活性の低下が有意に阻害されたことが明らかである。
同じ実験を3回繰り返し、いずれも同様の結果を得た。このことは、LGGの少なくとも一部がPHTにより阻害される機構を介してMIN6細胞に働き、その細胞活性を低下させたことを示唆する。最もあり得る機序は、LGGが「PHTにより阻害されるチャネル様の膜輸送蛋白」(Sasaki A. et al., Human Cell 2016, 29, 37-45)を介して細胞内に侵入し、細胞活性を低下させた可能性である。既に述べたように、MIN6細胞にはこのようなチャネル様蛋白を発現する腫瘍細胞が一部混在している可能性があり、LGGがこのような腫瘍細胞内に取り込まれ、細胞の活性を減弱させ、細胞死に至らしめる可能性が示唆される。
さらには、培養日数DIVの長いMIN6に対して、図2と同様の実験を行なった。DGGについては18DIV、LGGについては19DIVの結果を、図6に示す。ただし、いずれの場合も、DGGないしLGGを10分間投与した後に、観測を行なった。なお、プロットは死細胞数の割合を示す。
この結果から、DIVが大きい場合には、LGGを入れた時の死細胞数の割合のLGG濃度依存性が、DGGを入れたときの死細胞数の割合のDGG濃度依存性にほぼ一致することが分かる。もとより培養日数が18ー19DIVとなったMIN6細胞では、死細胞の割合が増え、培養環境が悪化していることから、生き残った細胞中に占める悪性腫瘍細胞の割合が相対的に増えていると推定される。このような細胞群に対して、LGGは有意に多くの細胞死をもたらした。
以上の結果は、正常細胞に対してDGGよりはるかに低毒性であるLGGは、がん細胞内部に、少なくともその一部が選択的に取り込まれ、おそらくは取り込まれた後、金原子(Au)ががん細胞に対して顕著な毒性を呈していることを示唆する。
1…高周波発生器、3…上部電極、5…下部電極、7…電磁シールド、10…RF波照射ユニット、S…試料、LEF…電気力線。

Claims (3)

  1. 下記一般式(1)で表されるL−グルコース誘導体。
    Figure 0006982358

    [式(1)中、Xは−SAuR基を示し、X,X,X及びXは、それぞれ独立に、−OR 基を示す。Rトリアルキルホスフィン配位子を示し、Rは水素原子、アルキル基又はアシル基を示す。]
  2. は、水素原子又はアセチル基である、請求項1に記載のL−グルコース誘導体。
  3. はトリエチルホスフィン配位子である、請求項1又は2に記載のL−グルコース誘導体。
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