<第1の実施の形態>
以下、図面を参照して本発明の第1の実施の形態について説明する。
まず、図1および図2を参照して、乳母車10の全体構成から説明する。図1および図2には、乳母車10の全体構成が示されている。図1に示すように、第1の実施の形態における乳母車10は、全体的に、前後方向に沿った幅方向中心面を中心として概ね対称な構成となっている。図1および図2に示すように、乳母車10は、フレームを構成する乳母車本体11と、乳母車本体11に支持される座席40と、を有している。また、乳母車本体11には、座席40に着座した乳幼児を日差しや風から保護するよう、幌100が設けられている。
次に、図1〜図7を参照して、乳母車本体11の全体構成を説明する。図3には、展開状態にある乳母車本体11のリンク部材が示されている。図4は、図3に示すリンク部材の、乳母車10の内側から乳母車10の幅方向に見た側面図である。また、図5には、前脚22の上記幅方向中心面に沿った断面が示されている。また、図6には折り畳み状態にある乳母車10が示されている。また、図7は、図4に対応する図であって、図6に示すリンク部材の、乳母車10の内側から乳母車10の幅方向に見た側面図である。
乳母車本体11は、広く普及しているように(例えば、JP2005−082082AやJP2006−117012A)、展開状態と折り畳み状態との間で変形可能に構成されており、図1および図2に示された展開状態から図6に示された折り畳み状態へ折り畳むことができ、また、折り畳み状態から展開状態へと展開することができる。乳母車本体11は、ハンドル15を含んでおり、操作者(保護者)が乳幼児の背面側からハンドル15を把持して乳母車10を操縦し、乳幼児が進行方向の前方を向くようにして乳母車10を走行させることが可能となっている。
なお、本明細書中において、乳母車10および乳母車本体11に対する「前」、「後」、「上」、「下」、「前後方向」、および「上下方向」の用語は、特に指示がない場合、展開状態にある乳母車10を操縦する操作者を基準とした「前」、「後」、「上」、「下」、「前後方向」、および「上下方向」を意味する。さらに詳しくは、乳母車10の「前後方向」とは、図1における紙面の左下と右上とを結ぶ方向であって、図2における紙面の左右の方向に相当する。そして、特に指示がない限り、「前」とは、乳母車10を操縦する操作者が向く側であり、図1における紙面の左下側並びに図2における紙面の左側が乳母車10の前側となる。一方、乳母車10の「上下方向」とは前後方向に直交するとともに接地面(走行面)Sに直交する方向である。したがって、接地面が水平面である場合、「上下方向」とは垂直方向をさす。また、「幅方向」または「車幅方向」とは、横方向であって、「前後方向」および「上下方向」のいずれにも直交する方向である。さらに、「右」および「左」についても、それぞれ、乳母車10を操縦する操作者を基準とした横方向または幅方向における「右」および「左」のことを意味する。
また、本明細書中において、折り畳み状態の乳母車10および乳母車本体11に対する「上」、「下」、および「上下方向」の用語は、特に指示がない場合、乳母車10の前輪および後輪が接地している状態(自立状態)を基準とした「上」、「下」、および「上下方向」を意味する。また、折り畳み状態の乳母車10および乳母車本体11に対する「幅方向」、「車幅方向」、「右」および「左」の用語は、特に指示がない場合、展開状態にある乳母車10における「幅方向」、「車幅方向」、「右」および「左」に対応した方向および側を意味する。また、折り畳み状態の乳母車10および乳母車本体11に対する「前後方向」の用語は、「上下方向」および「幅方向」のいずれにも直交する方向であって、図6における紙面の左右の方向に相当する。そして、特に指示ない限り、「前」とは、後述する前脚22が位置する側であり、図6における紙面の左側が乳母車10の前側となる。また、「後」とは、ハンドル15が位置する側であり、図6における紙面の右側が乳母車10の後側となる。
図1に示すように、乳母車本体11は、ハンドル15の他に、それぞれ左右に配置された一対の前脚側部23aを含む前脚22と、それぞれ左右に配置された一対の後脚24と、それぞれ左右に配置された一対の側フレーム材としての第1リンク部材31と、それぞれ左右に配置された一対の第2リンク部材32および一対の第3リンク部材33と、を有している。図1および図2に示すように、前脚22は、上述の一対の前脚側部23aと、一対の前脚側部23aを連結する前脚連結部23bと、を含む前脚フレーム23を有する。また、前脚22は、前脚フレーム23に支持された板部材60を有する。前脚フレーム23の下端には、前輪25aを含む前輪保持体(キャスター)25が設けられ、後脚24の下端には、後輪26が設けられている。また、乳母車本体11は、一対の前脚側部23aの間かつ一対の後脚24の間に配置された座席40を支持している。なお、図示の例では、乳母車10は、1つの前輪25aと2つの後輪26とを有する三輪車として構成されているが、これに限られず、例えば後に参照する図8に示されているように、2つの前輪25aと2つの後輪26とを有する四輪車として構成されてもよい。
図1に示すように、本実施の形態において、ハンドル15は、それぞれ左右に配置された一対のハンドル側部15aと、一対のハンドル側部15a間を連結するハンドル中間部15bと、を含み、全体として略U字状の形状を有している。ハンドル15の下端部分は、展開状態にある乳母車10において、後脚24の中間部分に設けられた係合部材17に係合している。これにより、ハンドル15と後脚24との相対的な回動を拘束する。
図1に示すように、ハンドル15は、そのハンドル側部15a上に摺動可能に設けられた操作部材18と、そのハンドル中間部15b上に設けられ操作部材18の摺動を遠隔操作可能な遠隔操作装置18aと、を有している。操作部材18は、ハンドル側部15a内に設けられたバネ(図示せず)により、下方(U字の端部の方)に向けて付勢されている。図3に示すように、操作部材18は、乳母車10の幅方向に第2リンク部材32に向かって突出する凸部18bを有している。凸部18bは、後述するロック部材19と協働して、乳母車10を展開状態または折り畳み状態に保持する。
図1および図2に示すように、一対の第1リンク部材31は、対応する側(左側または右側)に配置されたハンドル側部15aの中間部分に回動可能(揺動可能)に接続している。図4に示すように、第1リンク部材31は、その後方部分において、乳母車10の幅方向に延びる軸部材51を介してハンドル側部15aに接続している。第1リンク部材31は、図示の例では真っ直ぐな棒状の部材であるが、これに限られない。第1リンク部材31には、種々の形状を付与することができる。例えば、従来技術として説明した従来のアームレストと同様に、第1リンク部材31は、一対の側壁と、一対の側壁部間を連結する上壁部と、を有して、全体として下方に開口する構成としてもよい。これにより、乳母車10の設計自由度を改善して、意匠性を効果的に向上させることができる。
図1および図2に示すように、後脚24は、その上端部をなす接続基部24aと、接続基部24aから延び出す後脚部24bとを有している。後脚部24bの下端には、後輪26が設けられている。
図1に示すように、接続基部24aは、対応する側(左側または右側)に配置された第1リンク部材31に回動可能(揺動可能)に接続している。また、接続基部24aは、対応する側(左側または右側)に配置された前脚側部23aに回動可能(揺動可能)に接続している。後脚部24bは、接続基部24aにおける第1リンク部材31への接続位置と前脚22への接続位置との間から延び出している。これにより、後脚部24bと第1リンク部材31との干渉を効果的に防止して、後脚24と第1リンク部材31とを大きな角度範囲で回動させることができる。同様に、後脚部24bと前脚22との干渉を効果的に防止して、後脚24と前脚22とを大きな角度範囲で回動させることができる。そして、後脚24および第1リンク部材31を接近させることができる。また、後脚24および前脚22を接近させることができる。この結果、図6および図7に示すように、第1リンク部材31、後脚24および前脚22を接近させることができ、乳母車10の折り畳み状態での寸法を小型化することができる。
図4に示すように、接続基部24aは、後脚部24bが延び出す方向Dbと非平行な長手方向Daを有している。接続基部24aの長手方向Daの一側部分(後方部分)には、第1リンク部材31の前方部分が、乳母車10の幅方向に延びる軸部材52を介して接続している。また、接続基部24aの長手方向の他側部分(前方部分)には、前脚22の上端部分が、乳母車10の幅方向に延びる軸部材53を介して接続している。
接続基部24aが長手方向Daを有することにより、後脚部24bと第1リンク部材31との干渉を効果的に防止して、後脚24と第1リンク部材31との回動可能範囲を大きくすることができる。また、後脚部24bと前脚22との干渉を効果的に防止して、後脚24と前脚22との回動可能範囲を大きくすることができる。この結果、図6および図7に示すように、第1リンク部材31、後脚24および前脚22を接近させることができ、乳母車10の折り畳み状態での寸法を小型化することができる。また、図6および図7に示すように、相対回動により後脚24および第1リンク部材31を接近させた状態で、後脚24および第1リンク部材31の間に隙間を形成することができる。同様に、相対回動により後脚24および前脚22を接近させた状態で、後脚24および前脚22の間に隙間を形成することができる。相対回動後にも隙間が形成されることで、折り畳み動作や展開動作に伴って相対動作を構成する要素間に衣類等が挟まってしまうことを効果的に防止することができる。
図4に示すように、第1リンク部材31の後脚24への接続位置を含む少なくとも一部分31aと、後脚24の接続基部24aと、前脚22の後脚24への接続位置を含む少なくとも一部分22aとが、線状に並んでいる。これにより、第1リンク部材31および後脚24を介してハンドル15から前脚22に操作力を円滑に加えることができる。また、走行面Sからの力が、後脚24および第1リンク部材31を介して前脚22からハンドル15に円滑に伝達されるようになる。これにより、走行面Sの状態を把握しながら適切な操作力を乳母車10に加えることができ、乳母車10の操縦性を効果的に向上させることができる。なお、図示の例では、部分31aと接続基部24aと部分22aとは直線状に並んでいるが、これに限られず、連続した曲線状に並んでいてもよい。
次に、第2リンク部材32について説明する。図1に示すように、左側の第2リンク部材32は、ハンドル15の左側のハンドル側部15aと左側の後脚24に、それぞれ回動可能(揺動可能)に接続している。同様に、右側の第2リンク部材32は、ハンドル15の右側のハンドル側部15aと右側の後脚24に、それぞれ回動可能(揺動可能)に接続している。これにより、乳母車10の展開状態から折り畳み状態への変形において、ハンドル15が後脚24に接近しながら下方に下がることができる。そして、図6に示すように、乳母車10の折り畳み状態での寸法を上下方向に小型化することができる。
図4に示すように、各第2リンク部材32は、ハンドル15および後脚24に接続した第2リンク本体部32aを有している。また、各第2リンク部材32は、第2リンク本体部32aにおけるハンドル15への接続位置と後脚24への接続位置との間から延び出した延出部32bを有している。延出部32bは、乳母車10の展開状態における前方に延び出している。各第2リンク本体部32aは、その一部分において、ハンドル側部15aの下方部分(より具体的には、ハンドル側部15aの下端部分と操作部材18との間)に、乳母車10の幅方向に延びる軸部材54を介して接続している。また、各第2リンク本体部32aは、その他の部分において、後脚24の中間部分に、乳母車10の幅方向に延びるボス部55を介して接続している。
各第2リンク本体部32aのハンドル側部15aに接続する一部分には、ハンドル側部15aに向かって突出するロック部材19が設けられている。図4に示すように、ロック部材19は、乳母車10の幅方向から見て、軸部材54を中心とする円の数カ所を切り欠いた形状をしている。ロック部材19には、軸部材54を中心とする円の径方向に延びる2つの凹部19a,19bが、その周方向の異なる位置に設けられている。各凹部19a,19bは、乳母車10の展開状態または折り畳み状態において、ハンドル15に沿って摺動する操作部材18の凸部18bを、下方から受容するようになっている。すなわち、図4および図7から理解されるように、ロック部材19は、乳母車10を展開状態から折り畳み状態へ変形する際、第2リンク部材32と共に回動する。したがって、この際、ロック部材19のハンドル15に対する姿勢が変わる。このようなロック部材19において、凹部19aは、乳母車10が展開状態にある際に、ハンドル15上にある操作部材18の凸部18bを受容することができるように位置決めされている(図4参照)。また、凹部19bは、乳母車10が折り畳み状態にある際に、ハンドル15上にある操作部材18の凸部18bを受容することができるように位置決めされている(図7参照)。
乳母車10の展開状態において操作部材18の凸部18bが凹部19aに受容されることにより、ロック部材19はハンドル15と係合し、第2リンク部材32とハンドル15との相対的な回動を拘束する。これにより、乳母車10が、展開状態に保持されるようになる。また、乳母車10の折り畳み状態において操作部材18の凸部18bが凹部19bに受容されることにより、ロック部材19はハンドル15と係合し、第2リンク部材32とハンドル15との相対的な回動を拘束する。これにより、乳母車10が、折り畳み状態に保持されるようになる。
次に、第3リンク部材33について説明する。図1に示すように、左側の第3リンク部材33は、左側の第2リンク部材32と左側の前脚側部23aとに、それぞれ回動可能(揺動可能)に接続している。同様に、右側の第3リンク部材33は、右側の第2リンク部材32と右側の前脚側部23aとに、それぞれ回動可能(揺動可能)に接続している。これにより、乳母車10の展開状態から折り畳み状態への変形において、前脚22は、第3リンク部材33を介してハンドル15および後脚24に引き寄せられる。そして、図6および図7に示すように、乳母車10の折り畳み状態での寸法を前後方向に小型化することができる。
各第3リンク部材33は、その一部分(後方部分)において第2リンク部材32の延出部32bに、乳母車10の幅方向に延びる軸部材56を介して接続している。また、各第3リンク部材33は、他の部分(前方部分)において前脚側部23aの中間部分に、乳母車10の幅方向に延びる軸部材57を介して接続している。第3リンク部材33が第2リンク部材32におけるハンドル15への接続位置と後脚24への接続位置との間となる位置に接続していることにより、乳母車10の折り畳み状態において、前脚22に保持された前輪25aと後脚24に保持された後輪26とが接近し過ぎることを効果的に防止することができる(図6参照)。これにより、折り畳み状態における乳母車10を、より安定して自立させることができる。さらに、第3リンク部材33が上述の延出部32bにおいて第2リンク部材32に接続していることにより、乳母車10の折り畳み状態において、前脚22が保持された前輪25aと後脚24に保持された後輪26とが接近し過ぎることを、より効果的に防止することができる(図6参照)。これにより、折り畳み状態における乳母車10を、より安定して自立させることができる。
なお、図示の例では、第3リンク部材33は、第2リンク部材32に接続しているが、これに限られない。第3リンク部材33は、ハンドル15に回動可能(揺動可能)に接続していてもよい。
次に、板部材60について説明する。図1に示すように、前脚22の板部材60は、前脚フレーム23に取り付けられている。板部材60は、乳幼児が乳母車10に乗り込む際および乗車している間に、一対の前脚側部23aの間に当該乳幼児の足が入ってしまうことを防止する。図5に示すように、板部材60は、少なくとも前脚連結部23bに支持される緩斜面部60aと、緩斜面部60aに後方から接続した急斜面部60bと、を有している。緩斜面部60a及び急斜面部60bは、後方に向けて上方に傾斜し、緩斜面部60aの走行面Sに対する傾斜角度は、急斜面部60bの走行面Sに対する傾斜角度よりも小さい。緩斜面部60aは、乳母車10に乗車する際のステップまたは踏み台として利用することができる。緩斜面部60aは、前輪25aの上方に位置し得るように配置されている。これにより、緩斜面部60aをステップまたは踏み台として利用した際に、乳母車10の安定性を確保することができる。とりわけ、図示のように、乳母車10が三輪車として構成されている場合に、乳母車10を効果的に安定させることができる。また、緩斜面部60aの走行面Sに対する傾斜角度は、好ましくは10°〜20°である。これによっても、緩斜面部60aをステップまたは踏み台として利用した際に、乳母車10の安定性を確保することができる。板部材60は、例えば樹脂等から形成される。
図1に戻って、図示された乳母車本体11は、幅方向に延びる構成要素として一対の後脚24間を連結する後側連結バー27を有している。また、一対の後脚24の接続基部24a間にガード部材28が着脱可能に設けられている。
次に、座席40について説明する。図1に示すように、座席40は、一対の前脚側部23aの間かつ一対の後脚24の間に配置され、乳母車本体11によって支持されている。座席40は、座席本体40aと、座席本体40aに装着されたクッション性のシート90とを有する。座席本体40aは、座部支持要素41と、背部支持要素42とを含む。図3に示すように、本実施の形態では、第2リンク部材32と第3リンク部材33とを回動可能に接続する軸部材56を介して、座部支持要素41と背部支持要素42とが回動可能(揺動可能)に接続している。図示の例では、座部支持要素41は、第3リンク部材33と一体に形成されている。第3リンク部材33は、座部支持要素41の側部を構成している。
座部支持要素41は、乳母車10に乗車した乳幼児の臀部の下方に位置するようになる。また、背部支持要素42は、乳母車10に乗車した乳幼児の背中の背後に位置するようになる。本実施の形態の座部支持要素41及び背部支持要素42は、全体として矩形の輪郭をもつ樹脂製のプレートにて構成されている。座部支持要素41及び背部支持要素42をなす樹脂製のプレートには、軽量化や通気性の確保のために必要に応じて肉抜きが施されている。また、背部支持要素42は、両端がそれぞれ一方および他方のハンドル側部15aに対して固定された紐45によって、下方または後方から支持されている。この紐45の長さを調整することによって、背部支持要素42の座部支持要素41に対する角度(リクライニング角度)を調整することができるようになっている。
座席本体40aは、さらに、乳母車10に乗車した乳幼児の側方に位置するようになる側部支持要素43と、乳母車10に乗車して横臥した乳幼児の頭側に位置するようになる頭側支持要素44と、を含む。側部支持要素43は、U字の両端部分を、対応する側のハンドル側部15aの中間部分に対して回動可能(揺動可能)に連結している。頭側支持要素44は、一対の略直線状の部材である。各頭側支持要素44の一方の端部および他方の端部は、それぞれ、背部支持要素42および側部支持要素43に回動可能(揺動可能)に連結している。
以上のような全体構成を有した乳母車10(乳母車本体11)は、以下のようにして、各構成部材を互いに回動させることにより、折り畳むことができる。
まず、展開状態にある乳母車10において、操作部材18の凸部18bは、ロック部材19の一方の凹部19aに受容されている。これにより、第2リンク部材32とハンドル15との相対的な回動が拘束されている。そこで、遠隔操作装置18aを操作することによって、第2リンク部材32とハンドル15とのロック部材19を介した係合を解除する。具体的には、遠隔操作装置18aによって操作部材18を上方に動作させる。これにより、第2リンク部材32のハンドル15に対する固定、さらには、第2リンク部材32の他の構成要素に対する固定を解除する。なおこのとき、ハンドル15の下端部分が後脚24の中間部分に設けられた係合部材17に係合している。
この状態から、後方位置に配置されたハンドル15をいったん後上方に引き上げ、ハンドル15の下端部分の後脚24に対する係合を解除する。その後、ハンドル15を下方に押し下げる。この際、第1リンク部材31は、後脚24に対し図2および図4において時計回り方向に回動する。これにより、ハンドル15と後脚24が接近する(図6および図7参照)。また、ハンドル15を下方に押し下げると、第2リンク部材32は、ハンドル15とともに動作する。これにより、第2リンク部材32は、後脚24に対し図2および図4において時計回り方向に回動する。第2リンク部材32のこの動作にともなって、第3リンク部材33は、後方に引っ張られる。第3リンク部材33が後方に引っ張られると、前脚22が後脚24に対し図2および図4において反時計回り方向に回動しながら、後脚24に向けて引き寄せられる(図6および図7参照)。以上により、図6および図7に示すように、前後方向における乳母車10の寸法が小型化される。また、この際、上述のように、ハンドル15の配置位置が下げられるようになる。この結果、乳母車10の前後方向における寸法だけでなく、乳母車10の上下方向における寸法も小型化することができる。
一方、乳母車10(乳母車本体11)を折り畳み状態から展開するには、上述した折り畳み操作と逆の操作を行えばよい。
以上のように、第1の実施の形態によれば、乳母車10は、展開状態と折り畳み状態との間で変形可能な乳母車10であって、ハンドル15と、ハンドル15に回動可能に接続した第1リンク部材31と、第1リンク部材31に回動可能に接続した後脚24と、後脚24に回動可能に接続した前脚22と、を備えている。そして、後脚24は、第1リンク部材31および前脚22に接続した接続基部24aと、接続基部24aにおける第1リンク部材31への接続位置と前脚22への接続位置との間から延び出した後脚部24bと、を有する。
このような第1の実施の形態によれば、後脚24および第1リンク部材31が接近するよう、後脚24と第1リンク部材31とを大きな角度範囲で回動させることができる。同様に、後脚24および前脚22が接近するよう、後脚24と前脚22とを大きな角度範囲で回動させることができる。結果として、図6に示すように、第1リンク部材31、後脚24および前脚22を接近させることができ、乳母車10を折り畳み状態での寸法を小型化することができる。また、第1リンク部材31に種々の形状を付与することができる。具体例として、第1リンク部材31を棒状の部材として構成することができる。これにより、乳母車10の設計自由度を改善して、意匠性を効果的に向上させることもできる。
また、第1の実施の形態によれば、接続基部24aは、後脚部24bが延び出す方向Dbと非平行な長手方向Daを有する。接続基部24aが長手方向Daを有することで、後脚24と第1リンク部材31との回動可能範囲を大きくすることが、安定して可能となる。また、後脚24と前脚22との回動可能範囲を大きくすることが、安定して可能となる。また、図6および図7に示すように、相対回動により後脚24および第1リンク部材31を接近させた状態で、後脚24および第1リンク部材31の間に隙間を形成することができる。同様に、相対回動により後脚24および前脚22を接近させた状態で、後脚24および前脚22の間に隙間を形成することができる。相対回動後にも隙間が形成されることで、折り畳み動作や展開動作にともなって相対動作する構成要素間に衣類等が挟まってしまうことを効果的に防止する。
また、第1の実施の形態によれば、第1リンク部材31の後脚24への接続位置を含む少なくとも一部分31aと、後脚24の接続基部24aと、前脚22の後脚24への接続位置を含む少なくとも一部分22aとが、線状に並んでいる。第1リンク部材31の後脚24への接続位置を含む少なくとも一部分31aと、後脚24の接続基部24aと、前脚22の後脚24への接続位置を含む少なくとも一部分22aとが線状に並ぶことで、第1リンク部材31および後脚24を介して、ハンドル15から前脚22に操作力を円滑に加えることができる。また、走行面Sからの力が、後脚24および第1リンク部材31を介して前脚22からハンドル15に円滑に伝達されるようになる。これにより、走行面Sの状態を把握しながら適切な操作力を乳母車10に加えることができ、乳母車10の操縦性を効果的に向上させることができる。
また、第1の実施の形態によれば、ハンドル15及び後脚24にそれぞれ回動可能に接続した第2リンク部材32と、前脚22とハンドル15又は第2リンク部材32とにそれぞれ回動可能に接続した第3リンク部材33と、を更に備える。このような乳母車10では、図6に示すように、展開状態から折り畳み状態への変形において、ハンドル15が後脚24に接近しながら下方に下がることができる。また、展開状態から折り畳み状態への変形において、前脚22は、第3リンク部材33を介してハンドル15および後脚24に引き寄せられる。これにより、乳母車10の折り畳み状態での寸法を前後方向および上下方向に小型化することができる。
また、第1の実施の形態によれば、前脚22は、後脚24に接続する一対の前脚側部23aおよび一対の前脚側部23aを連結する前脚連結部23bを有する前脚フレーム23と、前脚側部23aおよび一対の前脚側部23aの前脚連結部23bへの接続位置を含む少なくとも一部分によって支持された板部材60と、を有する。これにより、一対の前脚側部23aの間に足が入ってしまうことを効果的に防止することができる。
また、第1の実施の形態によれば、板部材60は、少なくとも前脚連結部23bに支持される緩斜面部60aと、緩斜面部60aに後方から接続した急斜面部60bと、を有し、緩斜面部60a及び急斜面部60bは、後方に向けて上方に傾斜し、緩斜面部60aの走行面Sに対する傾斜角度は、急斜面部60bの走行面Sに対する傾斜角度よりも小さい。このような板部材60によれば、乳母車10に乗車する際のステップ又は踏み台として緩斜面部60aを利用することができる。
また、第1の実施の形態によれば、乳母車10は、前脚22に支持され、前輪25aを含む前輪保持体25を更に備え、緩斜面部60aは、前輪25aの上方に位置し得る。これにより、緩斜面部60aをステップ又は踏み台として利用した際に、乳母車10の安定性を確保することができる。とりわけ乳母車10が三輪車として構成されている場合に、乳母車10を効果的に安定させることができ、有効である。
<第2の実施の形態>
次に、図8〜図13を参照して、本発明の第2の実施の形態について説明する。図8〜図13を参照して説明する第2の実施の形態は、以下の点で第1の実施の形態と異なる。すなわち、乳母車110が四輪車として構成されている。また、第1リンク部材310が保持部材130を有しており、座席140が保持部材130を介して乳母車本体111に着脱可能に支持される。しかしながら、その他の構成は、第1の実施の形態と同様に構成することができる。第2の実施の形態に関する以下の説明および以下の説明で用いる図面では、上述した第1の実施の形態と同様に構成され得る部分について、上述の第1の実施の形態における対応する部分に対して用いた符号と同一の符号を用いることとし、重複する説明を省略する。
図8及び図9は、乳母車110の全体構成を示す図である。図10は、座席140と乳母車本体111との接続部分を示している。図8に示すように、座席140は、主フレーム部材141と、主フレーム部材141に装着される布材142と、主フレーム部材141に接続した接続部材143と、を有する。上述のように、第1リンク部材310は、図1に示す第1リンク部材31と同様に構成された第1リンク本体部31と、座席140を着脱可能に保持する保持部材130と、を有している。
まず、図10および図11を参照して、保持部材130について説明する。図11に示すように、保持部材130は、底部131aおよび側壁131b,131c,131d,131eを有する接続部(収容部)131と、接続部131から第1リンク本体部31に沿って延び出す取り付け部132とを有する。図10に示すように、保持部材130は、取り付け部132において第1リンク本体部31に固定されている。保持部材130は、接続部131の内部空間が乳母車10の展開状態において上方に開放するように固定されている。接続部131の前方または後方を向く側壁131b,131dには、後述する座席40の接続部材143の突出部148と係合する係合穴133が設けられている。
次に、図8を参照して主フレーム部材について説明する。図8に示すように、主フレーム部材141は、全体として矩形の枠をなしている。主フレーム部材141は、全体として略U字状の2つのフレーム要素141a,141bと、2つのフレーム要素141a,141bを連結する一対の連結部材141cと、を有する。座席140において、乳幼児の足が配置されるようになる側には足側フレーム要素141aが配置され、乳幼児の頭部が配置されるようになる側には頭側フレーム要素141bが配置される。足側フレーム要素141aのU字の端部と頭側フレーム要素141bのU字の端部とは、対応する側に配置された連結部材141cによって連結される。一対の連結部材141cの間には、ガード部材128が設けられている。また、連結部材141cには、幌100の基部が接続される。接続部材143は、乳母車10の幅方向の外側から連結部材141cに接続している。
次に、図12Aを参照して、接続部材143について説明する。図12Aは、接続部材143を示している。図12Aに示すように、接続部材143は、主フレーム部材141の連結部材141cと接続する接続部(接続本体部)146と、接続部146から延び出す取り付け部147と、を有する。取り付け部147は、主フレーム部材141のガード部材128が設けられる側とは反対の側に延び出し、保持部材130の接続部131に受容される。取り付け部147は、保持部材130の接続部(収容部)131に対応した形状を有しており、側面147b,147c,147d,147eを有する。取り付け部147は、前後方向を向く側面147b,147dの一方147bに突出部148を有する。突出部148は、保持部材130の係合穴133に対応する位置に設けられており、係合穴133と係合する。これにより、接続部材143は、保持部材130に安定的に保持される。突出部148は、接続部146に設けられた操作装置149を操作することによって、取り付け部147の内部に収容される。これにより、係合穴133との係合を解除することができ、座席140を保持部材130から取り外すことができる。
図12Bおよび図12Cを参照して、接続部材143について、とりわけ突出部148および操作装置149について、さらに詳細に説明する。図12Bおよび図12Cは、接続部材143の内部を示す図である。図12Bに示すように、接続部材143は、突出部148および操作装置149を収容する収容部143aを有する。収容部143aは、接続部146および取り付け部147を構成する。収容部143aの接続部146をなす部分には、乳母車110の展開状態において前後方向の一側(側面147bの側)から上側を向く領域に、第1開口部143bが設けられている。また、収容部143aの、取り付け部147の側面147bをなす部分には、第2開口部143cが設けられている。
取り付け部147の内側面には、乳母車110の展開状態において前後方向に延びる突出部ガイド壁147gと、乳母車110の展開状態において上下方向に延びる作用部ガイド壁147hがと形成されている。
突出部148は、板状の部材である。突出部148は、取り付け部147内に、乳母車110の展開状態において前後方向に延びるよう、且つ、突出部ガイド壁147gに沿って移動可能なように配置されている。突出部148は、取り付け部147内に配置された突出部付勢手段148sによって、第2開口部143cに向けて付勢されている。このため、突出部148に何らの力も加えられていない場合、突出部148の第2開口部143c側の一端148aは、第2開口部143cを通じて取り付け部147の外に突出している。突出部148の他端148b(側面147d側の端部)には、乳母車110の幅方向外側に向けて突出し、操作装置149が作用する凸部148cが形成されている。凸部148cの第2開口部143cに対面する面は、操作装置149が作用する作用面148dをなす。作用面148dは、乳母車110の展開状態において、上方に向けて第2開口部143c側に傾斜する。
操作装置149は、操作レバー149aと、操作レバー149aの操作にともなって突出部148に作用する作用部149bと、を有する。操作レバー149aは、その中間部において、収容部143a内を乳母車110の幅方向に延びる軸部材149xに、回動可能に接続している。操作レバー149aの一端149cは、第1開口部143bを通じて、接続部146の外に露出している。操作レバー149aの他端149dには、乳母車110の幅方向外側に延びる凸部149eが設けられている。接続部146内には、操作レバー付勢手段149sが配置されている。操作レバー付勢手段149sは、操作レバー149aを、図12Bに示す姿勢に、具体的には乳母車110の展開状態において操作レバー149aの一端149cが他端149dよりも上方に位置するように、保持する。
作用部149bは、乳母車110の展開状態において概ね上下方向に延びている。作用部149bの上端149fには、乳母車110の幅方向に貫通する開口部149gが設けられている。開口部149gには、操作レバー149aの凸部149eが挿通されている。そして、作用部149bの上端149fは、操作レバー149aに対して揺動可能に接続している。作用部149bの下側半部は、作用部ガイド壁147hに沿って延びて、作用部ガイド壁147hに沿って移動する。作用部149bの下端149gには、突出部148の作用面148dに対応して傾斜する傾斜面149hが設けられている。傾斜面149hは、乳母車110の展開状態において、上方に向けて第2開口部143c側に傾斜する。
このような操作装置149および突出部148は、操作レバー149aに力が付与されていない場合は、操作レバー149aが操作レバー付勢手段149sによって図12Bに示す位置に維持され、これにより、作用部149bも図12Bに示す位置に維持される。この場合、作用部149bは突出部148に作用しないので、突出部148も、突出部付勢手段148sによって図12Bに示す位置に維持される。このため、突出部148の一端148aが第2開口部143cを通じて取り付け部147から突出する。一方、操作レバー149aに力が付与されて操作レバー149aが図12Bに示す位置から図12Cに示す位置に回動すると、操作レバー149aの他端149dに接続された作用部149bが上昇し、傾斜面149hが上昇する。これにより、突出部148の作用面148dが第2開口部143cから離れる方向に押され、突出部148の一端148aが取り付け部147内に引っ込む。言い換えると、乳母車110の展開状態において、操作レバー149aの回転運動は、作用部149bの上下方向直線運動に変換され、さらに、突出部148の前後方向直線運動に変換される。これにより、操作レバー149aを操作することで、接続部材143の突出部148と保持部材130の係合穴133との係合を解除することができる。
なお、座席140は、その前後方向を入れ替えても、保持部材130に接続可能である。したがって、図8では、座席140は、頭側フレーム要素141bがハンドル15の側に配置された状態で保持部材130に接続しているが、足側フレーム要素141aがハンドル15の側に配置された状態でも保持部材130に接続可能である。
ところで、上述のように、乳母車110の展開状態から折り畳み状態への変形において、ハンドル15が後脚24に接近しながら下方に下がる際、第1リンク本体部31は後方に傾倒する。この際、第1リンク本体部31に固定された保持部材130も共に後方に傾倒し、保持部材130に支持された座席140の主フレーム部材141も、後方に傾倒する。これにより、座席140(特には主フレーム部材141)が、後方に移動することになる。これにより、折り畳み状態においても、乳母車本体111が座席140を安定して支持することが可能となり、折り畳み状態の乳母車110を自立させることが可能となる。
以上のように、第2の実施の形態によれば、乳母車110は、ハンドル15と、前脚22と、後脚24と、第1リンク部材310と、第2リンク部材32と、第3リンク部材33と、を有する乳母車本体111と、乳母車本体111に支持される座席140と、を備えている。そして、第1リンク部材310は、座席140を着脱可能に保持する保持部材130を有する。
このような第2の実施の形態による乳母車110では、展開状態から折り畳み状態への変化において、ハンドル15が後脚24に接近しながら下方に下がることができる。これにより、乳母車110の折り畳み状態での寸法を前後方向および上下方向に小型化することができる。また、このようなハンドル15の動作にともなって、保持部材130を有する第1リンク部材310が後方に傾倒し、第1リンク部材310上に支持された座席140の構成部材を後方に移動させることができる。これにより、折り畳み状態においても乳母車本体111が座席を安定して支持することが可能となり、折り畳み状態の乳母車110を自立させることが可能となる。
<第3の実施の形態>
次に、図14〜図19を参照して、本発明の第3の実施の形態について説明する。図14〜図19を参照して説明する第3の実施の形態は、主として以下の点で第2の実施の形態と異なる。すなわち、座席240が、チャイルドシート250と、チャイルドシート250を乳母車本体111に着脱可能に接続するアダプタ260と、を含んでいる。しかしながら、その他の構成は、第2の実施の形態と同様に構成することができる。第3の実施の形態に関する以下の説明および以下の説明で用いる図面では、上述した第2の実施の形態と同様に構成され得る部分について、上述の第2の実施の形態における対応する部分に対して用いた符号と同一の符号を用いることとし、重複する説明を省略する。
図14は、乳母車210の全体構成を示す斜視図である。図15は、車両の座席200に取り付けられたチャイルドシート250を示す側面図である。図16は、保持部材130に保持されたアダプタ260と、アダプタ260に支持されたチャイルドシート250と、を示す側面図である。図17は、アダプタ260の全体構成を示す斜視図である。図18Aおよび図18Bは、接続部材263の内部を示す図である。図19は、図14に示す乳母車210の折り畳み状態を示す側面図である。
まず、図14および図15を参照して、チャイルドシート250について説明する。図15に示すように、チャイルドシート250は、車両、例えば自動車の座席200上に配置されて使用される。チャイルドシート250は、大人を対象として設計された座席(車両シート)200やシートベルト201を含む車両に、子供(乳児、幼児、児童等の年少者)を適切且つ安全に乗車させるための装置である。ここで説明するチャイルドシート250は、「後向き状態」にて、座席200に取り付けられるようになっている。「後向き状態」では、図15に示すように、チャイルドシート250に着座した子供が車の後方を向くようになる。
なおここで、シートベルト201とは、一方側(図示された例では右側)の肩から他方側(図示された例では左側)の腰へと延びる肩ベルト202と、一方側の腰から他方側の腰へと延びる腰ベルト203と、を有した、いわゆる三点式のシートベルトである。このシートベルト201は、一本のベルト状部材からなり、タング204を挿通している。タング204は、当該一本のベルト状部材を折り曲げて、シートベルト201を肩ベルト202と腰ベルト203とに区分けしている。また、座席200の他方側には、バックル205がさらに設けられている。タング204がバックル205に係止されることにより、座席200上に着座する人の身体がシートベルト201によって当該座席200に固定される。
本明細書中において、チャイルドシート250およびその構成要素に対して用いる「前」、「後」、「右」、「左」、「横」、「上」および「下」の用語は、特に指示がない場合、チャイルドシート250に着座した子供を基準とした「前」、「後」、「右」、「左」、「横」、「上」および「下」を、それぞれ意味する。チャイルドシート250およびその構成要素の「幅方向」とは、「左」および「右」を結ぶ方向、すなわち「横方向」のことである。チャイルドシート250およびその構成要素の「高さ方向」とは、「上下方向」のことである。さらに、チャイルドシート250およびその構成要素の「前後方向」とは、「前」および「後」を結ぶ方向であり、図示する例においては、車両および乳母車210の「前後方向」または「走行方向」にも一致する。
図14に示すように、チャイルドシート250は、子供が着座する或いは子供を収容する座席部252を含むチャイルドシート本体251を有している。図示しないが、座席部252には、クッション性を有するカバー材が装着され、また、チャイルドシート本体251には、子供用ベルトが取り付けられる。
座席部252は、子供が着座する或いは子供を収容する部位である。座席部252は、座部254及び背部255と、座部254及び背部255の両側方にそれぞれ位置する側部256と、を有している。座部254は、子供の臀部に下方から対面するようになる。背部255は、子供の背部に後方から対面するようになる。図14によく示されているように、背部255には、子供用ベルトが貫通する子供ベルト用穴257が形成されている。各側部256は、切欠258を有している。図15に示すように、切欠258は、シートベルト201を所定の経路に誘導する。図15に示すように、チャイルドシート250が車両の座席200に取り付けられる場合には、一方側から延び出した車両シートベルト201の肩ベルト202および腰ベルト203が、切欠258を通過する。そしてこの状態で、タング204がバックル205に留め付けられる。
座席部252の各側部256には、略U字状のハンドル253の端部が、揺動可能に接続されている。また、図15に示すように、座席部252の各側部256には、その前後方向の中央に、座席部252の幅方向外側に突出してアダプタ260と係合する係合凸部259が設けられている。係合凸部259は、図示しない操作装置を操作することによって各側部256の内側に引っ込むようになっている。これにより、チャイルドシート250とアダプタ260との係合(より具体的には上記係合凸部259と後述するアダプタ260の係合凹部264との係合)を解除することができ、チャイルドシート250を、アダプタ260から取り外すことができる。
次に、図16乃至図18Bを参照して、アダプタ260について説明する。アダプタ260は、チャイルドシート250と乳母車本体111とを、着脱可能に接続するものである。本明細書中において、アダプタ260およびその構成要素に対して用いる「前」、「後」、「横」、「上」、「下」、「前後方向」、および「上下方向」の用語は、特に指示がない場合、アダプタ260が取り付けられた展開状態にある乳母車本体111を操縦する操作者を基準とした「前」、「後」、「横」、「上」、「下」、「前後方向」、および「上下方向」を意味する。さらに詳しくは、アダプタ260の「前後方向」とは、図16における紙面の左右の方向であって、図17における紙面の左下と右上とを結ぶ方向に相当する。「前後方向」は、図示する例においては、乳母車210の「前後方向」または「走行方向」にも一致する。そして、特に指示がない限り、「前」とは、アダプタ260が取り付けられた乳母車本体111を操縦する操作者が向く側であり、図16における紙面の左側並びに図17における紙面の左下側が、アダプタ260の前側となる。一方、アダプタ260の「上下方向」とは前後方向に直交するとともに接地面(走行面)Sに直交する方向である。したがって、接地面が水平面である場合、「上下方向」とは垂直方向をさす。また、「幅方向」とは、横方向であって、「前後方向」および「上下方向」のいずれにも直交する方向である。
図17に示すように、アダプタ260は、一対の側方支持部261と、一対の側方支持部261を連結する連結部262と、各側方支持部261に幅方向外側から接続する一対の接続部材263と、を有する。アダプタ260がチャイルドシート250に取り付けられた状態において、側方支持部261は、チャイルドシート250の幅方向外側に、座席部252の側部256に対面して配置される。また、連結部262は、チャイルドシート250の下方に配置される。各側方支持部261の上記側部256に対面する側には係合凹部264が設けられている。係合凹部264は、アダプタ260がチャイルドシート250に取り付けられた状態において、チャイルドシート250の係合凸部259と係合する。
接続部材263は、側方支持部261と接続する接続部(接続本体部)266と、接続部266から下方に延び出す取り付け部267と、を有する。取り付け部267は、アダプタ260が展開状態の乳母車本体111に接続される際、保持部材130の接続部131に上方から収容される。取り付け部267は、保持部材130の接続部(収容部)131に対応した形状を有しており、側面267b,267c,267d,267eを有する。取り付け部267は、前方向を向く側面267bに突出部268を有する。突出部268は、保持部材130の係合穴133に対応する位置に設けられており、係合穴133と係合する。これにより、接続部材263は、保持部材130に安定的に保持される。突出部268は、接続部266に設けられた操作装置269を操作することによって、取り付け部267の内部に収容される。これにより、保持部材130の係合穴133との係合を解除することができ、アダプタ260を、したがってアダプタ260とチャイルドシート250とからなる座席240を、保持部材130から取り外すことができる。
図18Aおよび図18Bを参照して、接続部材263について、とりわけ突出部268および操作装置269について、さらに詳細に説明する。図18Aに示すように、接続部材263は、突出部268および操作装置269を収容する収容部263aを有する。収容部263aは、接続部266および取り付け部267を構成する。収容部263aの、接続部266をなす部分には、乳母車210の展開状態において上側を向く領域に、第1開口部263bが設けられている。また、収容部263aの、取り付け部267の側面267bをなす部分には、第2開口部263cが設けられている。
取り付け部267の内側面には、乳母車210の展開状態において前後方向に延びる突出部ガイド壁267gと、乳母車210の展開状態において上下方向に延びる作用部ガイド壁267hが形成されている。
突出部268は、板状の部材である。突出部268は、取り付け部267内に、乳母車210の展開状態において前後方向に延びるよう、且つ、突出部ガイド壁267gに沿って移動可能なように配置されている。突出部268は、取り付け部267内に配置された突出部付勢手段268sによって、第2開口部263cに向けて付勢されている。このため、突出部268に何らの力も加えられていない場合、突出部268の第2開口部263c側の一端268aは、第2開口部263cを通じて取り付け部267の外に突出している。突出部268の他端268b(側面267d側の端部)には、幅方向外側に向けて突出し、操作装置269が作用する凸部268cが形成されている。凸部268cの第2開口部263cに対面する面は、操作装置269が作用する作用面268dをなす。作用面268dは、上方に向けて第2開口部263cとは反対側に傾斜する。
操作装置269は、乳母車210の展開状態において概ね上下方向に延びる作用部269aと、作用部269aを上方に付勢する作用部付勢手段269sと、を有する。作用部269aが作用部付勢手段269sによって付勢されていることにより、作用部269aに何らの力も加えられていない状態において、作用部269aの上端269bは、第1開口部263bを通じて接続部266の外側に突出する。この上端269bは、操作装置269を操作する操作ボタン269bをなす。作用部269aの下側半部は、作用部ガイド壁267hに沿って延びて、作用部ガイド壁267hに沿って移動するようになっている。作用部269aの下端269cには、突出部268の作用面268dに対応して傾斜する傾斜面269hが設けられている。傾斜面269hは、上方に向けて第2開口部263cとは反対側に傾斜する。
このような操作装置269および突出部268は、操作ボタン269bに力が付与されていない場合は、作用部269aが作用部付勢手段269sによって図18Aに示す位置に維持される。この場合、作用部269aは突出部268に作用しないので、突出部268も、突出部付勢手段268sによって図18Aに示す位置に維持される。このため、突出部268の一端268aが第2開口部263cを通じて取り付け部267から突出する。一方、操作ボタン269bに力が付与されて作用部269aが図18Aに示す位置から図18Bに示す位置に押し下げられると、傾斜面269hが下降する。これにより、突出部268の作用面268dが第2開口部263cから離れる方向に押され、突出部268の一端268aが取り付け部267内に引っ込む。言い換えると、作用部269aの上下方向直線運動は、突出部268の前後方向直線運動に変換される。これにより、作用部269aの操作ボタン269bを操作することで、接続部材263の突出部268と保持部材130の係合穴133との係合を解除することができる。
ところで、上述のように、乳母車210の展開状態から折り畳み状態への変形において、ハンドル15が後脚24に接近しながら下方に下がる際、第1リンク本体部31は後方に傾倒する。この際、第1リンク本体部31に固定された保持部材130も共に後方に傾倒し、保持部材130に支持された座席240のアダプタ260がチャイルドシート250と共に、後方に傾倒する。この結果、図19に示すように、座席240が、後方に移動することになる。これにより、折り畳み状態においても、乳母車本体111が座席240を安定して支持することが可能となり、折り畳み状態の乳母車210を自立させることが可能となる。
なお、以上において上述した実施の形態に対する幾つかの変形例を説明してきたが、当然に、複数の変形例を適宜組み合わせて適用することも可能である。