(1)概要
本実施形態に係る運動補助システム30を説明するにあたり、まず、運動補助システム30と連動する脳波測定システム10の概要について、図1を用いて説明する。脳波測定システム10は、対象者5の脳波を測定するためのシステムであって、対象者5の頭部52の一部である測定箇所に対応する位置に配置される電極部11から、脳波情報を取得する。本開示でいう「脳波」(Electroencephalogram:EEG)とは、大脳の神経細胞(群)の発する電気信号(活動電位)を体外に導出し、記録した波形を意味する。本開示においては、特に断りが無い限り、大脳皮質の多数のニューロン群(神経網)の総括的な活動電位を対象として、これを体表に装着した電極部11を用いて記録する頭皮上脳波を「脳波」という。
脳波測定システム10は、電極部11を有するヘッドセット1と、情報処理装置2と、を備えている。ヘッドセット1は、対象者5の頭部52の表面(頭皮)に電極部11を接触させた状態で、対象者5の頭部52に装着される。本開示では、電極部11は、頭部52の表面に塗布されたペースト(電極糊)上に載せられることで、頭部52の表面に接触する。このとき、電極部11は、毛髪をかき分けることにより、毛髪を介さずに頭部52の表面に接触する。もちろん、電極部11は、ペーストを塗布することなく、頭部52の表面に直接、接触してもよい。つまり、本開示では、「電極部11を頭部52の表面に接触させる」とは、電極部11を直接、頭部52の表面に接触させることの他、中間物を介して電極部11を間接的に頭部52の表面に接触させることも含む。中間物は、ペーストに限定されず、例えば導電性を有するゲルであってもよい。
ヘッドセット1は、電極部11にて対象者5の脳の活動電位を測定することで対象者5の脳波を測定し、脳波を表す脳波情報を生成する。ヘッドセット1は、例えば、無線通信により、脳波情報を情報処理装置2に送信する。
情報処理装置2は、例えば、パーソナルコンピュータ等のコンピュータシステムを主構成とする。情報処理装置2は、例えば、無線通信により、ヘッドセット1からの脳波情報を受信し、ヘッドセット1から取得した脳波情報に対して、種々の処理を施したり、脳波情報を表示したりする。本実施形態では、対象者5が随意運動(voluntary movement)を行う際に生じ得る特徴的な変化を含む脳波の検出、及びキャリブレーション(calibration)処理等は、情報処理装置2にて行われる。本開示でいう「キャリブレーション処理」は、脳波情報の解析、つまり検出対象となる脳波の検出に用いる各種のパラメータを決定するための処理である。
次に、運動補助システム30について図1〜図3Bを用いて説明する。なお、図面に示す「D1」及び「D2」の矢印は、いずれも説明のために表記しているに過ぎず、実体を伴わない。運動補助システム30は、脳波測定システム10で取得された対象者5の脳波情報に基づいて、対象者5の運動を補助するシステムである。運動補助システム30は、可動部311及びモータ312を有する運動補助装置3と、制御装置4と、を備えている。
可動部311は、対象者5の身体の一部を移動させる向きに動く。本実施形態では、対象者5の身体の一部として、第1指(親指)54を除いた4本の手指(第2指〜第5指)53(以下、単に「手指53」ともいう)が可動部311に装着されている。
モータ312は、制御装置4により制御されることで、可動部311に駆動力を与え、可動部311を移動させる。本実施形態では、モータ312は、滑車311C(図4参照)及びパイプ311D等を含む伝達機構314を介して、駆動力を可動部311に伝える。
制御装置4は、脳波測定システム10で取得された対象者5の脳波情報に基づいて、モータ312を制御することにより、可動部311を目標位置(目標角度α1)まで第1向きD1に移動させる。つまり、制御装置4は、モータ312に電流を流してモータ312の軸部312Aを回転させることで、伝達機構314を介して軸部312Aに連結された可動部311を、目標位置(目標角度α1)まで第1向きD1に移動させる。
本開示でいう「第1向き」は、対象者5の身体の一部が初期位置から目標位置に向かう向きである。本実施形態では、第1向きD1は、対象者5の手を閉じた状態から開かせるように、手指53が装着された可動部311を移動させる向きである。言い換えれば、第1向きD1は、手指53が第1指54から離れる向きである。また、本実施形態では、目標位置(目標角度α1)は、対象者5の手がペグ101をつかんだ状態における手指53の位置を基準として、手指53の伸展により対象者5の手がペグ101から離れて十分に開いた状態における手指53の位置(角度)である。目標角度α1は、例えば80度である。
そして、制御装置4は、可動部311が目標位置(目標角度α1)まで移動しなかった場合(図3A参照)、可動部311を第1向きD1とは逆の向きである第2向きD2に移動させるようにモータ312を制御する(図3B参照)。本開示でいう「第2向き」は、対象者5の身体の一部が目標位置から初期位置に向かう向きである。本実施形態では、第2向きD2は、対象者5の手を開いた状態から閉じさせるように、手指53が装着された可動部311を移動させる向きである。言い換えれば、第2向きD2は、手指53が第1指54に近付く向きである。
本実施形態では、制御装置4は、何らかの理由により可動部311が目標位置(目標角度α1)まで移動できない場合に、可動部311を第1向きD1に移動させ続けようとするのではなく、逆向きである第2向きD2に移動させる。つまり、本実施形態では、対象者5の身体の一部(ここでは、手指53)の運動を補助する際に、補助部位が目標位置に到達しない状態でモータ312が動作し続けるのを防ぎ易い、という利点がある。
(2)詳細
以下、本実施形態の運動補助システム30、及びリハビリテーション支援システム100について詳細に説明する。
(2.1)リハビリテーション支援システム
リハビリテーション支援システム100は、図1及び図2に示すように、脳波測定システム10と、運動補助システム30と、を備えている。脳波測定システム10は、既に述べたように、ヘッドセット1と、情報処理装置2と、を備えており、対象者5の頭部52の一部に配置される電極部11にて採取される脳波を表す脳波情報を取得する。運動補助システム30は、対象者5の身体の一部に装着される運動補助装置3と、運動補助装置3を制御する制御装置4と、を備えている。制御装置4は、脳波測定システム10で取得された脳波情報に基づいて、運動補助装置3のモータ312を制御する。運動補助システム30については、後述する「(2.2)運動補助システム」にて詳細に説明する。
リハビリテーション支援システム100は、上述の脳波測定システム10を用いて、対象者5のリハビリテーションを支援するためのシステムである。リハビリテーション支援システム100は、例えば、脳卒中等の脳疾患又は事故等によって、身体の一部に運動麻痺又は運動機能の低下等が生じた人を対象者5として、運動療法によるリハビリテーションを支援する。このような対象者5においては、対象者5が自己の意思又は意図に基づいて行う運動である随意運動が、不能又はその機能の低下により満足にできないことがある。本開示でいう「運動療法」は、対象者5の身体のうち、このような随意運動の不能部位又は機能の低下が生じた部位(以下、「障害部位」という)を運動させることにより、障害部位について随意運動の機能の回復を図る方法を意味する。
本実施形態では、対象者5の左手指による把持動作及び伸展動作のリハビリテーションに、リハビリテーション支援システム100が用いられる場合を例示する。本開示でいう「把持動作」は、物をつかむ動作のことを意味する。また、本開示でいう「伸展動作」は、第1指(親指)54を除く4本の手指53(第2指〜第5指)の伸展により、手を開く動作、つまり把持動作によりつかんでいる状態の「物」を放す動作のことを意味する。つまり、この対象者5においては左手指が障害部位であって、リハビリテーション支援システム100は、左手指による把持動作及び伸展動作という随意運動についてのリハビリテーションに用いられる。ただし、実際には、リハビリテーション支援システム100は、対象者5の把持動作を直接的に補助するのではなく、対象者5の手指の伸展動作を補助することで、間接的に把持動作のリハビリテーションを行う。
そのため、リハビリテーション支援システム100では、対象者5が随意運動として伸展動作を行おうとする際に、対象者5の左手に装着された運動補助装置3が、対象者5の左の手指53に機械的な刺激と電気的な刺激との少なくとも一方を加えて、随意運動を補助する。本実施形態では、対象者5が、ペグ101(図2参照)を左手指でつかんだ姿勢から、手指53の伸展動作によりペグ101を放す際の随意運動(伸展動作)を、リハビリテーション支援システム100にて補助する場合について説明する。ただし、この例に限らず、リハビリテーション支援システム100は、例えば、対象者5の右手指のリハビリテーションに用いられてもよい。
対象者5が随意運動を行おうとする際には、身体の随意運動を行う部位に対応する運動野にて、特徴的な変化を含む脳波が発生し得る。そこで、脳波測定システム10は、リハビリテーションの対象である障害部位に対応する運動野付近から採取される脳波を測定対象とする。ここで、左手指に対応する運動野は対象者5の右脳にあり、右手指に対応する運動野は対象者5の左脳にある。そのため、本実施形態のように対象者5の左の手指53をリハビリテーションの対象とする場合には、対象者5の頭部52の右側に接触させた電極部11にて取得される脳波が、脳波測定システム10での測定対象となる。すなわち、電極部11は、対象者5の頭部52の右側表面の一部からなる測定箇所上に配置される。一例として、国際10−20法において電極記号「C4」で表される位置に電極部11が配置される。対象者5の右の手指をリハビリテーションの対象とする場合には、対象者5の頭部52の左側表面の一部からなる測定箇所、一例として、国際10−20法において電極記号「C3」で表される位置に電極部11が配置される。
本実施形態では、例えば、理学療法士又は作業療法士等の医療スタッフが、対象者5の手指53を持って対象者5の随意運動を補助する場合と同様に、リハビリテーション支援システム100にて、随意運動の補助が可能になる。そのため、リハビリテーション支援システム100によれば、医療スタッフが補助する場合と同様に、対象者5が単独で随意運動を行う場合に比べて効果的な、運動療法によるリハビリテーションを実現可能となる。
ところで、上述のようなリハビリテーションを支援するためには、リハビリテーション支援システム100は、対象者5が随意運動を行おうとする場合に、運動補助システム30にて対象者5の随意運動を補助することが望ましい。リハビリテーション支援システム100は、脳波測定システム10にて測定された対象者5の脳波(脳波情報)に、運動補助システム30を連動させることにより、対象者5の随意運動に合わせた運動補助システム30での随意運動の補助を実現する。言い換えれば、リハビリテーション支援システム100は、脳活動(脳波)を利用して機械(運動補助システム30)を操作する、ブレイン・マシン・インタフェース(Brain-machine Interface:BMI)の技術を利用して、運動療法によるリハビリテーションを実現する。
対象者5が随意運動を行う際には(つまり、対象者5が随意運動を行う過程で)、脳波に特徴的な変化が生じ得る。つまり、対象者5が随意運動を行おうと企図(想起)した際には、随意運動の対象となる部位に対応する脳領域の活性化が起き得る。このような脳領域の例としては、体性感覚運動皮質が挙げられる。このような脳領域の活性化が起こるタイミングに合わせて、運動補助装置3にて対象者5の随意運動を補助すると、より効果的なリハビリテーションが期待できる。このような脳領域の活性化は、脳波の特徴的な変化として検出され得る。そのため、リハビリテーション支援システム100は、対象者5の脳波にこの特徴的な変化が発生するタイミングに合わせて、運動補助システム30にて対象者5の随意運動の補助を実行する。このような特徴的な変化は、随意運動が実際に行われなくても、対象者5が随意運動を想起(image)した際(つまり運動企図中)に生じ得る。つまり、このような脳波の特徴的な変化は、随意運動が実際に行われなくても、対象者5が随意運動を行おうと企図(想起)したことによって対応する脳領域が活性化すれば、生じ得る。そのため、随意運動が不能な状態の対象者5についても、リハビリテーション支援システム100による随意運動の補助が可能である。
本実施形態の脳波測定システム10は、事象関連脱同期(Event-Related Desynchronization:ERD)が生じることで脳波に生じる特定の周波数帯域の強度変化を、特徴的な変化として検出する。本開示でいう「事象関連脱同期」は、随意運動時(随意運動の想起時を含む)に運動野付近で測定される脳波において、特定の周波数帯域のパワーが減少する現象を意味する。本開示でいう、「随意運動時」は、対象者5が随意運動の企図(想起)をしてから随意運動が成功又は失敗するまでの過程を意味する。「事象関連脱同期」は、この随意運動時に、随意運動の企図(想起)をトリガとして、生じ得る。事象関連脱同期によりパワーが減少する周波数帯域は、主としてα波(一例として8Hz以上13Hz未満の周波数帯域)及びβ波(一例として13Hz以上30Hz未満の周波数帯域)である。
このような構成のリハビリテーション支援システム100によれば、医療スタッフの負担を軽減しながらも、対象者5においては、効果的な、運動療法によるリハビリテーションを実現可能となる。また、リハビリテーション支援システム100によれば、例えば、対象者5の随意運動の補助を行う医療スタッフの熟練度等の人的要因によって随意運動の補助のタイミングがばらつくことがなく、リハビリテーションの効果のばらつきが低減される。特に、リハビリテーション支援システム100では、脳波に特徴的な変化が生じたタイミング(つまり、脳領域が実際に活性化したタイミング)で、対象者5の随意運動を補助することができる。このように、リハビリテーション支援システム100では、脳活動のタイミングに合わせた訓練が可能となるから、正しい脳活動の学習と及び定着への貢献が期待できる。特に、脳波に特徴的な変化が起きたかどうかは、対象者5及び医療スタッフだけでは判別が困難である。したがって、リハビリテーション支援システム100を用いることで、対象者5又は医療スタッフだけでは実現が難しい効果的なリハビリテーションが可能となる。
本実施形態では、対象者5がリハビリテーション支援システム100を利用する際に、理学療法士又は作業療法士等の医療スタッフが対象者5に付き添い、リハビリテーション支援システム100の操作等については医療スタッフが行うことと仮定する。ただし、リハビリテーション支援システム100を利用する対象者5に医療スタッフが付き添うことは必須ではなく、例えば、リハビリテーション支援システム100の操作等を対象者5、又は対象者5の家族等が行ってもよい。
(2.2)運動補助システム
運動補助システム30において、運動補助装置3は、対象者5に機械的な刺激と電気的な刺激との少なくとも一方を加えて、対象者5の運動を補助する装置である。本実施形態では、対象者5の左手指のリハビリテーションにリハビリテーション支援システム100が用いられるので、図2に示すように、運動補助装置3は、対象者5の左手に装着される。
運動補助装置3は、図1に示すように、手指駆動装置31と、電気刺激発生装置32と、を有している。
手指駆動装置31は、第1指(親指)54を除く4本の手指53(第2指〜第5指)を保持し、これら4本の手指53に機械的な刺激(外力)を与えることによって、4本の手指53を動かす装置である。手指駆動装置31は、例えば、動力源としてのモータ312を含み、動力源で発生した力を4本の手指53に伝えることによって、4本の手指53を動かす。手指駆動装置31では、保持した4本の手指53を、第1指54から離れる向きに移動(つまり伸展動作)させる「開動作」と、第1指54に近づく向きに移動(つまり把持動作)させる「閉動作」と、の2種類の動作が可能である。手指駆動装置31の開動作により対象者5の伸展動作が補助され、手指駆動装置31の閉動作により対象者5の把持動作が補助される。
手指駆動装置31は、図1に示すように、可動部311と、モータ312と、を備えている。可動部311及びモータ312は、図4及び図5に示すように、いずれもフレーム313に設けられている。フレーム313は、基部313Aと、第1突出部313Bと、第2突出部313Cと、で構成されている。基部313Aは、第3方向に長い板状の部材であって、対象者5の腕(ここでは、左腕)の側面に装着される。本開示でいう「前後方向」は、フレーム313が対象者5の腕に装着された状態において、腕の長手方向に平行な方向であり、手指53側が「前」、肩側が「後」である。なお、図面に示す「前」及び「後」の矢印は、いずれも説明のために表記しているに過ぎず、実体を伴わない。
基部313Aの前端には、左右方向(ここでは、左向き)に突出する第1突出部313Bが一体に形成されている。本開示でいう「左右方向」は、前後方向に交差(直交)する方向であって、フレーム313が対象者5の腕に装着された状態において、4本の手指53が並ぶ方向に平行な方向である。また、「左」は、第1指54から見て第2指〜第5指側であり、「右」はその逆である。なお、図面に示す「左」及び「右」の矢印は、いずれも説明のために表記しているに過ぎず、実体を伴わない。第1突出部313Bは、平面視で三角形状の板状の部材であって、フレーム313が対象者5の腕に装着された状態において、腕の下方に位置する。第1突出部313Bは、厚さ方向に貫通する平面視で円形状の開口部313Dを有している。開口部313Dは、対象者5の第1指54が通る程度の寸法を有している。第1突出部313Bは、開口部313Dに対象者5の第1指54が通された状態において、対象者5の母指球を支持する。
基部313Aの後端には、左右方向(ここでは、左向き)に突出する第2突出部313Cが一体に形成されている。第2突出部313Cは、平面視で矩形状の板状の部材であって、フレーム313が対象者5の腕に装着された状態において、腕の上方に位置する。第2突出部313Cには、直方体状のケース315が取り付けられている。ケース315には、第1面(右面)から軸部312Aを露出させた状態で、モータ312が収納されている。また、ケース315の第1面と対向する第2面(左面)からは、一対のコネクタ316が露出している。一対のコネクタ316のうちの一方と制御装置4との間を電源ケーブルで接続することにより、制御装置4からモータ312に動作用電力が供給される。また、後述する駆動信号は、この電源ケーブルを介して制御装置4からモータ312へ送信される。
可動部311は、対象者5の身体の一部(ここでは、手指53)に装着される。可動部311は、図4に示すように、指載せ部311Aと、アーム311Bと、を有している。指載せ部311Aは、第4方向に長い棒状の部材であって、対象者5の第1指(親指)54を除いた4本の手指53(第2指〜第5指)を載せることができる程度の寸法を有している。つまり、指載せ部311Aには、対象者5の複数の手指53の少なくとも一部(ここでは、第2指〜第5指)が載せられる。本実施形態では、対象者5の第1指54及びその付け根部分を開口部313Dに通し、かつ、手指53を指載せ部311Aに載せた状態で、例えばバンドを手指53及び指載せ部311Aに巻き付けることで、手指53が指載せ部311Aに対して拘束される。これにより、手指53が可動部311に装着される。
アーム311Bは、前後方向に長い板状の部材である。アーム311Bの前端には、指載せ部311Aの一端(右端)が取り付けられている。アーム311Bの後端は、基部313Aの前端に対して、左右方向に沿った軸X1を中心として回転可能に取り付けられている。具体的には、アーム311Bは、軸X1を中心として、長手方向が基部313Aの長手方向と一致する第1位置(図6B参照)と、長手方向が基部313Aの長手方向に対して所定の角度(例えば、80度)をなす第2位置(図6A参照)との間で回転可能である。言い換えれば、アーム311B、及びアーム311Bに取り付けられた指載せ部311A(つまり、可動部311)は、軸X1を中心として、第1位置と第2位置との間で回転可能である。
アーム311Bの後端には、滑車311Cが設けられている。この滑車311Cと、モータ312の軸部312Aに設けられた滑車とには、パイプ311Dが巻き付けられている。つまり、アーム311Bは、滑車311C、パイプ311D、及び軸部312Aに設けられた滑車を含む伝達機構314を介して、モータ312の軸部312Aに連結されている。したがって、アーム311Bは、モータ312が動作して軸部312Aが回転することにより、軸部312Aの回転に伴って第1位置と第2位置との間で回転する。本実施形態では、軸部312Aが右方から見て反時計回りに回転するときには、アーム311Bは、第2位置から第1位置に向かう向き(第1向きD1)に回転する。また、軸部312Aが右方から見て時計回りに回転するときには、アーム311Bは、第1位置から第2位置に向かう向き(第2向きD2)に回転する。
モータ312は、サーボモータであって、制御装置4から動作用電力が供給されることにより、動作する。つまり、モータ312の軸部312Aは、制御装置4から動作用電力が供給されて電流が流れている間、回転する。本実施形態では、モータ312の軸部312Aは、電流の向きに応じて、右方から見て時計回り又は反時計回りに回転可能である。
モータ312は、減速機、角度センサ、及び角度制御用の回路を有しており、角度センサにて検知された軸部312Aの回転角度と、目標角度α1との差分が零となるように制御される。本実施形態では、モータ312は、制御装置4の駆動回路41から与えられる駆動信号により制御される。つまり、モータ312の軸部312Aは、角度センサにて検知された軸部312Aの回転角度が、駆動信号により指令される目標角度α1に一致するまで、駆動信号により指定された回転速度にて回転する。言い換えれば、モータ312は、角度センサにて検知された軸部312Aの回転角度が、目標角度α1に一致するまでは、動作し続ける。駆動信号は、例えばPWM(Pulse Width Modulation)信号である。
電気刺激発生装置32は、対象者5の手指53を動かすための部位に、電気的な刺激を与える装置である。ここで、対象者5の手指53を動かすための部位は、対象者5の手指53の筋肉と神経との少なくとも一方に対応する部位を含む。例えば、対象者5の手指53を動かすための部位は、対象者5の腕の一部である。電気刺激発生装置32は、例えば、対象者5の身体(例えば腕)に貼り付けられるパッドを含む。電気刺激発生装置32は、パッドから対象者5の身体に電気的な刺激(電流)を与えることによって、手指53を動かすための部位に刺激を与える。
制御装置4は、脳波測定システム10にて取得された脳波情報に基づいて、運動補助装置3を制御する。言い換えれば、制御装置4は、ヘッドセット1の電極部11にて採取された対象者5の脳波に応じて、運動補助装置3を制御する。本実施形態では、制御装置4は、脳波測定システム10の情報処理装置2、及び運動補助装置3に対して電気的に接続されている。制御装置4には、運動補助装置3及び制御装置4の動作用電力を供給するための電源ケーブルが接続されている。制御装置4は、運動補助装置3の手指駆動装置31を駆動するための駆動回路41と、電気刺激発生装置32を駆動するための発振回路42と、モータ312に流れる電流を検知する電流検知部43と、を有している。情報処理装置2は、対象者5が随意運動を行おうと企図した際に生じ得る特徴的な変化を含む脳波を検出すると、運動補助装置3を制御するための制御信号を出力する。制御装置4は、例えば、有線通信により、情報処理装置2から制御信号を受信する。
制御装置4は、情報処理装置2から第1制御信号を受信すると、駆動回路41にて運動補助装置3の手指駆動装置31を駆動し、手指駆動装置31にて「開動作」が行われるように運動補助装置3を制御する。つまり、制御装置4は、第1制御信号を受信すると、可動部311を第1向きD1に移動させるための第1駆動信号をモータ312へ送信する。これにより、モータ312に電流が流れ、軸部312Aが右方から見て反時計回りに回転する。すると、伝達機構314を介してモータ312の軸部312Aに連結された可動部311が、第1向きD1に移動する。
また、制御装置4は、情報処理装置2から第2制御信号を受信すると、駆動回路41にて運動補助装置3の手指駆動装置31を駆動し、手指駆動装置31にて「閉動作」が行われるように運動補助装置3を制御する。つまり、制御装置4は、第2制御信号を受信すると、可動部311を第2向きD2に移動させるための第2駆動信号をモータ312へ送信する。これにより、モータ312に「開動作」のときとは逆向きの電流が流れ、軸部312Aが右方から見て時計回りに回転する。すると、伝達機構314を介してモータ312の軸部312Aに連結された可動部311が、第2向きD2に移動する。
また、制御装置4は、情報処理装置2から第3制御信号を受信すると、発振回路42にて運動補助装置3の電気刺激発生装置32を駆動し、対象者5の身体に電気的な刺激が与えられるように運動補助装置3を制御する。
このように、制御装置4は、脳波測定システム10から出力される制御信号に基づいて、運動補助装置3を制御することによって、脳波測定システム10にて取得された脳波情報に基づいて運動補助装置3を制御することが可能である。また、制御装置4は、制御装置4に備えられた操作スイッチの操作に応じて、手指駆動装置31にて「開動作」及び「閉動作」が行われるように運動補助装置3を制御することもできる。
電流検知部43は、制御装置4から電源ケーブルを介してモータ312へ供給される電流を検知することにより、モータ312に流れる電流を検知する。電流検知部43は、例えば電流検知用の抵抗を有しており、この抵抗に電流が流れることで生じる電圧降下を検知することで、モータ312に流れる電流を検知する。もちろん、電流検知部43は、モータ312に流れる電流を検知する構成であれば、他の構成であってもよい。
(3)動作
以下、本実施形態の運動補助システム30の動作について説明する。以下では、図6Aに示すように、可動部311が第2位置にある(つまり、対象者5の手がペグ101をつかんだ状態にある)ときに、対象者5が随意運動(随意運動の想起を含む)として「開動作」を試みた場合について説明する。
対象者5が「開動作」を試みることにより、脳波測定システム10にて特徴的な変化を含む脳波が検出される。そして、脳波測定システム10の情報処理装置2は、この脳波に応じて、制御信号(ここでは、第1制御信号)を制御装置4へ出力する。制御装置4の駆動回路41は、制御信号を受信すると、第1駆動信号をモータ312に出力する。また、制御装置4は、第1駆動信号を出力する時点を開始時点として、推定時間T1の計時を開始する。本開示でいう「推定時間」は、モータ312の動作の開始時点(ここでは、第1駆動信号の出力時点)から可動部311が目標位置(目標角度α1)に到達するまでに要すると推定される時間である。
推定時間T1は、第1駆動信号に応じて変化する。つまり、第1駆動信号にて指令される軸部312Aの回転速度と、目標角度α1とに応じて、推定時間T1は変化する。目標角度α1が同じであっても、回転速度が遅ければ推定時間T1は長くなり、回転速度が速ければ推定時間T1は短くなる。例えば、可動部311が目標角度α1に到達するのに要する時間が7秒強であれば、推定時間T1は8.0秒となる。また、例えば、可動部311が目標角度α1に到達するのに要する時間が3秒強であれば、推定時間T1は4.0秒となる。
モータ312は、第1駆動信号を受信すると、軸部312Aを右方から見て反時計回りに回転させる。これにより、伝達機構314を介して軸部312Aに連結された可動部311は、第2位置から第1位置に向かって、つまり第1向きD1に移動し始める。その後、可動部311が支障無く動作すれば、図6Bに示すように、可動部311は、推定時間T1を経過した時点で第2位置に到達する。つまり、対象者5の手がペグ101から離れて十分に開いた状態となる。このとき、モータ312では、角度センサにて検知された軸部312Aの回転角度と、目標角度α1との差分が零となる。したがって、モータ312は、推定時間T1を経過した時点で停止する。
一方、可動部311の動作に支障がある場合、図3Aに示すように、可動部311は、推定時間T1を経過した時点で第2位置に到達しない、つまり目標角度α1に到達しない可能性がある。図3Aに示す例では、可動部311は、目標角度α1よりも小さい角度θ1の位置で停止している。例えば、目標角度α1まで手指53を伸展させることができない程度に手指53の柔軟性が低い対象者5が運動補助システム30を用いる場合、手指53を最大限に伸展させた状態でも、可動部311が目標角度α1に到達しない可能性がある。また、例えば、可動部311又は伝達機構314の一部に異物が挟まる等して可動部311の移動が阻害され、可動部311が目標角度α1に到達しない可能性がある。
上記の場合、モータ312では、角度センサにて検知された軸部312Aの回転角度と、目標角度α1との差分が零に達しない。したがって、モータ312は、推定時間T1を経過した後も、動作し続ける。言い換えれば、運動補助システム30の補助部位(ここでは、手指53)が目標位置(目標角度α1)に到達しない状態でモータ312が動作し続ける。この場合、例えば、対象者5の手指53が最大限に伸展した状態で更に可動部311が移動しようとするため、手指53に過大な負荷が掛かり続ける可能性がある。また、この場合、例えば、可動部311の移動が阻害された状態でモータ312が動作し続けるため、モータ312に定格外の負荷が掛かり続ける可能性がある。
そこで、本実施形態では、制御装置4は、可動部311が目標位置(目標角度α1)まで移動しなかった場合、第2駆動信号をモータ312に出力する。モータ312は、第2駆動信号を受信すると、軸部312Aを右方から見て時計回りに回転させる。これにより、伝達機構314を介して軸部312Aに連結された可動部311は、図3Bに示すように、第2位置に向かって、つまり第2向きD2に移動する。図3Bに示す例では、可動部311は、角度θ1よりも小さい角度θ2の位置まで移動する。
本実施形態では、制御装置4は、モータ312に流れる電流に基づいて、可動部311が目標位置(目標角度α1)まで到達しているか否かを判定している。具体的には、制御装置4は、図7A及び図7Bに示すように、モータ312の動作の開始時点である時刻t0から推定時間T1の計時を開始する。そして、制御装置4は、推定時間T1の終了時点である時刻t1後の時刻t2から時刻t3までの間、電流検知部43の検知結果を参照する。
可動部311が支障無く動作した場合、可動部311は、推定時間T1を経過した時点で目標位置(目標角度α1)に到達するので、時刻t1以降ではモータ312の動作は停止し、モータ312に電流は流れない(図7A参照)。このため、時刻t2から時刻t3までの間で電流検知部43にて電流が検知されないので、制御装置4は、可動部311が目標位置まで到達したと判定し、モータ312に対する制御を行わない。
一方、可動部311の動作に支障がある場合、可動部311は、推定時間T1を経過した時点で目標位置(目標角度α1)に到達しないので、時刻t1以降においてもモータ312が動作し続け、モータ312に電流が流れ続ける(図7B参照)。このため、時刻t2から時刻t3までの間で電流検知部43にて電流が検知されるので、制御装置4は、可動部311が目標位置まで到達していないと判定し、第2駆動信号をモータ312に出力する。つまり、制御装置4は、モータ312の動作の開始時点から推定時間T1が経過した後に、電流検知部43により電流が検知されると、可動部311を第2向きD2に移動させるようにモータ312を制御する。
以下、制御装置4の具体的な動作について図8を用いて説明する。まず、制御装置4は、脳波測定システム10からの制御信号(ここでは、第1制御信号)を受信すると、第1駆動信号をモータ312に出力することにより、可動部311の第1向きD1での駆動を開始する(ステップS1)。その後、制御装置4は、推定時間T1を計時することにより、推定時間T1が経過するまで第1駆動信号を出力し続ける(ステップS2:No)。推定時間T1が経過すると(ステップS2:Yes)、制御装置4は、電流検知部43の検知結果の参照を開始する(ステップS3)。このとき、制御装置4は、変数「N」を零とする(ステップS4)。
制御装置4は、電流が検知されず(ステップS5:Yes)、変数「N」が定数「P」に達していない場合(ステップS7:Yes)、変数「N」の値をインクリメントし(ステップS8)、一定時間(例えば、数ミリ秒)待機する(ステップS9)。その後、制御装置4は、再び電流検知部43の検知結果を参照する。制御装置4は、変数「N」が定数「P」に達するまで(ステップS7:No)、又は電流検知部43にて電流が検知されるまで(ステップS5:No)、上記の動作を繰り返す。
変数「N」が定数「P」に達した場合(ステップS7:No)、制御装置4は、モータ312に対して制御を行わない。一方、変数「N」が定数「P」に達する前に電流検知部43にて電流が検知されると(ステップS5:No)、制御装置4は、第2駆動信号をモータ312に出力することにより、可動部311を第2向きD2で駆動する(ステップS6)。
上述のように、本実施形態では、制御装置4は、何らかの理由により可動部311が目標位置(目標角度α1)まで移動できない場合に、可動部311を第1向きD1に移動させ続けようとするのではなく、逆向きである第2向きD2に移動させる。つまり、本実施形態では、対象者5の身体の一部(ここでは、手指53)の運動を補助する際に、補助部位が目標位置に到達しない状態でモータ312が動作し続けるのを防ぎ易い、という利点がある。このため、本実施形態では、可動部311を第1向きD1に移動させ続けようとする力が、可動部311に装着された対象者5の身体の一部(ここでは、手指53)に掛かり難い。したがって、本実施形態では、対象者5の身体の一部(ここでは、手指53)の運動を補助する際に、対象者5の身体の一部に過大な負荷が掛かり難い、という利点がある。また、本実施形態では、可動部311を第1向きD1に移動させ続けようとしないことから、モータ312に定格外の負荷が掛かり続けるのを防ぎ易い、という利点がある。
(4)変形例
上述の実施形態は、本開示の様々な実施形態の一つに過ぎない。上述の実施形態は、本開示の目的を達成できれば、設計等に応じて種々の変更が可能である。以下、上述の実施形態の変形例を列挙する。以下に説明する変形例は、適宜組み合わせて適用可能である。
本開示における運動補助システム30は、コンピュータシステムを含んでいる。コンピュータシステムは、ハードウェアとしてのプロセッサ及びメモリを主構成とする。コンピュータシステムのメモリに記録されたプログラムをプロセッサが実行することによって、本開示における運動補助システム30としての機能が実現される。プログラムは、コンピュータシステムのメモリに予め記録されてもよく、電気通信回線を通じて提供されてもよく、コンピュータシステムで読み取り可能なメモリカード、光学ディスク、ハードディスクドライブ等の非一時的記録媒体に記録されて提供されてもよい。コンピュータシステムのプロセッサは、半導体集積回路(IC)又は大規模集積回路(LSI)を含む1ないし複数の電子回路で構成される。複数の電子回路は、1つのチップに集約されていてもよいし、複数のチップに分散して設けられていてもよい。複数のチップは、1つの装置に集約されていてもよいし、複数の装置に分散して設けられていてもよい。
上述の実施形態では、電流検知部43は、制御装置4に含まれているが、これに限定する趣旨ではない。例えば、電流検知部43は、運動補助装置3に含まれていてもよい。この場合、電流検知部43は、例えばケース315内に収納される。そして、電流検知部43は、一対のコネクタ316のうちの一方に接続された電源ケーブルを介して、検知結果を電気信号として制御装置4に送信する。これにより、制御装置4では、電流検知部43での検知結果を参照可能となる。
上述の実施形態では、制御装置4は、モータ312に流れる電流に基づいて可動部311が目標位置(目標角度α1)まで到達しているか否かを判定しているが、この構成に限定する趣旨ではない。例えば、制御装置4は、図9に示すように、電流検知部43の代わりに、可動部311の位置を検知する位置検知部317を備えていてもよい。この態様では、制御装置4は、モータ312の動作の開始時点から推定時間T1が経過した後に、位置検知部317の検知位置(角度θ1)が目標位置(目標角度α1)に達していなければ、可動部311を第2向きD2に移動させるようにモータ312を制御する。
位置検知部317は、例えば、磁気センサを用いた角度センサ、リミットスイッチ、又はフォトインタラプタ等で構成される。例えば、位置検知部317が角度センサである場合、角度センサは、可動部311に設けられ、可動部311の回転角度を検知する。そして、制御装置4は、モータ312の動作の開始時点から推定時間T1を経過した時点で、角度センサの検知角度が目標角度α1に達していなければ、可動部311を第2向きD2に移動させるようにモータ312を制御する。
また、例えば、位置検知部317がリミットスイッチである場合、リミットスイッチは、可動部311が目標角度α1に達するとオンになるように配置される。そして、制御装置4は、モータ312の動作の開始時点から推定時間T1を経過した時点で、リミットスイッチがオフであれば、可動部311を第2向きD2に移動させるようにモータ312を制御する。
また、例えば、位置検知部317がフォトインタラプタである場合、フォトインタラプタは、可動部311が目標角度α1に達すると、可動部311が発光素子と受光素子との間の光を遮るように配置される。そして、制御装置4は、モータ312の動作の開始時点から推定時間T1を経過した時点で、フォトインタラプタがオンであれば、可動部311を第2向きD2に移動させるようにモータ312を制御する。
上述の実施形態において、フレーム313は必須の構成要素ではない。例えば、対象者5の手指53に可動部311を装着し、可動部311に取り付けられたモータ312で可動部311を直接駆動する態様が考えられる。この態様では、フレーム313は不要である。
上述の実施形態において、運動補助システム30は、随意運動としての対象者5の手指53の伸展動作を補助しているが、これに限定する趣旨ではない。例えば、運動補助システム30は、随意運動としての対象者5の手指53の把持動作を補助してもよい。この場合、第1向きD1は、対象者5の手を開いた状態から閉じさせるように、手指53が装着された可動部311を移動させる向きであり、第2向きD2は、その逆の向きである。つまり、上述の実施形態において、第2向きD2は、第1向きD1が対象者5の手を開く向きである場合、手を閉じる向きである。また、上述の実施形態において、第2向きD2は、第1向きD1が手を閉じる向きである場合、手を開く向きである。
上述の実施形態において、リハビリテーション支援システム100は、対象者5の手指53のリハビリテーションに限らず、例えば、肩、肘、上腕、腰、下肢、又は上肢等、対象者5の身体の任意の部位のリハビリテーションに用いられてもよい。つまり、運動補助システム30は、対象者5の手指53以外の身体の任意の部位の運動を補助するために用いられてもよい。対象者5が随意運動を行おうと企図した際に生じ得る脳波の特徴的な変化の仕方は、リハビリテーションの対象部位及び運動内容等によって異なる場合がある。例えば、対象者5が随意運動を行おうと企図した際に事象関連同期(Event-Related Synchronization:ERS)が生じる場合には、随意運動時に運動野付近で測定される脳波において、特定の周波数帯域のパワーが増加する。この場合、脳波測定システム10では、特定の周波数帯域のパワーが増加することをもって、脳波の特徴的な変化を検出する。
上述の実施形態において、運動補助装置3と制御装置4とは別体に限らず、例えば、運動補助装置3と制御装置4とが1つの筐体内に収容され一体化されていてもよい。
(まとめ)
以上述べたように、第1の態様に係る運動補助システム(30)は、可動部(311)と、モータ(312)と、制御装置(4)と、を備える。可動部(311)は、対象者(5)の身体の一部を移動させる向きに動く。モータ(312)は、可動部(311)に駆動力を与える。制御装置(4)は、モータ(312)を制御することにより、可動部(311)を目標位置(目標角度(α1))まで第1向き(D1)に移動させる。制御装置(4)は、可動部(311)が目標位置(目標角度(α1))まで移動しなかった場合、可動部(311)を第1向き(D1)とは逆の向きである第2向き(D2)に移動させるようにモータ(312)を制御する。
この態様によれば、対象者(5)の身体の一部の運動を補助する際に、補助部位が目標位置(目標角度(α1))に到達しない状態でモータ(312)が動作し続けるのを防ぎ易い、という利点がある。
第2の態様に係る運動補助システム(30)は、第1の態様において、モータ(312)に流れる電流を検知する電流検知部(43)を更に備える。制御装置(4)は、推定時間(T1)が経過した後に、電流検知部(43)により電流が検知されると、可動部(311)を第2向き(D2)に移動させるようにモータ(312)を制御する。推定時間(T1)は、モータ(312)の動作の開始時点から可動部(311)が目標位置(目標角度(α1))に到達するまでに要すると推定される時間である。
この態様によれば、可動部(311)にセンサを設けることなく、モータ(312)に流れる電流に基づいて可動部(311)が目標位置に正常に到達しているか否かを判定することが可能である、という利点がある。その結果、この態様では、センサが対象者(5)の視界を遮ることがなく、可動部(311)の視認性を確保することができる、という利点がある。
第3の態様に係る運動補助システム(30)は、第1の態様において、可動部(311)の位置を検知する位置検知部(317)を更に備える。制御装置(4)は、推定時間(T1)が経過した後に、位置検知部(317)の検知位置(検知角度)が目標位置(目標角度(α1))に達していなければ、可動部(311)を第2向き(D2)に移動させるようにモータ(312)を制御する。推定時間(T1)は、モータ(312)の動作の開始時点から可動部(311)が目標位置(目標角度(α1))に到達するまでに要すると推定される時間である。
この態様によれば、可動部(311)が目標位置に正常に到達しているか否かを判定し易い、という利点がある。
第4の態様に係る運動補助システム(30)では、第1〜第3のいずれかの態様において、可動部(311)は、対象者(5)の複数の手指(53)の少なくとも一部が載せられる指載せ部(311A)を有する。
この態様によれば、対象者(5)の手指(53)の随意運動を補助する際に、手指(53)が目標位置(目標角度(α1))に到達しない状態でモータ(312)が動作し続けるのを防ぎ易い、という利点がある。
第5の態様に係る運動補助システム(30)では、第4の態様において、第2向き(D2)は、第1向き(D1)が対象者(5)の手を開く向きである場合、手を閉じる向きである。第2向き(D2)は、第1向き(D1)が手を閉じる向きである場合、手を開く向きである。
この態様によれば、対象者(5)の手を開く動作、及び手を閉じる動作のいずれの動作を補助する場合でも、手指(53)が目標位置(目標角度(α1))に到達しない状態でモータ(312)が動作し続けるのを防ぎ易い、という利点がある。
第6の態様に係るリハビリテーション支援システム(100)は、第1〜第5のいずれかの態様の運動補助システム(30)と、脳波測定システム(10)と、を備える。脳波測定システム(10)は、対象者(5)の頭部(52)の一部に配置される電極部(11)にて採取される脳波を表す脳波情報を取得する。制御装置(4)は、脳波測定システム(10)で取得された脳波情報に基づいて、モータ(312)を制御する。
この態様によれば、対象者(5)の身体の一部の運動を補助する際に、補助部位が目標位置(目標角度(α1))に到達しない状態でモータ(312)が動作し続けるのを防ぎ易い、という利点がある。その結果、この態様では、対象者(5)が随意運動を行おうと企図した際に、運動補助システム(30)にて対象者(5)の随意運動を補助し易く、リハビリテーションの効果を向上し易い、という利点がある。
第2〜第5の態様に係る構成については、運動補助システム(30)に必須の構成ではなく、適宜省略可能である。