JP6978214B2 - 成膜助剤及びこの成膜助剤を含む塗料 - Google Patents
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このようなグリコールエーテル(A)において、グリコールエーテル(A1)とグリコールエーテル(A2)との割合は、前者/後者(重量比)=1/1〜1/15程度であってもよい。
本発明の成膜助剤によれば、成膜性成分(樹脂粒子)の融着速度を制御し塗膜を緻密に出来るだけでなく塗料の表面張力を下げる効果もあり濡れ性が必要な基材(窯業系基材など)への湿潤、含浸効果を期待できる。また、特定の成膜助剤を組み合わせることで、限られた乾燥時間であっても、揮発する速度を向上させることができるため、乾燥後に塗膜に残る成膜助剤量を減少できるようである。
このようなこともあってか、本発明の成膜助剤によれば、耐ブロッキング性や耐透水性において、良好な塗膜を形成することもできる。特に、耐ブロッキング性と耐透水性とを効率良く両立しうる。
このような本発明の成膜助剤は、基材の中でも、とりわけ、窯業系基材(例えば、外壁又はサイディングなどの建材)に対して、さらには、工場で塗装される窯業系基材に対して有用であり、良好な塗膜(下塗層)を形成できる。
本発明の成膜助剤(溶媒、溶媒組成物)は、グリコールエーテル(A)及びエステル(B)を含む。
なお、成膜助剤は、成膜を促進(又は補助)する成分であってもよく、例えば、後述の樹脂(エマルション粒子)の融着を促進させる成分であってもよい。成膜助剤は、成膜時には、可塑剤的に作用又は機能し、成膜後は塗膜から除去される又は消失するものであるのが好ましい。なお、塗膜からの除去は、熱や風などを伴った乾燥処理を経て行われてもよい。
本発明では、グリコールエーテル(A)を少なくとも2種(異なるグリコールエーテル)使用する。
グリコールエーテル(A1)の水100gに対する溶解度(20℃における溶解度)と、グリコールエーテル(A2)の水100gに対する溶解度(20℃における溶解度)との差(絶対値)は、例えば、5g以上、好ましくは10g以上であってもよい。
水に対する溶解度が低いと、通常、成膜性成分(樹脂粒子など)に対して移行しやすくなり、成膜助剤としての機能を達成しやすくなることが予想される一方で、塗膜中に残存しやすくなり、耐ブロッキング性を低下させる可能性がある。これに対して、本発明では、水に対する溶解度が異なる成膜助剤を組み合わせることで、意外にも、成膜助剤としての機能と耐ブロッキング性とをバランス良く両立しやすいようである。
グリコールエーテル(A1)としては、例えば、
エチレングリコールモノエーテル{例えば、エチレングリコールモノアルキルエーテル[例えば、メチルセロソルブ(エチレングリコールモノメチルエーテル)、イソプロピルグリコール(エチレングリコールモノイソプロピルエーテル)、ブチルグリコール(ブチルセロソルブ、エチレングリコールモノブチルエーテル)などのエチレングリコールモノC1−4アルキルエーテル]、アリルグリコール(エチレングリコールモノアリルエーテル)など}、プロピレングリコールモノエーテル{例えば、プロピレングリコールモノアルキルエーテル[例えば、メチルプロピレングリコール(プロピレングリコールモノメチルエーテル)、プロピルプロピレングリコール(プロピレングリコールモノプロピルエーテル)などのプロピレングリコールモノC1−2アルキルエーテル]など}などのアルカンジオールモノエーテル;
ジエチレングリコールモノエーテル{例えば、ジエチレングリコールモノアルキルエーテル[例えば、メチルジグリコール(メチルカルビトール、ジエチレングリコールモノメチルエーテル)、イソプロピルジグリコール(ジエチレングリコールモノイソプロピルエーテル)、イソブチルジグリコール(ジエチレングリコールモノイソブチルエーテル)、ブチルジグリコール(ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ブチルカルビトール)などのジエチレングリコールモノC1−4アルキルエーテル]、ベンジルジグリコール(ジエチレングリコールモノベンジルエーテル)など}、ジプロピレングリコールモノエーテル{例えば、ジプロピレングリコールモノアルキルエーテル[例えば、メチルプロピレンジグリコール(ジプロピレングリコールモノメチルエーテル)などのジプロピレングリコールモノC1−2アルキルエーテル]など}、トリエチレングリコールモノエーテル{例えば、トリエチレングリコールモノアルキルエーテル[例えば、メチルトリグリコール(トリエチレングリコールモノメチルエーテル)、ブチルトリグリコール(トリエチレングリコールモノブチルエーテル)などのトリエチレングリコールモノC1−4アルキルエーテル]など}、トリプロピレングリコールモノエーテル{例えば、トリプロピレングリコールモノアルキルエーテル[例えば、メチルプロピレントリグリコール(トリプロピレングリコールモノメチルエーテル)などのトリプロピレングリコールモノC1−2アルキルエーテル]など}などのポリアルキレングリコールモノエーテル;
エチレングリコールジエーテル{例えば、エチレングリコールジアルキルエーテル[例えば、ジメチルグリコール(エチレングリコールジメチルエーテル)などのエチレングリコールジC1−12アルキルエーテル]など}などのアルカンジオールジエーテル;
ジエチレングリコールジエーテル{例えば、ジエチレングリコールジアルキルエーテル[例えば、ジメチルジグリコール(ジエチレングリコールジメチルエーテル)、ジエチルジグリコール(ジエチレングリコールジエチルエーテル)などのジエチレングリコールジC1−3アルキルエーテル]など}、ジプロピレングリコールジエーテル{例えば、ジプロピレングリコールジアルキルエーテル[例えば、ジメチルプロピレンジグリコール(ジプロピレングリコールジメチルエーテル)などのジプロピレングリコールジC1−12アルキルエーテル]など}、トリエチレングリコールジエーテル{例えば、トリエチレングリコールジアルキルエーテル[例えば、ジメチルトリグリコール(トリエチレングリコールジメチルエーテル)などのトリエチレングリコールジC1−12アルキルエーテル]など}などのポリアルキレングリコールジエーテル;
などが挙げられる。
上記のようなグリコールエーテル(A1)を使用することで、限られた乾燥時間の中で揮発する速度を向上しやすいためか、乾燥後に残る成膜助剤量を減少できる。また、塗料の表面張力が下がるため基材(特に窯業系基材)に湿潤しやすくなり、含浸効果も期待できる。
エチレングリコールモノエーテル{例えば、エチレングリコールモノアルキルエーテル[例えば、ヘキシルグリコール(エチレングリコールモノヘキシルエーテル)、2−エチルヘキシルグリコール(エチレングリコールモノ2−エチルヘキシルエーテル)などのエチレングリコールモノC6−12アルキルエーテル]、フェニルグリコール(エチレングリコールモノフェニルエーテル)、ベンジルグリコール(エチレングリコールモノベンジルエーテル)など}、プロピレングリコールモノエーテル{例えば、プロピレングリコールモノアルキルエーテル[例えば、ブチルプロピレングリコール(プロピレングリコールモノブチルエーテル)などのプロピレングリコールモノC3−12アルキルエーテル]、フェニルプロピレングリコール(プロピレングリコールモノフェニルエーテル)など}などのアルカンジオールモノエーテル;
ジエチレングリコールモノエーテル{例えば、ジエチレングリコールモノアルキルエーテル[例えば、ヘキシルジグリコール(ジエチレングリコールモノヘキシルエーテル)、2−エチルヘキシルジグリコール(ジエチレングリコールモノ2−エチルヘキシルエーテル)などのジエチレングリコールモノC6−12アルキルエーテル]、フェニルジグリコール(ジエチレングリコールモノフェニルエーテル)など}、ジプロピレングリコールモノエーテル{例えば、ジプロピレングリコールモノアルキルエーテル[例えば、プロピルプロピレンジグリコール(ジプロピレングリコールモノプロピルエーテル)、ブチルプロピレンジグリコール(ジプロピレングリコールモノブチルエーテル)などのジプロピレングリコールモノC3−12アルキルエーテル]など}、トリプロピレングリコールモノエーテル{例えば、トリプロピレングリコールモノアルキルエーテル[例えば、ブチルプロピレントリグリコール(トリプロピレングリコールモノブチルエーテル)などのトリプロピレングリコールモノC3−12アルキルエーテル]など}などのポリアルキレングリコールモノエーテル;
ジエチレングリコールジエーテル{例えば、ジエチレングリコールジアルキルエーテル[例えば、ジブチルジグリコール(ジエチレングリコールジブチルエーテル)などのジエチレングリコールジC4−12アルキルエーテル]など}などのポリアルキレングリコールジエーテル;
などが挙げられる。
上記のようなグリコールエーテル(A2)を使用することで限られた乾燥時間の中で揮発する速度を向上しやすいためか、乾燥後に残る成膜助剤量を減少できる。また、塗料の表面張力が下がるため基材(特に窯業系基材)に湿潤しやすくなり、含浸効果も期待できる。さらに、限られた乾燥時間の中でも、粒子融着を促し安定的に造膜させやすく、優れた耐透水性を有する塗膜を効率良く得やすい。
エステル(B)としては、前記グリコールエーテル(A)との組み合わせにおいて、塗料における成膜助剤などとして使用できれば特に限定されないが、特に、疎水性又は難水溶性のエステルを好適に使用してもよい。
ポリオールエステル{例えば、脂肪族ポリオールのエステル[例えば、アルカンポリオールアシレート(例えば、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオールモノイソブチレート、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオールジイソブチレートなどのC2−10アルカンポリオールC1−20アシレート、好ましくはC3−10アルカンジオールモノ又はジC1−12アシレート、さらに好ましくはC4−8アルカンジオールモノ又はジC3−10アシレート)などの脂肪族ポリオールと脂肪族カルボン酸とのエステル]など}、
ポリカルボン酸エステル{例えば、脂肪族ジカルボン酸エステル[例えば、アジピン酸エステル(例えば、アジピン酸ジエチル、アジピン酸ジイソブチル、アジピン酸ビス(2−エチルヘキシル)、アジピン酸ジイソノニル、アジピン酸ジイソデシル、アジピン酸ビス(2−ブトキシエチル)など)、セバシン酸エステル(例えば、セバシン酸ジメチル、セバシン酸ジブチル、セバシン酸ビス(2−エチルヘキシル)など)などの炭素数3以上の脂肪族ジカルボン酸エステル、好ましくはC4−10脂肪族ジカルボン酸アルキルエステル、さらに好ましくはC4−10アルカンジカルボン酸ジアルキルエステルなど]、脂肪族トリカルボン酸エステル[例えば、クエン酸エステル(例えば、クエン酸トリエチル、クエン酸アセチルトリエチル、クエン酸トリノルマルブチル、クエン酸アセチルトリノルマルブチル、クエン酸アセチル2−エチルヘキシルなど)など]などの脂肪族ポリカルボン酸エステル;芳香族ジカルボン酸エステル[例えば、フタル酸エステル(例えば、フタル酸ビス(2−エチルヘキシル)、フタル酸ジイソノニル、フタル酸ジイソデシル、フタル酸ジウンデシル、フタル酸ビス(2−ブトキシエチル)など)など]、芳香族トリカルボン酸エステル[例えば、トリメリット酸エステル(例えば、トリメリット酸トリ2−エチルヘキシル、トリメリット酸トリイソデシル、トリメリット酸トリノルマルオクチルなど)など]などの芳香族ポリカルボン酸エステル}、
モノカルボン酸エステル{例えば、脂肪族モノカルボン酸エステル[例えば、ミリスチン酸エステル(例えば、ミリスチン酸イソプロピル、ミリスチン酸オクチルドデシル、ミリスチン酸ミリスチル、ミリスチン酸ラウリルなど)などの炭素数6以上の脂肪族モノカルボン酸エステル、好ましくはモノ高級脂肪酸エステル、さらに好ましくはC10−30脂肪族モノカルボン酸エステル]など}
などが挙げられる。
上記のようなエステル(B)をグリコールエーテル(A)と組み合わせることで、限られた乾燥時間の中であっても、成膜性成分である樹脂粒子などの融着を促し安定的に造膜させることができる一方で、造膜後は速やかに揮発させやすい。その結果、優れた耐透水性、耐凍害性(耐凍結融解性)を効率よく得やすい。
本発明の成膜助剤は、塗装又は塗料用、特に、下塗塗装又は下塗用(又はシーラー用)の成膜助剤(又は溶媒)として好適に使用できる。
樹脂(重合体、ポリマー)としては、特に限定されず、例えば、付加重合系樹脂[例えば、アクリル系樹脂、ビニルアルコール系樹脂(例えば、ポリビニルアルコールなど)、フッ素系樹脂など]、縮合系樹脂(例えば、ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリウレタン系樹脂など)、熱又は光硬化性樹脂(例えば、アルキド樹脂、エポキシ樹脂など)などが挙げられる。
これらの樹脂(ポリマー、重合体)は、単独で又は2種以上組み合わせてもよい。
樹脂(ポリマー、重合体)は、通常、単量体成分(a)を重合成分とする。単量体成分(a)は、通常、付加重合性モノマー(又はラジカル重合性モノマー、エチレン性不飽和結合を有する単量体など)であってもよい。
単量体成分(a)は、疎水性モノマー(又は親水性モノマー及び酸基含有モノマーのいずれの範疇にも属さないモノマー、他のモノマー)を含んでいてもよい。
スチレン系モノマーとしては、例えば、スチレン、α−アルキルスチレン(例えば、α−メチルスチレンなどのα−C1−4アルキルスチレン)、アルキルスチレン(例えば、ビニルトルエンなどのC1−4アルキルスチレン)、ハロスチレン(例えば、クロロスチレンなど)などが挙げられる。
(メタ)アクリル系モノマーとしては、脂肪族(メタ)アクリレート、芳香族(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
カルボニル基含有モノマーとしては、例えば、不飽和アルデヒド[例えば、アルケナール(例えば、アクロレイン、メタクロレインなどのC3−10アルケナール)、(メタ)アクリロキシアルキルアルケナール(例えば、アクリルオキシアルキルプロペナール、メタクリルオキシアルキルプロペナール)、ホルミルスチロールなど]、不飽和ケトン{例えば、アルケノン(例えば、メチルビニルケトン、エチルビニルケトン、ビニルブチルケトンなど)、(メタ)アクリロイルオキシアルカノン(例えば、アセトニルアクリレート、アセトニルメタクリレートなど)、アセトアセトキシ基含有エチレン性不飽和単量体[例えば、アセトアセトキシアルキル(メタ)アクリレート(例えば、2−(アセトアセトキシ)エチルアクリレート、2−(アセトアセトキシ)エチルメタクリレート)、アセトアセトキシアリルエステルなど]など}などが挙げられる。
親水性モノマー(又は親水性基を有するモノマー)としては、例えば、ヒドロキシル基(水酸基)を有するモノマー、窒素含有モノマーなどが挙げられる。なお、親水性モノマーは、後述の酸基含有モノマーの範疇に属さないモノマーであってもよい。
なお、後述するように、樹脂が多層構造である場合、多層構造全体において上記範囲を充足してもよく、外層における親水性モノマーの割合も上記範囲を充足してもよい(以下、酸基含有モノマー等においても同様である)。
酸基含有モノマーにおいて、酸基としては、カルボキシル基、酸無水物基、スルホン酸基(硫酸基)などが含まれる。酸基含有モノマーは、酸基を1つ又は2以上有していてもよく、異種の酸基を有していてもよい。
樹脂は、エマルションを構成していてもよい(又はエマルション状態であってもよい)。そのため、エマルションは、樹脂(粒子)と乳化剤(樹脂粒子を被覆する乳化剤)とで構成されていてもよい。また、エマルションは、樹脂(樹脂粒子)[又は当該樹脂(又は樹脂粒子)]が溶媒中(例えば、水性溶媒中)に分散したものであってもよい。
その他、乳化重合条件(温度、時間など)は、適宜選択できる。
なお、耐透水性、耐ブロッキング性を向上させる観点から内層がハード層、外層がソフト層であることが好ましい。
酸基含有モノマーについても同様であり、例えば、多層構造の樹脂における酸基を有するモノマーの割合を4質量%以下とするとき、多層構造全体において4質量%以下を充足するだけでなく、外層における酸基を有するモノマーの割合も4質量%以下を充足してもよい。
なお、外層が2層以上である場合(中間層を有する場合)、特に、最外層(中間層ではない外層)を構成する樹脂の分子量を、内層を構成する樹脂の分子量よりも低くしてもよい。
また、高分子量の樹脂(例えば、内層や中間層を構成する樹脂)の重量平均分子量と、低分子量の樹脂(例えば、外層又は最外層を構成する樹脂)の重量平均分子量との差は、例えば、1万以上(例えば、3万以上)、好ましくは5万以上(例えば、7万以上)、さらに好ましくは10万以上(例えば、15万以上)程度であってもよい。
また、連鎖移動剤の使用割合は、樹脂(例えば、外層又は最外層を構成する樹脂)の単量体成分100質量部に対して、例えば、0.1質量部以上、好ましくは0.3質量部以上、さらに好ましくは0.5質量部以上であってもよく、好ましくは5質量部以下、より好ましくは3質量部以下、さらに好ましくは2質量部以下であってもよい。
なお、ガラス転移温度は、例えば、後述の実施例に記載の方法[フォックス(Fox)の式]などで求めてもよい。
耐透水性、耐ブロッキング性を向上させる観点から、内層のガラス転移温度は、例えば20℃〜150℃程度が好ましく、外層のガラス転移温度は、例えば0℃〜50℃程度が好ましい。
なお、固形分(不揮発分)量は、例えば、後述の実施例に記載の方法などで求めてもよい。
例えば、予め調製した成膜助剤(すなわち、グリコールエーテル(A)とエステル(B)を含む成膜助剤)を、塗料[又は塗料を構成する他の成分(例えば、成膜性成分)]に混合して製造してもよいし、成膜助剤を塗料の調製の際に(塗料中で)形成させることもできる。具体的には、塗料[又は塗料を構成する他の成分(例えば、成膜性成分)]に、グリコールエーテル(A)及びエステル(B)を個別に又は一括で混合してもよい。個別に混合する場合、2種以上のグリコールエーテル(A)の混合順序や、グリコールエーテル(A)とエステル(B)との混合順序は、特に限定されない。例えば、グリコールエーテル(A1)、グリコールエーテル(A2)、エステル(B)を順不同で混合してもよく、グリコールエーテル(A1)及びグリコールエーテル(A2)の混合物、エステル(B)の順に混合するなどしてもよい。
なお、ローラー塗装において、ロールコーターは、例えば、ダイレクトロールコーター、リバースロールコーターなどが挙げられ、特に限定されない。
乾燥時間は、塗装方法などにもよるが、例えば、120分以下(例えば、1〜120分)、好ましくは60分以下(例えば、1〜60分)、さらに好ましくは30分以下(例えば、1〜30分)であってもよい。
本発明では、このような限られた時間の乾燥であっても、耐ブロッキング性や耐透水性に優れた塗膜を効率良く得ることができる。
なお、実施例において、「部」「%」は断りのない限り、それぞれ「質量(重量)部」「質量%」を意味する。
滴下ロート、攪拌機、窒素導入管、温度計および還流冷却管を備えたフラスコ内に、脱イオン水96.7部を仕込んだ。
滴下ロートに、脱イオン水32.6部、乳化剤〔第一工業製薬(株)製、商品名:アクアロンBC−10〕の25%水溶液16.0部、スチレン75.0部、2−エチルヘキシルアクリレート22.5部、アクリル酸2.0部、2−ヒドロキシエチルメタクリレート0.5部からなる滴下用プレエマルションを調製した。
得られた滴下用プレエマルションのうち、8.0部を前記フラスコ内に添加し、ゆるやかに窒素ガスを吹き込みながら80℃まで昇温し、3.5%過硫酸アンモニウム水溶液1.4部をフラスコ内に添加し、乳化重合を開始した。
次に、滴下用プレエマルションの残部、3.5%過硫酸アンモニウム水溶液8.6部および2.5%亜硫酸水素ナトリウム水溶液6.0部を240分間かけてフラスコ内に滴下させた。滴下終了後、80℃の温度で120分間維持した。
その後、25%アンモニア水を添加し、pH〔(株)堀場製作所製、品番:F−23を用いて23℃で測定、以下同様〕を8に調整して乳化重合反応を終了した。得られた反応混合物を室温まで冷却した後、300メッシュ(JISメッシュ、以下同様)の金網で濾過することにより、不揮発分量が40質量%の樹脂エマルションを得た(Tg=41℃)。
なお、エマルションにおける固形分割合(不揮発分量)は、エマルション1gを秤量し、熱風乾燥機で110℃の温度で1時間乾燥させ、得られた残渣を不揮発分とし、式:
〔不揮発分量(質量%)〕
=(〔残渣の質量〕÷〔シーラー用樹脂エマルション1g〕)×100
に基づいて求めた(以下同じ)。
また、ガラス転移温度は、各モノマーの単独重合体のガラス転移温度を用いて、式:
1/Tg=Σ(Wm/Tgm)/100
〔式中、Wmは重合体を構成する単量体成分におけるモノマーmの含有率(重量%)、Tgmはモノマーmの単独重合体のガラス転移温度(絶対温度:K)を示す〕
で表されるフォックス(Fox)の式に基づいて求めた(以下同じ)。
スチレン(St):100℃
2−エチルヘキシルアクリレート(2EHA):−70℃
ブチルアクリレート(BA):−56℃
アクリル酸(AA):95℃
メタクリル酸(MAA):130℃
2−ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA):55℃
滴下ロート、攪拌機、窒素導入管、温度計および還流冷却管を備えたフラスコ内に、脱イオン水90.4部を仕込んだ。滴下ロートに、脱イオン水12.0部、乳化剤〔第一工業製薬(株)製、商品名:アクアロンHS−10〕の25%水溶液8.0部、スチレン40.0部からなる滴下用プレエマルションを調製した。
得られた滴下用プレエマルションのうち、8.0部を前記フラスコ内に添加し、ゆるやかに窒素ガスを吹き込みながら80℃まで昇温し、3.5%過硫酸アンモニウム水溶液1.4部をフラスコ内に添加し、重合を開始した。
次に、滴下用プレエマルションの残部、3.5%過硫酸アンモニウム水溶液2.9部および2.5%亜硫酸水素ナトリウム水溶液2.0部を90分間かけてフラスコ内に滴下させた。滴下終了後、80℃の温度で60分間維持して1段目の重合エマルションを作製した。
その間、脱イオン水30.9部、乳化剤としてアリルオキシメチルアルコキシエチルヒドロキシポリオキシエチレン硫酸エステル塩〔(株)ADEKA製、商品名:アデカリアソープSR−10〕の25%水溶液8.0部、スチレン32.0部、2−エチルヘキシルアクリレート24.0部、メタクリル酸3.5部、2−ヒドロキシエチルメタクリレート0.5部からなる2段目のプレエマルションを調製した。また3.5%過硫酸アンモニウム水溶液2.9部および2.5%亜硫酸水素ナトリウム水溶液2.0部を調製した。
前記60分維持が終了した1段目の重合エマルションに、前記調製した2段目のプレエマルション、前記調製した3.5%過硫酸アンモニウム水溶液および前記調製した2.5%亜硫酸水素ナトリウム水溶液を、90分間かけてフラスコ内に滴下した。滴下終了後、80℃の温度で60分間維持し、25%アンモニア水を添加し、pHを8に調整して2段階目の乳化重合反応を終了した。得られた反応混合物を室温まで冷却した後、300メッシュの金網で濾過することにより、不揮発分量が40質量%の樹脂エマルションを得た(Tg=38℃)。
滴下ロート、攪拌機、窒素導入管、温度計および還流冷却管を備えたフラスコ内に、脱イオン水800部を仕込んだ。
滴下ロートに、脱イオン水90部、乳化剤〔第一工業製薬(株)製、商品名:ハイテノールNF−08〕の20%水溶液50部(乳化剤10部)、スチレン319部、n−ブチルアクリレート20部、及びアクリル酸1部からなる滴下用プレエマルション(1段目のプレエマルション)を調製した。
得られた滴下用プレエマルションのうち、単量体成分の総量の5%にあたる71部を前記フラスコ内に添加し、ゆるやかに窒素ガスを吹き込みながら80℃まで昇温し、3.5%過硫酸アンモニウム水溶液14部をフラスコ内に添加し、乳化重合を開始した。
次に、滴下用プレエマルションの残部、3.5%過硫酸アンモニウム水溶液29部および2.5%亜硫酸水素ナトリウム水溶液20部を90分間かけてフラスコ内に滴下させた。滴下終了後、80℃の温度で60分間維持した。
その後、脱イオン水90部、乳化剤〔第一工業製薬(株)製、商品名:ハイテノールNF−08〕の20%水溶液50部(乳化剤10部)、スチレン225部、2−エチルヘキシルアクリレート50部、n−ブチルアクリレート50部からなる2段目のプレエマルション、3.5%過硫酸アンモニウム水溶液29部および2.5%亜硫酸水素ナトリウム水溶液20部を90分間かけてフラスコ内に滴下した。滴下終了後、80℃の温度で60分間維持した。
次に、脱イオン水90部、乳化剤〔第一工業製薬(株)製、商品名:ハイテノールNF−08〕の20%水溶液50部(乳化剤10部)、スチレン212部、2−エチルヘキシルアクリレート97部、アクリル酸3部、メタクリル酸3部、2−ヒドロキシルエチルメタクリレート20部からなる3段目のプレエマルション、3.5%過硫酸アンモニウム水溶液29部および2.5%亜硫酸水素ナトリウム水溶液20部を90分間かけてフラスコ内に滴下した。滴下終了後、80℃の温度で120分間維持した。
次に、25%アンモニア水を添加し、pHを8に調整して乳化重合反応を終了した。得られた反応混合物を室温まで冷却した後、300メッシュの金網で濾過することにより、不揮発分量が43質量%の樹脂エマルションを得た。
得られたエマルションにおいて、固形分割合は43%、内層と外層との質量比は34/66[外層のうち、第2層と第3層(最外層)との質量比は325/335]、ガラス転移温度は44℃[内層のガラス転移温度は85℃、外層のガラス転移温度は26.5℃(外層のうち、第2層のガラス転移温度は28℃、第3層(最外層)のガラス転移温度は25℃)]であった。
なお、全モノマー中、酸基を有するモノマー(この例ではアクリル酸及びメタクリル酸)の割合は0.7%[内層に含まれる酸基を有するモノマーの割合は0.1%、外層(又は最外層)に含まれる酸基を有するモノマーの割合は0.6%]、酸基非含有の親水性モノマー(この例では2−ヒドロキシルエチルメタクリレート)の割合は2.0%[内層に含まれる親水性モノマーの割合は0%、外層(又は最外層)に含まれる親水性モノマーの割合は2.0%]である。
また、内層に含まれるモノマー中、酸基を有するモノマーの割合は0.3%、親水性モノマーの割合は0%であり、外層に含まれるモノマー中、酸基を有するモノマーの割合は0.9%、親水性モノマーの割合は3.0%であり、外層のうち2層に含まれるモノマー中、酸基を有するモノマーの割合は0%、親水性モノマーの割合は0%であり、外層のうち3層(最外層)に含まれるモノマー中、酸基を有するモノマーの割合は1.8%、親水性モノマーの割合は6.0%である。
製造例1で得られた樹脂エマルション100部(不揮発分40部)をホモディスパーにより回転速度1500min−1で分散させながら、樹脂エマルションの不揮発分100部に対して成膜助剤としてブチルセロソルブ(ブチルグリコール)1.8部、ブチルプロピレンジグリコール3.8部、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオールモノイソブチレート〔JNC(株)製、品番:CS−12〕0.6部を混合することによって得られた混合溶液を前記樹脂エマルションに6.2部添加し、樹脂組成物を得た。
得られた樹脂組成物に、消泡剤〔シリコーン系消泡剤、サンノプコ(株)製、商品名:SNデフォーマー777〕を0.2部、イオン交換水を塗料固形分が35%となるように加えた後にウレタン会合型レオロジーコントロール剤(アデカ社製、UH−472)をBM型粘度計で1000mPa・s(25℃、30rpm)となるように添加し、回転速度1500min−1で30分間攪拌することによりシーラー用樹脂組成物を得た。評価には、このシーラー用樹脂組成物を室温で2日間放置し、各試験に用いた。
実施例1において、成膜助剤の種類及び割合を表1に示すものに変更した以外は、実施例1と同様にして、シーラー用樹脂組成物を得た。なお、レオロジーコントール剤の添加量は、概ね0.1〜5部であった(実施例1では1部)。
シーラー用樹脂組成物をスレート板(日本テストパネル、厚さ15mm)に塗布量が50g/m2となるようにロールコーターで塗布し乾燥機にて100℃で10分間乾燥させ試験板とした。
試験板に形成された塗膜上にロート(内径:35mm)を載置し、両者の接触部をシリコーン系バスボンド〔コニシ(株)製〕でシールし、JIS A 5422に規定の「ロート法」に準拠して24時間経過後の減水量(開始時と24時間経過後における水面の高さの差)を測定し、以下の評価基準に基づいて評価した。
(評価基準)
◎:減水量が2.4mm未満
○:減水量が2.4mm以上3.0mm未満
×:減水量が3.0mm以上
耐透水性試験で使用したものと同様にして塗膜が形成された試験板を2枚準備し、2枚の試験板(7×15cm)を50℃の雰囲気中で1時間放置した後、各試験片の塗膜が形成されている面同士を重ね合わせ、その上に300g/cm2の荷重をかけ、その状態で50℃の温度にて24時間静置させた。その後、錘を除去して試験板をオーブンから取り出し、試験板を上下に20回振り、両者が剥がれた際の回数とその塗膜状態を観察し、以下の評価基準に基づいて評価した。
(評価基準)
◎:1回の振りで試験板が剥がれ、塗膜の剥がれも無い。
○:試験板が剥がれるまで複数回(2〜4回)の振りを要するが、塗膜に剥がれが無い。
△:試験板が剥がれるまで複数回(2〜4回)の振りを要し、塗膜に少し剥がれが生じる。
×:試験板が剥がれないか、又は剥がれても複数回(2〜4回)の振りを要し、塗膜に剥がれが多い。
試験板の塗装面以外の側面及び背面を、アルミ箔基材片面テープ(共同技研化学(株)製)でシールし、凍結融解試験機(装置名ARFT−10型、朝日科学(株)製)を用いて、−20℃気中での2時間凍結と10℃水中での1時間浸漬を試験1サイクルとし、100サイクルごとに外観を観察した。そして、クラックが発生するまでのサイクル数を確認し、以下の基準に従って評価した。
(評価基準)
◎:500サイクルの確認時にもクラックが発生していない
〇:100サイクルを超え、500サイクルまでにクラックが発生する
×:100サイクルの確認時に既にクラックが発生している
Claims (18)
- 水性エマルション塗料用の成膜助剤であって、2種以上のグリコールエーテル(A)、及びエステル(B)を含み、
グリコールエーテル(A)が、水100gに対する溶解度(20℃)が20g以上のグリコールエーテル(A1)と、水100gに対する溶解度(20℃)が20g未満のグリコールエーテル(A2)とを含み、
グリコールエーテル(A1)とグリコールエーテル(A2)との割合が、前者/後者(重量比)=1/1〜1/15であり、
エステル(B)の水100gに対する溶解度(20℃)が1g未満であり、
グリコールエーテル(A)とエステル(B)との割合が、前者/後者(重量比)=1/0.001〜1/10である、成膜助剤(ただし、水性エマルション塗料が、水溶性および/または水分散性樹脂、遮熱顔料、オルガノシリケートおよび/またはその変性物、アルコキシシリル基の加水分解・縮合反応を促進させる硬化触媒を含有してなる塗料組成物である場合を除く)。 - 水性エマルション下塗塗料用の成膜助剤であって、2種以上のグリコールエーテル(A)、及びエステル(B)を含み、
グリコールエーテル(A)が、水100gに対する溶解度(20℃)が20g以上のグリコールエーテル(A1)と、水100gに対する溶解度(20℃)が20g未満のグリコールエーテル(A2)とを含み、
エステル(B)の水100gに対する溶解度(20℃)が1g未満である、成膜助剤。 - 水性エマルション塗料用の成膜助剤であって、2種以上のグリコールエーテル(A)、及びエステル(B)を含み、
グリコールエーテル(A)が、水100gに対する溶解度(20℃)が20g以上のグリコールエーテル(A1)と、水100gに対する溶解度(20℃)が20g未満のグリコールエーテル(A2)とを含み、
グリコールエーテル(A1)とグリコールエーテル(A2)との割合が、前者/後者(重量比)=1/1〜1/15であり、
エステル(B)の水100gに対する溶解度(20℃)が1g未満であり、
グリコールエーテル(A)とエステル(B)との割合が、前者/後者(重量比)=1/0.001〜1/10であり、
エマルションを構成する樹脂が、酸基含有モノマーを含む単量体成分(a)を重合成分とする、成膜助剤。 - 水性エマルション塗料用の成膜助剤であって、2種以上のグリコールエーテル(A)、及びエステル(B)を含み、
グリコールエーテル(A)が、水100gに対する溶解度(20℃)が20g以上のグリコールエーテル(A1)と、水100gに対する溶解度(20℃)が20g未満のグリコールエーテル(A2)とを含み、
グリコールエーテル(A1)とグリコールエーテル(A2)との割合が、前者/後者(重量比)=1/1〜1/15であり、
エステル(B)の水100gに対する溶解度(20℃)が1g未満であり、
グリコールエーテル(A)とエステル(B)との割合が、前者/後者(重量比)=1/0.001〜1/10である、成膜助剤(ただし、エチレングリコールモノ2−エチルへキシル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、及び2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオールモノイソブチレートを含む成膜助剤を除く)。 - グリコールエーテル(A1)とグリコールエーテル(A2)との割合が、前者/後者(重量比)=1/1〜1/15である、請求項2記載の成膜助剤。
- エステル(B)の水100gに対する溶解度(20℃)が0.1g以下である請求項1〜5のいずれかに記載の成膜助剤。
- エステル(B)が15〜30℃において液体である、請求項1〜6のいずれかに記載の成膜助剤。
- グリコールエーテル(A)とエステル(B)との割合が、前者/後者(重量比)=1/0.02〜1/1である、請求項1〜7のいずれかに記載の成膜助剤。
- 請求項1記載の成膜助剤を含む水性エマルション塗料(ただし、水性エマルション塗料が、水溶性および/または水分散性樹脂、遮熱顔料、オルガノシリケートおよび/またはその変性物、アルコキシシリル基の加水分解・縮合反応を促進させる硬化触媒を含有してなる塗料組成物である場合を除く)。
- 請求項2記載の成膜助剤を含む水性エマルション下塗塗料。
- 請求項3記載の成膜助剤と、酸基含有モノマーを含む単量体成分(a)を重合成分とする樹脂で構成されたエマルションとを含む水性エマルション塗料。
- 請求項4記載の成膜助剤を含む水性エマルション塗料。
- 窯業系基材の下塗用である請求項9〜12のいずれかに記載の塗料。
- 水性エマルションである、樹脂エマルションを含む請求項9、12又は13記載の塗料。
- 樹脂100質量部に対して、グリコールエーテル(A)を1〜80質量部、エステル(B)を0.01〜20質量部の割合で含む請求項9〜14のいずれかに記載の塗料。
- 工場塗装用である請求項9〜15のいずれかに記載の塗料。
- 窯業系基材上に下塗層が形成された塗装基材であって、下塗層が請求項8〜14のいずれかに記載の塗料で形成されている塗装基材。
- 窯業系基材上に、請求項9〜16のいずれかに記載の塗料を塗装し、請求項17記載の塗装基材を製造する方法。
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