上記のように、これまでのシステム若しくは開示された技術思想では、ピッキングシステムにおいては、選択する商品や投入すべき出荷容器を作業者に認識させる手段は大きな設備投資を伴う点灯表示器システムが主流であり、アソートシステムにおいても同様に点灯表示器を用いて作業者を誘導するものであった。
初心者でもわかり易く、ミスなく必要な商品を選択して出荷先別の指定された出荷容器に確実に投入するというピッキング作業及びアソート作業を、単純に継続して早く作業させるための的確な支援システムが望まれている。また、その作業指示は商品出荷配送センターにおける入出庫管理システム及び倉庫保管管理システムと連動し、受注出荷情報に基づく顧客別配送管理システムの一環でなくてはならない。
このように、商品物流保管倉庫での物品(商品)の出荷の際の出荷先別ピッキング作業及びアソート作業において、フロアの有効活用を図り、作業のスピードアップを図りつつ作業者のミスを最小限にするピッキングシステム、アソートシステム及びそのための装置の開発が望まれていた。本発明はこうした従来の技術上の問題点を解決することを企図したものであり、ピッキング作業及びアソート作業の作業性を格段に向上させつつ、商品入出荷における経済効率も格段に向上させることの可能な物品のピッキング及びアソートシステムを提供することをその課題とする。
かかる課題を解決するため、本発明に係る可動プロジェクタ式ピッキング・アソート装置は、物品と、映像投影手段と、上記物品を上記投影手段を用いてピッキング又はアソートするための情報処理システムとを備えたことを特徴とする。また、上記情報処理システムは、位置特定手段により上記投影手段を講じて上記物品の位置に映像を誘導投影することを特徴とする。さらに、上記位置特定手段は、バーコード、QRコード(登録商標)、ICタグ、ARマーカ、磁気マーカ、ホログラムのうちいずれか1つを含む識別ID情報による位置特定手段であることを特徴とする。つまり本発明に係る可動プロジェクタ式ピッキング・アソート装置においては、上記情報処理システムによってバーコード、QRコード(登録商標)、ICタグ、ARマーカ、磁気マーカ、ホログラムのうちいずれか1つを含む識別ID情報等から位置を特定された物品(商品)には、同様の情報処理システムによって上記映像投影手段から個別映像が投影され、それを認識して作業者によるピッキング又はアソートの作業が実施される。また、具体的には本発明に係る可動プロジェクタ式ピッキング・アソート装置は、上記識別ID情報を添付した物品(商品)と、上記識別ID情報を添付した出荷容器と、上記情報処理システムの一部である倉庫内物品入出庫管理システムと、倉庫内空間を三次元座標化した空間位置特定システムと、天井下面及び/若しくは壁面及び/若しくは床面を、移動可能な映像投影装置(プロジェクタ)と、上記倉庫内物品入出庫管理システム及び上記空間位置特定システムと連動した上記映像投影装置の制御装置とを具備して構成されていてもよい。
本発明に係る可動プロジェクタ式ピッキング・アソート装置の空間位置特定システムは、倉庫内立体空間の一点を基点にXYZ軸三次元座標化された仮想空間とし、仮想空間内に配置された識別ID情報を添付された物品及び/若しくは識別ID情報を添付された出荷容器及び/若しくは識別ID情報を添付された物品棚及び/若しくは識別ID情報を添付された物品移動手段の位置を座標において特定することができる。
本発明によれば、倉庫内入荷商品、商品棚、棚間口、出荷容器、カート台車、コンベア等には全てその物を特定するための識別ID情報が付されているため、例えばプロジェクタと共に又は単独で設置された撮影機器による画像認識によって上記識別ID情報が読み取られ、全ての物品が商品出荷配送センター内のどの位置にあるかが特定できる。
商品出荷配送センター内の物品位置認識技術については、識別ID情報をカメラ撮影により画像認識する方法の他に、個別ICタグを貼付した物品に対して超音波照射による個別位置情報の把握方法、赤外線による位置確認システム、特定部分の磁界形成によるICタグの反応情報感知方法など種々の三次元位置確認手法が技術化されているが、本発明に係る可動プロジェクタ式ピッキング・アソート装置においては、それらの物品位置三次元把握の技術についていずれかを特定して論じるものではない。三次元特定位置把握技術に対しては、上記の公知技術の範囲において選択して対応できるものである。
本発明に係る可動プロジェクタ式ピッキング・アソート装置は、倉庫内物品入出庫管理システムと連動しているため商品出荷指示の際、その商品が商品出荷配送センター内のどの位置にあるか及びその商品の出荷容器がどれか、いつ出荷しなければならないか等の情報を得て、その商品のピッキング作業及びアソート作業の作業指示をプロジェクタから投影する映像を介して作業者に指示することができる。
本発明に係る可動プロジェクタ式ピッキング・アソート装置のプロジェクタは天井又は壁又は床を、レール等を介して移動することができる。また、例えば天井、壁、床等に設置されたロボットアームのような伸縮及び空間移動が可能なアームの先端近傍に可動式プロジェクタを敷設し移動させることもできる。ロボットアームは制御装置の指示によりプロジェクタが映像を投影しやすい位置、例えば投影障害物のない位置になるよう伸縮移動する。そして移動可能なプロジェクタは、静止状態であっても同様の機能を有することはもちろんのことである。以降、このように移動可能なプロジェクタを「可動プロジェクタ」と称する。可動プロジェクタは、商品等の三次元位置情報を基に、映像を投影するために適した位置に移動することが可能であるため、ピッキング作業及びアソート作業に必要な映像を最も適した状態で作業者に投影認識させることができる。
本発明に係る可動プロジェクタ式ピッキング・アソート装置は、空間位置特定システムに位置認識を可能とする識別ID情報を添付した物品棚及び/若しくは空間位置特定システムに位置認識を可能とする識別ID情報を添付した物品移動手段(カーゴ車、コンベア)と、作業者に貼付した識別ID情報とを具備して構成されることもできる。
本発明に係る可動プロジェクタ式ピッキング・アソート装置は、商品出荷配送センター内の物品棚、カーゴ台車、コンベア等にも識別ID情報が貼付されているため、例えばそれらが移動した場合であっても撮影画像による識別ID情報の認識により、三次元位置情報が逐次把握できる。これにより可動プロジェクタは必要な映像を必要な時に移動前後又は移動中であっても物品棚、カーゴ台車、コンベア等に投影することができる。
つまり、本発明に係る可動プロジェクタ式ピッキング・アソート装置は、識別ID情報を読み込むことにより商品位置及び出荷容器位置を特定する空間位置特定システム及び倉庫内物品入出庫管理システムの出荷情報に連動した映像投影装置の制御装置が、可動する映像投影装置を介して商品個別情報映像を商品及び/若しくは商品棚及び/若しくは出荷容器及び/若しくは物品移動手段に投影することを特徴とする。
加えて本発明に係る可動プロジェクタ式ピッキング・アソート装置は、映像投影装置には画像認識装置が併設され、逐次移動する物品及び/若しくは出荷容器及び/若しくは物品移動手段の識別ID情報を画像認識することにより各々の空間位置を特定し、商品個別情報映像を任意の特定位置に投影する。
本発明に係る可動プロジェクタ式ピッキング・アソート装置の映像投影装置の制御装置は、可動プロジェクタに対して映像を投影すべき三次元位置を指示し、可動プロジェクタはレール等を介してその位置に移動することができる。ただし本発明における可動プロジェクタの移動手段は、レール等を介しての移動に限定せず且つ移動機構も車輪の電動移動等に限定するものではない。周知技術の範囲で可動プロジェクタの移動は電動又は無線、有線電気通信、LAN等のシステムを用いて任意コントールできればよい。
本発明に係る可動プロジェクタ式ピッキング・アソート装置は、商品個別情報映像が、物品の映像及び/若しくは物品を特定する識別マーク及び/若しくは文字及び/若しくは図形及び/若しくは記号及び/若しくは色彩及び/若しくは写真の情報映像であって、数量、大きさ、色、濃淡、点滅が選択され、複数の物品の出荷容器及び/若しくは出荷容器近傍に同時に投影される。
本発明に係る可動プロジェクタ式ピッキング・アソート装置は、その商品個別情報映像が、物品のピッキング又はアソート作業の終了の際に作業者が実施すべき作業終了動作を催促するための映像情報を含むこともできる。
作業者は、1の商品をピッキングし又はアソートし出荷容器に投入を終了した時点で1の作業(単位作業)の終了となり次の作業に進む。この際、次の作業を本発明に係る可動プロジェクタ式ピッキング・アソート装置が映像を投影して指示することになるが、前の単位作業が終了したことを認識しなければ次の作業指示につながらないため、作業者は音声の他、電気通信又は特定動作を画像認識させる等の手段で単位作業の終了を伝達する。その終了を伝達する手段をも本発明に係る可動プロジェクタ式ピッキング・アソート装置は予め投影する映像に含むことができる。
つまり、映像投影装置の制御装置及び/若しくは映像投影装置の制御装置に連接した画像認識装置及び/若しくは音声認識装置が、ピッキング又はアソート作業の作業終了動作情報を認識した後、商品個別情報映像の投影が終了され、ピッキング又はアソートの単位作業が終了する。もちろん単位作業の終了の認識手段は、作業者の動作認識以外にも投入された物品の画像認識や投入された容器の重量検知によっても認識できることは周知技術のとおりであり、本発明全体としては、作業者の動作認識を単位作業終了の認識手段として限定するものではない。
上記撮影画像による位置認識はプロジェクタ装置自体にも成されるため、プロジェクタは移動しつつも逐次その位置がシステム上認識されているため、必要な映像をシステムの指示通りに指定された位置に投影することが可能となる。
上記商品出荷配送センター内(商品物流倉庫内)は、一定カ所を0基準としてX軸、Y軸、Z軸で表された三次元座標化され、全ての位置においてX,Y,Zの空間位置の特定が成されているため、カメラ等撮影機器の画像認識によって識別ID情報を認識された物品は、商品出荷配送センター内のどの位置にあるかが本発明によるシステムによって把握されている。
よって、例えば、商品出荷の際、どの特定商品をいつまでにどの出荷容器にアソートするのか、どの商品棚にあるどの特定商品をいくつピッキングして、どの容器に投入するのかは、商品出荷配送センターの倉庫内物品入出庫管理システムによって把握されている。この情報は、上記の商品等物品別の商品出荷配送センター内の位置情報と連接されているため、同時に商品出荷の際、個別商品の位置、出荷容器の位置は全て連動して把握することができる。
本発明に係る可動プロジェクタ式ピッキング・アソート装置は、商品出荷配送センター内の物品入出庫管理システムと連動し、個別商品の出荷情報に基いてその商品の棚位置、商品位置、数、出荷時間、出荷容器の位置、その他の商品別の個別情報そして識別ID情報を付与された作業者の位置、作業者のスキル等に伴う作業者個別情報に至るまで把握できるため、上記出荷情報に基づいて、どの作業者にどの位置にあるどの商品をいくつピッキングして、どの出荷容器、どのカーゴ台車、どのコンベアに投入すべきかを逐次判断して指示することができる。
また、上記の指示は、作業者の特定情報に基づいて、その作業者であればこのピッキング作業又はアソート作業にどのくらいの時間を要するかが予め把握できるため、作業者に対する作業順番及び同様に作業者の選択、作業者同士の作業コースの交わり回避、作業のための移動距離、作業現場の作業密度等を逐次判断しながら、最短時間でトータル作業の完了を成し得る作業プログラムをシミュレーションすることができる。
商品の映像は、その商品ごとに予め作成された映像情報であり、上記識別マーク、文字、図形、写真等を含めて映像の内容に制限はない。アソートすべき商品の数も指定できる。その他、作業者に伝達すべき特定商品の付随情報についても映像の中に含めることができるため、視覚認知できる情報であればあらゆる情報を作業者に伝達及び指示することができる。
この作業シミュレーションに従いプロジェクタは、予め保存された個別商品及び個別商品に付随する映像情報(商品個別情報)を、指示映像として必要な作業者及び棚、商品等に投影すればよいことになる。
本発明に係る可動プロジェクタ式ピッキング・アソート装置によれば、天井等のレールに設置されたプロジェクタが移動しながら個別映像を目的である商品又は出荷容器、コンベア上の出荷容器、商品棚、間口等に投射することができるため、ピッキング作業又はアソート作業において、作業者は、その映像の指示のみに従って作業を遂行することができる。また、広範囲に及ぶアソート作業現場及びピッキング作業現場において、可動プロジェクタからの映像が投射しにくいような距離にある商品棚、商品又はコンベア等に、レールを介して移動しながら目的物に近接して映像を投射できる。多数のプロジェクタを設置する必要がなくなるため、設備投資費用が削減できる。
従来は、作業者が商品をアソートすべき出荷容器を探し出すための点灯ランプ又は表示がアソートフロア及びラック棚、出荷容器の各々に設置されている必要があり、それらは全て出荷管理情報に電気的に接続されていることを要するため、膨大な設備投資が必要であった。しかし本発明のプロジェクタ利用アソート装置においては、プロジェクタ装置によって映像投影できる範囲であれば全て対応できるため設備投資は大幅に削減できる。プロジェクタ装置の数は必要に応じて増やし、併設すればよい。
本発明によれば、多種類の商品を顧客である仕向け先に配送するための物流拠点のピッキング作業及びアソート作業において、作業者が、指定された商品を必要な数だけ的確に選択し、設定された出荷容器に正確に投入するというすべての作業行為に対して、単純なミスを発生させることなく、早く、継続して作業をすることができるよう支援できる。
また、出荷容器やラック棚、フロア入口部、コンベア隣接部等に出荷管理システムと連動した個別のランプ点灯設備を設置するなどの設備投資は不要であり、安全性と作業性を格段に向上させつつ、経済効率も格段に向上させることの可能な物品入出庫管理システムが実現される。
以下、図面を参照して本発明を実施するための形態について説明する。なお、以下では本発明の目的を達成するための説明に必要な範囲を模式的に示し、本発明の該当部分の説明に必要な範囲を主に説明することとし、説明を省略する箇所については公知技術によるものとする。
図1は、本発明の一実施形態に係る可動プロジェクタ式ピッキング・アソート装置のアソートフロア全体イメージを示した斜視概念図である。同図に示すように、商品出荷配送センター内のフロアは、商品の入庫から検品、倉庫保管、出荷のためのピッキング作業又はアソート作業そして出荷容器包装、出荷に至るまでの各工程がフロア区画ごとに構成されている。図1は、そのアソートフロア2の概念図である。
本発明の一実施形態に係る可動プロジェクタ式ピッキング・アソート装置の可動プロジェクタ11は天井及び/若しくは壁及び/若しくは床に設置されたレール21を介して移動することが可能な形態で設置されている。図1においては可動プロジェクタ11が天井を移動する態様の例を図示している。
アソートフロア2にはラック棚(出荷容器棚)16が複数列に設置されており、その間を作業者15がU字型に進行しながらアソート作業を行う。複数の間口を有する各ラック棚16の中には間口ごとに出荷先別の出荷容器14が設置されている。各ラック棚16の背後には出荷用コンベア13が配置されており、この出荷用コンベア13は、商品投入を終えた出荷容器14を運搬し出荷トラックヤードへと向かう。
図1に示すように作業者15は、商品17が掲載されたカート車(カゴ車)18を、アソートフロア2内をU字型に移動させながら、各ラック棚16の指定された出荷容器14に商品を投入(アソート)する作業を行う。必要な商品が全て投入された出荷容器14はラック棚16の背後にある出荷用コンベア13に押し出され、コンベアに掲載されて出荷トラックヤードへと移動する。
図1に示すように、本発明の一実施形態に係る可動プロジェクタ式ピッキング・アソート装置のプロジェクタ制御装置12は例えばアソートフロア2の近傍にあって、無線、有線電気通信又はLAN等の通信手段を用いて天井を移動する可動プロジェクタ11をコントロール制御する。可動プロジェクタ11からは作業者15がアソートすべき商品17、ラック棚16又は出荷容器14等にアソートすべき商品の個別映像が投影される。
この映像の投影場所は、カート台車18やアソートフロア2の入り口、作業者自身などであってもよく、複数の可動プロジェクタ11から複数の投影映像が作業者へのアソート作業支援を目的に投影される。つまり本発明の一実施形態に係る可動プロジェクタ式ピッキング・アソート装置の可動プロジェクタ11は移動しながら、アソートフロア2の作業者15がすべきアソート作業の支援のための映像を必要な時に必要な場所に投影する。
図2は、本発明の一実施形態に係る可動プロジェクタ式ピッキング・アソート装置のピッキングフロア全体イメージを示した斜視概念図である。同図に示すように本発明の一実施形態に係る可動プロジェクタ式ピッキング・アソート装置の可動プロジェクタ11は天井に設置されたレール21を介して移動することが可能な形態で設置されている。但し上述のように、本発明に係る可動プロジェクタ11の移動場所は天井に限定するものではなく、また移動方法もレール走行に限定するものではない。
レールでなくても一定方向に対し正確に移動できる手段を用いての移動であればよい。例えば、天井にテープ状に付された識別ラインを感知してそれに沿って移動するものであってもよい。例えば天井、壁、床等に設置されたロボットアームのような伸縮及び空間移動が可能なアームの先端近傍に可動式プロジェクタを敷設し移動させることもできる。ロボットアームは制御装置の指示によりプロジェクタが映像を投影しやすい位置、例えば投影障害物のない位置になるよう伸縮移動する。本発明はプロジェクタの移動機構について何ら限定するものではない。そして移動可能なプロジェクタは、静止状態であっても同様の機能を有することはもちろんのことである。いずれも本発明の範囲内の技術思想である。
ピッキングフロア3には出荷容器14が順次流れるコンベア22が1以上設置されており、その近傍には商品17を配置した商品棚23が複数列に設置されており、その間を作業者15がピッキング作業を行う。コンベア22の上を流れる出荷容器14はコンベアを介して出荷トラックヤードへと向かう。
図2に示すように作業者15は、商品17が配膳された商品棚23から指定された商品17をピッキングし、指定された出荷容器14に投入する作業を行う。必要な商品が全て投入された出荷容器14はコンベア22に搭載されて出荷トラックヤードへと移動し出荷される。
図2に示すように、本発明の一実施形態に係る可動プロジェクタ式ピッキング・アソート装置のプロジェクタ制御装置12はピッキングフロア3にあって、無線、有線電気通信又はLAN等の通信手段を用いて天井を移動する可動プロジェクタ11をコントロール制御する。可動プロジェクタ11からは作業者15がピッキングすべき商品17や商品棚23又は出荷容器14に必要な個別映像が選択され投影される。
この投影映像の投影場所は、コンベア22の特定場所や商品仮置き棚、作業者自身などであってもよく、複数の可動プロジェクタ11から複数の投影映像が作業者へのピッキング作業支援を目的に投影される。本発明の一実施形態に係る可動プロジェクタ式ピッキング・アソート装置の可動プロジェクタ11は移動しながら、ピッキングフロア3の作業者15がすべきピッキング作業の支援のための映像を必要な時に必要な場所に投影する。
図3は、本発明の一実施形態に係る可動プロジェクタ式ピッキング・アソート装置のフロア全体の空間位置を把握するイメージを示した斜視概念図である。同図はフロア内の空間を示している。同図に示すように、商品配送センター内の一点を基準点(0、0、0)24として設定し、例えば水平南北方向をX軸、水平東西方向をZ軸そして垂直方向をY軸と設定する。
図3に示すように、例えば商品Qの位置は立体空間座標(X、Y、Z)で特定される。同様に可動プロジェクタ11の位置も立体空間座標(x、y、z)によって特定される。この立体空間座標によって、商品、商品棚、出荷容器、コンベア、作業者、可動プロジェクタなど商品配送センター内の全ての物品は、その位置(フロア内住所(x、y、z))を特定することができる。
商品出荷配送センター内の商品、商品棚、間口、カート台車、出荷容器、コンベア、可動プロジェクタそして作業者は特定の識別ID情報を貼付されており、その識別ID情報はカメラ撮影による画像認識装置により認識され立体空間位置も特定される。識別ID情報は、バーコード、QRコード(登録商標)等の識別子情報であってもよい。識別ID情報は電子タグのようなICに読み込まれた特定識別情報であってもよいが、この場合はカメラ画像認識(画像読取り)ではなく電子的読取り手段によって読み取られることになる。
いずれの場合も、その識別ID情報は本発明に係る可動プロジェクタ式ピッキング・アソート装置の画像読取り装置又は電子認識装置によって読み取られ認識される。そして、それらの位置も同時にXYZ座標によって識別されている三次元位置情報と連動しているため、例えばある特定の商品が現在フロア内のどの位置にあるか、又は特定の出荷容器がフロア内のどの位置にあるかを逐次把握することが可能な状態となっている。カメラ撮影機器は、フロア内に必要な数を設置すればよいし、場合によっては可動プロジェクタに併設し共に移動可能であってもよい。
そして本発明の一実施形態に係る可動プロジェクタ式ピッキング・アソート装置は、上記のように三次元の物品ロケーション(位置認識)データベースを構築する。この物品ロケーションデータベースが倉庫内物品入出庫管理システムと連結している。棚、物品の現在の位置登録、位置変更登録も例えばカメラ撮影機器25による画像認識によって成される。もちろん物品の三次元位置登録は、識別ID情報の予めの読取り及び入力により可能であるが、同時にカメラ撮影機器による画像認識によっても可能である。カメラ撮影機器による画像認識のメリットは移動物品に対して逐次位置認識が可能になることである。このシステムは例えば移動するコンベアに対してもコンベア上の特定位置に対して適応可能である。原理はまったく同じであり、これらの画像認識技術は公知技術として既に汎用化されている。
三次元位置認識(位置把握)の方法は、赤外線、超音波等の発信受信を通して実施する場合や、場合によってはGPS(グローバル・ポジショニング・システム)によっても技術的には位置把握が可能である。三次元位置認識技術の選択において、本発明はその技術を特定又は限定するものではない。レーザー画像認識であってもカメラ撮影画像認識であっても三次元位置認識については同じように本発明では活用できるからである。
例えば超音波三次元位置管理システムは、作業者や商品、ラック棚、出荷容器等の物品に超音波発信タグを取り付け且つ天井にレシーバを一定間隔で取り付けて三次元位置を把握する技術である。システムのホストコンピュータ指示に従いレシーバから無線で検知器(超音波発信タグ)に指示が送られ、指示された超音波発信タグは超音波を発信し、レシーバまでの超音波の到達時間からホストコンピュータが各物品の三次元位置座標を算出する技術である。この場合も識別ID情報に超音波発信機能を付加すれば本発明に対応するものとなる。
本発明の一実施形態に係る可動プロジェクタ式ピッキング・アソート装置の活用はアソート作業やピッキング作業に限定されずに商品出荷配送センター内の物品移動に全て適応することができる。物品は全て入荷の時点で識別ID情報が付与されるため、その時点で識別ID情報を画像認識又は読取り入力すれば、そこからは全ての工程において三次元位置認識されることになる。例えばID認識できなかった場合においてもカメラ画像にキャッチされた時点で位置認識され、その時点からは逐次追尾して三次元位置認識されることになる。商品は入荷時点において検品作業の一環として全て検収されるため、確実に識別ID情報を認識され且つ物品ロケーションデータベースに入力されることになる。
その後の工程は、ピッキング作業による出荷であってもアソート作業による出荷であっても同じことである。まず商品は倉庫の特定の位置または棚、間口に入庫されることになるが、入庫と同時に識別ID情報をカメラが画像認識する。どのような識別ID情報を持った物品が倉庫のどの位置に入庫されたか、その物品の入出庫管理システムの商品個別データと共に位置を絶えず把握することができる。
商品個別データは例えば、製造メーカ名、商品名、製造年月日、取引関係、値段、有効期限、数などの個別データと「紐付け」されている。ここで、情報の「紐付け」について定義する。一方の識別情報と他方の識別情報とを対応付けするということは、一方の識別情報に他方の識別情報を一対一で関連対応付けすることである。このことにより一方の識別情報が特定された場合、必然的にもう一方の情報が特定される関係となる。以降、この対応付けの関係をわかり易く「紐付け」と称する。
プロジェクタ制御装置12は、商品の識別ID情報をカメラ撮影映像を介して画像認識し同定することによって、倉庫内物品入出庫管理システムにおける商品個別データベースと照らし合わせ、その商品に予め紐付けされた個別映像データや特定情報を抽出し可動プロジェクタに送信提供する。
物品入出庫管理情報は通常商品出荷配送センターの全入出庫管理システムによって管理されているため、このデータベース等とのリンクによって本発明の一実施形態に係る可動プロジェクタ式ピッキング・アソート装置も稼働することになる。例えば、商品出荷に関しては、いつ、どの出荷先に、何を出荷するかの物品入出庫管理情報の指示にしたがいピッキング作業又はアソート作業の指示が出されることになるが、それらは全て本発明の一実施形態に係る可動プロジェクタ式ピッキング・アソート装置に提供されることになる。
つまり倉庫内物品入出庫管理システムからその商品を倉庫保管するのか、ピッキング出荷するのかアソート出荷するのかが選択され、その情報に基き本発明の一実施形態に係る可動プロジェクタ式ピッキング・アソート装置のプロジェクタ制御装置12が、その商品にその旨の作業を促すための指示映像を選択し可動プロジェクタ11に送る。
入庫された商品を検品入庫する場合も同様である。出荷の前に、例えば入庫後の倉庫保管の場合はその倉庫の棟番号、保管棚番号、保管棚段、棚位置に関する映像が選択されてその映像がその商品に照射されて映像の指示通りに作業者はその商品をその住所の棚に保管する。その場合、その棚段、棚位置にも同様の映像が可動プロジェクタにより投影されているため、作業者はミスすることなくその商品をその棚位置に保管することができる。
商品出荷の際は、物品入出庫管理システムの出荷指示によって、いつ倉庫内のどの位置にあるどの識別ID情報を持った商品をいくつどの出荷先別出荷容器に投入すべきかが伝達される。本発明の一実施形態に係る可動プロジェクタ式ピッキング・アソート装置のプロジェクタ制御装置のなかで作業の優先順位及びフロア配置、時間、作業者、アソートなのか、ピッキングなのか等の全てがシミュレーションされ、最適最短作業が選択される。そして可動プロジェクタの映像によって現実の指示が時間通りに必要な場所に必要な作業者をターゲットに投影されることになる。
コンベア上を流れる出荷容器に対して商品をピッキング投入する作業においては、その出荷容器の動きに従ってその位置情報を正確に認識して正確に映像を投影することができればよい。コンベア上を流れる出荷容器にも識別ID情報が貼付されており、その情報をカメラ撮影によって画像認識することによって三次元位置が認識される。コンベアのスピードや時間に対する位置は従来から全て物品入出庫管理システム内の設備制御システムでコントロールされているため、コンベアに乗った出荷容器がいつどの位置にあるかを検知することは従来方法でも可能である。
カメラ撮影機器による場合は逐次移動する出荷容器の識別ID情報をカメラ撮影し画像認識することが可能であるため、その移動中の位置に対してはむしろコンベアスピードから算出される位置情報よりも現実情報として正確である。本発明においては上記のどちらを選択してもよく、いずれかを限定するものではない。
またその出荷容器に投入すべき物品の棚位置も同時に物品ロケーションデータで把握済みであり、どの作業者がいつその物品をどの商品棚から選択してどの出荷容器に投入すべきかは、全てシミュレーションされた情報に基づいて可動プロジェクタ11により作業指示の映像投影によって作業者に適時指示がなされるのであるから、作業者はその映像の指示に従い忠実に作業をするだけでよい。
因みに作業者のスキルの問題によって作業者の作業スピード等に個人差がある場合は、作業者による作業スピードの高低を指標化したデータを予めシステムに入力し、データベース化しておけばよい。そのスピードデータに基づいてプロジェクタ制御装置が作業割り付けのシミュレーションを実施するだけである。
具体的なピッキング作業については、まず選択すべき商品棚23の選択すべき商品17に、例えば商品の映像及び作業者のための特定映像、選択すべき商品数等が映像として投射される。その投影映像19の通りに作業者はその商品17を選択ピッキングする。次にコンベア22上を流れてくる出荷容器14にその映像が投影されるため、作業者はその商品17をその出荷容器に投入する。
これがピッキング作業の単位作業とすると、その作業の終了を作業者が本発明の一実施形態に係る可動プロジェクタ式ピッキング・アソート装置に伝達する必要がある。つまり単位作業が終了して初めて次の単位作業の指示が作業者に充てられることが基本であるからである。集音マイクを用いた音声によって終了を伝達することもできるが、例えば、作業者が単位作業終了時に片手を大きく上げることが単位作業終了を告知する合図である場合は、作業終了後片手を大きく上げる旨の映像が商品の個別映像と共に投影されていれば、作業者はその通りに行動すればよい。片手を大きく上げた作業者の動作をカメラ撮影機器が画像認識することによってプロジェクタ制御装置による単位作業の終了が認識されて次の作業指示のトリガーとなる。
上記の単位作業の繰返しが一定時間におけるピッキング作業の総数であり、これが例えば出荷先ごと又は作業者ごとフロアごとあるいは一定時間ごとに構成されているため、上述のプロジェクタ制御装置のシミュレーションはそれを予め設定するために行う最適な作業計画書(順番書)を作るための行為と同じことになる。
複数の商品を同時にピッキングして同一容器に投入する作業の場合もまったく同様に投影された映像にピッキングすべき数量が表示されていればよいことになる。商品の待ち置き処理や手待ち仮置きなどの作業に対しても同様に可動プロジェクタの投影映像を介して作業者に指示できることは同様である。
本発明の一実施形態に係る可動プロジェクタ式ピッキング・アソート装置による作業指示は、商品のアソート作業による出荷においても同様である。例えば、その商品をアソートしてその商品を出荷するラック棚の出荷先が特定された出荷容器に投入して出荷するアソート作業の場合は、入荷商品17の識別ID情報を撮影認識した後、個別商品映像をアソートするためのカート台車18に投影させて、作業者はその商品をそのカート台車に積載する。その後、可動プロジェクタ11は、進入すべきアソートフロア2に映像を投射して作業者を導き、フロア内のラック棚16、間口、出荷容器14へと映像投射によって誘導し、作業者のアソート作業をミスなく遂行させる。
本発明の一実施形態に係る可動プロジェクタ式ピッキング・アソート装置によって投影される映像には、顧客情報及び特定情報をも含む。その顧客への、出荷の際は例えば特定広告を含むとか、何を同梱するとか、冷凍処理をするとか、そのような顧客個別データとも連動してそのために必要な情報の映像を同時に投影することができる。
本発明の一実施形態に係る可動プロジェクタ式ピッキング・アソート装置の可動プロジェクタは、自らが移動可動であることに特徴を有し、作業指示のための映像を投射するのに最も適した位置に移動しながら映像を投射することができる。また、可動プロジェクタにも識別ID情報が付されているため、カメラ撮影機器の画像認識によって可動プロジェクタ11の三次元座標位置は逐次捕捉され、上記同様物品ロケーションデータとしてプロジェクタ制御装置12によるコントロールのための情報となる。もちろんカメラ撮影機器が可動プロジェクタと共に移動する場合も同様にカメラ撮影機器に付された識別ID情報を他のカメラ撮影機器が画像認識することによって三次元位置情報は認識される。もちろんGPS(グローバル・ポジショニング・システム)によっても技術的には位置把握は可能である。
プロジェクタ制御装置は、上記情報を基に可動プロジェクタ11に移動すべき三次元座標位置を指示することができる。例えば可動プロジェクタ11が数種類の映像を投影する場合においては、それらの投影先すべてに対して的確な映像を投影できる最適場所が三次元座標位置としてプロジェクタ制御装置から指示されることになる。
例えば可動プロジェクタの移動方法がレールを介した電動車輪走行の場合、図2に示すように天井に敷設されたレールには一定間隔で細分化された三次元座標位置が予め設定されており、可動プロジェクタ11はプロジェクタ制御装置から移動すべきレール上の三次元座標位置の指定を受けてその位置までコントロールされ移動することになる。その指定された三次元座標位置はそのピッキング作業又はアソート作業を指示するための映像を最も投影し易い位置として選択された位置である。
移動方法がレール走行に限定されることなく又移動場所が天井に限定されることなく床や壁であっても可動プロジェクタが移動できるルートが敷設された各ポイントに三次元座標位置が設定されていれば、プロジェクタ制御装置は可動プロジェクタをその位置まで制御移動させることができる。
また、プロジェクタ制御装置が指示する三次元座標位置はピッキング又はアソート作業場所のみによって決定されるものだけではない。例えば、特定の作業者のみの作業を支援するために、その作業者の移動に追随して可動プロジェクタが移動する場合も、その作業者の識別ID情報を画像で認識しながら三次元座標位置を特定してプロジェクタ制御装置が可動プロジェクタを追尾移動させることもできる。
同様に、特定商品を指定してその商品の移動に追随して可動プロジェクタを移動させ映像を投影することもできる。また、例えばコンベア上の特定出荷容器のみを指定して、その出荷容器の移動を追尾しつつ、その出荷容器に必要なピッキング又はアソート作業のみの支援映像を必要な場所に投影することもできる。
上記支援映像等の情報は全てデータとしてプロジェクタ制御装置から特定の可動プロジェクタに送信される指示情報であるから、例えばその指示情報をある時点から別の可動プロジェクタに切替えて送信することが可能である。つまり複数の可動プロジェクタが、映像の投影場所又はフロアーエリア別又は時間別等により切り替わりながら映像を投影することもできる。また同一作業の複数の支援映像を複数の可動プロジェクタから同時に投影することも可能である。
本発明に係る可動プロジェクタ式ピッキング・アソート装置は、倉庫内物品入出庫管理システムから発せられた特定商品の出荷指示に従い、プロジェクタ制御装置が、その特定商品の映像を選択し且つその特定商品の出荷時間等の出荷情報及び出荷容器位置情報若しくは商品位置情報等と共に可動プロジェクタに伝達し、その映像を特定商品及び出荷容器に投影させる。その際、可動プロジェクタは映像の投影に好ましい位置に移動することができる。
商品出荷配送センター内の物品は、商品だけではなく商品棚、出荷容器、カート台車、本発明に係る可動プロジェクタそして作業者までもが、識別ID情報により空間位置座標を特定されているため、可動プロジェクタによる映像はプロジェクタ制御装置のコントロール制御によって任意の位置、時間に投影することができる。
作業者は、実施する入荷商品の検品・入庫作業及び/若しくはピッキング作業及び/若しくはアソート作業などにおいて、可動プロジェクタから投影された映像に表現された情報に基いて作業を行えばよいため、作業ミスは激減することになる。
加えて、本発明に係る可動プロジェクタ式ピッキング・アソート装置は、複数の可動プロジェクタがプロジェクタ制御装置により任意に移動しながらあらゆる場所に必要な映像を必要なタイミングで投影できることにより、商品出荷配送センター内で想定される様々な作業を支援することが可能になる。
なお、本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲内で種々変更して実施することが可能である。これらはすべて、本技術思想の一部である。