JP6974368B2 - 絶縁塗料、及びこれを用いた絶縁電線の製造方法 - Google Patents

絶縁塗料、及びこれを用いた絶縁電線の製造方法 Download PDF

Info

Publication number
JP6974368B2
JP6974368B2 JP2019003868A JP2019003868A JP6974368B2 JP 6974368 B2 JP6974368 B2 JP 6974368B2 JP 2019003868 A JP2019003868 A JP 2019003868A JP 2019003868 A JP2019003868 A JP 2019003868A JP 6974368 B2 JP6974368 B2 JP 6974368B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
solvent
insulating
conductor
insulating film
present
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Active
Application number
JP2019003868A
Other languages
English (en)
Other versions
JP2020111680A (ja
Inventor
佳祐 池田
賢 足立
恵一 冨澤
亮 国分
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Essex Furukawa Magnet Wire Japan Co Ltd
Original Assignee
Essex Furukawa Magnet Wire Japan Co Ltd
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Essex Furukawa Magnet Wire Japan Co Ltd filed Critical Essex Furukawa Magnet Wire Japan Co Ltd
Priority to JP2019003868A priority Critical patent/JP6974368B2/ja
Publication of JP2020111680A publication Critical patent/JP2020111680A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP6974368B2 publication Critical patent/JP6974368B2/ja
Active legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Images

Landscapes

  • Organic Insulating Materials (AREA)
  • Processes Specially Adapted For Manufacturing Cables (AREA)
  • Paints Or Removers (AREA)

Description

本発明は、絶縁皮膜の形成に好適な絶縁塗料に関する。また本発明は、前記絶縁塗料を用いた絶縁電線の製造方法に関する。
インバータ関連機器(高速スイッチング素子、インバータモーター、変圧器等の電気・電子機器用コイルなど)には、マグネットワイヤとして、導体の周囲に絶縁性樹脂の被覆層(絶縁皮膜)を形成した絶縁電線(エナメル線)が用いられている。
近年、ハイブリッドカーや電気自動車の普及に伴い、モーター効率の向上が求められ、高電圧におけるモーターの作動やインバータ制御が求められている。このような高電圧下で絶縁電線を使用すると、絶縁皮膜表面に部分放電(コロナ放電)が発生し、絶縁皮膜の劣化を誘発する。この部分放電を抑えるには、絶縁皮膜を一定程度厚くして、部分放電開始電圧を高めることが必要となる(例えば特許文献1)。
国際公開第2015/098639号公報
導体の周囲への絶縁皮膜の形成は、絶縁性樹脂を含む絶縁塗料を導体周囲に塗布し、焼付けることにより行われる。しかし、絶縁皮膜を厚膜とするために絶縁塗料を厚く塗布すると、それに続く焼付けにおいて、塗布膜中の溶媒濃度にばらつきが生じ、問題となる。具体的には、塗布膜表面の溶媒は素早く揮発するため、塗布膜中の溶媒が十分に揮発する前に塗布膜表面の溶媒濃度が低下し、塗布膜中に溶媒が多く残留した状態で当該表面が固まってしまう。この残留溶媒は発泡を誘発し、絶縁皮膜の外観不良を生じたり、得られる絶縁電線の可撓性を低下させたり、導体と絶縁皮膜との密着性を低下させたりする原因となる。
したがって、絶縁皮膜を厚く形成する場合には、塗布・焼付けを繰り返して薄層の皮膜が多層に設けられる。しかし、塗布・焼付けの繰り返しは製造工程数を増やし、投じるエネルギー量も増大し、コスト面において課題がある。また、絶縁皮膜を薄膜に形成する場合でも、従来の絶縁塗料では、溶媒を十分に揮発させるために高温により焼付けが行われている。
本発明は、導体周囲に絶縁皮膜を形成するのに好適な絶縁塗料であって、この絶縁塗料により形成した塗布膜は焼付けにより溶媒が効率的に除去され、外観に優れ、可撓性に優れ、また導体と絶縁皮膜との密着性にも優れた絶縁電線を得ることができる絶縁塗料を提供することを課題とする。また本発明は、上記絶縁塗料を用いて絶縁電線を製造する方法を提供することを課題とする。
本発明者らは上記課題に鑑み鋭意検討を重ねた結果、絶縁塗料に用いる溶媒として、互いの沸点及び溶解度パラメータが特定の関係にある少なくとも2種の溶媒を用いることにより、上記課題を解決できることを見出した。本発明はこれらの知見に基づきさらに検討を重ねて完成されるに至ったものである。
本発明の上記課題は下記の手段により解決された。
〔1〕
絶縁皮膜を形成する絶縁性樹脂と、該絶縁性樹脂を溶解してなる溶媒とを含有する絶縁塗料であって、
前記絶縁性樹脂がポリアミドイミド樹脂及び/又はポリイミド樹脂を含み、
前記溶媒が、沸点が150〜210℃である溶媒Sと、該溶媒Sよりも沸点が20〜50℃高い溶媒Sとにより構成され、溶媒S の溶解度パラメータが20〜24、溶媒S の溶解度パラメータが15〜21であり、溶媒S の溶解度パラメータが溶媒S の溶解度パラメータよりも高く、溶媒Sと溶媒Sとの間の溶解度パラメータの差が5以内であり、前記絶縁塗料中の全溶媒に占める溶媒Sの割合が0.01〜20質量%である、絶縁塗料。
〔2〕
前記絶縁性樹脂がポリアミドイミドを含む、〔1〕に記載の絶縁塗料。
〔3〕
前記溶媒SがN−メチル−2−ピロリドンを含む、〔1〕又は〔2〕に記載の絶縁塗料。
〔4〕
導体の周囲に〔1〕〜〔3〕のいずれか1項に記載の絶縁塗料を塗布し、焼付けて絶縁皮膜を形成することを含む、絶縁電線の製造方法。
本発明において、「〜」を用いて表される数値範囲は、その前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む範囲を意味する。
本発明の絶縁塗料は、導体周囲に塗布し、焼付けることにより、溶媒が効率的に除去されて、外観に優れ、可撓性に優れ、また導体と絶縁皮膜との密着性にも優れた絶縁電線を得ることができる。また、本発明の絶縁電線の製造方法によれば、外観に優れ、可撓性に優れ、また導体との密着性にも優れた絶縁電線を得ることができる。
図1は、本発明の絶縁電線の一実施形態を示す概略断面図である。
[絶縁塗料]
本発明の絶縁塗料は、絶縁性樹脂と溶媒とを含有する。この絶縁性樹脂は、絶縁塗料を塗布し、焼付けて形成される絶縁皮膜を構成する。
上記絶縁性樹脂としては、耐熱性の高い樹脂が好ましい。このような樹脂としては、ポリアミドイミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリエステルイミド樹脂、ポリエステル樹脂を挙げることができる。上記絶縁性樹脂は、ポリアミドイミド樹脂及び/又はポリイミド樹脂を含むことが好ましく、ポリアミドイミド樹脂を含むことがさらに好ましく、ポリアミドイミド樹脂であることが特に好ましい。
本発明の絶縁塗料は、上記溶媒中に上記絶縁性樹脂を溶解してなる。本発明の絶縁塗料は少なくとも2種の溶媒を含み、少なくとも2種の溶媒は2つのグループに分類される。1つのグループはいわゆる高沸点溶媒(以下、「溶媒S」と称す。)であり、別のグループは溶媒Sよりも沸点の低い溶媒(以下、「溶媒S」と称す。)である。溶媒Sの沸点は、溶媒Sの沸点よりも20℃以上高く、また、溶媒Sと溶媒Sとの間の溶解度パラメータ(SP値)の差は±5以内にある(すなわち、SP値の差の絶対値が5以下である)。
ここで、溶媒Sの沸点が溶媒Sの沸点よりも20℃以上高いとは、次の(a1)〜(d1)の形態を意味する。
(a1)溶媒Sが1種の溶媒からなり、溶媒Sも1種の溶媒からなる場合において、溶媒Sの沸点が、溶媒Sの沸点よりも20℃以上高い。
(b1)溶媒Sが1種の溶媒からなり、溶媒Sが2種以上の溶媒からなる場合において、溶媒Sのうち沸点が最も低い溶媒の当該沸点が、溶媒Sの沸点よりも20℃以上高い。
(c1)溶媒Sが2種以上の溶媒からなり、溶媒Sが1種の溶媒からなる場合において、溶媒Sの沸点が、溶媒Sのうち沸点が最も高い溶媒の当該沸点よりも20℃以上高い。
(d1)溶媒Sが2種以上の溶媒からなり、溶媒Sも2種以上の溶媒からなる場合において、溶媒Sのうち沸点が最も低い溶媒の当該沸点が、溶媒Sのうち沸点が最も高い溶媒の当該沸点よりも20℃以上高い。
本発明において「沸点」は、常圧(1気圧)における沸点である。
また、溶媒Sと溶媒Sとの間のSP値の差が±5以内にあるとは、次の(a2)〜(d2)の形態を意味する。
(a2)溶媒Sが1種の溶媒からなり、溶媒Sも1種の溶媒からなる場合において、溶媒Sと溶媒Sとの間のSP値の差が±5以内である。
(b2)溶媒Sが1種の溶媒からなり、溶媒Sが2種以上の溶媒からなる場合において、溶媒Sが、溶媒Sを構成するすべての溶媒との間で、SP値の差が±5以内である。
(c2)溶媒Sが2種以上の溶媒からなり、溶媒Sが1種の溶媒からなる場合において、溶媒Sを構成するすべての溶媒が、溶媒Sとの間で、SP値の差が±5以内である。
(d2)溶媒Sが2種以上の溶媒からなり、溶媒Sも2種以上の溶媒からなる場合において、溶媒Sを構成するすべての溶媒が、溶媒Sを構成するすべての溶媒との間で、SP値の差が±5以内である。
本発明においてSP値は、ハンセン溶解度パラメータである。ハンセン溶解度パラメータは、SP値を算出する周知の方法であり、分散項、極性項(分極項)、水素結合項からなる多次元ベクトルでSP値を表記する。このSP値は、Int.J.Thermophys,2008,29,568−585頁に記載の方法で決定することができる。SP値の単位は(J/cm1/2である。
本発明の絶縁塗料中において、溶媒Sの含有量は溶媒Sの含有量よりも多い。本発明の絶縁塗料中の全溶媒に占める溶媒Sの割合は、0.01〜20質量%であり、0.02〜15質量%がより好ましく、0.05〜12質量%がさらに好ましく、0.07〜10質量%がさらに好ましく、0.08〜5質量%がさらに好ましく、0.09〜3質量%が特に好ましい。
本発明の絶縁塗料に含まれる溶媒Sは、沸点が140〜210℃であることが好ましく、150〜207℃であることがより好ましく、160〜205℃であることがさらに好ましい。また、溶媒Sの沸点は、溶媒Sの沸点よりも20℃以上高めれば特に制限はない。溶媒Sの沸点は、溶媒Sの沸点よりも通常は20〜50℃高く、20〜40℃高いことが実際的であり、21〜35℃高いことも好ましく、22〜32℃高いことも好ましい。
本発明の絶縁塗料に用いる溶媒Sと溶媒Sは、上記(a1)〜(d1)及び(a2)〜(d2)を満たす限り特に制限されない。上述したように溶媒Sとして1種又は2種以上の溶媒を用いることができる。また溶媒Sとしても、1種又は2種以上の溶媒を用いることができる。本発明の絶縁塗料は、溶媒Sとして1種の溶媒を含有することが好ましく、また溶媒Sとして1種の溶媒を含有することが好ましい。
本発明の絶縁塗料に含まれる溶媒Sは、そのSP値は絶縁性樹脂を溶解できれば特に制限されない。例えば、溶媒SのSP値を16〜28とすることができ、17〜26であることも好ましく、18〜24であることも好ましく、20〜24であることも好ましい。また、溶媒SのSP値は、溶媒SのSP値との関係が本発明の規定を満たす値となる。溶媒SのSP値は、溶媒SのSP値よりも低いことも好ましい。溶媒SのSP値は、例えば、14〜22とすることができ、15〜21であることも好ましく、16〜20であることも好ましい。
溶媒Sとして、例えば、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)、N,N−ジメチルアセトアミド(DMAC)、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)等のアミド化合物、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン化合物、酢酸エチル、酢酸n−ブチル、ブチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート等のエステル化合物、トルエン、キシレン、シクロヘキサン等の炭化水素化合物、クレゾール、フェノール、ハロゲン化フェノール等のフェノール化合物、スルホラン等のスルホン化合物、ジメチルスルホキシド(DMSO)等が挙げられる。これらの溶媒を1種又は2種以上用いることができる。なかでも本発明の絶縁塗料は、溶媒SとしてNMPを含むことが好ましく、溶媒SがNMPであることがより好ましい。
溶媒Sとして、例えば、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジエチルエーテル、テトラエチレングリコールジエチルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、トリプロピレングリコールジメチルエーテルを挙げることができる。なかでも溶媒Sはジエチレングリコールモノブチルエーテル及び/又はジエチレングリコールジエチルエーテルを含むことが好ましく、ジエチレングリコールモノブチルエーテルを含むことがより好ましく、ジエチレングリコールモノブチルエーテルであることがさらに好ましい。
本発明の絶縁塗料中、上記絶縁性樹脂の含有量は10〜50質量%が好ましく、15〜40質量%がより好ましい。また、本発明の絶縁塗料中の溶媒の含有量は50〜90質量%が好ましく、60〜85質量%がより好ましい。
本発明の絶縁塗料は、本発明の効果を損なわない範囲で、各種添加剤を含有してもよい。このような添加剤としては、例えば、気泡化核剤、酸化防止剤、帯電防止剤、紫外線防止剤、光安定剤、蛍光増白剤、顔料、染料、相溶化剤、滑剤、強化剤、難燃剤、架橋剤、架橋助剤、可塑剤、増粘剤、減粘剤又はエラストマー等が挙げられる。
本発明の絶縁塗料は、絶縁電線の製造において、導体を被覆する絶縁皮膜の形成に好適に用いることができる。すなわち、導体の周囲に本発明の絶縁塗料を塗布し、焼付けて絶縁皮膜を形成することにより、絶縁電線(エナメル線、絶縁ワイヤ)を得ることができる。絶縁塗料の塗布・焼付けを繰り返して、絶縁皮膜を複層構造とすることもできる。
本発明の絶縁塗料を用いて絶縁皮膜を形成した絶縁電線の一例を、図面を参照して説明する。ただし、本発明の絶縁塗料を用いて製造される絶縁電線は、図面に示された形態に限定されるものではない。例えば、絶縁皮膜を複層として絶縁皮膜に所望の厚みをもたせた形態や、導体断面が正方形や円形、楕円形等である形態も、本発明の絶縁塗料を用いて製造される絶縁電線として好ましい。
図1に断面図を示した絶縁電線1は、導体11と、導体11の外周面に形成された絶縁皮膜12とを有する。
図1の形態において導体11は、断面形状が矩形(平角形状)になっている。絶縁皮膜12の厚さは1〜200μmに設定されていることが好ましく、5〜100μmに設定されていることがより好ましく、10〜50μmに設定されていることも好ましく、20〜40μmに設定されていることも好ましい。絶縁皮膜は適宜に複層構造とすることができる。この場合、1層当たりの厚さは1〜10μmが好ましく、2〜8μmとすることがより好ましく、3〜7μmとすることもできる。本発明の絶縁塗料を用いることにより、この絶縁塗料を用いて1層当たりの厚さの厚い絶縁皮膜を形成しても、絶縁皮膜の外観不良、可撓性を低下、及び、導体と絶縁皮膜との密着性の低下を効果的に抑えることができる。
<導体>
本発明に用いる導体としては、従来から絶縁電線で用いられているものを使用することができる。例えば、銅線、アルミニウム線等の金属導体が挙げられる。
本発明で使用する導体は、その断面形状に特に制限はない。図1は、導体を断面矩形(平角形状)の形状として示している。
平角形状の導体は、角部からの部分放電を抑制する点において、図1に示すように、4隅に面取り(曲率半径r)を設けた形状であることが好ましい。曲率半径rは、0.6mm以下が好ましく、0.2〜0.4mmがより好ましい。
導体の大きさは、特に限定されないが、平角導体の場合、矩形の断面形状において、幅(長辺)は1〜5mmが好ましく、1.4〜4.0mmがより好ましく、厚み(短辺)は0.4〜3.0mmが好ましく、0.5〜2.5mmがより好ましい。幅(長辺)と厚み(短辺)の長さの割合(厚み:幅)は、1:1〜1:4が好ましい。一方、断面形状が円形の導体の場合、直径は0.3〜3.0mmが好ましく、0.4〜2.7mmが好ましい。
[絶縁電線の製造方法]
本発明の絶縁電線の製造方法(以下、「本発明の製造方法」とも称す。)は、導体の周囲に、本発明の絶縁塗料を塗布し、焼付けて絶縁皮膜を形成することを含む。本発明において「導体の周囲」とは、導体の外周面の他、後述のように、導体を被覆する層がある場合には当該層の外周面を含む意味である。
絶縁皮膜は1層でもよいし、塗布・焼付けを複数回繰り返して複層構造とすることもできる。また、本発明の絶縁塗料とは異なる絶縁塗料により導体周囲に絶縁皮膜を形成し、当該絶縁皮膜の周囲に、本発明の絶縁塗料を塗布し、焼付けて絶縁皮膜を形成することもできる。また、導体の周囲に本発明の絶縁塗料を塗布し、焼付けて絶縁皮膜を形成し、この絶縁皮膜の周囲に、本発明の絶縁塗料とは異なる絶縁塗料を塗布し、焼付けて絶縁皮膜を形成することもできる。つまり、本発明の製造方法は、導体を覆う少なくとも1層の絶縁皮膜を、本発明の絶縁塗料を塗布し、焼付けて形成する形態を包含する。
導体周囲への絶縁塗料の塗布は常法により行うことができる。例えば、導体の断面形状と相似形をしたワニス塗布用ダイスを用いる方法、導体の断面形状が矩形である場合、井桁状に形成された「ユニバーサルダイス」と呼ばれるダイスを用いる方法が挙げられる。
絶縁塗料を塗布した後の焼付けも、常法により行うことができ、例えば焼付け炉で焼付けすることができる。この場合の具体的な焼付け条件は、その使用される炉の形状等に左右され一義的に決定できないが、およそ10mの自然対流式の竪型炉であれば、例えば、炉内温度400〜650℃にて通過時間を10〜90秒とする条件が挙げられる。
本発明を実施例に基づいて、さらに詳細に説明するが、本発明がこれらの形態に限定されるものではない。
[製造例1] 絶縁塗料を用いた絶縁電線の製造
<導体>
導体として、断面円形(断面の外径1mm)の銅線を用いた。
<絶縁塗料>
容器にポリアミドイミド(PAI)樹脂ワニス(商品名:HI−406シリーズ、日立化成社製、樹脂固形分:32質量%、溶媒種:NMP)2000gを少量ずつ入れて、次いで溶媒SとしてNMPを135g加えた。その後、溶媒Sとしてジエチレングリコールモノブチルエーテル(商品名:ハイゾルブDB、東邦化学工業株式会社製)を、100×[溶媒Sの含有量]/[溶媒Sの含有量+溶媒Sの含有量]=0.1質量%となるように加え、室温で撹拌した。こうして暗褐色透明の絶縁塗料を得た。
<絶縁電線>
乾燥後の膜厚が5μmになるようにダイスを設定し、上記導体の外周面に絶縁塗料を塗布して塗布膜を形成した。
およそ10mの熱風循環式の竪型炉を用いて、520℃にて通過時間を10〜20秒として焼付けを行った。この塗布・焼付けを6回繰り返し、絶縁皮膜の厚さが30μmの絶縁電線(実施例1)を得た。
[製造例2] 絶縁塗料を用いた絶縁電線の製造
上記製造例1において、100×[溶媒Sの含有量]/[溶媒Sの含有量+溶媒Sの含有量]=2.0質量%となるようにジエチレングリコールモノブチルエーテルの添加量を調整したこと以外は、上記製造例1<絶縁塗料>の記載と同様にして絶縁塗料を調製した。この絶縁塗料を用いて上記製造例1<絶縁電線>の記載と同様にして絶縁電線(実施例2)を得た。
[製造例3] 絶縁塗料を用いた絶縁電線の製造
上記製造例2において、ポリアミドイミド樹脂ワニスに代えてポリイミド(PI)樹脂ワニス(商品名:Uワニス、宇部興産社製、樹脂固形分:20質量%、溶媒種:NMP)を用いたこと以外は、上記製造例2と同様にして黄色透明の絶縁塗料を調製した。次いで、乾燥後の膜厚が1層あたり4μmになるようにダイスを設定し、当該絶縁塗料の導体外周面への塗布・焼付けを8回繰り返して絶縁皮膜の厚さを32μmとしたこと以外は、上記製造例2と同様にして絶縁電線(実施例3)を得た。
[製造例4] 絶縁塗料を用いた絶縁電線の製造
上記製造例3において、ポリイミド樹脂ワニスに代えてポリイミド樹脂ワニス(商品名:Uイミド、ユニチカ社製、樹脂固形分:26質量%、溶媒種:NMP)を用い、また、溶媒SとしてNMP135gに代えてジメチルアセトアミド(DMAc)240gを用い、さらに、溶媒Sとしてジエチレングリコールモノブチルエーテルに代えてジエチレングリコールジエチルエーテル(商品名:ハイゾルブEDE、東邦化学工業株式会社製)を用いて、これを100×[溶媒Sの含有量]/[溶媒Sの含有量+溶媒Sの含有量]=1.0質量%となるように添加したこと以外は、上記製造例3と同様にして暗褐色透明の絶縁塗料を得た。
次いで、乾燥後の膜厚が5μmになるようにダイスを設定し、当該絶縁塗料の導体外周面への塗布・焼付けを6回繰り返して絶縁皮膜の厚さを30μmとしたこと以外は、上記製造例3<絶縁電線>の記載と同様にして絶縁電線(実施例4)を得た。
[製造例5] 絶縁塗料を用いた絶縁電線の製造
上記製造例1において、NMPの使用量を35gとし、また、100×[溶媒Sの含有量]/[溶媒Sの含有量+溶媒Sの含有量]=10質量%となるようにジエチレングリコールモノブチルエーテルの添加量を調整したこと以外は、上記製造例1<絶縁塗料>の記載と同様にして絶縁塗料を調製した。
次いで、乾燥後の膜厚が1層あたり2μmになるようにダイスを設定し、当該絶縁塗料の導体外周面への塗布・焼付けを15回繰り返して絶縁皮膜の厚さを30μmとしたこと以外は、上記製造例1<絶縁電線>の記載と同様にして絶縁電線(実施例5)を得た。
[比較製造例1] 絶縁塗料を用いた絶縁電線の製造
上記製造例1において、絶縁塗料にジエチレングリコールモノブチルエーテルを添加しなかったこと以外は、上記製造例1と同様にして絶縁電線(比較例1)を得た。
[比較製造例2] 絶縁塗料を用いた絶縁電線の製造
上記製造例1において、絶縁塗料に用いる溶媒Sとしてジエチレングリコールモノブチルエーテルに代えてトリエチレングリコールジメチルエーテル(商品名:ハイゾルブMTM、東邦化学工業株式会社製)を用いたこと以外は、上記製造例1と同様にして絶縁電線(比較例2)を得た。
[比較製造例3] 絶縁塗料を用いた絶縁電線の製造
上記製造例1において、絶縁塗料に用いる溶媒Sとしてジエチレングリコールモノブチルエーテルに代えてジエチレングリコールジブチルエーテル(商品名:ハイゾルブBDB、東邦化学工業株式会社製)を用いたこと以外は、上記製造例1と同様にして絶縁電線(比較例3)を得た。
[比較製造例4] 絶縁塗料を用いた絶縁電線の製造
上記製造例1において、絶縁塗料中の溶媒Sの量が100×[溶媒Sの含有量]/[溶媒Sの含有量+溶媒Sの含有量]=24質量%となるようにジエチレングリコールモノブチルエーテルの添加量を調整したこと以外は、上記製造例1と同様にして絶縁電線(比較例4)を得た。
[試験例1] 可撓性試験
JIS C 3216−3に準拠して可撓性試験を実施した。直線状の絶縁電線を、JIS C 3216−3に規定する直径をもつ表面の滑らかな丸棒に沿って電線同士が接触するように10回巻いた。丸棒の回転速度は、毎秒1〜3回転とし、電線と丸棒とが接触するように張力をかけた。作製した試験片について、目視で絶縁皮膜の亀裂の有無を調べた。目視で絶縁皮膜の亀裂が明瞭に確認できないものについて、15倍の拡大鏡にて絶縁皮膜の亀裂の有無を調べた。絶縁皮膜の亀裂が生じたものを「×」とし、亀裂が生じなかったものを「○」として可とう性を評価した。
[試験例2] 密着性試験
絶縁皮膜の導体への密着性について、下記の通り評価した。
絶縁電線を長さ30cmに切り取り試験片とし、当該試験片の一端aを固定し、試験片の他端bについては固定治具の付属した手動回転機の当該固定治具に固定した。このような試験片の両端の固定により、試験片を直線状に伸ばした状態で手動回転機のハンドルを回した際に、一端aが固定された試験片には捻りの変形が加えられる。
上記のように両端を固定した試験片の絶縁皮膜に対し、試験片の長軸方向に対して垂直方向に、絶縁皮膜に半周分の切れ込みを入れた。この切れ込みは導体に到達する深さとした。次いで手動回転機を回し、切れ込みが周方向に拡大して絶縁皮膜が完全に分断されるまでの回転機の回転数を測定した。回転数が多いほど、絶縁電線の絶縁被膜の密着力が高いことを示す。絶縁皮膜が切断されるまでの回転数が30回を超えるものを「○」とし、絶縁皮膜が切断されるまでの回転数が20から30回までのものを「△」とし、絶縁皮膜が切断されるまでの回転数が20回を下回るものを「×」とした。
結果を下表に示す。
Figure 0006974368
上記表に示されるように、絶縁塗料に含まれる溶媒が溶媒S(又は溶媒S)を含有しない場合、この絶縁塗料を用いて形成した絶縁皮膜は可撓性に劣る結果となった(比較例1)。
また、絶縁塗料に含まれる溶媒の沸点差が本発明で規定するよりも小さい場合も、この絶縁塗料を用いて形成した絶縁皮膜は可撓性に劣る結果となった(比較例2)。
さらに、絶縁塗料に含まれる溶媒の沸点差が本発明の規定を満たしても、溶媒のSP値の差が本発明の規定を満たさない場合には、同様に絶縁皮膜の可撓性に劣る結果となった(比較例3)。
また、絶縁塗料が本発明で規定する溶媒Sと溶媒Sを含有していても、溶媒Sの割合が本発明で規定するよりも多い場合には、この絶縁塗料を用いて形成した絶縁皮膜は可撓性に劣り、かつ導体との密着性にも劣る結果となった(比較例4)。
これに対し、本発明の規定を満たす絶縁塗料を用いて形成した絶縁皮膜は、いずれも十分な可撓性を有し、また、導体との密着性にも優れていた(実施例1〜5)。また、実施例1〜5の絶縁電線はいずれも、良好な外観を有していた。
1 絶縁電線
11 導体
12 絶縁皮膜(単層、複層)

Claims (4)

  1. 絶縁皮膜を形成する絶縁性樹脂と、該絶縁性樹脂を溶解してなる溶媒とを含有する絶縁塗料であって、
    前記絶縁性樹脂がポリアミドイミド樹脂及び/又はポリイミド樹脂を含み、
    前記溶媒が、沸点が150〜210℃である溶媒Sと、該溶媒Sよりも沸点が20〜50℃高い溶媒Sとにより構成され、溶媒S の溶解度パラメータが20〜24、溶媒S の溶解度パラメータが15〜21であり、溶媒S の溶解度パラメータが溶媒S の溶解度パラメータよりも高く、溶媒Sと溶媒Sとの間の溶解度パラメータの差が5以内であり、前記絶縁塗料中の全溶媒に占める溶媒Sの割合が0.01〜20質量%である、絶縁塗料。
  2. 前記絶縁性樹脂がポリアミドイミドを含む、請求項1に記載の絶縁塗料。
  3. 前記溶媒SがN−メチル−2−ピロリドンを含む、請求項1又は2に記載の絶縁塗料。
  4. 導体の周囲に請求項1〜3のいずれか1項に記載の絶縁塗料を塗布し、焼付けて絶縁皮膜を形成することを含む、絶縁電線の製造方法。
JP2019003868A 2019-01-11 2019-01-11 絶縁塗料、及びこれを用いた絶縁電線の製造方法 Active JP6974368B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2019003868A JP6974368B2 (ja) 2019-01-11 2019-01-11 絶縁塗料、及びこれを用いた絶縁電線の製造方法

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2019003868A JP6974368B2 (ja) 2019-01-11 2019-01-11 絶縁塗料、及びこれを用いた絶縁電線の製造方法

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2020111680A JP2020111680A (ja) 2020-07-27
JP6974368B2 true JP6974368B2 (ja) 2021-12-01

Family

ID=71666782

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2019003868A Active JP6974368B2 (ja) 2019-01-11 2019-01-11 絶縁塗料、及びこれを用いた絶縁電線の製造方法

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP6974368B2 (ja)

Family Cites Families (5)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
WO2011030744A1 (ja) * 2009-09-10 2011-03-17 東レ株式会社 感光性樹脂組成物および感光性樹脂膜の製造方法
JP2011187262A (ja) * 2010-03-08 2011-09-22 Hitachi Magnet Wire Corp ポリアミドイミド樹脂絶縁塗料およびそれを用いた絶縁電線
WO2013133334A1 (ja) * 2012-03-07 2013-09-12 古河電気工業株式会社 絶縁ワイヤ、電気機器及び絶縁ワイヤの製造方法
CN105916941A (zh) * 2014-01-16 2016-08-31 尤尼吉可株式会社 聚酰胺酰亚胺溶液、多孔聚酰胺酰亚胺膜及其制造方法
KR102136081B1 (ko) * 2014-11-07 2020-07-21 후루카와 덴키 고교 가부시키가이샤 절연 와이어 및 회전 전기

Also Published As

Publication number Publication date
JP2020111680A (ja) 2020-07-27

Similar Documents

Publication Publication Date Title
KR102000380B1 (ko) 내굽힘 가공성이 우수한 절연전선, 그것을 이용한 코일 및 전자·전기 기기
KR101898356B1 (ko) 평각 절연 전선 및 전동 발전기용 코일
EP3093855B1 (en) Insulated electric wire, coil and electric/electronic device, and cracking prevention method for insulated electric wire
JP5699971B2 (ja) 絶縁電線
KR20140102124A (ko) 기포층이 있는 절연 전선, 전기 기기 및 기포층이 있는 절연 전선의 제조방법
WO2014181456A1 (ja) 絶縁組成物、硬化物およびそれを用いた絶縁電線
US20180254120A1 (en) Self-fusing insulated wire, coil and electrical/electronic equipment
JP6932642B2 (ja) 絶縁電線、絶縁電線の製造方法、コイル、回転電機および電気・電子機器
US8809684B2 (en) Insulated wire
JP6974368B2 (ja) 絶縁塗料、及びこれを用いた絶縁電線の製造方法
CN109564798A (zh) 绝缘电线、线圈和电气电子设备
JP7405750B2 (ja) 絶縁電線、コイル、及び電気・電子機器
JP5561238B2 (ja) 絶縁電線及びその製造方法
JP6519231B2 (ja) 巻線及びその製造方法
JP2011210519A (ja) 絶縁電線
JP2019040672A (ja) エナメル線およびエナメル線の製造方法
JP7301930B2 (ja) エナメル線
WO2023153063A1 (ja) 絶縁電線及び絶縁電線の製造方法
JP7332000B1 (ja) 絶縁電線および絶縁電線の製造方法
JP2023119705A (ja) 絶縁電線のエナメル層の破断伸び予測方法
JP2024088510A (ja) 絶縁電線、コイル、回転電機および電気・電子機器
JP2010157433A (ja) 絶縁電線
JP2024121134A (ja) エナメル線およびその製造方法
JP2005135836A (ja) 絶縁電線用塗料及びそれを用いた絶縁電線
CN116543955A (zh) 漆包线及其制备方法

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20200615

A711 Notification of change in applicant

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A712

Effective date: 20201125

A977 Report on retrieval

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007

Effective date: 20210326

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20210406

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20210604

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20211102

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20211104

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Ref document number: 6974368

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250