JP6974305B2 - 眼鏡レンズおよび眼鏡 - Google Patents

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Description

関連出願の相互参照
本出願は、2016年3月31日出願の日本特願2016−072764号の優先権を主張し、その全記載は、ここに特に開示として援用される。
本発明は、眼鏡レンズ、およびこの眼鏡レンズを備えた眼鏡に関する。
近年のデジタル機器のモニター画面はブラウン管から液晶に替わり、最近はLED液晶も普及しているが、液晶モニター、特にLED液晶モニターは、青色光と呼ばれる短波長光を強く発光する。そのため、デジタル機器を長時間使用する際に生じる眼精疲労や眼の痛みを効果的に低減するためには、青色光による眼への負担を軽減するための対策を講じるべきである。なお一般に、400〜500nmの波長域の光またはこの波長域付近の光が、青色光と呼ばれる。
上記の点に関して、例えば、特開2013−8052号公報には、波長400〜450nmの光を反射する性質を有する多層膜をプラスチック基材の凸面上および凹面上に有する光学物品が提案されている。
青色光による眼への負担を軽減するための手段としては、眼鏡レンズにおいて、特開2013−8052号公報に記載されているように、レンズ基材の両面に青色光を反射する性質を有する多層膜を設けることが挙げられる。
一方で、眼鏡レンズには、眼鏡装用者が良好な装用感をもって使用可能であること、および外観が良好であることも望まれる。しかるに、眼鏡レンズ両面における青色光の反射率を高めるほど、眼鏡レンズを介して装用者の眼に入射する青色光の光量を低減できるものの、眼鏡レンズの装用感および外観は劣化する傾向がある。
本発明(本開示)の一態様は、青色光による眼への負担を軽減可能であるとともに、装用感および外観が良好な眼鏡レンズを提供する。
本発明の一態様は、
レンズ基材と、レンズ基材の物体側表面上に位置する多層膜と、レンズ基材の眼球側表面上に位置する多層膜と、を含む眼鏡レンズであって、
青色光吸収率が10.0%以上であり、
上記レンズ基材は、青色光吸収性化合物を含み、
眼鏡レンズの物体側表面および眼球側表面においてそれぞれ測定される400〜500nmの波長域における平均反射率は10.0〜20.0%の範囲であり、かつ眼鏡レンズの物体側表面および眼球側表面においてそれぞれ測定される視感反射率は2.0%未満である眼鏡レンズ、
に関する。
本発明者らは、上記目的を達成するために鋭意検討を重ねた結果、上記の本発明の一態様にかかる眼鏡レンズを新たに見出すに至った。
上記眼鏡レンズは、レンズ基材の物体側表面上および眼球側表面上に、それぞれ多層膜を有する。即ち、眼鏡レンズの両面に多層膜を有する。そして、眼鏡レンズの物体側表面および眼球側表面においてそれぞれ測定される400〜500nmの波長域における平均反射率(以下、「青色光反射率」ともいう。)が、10.0〜20.0%の範囲である。これにより、上記眼鏡レンズは、その両面においてそれぞれ青色光を高い反射率で反射することができる。しかし従来、眼鏡レンズの両面に多層膜を設けて高い青色光反射率を達成しようとすると、得られる眼鏡レンズは、装用感および外観に劣るものとなる傾向があった。これは、ゴーストと呼ばれる二重像が発生すること、および眼鏡レンズの両面にギラツキが発生することが理由であった。
これに対し上記眼鏡レンズは、レンズ基材に青色光吸収性化合物を含み、かつ眼鏡レンズの青色光吸収率が10.0%以上である。これによりゴーストの発生を抑制することが可能になる。詳細は更に後述する。
また、装用感および外観に関しては、眼鏡レンズの物体側表面におけるギラツキの発生は、眼鏡レンズの外観品質低下の原因となる。眼鏡装用者に対向した第三者が眼鏡装用者の外観に違和感(不自然な反射)を感じることにつながるからである。また、眼鏡レンズの眼球側表面におけるギラツキの発生は、眼鏡装用者が感じる装用感が低下する(不自然な反射を感じる)原因になる。これに対し、上記眼鏡レンズは、眼鏡レンズ両面で高い青色光反射率を有するにもかかわらず、両面で測定される視感反射率が、それぞれ2.0%未満である。これにより、眼鏡レンズの物体側表面におけるギラツキおよび眼球側表面におけるギラツキの発生を、それぞれ抑制することが可能となる。
本発明の更なる態様は、上記眼鏡レンズと、この眼鏡レンズを取り付けたフレームと、を有する眼鏡に関する。
本発明の一態様によれば、青色光による眼への負担を軽減することができ、しかも装用感および外観が良好な眼鏡レンズ、およびこの眼鏡レンズを備えた眼鏡を提供することができる。
実施例1の眼鏡レンズの反射スペクトルおよび透過スペクトルを示す。 参考例1の眼鏡レンズの反射スペクトルおよび透過スペクトルを示す。 比較例1の眼鏡レンズの反射スペクトルおよび透過スペクトルを示す。 実施例2の眼鏡レンズの反射スペクトルおよび透過スペクトルを示す。 比較例2の眼鏡レンズの反射スペクトルおよび透過スペクトルを示す。 実施例3の眼鏡レンズの反射スペクトルおよび透過スペクトルを示す。 比較例3の眼鏡レンズの反射スペクトルおよび透過スペクトルを示す。 比較例4の眼鏡レンズの反射スペクトルおよび透過スペクトルを示す。 実施例4の眼鏡レンズの反射スペクトルおよび透過スペクトルを示す。 実施例5の眼鏡レンズの反射スペクトルおよび透過スペクトルを示す。 実施例6の眼鏡レンズの反射スペクトルおよび透過スペクトルを示す。 実施例7の眼鏡レンズの反射スペクトルおよび透過スペクトルを示す。 実施例8の眼鏡レンズの反射スペクトルおよび透過スペクトルを示す。 実施例9の眼鏡レンズの反射スペクトルおよび透過スペクトルを示す。
[眼鏡レンズ]
本発明の一態様にかかる眼鏡レンズは、レンズ基材と、レンズ基材の眼球側表面上に位置する多層膜と、レンズ基材の物体側表面上に位置する多層膜と、を含む眼鏡レンズであって、青色光吸収率が10.0%以上であり、上記レンズ基材は、青色光吸収性化合物を含み、眼鏡レンズの物体側表面および眼球側表面においてそれぞれ測定される400〜500nmの波長域における平均反射率は10.0〜20.0%の範囲であり、かつ眼鏡レンズの物体側表面および眼球側表面においてそれぞれ測定される視感反射率は2.0%未満である。
本発明および本明細書における用語の定義および/または測定方法を、以下に説明する。
「物体側表面」とは、眼鏡レンズを備えた眼鏡が装用者に装用された際に物体側に位置する表面であり、「眼球側表面」とは、その反対、即ち眼鏡レンズを備えた眼鏡が装用者に装用された際に眼球側に位置する表面である。
「青色光吸収率」とは、眼鏡レンズについていうものとし、以下の方法により求められる。
分光光度計によって波長380nm〜500nmの波長域における透過率および反射率を測定する。本発明および本明細書において、反射、透過または吸収を求める測定光は直入射光をいうものとする。したがって、上記の透過率および反射率は、直入射光に対する透過率および反射率である。また、測定は光学中心において行う。特記しない限り、測定にあたり、測定波長間隔(ピッチ)は任意に設定可能である。例えば、1〜5nmの範囲で任意に設定可能である。分光光度計により測定される透過率には、入射光の中で、眼鏡レンズの表面において反射される成分は考慮されていない。したがって、眼鏡レンズが吸収した光と同様に、眼鏡レンズ表面で反射されレンズ内に入射していない光も、分光光度計による測定では、透過量の減少として観測される。そこで、反射の影響を差し引いた波長λnmにおける透過率τ(λ)を、下記式1により算出する。
Figure 0006974305
(式1中、τ(λ)は分光光度計により測定される波長λnmにおける透過率であり、R(λ)は分光光度計により測定される波長λnmにおける反射率である。)
算出された透過率τ(λ)を用いて、眼鏡レンズの青色光吸収率aを、下記式2により算出する。
Figure 0006974305
式2中、WB(λ)は重み付け関数であり、下記式3により算出される。式3中、Esλ(λ)は、太陽光の分光放射照度であり、B(λ)はブルーライトハザード関数である。Esλ(λ)、B(λ)およびWB(λ)は、JIS T 7333付属書Cに記載されている。Esλ(λ)、B(λ)およびWB(λ)を用いて値を算出する場合、分光光度計による測定は、少なくとも、380nmから500nmまで、380nm、385nm、390nm・・・と5nmピッチで500nmまで行うものとする。こうして5nmピッチで測定された値を用いて、上記式により眼鏡レンズの青色光吸収率aを求めるものとする。
Figure 0006974305
「青色光吸収性化合物」とは、400〜500nmの波長域に吸収を有する化合物をいう。
眼鏡レンズの眼球側表面において測定される波長400〜500nmの波長域における平均反射率、および眼鏡レンズの眼球側表面において測定される波長400〜500nmの波長域における平均反射率は、各表面において分光光度計を用いて波長400〜50nmの波長域で測定される反射率の算術平均である。測定にあたり、測定波長間隔(ピッチ)は、任意に設定可能である。例えば、1〜5nmの範囲で任意に設定可能である。
「視感反射率」とは、JIS T 7334:2011にしたがい測定され、後述の「視感透過率」とは、JIS T 7333 :2005にしたがい測定される。
後述の「青色光カット率」とは、下記式4により求められる。
(式4)
青色光カット率C=1−τ
式4中、τは、日本医用光学機器工業会の規格に規定されている眼に有害な青色光の重み付き透過率であり、下記式5により算出される。式5中、WB(λ)は上記式3により算出される。τ(λ)は、分光光度計により測定される波長λnmにおける透過率である。したがって、青色光カット率Cには、吸収による青色光のカット率と反射による青色光のカット率が合算されている。
Figure 0006974305
以下に、上記眼鏡レンズについて、更に詳細に説明する。
<反射特性>
(400〜500nmの波長域における平均反射率(青色光反射率))
上記眼鏡レンズは、眼鏡レンズの物体側表面において測定される400〜500nmの波長域における平均反射率が10.0〜20.0%の範囲であり、かつ眼鏡レンズの眼球側表面において測定される400〜500nmの波長域における平均反射率が10.0〜20.0%の範囲である。眼鏡レンズの両面において、それぞれ10.0%以上の青色光反射率を有する眼鏡レンズによれば、青色光が眼に与える影響を効果的に軽減することができる。しかるに従来の眼鏡レンズでは、眼鏡レンズ両面において青色光の反射率を高めようとすると、眼鏡レンズの装用感および外観が劣化する傾向があった。これに対し上記眼鏡レンズは、眼鏡レンズ両面における青色光反射率がそれぞれ10.0〜20.0%と高く、かつ良好な装用感および外観を実現することができる。高い青色光反射率と良好な装用感および外観を共に実現できる理由について、詳細は後述する。
一態様では、青色光が眼に与える影響をより一層低減する観点から、眼鏡レンズの物体側表面において測定される400〜500nmの波長域における平均反射率は、10.0%超であることが好ましく、11.0%以上であることがより好ましく、11.0%超であることが更に好ましく、12.0%以上であることが一層好ましく、12.0%超であることがより一層好ましく、13.0%以上であることが更に一層好ましく、14.0%以上であることがなおより一層好ましく、15.0%以上であることが更により一層好ましい。
一態様では、青色光が眼に与える影響をより一層低減する観点から、眼鏡レンズの眼球側表面において測定される400〜500nmの波長域における平均反射率も、10.0%超であることが好ましく、11.0%以上であることがより好ましく、11.0%超であることが更に好ましく、12.0%以上であることが一層好ましく、12.0%超であることがより一層好ましく、13.0%以上であることが更に一層好ましく、14.0%以上であることがなおより一層好ましく、15.0%以上であることが更により一層好ましい。
一方、良好な装用感を実現するために、上記眼鏡レンズにおいて、眼鏡レンズの物体側表面において測定される400〜500nmの波長域における平均反射率は20.0%以下であり、眼鏡レンズの眼球側表面において測定される400〜500nmの波長域における平均反射率も20.0%以下である。一態様では、より良好な装用感を実現する観点から、上記眼鏡レンズにおいて、眼鏡レンズの物体側表面において測定される400〜500nmの波長域における平均反射率は、19.5%以下であることが好ましく、19.0%以下であることがより好ましく、18.0%以下であることが更に好ましく、17.5%以下であることが一層好ましく、17.0%以下であることがより一層好ましく、16.0%以下であることが更に一層好ましく、15.0%以下であることがなおより一層好ましく、14.0%以下であることが更により一層好ましい。一態様では、より良好な装用感を実現する観点から、眼鏡レンズの眼球側表面において測定される400〜500nmの波長域における平均反射率は、19.5%以下であることが好ましく、19.0%以下であることがより好ましく、18.0%以下であることが更に好ましく、17.5%以下であることが一層好ましく、17.0%以下であることがより一層好ましく、16.0%以下であることが更に一層好ましく、15.0%以下であることがなおより一層好ましく、14.0%以下であることが更により一層好ましい。
眼鏡レンズの物体側表面において測定される400〜500nmの波長域における平均反射率と眼球側表面において測定される400〜500nmの波長域における平均反射率とは、同じ値であってもよく、異なる値であってもよい。異なる値である場合、眼鏡レンズの物体側表面において測定される400〜500nmの波長域における平均反射率が、眼球側表面において測定される400〜500nmの波長域における平均反射率より大きくてもよく、小さくてもよい。
(視感反射率)
上記眼鏡レンズは、眼鏡レンズの両面において、それぞれ高い青色光反射率を示す。これにより青色光が眼に与える影響を効果的に低減することができる。この点に関して本発明者らは検討を重ねる中で、従来の多層膜の膜設計では、青色光反射率を高めるほど装用感および外観品質低下の原因となるギラツキが顕著になる理由は、青色光の波長域に長波長側で隣接する波長域にある所謂緑色光の反射率が上昇することが原因と考えるに至った。そして、青色光反射率が10.0〜20.0%の範囲で緑色光の反射率上昇を抑制するという、従来とは異なる膜設計を行うことにより、視感反射率を低く抑えることが可能となった。そしてこれにより、10.0〜20.0%の範囲の青色光反射率を示す物体側表面におけるギラツキの発生、および10.0〜20.0%の範囲の青色光反射率を示す眼球側表面におけるギラツキの発生を、共に抑制することが可能になった。こうして装用感および外観品質の低下の原因となるギラツキの発生を抑制することにより、上記眼鏡レンズによれば、青色光による眼への負担を効果的に軽減できるとともに、良好な装用感および外観を実現することができる。
外観品質低下につながる物体側表面におけるギラツキの更なる抑制の観点から、眼鏡レンズの物体側表面において測定される視感反射率は1.8%以下であることが好ましく、1.5%以下であることがより好ましく、1.3%以下であることがより好ましい。一方、装用感低下につながる眼球側表面におけるギラツキの更なる抑制の観点から、眼鏡レンズの眼球側表面において測定される視感反射率は1.8%以下であることが好ましく、1.5%以下であることがより好ましく、1.3%以下であることがより好ましい。
眼鏡レンズの物体側表面において測定される視感反射率および眼球側表面において測定される視感反射率は、それぞれ、例えば0.1%以上、0.2%以上、0.3%以上、0.4%以上、または0.5%以上であることができるが、上記値は例示であって、これらに限定されるものではない。
<眼鏡レンズの青色光吸収率>
上記眼鏡レンズは、以上説明した反射特性を有し、かつ青色光吸収率が10.0%以上の眼鏡レンズである。眼鏡レンズ両面で高い青色光反射率を有するとともに、眼鏡レンズの青色光が10.0%以上であることによって、ゴーストと呼ばれる二重像の発生を抑制することができる。これに対し、単に眼鏡レンズ両面で青色光反射率を高めるのみでは、ゴーストの発生によって装用感が低下してしまう。
ゴーストの主な発生原因は、眼鏡レンズの物体側表面で反射されずにレンズに入射した青色光が、眼鏡レンズ内部で、高い青色光反射率を有する眼球側表面および物体側表面の間で多重反射することに起因して発生すると考えられる。これに対し、眼鏡レンズの青色光吸収率が10.0%以上であることにより、両面で青色光反射率を高めた眼鏡レンズにおけるゴーストの発生を抑制することが可能となる。これは、多重反射をもたらす青色光が眼鏡レンズ内部で多く吸収されることにより、多重反射により結像する二重像が視認される強度を下げることができるか、または視認されないほど強度を下げることができることによるものと考えられる。ゴースト発生を更に抑制する観点から、上記眼鏡レンズの青色光吸収率は、12.0%以上であることが好ましく、13.0%以上であることがより好ましく、14.0%以上であることが更に好ましく、15.0%以上であることが一層好ましく、15.5%以上であることがより一層好ましい。また、上記眼鏡レンズの青色光吸収率は、例えば40.0%以下、30.0%以下、28.0%以下、または25.0%以下であることができるが、これらは例示に過ぎない。ゴースト発生をより一層抑制する観点からは、眼鏡レンズの青色光吸収率は、高いほど好ましい。したがって、上記の例示した値を上回ってもよい。
上記眼鏡レンズは、青色光吸収性化合物をレンズ基材に含む。このことが、眼鏡レンズが10.0%以上の高い青色光吸収率を示すことに寄与する。青色光吸収性化合物について、詳細は後述する。
次に、上記眼鏡レンズに含まれる多層膜、レンズ基材等について、更に詳細に説明する。
<多層膜>
上記眼鏡レンズは、レンズ基材の物体側表面上に位置する多層膜およびレンズ基材の眼球側表面上に位置する多層膜を含む。上記多層膜は、レンズ基材の表面上に直接位置してもよく、一層以上の他の層を介して間接的にレンズ基材の表面上に位置してもよい。レンズ基材と上記多層膜との間に形成され得る層としては、例えば、偏光層、調光層、ハードコート層(以下、「ハードコート」とも記載する。)等を挙げることができる。ハードコート層を設けることにより眼鏡レンズの耐久性(強度)を高めることもできる。ハードコート層の詳細については、例えば特開2012−128135号公報の段落0025〜0028、0030を参照できる。また、レンズ基材と上記多層膜との間には、密着性向上のためのプライマー層を形成してもよい。プライマー層の詳細については、例えば特開2012−128135号公報の段落0029〜0030を参照できる。
レンズ基材の眼球側表面上、物体側表面上にそれぞれ設ける多層膜は、これら多層膜を有する眼鏡レンズ表面に先に記載した反射特性を付与できるものであれば特に限定されるものではない。そのような多層膜は、好ましくは、高屈折率層と低屈折率層を順次積層することにより形成することができる。より詳しくは、高屈折率層および低屈折率層を形成するための膜材料の屈折率と、多層膜を設けることにより眼鏡レンズにもたらすべき反射特性(青色光反射率および視感反射率)に基づき、公知の手法による光学的シミュレーションにより各層の膜厚を決定し、決定した膜厚となるように定めた成膜条件下で高屈折率層と低屈折率層を順次積層することにより、上記多層膜を形成することができる。上記の通り、青色光に対する反射率を高めるとともに、青色光の波長域に隣接する波長域(例えば500nm超580nm以下の波長域)にある緑色光の反射率の上昇を抑制する膜設計を行うことにより、10.0〜20.0nmの範囲の青色光反射率および2.0%未満の視感反射率を、眼鏡レンズの各表面にもたらすことができる。成膜材料は、無機材料でも有機材料でも有機無機複合材料でもよく、成膜や入手容易性の観点からは、無機材料が好ましい。成膜材料の種類、膜厚、積層順等を調整することにより、青色光反射率および視感反射率を制御することができる。
高屈折率層を形成するための高屈折率材料としては、ジルコニウム酸化物(例えばZrO)、タンタル酸化物(Ta)、チタン酸化物(例えばTiO)、アルミニウム酸化物(Al)、イットリウム酸化物(例えばY)、ハフニウム酸化物(例えばHfO)、およびニオブ酸化物(例えばNb)からなる群から選ばれる酸化物の一種または二種以上の混合物を挙げることができる。一方、低屈折率層を形成するための低屈折率材料としてはケイ素酸化物(例えばSiO)、フッ化マグネシウム(例えばMgF)およびフッ化バリウム(例えばBaF)からなる群から選ばれる酸化物またはフッ化物の一種または二種以上の混合物を挙げることができる。なお上記の例示では、便宜上、酸化物およびフッ化物を化学量論組成で表示したが、化学量論組成から酸素またはフッ素が欠損もしくは過多の状態にあるものも、高屈折率材料または低屈折率材料として使用可能である。
多層膜に含まれる各層の膜厚は、上述の通り、光学的シミュレーションにより決定することができる。多層膜の層構成としては、例えば、レンズ基材側からレンズ最表面側に向かって、
第一層(低屈折率層)/第二層(高屈折率層)/第三層(低屈折率層)/第四層(高屈折率層)/第五層(低屈折率層)/第六層(高屈折率層)/第七層(低屈折率層)の順に積層された構成;
第一層(高屈折率層)/第二層(低屈折率層)/第三層(高屈折率層)/第四層(低屈折率層)/第五層(高屈折率層)/第六層(低屈折率層)の順に積層された構成;
第一層(低屈折率層)/第二層(高屈折率層)/第三層(低屈折率層)/第四層(高屈折率層)/第五層(低屈折率層)の順に積層された構成;
等を挙げることができる。好ましい低屈折率層と高屈折率層の組み合わせの一例としては、ケイ素酸化物を主成分とする被膜(低屈折率層)とジルコニウム酸化物を主成分とする被膜(高屈折率層)との組み合わせを挙げることができる。また、ケイ素酸化物を主成分とする被膜(低屈折率層)とニオブ酸化物を主成分とする被膜(高屈折率層)との組み合わせを挙げることもできる。上記組み合わせの二層の被膜が隣接する積層構造を少なくとも1つ含む多層膜を、多層膜の好ましい一例として例示することができる。
好ましくは、上記の各層は、前述の高屈折率材料または低屈折率材料を主成分とする被膜である。ここで主成分とは、被膜において最も多くを占める成分であって、通常は全体の50質量%程度〜100質量%、更には90質量%程度〜100質量%を占める成分である。上記材料を主成分とする成膜材料(例えば蒸着源)を用いて成膜を行うことにより、そのような被膜を形成することができる。なお成膜材料に関する主成分も、上記と同様である。被膜および成膜材料には、不可避的に混入する微量の不純物が含まれる場合があり、また、主成分の果たす機能を損なわない範囲で他の成分、例えば他の無機物質や成膜を補助する役割を果たす公知の添加成分が含まれていてもよい。成膜は、公知の成膜方法により行うことができ、成膜の容易性の観点からは、蒸着により行うことが好ましい。本発明における蒸着には、乾式法、例えば、真空蒸着法、イオンプレーティング法、スパッタリング法等が含まれる。真空蒸着法では、蒸着中にイオンビームを同時に照射するイオンビームアシスト法を用いてもよい。
上記の多層膜は、以上説明した高屈折率層および低屈折率層に加えて、導電性酸化物を主成分とする被膜、好ましくは導電性酸化物を主成分とする蒸着源を用いる蒸着により形成される一層以上の導電性酸化物層を、多層膜の任意の位置に含むこともできる。導電性酸化物としては、眼鏡レンズの透明性の観点から、インジウム酸化物、スズ酸化物、亜鉛酸化物、チタン酸化物、およびこれらの複合酸化物等の、一般に透明導電性酸化物として知られる各種導電性酸化物を用いることが好ましい。透明性および導電性の観点から特に好ましい導電性酸化物としては、スズ酸化物、インジウム−スズ酸化物(ITO)を挙げることができる。導電性酸化物層を含むことにより、眼鏡レンズが帯電し塵や埃が付着することを防ぐことができる。
更に、多層膜上に、更なる機能性膜を形成することも可能である。そのような機能性膜としては、撥水性または親水性の防汚膜、防曇膜等の各種機能性膜を挙げることができる。これら機能性膜については、いずれも公知技術を何ら制限なく適用することができる。
<レンズ基材>
上記多層膜が物体側表面上および眼球側表面上にそれぞれ設けられるレンズ基材は、青色光吸収性化合物を含むものである限り、特に限定されない。レンズ基材は、プラスチックレンズ基材またはガラスレンズ基材であることができる。ガラスレンズ基材は、例えば無機ガラス製のレンズ基材であることができる。レンズ基材は、軽量で割れ難く、かつ青色光吸収性化合物の導入が容易であるという観点から、プラスチックレンズ基材が好ましい。プラスチックレンズ基材としては、(メタ)アクリル樹脂をはじめとするスチレン樹脂、ポリカーボネート樹脂、アリル樹脂、ジエチレングリコールビスアリルカーボネート樹脂(CR−39)等のアリルカーボネート樹脂、ビニル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエーテル樹脂、イソシアネート化合物とジエチレングリコールなどのヒドロキシ化合物との反応で得られたウレタン樹脂、イソシアネート化合物とポリチオール化合物とを反応させたチオウレタン樹脂、分子内に1つ以上のジスルフィド結合を有する(チオ)エポキシ化合物を含有する重合性組成物を硬化した硬化物(一般に透明樹脂と呼ばれる。)を挙げることができる。なおレンズ基材としては、染色されていないもの(無色レンズ)を用いてもよく、染色されているもの(染色レンズ)を用いてもよい。レンズ基材の屈折率は、例えば、1.60〜1.75程度である。ただしレンズ基材の屈折率は、これに限定されるものではなく、上記の範囲内でも、上記の範囲から上下に離れていてもよい。なお屈折率とは、e線(波長546.07nm)に対する屈折率neをいうものとする。
上記眼鏡レンズは、単焦点レンズ、多焦点レンズ、累進屈折力レンズ等の各種レンズであることができる。レンズの種類は、レンズ基材の両面の面形状により決定される。また、レンズ基材表面は、凸面、凹面、平面のいずれであってもよい。通常のレンズ基材および眼鏡レンズでは、物体側表面は凸面、眼球側表面は凹面である。ただし、本発明は、これに限定されるものではない。
<青色光吸収性化合物>
上記レンズ基材は、青色光吸収性化合物を含む。このことが、上記眼鏡レンズに10.0%以上の青色光吸収率をもたらすことに寄与する。青色光吸収性化合物は、ベンゾトリアゾール化合物、ベンゾフェノン化合物、トリアジン化合物、インドール化合物等の青色光の波長域に吸収を有する各種化合物を挙げることができ、好ましい青色光吸収性化合物としてはベンゾトリアゾール化合物およびインドール化合物を挙げることができ、より好ましい青色光吸収性化合物としてはベンゾトリアゾール化合物を挙げることができる。ベンゾトリアゾール化合物としては、下記式(1)で表されるベンゾトリアゾール化合物が好ましい。
Figure 0006974305
式(1)において、Xは、共鳴効果を付与する基を表す。Xの置換位置は、好ましくはトリアゾール環の5位である。
Xの例としては、塩素原子、臭素原子、フッ素原子、ヨウ素原子、スルホ基、カルボキシ基、ニトリル基、アルコキシ基、ヒドロキシ基、アミノ基が挙げられ、これらの中でも、塩素原子、臭素原子、フッ素原子が好ましく、塩素原子がより好ましい。
式(1)において、Rは、炭素数1〜12のアルキル基または炭素数1〜12のアルコキシ基を表し、アルキル基およびアルコキシ基のそれぞれについて、炭素数1〜8が好ましく、炭素数2〜8がより好ましく、炭素数4〜8が更に好ましい。
アルキル基およびアルコキシ基は、分岐であっても直鎖であってもよい。アルキル基およびアルコキシ基の中でも、アルキル基が好ましい。
アルキル基の例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、iso−プロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、へプチル基、n−オクチル基、1,1,3,3−テトラメチルブチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基等が挙げられ、これらの中でも、n−プロピル基、iso−プロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、および1,1,3,3−テトラメチルブチル基から選ばれる少なくとも1種が好ましく、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、および1,1,3,3−テトラメチルブチル基がより好ましく、tert−ブチル基が更に好ましい。
アルコキシ基の例としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、へプチルオキシ基、オクチルオキシ基、ノニルオキシ基、デシルオキシ基、ウンデシルオキシ基、ドデシルオキシ基が挙げられ、これらの中でもブトキシ基、またはエトキシ基が好ましい。
式(1)において、Rの置換位置は、ベンゾトリアゾリル基の置換位置を基準として、3位,4位または5位が好ましい。
式(1)において、Rは、炭素数1〜3のアルキル基または炭素数1〜3のアルコキシ基を表し、これらの具体例としては、Rについて挙げた上記例のうち炭素数が適合するものが挙げられる。これらの中でもメチル基またはエチル基が好ましい。
式(1)において、mは0または1の整数を表す。
式(1)において、Rの置換位置は、ベンゾトリアゾリル基の置換位置を基準として、5位が好ましい。
nはRの価数を表し、1または2である。
式(1)において、Rは、水素原子、または炭素数1〜8の2価の炭化水素基を表す。nが1の場合、Rは水素原子を表し、nが2の場合、炭素数1〜8の2価の炭化水素基を表す。
で表される炭化水素基としては、脂肪族炭化水素基、または芳香族炭化水素基が挙げられる。Rで表される炭化水素基の炭素数は、炭素数1〜8であり、炭素数1〜3であることが好ましい。
で表される2価の炭化水素基の例としては、メタンジイル基、エタンジイル基、プロパンジイル基、ベンゼンジイル基、トルエンジイル基等が挙げられ、これらの中でもメタンジイル基が好ましい。
式(1)において、Rの置換位置は、ベンゾトリアゾリル基の置換位置を基準として、3位が好ましい。
は、好ましくは水素原子であり、この場合nは1である。
ベンゾトリアゾール化合物は、好ましくは、下記式(1−1)で示されるベンゾトリアゾール化合物である。
Figure 0006974305
式(1−1)において、R、R、mは、それぞれ上記と同義であり、例示および好ましい態様も上記と同様である。
式(1)で表されるベンゾトリアゾール化合物の具体例としては、メチレンビス[3−(5−クロロ−2−ベンゾトリアゾリル)−5−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)−2−ヒドロキシフェニル]、メチレンビス[3−(5−クロロ−2−ベンゾトリアゾリル)−5−(tert−ブチル)−2−ヒドロキシフェニル]、メチレンビス[3−(5−クロロ−2−ベンゾトリアゾリル)−5−tert−ブチル−2−ヒドロキシフェニル]、メチレンビス[3−(5−クロロ−2−ベンゾトリアゾリル)−5−tert−ブチル−2−ヒドロキシフェニル]、メチレンビス[3−(5−クロロ−2−ベンゾトリアゾリル)−5−エトキシ−2−ヒドロキシフェニル]、フェニレンビス[3−(5−クロロ−2−ベンゾトリアゾリル)−5−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)−2−ヒドロキシフェニル]、および下記式(1−1)で表されるベンゾトリアゾール化合物の具体例が挙げられる。
式(1−1)で表されるベンゾトリアゾール化合物の具体例としては、2−(3−tert−ブチル−2−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)−5−クロロ−2H−ベンゾトリアゾール、2−(3−tert−ブチル−2−ヒドロキシ−5−エチルフェニル)−5−クロロ−2H−ベンゾトリアゾール、5−クロロ−2−(3,5−ジメチル−2−ヒドロキシフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール、5−クロロ−2−(3,5−ジエチル−2−ヒドロキシフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール、5−クロロ−2−(2−ヒドロキシ−4−メトキシフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール、5−クロロ−2−(4−エトキシ−2−ヒドロキシフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール、2−(4−ブトキシ−2−ヒドロキシフェニル)−5−クロロ−2H−ベンゾトリアゾール、および5−クロロ−2−(2−ヒドロキシ−4−オクチルオキシフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール等が挙げられる。
上記の中でも、2−(3−tert−ブチル−2−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)−5−クロロ−2H−ベンゾトリアゾール、2−(3−tert−ブチル−2−ヒドロキシ−5−エチルフェニル)−5−クロロ−2H−ベンゾトリアゾール、5−クロロ−2−(4−エトキシ−2−ヒドロキシフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール、および2−(4−ブトキシ−2−ヒドロキシフェニル)−5−クロロ−2H−ベンゾトリアゾールが好ましい。
上記レンズ基材は、例えば、レンズ基材を構成する樹脂(または樹脂を得るための重合性化合物)100質量部に対して、青色光吸収性化合物を0.05〜3.00質量部含むことができ、0.05〜2.50質量部含むことが好ましく、0.10〜2.00質量部含むことがより好ましく、0.30〜2.00質量部含むことが更に好ましい。ただし、眼鏡レンズの青色光吸収率を10.0%以上とすることができればよいため、上記範囲の含有量に限定されるものではない。青色光吸収性化合物を含むレンズ基材の製造方法としては、公知の方法を用いることができる。例えば、重合性組成物を重合してレンズ形状の成形品としてレンズ基材を得る方法において、重合性組成物に青色光吸収性化合物を添加することにより、青色光吸収性化合物を含むレンズ基材を得ることができる。または、一般にレンズ基材の染色方法として用いられる各種湿式または乾式の方法により、レンズ基材に青色光吸収性色素を導入することができる。例えば、湿式の方法の一例としてはディップ法(浸漬法)を挙げることができ、乾式の方法の一例としては昇華染色法を挙げることができる。
また、上記レンズ基材には、一般に眼鏡レンズのレンズ基材に含まれることがある各種添加剤が含まれていてもよい。例えば、レンズ基材を、重合性化合物と青色光吸収性化合物を含む重合性組成物を重合して成形する場合、かかる重合性組成物に、例えば、特開平7−063902号公報、特開平7−104101号公報、特開平9−208621号公報、特開平9−255781号公報等に記載されている重合触媒、特開平1−163012号公報、特開平3−281312号公報等に記載されている内部離型剤、酸化防止剤、蛍光増白剤、ブルーイング剤等の添加剤の一種以上を添加してもよい。これら添加剤の種類および添加量、ならびに重合性組成物を用いるレンズ基材の成形方法については、公知技術を何ら制限なく適用することができる。
上記眼鏡レンズは、両面に高い青色光反射率を有する多層膜を有し、かつ眼鏡レンズの青色光吸収率が10.0%以上であることにより、眼鏡レンズとして、高い青色光カット率を実現することができる。青色光カット率は、好ましくは30.0%以上であり、より好ましくは33.0%以上であり、更に好ましくは35.0%以上であり、一層好ましくは36.0%以上であり、より一層好ましくは38.0%以上である。また、青色光カット率は、例えば50.0%以下であることができる。ただし、装用者の眼に入射する青色光の光量を低減する観点からは青色光カット率は高いほど好ましいため、50.0%超であってもよい。
更に上記眼鏡レンズは、一態様では、高い視感透過率を有する透明性に優れた眼鏡レンズであることができる。上記眼鏡レンズの視感透過率は、好ましくは90.0%以上であり、より好ましくは92.0%以上であり、更に好ましくは92.5〜99.0%の範囲である。
[眼鏡]
本発明の更なる態様は、上記の本発明の一態様にかかる眼鏡レンズと、この眼鏡レンズを取り付けたフレームとを有する眼鏡を提供することもできる。眼鏡レンズについては、先に詳述した通りである。かかる眼鏡レンズを備えることにより、上記眼鏡によって、青色光が装用者の眼に与える影響を効果的に軽減することができる。その他の眼鏡の構成については、特に制限はなく、公知技術を適用することができる。
以下、本発明を実施例により更に説明するが、本発明は実施例に示す態様に限定されるものではない。以下において、屈折率とは波長500nmにおける屈折率である。光学膜厚に関して、λ=500nmである。物理膜厚の単位は、nmである。
[実施例1]
(1)注型重合によるレンズ基材(チオウレタン樹脂製レンズ基材)の成形
ビス−(β−エピチオプロピル)スルフィド100.00質量部、青色光吸収性化合物である2−(3−tertブチル−2−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)−5−クロロ−2H−ベンゾトリアゾール0.40質量部を攪拌混合した後、触媒としてテトラ−n−ブチルホスホニュウムブロマイド0.05質量部を添加し、10mmHgの減圧下で3分間攪拌混合し、レンズ用モノマー組成物(重合性組成物)を調製した。次いで、このレンズ用モノマー組成物を、予め準備したガラス製モールドと樹脂製ガスケットから構成されるレンズ成型用鋳型(0.00D、肉厚1.6mmに設定)の中に注入し、炉内温度20℃〜100℃の電気炉中で20時間かけて重合を行った。重合終了後、ガスケットおよびモールドを取り外した後、110℃で1時間熱処理してプラスチックレンズ(レンズ基材)を得た。得られたレンズ基材は、物体側表面が凸面、眼球側表面が凹面、屈折率は1.60であった。
(2)多層膜の成膜
上記レンズ基材の両面を光学面に加工(研磨)した後に、ハードコートを形成した。ハードコート層は、表1に示す厚みを有し、屈折率は1.62であった。
こうして得られた両面が光学的に仕上げられ予めハードコートが施された、物体側表面が凸面、眼球側表面が凹面であるレンズ基材の凸面側(物体側)のハードコート表面に、アシストガスとして酸素ガスおよび窒素ガスを用いて、イオンアシスト蒸着に合計7層の多層蒸着膜を順次形成した。
凹面側(眼球側)のハードコート表面にも同様の条件でイオンアシスト蒸着により合計7層の多層蒸着膜を積層して眼鏡レンズを得た。
凸面側、凹面側とも、多層蒸着膜は、レンズ基材側(ハードコート側)から眼鏡レンズ表面に向かって、表1に示す蒸着源を用いて第1層、第2層…の順に積層し、眼鏡レンズ表面側最外層が第7層となるように形成した。
本実施例では、不可避的に混入する可能性のある不純物を除けば表1に示す酸化物からなる蒸着源(成膜材料)を使用した。各酸化物の屈折率および各層の膜厚を表1に示す。これらの点は、後述の実施例および比較例についても、同様である。
[実施例2]
(1)注型重合によるレンズ基材(チオウレタン樹脂製レンズ基材)の成形
ビス−(β−エピチオプロピル)スルフィド100.00質量部に代えて、n−ブチルチオグリコレート100.00質量部を用いた点以外、実施例1と同様の方法でプラスチックレンズ(レンズ基材)を得た。得られたレンズ基材は、物体側表面が凸面、眼球側表面が凹面、屈折率は1.67であった。
(2)多層膜の成膜
上記レンズ基材の両面を光学面に加工(研磨)した後に、ハードコートを形成した。ハードコート層は、表1に示す厚みを有し、屈折率は1.68であった。
こうして得られた両面が光学的に仕上げられ予めハードコートが施された、物体側表面が凸面、眼球側表面が凹面であるレンズ基材の凸面側(物体側)のハードコート表面に、アシストガスとして酸素ガスおよび窒素ガスを用いて、イオンアシスト蒸着に合計7層の多層蒸着膜を順次形成した。
凹面側(眼球側)のハードコート表面にも同様の条件でイオンアシスト蒸着により合計7層の多層蒸着膜を積層して眼鏡レンズを得た。
凸面側、凹面側とも、多層蒸着膜は、レンズ基材側(ハードコート側)から眼鏡レンズ表面に向かって、表1に示す蒸着源を用いて第1層、第2層…の順に積層し、眼鏡レンズ表面側最外層が第7層となるように形成した。
[実施例3]
(1)注型重合によるレンズ基材(チオウレタン樹脂製レンズ基材)の成形
ビス−(β−エピチオプロピル)スルフィド100.00質量部、青色光吸収性化合物である2−(3−tertブチル−2−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)−5−クロロ−2H−ベンゾトリアゾール0.10質量部を攪拌混合した後、触媒としてテトラ−n−ブチルホスホニュウムブロマイド0.05質量部を添加し、10mmHgの減圧下で3分間攪拌混合し、レンズ用モノマー組成物(重合性組成物)を調製した。次いで、このレンズ用モノマー組成物を、予め準備したガラス製モールドと樹脂製ガスケットから構成されるレンズ成型用鋳型(0.00D、肉厚1.6mmに設定)の中に注入し、炉内温度20℃〜100℃の電気炉中で20時間かけて重合を行った。重合終了後、ガスケットおよびモールドを取り外した後、110℃で1時間熱処理してプラスチックレンズ(レンズ基材)を得た。得られたレンズ基材は、物体側表面が凸面、眼球側表面が凹面、屈折率は1.60であった。
(2)多層膜の成膜
上記レンズ基材の両面を光学面に加工(研磨)した後に、ハードコートを形成した。ハードコート層は、表1に示す厚みを有し、屈折率は1.62であった。
こうして得られた両面が光学的に仕上げられ予めハードコートが施された、物体側表面が凸面、眼球側表面が凹面であるレンズ基材の凸面側(物体側)のハードコート表面に、アシストガスとして酸素ガスおよび窒素ガスを用いて、イオンアシスト蒸着に合計7層の多層蒸着膜を順次形成した。
凹面側(眼球側)のハードコート表面にも同様の条件でイオンアシスト蒸着により合計7層の多層蒸着膜を積層して眼鏡レンズを得た。
凸面側、凹面側とも、多層蒸着膜は、レンズ基材側(ハードコート側)から眼鏡レンズ表面に向かって、表1に示す蒸着源を用いて第1層、第2層…の順に積層し、眼鏡レンズ表面側最外層が第7層となるように形成した。
[比較例1]
(1)注型重合によるレンズ基材(チオウレタン樹脂製レンズ基材)の成形
ビス−(β−エピチオプロピル)スルフィド100.00質量部に、触媒としてテトラ−n−ブチルホスホニュウムブロマイド0.05質量部を添加し、10mmHgの減圧下で3分間攪拌混合し、レンズ用モノマー組成物(重合性組成物)を調製した。次いで、このレンズ用モノマー組成物を、予め準備したガラス製モールドと樹脂製ガスケットから構成されるレンズ成型用鋳型(0.00D、肉厚1.6mmに設定)の中に注入し、炉内温度20℃〜100℃の電気炉中で20時間かけて重合を行った。重合終了後、ガスケットおよびモールドを取り外した後、110℃で1時間熱処理してプラスチックレンズ(レンズ基材)を得た。得られたレンズ基材は、物体側表面が凸面、眼球側表面が凹面、屈折率は1.60であった。ここで成形されたレンズ基材は、青色光吸収性化合物を含まないレンズ基材である。
(2)多層膜の成膜
上記レンズ基材の両面を光学面に加工(研磨)した後に、ハードコートを形成した。ハードコート層は、表1に示す厚みを有し、屈折率は1.62であった。
こうして得られた両面が光学的に仕上げられ予めハードコートが施された、物体側表面が凸面、眼球側表面が凹面であるレンズ基材の凸面側(物体側)のハードコート表面に、アシストガスとして酸素ガスおよび窒素ガスを用いて、イオンアシスト蒸着に合計7層の多層蒸着膜を順次形成した。
凹面側(眼球側)のハードコート表面にも同様の条件でイオンアシスト蒸着により合計7層の多層蒸着膜を積層して眼鏡レンズを得た。
凸面側、凹面側とも、多層蒸着膜は、レンズ基材側(ハードコート側)から眼鏡レンズ表面に向かって、表1に示す蒸着源を用いて第1層、第2層…の順に積層し、眼鏡レンズ表面側最外層が第7層となるように形成した。
[比較例2]
(1)注型重合によるレンズ基材(チオウレタン樹脂製レンズ基材)の成形
ビス−(β−エピチオプロピル)スルフィド100.00質量部に代えて、n−ブチルチオグリコレート100.00質量部を用いた点以外、比較例1と同様の方法でプラスチックレンズ(レンズ基材)を得た。得られたレンズ基材は、物体側表面が凸面、眼球側表面が凹面、屈折率は1.67であった。ここで成形されたレンズ基材は、青色光吸収性化合物を含まないレンズ基材である。
(2)多層膜の成膜
上記レンズ基材の両面を光学面に加工(研磨)した後に、ハードコートを形成した。ハードコート層は、表1に示す厚みを有し、屈折率は1.68であった。
こうして得られた両面が光学的に仕上げられ予めハードコートが施された、物体側表面が凸面、眼球側表面が凹面であるレンズ基材の凸面側(物体側)のハードコート表面に、アシストガスとして酸素ガスおよび窒素ガスを用いて、イオンアシスト蒸着に合計7層の多層蒸着膜を順次形成した。
凹面側(眼球側)のハードコート表面にも同様の条件でイオンアシスト蒸着により合計7層の多層蒸着膜を積層して眼鏡レンズを得た。
凸面側、凹面側とも、多層蒸着膜は、レンズ基材側(ハードコート側)から眼鏡レンズ表面に向かって、表1に示す蒸着源を用いて第1層、第2層…の順に積層し、眼鏡レンズ表面側最外層が第7層となるように形成した。
[実施例4〜8、比較例3、4]
(1)注型重合によるレンズ基材(チオウレタン樹脂製レンズ基材)の成形
実施例1と同様の方法で、プラスチックレンズ(レンズ基材)を得た。得られたレンズ基材は、物体側表面が凸面、眼球側表面が凹面、屈折率は1.60であった。
(2)多層膜の成膜
上記レンズ基材の両面を光学面に加工(研磨)した後に、ハードコートを形成した。ハードコート層は、表1に示す厚みを有し、屈折率は1.62であった。
こうして得られた両面が光学的に仕上げられ予めハードコートが施された、物体側表面が凸面、眼球側表面が凹面であるレンズ基材の凸面側(物体側)のハードコート表面に、アシストガスとして酸素ガスおよび窒素ガスを用いて、イオンアシスト蒸着に合計7層の多層蒸着膜を順次形成した。
凹面側(眼球側)のハードコート表面にも同様の条件でイオンアシスト蒸着により合計7層の多層蒸着膜を積層して眼鏡レンズを得た。
凸面側、凹面側とも、多層蒸着膜は、レンズ基材側(ハードコート側)から眼鏡レンズ表面に向かって、表1に示す蒸着源を用いて第1層、第2層…の順に積層し、眼鏡レンズ表面側最外層が第7層となるように形成した。
[実施例9]
(1)注型重合によるレンズ基材(チオウレタン樹脂製レンズ基材)の成形
実施例2と同様の方法で、プラスチックレンズ(レンズ基材)を得た。得られたレンズ基材は、物体側表面が凸面、眼球側表面が凹面、屈折率は1.67であった。
(2)多層膜の成膜
上記レンズ基材の両面を光学面に加工(研磨)した後に、ハードコートを形成した。ハードコート層は、表1に示す厚みを有し、屈折率は1.68であった。
こうして得られた両面が光学的に仕上げられ予めハードコートが施された、物体側表面が凸面、眼球側表面が凹面であるレンズ基材の凸面側(物体側)のハードコート表面に、アシストガスとして酸素ガスおよび窒素ガスを用いて、イオンアシスト蒸着に合計5層の多層蒸着膜を順次形成した。
凹面側(眼球側)のハードコート表面にも同様の条件でイオンアシスト蒸着により合計5層の多層蒸着膜を積層して眼鏡レンズを得た。
凸面側、凹面側とも、多層蒸着膜は、レンズ基材側(ハードコート側)から眼鏡レンズ表面に向かって、表1に示す蒸着源を用いて第1層、第2層…の順に積層し、眼鏡レンズ表面側最外層が第5層となるように形成した。
[参考例1]
(1)注型重合によるレンズ基材(チオウレタン樹脂製レンズ基材)の成形
実施例1と同様の方法で、プラスチックレンズ(レンズ基材)を得た。得られたレンズ基材は、物体側表面が凸面、眼球側表面が凹面、屈折率は1.60であった。
(2)多層膜(反射防止膜)の成膜
上記レンズ基材の両面を光学面に加工(研磨)した後に、ハードコートを形成した。ハードコート層は、表1に示す厚みを有し、屈折率は1.62であった。
こうして得られた両面が光学的に仕上げられ予めハードコートが施された、物体側表面が凸面、眼球側表面が凹面であるレンズ基材の凸面側(物体側)のハードコート表面に、アシストガスとして酸素ガスおよび窒素ガスを用いて、イオンアシスト蒸着に合計5層の多層蒸着膜を順次形成した。
凹面側(眼球側)のハードコート表面にも同様の条件でイオンアシスト蒸着により合計5層の多層蒸着膜を積層して眼鏡レンズを得た。
凸面側、凹面側とも、多層蒸着膜は、レンズ基材側(ハードコート側)から眼鏡レンズ表面に向かって、表1(表1−1〜表1−6)に示す蒸着源を用いて第1層、第2層…の順に積層し、眼鏡レンズ表面側最外層が第5層となるように形成した。
参考例1で成膜した多層蒸着膜は、通常、反射防止膜として眼鏡レンズに形成される多層膜である。
Figure 0006974305
Figure 0006974305
Figure 0006974305
Figure 0006974305
Figure 0006974305
Figure 0006974305
[眼鏡レンズの評価]
(1)眼鏡レンズの物体側表面および眼球側表面における青色光反射率および視感反射率の測定
実施例、比較例、参考例の眼鏡レンズの物体側表面(凸面側)、眼球側表面(凹面側)の光学中心において、日立製作所製分光光度計U4100を用いて直入射反射分光特性を測定した(測定ピッチ:1nm)。非測定面からの反射を抑えるため、JIS T 7334の5.2節の通り、非測定面は光沢のない黒色で塗装した。
測定結果を用いて、先に記載した方法により400〜500nmの波長域における平均反射率、視感反射率を、それぞれ求めた。
(2)眼鏡レンズの青色光吸収率、青色光カット率および視感透過率の測定
実施例、比較例、参考例の眼鏡レンズの直入射反射分光特性を、眼鏡レンズの物体側の表面側(凸面側)から日立製作所製分光光度計U4100を用いて、波長380nmから500nmまで1nmピッチで測定した。
測定結果を用いて、先に記載した方法により、眼鏡レンズの青色光吸収率、青色光カット率および視感透過率を求めた。
こうして得られた実施例、比較例、参考例の眼鏡レンズの反射スペクトルおよび透過スペクトルを、図1〜図14に示す。図中、実線のスペクトルは反射(R)スペクトルであり、破線のスペクトルは透過(T)スペクトルである。図1〜図14は、詳しくは、以下の通りである。
図1に、実施例1の眼鏡レンズの反射スペクトルおよび透過スペクトルを示す。
図2に、参考例1の眼鏡レンズの反射スペクトルおよび透過スペクトルを示す。
図3に、比較例1の眼鏡レンズの反射スペクトルおよび透過スペクトルを示す。
図4に、実施例2の眼鏡レンズの反射スペクトルおよび透過スペクトルを示す。
図5に、比較例2の眼鏡レンズの反射スペクトルおよび透過スペクトルを示す。
図6に、実施例3の眼鏡レンズの反射スペクトルおよび透過スペクトルを示す。
図7に、比較例3の眼鏡レンズの反射スペクトルおよび透過スペクトルを示す。
図8に、比較例4の眼鏡レンズの反射スペクトルおよび透過スペクトルを示す。
図9に、実施例4の眼鏡レンズの反射スペクトルおよび透過スペクトルを示す。
図10に、実施例5の眼鏡レンズの反射スペクトルおよび透過スペクトルを示す。
図11に、実施例6の眼鏡レンズの反射スペクトルおよび透過スペクトルを示す。
図12に、実施例7の眼鏡レンズの反射スペクトルおよび透過スペクトルを示す。
図13に、実施例8の眼鏡レンズの反射スペクトルおよび透過スペクトルを示す。
図14に、実施例9の眼鏡レンズの反射スペクトルおよび透過スペクトルを示す。
図中に示す実施例、比較例、参考例の反射スペクトルおよび透過スペクトルの対比から、実施例の眼鏡レンズが、青色光の反射率は高いものの、青色光の波長域に隣接する緑色光の波長域において反射率が急激に低下する特徴的な反射分光特性を有することが確認できる。
(3)ゴースト評価
実施例、比較例の眼鏡レンズを、暗室において蛍光灯下30cmの位置で眼球側から観察し、ゴースト(二重像)の発生の有無および程度を、以下の評価基準に基づき官能評価した。
B:明瞭なゴーストが観察される。
A:明瞭なゴーストは観察されない。薄いゴーストが観察される。
A+:薄いゴーストが観察されるが、Aより軽度。
A++:薄いゴーストが観察されるが、A+より軽度。
A+++:薄いゴーストが観察されるがA++より軽度であるか、またはゴーストが観察されない。
(4)ギラツキ評価(物体側)
実施例、比較例、参考例の眼鏡レンズを通常の明るさの室内において物体側から観察し、実施例および比較例の眼鏡レンズのギラツキ(物体側面が反射する光)の強さを観察者の眼により、以下の評価基準に基づき官能評価した。
B:比較例1の眼鏡レンズと比べて明らかにギラツキが感じられる。
A:ギラツキが感じられないか、またはわずかなギラツキが感じられるがBより軽度。
(5)ギラツキ評価(眼球側)
実施例、比較例、参考例の眼鏡レンズを通常の明るさの室内において眼球側から観察し、実施例および比較例の眼鏡レンズのギラツキ(眼球側面が反射する光)の強さを観察者の眼により、以下の評価基準に基づき官能評価した。
B:比較例1の眼鏡レンズと比べて明らかにギラツキが感じられる。
A:ギラツキが感じられないか、またはわずかなギラツキが感じられるがBより軽度。
以上の結果を、表2に示す。
Figure 0006974305
表2に示す結果から、実施例の眼鏡レンズは、物体側表面および眼球側表面における青色光反射率が10.0〜20.0%と高いものの、ゴーストおよびギラツキの発生が抑制されていることが確認できる。
また、実施例の眼鏡レンズが、高い青色光カット率を有すること、および視感透過率が高く透明性に優れた眼鏡レンズであることも確認できる。
最後に、前述の各態様を総括する。
一態様によれば、レンズ基材と、レンズ基材の物体側表面上に位置する多層膜と、レンズ基材の眼球側表面上に位置する多層膜と、を含む眼鏡レンズであって、青色光吸収率が10.0%以上であり、上記レンズ基材は、青色光吸収性化合物を含み、眼鏡レンズの物体側表面および眼球側表面においてそれぞれ測定される400〜500nmの波長域における平均反射率は10.0〜20.0%の範囲であり、かつ眼鏡レンズの物体側表面および眼球側表面においてそれぞれ測定される視感反射率は2.0%未満である眼鏡レンズが提供される。
上記眼鏡レンズは、眼鏡レンズの物体側表面および眼球側表面において高い青色光反射率を有するにもかかわらず、ゴーストおよびギラツキの発生を抑制することができる。これにより良好な装用感および外観を実現することができる。
一態様では、上記眼鏡レンズの青色光カット率は、30.0%以上である。
一態様では、上記眼鏡レンズの青色光カット率は、36.0%以上である。
一態様では、上記眼鏡レンズの物体側表面および眼球側表面においてそれぞれ測定される視感反射率は、1.8%以下である。
一態様では、上記眼鏡レンズの物体側表面および眼球側表面においてそれぞれ測定される400〜500nmの波長域における平均反射率は、15.0〜20.0%の範囲である。
一態様では、上記眼鏡レンズの物体側表面および眼球側表面の少なくとも一方において測定される400〜500nmの波長域における平均反射率は、10.0%超かつ19.0%以下である。
一態様では、上記眼鏡レンズの物体側表面および眼球側表面においてそれぞれ測定される400〜500nmの波長域における平均反射率は、10.0%超かつ19.0%以下である。
一態様では、上記眼鏡レンズの物体側表面および眼球側表面の少なくとも一方において測定される400〜500nmの波長域における平均反射率は、10.0%超かつ18.0%以下である。
一態様では、上記眼鏡レンズの物体側表面および眼球側表面においてそれぞれ測定される400〜500nmの波長域における平均反射率は、10.0%超かつ18.0%以下である。
一態様では、上記眼鏡レンズの物体側表面および眼球側表面の少なくとも一方において測定される400〜500nmの波長域における平均反射率は、10.0%超かつ17.5%以下である。
一態様では、上記眼鏡レンズの物体側表面および眼球側表面においてそれぞれ測定される400〜500nmの波長域における平均反射率は、10.0%超かつ17.5%以下である。
一態様では、上記眼鏡レンズの物体側表面および眼球側表面の少なくとも一方において測定される400〜500nmの波長域における平均反射率は、10.0%超かつ17.0%以下である。
一態様では、上記眼鏡レンズの物体側表面および眼球側表面においてそれぞれ測定される400〜500nmの波長域における平均反射率は、10.0%超かつ17.0%以下である。
一態様では、上記眼鏡レンズの物体側表面および眼球側表面の少なくとも一方において測定される400〜500nmの波長域における平均反射率は、10.0%超かつ16.0%以下である。
一態様では、上記眼鏡レンズの物体側表面および眼球側表面においてそれぞれ測定される400〜500nmの波長域における平均反射率は、10.0%超かつ16.0%以下である。
一態様では、上記眼鏡レンズの物体側表面および眼球側表面の少なくとも一方において測定される400〜500nmの波長域における平均反射率は、11.0%超かつ16.0%以下である。
一態様では、上記眼鏡レンズの物体側表面および眼球側表面においてそれぞれ測定される400〜500nmの波長域における平均反射率は、11.0%超かつ16.0%以下である。
一態様では、上記眼鏡レンズの物体側表面および眼球側表面において少なくとも一方において測定される400〜500nmの波長域における平均反射率は、12.0%超かつ16.0%以下である。
一態様では、上記眼鏡レンズの物体側表面および眼球側表面においてそれぞれ測定される400〜500nmの波長域における平均反射率は、12.0%超かつ16.0%以下である。
一態様では、上記青色光吸収性化合物は、ベンゾトリアゾール化合物である。
一態様では、上記レンズ基材の物体側表面上に位置する多層膜および上記レンズ基材の眼球側表面上に位置する多層膜は、無機材料を主成分として含む被膜を複数有する多層膜である。
一態様では、上記レンズ基材の物体側表面上に位置する多層膜および上記レンズ基材の眼球側表面上に位置する多層膜は、ケイ素酸化物を主成分として含む被膜とジルコニウム酸化物を主成分として含む被膜とが隣接する積層構造を少なくとも1つ有する。
一態様では、上記眼鏡レンズの視感透過率は、90.0%以上である。
一態様によれば、上記眼鏡レンズと、この眼鏡レンズを取り付けたフレームと、を有する眼鏡も提供される。
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
本発明は、眼鏡レンズおよび眼鏡の製造分野において有用である。

Claims (12)

  1. レンズ基材と、前記レンズ基材の物体側表面上に位置する多層膜と、前記レンズ基材の眼球側表面上に位置する多層膜と、を含む眼鏡レンズであって、
    青色光吸収率が15.0%以上であり、
    前記レンズ基材は、400〜500nmの波長域に吸収を有する化合物である青色光吸収性化合物を含み、
    前記青色光吸収性化合物は、ベンゾトリアゾール化合物、ベンゾフェノン化合物、トリアジン化合物およびインドール化合物からなる群から選択される一種以上であり、
    前記眼鏡レンズの物体側表面において測定される400〜500nmの波長域における平均反射率は10.0〜18.0%の範囲であり、
    前記眼鏡レンズの眼球側表面において測定される400〜500nmの波長域における平均反射率は10.0〜16.0%の範囲であり、
    かつ前記眼鏡レンズの物体側表面および眼球側表面においてそれぞれ測定される視感反射率は2.0%未満であり、
    前記青色光吸収率は、以下の方法により求められる青色光吸収率abである、眼鏡レンズ。
    分光光度計によって波長380nm〜500nmの波長域における眼鏡レンズの透過率および反射率を測定し、波長λnmにおける透過率τ*(λ)を、下記式1により算出する。
    Figure 0006974305
    (式1中、τ(λ)は分光光度計により測定される波長λnmにおける透過率であり、R(λ)は分光光度計により測定される波長λnmにおける反射率である。)
    算出された透過率τ*(λ)を用いて、眼鏡レンズの青色光吸収率abを、下記式2により算出する。
    Figure 0006974305
    式2中、WB(λ)は、JIS T 7333付属書Cに記載されている重み付け関数であり、下記式3により算出される。式3中、Esλ(λ)は、JIS T 7333付属書Cに記載されている太陽光の分光放射照度であり、B(λ)は、JIS T 7333付属書Cに記載されているブルーライトハザード関数である。
    Figure 0006974305
  2. 下記式4により求められる青色光カット率が30.0%以上である請求項1に記載の眼鏡レンズ。
    (式4)
    青色光カット率Cb=1−τb
    式4中、τbは、日本医用光学機器工業会の規格に規定されている眼に有害な青色光の重み付き透過率であり、下記式5により算出される。式5中、WB(λ)は上記式3により算出される。τ(λ)は、分光光度計により測定される波長λnmにおける眼鏡レンズの透過率である。
    Figure 0006974305
  3. 青色光カット率が36.0%以上である請求項1または2に記載の眼鏡レンズ。
  4. 前記眼鏡レンズの物体側表面および眼球側表面においてそれぞれ測定される視感反射率は1.8%以下である請求項1〜3のいずれか1項に記載の眼鏡レンズ。
  5. 前記眼鏡レンズの物体側表面において測定される400〜500nmの波長域における平均反射率は15.0〜18.0%の範囲であり、かつ
    前記眼鏡レンズの眼球側表面において測定される400〜500nmの波長域における平均反射率は15.0〜16.0%の範囲である請求項1〜4のいずれか1項に記載の眼鏡レンズ。
  6. 前記眼鏡レンズの物体側表面および眼球側表面の少なくとも一方において測定される400〜500nmの波長域における平均反射率は、10.0%超かつ16.0%以下である請求項1〜4のいずれか1項に記載の眼鏡レンズ。
  7. 前記眼鏡レンズの物体側表面および眼球側表面においてそれぞれ測定される400〜500nmの波長域における平均反射率は、10.0%超かつ16.0%以下である請求項6に記載の眼鏡レンズ。
  8. 前記青色光吸収性化合物は、ベンゾトリアゾール化合物である請求項1〜7のいずれか1項に記載の眼鏡レンズ。
  9. 前記レンズ基材の物体側表面上に位置する多層膜および前記レンズ基材の眼球側表面上に位置する多層膜は、無機材料を主成分として含む被膜を複数有する多層膜である請求項1〜8のいずれか1項に記載の眼鏡レンズ。
  10. 前記レンズ基材の物体側表面上に位置する多層膜および前記レンズ基材の眼球側表面上に位置する多層膜は、ケイ素酸化物を主成分として含む被膜とジルコニウム酸化物を主成分として含む被膜とが隣接する積層構造を少なくとも1つ有する請求項1〜9のいずれか1項に記載の眼鏡レンズ。
  11. 視感透過率が90.0%以上である請求項1〜10のいずれか1項に記載の眼鏡レンズ。
  12. 請求項1〜11のいずれか1項に記載の眼鏡レンズと、該眼鏡レンズを取り付けたフレームと、を有する眼鏡。
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