JP2020052135A - 眼鏡レンズ及び眼鏡 - Google Patents

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Abstract

【課題】眼を青色光線から保護しながら、黄色みの度合いが低減された眼鏡レンズ,眼鏡を提供する。【解決手段】眼鏡レンズは、基材の少なくとも片面に光学多層膜が形成されたものである。眼鏡レンズの可視域における反射率分布において、極大値が、440nm以上460nm以下の波長域と、620nm以上640nm以下の波長域とに存在する。更に、眼鏡レンズは、日本工業規格「JIS T7333 付属書C」に記載された計算式を用いて算出された青色光線カット率が7%以上(好ましくは8%以上)とされている。又、眼鏡レンズは、YI値が6以下であるようにされている。【選択図】図1

Description

本発明は、可視域の短波長側の光(青色光線,ブルーライト)の透過を低減(カット)する眼鏡レンズ、及び当該眼鏡レンズを用いた眼鏡に関する。
青色光線をカットして比較的にエネルギーの高い青色光線から装用者の眼を保護する眼鏡レンズとして、特許第6073355号公報(特許文献1)に記載されたものが知られている。
この眼鏡レンズでは、表裏面においてそれぞれ6層又は8層のZrO及びSiOの交互膜である光学多層膜を形成することにより、380nm(ナノメートル)程度から500nm程度までの波長域において6%前後の反射率を有しており、反射により青色光線をカットしている。又、この波長域を除く可視域では、視認性のために反射率が低減されている。
特許第6073355号公報
この眼鏡レンズは、青色光線をカットして他の可視域の光を透過するため、青色の補色である黄色を呈しており、この眼鏡レンズの装用者の視界は、黄色みを帯びることとなる。黄色い眼鏡レンズは、装用時の外観を考慮して、装用を敬遠される場合がある。
本発明の主な目的は、眼を青色光線から保護しながら、黄色みの度合いが低減された眼鏡レンズ,眼鏡を提供することにある。
上記目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、基材の少なくとも片面側に光学多層膜が形成された眼鏡レンズであって、反射率分布の極大値が、440nm以上460nm以下の波長域と、620nm以上640nm以下の波長域とに存在し、日本工業規格「JIS T7333 付属書C」に記載された計算式を用いて算出された青色光線カット率が、7%以上であり、YI値が、6以下であることを特徴とするものである。
請求項2に記載の発明は、上記発明にあって、各面における視感度反射率が、何れも2.5%以下であることを特徴とするものである。
請求項3に記載の発明は、上記発明にあって、眼から遠い側の面における400nm以上700nm以下の波長域の反射率が12%以下であり、眼に近い側の面における400nm以上700nm以下の波長域の反射率が6%以下であることを特徴とするものである。
上記目的を達成するために、請求項4に記載の発明は、眼鏡であって、上記発明の眼鏡レンズが用いられていることを特徴とするものである。
本発明の主な効果は、眼を青色光線から保護しながら、黄色みの度合いが低減された眼鏡レンズ,眼鏡が提供されることにある。
実施例1〜5における可視域での分光反射率分布を示すグラフである。 比較例1〜4における可視域での分光反射率分布を示すグラフである。 比較例5〜6における可視域での分光反射率分布を示すグラフである。 実施例6〜9における可視域での分光反射率分布を示すグラフである。 実施例10〜15における可視域での分光反射率分布を示すグラフである。
以下、本発明に係る実施の形態の例が説明される。本発明は、以下の形態に限定されない。
本発明に係る眼鏡レンズは、基材と、その片面側又は両面側に適宜形成される光学多層膜と、を有している。
基材の材料として、例えばガラス、あるいは合成樹脂が用いられ、好ましくは、熱硬化性樹脂が用いられ、例えばポリウレタン樹脂、チオウレタン樹脂、エピスルフィド樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、ポリエーテルサルホン樹脂、ポリ4−メチルペンテン−1樹脂、ジエチレングリコールビスアリルカーボネート樹脂、あるいはこれらの組合せが用いられる。又、屈折率が高く好適なものとして、例えばポリイソシアネート化合物と、ポリチオール及び含硫黄ポリオールの少なくとも一方と、を付加重合して得られるポリウレタン樹脂を挙げることができ、更に屈折率が高く好適なものとして、エピスルフィド基と、ポリチオール及び含硫黄ポリオールの少なくとも一方と、を付加重合して得られるエピスルフィド樹脂を挙げることができる。
基材には、好ましくは紫外線吸収剤が添加される。
基材の厚みは、特に限定されないが、厚みが増すほど、内部透過率が比例的に上昇し、又眼鏡レンズとしての見栄えや重量が比較的に悪化することから、好ましくは4mm(ミリメートル)以下とされる。
眼鏡レンズにおいて、基材と少なくとも一方の光学多層膜との間に、中間膜が配置されても良い。
中間膜として、例えばハードコート膜が形成されていても良い。
ハードコート膜は、好適には、基材の表面にハードコート液を均一に施すことで形成される。
又、ハードコート膜として、好ましくは無機酸化物微粒子を含むオルガノシロキサン系樹脂を用いることができる。オルガノシロキサン系樹脂は、アルコキシシランを加水分解し縮合させることで得られるものが好ましい。又、オルガノシロキサン系樹脂の具体例として、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、エチルシリケート、又はこれらの組合せが挙げられる。これらアルコキシシランの加水分解縮合物は、当該アルコキシシラン化合物あるいはそれらの組合せを、塩酸等の酸性水溶液で加水分解することにより製造される。
一方、無機酸化物微粒子の材質の具体例として、酸化亜鉛、二酸化ケイ素(シリカ微粒子)、酸化アルミニウム、酸化チタン(チタニア微粒子)、酸化ジルコニウム(ジルコニア微粒子)、酸化スズ、酸化ベリリウム、酸化アンチモン、酸化タングステン、酸化セリウムの各ゾルを単独であるいは何れか2種以上を混晶化したものが挙げられる。無機酸化物微粒子の直径は、ハードコート膜の透明性確保の観点から、1nm以上100nm以下であることが好ましく、1nm以上50nm以下であるとより好ましい。又、無機酸化物微粒子の配合量(濃度)は、ハードコート膜における硬度や強靱性の適切な度合での確保という観点から、ハードコート膜の全成分中の40wt%(重量パーセント)以上60wt%以下を占めることが好ましい。加えて、ハードコート液には、硬化触媒としてアセチルアセトン金属塩、及びエチレンジアミン四酢酸金属塩の少なくとも一方等を付加することができ、更に基材に対する密着性確保及び形成の容易化の少なくとも何れか等の必要に応じて、界面活性剤、着色剤、溶媒等を添加することができる。
ハードコート膜の物理膜厚は、0.5μm(マイクロメートル)以上4.0μm以下とすると好ましく、1.0μm以上3.0μm以下とするとより好ましい。この膜厚範囲の下限は、これより薄いと充分な硬度を得難いことから定まる。一方、上限は、これより厚くするとクラックや脆さの発生等、物性に関する問題の生ずる可能性が飛躍的に高まることから定まる。
更に、中間膜として、ハードコート膜と基材表面の間に、ハードコート膜の密着性を向上する観点からプライマー膜を付加しても良い。プライマー膜の材質として、例えばポリウレタン系樹脂、アクリル系樹脂、メタクリル系樹脂、有機ケイ素系樹脂、又はこれらの組合せが挙げられる。プライマー膜は、好適には基材の表面にプライマー液を均一に施すことで形成される。プライマー液は、水又はアルコール系の溶媒に上記の樹脂材料と無機酸化物微粒子を混合させた液である。
眼鏡レンズの光学多層膜は、基材あるいは中間膜に対して形成される。
光学多層膜は、例えば真空蒸着法あるいはスパッタ法により形成される。
光学多層膜は、好ましくは金属酸化物である低屈折率材料から形成された低屈折率層と、高屈折率材料から形成された高屈折率層とを交互に積層して形成され、又好ましくは全体として奇数層(全5層,全7層等)を有する構造である。更に好ましくは、最も基材側の層(基材に最も近い層)を1層目とすると、奇数層目が低屈折率層であり、偶数層目が高屈折率層である。
高屈折率材料は、例えば酸化ジルコニウム(ZrO)、酸化チタン(TiO)、酸化タンタル(Ta)、酸化ニオブ(Nb)、酸化ハフニウム(HfO)、酸化セレン(CeO)、あるいはこれらの二種以上の混合物であり、好ましくはZrOである。
更に、低屈折率材料は、例えば酸化ケイ素(SiO)、酸化アルミニウム(Al)、フッ化カルシウム(CaF)、フッ化マグネシウム(MgF)、あるいはこれらの二種以上の混合物であり、好ましくはSiOである。
又、膜設計の容易さや成膜コストの観点から、高屈折率材料及び低屈折率材料がそれぞれ2種以下で用いられることが好ましく、高屈折率材料及び低屈折率材料が1種ずつ用いられることがより好ましい。
眼鏡レンズは、光学多層膜の付与により、可視域における反射率分布の極大値が、440nm以上460nm以下の波長域と、620nm以上640nm以下の波長域とに存在するように形成される。
又、眼鏡レンズは、光学多層膜の付与(特に440nm以上460nm以下の波長域における反射率極大値の配置)により、青色光線カット率が7%以上(好ましくは8%)であるように形成される。これにより、青色光線から装用者の眼が保護される。
更に、眼鏡レンズは、光学多層膜の付与(特に620nm以上640nm以下の波長域における反射率極大値の配置)により、YI値が6以下であるように形成される。これにより、眼鏡レンズの黄色みが抑制され、眼鏡レンズが視認性及び美観に優れたものとなる。
又、眼鏡レンズは、好ましくは、光学多層膜の付与により、基材の凸面側(表面側,眼から遠い側)の面及び凹面側(裏面側,眼に近い側)の面の双方において、視感度反射率(D65光線,2度視野)が何れも2.5%以下であるように形成される。これにより、光学多層膜は反射防止膜の役割も担うこととなり、光学多層膜により可視域での反射が抑制され、眼鏡レンズがより視認性に優れたものとなる。
更に、眼鏡レンズは、好ましくは、光学多層膜の付与により、凸面側の面における400nm以上700nm以下の波長域の反射率が12%以下であり、凹面側の面における400nm以上700nm以下の波長域の反射率が6%以下であるように形成される。これにより、眼鏡レンズにおいてゴーストの発生が抑制され、眼鏡レンズがより視認性に優れたものとなる。
本発明の眼鏡レンズにおいて、光学多層膜と基材の間及び光学多層膜の表面の少なくとも一方に、ハードコート膜以外の中間膜、あるいは防汚膜(撥水膜・撥油膜)等の別種の膜を付加しても良く、光学多層膜を両面に形成する場合には、付加する別種の膜の種類を互いに変えたり、膜の有無を互いに変えたりしても良い。
又、上記の眼鏡レンズを用いて、青色光線から眼を保護しながら、黄色みの度合いが低減され、視認性及び美観に優れた眼鏡が作製される。
次いで、本発明の実施例1〜15、及び本発明に属さない比較例1〜6が、適宜図面を用いて説明される。尚、本発明は、以下の実施例に限定されない。又、本発明の捉え方により、実施例が比較例となったり、比較例が実施例となったりすることがある。
≪基材等≫
これら実施例ないし比較例は、何れもプラスチック眼鏡レンズであり、それらの基材は、何れも眼鏡用の熱硬化性樹脂製であって、プラスチック眼鏡レンズとして標準的な大きさの円形である。
基材は、実施例ないし比較例において共通しており、レンズ中心厚が1.9mmで度数がS−0.00である球面レンズであって、屈折率が1.60であるチオウレタン樹脂製である。尚、基材に対して染色等は行っておらず、基材自体は無色透明である。
≪ハードコート膜等≫
又、これら実施例ないし比較例においては、中間膜として、ハードコート液の塗布により形成されるハードコート膜が両面に付与された。
基材に接するハードコート膜は、ハードコート液を基材へ塗布して加熱することにより、次のように形成された。
即ち、まず、反応容器中に、メタノール206g、メタノール分散チタニア系ゾル300g(日揮触媒化成株式会社製,固形分30%)、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン60g、γーグリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン30g、テトラエトキシシラン60gが滴下され、その混合液中に0.01N(規定濃度)の塩酸水溶液を滴下、撹拌して加水分解が行われた。
次に、フロー調整剤0.5gおよび触媒1.0gが加えられ、室温で3時間撹拌されてハードコート液が形成された。
そして、このハードコート液がレンズ基材両面に塗布され、120℃で1.5時間加熱硬化されて、膜厚2.5μmのハードコート膜が形成された。
≪実施例1〜5,比較例1〜6の光学多層膜等≫
更に、実施例1〜5,比較例1〜6では、両面におけるハードコート層の上に、それぞれ光学多層膜が形成された。
光学多層膜は、真空蒸着法により、はじめに眼鏡レンズの凸面側(表面側)へ形成され、次に眼鏡レンズの凹面側(裏面側)へ形成された。蒸着開始時の温度は60℃、真空度は8.0×10−4 Pa(パスカル) に設定された。
実施例1〜5,比較例1〜6の光学多層膜は、基材側を1層目として、次の[表1]〜[表11]に記載した通りに形成された。これらの光学多層膜は、全5層又は全7層であり、1,3,5,7層目に位置する低屈折率層はSiOで形成され、2,4,6層目はSiOより屈折率の大きい高屈折率層で形成される。高屈折率層の屈折率は、選択する材料によって調整することができるだけでなく、成膜レートやイオンアシスト処理の有無,電圧の高さ,イオンの種類等により調製することができる。実施例1〜5,比較例1〜6の光学多層膜では、高屈折率層にZrOが選択され、イオンアシスト条件を変えることで、2層目と他の高屈折率層の屈折率が変動された。各層の屈折率は[表1]〜[表11]に示され、全て波長550nmにおける屈折率である。
Figure 2020052135
Figure 2020052135
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Figure 2020052135
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Figure 2020052135
Figure 2020052135
Figure 2020052135
Figure 2020052135
≪実施例1〜5,比較例1〜6の反射率分布等≫
実施例1〜5,比較例1〜6について、可視域(ここでは380nm以上780nm以下の波長域)での分光反射率分布及び凸面側,凹面側の各視感度反射率(D65光線,2度視野)が測定され(図1〜図3,[表12])、450,630nmでの凸面側,凹面側の各反射率が把握された([表12])。
実施例1〜5,比較例1〜6は、少なくとも凸面側の光学多層膜において、波長450,630nmでそれぞれ反射率分布の極大値を持つように設計されている。波長450nmでの極大値は、青色光線カット率を向上し、特にパーソナルコンピュータ(PC)あるいは携帯端末における各種のディスプレイ(LEDによる三原色発光中の青色)から発せられる波長450nmを鋭い強度ピークとした光を効率良くカットする観点から設定される。波長630nmでの極大値は、ブルーライトカット機能の付与によりもたらされる黄色みを抑制する観点から設定される。
Figure 2020052135
≪実施例1〜5,比較例1〜6のYI値,青色光線カット率等≫
又、実施例1〜5,比較例1〜6について、YI値が求められ([表13])、又青色光線カット率が算出された([表13])。
Figure 2020052135
YI値は、XYZ表色系に係る標準光における試料の三刺激値であるX,Y,Zを用いて、次式で示される。
YI=100(1.2769X−1.059Z)/Y
YI値は、マイナスの場合青みが強くなり、プラスの場合黄みが強くなり、そのプラスの大きさが黄色みの度合い(黄色度)を示す。XYZ表色系は、CIE(国際照明委員会)において標準表色系として採用されており、光の三原色である赤・緑・青あるいはそれらの加法混色に基づく系である。XYZ表色系における刺激値X,Y,Zを求める測色器は公知であり、被測定光の分光エネルギーに刺激値X,Y,Zに関するそれぞれの等色関数を波長毎に乗じつつ可視領域の全波長にわたり積算することで刺激値X,Y,Zが求められる。
青色光線カット率は、日本医用光学機器工業会が定める青色光線カット率に関するガイドラインに基づき、日本工業規格「JIS T7333 付属書C」に記載された計算式を用いて算出される。
即ち、太陽光線の放射照度分布とその放射スペクトルリスク(ブルーライトハザード関数B(λ))で重み付けした分光透過率τsb(波長380〜500nm域,5nmステップ,下記[数1])を1から減じた値である。
Figure 2020052135
≪実施例1〜5,比較例1〜6の評価等≫
以上のような実施例1〜5,比較例1〜6についての評価結果が、[表13]の右部に示される。
比較例1〜3は、凸面側が7層構造、凹面側が5層構造で、互いに凸面側の反射率特性が異なり、波長450,630nmの反射率が互いに相違するように設計されている。比較例1,2では、波長450,630nmの反射率が比較的に高いため、凸面側の視感度反射率が2.5%を超えており、反射防止性能が劣るし(視感度反射率「×」)、ゴースト(映り込み)も装用者が気になるレベルで発生しており(ゴースト「×」)、装用時の視認性が劣る。ゴーストについては、蛍光灯直下で装用してレンズへの映り込みが視認性を阻害するか否かについて主観で評価されたが、凸面側(眼から遠い側)において400nm以上700nm以下の波長域で反射率が12%を超えず、凹面側(眼に近い側)において同波長域で反射率が6%を超えないことが、良好な評価(ゴースト「○」)が得られる目安となる。比較例2では、YI値が6.0を超えており、黄色みについても比較的強いという評価となっている(YI「×」)。比較例3では、波長450,630nmの反射率が比較的に低いため、反射防止性能は良好である(視感度反射率「○」)。しかし、青色光線カット率が8%を下回っており、比較的に十分でない(青色光線カット率「×」)。尚、青色光線カット率の評価は、7%を下回らなければ良好であると緩和しても良く、この場合比較例3の青色光線カット率の評価は良好となり(青色光線カット率「△」)、比較例3は本発明に属する実施例となる。
比較例4は、凸面側,凹面側が同じ7層構造で、両面において機能を発揮させるものとなっているところ、特に凹面側でゴーストが発生している。
比較例5は、凸面側,凹面側が同じ5層構造で、一般的な反射防止膜を両面に有するものとなっているところ、青色光線カット率が比較的に十分でない。
比較例6は、凸面側,凹面側が同じ5層構造で、一般的なブルーライトカットレンズ用の反射防止膜を両面に有するものとなっており、青色光線カット率が十分であるところ、YI値が6.0を大幅に超えており(10.9)、黄色みが強くなっている。又、ゴーストも見受けられる。
これに対し、実施例1〜4では、凸面側が7層構造、凹面側が5層構造で、互いに凸面側の反射率特性が異なるところ、波長450,630nmの各極大値の反射率が適切に設定されているため、YI値,視感度反射率,青色光線カット率,ゴーストの全項目で良好である。
又、実施例5では、凸面側,凹面側が同じ7層構造で、両面において機能を発揮させるものとなっており、波長450,630nmの各極大値の反射率が適切に設定されているため、全ての評価項目で良好である。
≪実施例1〜5に基づく実施例6〜15の評価等≫
実施例1〜5をベースとし、主に凸面側の光学多層膜における各層の物理膜厚が調整されることで、可視域反射率分布の各極大値を440,460nmの何れか及び620,640nmの何れかに±10nm分シフトさせた実施例6〜15が形成され、実施例1〜5と同様に評価された。
図4,図5に、実施例6〜9,実施例10〜15における可視域での分光反射率分布が示される。
又、次の[表14],[表15]に、実施例1〜5に係る[表12],[表13]と同様である、実施例10〜15に係る評価結果が示される。
Figure 2020052135
Figure 2020052135
実施例6,7は、実施例1をベースとし、前者の各極大値が440,620nmに位置し、後者の各極大値が460,640nmに位置するように設計された。
実施例8,9は、実施例2をベースとし、前者の各極大値が440,620nmに位置し、後者の各極大値が460,640nmに位置するように設計された。
実施例10,11は、実施例3をベースとし、前者の各極大値が440,620nmに位置し、後者の各極大値が460,640nmに位置するように設計された。
実施例12,13は、実施例4をベースとし、前者の各極大値が440,620nmに位置し、後者の各極大値が460,640nmに位置するように設計された。
実施例14,15は、実施例5をベースとし、前者の各極大値が440,620nmに位置し、後者の各極大値が460,640nmに位置するように設計された。
これらの実施例6〜15においても、各極大値の反射率が適切に設定されているため、YI値,視感度反射率,青色光線カット率,ゴーストの全項目で良好な評価が得られた。
従って、可視域反射率分布の極大値が、450nmと630nmとに配置されるだけでなく、440nm以上460nm以下の波長域内と、620nm以上640nm以下の波長域内とに配置されても、青色光線からの保護性能を保持し、黄色みが低減され、視認性が良好である眼鏡レンズは提供可能である。
≪まとめ等≫
上述の各実施例のように、基材に光学多層膜が形成され、反射率分布の極大値が、440nm以上460nm以下の波長域と、620nm以上640nm以下の波長域とに存在し、日本工業規格「JIS T7333 付属書C」に記載された計算式を用いて算出された青色光線カット率が7%以上(好ましくは8%以上)であり、YI値が6以下であると、眼鏡レンズ及びこれを用いた眼鏡が、青色光線に対する保護性能を十分に具備しながら、視認性及び美観に優れたものとなる。
又、上述の各実施例のように、視感度反射率が何れも2.5%以下であるように形成されれば、可視域での反射が抑制され、眼鏡レンズ及びこれを用いた眼鏡が視認性に優れたものとなる。
更に、上述の各実施例のように、凸面側の面における400nm以上700nm以下の波長域の反射率が12%以下であり、凹面側の面における400nm以上700nm以下の波長域の反射率が6%以下であるように形成されれば、ゴーストの発生が抑制され、眼鏡レンズ及びこれを用いた眼鏡が視認性に優れたものとなる。

Claims (4)

  1. 基材の少なくとも片面側に光学多層膜が形成された眼鏡レンズであって、
    反射率分布の極大値が、440nm以上460nm以下の波長域と、620nm以上640nm以下の波長域とに存在し、
    日本工業規格「JIS T7333 付属書C」に記載された計算式を用いて算出された青色光線カット率が、7%以上であり、
    YI値が、6以下である
    ことを特徴とする眼鏡レンズ。
  2. 各面における視感度反射率が、何れも2.5%以下である
    ことを特徴とする請求項1に記載の眼鏡レンズ。
  3. 眼から遠い側の面における400nm以上700nm以下の波長域の反射率が12%以下であり、
    眼に近い側の面における400nm以上700nm以下の波長域の反射率が6%以下である
    ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の眼鏡レンズ。
  4. 請求項1ないしは請求項3の何れかに記載の眼鏡レンズが用いられている
    ことを特徴とする眼鏡。
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