実施の形態1.
図1は、本発明の実施の形態1に係る方位変化処理装置及び方位変化処理システムの構成を示すブロック図である。図2は、図1の積分処理部による積分値の演算手法を説明するための説明図である。図3は、図1の表示装置にBTR表示とB−BR表示とが出力された状態を示す説明図である。
図1に示すように、方位変化処理システム100は、方位変化処理装置10と、表示装置80と、入力装置90と、により構成されている。表示装置80は、例えば液晶ディスプレイ(LCD:Liquid Crystal Display)からなり、種々のデータを表示する。例えば、表示装置80は、BTR表示及びB−BR表示を行うことができる。ここで、BTR表示の「BTR」は、「Bearing Time Recording」の略である。また、B−BR表示の「B」は「方位:Bearing」の略であり、「BR」は「方位変化率:Bearing Rate」の略である。
BTR表示は、横軸を方位とし、縦軸を時刻として、時刻及び方位ごとの信号強度を濃淡表示あるいはカラー表示するものである。よって、BTR表示には、方位ごとの信号強度の経時変化が表れる。B−BR表示は、方位と方位変化率との組ごとの信号強度を濃淡表示あるいはカラー表示するものである。BTR表示及びBTR表示では、表示される色彩が濃いほど、信号の強度が大きいことを示す。
入力装置90は、マウス又はトラックボールなどのポインティングデバイスと、複数の物理ボタンを含むキーボードなどにより構成される。入力装置90は、ユーザによる入力操作を受け付ける。例えば、入力装置90は、時刻を指定する操作を受け付ける。本実施の形態1において、入力装置90は、時刻を指定する操作として、後述する時刻カーソルTを移動させる操作を受け付ける。入力装置90は、ユーザによる入力操作に応じた操作信号を出力制御部40へ出力する。
ここで、入力装置90は、ユーザによってタッチされた位置を検出し、検出した位置の情報を出力制御部40へ出力するタッチパネルであってもよい。この場合、表示装置80と入力装置90とは、積層されて一体的に形成される。
方位変化処理装置10は、信号入力端子11と、表示出力端子12と、操作入力端子13と、を有している。また、方位変化処理装置10は、整相処理部20と、積分処理部30と、出力制御部40と、記憶部50と、を有している。
信号入力端子11は、受波器アレイなどの音響センサから出力される受波信号が入力される端子である。ここで、音響センサは、信号源から放射される信号を含む受波信号を逐次受信し、受信した受波信号を、信号入力端子11を介して方位変化処理装置10へ出力するようになっている。表示出力端子12は、出力制御部40から表示装置80に送信される制御信号を中継する端子である。操作入力端子13は、操作員などのユーザによる入力操作に応じて入力装置90から送信される操作信号を出力制御部40に受け渡す端子である。
整相処理部20は、信号入力端子11を介して入力される受波信号に対し、任意の複数の方位についての整相を行うものである。ここで、任意の複数の方位をθ1〜θM(Mは2以上の自然数)とする。この場合、整相処理部20は、発信源からの信号を含む受波信号に対し、方位θ1〜θMについての整相を行い、各方位の信号レベルを示す整相データを生成する。整相処理部20は、生成した整相データを出力制御部40及び積分処理部30へ出力する。
積分処理部30は、整相処理部20から出力される整相データに対し、少なくとも1つの方位につき、複数の方位変化率での方位変化に沿って信号レベルの積分を行うことで、方位と方位変化率とに対応する複数の積分値を求める。ここで、複数の方位変化率をD1〜DK(Kは2以上の自然数)とする。この場合、積分処理部30は、方位θ1…θm…θM(1<m<M)ごとに、各方位変化率D1…Dk…DK(1<k<K)での方位変化に沿って信号レベルの積分を行い、方位ごとにM個の積分値を求める。つまり、積分処理部30は、方位と方位変化率との組ごとの積分値を求めるようになっている。
ここで、時刻tにおけるθ方位への整相データの信号レベルをL(θ,t)とする。すると、図2に示すような、任意の時刻trの方位θmについて、方位変化率Dkに対する積分値L(θm,Dk)の計算は、例えば下記の式(1)により行うことができる。なお、式(1)の左辺のL上のバーは、積分値であることを示す記号である。
整相データの積分間隔をΔtとすると、tr−nは、下記の式(2)のようになる。
積分処理部30は、複数の時刻tのそれぞれについて、方位θmと方位変化率Dkとに対応する積分値L(θm,Dk)を求める。ここで、mは1〜Mまでの値をとり、kは1〜Kまでの値をとる。すなわち、積分処理部30は、方位θ1〜θMと方位変化率D1〜DKとの組み合わせのそれぞれに対応する積分値L(θm,Dk)を求める。そして、積分処理部30は、求めた複数の積分値である積分値L(θm,Dk)を出力制御部40へ出力する。
ここで、各積分値には、信号源の方位変化との一致度合いが反映される。すなわち、実際の信号源の方位変化と一致する積分値は、積分処理部30による積分により信号レベルが向上する。一方、実際の信号源の方位変化と一致しない積分値は、積分処理部30による積分により信号レベルが低下する。したがって、方位と方位変化率との組ごとの積分値は、信号源を探知するための受波信号のSN比を向上させた高精度のデータとして用いることができる。
出力制御部40は、積分処理部30において求められた積分値L(θm,Dk)をもとに、発信源の方位及び方位変化率を示す方位情報を生成して出力する。本実施の形態1において、出力制御部40は、BTR制御部41と、B−BR制御部42と、を有している。
BTR制御部41は、整相処理部20から出力される整相データの各方位の信号レベルを表示装置80にBTR表示させる。また、BTR制御部41は、図3に示すように、時刻指定用の時刻カーソルTと、時刻カーソルTに連動して動作する方位カーソルNとを、表示装置80のBTR表示上に表示させる。つまり、BTR制御部41は、時刻カーソルTの指す時刻において積分値が最大となる方位に対応づけて、方位カーソルNを表示させる。
BTR制御部41は、入力装置90からの操作信号に応じて、BTR表示上の時刻カーソルTを移動させる。また、BTR制御部41は、時刻カーソルTを移動させるとき、時刻カーソルTの時刻で積分値が最大となる方位を指すよう、方位カーソルNを、時刻カーソルTに連動させて移動させる。
BTR制御部41は、時刻カーソルTを表示させるとき、時刻カーソルTの指す時刻を示す時刻情報をB−BR制御部42へ出力する。また、BTR制御部41は、時刻カーソルTをBTR表示上で移動させているとき、時刻カーソルTの指す時刻を示す時刻情報を継続的にB−BR制御部42へ出力する。
B−BR制御部42は、図3のB−BR表示部分に示すように、積分処理部30から入力された積分値L(θm,Dk)を濃淡あるいはカラーで表示装置80に表示させる。つまり、B−BR制御部42は、積分処理部30から入力された積分値L(θm,Dk)をもとに、発信源の方位及び方位変化率を示す方位情報を生成し、表示装置80へ出力する。表示装置80は、B−BR制御部42から出力される方位情報をもとに、横軸を方位、縦軸を方位変化率としたB−BR表示を行う。なお、図3のB−BR表示では、方位の目盛りに「θ1…θm…θM」を例示し、方位変化率の目盛りに「D1…Dk…DK」を例示している。
また、B−BR制御部42は、表示装置80上のB−BR表示を経時的に変化させる。つまり、B−BR制御部42は、整相処理部20に受波信号が入力され、積分処理部30から新たな積分値L(θm,Dk)が入力される度に、表示装置80上のB−BR表示を更新する。ここで、B−BR表示において、積分値L(θm,Dk)を濃淡あるいはカラーで表示した情報を積分値出力データOという。
B−BR制御部42は、BTR制御部41からの時刻情報が示す時刻での積分値L(θm,Dk)に応じた積分値出力データOを、B−BR表示として表示装置80に表示させる。そして、B−BR制御部42は、BTR制御部41からの時刻情報の変化に応じて積分値出力データOを変化させる。すなわち、B−BR制御部42は、入力装置90を介してユーザがBTR表示上の時刻カーソルTを移動させると、時刻カーソルTの指す時刻に応じた積分値出力データOをB−BR表示部分に表示させる。これにより、B−BR表示上の積分値出力データOは、BTR表示上の時刻カーソルTの移動に連動して変化する。
図3では、BTR表示上で時刻カーソルTを合わせた時刻trにおける積分値L(θm,Dk)の表示イメージとして、積分値出力データOを示している。なお、図3では、便宜上、相対的に濃く表示された積分値出力データOを破線で囲っている。
記憶部50には、方位変化処理装置10に上記の各機能を実現させるための動作プログラムなど、整相処理部20、積分処理部30、及び出力制御部40が演算処理に用いる種々のデータが記憶されている。
整相処理部20、積分処理部30、及び出力制御部40は、例えばCPU(Central Processing Unit)等の演算装置と、こうした演算装置と協働して上記の各種機能を実現させるソフトウェアとによって構成することができる。記憶部50は、RAM(Random Access Memory)及びROM(Read Only Memory)、フラッシュメモリ等のPROM(Programmable ROM)、又はHDD(Hard Disk Drive)等により構成することができる。もっとも、方位変化処理装置10は、上記の各機能を実現する回路デバイスのようなハードウェアにより構成してもよい。
図4は、図1の方位変化処理システムの動作のうち、BTR表示及びB−BR表示を行うまでの処理を例示したフローチャートである。図5は、図1の方位変化処理システムの動作のうち、BTR表示上での時刻カーソルTの移動に伴う処理を例示したフローチャートである。図4及び図5を参照して、本実施の形態1における方位変化処理方法について説明する。
整相処理部20は、信号入力端子11を介して受波信号を入力する(ステップS101)。次いで、整相処理部20は、取得した受波信号に対して複数の方位に整相を行い、各方位の信号レベルを示す整相データを生成する。そして、整相処理部20は、生成した整相データを積分処理部30及びBTR制御部41へ出力する(ステップS102)。
BTR制御部41は、整相処理部20から出力される整相データの各方位の信号レベルを表示装置80にBTR表示させる。このとき、BTR制御部41は、図3に示すように、BTR表示上に、時刻カーソルTと方位カーソルNとを表示させる(ステップS103)。
また、積分処理部30は、整相処理部20から出力される整相データに対し、複数の方位につき、複数の方位変化率での方位変化に沿って信号レベルの積分を行うことにより複数の積分値を求める。本実施の形態1において、積分処理部30は、各積分値の算出に式(1)を用いる。そして、積分処理部30は、求めた積分値をB−BR制御部42へ出力する(ステップS104)。
B−BR制御部42は、積分処理部30から入力された積分値を表示装置80にB−BR表示させる。すなわち、B−BR制御部42は、図3に示すように、積分処理部30から入力された積分値に基づく積分値出力データOを、B−BR表示として表示装置80に表示させる(ステップS105)。
ここで、音響センサからの受波信号は、信号入力端子11を介して経時的に方位変化処理装置10へ入力される。そして、方位変化処理装置10は、上記のステップS101〜S105の一連の処理を、受波信号を入力する度に実行する。なお、ステップS103と、ステップS104及びS105とは、並行して行うことができる。
続いて、図5を参照して、B−BR表示上の積分値出力データOを変化させる処理について説明する。BTR制御部41及びB−BR制御部42は、入力装置90から時刻カーソルTの移動を指示する操作信号が入力されるまで待機する。この間、出力制御部40は、表示装置80のBTR表示及びB−BR表示を、受波信号が入力される度に更新し、経時的に変化させる(ステップS106/No)。
そして、BTR制御部41は、ユーザによるマウスの操作などに応じて、時刻カーソルTの移動を指示する操作信号が入力されると(ステップS106/Yes)、時刻カーソルTを移動させる。また、BTR制御部41は、時刻カーソルTの移動に連動させて、方位カーソルNを移動させる。その際、BTR制御部41は、時刻カーソルTの指す時刻を示す時刻情報をB−BR制御部42へ出力する。B−BR制御部42は、時刻情報が示す時刻の変化に応じて、表示装置80の積分値出力データOを変化させる(ステップS107)。
以上のように、方位変化処理装置10は、時刻ごとの各方位の整相データに対し、各方位につき、各方位変化率での方位変化に沿った信号レベルの積分値を求める。そして、方位変化処理装置10は、求めた複数の積分値をもとに、発信源の方位及び方位変化率を示す方位情報を生成し、表示装置80に積分値出力データOを表示させる。ここで、各積分値には、信号源の方位変化との一致度合いが反映されることから、積分値に基づく積分値出力データOには、発信源の方位及び方位変化率が精度よく現れる。そのため、方位変化処理装置10によれば、信号源の方位及び方位変化を示す情報を精度よく且つ容易に求めることができる。
また、表示装置80は、積分処理部30において求められた複数の積分値について、方位及び方位変化率ごとの信号強度を示すB−BR表示を行う。つまり、方位変化処理システム100は、方位と方位変化率との組ごとに求められた積分値の信号レベルを、B−BR表示により濃淡あるいはカラーで表示する。そのため、ユーザは、表示装置80を視認することにより、信号源の方位変化率を容易に取得することができる。
さらに、B−BR制御部42は、入力装置90を介して指定された時刻に応じて、表示装置80上のB−BR表示を変化させる。そのため、ユーザは入力装置90を介して時刻を指定する操作を行うことにより、時刻ごとの積分値出力データOを表示装置80に表示させることができる。よって、ユーザは、表示装置80を視認することにより、時刻ごとの積分値出力データOから、信号源の方位及び方位変化率を取得することができる。
また、BTR制御部41は、整相データの各方位の信号レベルを表示装置80にBTR表示させると共に、BTR表示上に時刻カーソルTを表示させる。加えて、BTR制御部41は、入力装置90への操作に応じて時刻カーソルTを移動させる機能を有している。そして、B−BR制御部42は、時刻カーソルTの指す時刻に応じたB−BR表示を表示装置80上に表示させる。そのため、ユーザは、入力装置90を介して時刻カーソルTを移動させることにより、時刻カーソルTの指す時刻に対応する積分値出力データOを連続的に表示させることができる。よって、ユーザは、信号源の方位及び方位変化率をさらに容易に取得することができる。加えて、BTR制御部41は、BTR表示上に、時刻カーソルTに連動して動作する方位カーソルNを表示させる。そのため、ユーザは、方位カーソルNの指す方位を、積分値出力データOに対応する方位として容易に読み取ることができる。
<変形例>
図6は、本発明の実施の形態1の変形例に係る方位変化処理装置及び方位変化処理システムの構成を示すブロック図である。図7は、図6の表示装置にBTR表示とBR−L表示とが出力された状態を示す説明図である。図6及び図7を参照して、本変形例における方位変化処理システム100の構成について説明する。図1と同等の構成部材については同一の符号を用いて説明は省略する。
ここで、図1における積分処理部30は、上述したように、方位(θ1…θm…θM)ごとに、各方位変化率(D1…Dk…DK)での方位変化に沿って信号レベルの積分を行うようになっている。一方、本変形例1の積分処理部130は、全ての方位のそれぞれに対してではなく、特定の1方位のみに対して、各方位変化率(D1…Dk…DK)での方位変化に沿った信号レベルの積分を行うようになっている。
すなわち、積分処理部130は、整相処理部20から出力される整相データに対し、1つの方位につき、複数の方位変化率での方位変化に沿って信号レベルの積分を行うことにより、方位と方位変化率とに対応する複数の積分値を求める。ここで、複数の方位変化率をD1〜DK(Kは2以上の自然数)とする。この場合、積分処理部130は、式(1)により、1つの方位θmについて、各方位変化率D1…Dk…DK(1<k<K)での方位変化に沿って信号レベルの積分を行うことにより、方位変化率ごとの積分値L(θm,Dk)を求める。
また、本変形例の出力制御部40は、図6に示すように、図1におけるB−BR制御部42の代わりに、BR−L制御部142を有している。BR−L制御部142は、積分処理部130が求めた積分値L(θm,Dk)に基づくBR−L表示を表示装置80に行わせる。BR−L表示の「BR」は「方位変化率:Bearing Rate」の略であり、「L」は「信号レベル:Level」の略である。
すなわち、BR−L制御部142は、積分処理部30から入力された積分値L(θm,Dk)をもとに、発信源の方位及び方位変化率を示す方位情報を生成し、表示装置80へ出力する。表示装置80は、BR−L制御部142から出力される方位情報をもとに、図7に示すような、方位変化率と信号レベルとを対応づけたBR−L表示を行う。
また、BR−L制御部142は、表示装置80上のBR−L表示を経時的に変化させる。つまり、BR−L制御部142は、整相処理部20に受波信号が入力され、積分処理部30から新たな積分値L(θm,Dk)が入力される度に、表示装置80上のBR−L表示を更新する。本変形例において、BR−L制御部142は、表示装置80のBR−L表示部分に、複数の方位変化率ごとの信号レベルを示すグラフであるレベルデータSを表示させる。
図7では、BTR表示上において、時刻カーソルTを合わせた時刻、及び方位カーソルNを合わせた方位に対応するレベルデータSの表示イメージを示している。ここで、時刻カーソルTを合わせた時刻は、式(1)及び式(2)のtrに相当する。
また、BR−L制御部142は、BTR制御部41からの時刻情報の変化に応じてレベルデータSを変化させる。すなわち、BR−L制御部142は、入力装置90を介してユーザがBTR表示上の時刻カーソルTを移動させると、時刻カーソルTの指す時刻に応じたレベルデータSをBR−L表示部分に表示させる。これにより、BR−L表示上のレベルデータSは、BTR表示上の時刻カーソルTの移動に連動して変化する。本変形例における方位変化処理システム100の動作は、図4及び図5の場合と同様であるため説明は省略する。
以上のように、本変形例の方位変化処理装置10は、時刻ごとの各方位の整相データに対し、1つの方位につき、各方位変化率での方位変化に沿った信号レベルの積分値を求める。そして、方位変化処理装置10は、求めた複数の積分値をもとに、発信源の方位及び方位変化率を示す方位情報を生成し、表示装置80にレベルデータSを表示させる。ここで、各積分値には、信号源の方位変化との一致度合いが反映されるため、積分値に基づくレベルデータSには、発信源の方位及び方位変化率が精度よく現れる。つまり、方位変化処理装置10によれば、信号源の方位及び方位変化を示す情報を精度よく且つ容易に求めることができる。
また、表示装置80は、積分処理部130において求められた複数の積分値について、特定の方位における方位変化率ごとの積分値の信号レベルを示すBR−L表示を行う。つまり、本変形例の方位変化処理システム100は、方位変化率ごとに求められた積分値の信号レベルを、BR−L表示によりグラフ化する。そのため、ユーザは、表示装置80を視認することにより、指定した方位に対する信号源の方位変化率を容易に取得することができる。つまり、ユーザは、1つの方向から来ている信号の方位変化率を容易に把握することができる。
さらに、BR−L制御部142は、入力装置90を介して指定された時刻に応じて、表示装置80上のBR−L表示を変化させる。そのため、ユーザは入力装置90を介して時刻を指定する操作を行うことにより、時刻ごとのレベルデータSを表示装置80に表示させることができる。よって、ユーザは、表示装置80を視認することにより、時刻ごとのレベルデータSから、信号源の方位及び方位変化率を取得することができる。
また、BR−L制御部142は、時刻カーソルTの指す時刻に応じたBR−L表示を表示装置80上に表示させる。そのため、ユーザは、入力装置90を介して時刻カーソルTを移動させることにより、時刻カーソルTの指す時刻に対応するレベルデータSを連続的に表示させることができる。よって、ユーザは、信号源の方位及び方位変化率をさらに容易に取得することができる。加えて、BTR制御部41は、BTR表示上に、時刻カーソルTに連動して動作する方位カーソルNを表示させる。そのため、ユーザは、現在のBR−L表示に対応する方位を、方位カーソルNの位置を確認することで容易に把握することができる。
実施の形態2.
図8は、本発明の実施の形態2に係る方位変化処理装置及び方位変化処理システムの構成を示すブロック図である。図8に示すように、本実施の形態2の方位変化処理システム100Aにおいて、方位変化処理装置10Aは、方位変化取得処理部43を有する出力制御部40Aを備えている。また、方位変化処理装置10Aは、方位変化取得処理部43において抽出された方位及び方位変化率の情報を目標運動解析装置200へ出力する方位情報出力端子14を有している。前述した実施の形態1と同等の構成部材については同一の符号を用いて説明は省略する。
積分処理部30は、上述したように、受波信号が入力される各時刻において、複数の方位ごとに、複数の方位変化率のそれぞれに応じた積分値を求める。方位変化取得処理部43は、予め設定された取得周期ごとに、現時刻における複数の積分値のうちの最大値である最大積分値LMAXを求める。つまり、最大積分値LMAXとは、同時刻における複数の積分値の中の最大値である。最大積分値LMAXは、方位方向及び方位変化率方向にみて、両隣の積分値よりも大きな積分値を抽出することにより特定することができる。なお、取得周期は、方位変化処理装置10Aが受波信号を入力する周期と同じであってもよく、受波信号を入力する周囲より長くてもよい。
また、方位変化取得処理部43は、最大積分値LMAXとピーク判定閾値Vthとを比較し、最大積分値LMAXがピーク判定閾値Vthよりも大きいか否かを判定する。方位変化取得処理部43は、最大積分値LMAXがピーク判定閾値Vthよりも大きければ、最大積分値LMAXに対応する方位及び方位変化率を取得して、目標運動解析装置200へ出力する。ここで、方位変化取得処理部43が出力する最大積分値LMAXに対応する方位及び方位変化率の情報は、発信源の方位及び方位変化率を示す方位情報に相当する。
本実施の形態2において、方位変化取得処理部43は、入力装置90を介してピーク判定閾値Vthの設定を受け付ける。つまり、ユーザが入力装置90を操作してピーク判定閾値Vthを設定すると、方位変化取得処理部43は、ピーク判定閾値Vthの情報を記憶部50に記憶させる。もっとも、ピーク判定閾値Vthの情報は、ユーザの設定によらず、予め記憶部50に記憶されていてもよい。なお、ピーク判定閾値Vthは、適宜変更することができる。
目標運動解析装置200は、方位変化取得処理部43から送信された方位及び方位変化率をもとに、信号源の位置、針路、及び速力を推定し、推定の結果を外部の機器へ出力する。信号源の位置、針路、及び速力の推定方法としては、公知の技術を用いることができる(例えば、[1] J. H¨orst, M. Oispuu, “Target Localization and Course Change Detection Using Bearing and Bearing Rate Measurements”, in Proc. ISIF 14th International Conference on Information Fusion,July, 2011, pp.865-872参照)。
図9は、図8の方位変化処理システムの動作のうち、BTR表示及びB−BR表示を行うまでの処理を例示したフローチャートである。図10は、図8の方位変化処理システムの動作のうち、ピーク判定閾値よりも大きな最大積分値に対応する方位及び方位変化率を取得して出力する処理を例示したフローチャートである。図9及び図10を参照して、本実施の形態2における方位変化処理方法について説明する。なお、方位変化処理システム100Aの動作のうち、BTR表示上での時刻カーソルTの移動に伴う処理は図5の場合と同様であるため、説明は省略する。
方位変化処理装置10Aは、ステップS101〜S103の処理を図4の場合と同様に実行する。また、積分処理部30は、ステップS104と同様に求めた積分値を、B−BR制御部42と共に、方位変化取得処理部43へ出力する(ステップS201)。B−BR制御部42は、図4の場合と同様に、ステップS105の処理を実行する。
続いて、図10を参照して、方位変化処理装置10Aが方位及び方位変化率を出力する処理について説明する。方位変化取得処理部43は、積分処理部30から、複数の方位ごとに、複数の方位変化率に対応づけられた複数の積分値を取得する(ステップS202)。次いで、方位変化取得処理部43は、複数の積分値の中から最大積分値LMAXを求める(ステップS203)。
次に、方位変化取得処理部43は、記憶部50からピーク判定閾値Vthを読み出し、最大積分値LMAXがピーク判定閾値Vthよりも大きいか否かを判定する(ステップS204)。方位変化取得処理部43は、最大積分値LMAXがピーク判定閾値Vthよりも大きければ(ステップS204/Yes)、最大積分値LMAXに対応する方位及び方位変化率を目標運動解析装置200へ出力する。一方、方位変化取得処理部43は、最大積分値LMAXがピーク判定閾値Vth以下であれば(ステップS204/No)、方位及び方位変化率を出力せずに、ステップS202の処理へ戻る。
図10では、方位変化処理装置10Aが受波信号を入力する度に、方位変化取得処理部43がステップS202〜S205の一連の処理を実行する場合を例示しているが、これに限定されない。上述したように、方位変化取得処理部43は、取得周期ごとに、ステップS202〜S205の一連の処理を実行してもよい。
以上のように、方位変化取得処理部43は、同時刻における複数の積分値の中の最大値である最大積分値LMAXを求める。そして、方位変化取得処理部43は、最大積分値LMAXがピーク判定閾値Vthよりも大きい場合、その最大積分値LMAXに対応する方位及び方位変化率を外部へ出力する。すなわち、方位変化取得処理部43は、積分処理部30から入力した積分値L(θm,Dk)から、最大積分値LMAXのうちでピーク判定閾値Vthよりも大きいピーク値を自動的に検出することができる。そして、方位変化取得処理部43は、検出したピーク値の方位及び方位変化率を取得して外部に出力することができる。
したがって、本実施の形態2における方位変化処理装置10Aは、信号源の位置、針路、及び速力を推定する目標運動解析装置200に方位及び方位変化率を出力する装置として適用することができる。そして、目標運動解析装置200の上位装置として方位変化処理装置10Aを用いることにより、目標運動解析装置200による推定精度の向上を図ることができる。他の効果については、前述した実施の形態1と同様である。
また、本実施の形態2の方位変化処理システム100Aにも、実施の形態1の変形例の構成を適用することができる。つまり、方位変化処理装置10Aは、積分処理部30の代わりに積分処理部130を設け、B−BR制御部42の代わりにBR−L制御部142を設けてもよい。このようにすれば、上記の効果に加え、実施の形態1の変形例と同様の効果を得ることができる。さらに、本実施の形態2の方位変化処理システム100Aは、BTR制御部41及びB−BR制御部42を設けずに構成してもよい。このようにしても、上記の効果を得ることができる。
上述した各実施の形態は、目標運動解析システム及び目標運動解析方法における好適な具体例であり、本発明の技術的範囲は、これらの態様に限定されるものではない。例えば、上記の各実施の形態では、積分処理部30及び130による積分処理として、式(1)に示すブロック型の処理を例示したが、これに限定されない。すなわち、積分処理部30及び130は、例えば指数型積分のように、方位変化に沿って行う種々の積分処理により積分値を求めるようにしてもよい。
また、上記の各実施の形態では、BTR制御部41が、BTR表示上に時刻カーソルTを表示させ、入力装置90への操作に応じて時刻カーソルTを移動させる場合を例示したが、これに限定されない。すなわち、BTR制御部41は、BTR表示上に時刻カーソルTを表示させなくてもよい。この場合、入力装置90は、時刻を指定する操作を、ユーザのキー入力などを介して受け付け、指定された時刻を示す時刻情報を、B−BR制御部42又はBR−L制御部142へ出力してもよい。加えて、上記各実施の形態の出力制御部40及び40Aは、BTR制御部41を設けずに構成してもよい。