以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態を詳述する。
(1)第1の実施形態
図1は、本発明の第1の実施形態に係る作業訓練システムの構成例を示すブロック図である。図1に示したように、本実施形態に係る作業訓練システム1は、情報処理装置10及び入力装置20を備えて構成される。
入力装置20は、情報処理装置10に情報を入力する装置であって、作業者(訓練者)の視線方向の映像(視線映像)を取得するためのカメラ21と、視線映像に対する訓練者の視線位置を示すデータ(視線位置データ)を取得する機能を有する視線位置取得装置22とを含む。視線位置取得装置22は、例えば、アイトラッカーである。カメラ21が取得した視線映像及び視線位置取得装置22が取得した視線位置データは、情報処理装置10に入力(送信)される。
また、入力装置20はさらに、作業で使用する道具類や作業対象の設備5(図2参照)に関する所定の情報を取得するセンサ(温度センサや振動センサ等)を備えるようにしてもよい。
情報処理装置10は、一般的なコンピュータやタブレット端末、またはスマートフォン等の情報処理装置であって、情報処理部11、出力部12、プログラム記憶部13、及びデータ記憶部14を備える。
なお、図1では情報処理装置10が1つの装置であるように記載しているが、本実施形態において情報処理装置10は複数の情報処理装置であってもよい。例えば、後述する図2の場合、情報処理装置10は、訓練者が携帯する端末として示されるが、この端末に接続されるノートパソコン等のコンピュータを用意し、これらを含めて情報処理装置10としてもよい。また、作業訓練システム1において、情報処理装置10及び入力装置20(カメラ21,視線位置取得装置22)は別体で構成されなくてもよく、一部または全てが一体化された構成であってもよい。また、図1には図示していないが、情報処理装置10は、システムの開始や終了等を制御するためのキーボード、ボタン、マウスあるいはタッチパネル等の一般的なコンピュータにおける入力装置を備えることができる。
情報処理部11は、情報処理装置10における各プログラムを実行する機能を有し、例えばCPU(Central Processing Unit)等のプロセッサである。
出力部12は、訓練者にシステムの動作状況等を表示するための表示装置であって、具体的には例えば、一般的なコンピュータのディスプレイや、タブレット型端末またはスマートフォンの画面等に相当する。
プログラム記憶部13は、情報処理装置10における各プログラムを格納する記憶装置であって、例えば一般的なコンピュータの主記憶装置(メモリ)に相当する。なお、プログラム記憶部13は、プログラム以外に一時的に保持するデータ等を格納してもよい。
図1に示したように、プログラム記憶部13には、視線映像位置データ取得プログラム131、作業対象認識プログラム132、時系列視線遷移マップ生成プログラム133、時系列視線遷移マップ比較プログラム134、及び作業評価結果表示プログラム135が格納されている。各プログラムによる具体的な処理は後述するが、情報処理部11がこれらの各プログラムを読み出して実行することによって、各プログラムが有する機能が実現される。なお、以降の説明では、記載を簡略にするために、単に「プログラムが・・・を実行する」といった表現を用いることがある。
データ記憶部14は、情報処理装置10における各プログラムの実行による各種処理で用いられるデータを格納する記憶装置であって、例えば一般的なコンピュータに内蔵されるHDD(Hard Disk Drive)やSSD(Solid State Drive)等の記憶装置や、コンピュータに外付けされる記憶装置等に相当する。
図1に示したように、データ記憶部14は、視線映像位置データ141、訓練者時系列視線遷移マップ142、及び基準時系列視線遷移マップ143を記憶する。詳細は後述するが、視線映像位置データ141は、カメラ21によって取得された視線映像及び視線位置取得装置22によって取得された視線位置データを組にした情報である。また、訓練者時系列視線遷移マップ142は、訓練者による作業における視線遷移を示す情報であって、訓練者の視線映像及び視線位置データに基づいて生成される。また、基準時系列視線遷移マップ143は、訓練の手本となる模範作業における視線遷移を示す情報であって、熟練者による作業等から取得した視線映像及び視線位置データを用いて予め生成され、データ記憶部14に格納されている。基準時系列視線遷移マップ143には、訓練者時系列視線遷移マップ142の良否を評価するための基準として用いられる。
図2は、図1に示した作業訓練システムの実施イメージを説明するための図である。図2には、カメラ21及び視線位置取得装置22を装着した作業者(訓練者)が、設備5に対して作業を実施するイメージが示されている。図2の実施イメージの場合、情報処理装置10は、作業者が携帯しているタブレット端末またはスマートフォン等の携帯端末として表され、カメラ21及び視線位置取得装置22と情報処理装置10とが有線接続されている。
設備5は、作業訓練システム1において訓練の実施対象となる設備や装置等である。訓練者は、設備5に対する作業として、例えば、メータやスイッチ等の状態を確認したり、スイッチ等への各種操作を行ったりする。なお、本実施形態における設備5は、訓練者が作業を実施する対象であれば任意の設備であってよく、用途や形状等を限定されない。また、訓練を実施する作業の具体的内容についても、設備5の状態確認や操作の他、組立、分解、交換、または補修等、任意の作業を対象としてよい。
図3は、作業評価処理の処理手順例を示すフローチャートである。図3に示す作業評価処理は、本実施形態に係る作業訓練システム1が、入力装置20で取得される訓練者の視線映像及び視線位置データに基づいて、訓練者の作業の良否を評価してその評価結果を表示する処理であって、情報処理装置10が各プログラムを実行することによって実現される。以下に各ステップの処理を詳しく説明する。
まず、設備5に対して訓練者が作業を実施しているとき、視線映像位置データ取得プログラム131が、入力装置20のカメラ21及び視線位置取得装置22を用いて訓練者の視線映像及び視線位置データを取得(収集)し、視線映像位置データ141としてデータ記憶部14に格納する(ステップS1)。
図4は、視線映像位置データのフォーマット例を示す図である。図4には、視線映像位置データ141のフォーマット例を示すデータ610が示されている。
データ610においてデータ数611は、1つの視線映像位置データ141内に含まれる視線映像及び視線位置データの数を表す。本例では、ステップS1において、予め定められた時間間隔(一時刻単位)で視線映像及び視線位置データが取得され、一時刻単位の視線映像位置データ141として保存されると想定している。また、個々の視線映像位置データ141において、視線映像は一時刻分の画像(視線画像)が複数連なった画像列によって表され、視線位置データは一時刻分の視線位置データが複数連なったデータ列によって表される。
データ610においてデータブロック612には、上記の一時刻を単位とする各時刻(時刻613)における視線画像614及び視線位置データ615の組が表される。なお、通常、視線映像を取得する時間間隔と視線位置データを取得する時間間隔とは、それぞれの入力装置に依存するために異なるが、図4に示すフォーマット例では、双方の取得時刻を一致させた後に視線映像位置データ141が保存されると想定している。このような保存を実現する方法としては例えば、ある時刻に取得された視線画像に着目した場合、その時刻の前後で取得された視線位置データを選択し、選択した視線位置データの間を線形補間等の補間方法を用いることにより、着目した視線画像と同じ時刻における視線位置データを推定するようにすればよい。また、別の保存方法として、視線画像(視線映像)と視線位置データを、取得する時間間隔が異なったまま視線映像位置データ141(データ610)を保存するようにしてもよい。この場合、データ数611は、視線映像に対するデータ数と視線位置データに対するデータ数を含むようにすればよい。
ステップS1の処理が終了すると、作業対象認識プログラム132が、ステップS1で取得された訓練者の視線映像のうちから、映像に写り込んでいる作業対象を検出する(ステップS2)。
「作業対象」は、訓練者が訓練中に操作や注視を行う対象物を意味する。具体的には例えば、図2に示した設備5の場合、設備5に設けられたメータやランプ、スイッチ、ボタン、レバー等が作業対象の対象物である。また、作業の内容によっては、訓練者が把持する道具類や、訓練者自身の手を含めるようにしてもよい。視線映像から各対象物を検出する方法としては、例えば非特許文献1に開示されているような既知の物体検出技術を利用することができる。すなわち、視線映像の各時刻の画像に、予め対象物を検出できるように学習を行った物体検出技術を適用することにより、例えば図5に示すように、画像上に各作業対象の領域を検出することができる。
図5は、作業対象の検出結果の一例を説明するための図である。図5には、設備5に対する作業中に取得された視線映像に含まれる視線画像に対して上述した物体検出を行って得られる作業対象検出画像500が示されている。
図5の作業対象検出画像500の場合、作業対象として検出された対象物の領域が領域501~509に示されている。具体的には、領域501~503はそれぞれメータの領域を示し、領域504~506はそれぞれランプの領域を示し、領域507~509はそれぞれスイッチの領域を示している。ステップS2で検出された作業対象(対象物)の情報は、情報処理部11の記憶部(例えばプログラム記憶部13)に一時的に保存される。この一時的に保存される情報を、検出対象物データと呼ぶ。
図6は、検出対象物データのフォーマット例を示す図である。図6には、検出対象物データのフォーマット例を示すデータ620が示されている。
データ620において時刻621は、対象物の検出を行った視線映像中の画像が取得された時刻を表す。時刻621には、視線映像位置データ141に記録された各時刻(図4の時刻613)の何れかと同じ値を設定することにより、視線映像中の画像と対象物の検出結果との対応関係を表すことができる。データ620において対象物数622は、対象の画像から検出された対象物の数を表す。
データ620においてデータブロック623には、検出された各対象物に関する情報の組が表される。各データブロック623は、対象物に付された名称を表す対象物名624、画像中の対象物の位置を表す対象物位置625、及び画像中の対象物のサイズを表す対象物サイズ626から構成される。図5に示したように、画像中の各対象物の領域501~509は、既知の物体検出技術を用いることによって検出することができる。対象物位置625として例えば、検出された領域の左上の座標や、領域の重心位置の座標等を用いることができる。また、対象物サイズ626として例えば、検出された領域の幅と高さの組み合わせや、検出された領域の内接円や外接円の半径等を用いることができる。なお、データブロック623に含まれるフォーマットは上記例に限定されるものではなく、検出された対象物の領域(図5における領域501~509)の位置やサイズを表すことができるフォーマットであれば、任意のフォーマットを用いてよい。
ステップS2の処理が終了すると、時系列視線遷移マップ生成プログラム133が、ステップS2で抽出された各対象物の情報と、ステップS1で取得された訓練者の視線位置データとを用いて、訓練中における訓練者の視線遷移パターンを表す訓練者時系列視線遷移マップ142を作成する(ステップS3)。作成された訓練者時系列視線遷移マップ142は、データ記憶部14に格納される。
ステップS3において訓練者時系列視線遷移マップ142を生成するために、時系列視線遷移マップ生成プログラム133はまず、各時刻における視線位置と対象物との位置関係を表す指標である視線位置評価指標を算出する。
図7は、視線位置評価指標の算出方法を説明するための図である。図7において、ポイント511は、視線映像(視線画像)における視線位置を示している。また、ポイント512~515は、各対象物の重心位置を示している。対象物の重心位置は、前述したように、既知の物体検出技術によって検出された対象物の領域(図5の領域501~509)から算出することができる。
このとき、視線位置評価指標は、視線位置(ポイント511)から各対象物の重心位置(ポイント512~515)までの距離516~519を求め、さらにこの距離516~519を下記の式1に代入することによって算出される。
式1において、Eは視線位置評価指標、dは視線位置と各対象物の重心位置との距離、kは予め定められた係数である。式1を用いて算出された視線位置評価指標Eは、視線位置と対象物(重心位置)との距離dが近い程大きい値をとり、0~1の範囲の数値で表される。視線位置と対象物(重心位置)とが一致する場合、視線位置評価指標Eの値は1となる。
なお、本実施形態では使用可能な視線位置評価指標は、上述した算出方法に限定されるものではなく、視線位置と対象物との距離に基づいて算出される指標であれば、任意の指標を用いてもよい。あるいは、距離以外に、視線位置からみた対象物の方向を表すベクトル等の情報を追加してもよい。また、本実施形態において視線位置評価指標は、画像中から検出された全ての対象物に対して算出されてもよいし、視線位置から近い順に予め定められた数の対象物に対して算出されてもよいし、あるいは、予め定められた対象物に対して算出されてもよい。
そして、時系列視線遷移マップ生成プログラム133は、算出した視線位置評価指標を用いて時系列視線遷移マップを生成し、これを訓練者時系列視線遷移マップ142としてデータ記憶部14に保存する。訓練者時系列視線遷移マップ142は、各対象物に対する視線位置評価指標の時系列データによって訓練者の視線遷移パターンを表したデータである。
図8は、時系列視線遷移マップのフォーマット例を示す図である。図8には、時系列視線遷移マップ(例えば訓練者時系列視線遷移マップ142)のフォーマット例を示すデータ630が示されている。なお、本発明の説明で用いる時系列視線遷移マップとしては、訓練者時系列視線遷移マップ142の他に、基準時系列視線遷移マップ143(図1参照)、工程時系列視線遷移マップ344及び特徴時系列視線遷移マップ345(図13参照)があるが、これらの時系列視線遷移マップは共通するデータフォーマットを持つとしてよい。
図8のデータ630において対象物数631は、この時系列視線遷移マップのなかで参照される対象物の数を表し、対象物名632は、各対象物の名称を表す。「時系列視線遷移マップのなかで参照される対象物」とは、例えば、元になった視線映像から検出された全ての対象物に相当する。また例えば、想定される全ての対象物を参照される対象物としてもよいし、予め定められた対象物のみを参照される対象物としてもよい。
データ630においてデータ数633は、視線映像及び視線位置データの数を表す。したがって、データ数633には図4のデータ数611と同じ値が設定される。そして、データブロック634には、各時刻(時刻635)における各対象物に対する視線位置評価指標636の組が表される。時刻635は、当該データブロック634に記録される視線位置評価指標636に対応する視線画像(視線映像)が取得された時刻であり、視線映像位置データ141に記録された各時刻(図4の時刻613)の何れかと同じ値が設定される。視線位置評価指標636は、当該データブロック634の時刻635に取得された視線画像(視線映像)及び視線位置データから算出された視線位置評価指標であり、対象物名632の順番と対応して、各対象物に関する視線位置評価指標が順番に設定される。
ステップS3の処理が終了すると、時系列視線遷移マップ比較プログラム134が、ステップS3で生成された訓練者時系列視線遷移マップ142を基準時系列視線遷移マップ143と比較する(ステップS4)。
前述したように、基準時系列視線遷移マップ143は、熟練者の模範作業における視線映像及び視線位置データから予め生成された時系列視線遷移マップであり、その生成方法及びフォーマットは、上述した訓練者時系列視線遷移マップ142の生成方法及びフォーマットと同様であってよい。あるいは、基準時系列視線遷移マップ143の生成時には、作業のポイントや作業上の注意点等、訓練用の教材として必要となる情報を追加するようにしてもよい。
ステップS4において訓練者時系列視線遷移マップ142と基準時系列視線遷移マップ143との比較を行うために、時系列視線遷移マップ比較プログラム134はまず、両マップの間の作業内容に基づく時系列の対応関係を求める。この処理には、従来広く知られている動的計画法(例えば非特許文献2)等を利用することができる。通常、訓練者時系列視線遷移マップ142と基準時系列視線遷移マップ143では、作業の開始から終了までの全体の時間長が異なることに加え、部分的に前者の時間長が後者の時間長より短くなったり、逆に長くなったりする場合が不規則に生じることが予想される。そこで、既知の動的計画法を用いることにより、部分的な時間の伸縮を考慮して、訓練者時系列視線遷移マップ142と基準時系列視線遷移マップ143との間の対応関係を求めることができる。
図9は、動的計画法を用いて2つの時系列データの対応関係を求める処理を説明するためのイメージ図である。図9には、時間及び指標を軸にとった2つの時系列データ710,720について、動的計画法によって部分的な時間の伸縮を考慮して両データの間の時系列の対応関係を求めた場合のイメージが示されている。ここで、時系列データ710が訓練者時系列視線遷移マップ142に対応し、時系列データ720が基準時系列視線遷移マップ143に対応すると想定する。なお、図9では、説明を簡便にするために、1次元の時系列データ710,720を対象とした場合のイメージを示しているが、実際に時系列視線遷移マップを対象とした場合には、各時刻に複数の対象物に対する視線位置評価指標があるため、多次元ベクトルの時系列データを対象とした処理、例えば多次元ベクトル間の差分や類似度を求める処理等を行う必要がある。
図9では、点711及び点721、点712及び点722、点713及び点723、点714及び点724が破線で対応付けられているが、これらは、動的計画法によって対応付けられた時系列データ710,720の対応関係の一例を表している。これを時系列視線遷移マップに置き換えると、対応する点は、同じ作業をしているタイミングを示すと捉えることができる。すなわち、図9に示したように、動的計画法を用いることにより、部分的な時間の伸縮を考慮して、適切な時系列データ701,702(訓練者時系列視線遷移マップ142と基準時系列視線遷移マップ143)の間で、同じ作業内容が行われている時間帯(時系列)の対応関係を求めることができる。
ステップS4において、時系列視線遷移マップ比較プログラム134は、訓練者時系列視線遷移マップ142と基準時系列視線遷移マップ143の対応関係を求めた後、両者の類似度を算出する。この類似度は、両者が対応付けられた時刻における視線位置評価指標による多次元ベクトルの距離に基づいて算出でき、例えば下記の式2を用いることができる。
式2において、Cは求める類似度であり、ETi(t)は、訓練者時系列視線遷移マップ142上の時刻tにおける対象物iに対する視線位置評価指標であり、EBi(s(t))は、基準時系列視線遷移マップ143上の時刻s(t)における対象物iに対する視線位置評価指標である。ここで、s(t)は、訓練者時系列視線遷移マップ142上の時刻tに対応する基準時系列視線遷移マップ143上の時刻を意味し、αは予め定められた係数である。s(t)は、上述した方法(例えば動的計画法)を用いて求めた訓練者時系列視線遷移マップ142と基準時系列視線遷移マップ143との対応関係に基づいて決定される。具体的には例えば、図9の点711の時刻をtとすると、点721の時刻がs(t)に決定される。
また、式2において、Nは比較の対象となっている訓練者時系列視線遷移マップ142及び基準時系列視線遷移マップ143に含まれる対象物の数である。具体的には例えば、図8の対象物数631の値が、Nの値に対応する。また、Mは比較の対象となっている訓練者時系列視線遷移マップ142に含まれるデータ数であり、具体的には例えば、図8のデータ数633の値に対応する。式2を用いて算出された類似度Cは、訓練者時系列視線遷移マップ142と基準時系列視線遷移マップ143との間で作業内容(変化のパターン)が類似しているほど、大きい値をとり、0~1の範囲の数値で表される。
式2では、訓練者時系列視線遷移マップ142及び基準時系列視線遷移マップ143に含まれる対象物の種類及び数が同じであると想定しているが、実際には異なる場合も考えられる。このような場合は、両者で共通する対象物に対応する視線位置評価指標のみを抽出した時系列視線遷移マップを用いて比較を行うこともできるし、あるいは、両者に含まれる全ての対象物に対応した時系列視線遷移マップを生成して比較を行うようにしてもよい。後者の場合、対象物に対応する視線位置評価指標が元の時系列視線遷移マップに存在しないときには、例えば、値が全て0の時系列データを挿入するようにすればよい。
なお、本実施形態において訓練者時系列視線遷移マップ142と基準時系列視線遷移マップ143との類似度を算出するために用いる式は、多次元時系列データの類似度を算出できる式であればよく、必ずしも上記の式2に限定されるものではない。
ステップS4で訓練者時系列視線遷移マップ142と基準時系列視線遷移マップ143とを比較する処理が終了すると、作業評価結果表示プログラム135が、所定の画面フォーマットで出力部12に比較結果(作業評価結果画面)を表示する(ステップS5)。作業評価結果画面を表示することによって、本実施形態に係る作業訓練システム1は、訓練者に対して訓練結果に関するフィードバックを行うことができる。なお、本実施形態におけるステップS5の処理は、比較結果の表示に限定されるものではなく、印刷による紙出力やデータ保存等によって比較結果を出力するものであってもよい。
図10は、作業評価結果画面の一例である。図10には、ステップS5において出力部12に表示される比較結果の表示画面の一例として、作業評価結果画面810が示されている。
作業評価結果画面810において、領域811は、基準時系列視線遷移マップ143の元となった熟練者等の視線映像及び視線位置(熟練者映像)が表示される領域であり、領域812は、訓練者時系列視線遷移マップ142の元となった訓練者の視線映像及び視線位置(訓練者映像)が表示される領域である。領域811,812の周辺には、再生ボタン、停止ボタン、一時停止ボタン、早送りボタン、または巻き戻しボタン等、視線映像及び視線位置の表示を制御するための手段を配置するようにしてもよい。
作業評価結果画面810において、領域813には、訓練者時系列視線遷移マップ142と基準時系列視線遷移マップ143とを比較して得られた類似度に基づいて算出された得点が表示される。類似度が0~1までの範囲で算出される場合、例えば類似度を100倍した値を得点として表示することができる。あるいは、予め定められた範囲を超えた類似度を0点~100点の値に正規化して表示するようにしてもよい。また、算出される類似度が0~1までの範囲でない場合でも、値の大きさを拡大または縮小する等により、0点~100点の値に変換した値であれば、どのような方法を用いて表示してもよい。また、得点の別の表示方法としては、0点~100点の間の値でなくとも、算出された類似度をそのまま、あるいは訓練者時系列視線遷移マップ142と基準時系列視線遷移マップ143との差分等、訓練者が2つの時系列視線遷移マップの差異を確認できる数値であれば、どのような数値を用いて表示を行ってもよい。
作業評価結果画面810において、領域814は、訓練者時系列視線遷移マップ142と基準時系列視線遷移マップ143との差異が大きい箇所を明示するための領域である。両マップの差異の算出方法としては、各時刻における差異の大きさを算出するようにしてもよいし、両方の時系列視線遷移マップを予め定められた時間範囲で分割し、分割した時間範囲ごとに両マップを比較して差異を算出するようにしてもよい。
また、領域814における差異の表示方法としては、予め定められた色を差異の大きさに応じた濃淡で表示する方法、差異の大きさに対して予め定められた配色を用いて表示する方法、あるいは、差異が予め定められた値より大きい箇所のみを予め定められた色で表示する方法(図10の場合、領域814はこの表示方法である)等を用いることができる。但し、上記の表示方法は一例であって、差異が大きい箇所を訓練者が容易に確認できる方法であれば、どのような表示方法を用いてもよい。
また、領域814上を一般的に使用されるマウス等の入力装置を用いて選択すると、選択した時刻に対応する視線映像及び視線位置が領域811,812上に表示されるようにしてもよい。また、領域814上で、一般的に使用されるマウス等の入力装置を用いて時間範囲を選択すると、選択した時間範囲の視線映像及び視線位置データが動画像で領域811,812上に表示されるようにしてもよい。また、領域814で差異が大きいとして表示されている箇所を選択すると、該当範囲の視線映像及び視線位置データが動画像で領域811,812上に表示されるようにすることもできる。
作業評価結果画面810において、領域815は、基準時系列視線遷移マップ143の情報を表示する領域である。図10の場合、基準時系列視線遷移マップ143として熟練者の時系列視線遷移マップが想定されている。一方、領域816は、領域815と同様の表示形式で、訓練者時系列視線遷移マップ142の情報を表示する領域である。
図10の例では、領域815,816にはそれぞれ、5つの対象物(対象物1~5)に対する時系列視線遷移マップの情報として、各対象物の視線位置評価指標が時系列に沿って表示されている。具体的には、領域815内の領域817~821に、熟練者による基準時系列視線遷移マップ143の対象物1~5の視線位置評価指標が表示され、領域816内の領域822~826に、訓練者時系列視線遷移マップ142の対象物1~5の視線位置評価指標が表示されている。
なお、領域815,816における視線位置評価指標の表示方法としては、予め定められた色を視線位置評価指標の大きさに応じた濃淡で表示する方法、視線位置評価指標の大きさに対して予め定められた配色を用いて表示する方法、視線位置評価指標が予め定められた値より大きい箇所のみを予め定められた色で表示する方法、あるいは、各時刻において最も大きい視線位置評価指標のみを表示する方法等を用いることができる。但し、上記の表示方法は一例であって、視線位置評価指標が大きい箇所を訓練者が容易に確認できる方法であれば、どのような表示方法を用いてもよい。
図10の場合は、予め定められた色を視線位置評価指標の大きさに応じた濃淡で表示する表示方法を採用しており、視線位置評価指標と濃淡との関係が凡例827に示されている。なお、本明細書の説明では、視線位置評価指標を表示するその他の各図面(図11、図12、図15、図16)においても、図10と同様に、一例として、予め定められた色を視線位置評価指標の大きさに応じた濃淡で表示する表示方法を採用している。
また、視線位置評価指数が表示されている領域815,816上を一般的に使用されるマウス等の入力装置を用いて選択すると、選択した時刻に対応する視線映像及び視線位置が領域811,812上に表示されるようにしてもよい。また、領域815,816上で、一般的に使用されるマウス等の入力装置を用いて時間範囲を選択すると、選択した時間範囲の視線映像及び視線位置データが動画像で領域811,812上に表示されるようにしてもよい。
作業評価結果画面810における表示方法ついてさらに補足する。
図10に示した作業評価結果画面810において、熟練者映像を表示する領域811及び訓練者映像を表示する領域812、並びに、基準時系列視線遷移マップ143の情報を表示する領域815及び訓練者時系列視線遷移マップ142の情報を表示する領域816の配置は、訓練者が作業内容を確認しやすい配置であればよく、図10の例に限定されるものではない。
また、図10では、基準時系列視線遷移マップ143及び訓練者時系列視線遷移マップ142の情報を表示する領域815,816において、時間長を同じ長さに揃えて表示する。通常、訓練者時系列視線遷移マップ142と基準時系列視線遷移マップ143の時間長は異なることが想定されるが、図9を参照しながら上述したように部分的な時間の伸縮を考慮して求めた時系列の対応関係を使用することにより、両マップの時間長を一致させて表示することが可能となる。具体的な表示方法としては例えば、領域816において訓練者時系列視線遷移マップ142の情報はそのまま表示を行い、領域815において基準時系列視線遷移マップ143の情報は、訓練者時系列視線遷移マップ142の各時刻(t)に対応するデータを各時刻(s(t))に表示すればよい。あるいはその逆でもよい。
また、別の表示方法として、領域815,816において、時間長を同じ長さに揃える処理を行うことなく、両マップの情報を表示するようにしてもよい。この場合、予め定めた時間間隔において2つの時系列視線遷移マップの対応箇所を線で結ぶ等により、2つの時系列視線遷移マップの対応関係を明示して表示してもよい。
また、図10では、2つの時系列視線遷移マップ(訓練者時系列視線遷移マップ142及び基準時系列視線遷移マップ143)の情報を、別々の領域(領域816及び領域815)に表示したが、本実施形態はこのような表示形態に限定されるものではなく、以下の第1または第2の変形例に示すような表示形態を採用してもよい。
図11は、作業評価結果画面の第1の変形例である。図11には、作業評価結果画面810における第1の変形例として、図10で例示された領域815,816の表示に代えて、対象物ごとに2つの時系列視線遷移マップの視線位置評価指標を並べて表示する表示形態が示されている。
具体的には図11では、領域831~835に、対象物1~5に対する基準時系列視線遷移マップ143及び訓練者時系列視線遷移マップ142の視線位置評価指標が表示される。すなわち、対象物1の視線位置評価指標が表示される領域831には、図10の領域817及び領域822と同じ視線位置評価指標が表示され、対象物2の視線位置評価指標が表示される領域832には、図10の領域818及び領域823と同じ視線位置評価指標が表示され、対象物3の視線位置評価指標が表示される領域833には、図10の領域819及び領域824と同じ視線位置評価指標が表示され、対象物4の視線位置評価指標が表示される領域834には、図10の領域820及び領域825と同じ視線位置評価指標が表示され、対象物5の視線位置評価指標が表示される領域835には、図10の領域821及び領域826と同じ視線位置評価指標が表示される。
そして、作業評価結果画面810が図11のような表示形態で表示される場合には、対象物ごとに、熟練者による模範作業と訓練者による作業との間の相違点が分かり易いという利点がある。
図12は、作業評価結果画面の第2の変形例である。図12には、作業評価結果画面810における第2の変形例として、図10で例示された領域815,816の表示に追加して、図10の領域814に示したような2つの時系列視線遷移マップの差異が大きい箇所を明示する表示形態が示されている。
具体的には、図12に示した強調領域841~850は、基準時系列視線遷移マップ143と訓練者時系列視線遷移マップ142との間で同一時刻(または時間帯)における視線位置評価指標の差異が大きい箇所を、枠で囲んで強調表示したものである。上記の強調表示の方法としては、図12のように該当箇所を枠で囲むことに限定されず、例えば、該当箇所の色を変えて表示したり、該当箇所に予め定められたマークを表示したりする等、任意の方法であってよい。
なお、図12のように2つの時系列視線遷移マップ(視線位置評価指標)の差異が大きい箇所を明示する場合には、ある時刻、またはある時間範囲における差異の合計だけでなく、それらの時刻や時間範囲において特に視線位置評価指標の差異が大きい対象物を明示するようにしてもよい。
そして、作業評価結果画面810が図12のような表示形態で表示される場合には、熟練者による模範作業と訓練者による作業との間の相違点がより分かり易くなるという利点がある。
また、入力装置20の説明で前述したように、入力装置20が、作業で使用する道具類や作業対象の設備5に関する所定の情報を取得するセンサを備えている場合には、作業評価結果画面810において、基準時系列視線遷移マップ143の情報を表示する領域(例えば図10の領域815)及び訓練者時系列視線遷移マップ142の情報を表示する領域(例えば図10の領域816)に加えて、上記センサによって取得した時系列のセンサデータを表示するようにしてもよい。この時系列のセンサデータは、情報処理装置10のプログラム記憶部13に記憶された所定のプログラムが実行されることによって生成することができ、既述のプログラム(例えば視線映像位置データ取得プログラム131や作業評価結果表示プログラム135)であってもよい。また、それぞれのセンサデータに基準値が存在する場合には、基準値の範囲内にある時間範囲のみを表示する、あるいは、基準値の範囲外にある時間範囲のみを表示するとしてもよい。本実施形態では、上記のようにセンサデータを追加して出力可能にすることにより、作業において視線映像からは判断できない環境変化等(例えば温度変化等)が存在する場合に、訓練者がこれらの環境の差異を考慮しながら作業を比較して訓練に役立てることができる。
また、上述した第1の実施形態では、作業開始から作業終了までの訓練者の視線映像位置データ141を取得した後、訓練者の作業内容を評価することを前提としているが、作業訓練システム1による他の実施モデルとして、例えば、作業中であっても予め定められた時間が経過するたびに、取得された視線映像位置データ141の評価を実施する等としてもよい。このような評価を実施することにより、訓練者が作業を行っている途中において訓練者時系列視線遷移マップ142と基準時系列視線遷移マップ143との差異が大きい箇所を検出し、その結果を訓練者に通知するようにすることもできる。
以上のように、本実施形態に係る作業訓練システム1によれば、作業評価結果画面810において作業中の視線遷移パターンを各対象物に対する視線位置評価指標に基づく時系列視線遷移マップの形態で表示することにより、訓練者が視線位置と対象物の位置関係から作業内容を推定することができるため、長時間の作業に対しても作業状況を俯瞰的に把握することができる。
そして、本実施形態に係る作業訓練システム1によれば、訓練者による作業の視線映像及び視線位置データに基づいて生成される訓練者時系列視線遷移マップ142と、熟練者等による模範作業の視線映像及び視線位置データに基づいて生成される基準時系列視線遷移マップ143とを比較して、作業内容に基づく時系列の対応関係を求めるとともに、この対応する時系列における両データの類似度や差異を算出し、作業評価結果画面810においてこれらの比較結果を出力(表示)することによって、一覧性を比較し易い態様で訓練者の作業内容と基準とする作業内容との比較結果を表示することができるため、作業の訓練を効果的に支援することができる。
また、本実施形態に係る作業訓練システム1によれば、訓練者時系列視線遷移マップ142と基準時系列視線遷移マップ143との部分的な時間の伸縮を考慮した時系列の対応関係に基づいて、作業評価結果画面810において時間長を一致させて2つの時系列視線遷移マップを表示すると共に、対応箇所を明示することにより、訓練者が2つの時系列視線遷移マップの比較を容易に実施することができる。
また、本実施形態に係る作業訓練システム1によれば、作業評価結果画面810において訓練者時系列視線遷移マップ142と基準時系列視線遷移マップ143との差異が大きい箇所を明示して表示することにより、訓練者が自身の作業における不良個所を容易に把握することができる。
(2)第2の実施形態
図13は、本発明の第2の実施形態に係る作業訓練システムの構成例を示すブロック図である。図13に示したように、本実施形態に係る作業訓練システム2は、入力装置20及び情報処理装置30を備えて構成される。なお、作業訓練システム2では、第1の実施形態に係る作業訓練システム1と共通する構成要素には同一の番号を付し、共通部分についての説明を省略する。
図13の作業訓練システム2の構成を第1の実施形態の作業訓練システム1(図1参照)と比較すると、情報処理装置30のデータ記憶部34に工程時系列視線遷移マップ344及び特徴時系列視線遷移マップ345が格納される点で異なる。また、作業訓練システム2において情報処理装置30のプログラム記憶部33に格納されている各プログラムの名称は、作業訓練システム1と同様であるが、処理内容が相違することから、時系列視線遷移マップ比較プログラム334及び作業評価結果表示プログラム335には作業訓練システム1とは異なる番号を付している。
工程時系列視線遷移マップ344は、一連の作業を複数の作業工程に分割し、作業工程ごとに作成した時系列視線遷移マップである。工程時系列視線遷移マップ344は、基準時系列視線遷移マップ143を作業工程ごとに分割して作成してもよい。工程時系列視線遷移マップ344は、訓練の手本となる模範作業を対象としたものであり、第1の実施形態でも説明した基準時系列視線遷移マップ143と同様に、熟練者等による作業等から取得した視線映像及び視線位置データを用いて予め生成されてデータ記憶部34に格納しておけばよい。
特徴時系列視線遷移マップ345は、作業の内容によらず作業中に現れる特徴的な視線遷移パターンを表す時系列視線遷移マップである。特徴時系列視線遷移マップ345は、熟練者等により取得した対象作業の視線映像および視線位置データを用いて予め生成することもできるし、予め人手によりデータを作り込んでおいてもよい。工程時系列視線遷移マップ344及び特徴時系列視線遷移マップ345のフォーマットは、訓練者時系列視線遷移マップ142や基準時系列視線遷移マップ143と同様としてよい(図8参照)。さらに、上記フォーマットに、作業工程の種類や内容を示す工程の名称、特徴の種類や内容を示す特徴の名称等を追加してもよい。これらの追加項目は、後述する作業工程への分割結果や特徴的な視線遷移パターンの検出結果を表示する際に使用することができる。
第2の実施形態に係る作業訓練システム2による作業評価処理について説明する。第2の実施形態における作業評価処理では、第1の実施形態で図3に示した処理手順と共通する処理が行われるが、これに加えて、ステップS4及びステップS5において、時系列視線遷移マップ比較プログラム334及び作業評価結果表示プログラム335によってさらなる処理が行われる。これらの処理について以下に説明する。
まず、時系列視線遷移マップ比較プログラム334による処理を説明する。
時系列視線遷移マップ比較プログラム334は、訓練者時系列視線遷移マップ142と工程時系列視線遷移マップ344との比較を行うことにより、訓練者時系列視線遷移マップ142から各作業工程の時間範囲を検出し、訓練者時系列視線遷移マップ142を各作業工程に分割する。また、時系列視線遷移マップ比較プログラム334は、訓練者時系列視線遷移マップ142と特徴時系列視線遷移マップ345との比較を行うことにより、訓練者時系列視線遷移マップ142から各特徴の時間範囲を特定し、特徴的な視線遷移パターンが存在する時間範囲の検出を行う。
なお、本実施形態に係る作業訓練システム2は、工程時系列視線遷移マップ344または特徴時系列視線遷移マップ345の少なくとも一方がデータ記憶部34に格納されているという構成であってもよい。このとき、時系列視線遷移マップ比較プログラム334は、上記の2種類の比較処理のうち、格納されている時系列視線遷移マップを用いた比較のみを実行する。
時系列視線遷移マップ比較プログラム334が訓練者時系列視線遷移マップ142から各作業工程あるいは特徴的な視線遷移パターンの時間範囲を特定する方法としては、訓練者時系列視線遷移マップ142に対して、検出対象の工程時系列視線遷移マップ344あるいは特徴時系列視線遷移マップ345を、比較の開始時刻をずらしながら動的計画法による比較を行い、得られた類似度の時系列データが最大になる比較の開始時刻から終了時刻に検出対象の作業工程あるいは特徴が存在すると判定すればよい。
図14は、訓練者時系列視線遷移マップ中から作業工程の時間範囲を特定する処理を説明するためのイメージ図である。図14において、工程時系列視線遷移マップ730は、検出対象の作業工程に対する工程時系列視線遷移マップである。
時系列視線遷移マップ比較プログラム334は、訓練者時系列視線遷移マップ142から、検出対象の作業工程の工程時系列視線遷移マップ730に対応する時間範囲を特定する際、図14に示したように、比較の開始時刻をずらしながら、段階的に訓練者時系列視線遷移マップ142と工程時系列視線遷移マップ730(各段階では730_1~730_5)とを比較し、類似度741~745を算出する。類似度の算出方法は、特に限定されず、例えば第1の実施形態で示した式2を用いる等してもよい。これらの類似度741~745に基づいて、類似度の時系列データ740が得られる。
そして、時系列視線遷移マップ比較プログラム334は、類似度の時系列データ740を得ることによって、時系列データ740において類似度が最大(極大値746)になる時刻T1に、検出対象の工程が存在すると判定することができる。
なお、図14では、訓練者時系列視線遷移マップ142と工程時系列視線遷移マップ730とを比較して検出対象の作業工程の時間範囲を特定する場合を示したが、訓練者時系列視線遷移マップ142と特徴時系列視線遷移マップ345とを比較して特徴的な視線遷移パターンの時間範囲を特定する方法も、同様に実施可能であり、説明を省略する。
なお、上述した処理において、同じ作業工程あるいは特徴が複数存在する場合は、類似度が極大値になる時刻に検出対象の工程が存在すると判断すればよい。また、検出対象の作業工程が存在すると判断する類似度の大きさに閾値を設定し、類似度が閾値より大きくなる時刻に検出対象の作業工程や特徴が存在すると判断するようにしてもよい。さらに、上述した訓練者時系列視線遷移マップ142と工程時系列視線遷移マップ344または特徴時系列視線遷移マップ345との比較を効率的に行う方法として、例えば非特許文献2に開示された連続DPマッチング等を利用してもよいし、長い時系列パターンから部分的な時系列パターンを検出することができるその他の既知の方法を利用してもよい。
また、訓練者時系列視線遷移マップ142を各作業工程に分割する方法としては、基準時系列視線遷移マップ143に各作業工程の開始時刻及び終了時刻を付与しておき、部分的な時間の伸縮を考慮して求めた訓練者時系列視線遷移マップ142と基準時系列視線遷移マップ143との対応関係を用いて、基準時系列視線遷移マップ143上の各作業工程の開始時刻及び終了時刻に対応する訓練者時系列視線遷移マップ142上の時刻を求めることにより、訓練者時系列視線遷移マップ142を各作業工程に分割するという方法を使用することもできる。
基準時系列視線遷移マップ143を各作業工程に分割し、各作業工程の開始時刻及び終了時刻を付与する方法としては、上述した訓練者時系列視線遷移マップ142を各工程に分割する処理を予め基準時系列視線遷移マップ143に対しても適用しておくことにより行うことができる。あるいは、人手により視線映像および視線位置データを分析して付与する方法を用いることもできる。同様の方法を用いることにより、基準時系列視線遷移マップ143から特徴的な視線遷移パターンを検出し、それらの開始時刻及び終了時刻を基準時系列視線遷移マップ143に付与しておくこともできる。
次に、作業評価結果表示プログラム335による処理を説明する。
作業評価結果表示プログラム335は、時系列視線遷移マップ比較プログラム334による比較結果に基づいて、所定の画面フォーマットで出力部12に比較結果(作業評価結果画面)を表示する。このとき、時系列視線遷移マップ比較プログラム334が、訓練者時系列視線遷移マップ142と工程時系列視線遷移マップ344との比較を行って、訓練者時系列視線遷移マップ142を各作業工程に分割する処理を行っていた場合には、作業評価結果表示プログラム335は、各作業工程への分割結果を、訓練者時系列視線遷移マップ142及び基準時系列視線遷移マップ143(工程時系列視線遷移マップ344でもよい)の情報とともに作業評価結果画面に表示する。また、時系列視線遷移マップ比較プログラム334が、訓練者時系列視線遷移マップ142と特徴時系列視線遷移マップ345との比較を行って訓練者時系列視線遷移マップ142から特徴的な視線遷移パターンが存在する時間範囲を検出する処理を行っていた場合には、作業評価結果表示プログラム335は、特徴的な視線遷移パターンの検出結果を、訓練者時系列視線遷移マップ142及び基準時系列視線遷移マップ143の情報とともに作業評価結果画面に表示する。
図15は、作業工程への分割結果を表示する作業評価結果画面の一例である。図15には、訓練者時系列視線遷移マップ142を各作業工程に分割する処理が行われた場合の比較結果の表示画面の一例として、作業評価結果画面860が示されている。なお、図15では、第1の実施形態で図10に例示した作業評価結果画面810との共通部分については、図示を省略している。具体的には、図10における領域811~814は、作業評価結果画面860にも用意されていると考えてよい。これは後述する図16の作業評価結果画面870でも同様とする。
作業評価結果画面860において、領域861の行には、作業工程への分割結果が表示される。具体的には図15の場合、領域862~866に、工程1~工程5という作業工程の分割結果が表示されている。図15において領域862~866の横幅が異なるのは、工程ごとの時間が異なることを意味しており、このような表示を行うことによって、各工程の時間長を視覚的に認識しやすくなる。また、作業工程の表示方法としては、図15の領域862~866のように作業工程の名称を示すようにしてもよいし、作業工程ごとに予め決められた色、パターン、または記号等を用いて表示するようにしてもよい。
図16は、特徴的な視線遷移パターンの検出結果を表示する作業評価結果画面の一例である。図16には、訓練者時系列視線遷移マップ142から特徴的な視線遷移パターンが存在する時間範囲を検出する処理が行われた場合の比較結果の表示画面の一例として、作業評価結果画面870が示されている。
作業評価結果画面870において、領域871~873の各行には、特徴1~特徴3の検出結果が表示される。そして、検出表示874,875は、特徴的な視線遷移パターンが訓練者時系列視線遷移マップ142及び基準時系列視線遷移マップ143の両方で検出された場合に、その対応する時間範囲を示す表示である。また、検出表示876,877は、特徴的な視線遷移パターンが訓練者時系列視線遷移マップ142または基準時系列視線遷移マップ143の一方でのみ検出された場合に、その対応する時間範囲を示す表示である。
図16の場合、例えば特徴3の領域873において検出表示875,877が表示されているように、各特徴の視線遷移パターンが訓練者時系列視線遷移マップ142上で複数検出されていることが示されている。作業評価結果画面870における特徴的な視線遷移パターンの検出結果の表示方法としては、図16のように特徴別に欄を設けて表示する方法に限定されず、例えば、1の表示欄上に複数種類の特徴の検出結果をまとめて表示するようにしてもよい。この場合、特徴の名称を表示する他、特徴ごとに予め決められた色、パターン、または記号等を用いて表示するようにしてもよい。また、特徴的な視線遷移パターンは、訓練者時系列視線遷移マップ142及び基準時系列視線遷移マップ143のそれぞれに対して別々に表示するようにしてもよい。
なお、図15及び図16に示した作業評価結果画面860,870では、領域861または領域871~873の行を一般的に使用されるマウス等の入力装置を用いて選択すると、選択した時刻に対応する視線映像及び視線位置が領域811,812(図10参照)上に表示されるようにしてもよい。また、領域861または領域871~873の行の上で、一般的に使用されるマウス等の入力装置を用いて時間範囲を選択すると、選択した時間範囲の視線映像及び視線位置データが動画像で領域811,812上に表示されるようにしてもよい。
また、図15及び図16に示した作業評価結果画面860,870では、領域861の行に表示されている各作業工程やそれらに対応した記号、あるいは、領域871~873の行に表示されている特徴の検出結果やそれらに対応した記号を選択すると、該当する作業工程や特徴に対応した範囲の視線映像及び視線位置データが動画像で領域811,812上に表示されるようにすることもできる。
以上のように、本実施形態に係る作業訓練システム2によれば、第1の実施形態に係る作業訓練システム1によって得られる効果に加えて、訓練者時系列視線遷移マップ142を各作業工程に分割した結果を、作業評価結果画面860において訓練者時系列視線遷移マップ142及び基準時系列視線遷移マップ143とともに表示することにより、作業の不良が発生した場合に、作業の内容と不良が発生した箇所との関係を訓練者が容易に理解できるようになるため、より効果的な訓練を行うことができる。
また、本実施形態に係る作業訓練システム2によれば、訓練者時系列視線遷移マップ142から作業中における特徴的な視線遷移パターンを検出した結果を、作業評価結果画面870において訓練者時系列視線遷移マップ142及び基準時系列視線遷移マップとともに表示することにより、作業の不良が発生した場合に、不良の原因を訓練者が容易に認識できるようになるため、より効果的な訓練を行うことができる。
(3)第3の実施の形態
図17は、本発明の第3の実施形態に係る作業訓練システムの構成例を示すブロック図である。図17に示したように、本実施形態に係る作業訓練システム3は、入力装置20、視線映像位置データ取得装置40及び作業評価装置50を備えて構成される。なお、作業訓練システム3では、第1の実施形態に係る作業訓練システム1または第2の実施形態に係る作業訓練システム2と共通する構成要素には同一の番号を付し、共通部分についての説明を省略する。
図17の作業訓練システム3は、第1の実施形態の作業訓練システム1(図1参照)において情報処理装置10に格納されていたプログラム及びデータのうち、視線映像位置データ141を取得するために必要な要素を視線映像位置データ取得装置40が備え、残りの処理のために必要な要素を視線映像位置データ取得装置40とは別の作業評価装置50が備えるように構成したものである。
視線映像位置データ取得装置40は、第1の実施形態で図2に示した情報処理装置10のように、カメラ21及び視線位置取得装置22とともに訓練者が作業時に携帯(装着)する情報処理装置である。図17に示したように、視線映像位置データ取得装置40は、情報処理部11、出力部12、プログラム記憶部43、データ記憶部44、及び通信部45を備える。
このうち、プログラム記憶部43には、視線映像位置データ取得プログラム131及びデータ通信プログラム436が格納されている。第1の実施形態で説明したように、視線映像位置データ取得プログラム131は、入力装置20のカメラ21及び視線位置取得装置22を用いて、訓練者の視線映像及び視線位置データを取得し、視線映像位置データ141としてデータ記憶部14に格納する。
そして、データ通信プログラム436は、通信部45を制御することにより、取得した視線映像位置データ141をネットワーク60を介して作業評価装置50に送信する。ネットワーク60は、視線映像位置データ取得装置40と作業評価装置50とを無線または有線で接続するためのネットワークである。
また、視線映像位置データ取得装置40のデータ記憶部44には、入力装置20のカメラ21及び視線位置取得装置22を用いて取得される視線映像位置データ141が格納される。
なお、視線映像位置データ取得装置40における出力部12や入力装置(不図示)は、視線映像位置データ141の取得に必要となる操作を行うためのみに使用されることが好ましく、不要な機能が除外されることによって装置の軽量化や簡素化の効果が期待される。
作業評価装置50は、例えば一般的なコンピュータであって、視線映像位置データ取得装置40によって取得された視線映像位置データ141を評価し、その評価結果を訓練者に提示する。図17に示したように、作業評価装置50は、情報処理部11、出力部12、プログラム記憶部53、データ記憶部54、及び通信部55を備える。
このうち、プログラム記憶部53には、作業対象認識プログラム132、時系列視線遷移マップ生成プログラム133、時系列視線遷移マップ比較プログラム134、作業評価結果表示プログラム135、及びデータ通信プログラム536が格納され、データ通信プログラム536以外のプログラムは、第1の実施形態の情報処理装置10のプログラム記憶部13に格納される各プログラムから、視線映像位置データ取得プログラム131を除外したものに相当する。言い換えれば、第3の実施形態では、第1の実施形態の情報処理装置10が有していたプログラムのうち、視線映像位置データ取得プログラム131が視線映像位置データ取得装置40に保持され、残りのプログラムが作業評価装置50に保持される。これらの残りのプログラムによって実行される処理は、第1の実施形態と同様であり、詳細な説明は省略する。
なお、データ通信プログラム536は、通信部55を制御することにより、視線映像位置データ取得装置40から送信される視線映像位置データ141を、ネットワーク60を介して受信する。受信した視線映像位置データ141は、データ記憶部54に格納される。
作業評価装置50のデータ記憶部54には、視線映像位置データ取得装置40から受信する視線映像位置データ141の他、訓練者時系列視線遷移マップ142及び基準時系列視線遷移マップ143が格納される。これらのデータのフォーマットや利用方法は、第1の実施形態と同様であり、詳細な説明は省略する。
第3の実施形態において、作業訓練システム3に格納された各プログラムによって実行される作業評価処理の処理手順は、第1の実施形態において図3にフローチャートを示した作業評価処理の処理手順と基本的には同一である。但し、図3のステップS1では、情報処理装置10の視線映像位置データ取得プログラム131が、入力装置20から視線映像及び視線位置データを取得し、視線映像位置データ141としてデータ記憶部14に格納していたが、作業訓練システム3の場合は、視線映像位置データ取得装置40において視線映像位置データ取得プログラム131が入力装置20から視線映像及び視線位置データを取得して視線映像位置データ141を生成した後に、データ通信プログラム436が視線映像位置データ141を作業評価装置50に送信し、作業評価装置50において、データ通信プログラム536がこれを受信し、データ記憶部54に格納する点が異なる。そして、その後のステップS2以降の処理は、作業評価装置50に格納された各プログラムによって、図3のフローチャートと同様の処理が実行される。
なお、第3の実施形態に係る作業訓練システム3は、第2の実施形態に係る作業訓練システム2のように、工程時系列視線遷移マップ344や特徴時系列視線遷移マップ345をさらに備えて、これらの時系列視線マップと訓練者時系列視線遷移マップ142との比較とを行うように構成することもできる。この場合、追加される時系列視線遷移マップは、視線映像位置データ141の取得には関係しないことから、作業評価装置50のデータ記憶部54に格納され、これらの時系列視線遷移マップを用いた比較処理も、作業評価装置50側で実行される。
以上のように、本実施形態に係る作業訓練システム3によれば、第1の実施形態に係る作業訓練システム1(または第2の実施形態に係る作業訓練システム2)によって得られる効果に加えて、訓練者が装着する処理装置(視線映像位置データ取得装置40)を簡易化することができるため、必要な装置を装着しても作業に支障なく訓練を行えるとともに、評価を実施する際に高性能の処理装置(作業評価装置50)を使用することができるため、より詳細に精度の良い評価を行うことが可能となる。
なお、本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上記した実施形態は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施形態の構成の一部を他の実施形態の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施形態の構成に他の実施形態の構成を加えることも可能である。また、各実施形態の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
また、上記の各構成、機能、処理部、処理手段等は、それらの一部又は全部を、例えば集積回路で設計する等によりハードウェアで実現してもよい。また、上記の各構成、機能等は、プロセッサがそれぞれの機能を実現するプログラムを解釈し、実行することによりソフトウェアで実現してもよい。各機能を実現するプログラム、テーブル、ファイル等の情報は、メモリや、ハードディスク、SSD(Solid State Drive)等の記録装置、または、ICカード、SDカード、DVD等の記録媒体に置くことができる。
また、図面において制御線や情報線は説明上必要と考えられるものを示しており、製品上必ずしも全ての制御線や情報線を示しているとは限らない。実施には殆ど全ての構成が相互に接続されていると考えてもよい。