JP6972859B2 - ロータリーキルンの端部構造 - Google Patents

Description

本発明は、ロータリーキルンの端部構造に関する。より詳しくは、本発明は、キルン本体内壁における内壁付着物の成長を未然に抑制可能なスクレーパーを備えるロータリーキルンの端部構造に関する。

従来、製鋼電気炉ダスト等に含まれる粗酸化亜鉛ダストから亜鉛を回収する一連の工程における粗酸化亜鉛の焼成を行う工程等において、中空円筒形状の回転炉である本体と、本体の排出口側に配置された加熱用バーナー部を備えるロータリーキルンが広く用いられている。

このロータリーキルンにおいては、金属性の外殻（シェル）の内部空間を、１０００℃以上１３００℃以下に達する高温の焼鉱や高温のガス等が通過する。そして、上記の高温の焼鉱は、ロータリーキルンの本体内の特に高温度域において、キルン本体の内壁に付着してリング状の内壁付着物に成長するという問題があるが、これについては従来様々な対策が提案され、又、実施されている。

加熱炉の内壁付着物を除去する一般的な方法として、特許文献１及び２には、特有の形状及び構造を有するスクレーパーをキルン本体内に適宜装入することにより、スクレーパー自体の回転や、ロータリーキルン自体の回転によるスクレーパーの転動によって、成長した内壁付着物を物理的に除去する方法が提案されている。

特許文献１又は２に記載の内壁付着物の除去方法は、いずれも成長した内壁付着物をその成長後に機械的負荷により除去するものであるため、除去時における内壁付着物の落下等による、キルン内壁劣化や損傷、或いは、内壁付着物の除去に係る負荷がキルン本体の劣化や損傷につながるリスクがあった。

又、上記の機械的手段による除去方法は、いずれも、キルン本体内において最終的に内壁付着物が集積しやすい排出口及びその近傍を主たる内壁付着物除去作業の対象範囲とする手段であり、除去手段とするスクレーパー等は、強度の負荷に耐えて強い切削力を発揮できるものであることが前提となっていた。更に、高温のキルン内に可動式の回転羽根を設けることは、設備が複雑になるばかりで無く、摩耗や高温劣化等によりその維持管理が難しくなる。更に、水冷構造とした場合には、高温のキルン内に漏水する危険もある。

一方で、ロータリーキルンの炉尻付近においては、排ガスからの伝熱により、堆積物や付着物表面が熱せられることによって比較的軟らかい付着物の堆積が生じるが、これを放置すれば、ガス通過断面積の狭小化により、やがてはガスの本来の円滑な移動の妨げとなる。このような事態を避けるためには、ロータリーキルンの操業を一時停止して、上記の内壁付着物を物理的に除去する作業を行わざるをえないという問題があった。

しかし、キルン本体内において、比較的低温度域である原料投入口側である炉尻側における内壁付着物の除去については、特許文献１又は２に記載の内壁付着物の除去方法による場合のような除去手段の強度や切削力についての条件は必ずしも必須ではないので、このような炉尻側における内壁付着物の除去に特化した、より簡易で効率のよい内壁付着物の除去手段が求められるようになっていた。

このようなロータリーキルンの炉尻付近における内壁付着物の除去に特化した除去手段として、キルン本体の炉尻側から炉内に挿入配置される原料投入装置と、当該原料投入装置に固定された態様でキルン本体の内壁付着物を掻き取るスクレーパーとを含む構成からなるロータリーキルンの端部構造が開発されている（特許文献３）。

しかしながら、通常、ロータリーキルンの炉尻側においては、原料投入口寄りの内径が炉内中心部寄りの内径よりも小さくなっており、特許文献３に開示されているスクレーパーによっては、上記の炉尻側近傍における内壁の内径の段階的な変動に対応して、キルン本体内の隅々まで付着物を掻き取ることが難しく、掻き取りが不十分となる範囲における付着物の堆積の進行を十分に抑制できないという問題が新たに認識されるに至った。

特開平８−３１３１５６号公報 特開２００２−８１８６６号公報 特開２０１４−１８５８４０号公報

上記状況に鑑み、本発明は、回転軸方向に沿って内径が段階的に変動するロータリーキルンの炉尻側において、内壁付着物を簡易な手段で隅々まで効率よく除去することのできる内壁付着物の除去手段を提供することを課題とする。

本発明者らは、ロータリーキルンの炉尻側の内壁付着物の除去を、簡易且つ確実に抑制する手段として、ロータリーキルンの端部構造を、キルン本体の炉尻側から炉内に挿入配置される原料投入装置と、当該原料投入装置に固定された態様でキルン本体の内壁付着物を掻き取るスクレーパーとを含む構成とし、更に、このスクレーパーの平面形状を独自の片側末広がりの平面形状とすることにより、上記課題が解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。より、具体的には、本発明は以下のものを提供する。

（１） 中空円筒形状の回転体であるキルン本体と、前記キルン本体の内部の炉尻側に設置されて該キルン本体の回転時に該キルン本体の内壁付着物を掻き取る固定式のスクレーパーと、を含んでなる、ロータリーキルンの端部構造であって、前記キルン本体の炉尻側には、円筒形状の該キルン本体の妻面の一部が開口されてなる原料投入口が形成されていて、前記スクレーパーは、前記キルン本体の回転中心軸から外周に向かう方向に沿って配置されている支持部と、該支持部の先端に設置されている板状の掻き取り刃部と、を有し、前記掻き取り刃部は、前記原料投入口側における前記キルン本体の回転中心軸から該掻き取り刃部の刃先までの長さよりも、炉内側における前記刃先までの長さの方が大きくなるように配置されている、ロータリーキルンの端部構造。

（２） 前記スクレーパーが、前記キルン本体の垂直断面円の水平な半径方向に沿って配置されている支持部を有する、（１）に記載のロータリーキルンの端部構造。

（３） 前記キルン本体の炉尻側から炉内に挿入配置される原料投入装置を更に備え、
前記スクレーパーは、前記原料投入装置上に固定設置されている（１）又は（２）に記載のロータリーキルンの端部構造。

（４） 前記支持部が複数の板状又は棒状の支持部とからなり、前記掻き取り刃部は、複数の前記支持部の先端において連接されている複数の板状の部材かなる、（１）から（３）のいずれかに記載のロータリーキルンの端部構造。

本発明によれば、回転軸方向に沿って内径が段階的に変動するロータリーキルンの炉尻側において、内壁付着物を簡易な手段で隅々まで効率よく除去することのできる内壁付着物の除去手段を提供することができる。

本発明のロータリーキルンの端部構造を備えるロータリーキルンの全体構成を模式的に示す断面図である。 本発明のロータリーキルンの端部構造を模式的に示す断面図である。 本発明のロータリーキルンの端部構造の主要部分の構成を模式的に示す斜視図である。 本発明のロータリーキルンの端部構造の主要部分の構成を模式的に示す上面図である。 本発明のロータリーキルンの端部構造を備えるロータリーキルンの原料投入口側の構成を模式的に示す正面図である。 本発明のロータリーキルンの端部構造による内壁付着物の除去作用の説明に供する模式図である。

以下、本発明の実施形態について説明する。本発明は、以下の実施形態に限定されない。以下、本発明のロータリーキルンの端部構造を、亜鉛焼鉱の焼成等に用いられる大型の乾燥加熱用ロータリーキルンへ適用した場合の実施形態について説明するが、本発明は、円筒形状の回転式加熱炉であれば、その他の様々な加熱炉への適用が可能な技術である。

＜ロータリーキルン＞
先ず、図１〜図５を参照しながら、本発明のロータリーキルンの端部構造を好ましく適用することができるロータリーキルンの一例である、ロータリーキルン１の全体構成及び使用態様について説明する。ロータリーキルン１に、本発明のロータリーキルンの端部造２を備えることにより、ロータリーキルンの炉尻側における内壁付着物を効率よく除去することができるようになる。

ロータリーキルン１は、中空円筒形状の回転体であるキルン本体１０、原料投入口１１から挿入され炉内に向けて配置される原料投入装置２０、バーナー部４０、駆動ギヤ５０、固定フード６０、及び、キルン本体１０を支持するキルン支持部（図示せず）、を備える回転式の加熱炉である。キルン本体１０は、被焼成物３の投入口である原料投入口１１から被焼成物３を排出する排出口１２に向けて被焼成物３の移動する方向に向けて、水平面に対し通常１〜４％の傾斜をもつように設置される。そして、駆動ギヤ５０によりＲ方向へ回転させられながら被焼成物３の焼成が行われる。

このロータリーキルン１の一部を構成するロータリーキルンの端部構造２は、キルン本体１０の炉尻側の内部に、被焼成物３からなる内壁付着物を掻き取るスクレーパー３０が固定的に設置されてなる構造体である。スクレーパー３０の固定は、原料投入装置２０に設置する構造によるものとすることが好ましい。

キルン本体１０は、耐火性を備える円筒形の釜であれば特段限定されないが、炭素鋼等からなる金属シェルの内面にモルタル等の不定形耐火物や耐火煉瓦等の耐火物が貼設されているものであることが好ましい。円筒状のキルン本体１０の炉尻側の妻面には、当該面の一部が開口されてなる原料投入口１１が形成されており、通常、この原料投入口１１から、原料投入装置２０が挿入されている。

尚、キルン本体１０において原料投入口１１が形成されている炉尻側においては、少なくとも原料投入口１１周囲の内壁の内径は、炉内側の内壁の内径よりも小さくなっている。又、キルン本体１０の炉尻側においては、それ以外にも、炉内側に向けて段階的に内径が増加する構造とされている場合もある。本発明のロータリーキルンの端部構造２は、このようなキルン本体１０の炉尻側の一般的な内部構造に対して好ましく適用できるものである。

原料投入装置２０は、ロータリーキルン１による焼成に先立つ前工程から搬出される被焼成物３をキルン本体１０内に投入する装置である。ベルトコンベアやスクリューコンベア等の公知の機器を適宜用いることができる。但し、その天面側の外部にスクレーパー３０を安定的に固定可能な形状及び構造を有するものであることがより好ましい。この原料投入装置２０は、キルン本体１０の外に設けられる支持手段（図示せず）によって適切な位置に安定的に設置される。

スクレーパー３０は、支持部３２の先端に、内壁付着物を掻き取り可能な部材からなる掻き取り刃部３１が設置又は形成されてなる構造を有する。支持部３２と掻き取り刃部３１は、図３及び図４に示すように、何れも板状の部材でこれらを構成することができる。但し、支持部３２と掻き取り刃部３１とは必ずしも個別の部材が連接されてなるものであることが必須ではない。例えば、スクレーパー３０と同一の掻き取りに関する作用効果を発現しうる形状のスクレーパーであって、支持部３２と掻き取り刃部３１とが一体成型されているものであってもよい。

スクレーパー３０は、全体として板状又は略板状の外縁形状を有するものであることが好ましく、尚且つ、その平面形状については、図３及び図４に示すような片側末広がりの形状であればよい。スクレーパー３０の平面形状について、より詳しくは、キルン本体１０の原料投入口１１側におけるキルン本体の回転中心軸から掻き取り刃部３１の刃先までの長さよりも、炉内側における当該長さの方が大きくなるように掻き取り刃部３１が配置されることとなるような平面形状とすればよい。

上記の掻き取り刃部３１の末広がりの度合いの詳細については、個々のキルン本体１０の原料投入口１１の開口径や開口位置及び、炉尻側のキルン本体１０の内壁の形状に応じて、即ち、スクレーパー３０の設置範囲におけるキルン本体１０の内径の段階的な広がりの態様に応じて、掻き取り刃部３１の刃部先の位置を適切に必要な範囲でキルン本体１０の内壁に近接させるようにその配置を適宜調整すればよい。

スクレーパー３０は、キルン本体１０の内部の炉尻側の近傍において、キルン本体１０の回転中心軸から外周に向かう方向、好ましくは、垂直断面円の半径方向に沿って配置される。但し、スクレーパー３０の配置方向は、上記の垂直断面円の３６０°に亘る半径方向のうち、鉛直下向き方向を−９０°、鉛直上向き方向を９０°、その中間の水平方向を０°と規定した場合において、−９０°〜６０°の範囲であることが好ましく、−１５°〜０°の範囲であることがより好ましく、０°であること、即ち、上記垂直断面円の半径方向のうち水平な半径方向に沿う配置方向であることが最も好ましい。

スクレーパー３０の配置方向は上記のような水平方向に向けた設置が好ましく、これにより、主には、原料投入装置の上面等、キルン本体内の他の箇所に、掻き取った付着物が再付着して堆積することを防止できる。水平方向よりも、下方に向けて設置した場合には、炉内滞留物との接触によるスクレーパー３０の破損のリスクが高まる。又、−４５°よりも下げると、キルン本来が持つ被焼成物の流動効果を阻害することになり好ましくない。一方、水平方向より上方に向けて設置した場合には、掻き取った付着物の散乱による原料投入装置２０等の上への付着、堆積を防止しきれないというリスクが生じる。

尚、上述の通り、通常、キルン本体１０の回転軸は水平方向に対して１〜４％の傾斜を有するので、スクレーパー３０は、より詳細には、この程度に傾斜した回転軸と、当該回転軸に直交する水平線とで形成される平面内に配置されることが最も好ましい実施形態となる。

尚、スクレーパー３０のキルン本体１０の回転軸方向の長さは特に限定されないが、１．０ｍ〜１．５ｍ程度であることが好ましい。

スクレーパー３０を構成する支持部３２及び掻き取り刃部３１等の各部材の材料については、９００℃程度、好ましくは、９００〜１２００℃程度の高温環境での使用に耐える耐熱性を持つ材料であればよい。ステンレス鋼等を好ましい材料の具体例として挙げることができる。

スクレーパー３０の機械的強度、剛性については、従来のキルン本体内の排出口１２側寄りで用いられてきたスクレーパーと同等の強度までは必ずしも必要ではない。本発明に係るスクレーパー３０は、従来の一般的な除去部材とは異なり、成長、硬化した内壁付着物を除去対象とはしておらず、成長が進む前段階にある投入直後の比較的軟らかい状態の内壁付着物を除去対象としているからである。

スクレーパー３０の構造については、例えば、一枚の板状部材からなる支持部の端部に単一の掻き取り刃部が設置又は形成されている構造であってもよいが、図３及び図４に示すように、上記材料からなる複数の板状の支持部３２ａ、３２ｂ、３２ｃ、３２ｄの各支持部の先端において、掻き取り刃部３１を構成する複数の板状の部材３１ａ、３１ｂ、３１ｃが支持及び連接されていて、それらの各部材間は、中空の構造とされていることが好ましい。このような構造でもスクレーパー３０に必要十分な強度を備えさせることは可能であり、一方、このような中空構造とすることによって、スクレーパー３０の上面への炉内滞留物の堆積を回避することができる。又、これにより、十分なガス通過断面積の確保が阻害されることも回避でき、キルン本体１０内部における円滑なガス流を保持できる。

スクレーパー３０は、上記の材料、構造からなるものであるため、比較的、軽量化が容易であり、又、比較的、軟らかい内壁付着物を除去対象としているものであるため、原料投入装置２０を支持体とした場合でも、これに過度の負荷をかけることなく設置可能である。

スクレーパー３０を、キルン本体１０の炉尻側、即ち、原料投入口１１の近傍の炉内空間において、原料投入装置２０の外部上面に等に固定する際、スクレーパー３０の配置位置は、キルン本体１０の内壁に対する掻き取り刃部３１の相対的な位置を最適化するように規定される。

スクレーパー３０のキルン本体１０の回転軸方向に対する配置位置は、掻き取り刃部３１が、キルン本体１０の回転軸方向に対して、キルン本体１０の原料投入口１１の側の端部から、好ましくは０ｍ以上２．０ｍ以下の距離範囲、より好ましくは０．５ｍ以上１．５ｍ以下の距離範囲に配置されることとなるような位置とすることが好ましい。原料投入口付近のガス通過断面積の確保が阻害されるリスクが生じる。又、一般的なサイズのロータリーキルンにおいて、十分なガス通過断面積の確保が必要でありながら、付着物の堆積が最も促進しやすい範囲が上記範囲となるからである。又、端部からの距離が０．５ｍ未満であると、妻面との位置関係により設置不可能な場合がある。尚、スクレーパー３０をスクリューコンベア等の原料投入装置２０の外部上面に固定する場合には、図２に示すように、キルン本体１０の回転軸方向に対するスクレーパー３０の配置位置は、原料投入装置２０の炉内側の先端部までの範囲とすることが好ましい。キルン本体１０の炉尻側のガス温度は通常１０００℃未満であるため、このような条件を満たす範囲にスクレーパー３０を配置することによって、原料投入装置２０によってキルン本体１０内に投入された直後の被焼成物３が固形塊として成長する前の段階で、最小限の負荷によって掻き取ることができる。

スクレーパー３０先端の掻き取り刃部３１とキルン本体１０の内壁との間の距離については、被焼成物の粒径や粘度等の諸物性に応じて、適宜調整すればよい。一般的には、掻き取り刃部３１とキルン本体１０の内壁との間の距離が１００ｍｍ〜１５０ｍｍ程度となる位置であることが好ましい。この距離については、原料投入装置２０の位置が既にキルン本体１０に対して固定的に確定されている場合には、スクレーパー３０の形状を調整することによって最適化することができる。特に、スクレーパー３０が上記の中空構造からなる場合には、支持部３２の長さの変更により容易にこのような位置調整が可能である。

尚、スクレーパー３０においては、図４に示すように支持部３２（３２ａ、３２ｂ、３２ｃ、３２ｄ）上に、それぞれ断面Ｌ字形状のアングル材３３（３３ａ、３３ｂ、３３ｃ、３３ｄ）を被せて、その上面を三角屋根状の形状としてもよい。これにより、支持部３２の剛性を強化し、尚且つ、支持部３２の上面への炉内浮遊物の堆積を防止することができる。又、図５に示すように、支持部３２を補助する補強アングル３４を更に設置してもよい。

バーナー部４０は、キルン本体１０の排出口１２側近傍に設けられる重油バーナー等の加熱装置であり、ロータリーキルン１の熱源となり、キルン本体１０の内部を１１００℃〜１３００℃に加熱可能なものであればよい。又、駆動ギヤ５０は、キルン本体１０に図中のＲ方向への回転力を伝えられるものであり、固定フード６０は、キルン本体１０から排出される排ガスの拡散を防止可能なものであればよい。

以上の構成を有するロータリーキルン１においては、バーナー部４０によりキルン本体１０の内部を９００℃以上１３００℃以下程度の高温に加熱し、駆動ギヤ５０によりキルン本体１０をＲ方向に回転させながら、原料投入装置２０によって、被焼成物を原料投入口１１より図１に示すａ方向へと投入する。被焼成物はキルン本体１０の傾斜に沿って攪拌、焼成されながらキルン本体１０内を排出口１２の方向に向かって移動して行き、排出口１２からは、高温の被焼成物がｂ方向に排出される。

＜ロータリーキルンの端部構造＞
次に、図２〜図６を参照しながら、本発明のロータリーキルンの端部構造（以下、単に「端部構造」とも言う）の構成と作用効果について更に詳しく説明する。

図２に示す通り、端部構造２においては、被焼成物３は、原料投入装置２０によってａ_０方向に運搬された後、原料投入装置２０の端部付近において、ａ_１方向に向けてキルン本体１０の内壁へと落下する。被焼成物３は、先ず、この落下地点周囲で内壁付着物として成長を開始する。スクレーパー３０は、図２に示す通り、この被焼成物３の落下地点の直上を含む範囲に固定されていることが好ましい。このような位置にスクレーパー３０が固定されていることにより、被焼成物３が内壁付着物として成長する前に効率よく内壁から剥離させ除去することができる。

又、スクレーパー３０の平面形状が、図４に示すような、片側末広がりの形状であることにより、先ず、原料投入装置２０の近傍に堆積する堆積物３ｃについては、原料投入口１１の開口部分に迄堆積物が成長することは確実に防ぐことができる。そして、同時に、被焼成物３の落下地点を含む炉内中心部側の範囲においては、掻き取り刃部３１をキルン本体の内壁に必要十分な程度にまで近接させることにより、十分なガス通過断面積の確保が必要でありながら付着物の堆積が促進しやすいこの範囲において、堆積物の除去を十分に行うことができる。このように、スクレーパー３０はキルン本体１０の炉尻側の原料投入口近傍の内部構造と形状に適応した最適な水平位置に、掻き取り刃部３１を配置したものである。以上の作用により、端部構造２においては、炉尻側において内壁付着物が成長して炉の閉塞を招く事態を未然に防止することができる。

又、スクレーパー３０の配置方向が、図６に示す通り、キルン本体１０の垂直断面円の水平な半径方向に沿った配置とされていることにより、原料投入装置２０の上面等、キルン本体内の他の箇所に、掻き取った付着物が再付着して堆積することを防止できる。原料投入装置２０からキルン本体１０の内壁へと落下直後の被焼成物３ａの一部は、キルン本体１０の内壁に付着し、キルン本体１０の回転に伴って上方に移動するが（３ｂ）、スクレーパー３０の掻き取り刃部３１に衝突し、キルン本体１０の内壁から剥離されて、キルン本体１０の底部に落下する。このような端部構造２の構成と作用効果により、被焼成物３からなる内壁付着物は、大きく成長する前にキルン本体１０の内壁から除去される。よって、炉尻側において内壁付着物が成長して炉の閉塞を招く事態を未然に防止することができる。又、原料投入装置２０等、キルン本体１０内の他の構造物上に掻き取った付着物が堆積することも防止することができる。又、これにより、更に炉尻側において内壁付着物が成長して炉の閉塞を招く事態を未然に防止することができる。

尚、ロータリーキルンの操業時において、内壁付着物を掻き取り可能な上記態様でロータリーキルンの一部となっている構造体を含む端部構造である限り、必ずしもスクレーパーが恒常的に原料投入装置に固定されている構造ではなくても本発明のロータリーキルンの端部構造と均等の範囲内である。

従来、ロータリーキルン内で成長した固形塊たる内壁付着物の除去には、強度な剛性を有する特殊な形状のスクレーパーによる、キルン本体にも負荷をかけながらの、除去工程が必須とされていた。しかし、本発明の端部構造２によれば、炉尻側での内壁付着物の成長開始地点となる位置に、スクレーパー３０を安定的に設置することができる。又、被焼成物３の投入を行うためにロータリーキルン１の操業時に必須の構成部分である原料投入装置２０をスクレーパー３０の支持体として活用する構造とすることにより、新たな構造物の追加設置が最小限ですみ、設置コストの面でも極めて優れた構造である。

以上のロータリーキルンの端部構造は、以下の効果を奏する。

（１） 被焼成物の高温での焼成が行われるロータリーキルンにおいて、特にロータリーキルンの原料投入口側における内壁付着物を、効率よく除去する手段が求められていた。そこで、（１）の発明においては、ロータリーキルンにおける内壁付着物を除去する手段として、独自の構成からなるロータリーキルンの端部構造を開発した。この端部構造は、キルン本体内の炉尻側の原料投入口付近に片側末広がりの平面形状からなる固定式のスクレーパーを設置するものである。この端部構造によれば、回転軸方向に沿って内径が段階的に変動する構造を有するロータリーキルンの炉尻側において、内壁付着物を簡易な手段で隅々まで効率よく除去して、内壁付着物の成長を抑制することができる。

（２） 又、（１）の発明におけるスクレーパーの配置方向については、これを、円筒状のロータリーキルンの垂直断面円の水平な半径方向に沿った配置に特定することがより好ましい。これによれば、主には、原料投入装置の上面等、キルン本体内の他の箇所に、掻き取った付着物が再付着して堆積することを防止できる。これにより、キルン本体内におけるガス通過断面積の減少を防止することができる。

（３） 又、スクレーパーの固定位置については、キルン本体の炉尻側から炉内に挿入配置される原料投入装置上にスクレーパーを固定設置する構造とすることがより好ましい。これによれば、被焼成物の投入を行うためにロータリーキルンの操業時に必須の構成部分である原料投入装置をスクレーパーの支持体としても複合的に活用することにより、スクレーパーの設置コストを大幅に抑制することができる。

（４） 又、スクレーパーの構造を、複数の支持部によって複数の掻き取り刃部用の部材が連接されてなる中空部の多い簡易な構造とすることがより好ましい。これによれば、掻き取り刃部の水平位置の微調整が容易であるという面、及び、製造コスト面において、従来品に対する優位性を更に高めることができる。又、落下した被焼成物がスクレーパー上に堆積することも防止できる。

以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述した実施形態に限るものではない。又、本発明の実施形態に記載された効果は、本発明から生じる最も好適な効果を列挙したに過ぎず、本発明による効果は、本発明の実施例に記載されたものに限定されるものではない。

１ ロータリーキルン
１０ キルン本体
１１ 原料投入口
１２ 排出口
２ 端部構造
２０ 原料投入装置
３ 被焼成物
３０ スクレーパー
３１ 掻き取り刃部
３２ 支持部
３３ アングル材
３４ 補強アングル
４０ バーナー部
５０ 駆動ギヤ
６０ 固定フード

Claims (4)

1. 中空円筒形状の回転体であるキルン本体と、前記キルン本体の内部の炉尻側に設置されて該キルン本体の回転時に該キルン本体の内壁付着物を掻き取る固定式のスクレーパーと、を含んでなる、ロータリーキルンの端部構造であって、
   前記キルン本体の炉尻側には、円筒形状の該キルン本体の妻面の一部が開口されてなる原料投入口が形成されていて、
   前記スクレーパーは、前記キルン本体の回転中心軸から外周に向かう方向に沿って配置されている支持部と、該支持部の先端に設置されている板状の掻き取り刃部と、を有し、
   前記掻き取り刃部は、前記原料投入口側における前記キルン本体の回転中心軸から該掻き取り刃部の刃先までの長さよりも、炉内側における前記刃先までの長さの方が大きくなるように配置されている、ロータリーキルンの端部構造。
2. 前記スクレーパーが、前記キルン本体の垂直断面円の水平な半径方向に沿って配置されている支持部を有する、請求項１に記載のロータリーキルンの端部構造。
3. 前記キルン本体の炉尻側から炉内に挿入配置される原料投入装置を更に備え、
   前記スクレーパーは、前記原料投入装置上に固定設置されている請求項１又は２に記載のロータリーキルンの端部構造。
4. 前記支持部が複数の板状又は棒状の支持部とからなり、前記掻き取り刃部は、複数の前記支持部の先端において連接されている複数の板状の部材からなる、請求項１から３のいずれかに記載のロータリーキルンの端部構造。

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