JP6971728B2 - ふき取り紙 - Google Patents

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Description

本発明は、ふき取り紙に関する。
天然パルプを原料としたちり紙やティッシュペーパーなどは、汚れをふき取る紙(以下、「ふき取り紙」ともいう。)として、古くから使用されている。また、顔面の油脂用のふきとり紙として、木材パルプや植物繊維、特に麻繊維を原料として抄紙したあぶらとり紙が使用されている。特に、顔面の化粧時に使用されるあぶらとり紙としては、金箔打ち紙が使用されている。
ちり紙、ティッシュペーパー及びあぶらとり紙の多くは、ふき取り紙を単独で使用しており、アルコールなどの薬品を含んでいない。一方で、油汚れを取りやすくするためにアルコールなどの薬品を含むふき取り紙として、ウェットティッシュが使用されている。これらのことは多くの文献により既に周知でありかつ各種のものが市販されている。
皮脂の吸収性に優れるあぶらとり紙として、例えば特許文献1には、植物繊維を主成分とするパルプ原料100重量部に、無機質填料5〜50重量部を配合してなる紙料を調成し、抄紙して得られる紙の緊度が0.7以上であることを特徴とする化粧用脂取り紙が記載されている。
また、皮脂の吸収性に優れるあぶらとり紙として、例えば特許文献2には、ポリプロピレン(PP)フィルムとポリエチレン(PE)フィルムを交互に積層した積層フィルムを延伸多孔化した脂取り紙が記載されている。
また、皮脂と汗のいずれもふき取れる紙として、例えば特許文献3には、繊維支持体にワックスエマルション、チオシアン酸コバルト、体質顔料、およびバインダーを含有する塗工層を設けたふき取りシートが提案されている。
特開平6−319664号公報 特開2007−90063号公報 特開2000−175739号公報
一般的な天然パルプを原料としたちり紙、ティッシュペーパーなどは、水は良くふき取ることができるが、油はふき取り難いものであった。麻繊維を原料としたあぶらとり紙は、油は良くふき取ることができるが、汗などの水分はふき取り難いものであった。
また、アルコールが含浸されたウェットティシュは、油は良くふき取ることができるが、水分はふき取り難いものであった。そればかりではなく、ウェットティッシュは、薬品による手荒れを引き起こす場合があるという問題や、保存中に乾燥してしまうと水も油も拭い取り難くなるという問題があった。
より具体的に発明者らが検討したところ、例えば特許文献1に記載のあぶらとり紙は、油の吸収性に優れるとされているが、十分ではなく、また、水の吸収性に劣るため、汗などの水分を十分にふき取れないという問題があった。
同様に特許文献2に記載のあぶらとり紙は、水の吸収性に劣るため、汗などの水分を十分にふき取れないという問題があった。
また、発明者らが検討したところ、特許文献3に記載の水と油を吸収する繊維支持体にワックスエマルション、チオシアン酸コバルト、体質顔料、およびバインダーを含有する塗工層を設けたふき取りシートは、塗工という複雑な工程を有するうえに、水、油の吸収量がともに十分ではない場合があるという問題があった。
このように、水と油のいずれも十分にふき取ることができるふき取り紙は知られていなかった。
また、ふき取り紙は、人の肌に触れて使用されることが多いため、風合いに優れることが求められる。
本発明は、上記問題に鑑みて成されたものであり、水も油も十分にふき取れることができ、かつ、風合いにも優れるふき取り紙を提供することを目的とする。
本発明者らは鋭意検討を重ねた結果、特定の合成パルプ、バインダー繊維、および特定の天然パルプを組み合わせることにより、水も油も十分にふき取れることができ、かつ、風合いにも優れるふき取り紙を提供できることを見出し、本発明を完成するに至った。
本発明には、以下の態様が含まれる。
<1>合成紙からなるふき取り紙であって、前記合成紙は、カナディアン標準濾水度が、100ml以上520ml以下であるポリオレフィン系合成パルプ(A)と、バインダー繊維(B)と、繊維長が1mm以上80mm以下である天然パルプ(C)とを含み、前記合成紙の全質量に対する前記ポリオレフィン系合成パルプ(A)の含有量が、20質量%以上であるふき取り紙。
<2>前記バインダー繊維(B)が、融点が70℃以上130℃以下の繊維を含む、<1>に記載のふき取り紙。
<3>前記バインダー繊維(B)が、ポリエチレン系繊維、低融点ポリエステル繊維、アクリル系繊維、ポリエチレン/ポリプロピレン複合繊維、ポリエチレン/ポリエチレンテレフタレート複合繊維、およびポリエステル複合繊維からなる群より選ばれる少なくとも1種を含む、<1>または<2>に記載のふき取り紙。
<4>さらに前記合成紙が、平均粒子径が1μm以上150μm以下であり、かつ、比重が1.5以上10以下である粒子(D)を含む、<1>〜<3>のいずれか1項に記載のふき取り紙。
<5>前記粒子(D)が、ゼオライト、アパタイト、炭酸カルシウム、二酸化チタン、二酸化ケイ素、硫酸バリウム、酸化アルミニウム、リン酸ジルコニウム、珪酸カルシウム、カオリン、タルク、および酸化銅からなる群より選ばれる少なくとも1種を含む、<4>に記載のふき取り紙。
<6>前記粒子(D)は、銀イオンを担持した粒子を含む、<4>または<5>に記載のふき取り紙。
本発明によれば、水も油も十分にふき取れることができ、かつ、風合いにも優れるふき取り紙を提供が提供される。
本明細書において「〜」で示す数値範囲は、「〜」の前後に記載された数値を含む数値範囲を意味する。
本明細書において合成紙とは、天然パルプを主原料とする従来公知の紙において、天然パルプの5質量%以上を合成パルプに置き換えて製造された紙を意味する。
本明細書において油をふき取る性能を「吸油性」ともいい、水をふき取る性能を「吸水性」ともいう。
本明細書において「吸油性に優れる」とは、油に浸漬する前の合成紙の重量に対する油に浸漬したあとの合成紙の重量の割合に100を乗じて得た値(油吸着量)が350%以上であることをいい、「吸水性に優れる」とは、水に浸漬する前の合成紙の重量に対する水に浸漬したあとの合成紙の重量の割合に100を乗じて得た値(水吸着量)が350%以上であることをいう。
本明細書において「風合い」とは、手で触れた際に感じる材質感を意味し、「風合いに優れる」とは天然パルプから形成した紙の風合いに近いことを意味する。
<<ふき取り紙>>
本発明のふき取り紙は、特定の合成紙からなるふき取り紙である。以下、特定の合成紙について説明する。
<合成紙>
本発明における特定の合成紙は、カナディアン標準濾水度が、100ml以上520ml以下であるポリオレフィン系合成パルプ(A)と、バインダー繊維(B)と、繊維長が1mm以上80mm以下である天然パルプ(C)とを含み、前記合成紙の全質量に対する前記ポリオレフィン系合成パルプ(A)の含有量が、20質量%以上である。
(ポリオレフィン系合成パルプ(A))
本発明で使用するポリオレフィン系合成パルプ(A)とは、オレフィンの単独重合体、またはエチレンと他のα−オレフィンとの共重合体を主成分とするパルプである。主成分となるポリオレフィン単量体または共重合体の炭素数は2〜10が好ましい。具体例としては、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのオレフィンの単独重合体を主成分とする合成パルプ、エチレン−プロピレン共重合体、エチレンーブテン−1共重合体、エチレン−4−メチルペンテン−1共重合体などの共重合体を主成分とする合成パルプが挙げられる。ポリオレフィン系合成パルプは比較的安価であることから、合成紙の原料として好適に用いられる。また、ポリオレフィン系合成パルプの中でも、特にポリエチレン単独重合体やエチレンと他の単量体との共重合体であるエチレン系樹脂を主成分とするパルプが好適に使用される。
ポリオレフィン系合成パルプの具体例としては、三井化学社製のSWP(商品名)などが挙げられる。
本発明で使用するポリオレフィン系合成パルプ(A)のカナディアン標準濾水度(カナディアン・スタンダード・フリーネス、CSF、あるいは単に「濾水度」ともいう)は、100ml以上520ml以下である。カナディアン標準濾水度の値は、JIS P 8121−2(2012)に従い測定された値である。本発明で使用するポリオレフィン系合成パルプ(A)のCSFは、吸油性及び吸水性をより向上させる観点から、150ml以上480ml以下が好ましく、200ml以上450以下がより好ましい。
CSFは、例えばディスク型リファイナーで処理することにより調整できる。
ポリオレフィン系合成パルプ(A)の主成分となるオレフィン樹脂のメルトフローレート(MFR:g/10min、190℃)は、0.1〜100g/10min.であることが好ましく、1.0〜60g/10min.であることがより好ましい。
また、当該オレフィン樹脂の融点は、70〜140℃であることが好ましく、90〜140℃であることがより好ましい。
ポリオレフィン系合成パルプ(A)の繊維長に特に限定はないが、通常、0.05〜50mmであり、合成紙の風合いをより天然の原料から形成された紙に近づける観点から0.05〜10mmが好ましい。平均繊維長は0.1〜5mmの範囲内であることが好ましい。なお、合成紙の風合いは、天然の原料から形成された紙に近いほど風合いに優れる。
繊維長および平均繊維長は、例えばディスク型リファイナーで処理することにより調整できる。
平均繊維長は以下の手順で求めることができる。
ポリオレフィン系合成パルプを構成する繊維を、長さ0.05mmごとに分級する。その後、それぞれの級(長さ)に含まれる繊維の実測繊維長と、それぞれの級に含まれる繊維の本数を測定する。測定は、12000〜13000本の繊維について行えばよい。その後、上記測定結果から、以下の式により、それぞれの級の数平均繊維長Ln(mm)を求める。
Ln=ΣL/N
L:1つの級に含まれる繊維の実測繊維長(mm)
N:1つの級に含まれる繊維の本数
その後、以下の式により、合成パルプを構成する繊維の平均繊維長(mm)を求める。
平均繊維長=Σ(Nn×Ln)/Σ(Nn×Ln
Nn:それぞれの級に含まれる繊維の本数
なお、上記実測繊維長は、たとえば、濃度0.02重量%になるように合成パルプを水に分散し、フィンランド国、メッツォオートメーション社製自動繊維測定機(製品名:FiberLab−3.5)で合成パルプを構成する繊維の一本一本の繊維の長さを測定して求めることができる。当該測定機では、キャピラリー中を流れる際の繊維にキセノンランプ光を照射してCCD(電荷結合素子)センサーで映像信号を採取し、画像解析する。
ポリオレフィン系合成パルプ(A)の融点は、何ら制限されないが、70℃〜140℃が好ましく、90℃〜140℃がより好ましい。
ポリオレフィン系合成パルプ(A)の製造方法に特に限定はなく、公知の方法で製造された物を使用することができる。製法は、例えば、Encyclopedia of Chemical Technology 3rd ed, Vol.19, P420−425等に詳細に説明されている。具体的には、溶融紡糸した繊維を短く切った後に叩解する方法、溶融フラッシュもしくはエマルジョンフラッシュを行った後に叩解処理する方法などが挙げられる。特に、樹脂組成物の溶液あるいはエマルジョンをフラッシュ紡糸する方法が適している。中でも、ポリビニルアルコール(PVA)を親水化剤として用いるエマルジョンフラッシュ法がより好ましく、紙の製造に好適な繊維形状を有するパルプを得ることができる。PVAの添加量は、PVAを含む合成パルプ全量に対して、0.01〜10質量%が好ましい。
さらにポリオレフィン系合成パルプ(A)を製造する際には、樹脂成分の他に、本発明の目的を損なわない範囲内で各種の添加剤を使用してもよい。添加剤の例としては、難燃剤、酸化防止剤、帯電防止剤、耐候安定剤、顔料などが挙げられる。
合成紙の全質量に対するポリオレフィン系合成パルプ(A)の含有量は、20質量%以上であり、吸油性をより向上させる観点から、50質量%以上が好ましく、60質量%以上がより好ましい。
また、合成紙の全質量に対するポリオレフィン系合成パルプ(A)の含有量は、吸水性をより向上させる観点から、95質量%以下が好ましく、90質量%以下がより好ましく、85質量%以下が更に好ましい。
(バインダー繊維(B))
本発明に用いられるバインダー繊維(B)は、抄紙可能なものである限り、特に限定はなく、合成紙に配合することにより、合成紙の引張強度を向上させることができる。また、合成紙の乾燥工程における断紙を防ぐ観点からは、バインダー繊維(B)は、融点が70℃以上130℃以下の繊維を含むことが好ましく、融点が100℃以上120℃以下の繊維を含むことがより好ましい。
このようなバインダー繊維(B)としては合成繊維が挙げられる。具体例としては、ポリエチレン系繊維、低融点ポリエステル繊維、アクリル系繊維、ポリエチレン/ポリプロピレン複合繊維、ポリエチレン/ポリエチレンテレフタレート複合繊維、ポリエステル複合繊維などが挙げられる。
バインダー繊維(B)の形態は製造設備によって製造できる範囲にあれば、短繊維でも長繊維でもよい。バインダー繊維(B)の平均繊維長は、0.1〜20mmが好ましく、1〜10mmがより好ましい。この範囲内の平均繊維長であれば、バインダー繊維(B)を含む組成物の実質的なシート化が可能であり、均一な合成紙を得ることができる。また、このようなバインダー繊維(B)は、湿式抄紙可能である。
尚、バインダー繊維(B)の平均繊維長は、ポリオレフィン系合成パルプ(A)の平均繊維長と同様にして測定した値である。
合成紙の全質量に対するバインダー繊維(B)の含有量は、1質量%〜50質量%が好ましく、5質量%〜30質量%がより好ましい。この範囲内のバインダー繊維(B)を含むことによって、合成紙の乾燥工程における断紙を防止することが可能となり、また合成紙の引張強度を向上させることができる。
(天然パルプ(C))
本発明に用いられる天然パルプ(C)は、繊維長が1mm以上80mm以下である。合成紙が天然パルプを含むと、合成紙の引張強度、吸水性および風合いを向上させることができる。
天然パルプとしては、例えば、木材パルプおよび非木材パルプが挙げられる。
木材パルプとしては、例えば、針葉樹および広葉樹などから、クラフト法、ソーダ法および亜硫酸法に代表されるケミカルパルプ化法や、中性亜硫酸塩法、酸性亜硫酸塩法に代表されるセミケミカルパルプ化法や、その他公知のパルプ化法によって、製造された木材パルプが挙げられる。
非木材パルプは、木材以外の原料から製造されたパルプである。木材以外の原料としては、植物繊維が挙げられる。
植物繊維としては、例えば、マニラ麻、亜麻、大麻、黄麻、楮、みつまたあるいは雁皮からなる靱皮繊維、コットン、コットンリンター等の木綿、藁、竹、エスパルト、バガス等が挙げられる。これらの植物繊維から、例えば、ケミカルパルプ化法、セミケミカルパルプ化法、ケミグランドパルプ化法、メカニカルパルプ化法などの各種のパルプ化法によって、非木材パルプが製造される。これらの植物繊維は、それぞれ単独で用いてもよく、また、二種以上を混合して用いてもよい。これらのなかでも植物繊維としては、皮脂の吸収性、入手のし易さ、供給量等からマニラ麻が好ましい。
これらの中でも、天然パルプとしては、エンボス適正を向上させる観点から、針葉樹クラフトパルプ(NBKP)が好ましい。
天然パルプ(C)は、合成紙中に1種のみを含んでいても良く、2種以上を含んでいてもよいが、好ましくはNBKPのみを含む。
天然パルプ(C)の繊維長は、製造設備によって製造できる範囲にあれば制限されない。天然パルプ(C)の平均繊維長は、ふき取り紙として好ましい強度を確保する観点および均一な合成紙を得る観点から、1mm〜80mmであり、2mm〜50mmが好ましい。
尚、天然パルプ(C)の平均繊維長は、ポリオレフィン系合成パルプ(A)の平均繊維長と同様にして測定した値である。
本発明における合成紙に含まれる天然パルプ(C)の含有量は、吸水性をより向上させる観点、風合いをより向上させる観点、合成紙を製造中の断紙を防止する観点、および合成紙の引張強度を向上させる観点から、合成紙の全質量に対して1質量%以上が好ましく、3質量%以上がより好ましい。
また、本発明における合成紙に含まれる天然パルプ(C)の含有量は、吸油性を向上させる観点から、50質量%以下が好ましく、30質量%以下がより好ましい。
(粒子(D))
本発明における合成紙は、平均粒子径が1μm以上150μm以下であり、かつ、比重が1.5以上10以下である粒子(D)を含むことが好ましい。
本発明における合成紙が上記粒子(D)を含むと、吸油性および吸水性がより向上する傾向にある。また、風合いが天然パルプからなる紙により近づく傾向にある。
なお、粒子(D)としては、平均粒子径が上記範囲内となる限り、異なる粒子径を持つ同種粒子又は、異なる粒子径を持つ異種粒子を複数種用いてもよい。
粒子(D)の平均粒子径は1μm以上150μm以下であるが、吸油性、吸水性および風合いをより向上させる観点から、好ましくは3μm以上130μm以下、より好ましくは5μm以上50μm以下である。
粒子(D)の平均粒子径は、レーザー回折式の粒子径測定装置で測定した値である。粒子径測定装置としては、具体的には島津製作所社製SALD−2000J、コールター社製コールターカウンター、日機装社製マイクロトラック粒度分布測定装置が好ましく用いられ、島津製作所社製SALD−2000Jがより好ましく用いられる。
粒子(D)の比重(相対密度)は、1.5以上10以下であるが、特に湿式法により合成紙を作製する場合は、2以上6以下がより好ましい。
なお、粒子(D)の比重(相対密度)は、カタログや文献(例えば、無機化学ハンドブック(技報堂出版))等に記載されている。
粒子(D)としては無機粒子が好ましく用いられる。無機粒子としては、例えば、ゼオライト、アパタイト、炭酸カルシウム、二酸化チタン、二酸化ケイ素、硫酸バリウム、酸化アルミニウム、リン酸ジルコニウム、珪酸カルシウム、カオリン、タルク、および酸化銅が挙げられる。これらの無機粒子をさらに有機変性させたものも無機粒子に含まれる。
また、粒子(D)としては、ふき取り紙に抗菌性を付与する観点から、銀イオンを担持した粒子が好ましく用いられる。銀イオンを担持した粒子としては、銀イオンを担持した無機粒子が好ましく、銀イオンを担持したゼオライトがより好ましい。
粒子(D)を用いる場合、合成紙の全質量に対する粒子(D)の含有量は、吸水性と吸油性をより向上させる観点および合成紙の風合いをより向上させる観点から、合成紙の全質量0.5質量%以上60質量%以下が好ましく、1質量%以上30質量%以下がより好ましく、2質量%以上20質量%以下がさらに好ましい。
(水酸基を有する水溶性高分子(E))
本発明における合成紙は、抄紙工程における泡立ちの防止や、ふき取り紙の風合い(手触り)の改善を目的として、水酸基を有する水溶性高分子(E)をさらに含んでもよい。このような水溶性高分子としては、例えば、メチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロースに代表される水溶性セルロース、および、ポリビニルアルコールが挙げられる。これらの中でもポリビニルアルコールが好ましい。さらにポリビニルアルコールとしては、そのケン化度が90%以上のポリビニルアルコールが好ましく、ケン化度が98%以上のポリビニルアルコールがより好ましい。ポリビニルアルコールの具体例としては、日本合成化学社製の商品名ゴーセノールの完全ケン化型や準完全ケン化型、日本酢ビ・ポバール社製の商品名J−ポバールの完全ケン化型や中間ケン化型等が挙げられる。
水酸基を有する水溶性高分子(E)を用いる場合、その添加量は、合成紙中に含まれる粒子(D)の全質量に対して、1質量%以上100質量%以下が好ましい。抄紙工程内での泡立ち防止の観点からは、1質量%以上50質量%以下がより好ましく、ふき取り紙の手触りの観点からは、50質量%以上100質量%がより好ましい。
水酸基を有する水溶性高分子(E)を用いる場合、合成紙の全質量に対するポリビニルアルコールの含有量は、0.5質量%以上60質量%以下が好ましく、3質量%以上20質量%以下がより好ましい。
(添加剤)
本発明における合成紙は、一般的に合成紙に添加される添加剤を含んでいてもよい。このような添加剤としては、乾燥紙力剤、湿潤紙力剤、歩留まり向上剤、凝結剤、凝集剤、分散剤、離型剤、消泡剤、殺菌剤などが挙げられる。
(合成紙の特性)
ふき取り紙の風合い、特に外見をより向上させる観点から、合成紙の坪量は、70g/m〜400g/mが好ましい。なお、合成紙は単層紙でも、抄き合わせ紙や、ヒートシールなどの接着による積層紙などの多層紙でもよい。多層紙の場合には、表層の坪量は70g/m〜400g/mが好ましい。また、エンボス深溝化の観点からは、坪量は150g/m〜400g/mが好ましい。
本発明における合成紙の王研法平滑度(JIS P 8155(2010)に準拠して測定した値)は10〜900秒であることが好ましい。さらに、風合いの観点より、合成紙の王研法平滑度は10〜100秒が好ましい。また、印刷適性の観点からは、50〜300秒が好ましく、より好ましくは150〜300秒である。さらに、フィルム様形状とする観点からは、300〜900秒が好ましい。
(合成紙の製造方法)
本発明における合成紙の製造方法に特に限定はなく、公知の方法を使用することができる。例えば、エアレイド法と呼ばれる乾式方式や、抄紙法と呼ばれる湿式方式などが挙げられる。なお、合成紙に風合いを出すためには、湿式方式が好ましい。
例えば、実験室で行う抄紙方法としては、JIS P 8222(2015)に準拠した、手すき紙を調製する方法が挙げられる。また、実験室での抄紙方法としては、動的抄紙方法を用いることもできる。
環境への配慮の観点から、抄紙工程内の水を意図的には排水しない完全クローズドシステムによる抄紙方法が好ましい。実験室では、複数回抄紙白水を再利用することにより、或いはクローズド状態の白水を理論上再現した疑似白水を用いることにより検証することができる。実験室での抄紙にあたっては、疑似白水を用いることが好ましい。
合成紙の乾燥温度は、使用するバインダー繊維(B)の初期融点以上の温度が好ましい。更には、風合いをより向上させる観点からは、バインダー繊維(B)の初期融点以上であり、且つポリオレフィン系合成パルプ(A)の融点以下の温度が好ましい。具体的には70℃〜135℃が好ましい。
本発明における合成紙の平滑度を所望の値とするために、さらに熱処理を行ってもよい。熱処理は、ドラム式ドライヤー、エアスルードライヤーなどを用いて行うことができる。また、熱処理可能なカレンダー加工機を用いて、熱処理をしながらカレンダー加工を実施してもよい。熱処理を実施する温度としては95℃〜165℃が好ましい。通常、熱処理は、乾燥温度よりも10℃〜55℃高い温度で実施する。
本発明における合成紙を製造するための実機設備に特に限定はない。例えば、長網抄紙機、円網抄紙機、円網短網コンビネーション抄紙機、傾斜ワイヤー式抄紙機などの抄紙機と、ヤンキードライヤー、エアスルードライヤー、ドラム式ドライヤーなどの乾燥機との組み合わせが挙げられるが、いずれの方法でも構わない。
<ふき取り紙の製造方法>
本発明のふき取り紙の製造方法は特に限定されない。本発明における合成紙をそのままで、または成形してふき取り紙とすることができる。
<ふき取り紙の用途>
本発明のふき取り紙は、油や水などの汚れをふき取る用途、例えばちり紙、ティッシュペーパー、キッチンペーパー、あぶらとり紙、トイレットペーパー、ペーパータオルなどの従来公知のふき取り紙として用いることができる。
特に、本発明のふき取り紙は、風合い、吸水性、及び吸油性に優れるため、ティッシュペーパー、キッチンペーパー、あぶらとり紙などの吸水性及び吸油性が求められる用途に好ましく用いられる。
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に何ら限定されるものではない。
(ポリオレフィン系合成パルプ(A))
本発明におけるポリオレフィン系合成パルプ(A)として、下記のとおり合成パルプ(A1)および(A2)を製造した。また、下記のとおり比較となる合成パルプ(a1)を準備した。
(合成パルプ(A1)および(A2)の製造)
じゃま板を具備した80リットル容器の攪拌機付きオートクレーブ中に、n−ヘキサン20リットル(23℃)、水20リットル(23℃)、メルトフローレート(MFR;ASTM D1238、190℃、2.16kg荷重)が4.0のポリエチレン樹脂1,000g、ポリビニルアルコール[PVA、ケン化度99%、4%水溶液年度(20℃)4.6〜6.0mPa・s、商品名ゴーセノールNL−05、日本合成化学工業社製]30gを投入した。回転数900rpmで撹拌しながら、混合液温が145℃になるまで昇温した。その後、混合液を145℃に保持して、更に30分間撹拌を続けた。次いで、この
懸濁液をオートクレーブに取り付けられた直径3mm、長さ20mmのノズルよりパイプを経て、窒素雰囲気下、かつ−400mmHgの圧力下にあるドラム内に噴出(フラッシュ)させて繊維状物を得た。
得られた繊維状物をさらに受容器内で3g/リットル濃度の水スラリーとした後、直径12インチのディスク型リファイナーを用いて、その繊維長およびカナディアン標準濾水度(CSF)を調整し、合成パルプ(A1)および(A2)を得た。製造した合成したパルプの物性を下記表1に示した。
(合成パルプa1)
比較となる合成パルプ(a1)としては、三井化学社製の商品名SWP「E400」を用いた。合成パルプa1の物性も下記表1に示した。
Figure 0006971728
(バインダー繊維(B))
バインダー繊維(B)として、以下のバインダー繊維を準備した。
B1:ダイワボウポリテック社製ポリプロピレン/ポリエチレン芯鞘繊維(鞘部融点100℃、繊維長5mm)
(天然パルプ(C))
天然パルプ(C)として、以下の天然パルプを準備した。
C1:三井物産パッケージング社製針葉樹クラフトパルプ(NBKP)(平均繊維長4mm)
C2:三井物産パッケージング社製マニラ麻パルプ(アバカパルプ)(平均繊維長10mm)
(粒子(D))
粒子(D)として、市販の粒子をそのままで又は篩分けすることにより、特定の平均粒子径の粒子を調整して用いた。平均粒子径は、島津製作所社製SALD−2000Jにて測定した。かっこ書き中の平均粒子径は、市販の粒子を篩分けした後の平均粒子径である。
D1: 日東粉化工業社製ゼオライト(商品名:日東ゼオライト#150)(平均粒子径100μm、比重2.1)
D2: 日東粉化工業社製重質炭酸カルシウム(商品名:NN#200)(平均粒子径14.8μm、比重2.7)
D3: シナネンゼオミック社製抗菌粒子、商品名ゼオミックLJ210N(平均粒子径40μm、比重2.1、銀イオンを担持したゼオライト粒子)
なお、上記粒子の比重はいずれも製造社の公表しているカタログ値である。
(水酸基を有する水溶性高分子(E))
水酸基を有する水溶性高分子(E)として、以下の水酸基を有する水溶性高分子を準備した。なお、使用にあたり、ポリビニルアルコールを2%の水溶液とし、粒子(D)と予め混合して使用した。
E1:日本合成化学社製ポリビニルアルコール(商品名:ゴーセノールNL−05)
<実施例1>
原料の全質量に対して、合成パルプ(A1)を75.5質量%、バインダー繊維(B1)を9.5質量%、天然パルプ(C1)を4.5質量%、粒子(D1)を4.5質量%、さらに内添用添加剤として、乾燥紙力剤として星光PMC社製の「商品名:DA4112」を1質量%、湿潤紙力剤として星光PMC社製の「商品名:WS4020」を1質量%、分散剤として明成化学工業社製の「商品名:VS−87E」を2質量%、内添離型剤として日華化学社製の「商品名:サントールKL」を2質量%用い、実験室用角型手抄きシートマシンで、坪量350g/mの手抄き紙を作製した。作製した手抄き紙を、ロータリードライヤーを用いて温度110℃で乾燥し、さらに熱処理装置を用いて温度140℃で熱処理を行うことにより、合成紙(P1)を得た。
<実施例2〜6、比較例1〜5>
合成パルプ(A)、バインダー繊維(B)、天然パルプ(C)、および粒子(D)の種類および配合量を表2に記載のとおり変更した以外は実施例1と同様にして、実施例2の合成紙(P2)〜実施例6の合成紙(P6)、および比較例1の合成紙(p1)〜比較例5の合成紙(p5)をそれぞれ作製した。
上記実施例1〜6および比較例1〜5で得られた合成紙(P1)〜(P6)及び(p1)〜(p5)を下記評価方法で評価し、その結果を表2に示した。
<評価方法>
坪量: JIS P 8124(2011)に規定する方法で測定した。
風合い: 手による官能試験方法で評価した。評点は5点法であり、5点が天然パルプから形成した紙に最も近く優れており、1点が天然パルプから形成した紙に最も遠く劣っている。実用可能と判断した場合は3点以上の評点とした。3人のパネラーにより評価し、最も多かった評価点を評価結果とした。最も多かった評価点が複数ある場合は、該複数の評価点の平均値を評価結果とした。
エンボス適性: JIS B 0651(2001)に規定する表面粗さ試験機で模様紙のエンボス部分の深さを測定し、さらに模様の鮮明さを目視で評価し、5点法で採点した。5点が最も優れ、1点が最も劣る。実用可能と判断した場合は3点以上の評点とした。3人のパネラーにより評価し、最も多かった評価点を評価結果とした。最も多かった評価点が複数ある場合は、該複数の評価点の平均値を評価結果とした。
吸油性の評価: 得られた合成紙を10cm角に切り出し、重量(浸漬前重量)を測定し、市販のサラダ油に10分間浸漬し、取り出した後、表面の油を拭い取り、重量(浸漬後重量)を測定し、下記式より油吸着量(%)を計算した。なお、一の位で四捨五入した。
油吸着量(%)=浸漬後重量/浸漬前重量×100
油吸着量(%)が350%以上であれば吸油性に優れると判断できる。
吸水性の評価: 得られた合成紙を10cm角に切り出し、重量(浸漬前重量)を測定し、水道水に10分間浸漬し、取り出した後、表面の水を拭い取り、重量(浸漬後重量)を測定し、下記式より水吸着量(%)を計算した。なお、一の位で四捨五入した。
水吸着量(%)=浸漬後重量/浸漬前重量×100
水吸着量(%)が350%以上であれば吸水性に優れると判断できる。
Figure 0006971728
表2中、「−」は、該当する成分を含まないことを意味する。また、「自立した紙を維持できず」とは、持ち上げると崩れてしまい、評価できなかったことを意味する。
表2の結果から明らかなように、カナディアン標準濾水度(CSF)が、100ml以上520ml以下であるポリオレフィン系合成パルプ(A)と、バインダー繊維(B)と、繊維長が1mm以上80mm以下である天然パルプ(C)とを含み、ポリオレフィン系合成パルプ(A)の含有量が20質量%以上である実施例1〜6の合成紙(P1〜P6)は、風合い、吸油性および吸水性に優れていた。また、エンボス適正にも優れていた。特に水溶性高分子(E)を含む実施例5の合成紙(P5)は、水溶性高分子(E)を含まない実施例1の合成紙(P1)と比べて、より風合いに優れていた。
また、粒子(D)として、銀イオンを担持したゼオライト粒子を含む実施例6の合成紙(P6)は、JIS L 1902(2015)に従い黄色ブドウ球菌の生菌数試験を行ったところ菌は検出させず、抗菌性を有していることが確認できた。
一方、ポリオレフィン系合成パルプとしてCSFが520mlを超えるポリオレフィン系合成パルプ(a1)を含むこと以外は実施例1と同様の組成からなる比較例1の合成紙(p1)、天然パルプ(C)を含まないこと以外は実施例1と同様の組成からなる比較例2の合成紙(p2)は、吸水性および風合いに劣っていた。
バインダー繊維(B)を含まない組成からなる合成紙(p3)の製造を試みた比較例3においては、自立した合成紙を作製することはできなかった。
ポリオレフィン系合成パルプ(A)の含有率が20%未満であり、かつ、バインダー繊維(B)を含まない比較例4の合成紙(p4)は、吸油性に劣っていた。
ポリオレフィン系合成パルプ(A)の配合量が20%未満である比較例5の合成紙(p5)は、吸油性および吸水性に劣っていた。
本発明によれば、手についた油汚れをスッキリふき取れるだけでなく、ドレッシングのような水と油両方の性質を持つ汚れもふき取れる、紙風合いを再現した合成紙によるふき取り紙を提供することができる。

Claims (5)

  1. 合成紙からなるふき取り紙であって、
    前記合成紙は、カナディアン標準濾水度が、100ml以上520ml以下であるポリオレフィン系合成パルプ(A)と、バインダー繊維(B)と、繊維長が1mm以上80mm以下である天然パルプ(C)と、平均粒子径が1μm以上150μm以下であり、かつ、比重が1.5以上10以下である粒子(D)と、を含み、
    前記合成紙の全質量に対する前記ポリオレフィン系合成パルプ(A)の含有量が、20質量%以上であるふき取り紙。
  2. 前記バインダー繊維(B)が、融点が70℃以上130℃以下の繊維を含む、請求項1に記載のふき取り紙。
  3. 前記バインダー繊維(B)が、ポリエチレン系繊維、低融点ポリエステル繊維、アクリル系繊維、ポリエチレン/ポリプロピレン複合繊維、ポリエチレン/ポリエチレンテレフタレート複合繊維、およびポリエステル複合繊維からなる群より選ばれる少なくとも1種を含む、請求項1または請求項2に記載のふき取り紙。
  4. 前記粒子(D)が、ゼオライト、アパタイト、炭酸カルシウム、二酸化チタン、二酸化ケイ素、硫酸バリウム、酸化アルミニウム、リン酸ジルコニウム、珪酸カルシウム、カオリン、タルク、および酸化銅からなる群より選ばれる少なくとも1種を含む、請求項1〜3のいずれか一項に記載のふき取り紙。
  5. 前記粒子(D)は、銀イオンを担持した粒子を含む、請求項1〜4のいずれか一項に記載のふき取り紙。
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