近年、デジタル方式のワイヤレスマイクの研究が精力的に行われており、特に、OFDM方式ラジオマイク(ワイヤレスマイク)の実用化が進められている(非特許文献1)。OFDM方式ラジオマイクは、OFDM信号がガードインターバルを有しているため、マルチパスフェージングによる受信品質の低下を防止することができ、また、遅延時間も小さく、高品質な送受信が可能なラジオマイクである。しかしながら、OFDM方式ラジオマイクも、送信信号が特定周波数の外部パルス(例えば、レーダーパルス等)の干渉を受けたり、想定以上に電波伝搬の条件が悪くなったりしたときには、ノイズが発生することがある。
このような電波伝搬条件の劣化の影響を回避し、信号の伝送品質低下を防止するために、周波数ダイバーシティを利用することが提案されている(特許文献1)。これは、送信側で音声信号をOFDM方式により変調し、複数の周波数で同じOFDM信号を送信するとともに、受信側では、異なる周波数で得たOFDM受信信号のうち、品質の良い信号を選択・合成し、音声信号に変換するものである。
図10は、周波数ダイバーシティを利用した従来のOFDM方式ラジオマイクの送信装置のブロック図である。送信装置200は、OFDM変調部210、周波数変換部231,232、合成部240、電力増幅部250、及び、アンテナ260を備える。次に、各構成要素について説明する。
OFDM変調部210は、音声信号(単に「音声」ということがある。)が入力され、これを符号化及び変調してOFDM信号を生成し、周波数変換部231,232に複素ベースバンドの信号として出力する。
周波数変換部231,232は、OFDM変調部210で生成されたOFDM信号を直交変調した後、所定の送信周波数に変換する。ここでは、信号を複数の周波数(f1、f2)で送信できるように、送信(無線)周波数f1に変換する周波数変換部(f1)231と、送信(無線)周波数f2に変換する周波数変換部(f2)232とを備えている。なお、3つ以上の周波数で送信する場合は、それぞれの周波数に対応する周波数変換部を準備すればよい。それぞれの周波数変換部231,232からの信号は、ともに合成部240に出力される。
合成部240は、それぞれの周波数変換部231,232で、送信周波数(f1、f2)に変換された信号を合成(加算)し、電力増幅部250に出力する。
電力増幅部250は、合成された送信信号を電力増幅して、送信アンテナ260から送信する。このようにして、送信アンテナからは、1つの音声信号が例えば1200MHz帯の2種類の無線周波数(f1、f2)の電波で送信される。
図11は、OFDM方式送信装置のOFDM変調部210の構成例を示すブロック図である。OFDM変調部210は、A/D(アナログ/デジタル)変換部211、誤り検出符号化部212、誤り訂正符号化部213、キャリア変調部214、周波数インターリーブ部215、時間インターリーブ部216、OFDMフレーム構成部217、IFFT(Inverse Fast Fourier Transform)部220、及び、ガードインターバル付加部221とを備える。
A/D変換部11は、マイクから入力されるアナログの音声信号をデジタル信号に変換し、誤り検出符号化部212に出力する。音声信号のサンプリングは、サンプリング周波数として、例えば、48kHz又は32kHzが利用される。量子化ビット長としては、例えば24bitや16bitが利用される。
誤り検出符号化部212は、データを所定のブロック長のブロックに区切り、ブロックごとに誤り検出符号を付加する。例えば、CRC(Cyclic redundancy check)符号等により、ブロック符号化を行って誤り検出符号が付加されたデジタル音声信号を生成し、誤り訂正符号化部213に出力する。これは、受信側で誤り検出を行い、必要に応じて、誤ったブロックに対してコンシールメント(データ代替)やデータ削除を行うためである。なお、符号としてRS(Reed-Solomon)符号、BCH符号、差集合巡回符号等の誤り訂正符号を用いることもできる。
誤り訂正符号化部213は、誤り検出符号化部212から入力される信号(誤り検出符号が付加されたデジタル音声信号)に対して誤り訂正符号化を行う。誤り訂正符号化には様々なものがあるが、例えば、畳み込み符号化を行い、符号化されたデータ(内符号)をキャリア変調部214に出力する。
キャリア変調部214は、その内部に図示しないビットインターリーブ部とマッピング部を備えており、誤り訂正符号化部213から入力される信号に対し、ビットローテーション等の時間遅れを生じさせないビット単位でのデータの並び替え(ビットインターリーブ)を行い、その後、キャリアごとに所定の変調方式(変調多値数M)に応じてIQ平面へのマッピングを行い、キャリア変調信号(データキャリアシンボル)を生成し、周波数インターリーブ部215に出力する。
周波数インターリーブ部215は、特定の搬送波が妨害を受けた場合の耐性を向上させるために、本来隣接しているシンボルのキャリア番号を並び替え、データを周波数的に分散するものである。周波数的に分散するように並び替えたデータを時間インターリーブ部216に出力する。
時間インターリーブ部216は、特定時間に各シンボルが妨害を受けた場合の耐性を向上させるために、各キャリアのシンボルを時間方向、すなわち、シンボルの並び順方向に並び替え、データを時間的に分散するものである。時間的に分散するように並び替えたデータをOFDMフレーム構成部217に出力する。
OFDMフレーム構成部217は、時間インターリーブ部216から入力される信号に対して、パイロット信号218及びTMCC(Transmission and Multiplexing Configuration Control)信号219を挿入して配置することによりOFDMセグメントフレームを生成し、IFFT部220に出力する。パイロット信号としては、分散して配置されるSP(Scattered Pilot)信号や、シンボル方向に連続して配置されるCP(Continual Pilot)信号がある。また、TMCC信号219は、制御情報を伝送するための信号である。
IFFT部220は、OFDMフレーム構成部217から入力されるOFDMセグメントフレームに対して、IFFT(逆高速フーリエ変換)処理を施して有効シンボル信号を生成し、ガードインターバル付加部221に出力する。
ガードインターバル付加部221は、IFFT部220から入力される有効シンボル信号の先頭に、有効シンボル信号の後半部分をコピーしたガードインターバルを挿入する。ガードインターバルは、OFDM信号を受信する際にシンボル間干渉を低減させるために挿入されるものであり、マルチパス遅延波の遅延時間がガードインターバル長を超えないように設定される。ガードインターバル付加部221の出力が、OFDM変調部210の出力であるOFDM信号(OFDM送信信号)となる。
このように生成されたOFDM信号が、周波数変換されて、複数の周波数で送信装置から送信される。
次に、受信装置について説明する。図12は、周波数ダイバーシティを利用した従来のOFDM方式ラジオマイクの受信装置のブロック図である。受信装置300は、複数系統のアンテナ311,312、周波数コンバータ313,314、FFT(Fast Fourier Transform)復調部321,322、信号品質評価部331,332、比較・選択・合成部340、及び、音声再生部350を備える。ここで、アンテナ311、周波数コンバータ313、FFT復調部321、及び信号品質評価部331は、周波数f1で送信されたOFDM信号を処理する系統であり、アンテナ312、周波数コンバータ314、FFT復調部322、及び信号品質評価部332は、周波数f2で送信されたOFDM信号を処理する系統である。次に、各構成要素について説明する。
アンテナ311,312は、対応する周波数(f1、f2)の無線周波数で送信されたOFDM信号をそれぞれ受信する。
周波数コンバータ313,314は、アンテナ311,312で受信されたそれぞれの無線周波数(f1、f2)の信号を所定の周波数に周波数変換する。周波数変換された信号は、FFT復調部321,322に出力される。
図13は、OFDM方式受信装置のFFT復調部321,322の構成例を示すブロック図である。FFT復調部321,322のそれぞれは、直交復調部323、窓処理部324、及びFFT部325を備える。
直交復調部323は、周波数変換された受信信号を直交復調し、元のOFDM信号を生成し、窓処理部324に出力する。
窓処理部324は、ガードインターバル除去部とも呼ばれ、OFDM信号からガードインターバルを除去して、有効シンボル信号を生成し、FFT部に出力する。
FFT部325は、有効シンボル信号に対してFFT(高速フーリエ変換)処理を施す。
このように構成されたFFT復調部321,322の出力信号は、それぞれ、信号品質評価部331,332に出力される。
図12に戻って、信号品質評価部331,332は、FFT処理後の信号に対して、MER(Modulation Error Ratio :変調誤差比)や雑音電力等をそれぞれ算出し、FFT処理後の信号とともに、その信号の品質を示すデータとして比較・選択・合成部340に出力する。
比較・選択・合成部340は、信号品質評価部331,332から出力された信号品質データとしてのMERや雑音電力等を比較し、各系統を経たFFT処理後の信号から品質の良い信号を選択し、必要に応じて信号の合成を行う。比較・選択・合成部340により選択又は合成された信号は、音声再生部350に出力される。
図14は、OFDM方式受信装置の音声再生部350の構成例を示すブロック図である。音声再生部350は、時間デインターリーブ部351、周波数デインターリーブ部352、キャリア復調部353、誤り訂正復号部354、誤り検出復号部355、及び、D/A(デジタル/アナログ)変換部356を備える。
音声再生処理では、まず、図示しないパイロット信号除去部で、ARIB(Association of Radio Industries and Business)標準規格に基づいて予め送信側で離散的に埋め込まれたパイロット信号を除去し、データシンボルを抽出する。
時間デインターリーブ部351は、比較・選択・合成部340で選択又は合成された信号に対して、時間デインターリーブ処理を行い、各キャリアで時間方向に並び替えられたデータシンボルの順を元に戻す。
周波数デインターリーブ部352は、時間デインターリーブ部351からの信号に対して、周波数デインターリーブ処理を行い、周波数的に並び替えられたデータシンボルの配列を元に戻す。
キャリア復調部353は、周波数デインターリーブ部352から入力される信号に対して、キャリアごとに復調を行い、誤り訂正復号部354に出力する。キャリア復調部353は、例えば、その内部に図示しないデマッピング部とビットデインターリーブ部を備えており、推定された伝送路特性に基づいて、図示しないデマッピング部でデータシンボル(I信号値とQ信号値)からビット単位のデータに復調する。また、図示しないビットデインターリーブ部において、送信側のキャリア変調部214においてビット単位で並べ替えたデータを、元の配列に戻す。
誤り訂正復号部354は、キャリア復調部353から入力される信号を誤り訂正復号処理する。誤り訂正復号処理としては、例えば、ビタビ復号等を行うことができ、他の誤り訂正復号処理であっても良い。
誤り検出復号部355は、送信側で付加した誤り検出符号を利用して、誤り訂正又は誤り検出を行う。誤り検出処理の結果、誤りなしとされたデータをその後の音声信号処理に用い、誤っていると判定されたデータは、削除する(音声信号をミュートする)か、何らかの代替データとする。また、伝送路において生じた誤りが訂正可能であれば、誤り訂正を行っても良い。誤り訂正又は誤り検出されたデータは、D/A変換部356に出力する。
D/A変換部356は、処理されたデジタルデータを、デジタル/アナログ変換し、音声信号を出力する。
以上が、従来の周波数ダイバーシティを用いた受信装置である。
以下、本発明の実施の形態について、図を用いて説明する。
図1に、本発明の周波数ダイバーシティを利用したOFDM方式ラジオマイクの受信装置の基本的な構成例のブロック図を示す。
送信側では、マイク201から入力された音声(音声信号)を送信装置(OFDM方式ラジオマイク送信機)200により、OFDM変調して、例えば1200MHz帯の2種類の周波数f1,f2の電波で送信する。この送信装置としては、図10に示した従来の周波数ダイバーシティの送信装置を用いることができる。
ここでは、1200MHz帯の電波として、1240MHzから1260MHzの周波数範囲の中に、約600KHzの帯域幅を有するOFDM方式の送信信号が、複数の異なる中心周波数(f1,f2)で送信される状況を例として説明する。
受信側では、まず、受信アンテナ111,112で、この1200MHz帯の2種類の周波数の電波を受信し、受信アンテナ111,112の直近に接続された周波数コンバータ121,122により200MHz帯の中間周波数(IF:Intermediate Frequency )信号に変換する。この受信アンテナ111,112及び周波数コンバータ121,122は、汎用品を用いることができる。
図1の受信アンテナ111,112は、それぞれが複数種類の周波数の電波を受信可能であり、周波数コンバータ121,122は、複数種類の周波数を含む1200MHz帯の電波を200MHz帯の中間周波数に変換する。したがって、周波数コンバータ121,122は、それぞれが、f1で送信されたOFDM信号とf2で送信されたOFDM信号を含む200MHz帯のIF信号を出力する。f1で送信され中間周波数に変換されたOFDM信号(f1(IF))とf2で送信され中間周波数に変換されたOFDM信号(f2(IF))は、例えば、数十〜数百m離れた場所に設置される2波対応OFDM受信機130へと供給される。なお、IF信号に変換してケーブル伝送することで、ケーブルによる損失を低減することができる。
なお、受信アンテナと周波数コンバータは1系統でも複数の周波数に対応可能であるが、本実施の形態では、空間ダイバーシティを利用するために、2系統の受信アンテナ及び周波数コンバータを用いている。
2波対応OFDM受信機(複数波対応OFDM受信機)130は、1台の受信機で互いに周波数が異なる2波の電波を受信可能な構成となっており、中間周波数に変換されたOFDM信号(f1(IF)、f2(IF))を入力として、復調・復号処理を行い、周波数f1のOFDM信号で送信された音声信号と周波数f2のOFDM信号で送信された音声信号を、それぞれ音声(f1)、音声(f2)として出力する。2波対応OFDM受信機130の構成の詳細は後述する。
周波数ダイバーシティ音声処理機180は、2波対応OFDM受信機130から出力された2つの音声信号(音声(f1)、音声(f2))を入力とし、この2つの音声信号を合成又は選択して、品質の高い音声信号を出力する。なお、入力される2つの音声信号は異なる周波数の電波で送信されたものであるから、この音声処理は、周波数ダイバーシティを行っていることに相当する。周波数ダイバーシティ音声処理機180の構成の詳細は後述する。
本発明の受信装置100は、2波対応OFDM受信機130と、周波数ダイバーシティ音声処理機180とを備える。ここで、2波対応OFDM受信機130と周波数ダイバーシティ音声処理機180は、一つの装置として一体形成しても良いし、それぞれ独立した機器として構成しても良い。
次に、2波対応OFDM受信機130の構成について説明する。図2に、2波対応OFDM受信機130の構成例のブロック図を示す。図2の2波対応OFDM受信機(OFDM方式ラジオマイク受信機)130は、2つのIF信号入力を有しており、周波数選択部141〜144、FFT復調部151〜154、サブキャリアダイバーシティ合成部161,162、音声再生部171,172を備える。
入力端子に接続する周波数選択部141〜144には、それぞれ、中間周波数に変換されたOFDM信号(f1(IF)、f2(IF))が入力される。各周波数選択部141〜144は、中間周波数(約200MHz)の信号を信号処理用周波数に変換する周波数変換機(図示せず)と、1種類の周波数帯域(ここではf1(IF)又はf2(IF))を選択するためのバンドパスフィルタ(図示せず)が含まれており、特定の周波数のOFDM信号を選択して出力する。
例えば、周波数選択部141は、第1の入力端子に接続され、入力されたIF信号から、周波数f1で送信されたOFDM信号を選択し、FFT復調部151へ出力する。また、周波数選択部142は、第1の入力端子に接続され、入力されたIF信号から、周波数f2で送信されたOFDM信号を選択し、FFT復調部152へ出力する。第2の入力端子に接続された周波数選択部143,144も同様である。なお、各周波数選択部は、送信側からの任意の送信周波数に対応することができるように、選択可能な無線周波数(f1,f2)を可変にすることが望ましい。
FFT復調部151〜154は、図12の受信装置300のFFT復調部321,322と基本的に同等の構成を有する。FFT復調部151〜154は、それぞれ図13に示した、直交復調部323、窓処理部324、及びFFT部325を備える。
既に説明したように、直交復調部323は、周波数変換された受信信号を直交復調して、元のOFDM信号を生成する。窓処理部324は、OFDM信号からガードインターバルを除去して、有効シンボル信号を生成する。FFT部325は、有効シンボル信号に対してFFT(高速フーリエ変換)処理を施す。
すなわち、FFT復調部151は、第1のアンテナ111で受信された周波数f1で送信されたOFDM信号に基づく出力信号(データキャリアシンボル)を、サブキャリアダイバーシティ合成部161に出力する。また、FFT復調部152は、第1のアンテナ111で受信された周波数f2で送信されたOFDM信号に基づく出力信号を、サブキャリアダイバーシティ合成部162に出力する。なお、本実施例では受信性能を高めるために2つのアンテナで空間ダイバーシティを行っているが、空間ダイバーシティを行わない場合は、FFT復調部151,152の出力信号を直接、音声再生部171,172に送っても良い。
同様に、FFT復調部153は、第2のアンテナ112で受信された周波数f1で送信されたOFDM信号に基づく出力信号を、サブキャリアダイバーシティ合成部161に出力する。また、FFT復調部154は、第2のアンテナ112で受信された周波数f2で送信されたOFDM信号に基づく出力信号を、サブキャリアダイバーシティ合成部162に出力する。
サブキャリアダイバーシティ合成部161,162は、第1のアンテナ111で受信されたOFDM信号に基づいて生成された信号(データキャリアシンボル)と第2のアンテナ112で受信されたOFDM信号に基づいて生成された信号をサブキャリアごとにダイバーシティ合成を行うことで、受信品質の劣化を低減しつつ品質の高い信号を得る。
すなわち、サブキャリアダイバーシティ合成部161は、周波数f1で送信されたOFDM信号について、第1のアンテナ111で受信された信号と第2のアンテナ112で受信された信号とを合成し、合成された信号を、音声再生部171に出力する。同様に、サブキャリアダイバーシティ合成部162は、周波数f2で送信されたOFDM信号について、第1のアンテナ111で受信された信号と第2のアンテナ112で受信された信号とを合成し、合成された信号を、音声再生部172に出力する。
音声再生部171,172は、図12の受信装置300の音声再生部350と基本的に同等の構成を有する。音声再生部171,172のそれぞれは、図14に示した、時間デインターリーブ部351、周波数デインターリーブ部352、キャリア復調部353、誤り訂正復号部354、誤り検出復号部355、及び、D/A(デジタル/アナログ)変換部356を備える。
時間デインターリーブ部351は、サブキャリアダイバーシティされた信号に対して、各キャリアで時間方向に並び替えられたデータシンボルの順を元に戻す。そして、周波数デインターリーブ部352は、周波数的に並び替えられたデータシンボルの配列を元に戻す。また、キャリア復調部353は、キャリアごとに復調を行い、デマッピング処理によりデータシンボル(I信号値とQ信号値)からビット単位のデータに復調し、ビット単位で並べ替えたデータを、元の配列に戻す。誤り訂正復号部354は、キャリア復調部353から入力される信号を例えば、ビタビ復号等の誤り訂正復号処理し、誤り検出復号部355は、送信側で付加した誤り検出符号を利用して、誤り訂正又は誤り検出を行う。誤り検出処理の結果、誤りなしとされたデータをその後の音声信号処理に用い、誤っていると判定されたデータは、削除する(またはミュートする)か、何らかの代替データとする。さらに後述するように、誤り検出復号部355で得られた誤り検出信号(どのデータブロックに誤りがあるかを示す信号)を後の周波数ダイバーシティ音声処理機180で用いることもできる。D/A変換部356は、処理されたデジタルデータを、デジタル/アナログ変換し、音声信号を出力する。
2波対応OFDM受信機130は、以上のように構成され、中間周波数に変換されたOFDM信号(f1(IF)、f2(IF))を入力として、音声(f1)、音声(f2)を出力する。なお、本実施例では、2波対応OFDM受信機130は、周波数ダイバーシティを行う受信装置の一部として構成されているが、周波数f1のOFDM信号で送信された音声信号と周波数f2のOFDM信号で送信された音声信号を異なるものとすれば、2波対応のOFDMラジオマイク受信機として、独立した2つの音声(f1)、音声(f2)を出力端子から出力することができる。すなわち、2波対応OFDM受信機130は、2つのラジオマイク送信機から異なる周波数で送信された2つのOFDM信号(2つの音声)を受信する受信機としても、利用することができる。
なお、図1、図2においては、2つの周波数(f1,f2)を受信する2波対応の周波数ダイバーシティ受信を行っているが、これは一例であって、受信する周波数の数を、3波、或いは4波対応の周波数ダイバーシティ受信とすることも可能であり、求める音声品質との関係で、適切な数の周波数を選択すればよい。すなわち、2波対応OFDM受信機を、3波又は4波等に対応する複数波対応OFDM受信機としても良く、また、2波対応OFDM受信機を、複数台並列に使用しても良い。
次に、図1の周波数ダイバーシティ音声処理機180の構成について説明する。図3に、周波数ダイバーシティ音声処理機の第1の構成例のブロック図を示す。
周波数ダイバーシティ音声処理機181は、内部に合成部(加算回路)182を備えており、2つの入力である、音声入力(f1)と音声入力(f2)とを合成(加算)して、1つの音声信号として出力する。なお、音声入力(f1)、音声入力(f2)は、2波対応OFDM受信機130の出力信号であり、それぞれ、周波数f1のOFDM信号で送信された音声信号、及び周波数f2のOFDM信号で送信された音声信号である。
周波数ダイバーシティ音声処理機181は、簡単な回路構成で実現できるという利点がある。しかし単純に加算した場合、伝送誤りによってミュートされた信号がそのまま加算されるので音声にひずみが残るという課題もある。
周波数ダイバーシティ音声処理機181の上記の課題を回避するものとして、図4に、周波数ダイバーシティ音声処理機の第2の構成例のブロック図を示す。周波数ダイバーシティ音声処理機183は、レベル検出部184と、切り換え部185とを備えている。
レベル検出部184は、入力された各音声信号のレベル検出を行い、どちらの音声入力の振幅レベルが高いか示す判定信号を切り換え部185に出力する。
切り換え部185は、レベル検出部184から入力された判定信号に基づいて、音声入力(f1)と音声入力(f2)のうち、振幅レベルの高い方の信号を選択して、音声出力として出力する。
周波数ダイバーシティ音声処理機183は、時間毎に振幅レベルの高い方の音声信号を選択するから、一方の音声信号に伝送誤りによってミュートされた部分があったとしても、その部分は他方の音声信号が出力され、音声出力にひずみが生ずることはない。
さらにひずみの無い高品質の音声信号を出力するものとして、図5に、周波数ダイバーシティ音声処理機の第3の構成例のブロック図を示す。周波数ダイバーシティ音声処理機186は、ミュート区間検出部(ノイズ区間検出部)187と、切り換え部185とを備えている。
ミュート区間検出部187は、2波対応OFDM受信機130から出力される誤り検出信号を入力とし、音声入力(f1)と音声入力(f2)の信号誤りが発生した区間(データブロック)をミュート区間(又は、ノイズ区間)として検出し、検出信号を切り換え部185に出力する。なお、誤り検出信号は、2波対応OFDM受信機130の音声再生部171,172(図2)の誤り検出復号部355(図14)で生成される信号を利用することができる。誤り検出復号部355でデータに誤りが検出された場合に、その結果を誤り検出信号として出力し(図示せず)、ミュート区間検出部187に入力する。
切り換え部185は、ミュート区間検出部187からの検出信号に基づいて、一方の音声信号にミュート区間(ノイズ区間)が検出された場合には、音声入力(f1)と音声入力(f2)のうち、ひずみ(ノイズ)の発生していない他方の音声のみを音声出力として出力する。
この結果、2種類の周波数で送信された音声信号から、最終的にひずみのない1つの音声を出力することが可能となるため、電波伝搬の条件が悪いときの瞬断やノイズを減らすことができる。
次に、図5の周波数ダイバーシティ音声処理機186において、より精度良くミュート区間(ノイズ区間)を検出するために、送受信データを改良した送信装置及び受信装置について説明する。
図6は、精度良くミュート区間を検出するための誤り検出符号化を行う、送信装置のOFDM変調部210(図10)の構成例を示すブロック図である。
図6のOFDM変調部は、A/D(アナログ/デジタル)変換部211、優先ビット誤り検出符号化部222、誤り訂正符号化部213、キャリア変調部214、周波数インターリーブ部215、時間インターリーブ部216、OFDMフレーム構成部217、IFFT部220、及び、ガードインターバル付加部221を備える。図11のブロック図との相違は、誤り検出符号化部212が優先ビット誤り検出符号化部222に置き換わった点であり、他の構成要素は図11と同じである。以下、優先ビット誤り検出符号化部222の処理について説明し、他の構成要素の説明は省略する。
図6の優先ビット誤り検出符号化部222は、大きなノイズの原因となるデジタル音声信号のデータ誤りを高い精度で発見することができる誤り検出を行うものである。
従来の送信装置においても、OFDM変調部210(図11)に誤り検出符号化部212を備えており、誤り検出符号を利用して、誤りを含む音声信号を選別することにより、ノイズの発生を防ぐことができる。しかしながら、誤り検出符号を用いた場合でも、誤りデータ量が誤り検出符号の検出能力を超えてしまったときなど、誤りが残存しているのに「誤りなし」と判定してしまう「誤り見逃し」が発生することがある。
まず、デジタル音声信号に「誤り見逃し」が生じた場合の音声信号について、図9に基づいて説明する。図9は、4ビットPCMデータにおける1ビットの誤りの影響を示す図である。説明を簡略にするため、図9は、音声信号に対する情報源符号化として、1サンプルあたり4ビットのリニアPCM(pulse code modulation)を行う例を示している。実線10は、元の音声波形を示しており、黒丸(●)は4ビットで量子化した、正しいデジタル音声信号を示している。正しいデジタル音声信号から生成されたアナログ音声信号は、一点鎖線11のように、元の音声波形をほぼ再生できる。
図9の4番目の音声サンプルにおいて、1010というビット列(A)を割り当てたとする。この4ビットのうち、最初のビット(上位1ビット)が誤ってしまった場合は0010というビット列(B)となり、量子化のレベル、すなわち音の大きさが大きく異なった音声サンプルとして復元されてしまい、アナログ音声信号は、破線12のように、大きなノイズを生むこととなる。
反対に、最後のビット(下位1ビット)が誤った場合は1011というビット列(C)となるが、量子化のレベルは大きくは異ならないため、アナログ音声信号には、二点鎖線13のように小さなノイズとしてしか現れない。小さなノイズであれば、人に与える不快感は小さい。
したがって、図6の優先ビット誤り検出符号化部222は、大きなノイズを発生させる誤りの検出精度を向上させるために、誤り検出符号化を行う対象を、影響度の大きい優先ビットに限定するものである。
図8に、優先ビット誤り検出符号化の概要を示す。ここでは、音声信号の1サンプルに対して22ビットのA/D変換(情報源符号化)を行い、4ビットの誤り検出符号を付加するビット構成を例として説明するが、各ビット数はこれに限られるものではない。
本実施例では、デジタル音声信号のうち、誤りが生じた場合(誤りが残ったとき)の影響度が大きい順に所定数のビットを優先ビットとし、この優先ビットを誤り検出符号化の対象とする。一般に、影響度が大きいとは、アナログ音声信号の出力レベルに寄与する度合いが大きいことといえる。図8の例では、影響度の大きな優先ビットとして、例えば上位8ビットを選択し、誤り検出符号化を行う。すなわち、A/D変換された22ビットのデジタル音声信号のうち、上位8ビットの優先ビットのみを誤り検出符号化の対象データとして、4ビットの誤り検出符号化を行い、デジタル音声信号の他のビット(下位14ビット)に対しては誤り検出符号化を行わない。そして、デジタル音声信号(22ビット)に対して、優先ビット(上位8ビット)を対象として計算した誤り検出符号4ビットを付加して、誤り検出符号化されたデジタル音声信号は26ビットのビット列となる。なお、この例では、影響度が大きい優先ビットとして上位8ビットを選択したが、デジタル音声信号のビット配列によっては、影響度が大きいビットが下位に配列されることや、中央部に配列してもよい。
誤り検出符号としては、代表的にはCRC符号が用いられるが、目的に応じて任意の誤り検出符号を利用することができる。その後、誤り訂正符号化と変調を行い伝送する。
一般的に誤り検出符号は、符号化率が低いほど誤り検出能力が高く、誤り見逃しの発生確率を下げることができる性質を持つ。ここで、符号化率Rは符号化前の情報ビットの数をk、符号化後の全体のビット数をnとして、R=k/nで表わされる数値である。従来方式のように、22ビットの音声信号に4ビットの誤り検出符号化を行った場合、符号化率は22/26≒0.85であるが、本発明の方式の例では8/12≒0.66となり、誤り検出符号化を行う対象を限定することで、符号化率を低くして誤り検出能力を上げることが可能である。また、リニアPCMなどの符号化は、一般に図9の例に示すように影響度の高い順にビットが並ぶことが多く、本方式を容易に適用することが可能である。一方で、誤り検出符号を行わない非優先ビットで誤りが発生した場合は、従来の方式と異なり誤りを検出することができなくなるが、そのまま復元されても聴くに堪えないほどの大きなノイズにはならない。したがって、優先ビットに対してのみ誤り検出符号化を行うことは、デジタルワイヤレスマイクの運用性の向上に資する現実的な手段である。
以上のように、優先ビット誤り検出符号化部222を含むOFDM方式ラジオマイクの送信装置により、受信側でより精度良くミュート区間を検出するためのOFDM信号を送信することができる。
図7は、精度良くミュート区間を検出するための誤り検出復号を行う、受信装置の音声再生部171,172(図2)の構成例を示すブロック図である。音声再生部171,172は、時間デインターリーブ部351、周波数デインターリーブ部352、キャリア復調部353、誤り訂正復号部354、優先ビット誤り検出復号部357、及び、D/A(デジタル/アナログ)変換部356を備える。図14のブロック図との相違は、誤り検出復号部355が優先ビット誤り検出復号部357に置き換わった点であり、他の構成要素は図14と同じである。以下、優先ビット誤り検出復号部357の処理について説明し、他の構成要素の説明は省略する。
優先ビット誤り検出復号部357は、誤り訂正復号を行った後のデータに対して誤り検出復号を行う誤り検出復号部の一種であるが、送信側で付加した誤り検出符号を利用して、優先ビットの誤り検出復号を行う。
図8を例とすると、受信された信号を復調し、誤り訂正復号を行うことにより、誤り検出符号化された26ビットのビット列(図8の下段に示したビット列)を得る。優先ビット誤り検出復号は、このうちの優先ビット(ここでは上位8ビット)と誤り検出符号(4ビット)を合わせた12ビットを誤り検出の範囲として誤り検出復号を行い、この12ビットの中に含まれる誤り(誤り訂正復号の後に誤りが残っているか)を検出する。この結果、22ビットのデジタル音声信号と、誤り検出情報(デジタル音声信号の優先ビットと誤り検出符号を合わせた12ビットの中に誤りが残存しているかの情報)が出力される。
優先ビット誤り検出復号の結果、誤りなしとされたデータをその後の音声信号処理に用い、誤っていると判定されたデータは、削除する(音声信号をミュートする)か、何らかの代替データとする。その後、音声データはD/A変換部356に出力され、デジタル/アナログ変換されて音声信号として出力される。
また、誤り検出信号は、2波対応OFDM受信機130から出力されて、周波数ダイバーシティ音声処理機186(図5)のミュート区間検出部187に入力される。
図5に戻って、2波対応OFDM受信機で音声出力がミュートされる区間(又は大きなノイズが生じる区間)は、優先ビットに対する誤り検出信号によって正確に検出できるから、ミュート区間検出部187は、正確なミュート区間の検出信号を切り換え部185に出力できる。
切り換え部185は、ミュート区間検出部187からの正確な検出信号に基づいて、一方の音声信号にミュート区間が検出された場合には、音声入力(f1)と音声入力(f2)のうち、ひずみ(ノイズ)の発生していない他方の音声のみを音声出力として出力する。この結果、より正確にひずみのない1つの音声を出力することが可能となる。
このように、優先ビット誤り検出復号部357を備えた2波対応OFDM受信機130と、誤り検出信号を利用する周波数ダイバーシティ音声処理機186を組み合わせることにより、品質良い音声を出力する受信装置を構成することができる。
本発明の受信装置は、2波対応OFDM受信機130と、周波数ダイバーシティ音声処理機180とを備えており、両者は一体の装置として形成することも可能であるが、それぞれ別体の機器として構成し、使用時に組み合わせるのが利便性の高い送信装置となる。すなわち、2波対応OFDM受信機130は、単独の2波対応のOFDM方式ラジオマイク受信装置としても利用可能であり、周波数ダイバーシティ音声処理機180をアダプタ形式の装置として構成し、これを2波対応OFDM受信機130に付加することで、周波数ダイバーシティを行うOFDM方式ラジオマイクの受信装置として使用することも可能となる。なお、両者を一体の装置とした場合には、2波対応OFDM受信機130の出力を別途外部出力可能とすることで、2つの周波数のOFDM信号による音声信号を、別々に利用できる。
上記の実施の形態では、送信装置200及び受信装置100の構成と動作について説明したが、本発明はこれに限らず、1つの音声を複数の周波数のOFDM信号により送信する送信方法、又は、1つの音声を複数の周波数のOFDM信号として送信した信号を受信・再生する受信方法として構成されてもよい。
上述の実施形態は代表的な例として説明したが、本発明の趣旨及び範囲内で、多くの変更及び置換ができることは当業者に明らかである。したがって、本発明は、上述の実施形態によって制限するものと解するべきではなく、特許請求の範囲から逸脱することなく、種々の変形や変更が可能である。例えば、実施形態に記載の複数の構成ブロックを1つに組み合わせたり、あるいは1つの構成ブロックを分割したりすることが可能である。