以下、本発明の実施形態について図に基づいて説明する。説明に用いる各図は概念図であり、各部の形状は必ずしも厳密なものではない場合がある。車両用制動装置BFは、図1に示すように、マスタシリンダ1と、反力発生装置2と、第1制御弁22と、第2制御弁23と、サーボ圧発生装置(「駆動圧供給部」に相当する)4と、アクチュエータ5と、ホイールシリンダ541〜544と、各種センサ71〜77と、上流側ECU(「第1制御部」に相当する)6と、下流側ECU(「第2制御部」に相当する)6Aと、を備えている。また、本実施形態ではハイブリッド車両を例にして説明するため、車両用制動装置BFには、回生制動装置8が設けられている。回生制動装置8は、前輪Wfに対して設けられ、ハイブリッドECU81と、発電機82と、インバータ83と、バッテリ84と、を備えている。回生制動装置8の詳細については公知であるため省略する。
マスタシリンダ1は、ブレーキペダル(ブレーキ操作部材)10の操作量に応じてブレーキ液をアクチュエータ5に供給する部位であり、メインシリンダ11、カバーシリンダ12、入力ピストン13、第1マスタピストン14、および第2マスタピストン15を備えている。ブレーキペダル10は、ドライバがブレーキ操作可能なブレーキ操作手段であれば良い。
メインシリンダ11は、前方が閉塞されて後方に開口する有底略円筒状のハウジングである。メインシリンダ11の内周側の後方寄りに、内向きフランジ状に突出する内壁部111が設けられている。内壁部111の中央は、前後方向に貫通する貫通孔111aとされている。また、メインシリンダ11の内部の内壁部111よりも前方に、内径がわずかに小さくなっている小径部位112(後方)、113(前方)が設けられている。つまり、小径部位112、113は、メインシリンダ11の内周面から内向き環状に突出している。メインシリンダ11の内部には、小径部位112に摺接して軸方向に移動可能に第1マスタピストン14が配設されている。同様に、小径部位113に摺接して軸方向に移動可能に第2マスタピストン15が配設されている。
カバーシリンダ12は、略円筒状のシリンダ部121、蛇腹筒状のブーツ122、およびカップ状の圧縮スプリング123で構成されている。シリンダ部121は、メインシリンダ11の後端側に配置され、メインシリンダ11の後側の開口に同軸的に嵌合されている。シリンダ部121の前方部位121aの内径は、内壁部111の貫通孔111aの内径よりも大きい。また、シリンダ部121の後方部位121bの内径は、前方部位121aの内径よりも小さい。
防塵用のブーツ122は蛇腹筒状で前後方向に伸縮可能であり、その前側でシリンダ部121の後端側開口に接するように組み付けられている。ブーツ122の後方の中央には貫通孔122aが形成されている。圧縮スプリング123は、ブーツ122の周りに配置されるコイル状の付勢部材であり、その前側がメインシリンダ11の後端に当接し、後側はブーツ122の貫通孔122aに近接するように縮径されている。ブーツ122の後端および圧縮スプリング123の後端は、操作ロッド10aに結合されている。圧縮スプリング123は、操作ロッド10aを後方に付勢している。
入力ピストン13は、ブレーキペダル10の操作に応じてカバーシリンダ12内を摺動するピストンである。入力ピストン13は、前方に底面を有し後方に開口を有する有底略円筒状のピストンである。入力ピストン13の底面を構成する底壁131は、入力ピストン13の他の部位よりも径が大きくなっている。入力ピストン13は、シリンダ部121の後方部位121bに軸方向に摺動可能かつ液密的に配置され、底壁131がシリンダ部121の前方部位121aの内周側に入り込んでいる。
入力ピストン13の内部には、ブレーキペダル10に連動する操作ロッド10aが配設されている。操作ロッド10aの先端のピボット10bは、入力ピストン13を前側に押動できるようになっている。操作ロッド10aの後端は、入力ピストン13の後側の開口およびブーツ122の貫通孔122aを通って外部に突出し、ブレーキペダル10に接続されている。ブレーキペダル10が踏み込み操作されたときに、操作ロッド10aは、ブーツ122および圧縮スプリング123を軸方向に押動しながら前進する。操作ロッド10aの前進に伴い、入力ピストン13も連動して前進する。
第1マスタピストン14は、メインシリンダ11の内壁部111に軸方向に摺動可能に配設されている。第1マスタピストン14は、前方側から順番に加圧筒部141、フランジ部142、および突出部143が一体となって形成されている。加圧筒部141は、前方に開口を有する有底略円筒状に形成され、メインシリンダ11の内周面との間に間隙を有し、小径部位112に摺接している。加圧筒部141の内部空間には、第2マスタピストン15との間にコイルばね状の付勢部材144が配設されている。付勢部材144により、第1マスタピストン14は後方に付勢されている。換言すると、第1マスタピストン14は、設定された初期位置に向けて付勢部材144により付勢されている。
フランジ部142は、加圧筒部141よりも大径で、メインシリンダ11の内周面に摺接している。突出部143は、フランジ部142よりも小径で、内壁部111の貫通孔111aに液密に摺動するように配置されている。突出部143の後端は、貫通孔111aを通り抜けてシリンダ部121の内部空間に突出し、シリンダ部121の内周面から離間している。突出部143の後端面は、入力ピストン13の底壁131から離間し、その離間距離は変化し得るように構成されている。
ここで、メインシリンダ11の内周面、第1マスタピストン14の加圧筒部141の前側、および第2マスタピストン15の後側により、「第1マスタ室1D」が区画されている。また、メインシリンダ11の内周面(内周部)と小径部位112と内壁部111の前面、および第1マスタピストン14の外周面により、第1マスタ室1Dよりも後方の後方室が区画されている。第1マスタピストン14のフランジ部142の前端部および後端部は後方室を前後に区分しており、前側に「第2液圧室1C」が区画され、後側に「サーボ室(「駆動室」に相当する)1A」が区画されている。第2液圧室1Cは、第1マスタピストン14の前進により容積が減少し第1マスタピストン14の後退により容積が増加する。また、メインシリンダ11の内周部、内壁部111の後面、シリンダ部121の前方部位121aの内周面(内周部)、第1マスタピストン14の突出部143(後端部)、および入力ピストン13の前端部により「第1液圧室1B」が区画されている。
第2マスタピストン15は、メインシリンダ11内の第1マスタピストン14の前方側に、小径部位113に摺接して軸方向に移動可能に配置されている。第2マスタピストン15は、前方に開口を有する筒状の加圧筒部151、および加圧筒部151の後側を閉塞する底壁152が一体となって形成されている。底壁152は、第1マスタピストン14との間に付勢部材144を支承している。加圧筒部151の内部空間には、メインシリンダ11の閉塞された内底面111dとの間に、コイルばね状の付勢部材153が配設されている。付勢部材153により、第2マスタピストン15は後方に付勢されている。換言すると、第2マスタピストン15は、設定された初期位置に向けて付勢部材153により付勢されている。メインシリンダ11の内周面、内底面111d、および第2マスタピストン15により、「第2マスタ室1E」が区画されている。
マスタシリンダ1には、内部と外部を連通させるポート11a〜11iが形成されている。ポート11aは、メインシリンダ11のうち内壁部111よりも後方に形成されている。ポート11bは、ポート11aと軸方向の同様の位置に、ポート11aに対向して形成されている。ポート11aとポート11bは、メインシリンダ11の内周面とシリンダ部121の外周面との間の環状空間を介して連通している。ポート11aおよびポート11bは、配管161に接続され、かつリザーバ171(低圧源)に接続されている。
また、ポート11bは、シリンダ部121および入力ピストン13に形成された通路18により第1液圧室1Bに連通している。通路18は入力ピストン13が前進すると遮断され、これによって第1液圧室1Bとリザーバ171とが遮断される。ポート11cは、内壁部111より後方かつポート11aよりも前方に形成され、第1液圧室1Bと配管162とを連通させている。ポート11dは、ポート11cよりも前方に形成され、サーボ室1Aと配管163とを連通させている。ポート11eは、ポート11dよりも前方に形成され、第2液圧室1Cと配管164とを連通させている。
ポート11fは、小径部位112の両シール部材G1、G2の間に形成され、リザーバ172とメインシリンダ11の内部とを連通している。ポート11fは、第1マスタピストン14に形成された通路145を介して第1マスタ室1Dに連通している。通路145は、第1マスタピストン14が前進するとポート11fと第1マスタ室1Dが遮断される位置に形成されている。ポート11gは、ポート11fよりも前方に形成され、第1マスタ室1Dと管路31とを連通させている。
ポート11hは、小径部位113の両シール部材G3、G4の間に形成され、リザーバ173とメインシリンダ11の内部とを連通させている。ポート11hは、第2マスタピストン15の加圧筒部151に形成された通路154を介して第2マスタ室1Eに連通している。通路154は、第2マスタピストン15が前進するとポート11hと第2マスタ室1Eが遮断される位置に形成されている。ポート11iは、ポート11hよりも前方に形成され、第2マスタ室1Eと管路32とを連通させている。
また、マスタシリンダ1内には、適宜、Oリング等のシール部材が配置されている。シール部材G1、G2は、小径部位112に配置され、第1マスタピストン14の外周面に液密的に当接している。同様に、シール部材G3、G4は、小径部位113に配置され、第2マスタピストン15の外周面に液密的に当接している。また、入力ピストン13とシリンダ部121との間にもシール部材G5、G6が配置されている。
ストロークセンサ71は、ドライバによりブレーキペダル10が操作された操作量(ストローク)を検出するセンサであり、検出信号を上流側ECU6及び下流側ECU6Aに送信する。ブレーキストップスイッチ72は、ドライバによるブレーキペダル10の操作の有無を2値信号で検出するスイッチであり、検出信号を上流側ECU6に送信する。
反力発生装置2は、ブレーキペダル10が操作されたとき操作力に対抗する反力を発生する装置であり、ストロークシミュレータ21を主にして構成されている。ストロークシミュレータ21は、ブレーキペダル10の操作に応じて第1液圧室1Bおよび第2液圧室1Cに反力液圧を発生させる。ストロークシミュレータ21は、シリンダ211にピストン212が摺動可能に嵌合されて構成されている。ピストン212は圧縮スプリング213によって後方に付勢されており、ピストン212の後面側に反力液圧室214が形成される。反力液圧室214は、配管164およびポート11eを介して第2液圧室1Cに接続され、さらに、反力液圧室214は、配管164を介して第1制御弁22および第2制御弁23に接続されている。
第1制御弁22は、非通電状態で閉じる構造の電磁弁であり、上流側ECU6により開閉が制御される。第1制御弁22は、配管164と配管162との間に接続されている。ここで、配管164はポート11eを介して第2液圧室1Cに連通し、配管162はポート11cを介して第1液圧室1Bに連通している。また、第1制御弁22が開くと第1液圧室1Bが開放状態になり、第1制御弁22が閉じると第1液圧室1Bが密閉状態になる。したがって、配管164および配管162は、第1液圧室1Bと第2液圧室1Cとを連通するように設けられている。
第1制御弁22は通電されていない非通電状態で閉じており、このとき第1液圧室1Bと第2液圧室1Cとが遮断される。これにより、第1液圧室1Bが密閉状態になってブレーキ液の行き場がなくなり、入力ピストン13と第1マスタピストン14とが一定の離間距離を保って連動する。また、第1制御弁22は通電された通電状態では開いており、このとき第1液圧室1Bと第2液圧室1Cとが連通される。これにより、第1マスタピストン14の進退に伴う第1液圧室1Bおよび第2液圧室1Cの容積変化が、ブレーキ液の移動により吸収される。
圧力センサ73は、第2液圧室1Cおよび第1液圧室1Bの反力液圧を検出するセンサであり、配管164に接続されている。圧力センサ73は、第1制御弁22が閉状態の場合には第2液圧室1Cの圧力を検出し、第1制御弁22が開状態の場合には連通された第1液圧室1Bの圧力も検出することになる。圧力センサ73は、検出信号を上流側ECU6に送信する。
第2制御弁23は、非通電状態で開く構造の電磁弁であり、上流側ECU6により開閉が制御される。第2制御弁23は、配管164と配管161との間に接続されている。ここで、配管164はポート11eを介して第2液圧室1Cに連通し、配管161はポート11aを介してリザーバ171に連通している。したがって、第2制御弁23は、第2液圧室1Cとリザーバ171との間を非通電状態で連通して反力液圧を発生させず、通電状態で遮断して反力液圧を発生させる。
サーボ圧発生装置4は、いわゆる油圧式ブースタ(倍力装置)であって、減圧弁41、増圧弁42、圧力供給部43、およびレギュレータ44を備えている。減圧弁41は、非通電状態で開く常開型の電磁弁(常開弁)であり、上流側ECU6により流量(又は圧力)が制御される。減圧弁41の一方は配管411を介して配管161に接続され、減圧弁41の他方は配管413に接続されている。つまり、減圧弁41の一方は、配管411、161、およびポート11a、11bを介してリザーバ171に連通している。減圧弁41は、閉弁することで、後述する第1パイロット室4Dからブレーキ液が流出することを阻止する。なお、リザーバ171とリザーバ434とは、図示していないが連通している。リザーバ171とリザーバ434が同一のリザーバであっても良い。
増圧弁42は、非通電状態で閉じる常閉型の電磁弁(常閉弁)であり、上流側ECU6により流量(又は圧力)が制御されている。増圧弁42の一方は配管421に接続され、増圧弁42の他方は配管422に接続されている。圧力供給部43は、レギュレータ44に主に高圧のブレーキ液を供給する部位である。圧力供給部43は、アキュムレータ431、液圧ポンプ432、モータ433、およびリザーバ434を備えている。
アキュムレータ431は、高圧のブレーキ液を蓄積するタンクである。アキュムレータ431は、配管431aによりレギュレータ44および液圧ポンプ432に接続されている。液圧ポンプ432は、モータ433によって駆動され、リザーバ434に貯留されたブレーキ液を、アキュムレータ431に圧送する。配管431aに設けられた圧力センサ75は、アキュムレータ431のアキュムレータ液圧を検出し、検出信号を上流側ECU6に送信する。アキュムレータ液圧は、アキュムレータ431に蓄積されたブレーキ液の蓄積量に相関する。
アキュムレータ液圧が所定のオン圧以下に低下したことが圧力センサ75によって検出されると、上流側ECU6からの指令に基づいてモータ433が駆動される。これにより、液圧ポンプ432は、アキュムレータ431にブレーキ液を圧送して、アキュムレータ液圧を所定値以上に回復する。また、アキュムレータ液圧が所定のオフ圧以下に低下したことが圧力センサ75によって検出されると、上流側ECU6からの指令に基づいてモータ433が停止する。つまり、上流側ECU6には、モータ433(アキュムレータ431)のオン圧とオフ圧が設定されており、上流側ECU6が圧力センサ75の検出値に基づいてアキュムレータ液圧を制御している。
レギュレータ44は、図2に示すように、シリンダ441、ボール弁442、付勢部443、弁座部444、制御ピストン445、およびサブピストン446を備えている。シリンダ441は、一方(図面右側)に底面をもつ略有底円筒状のシリンダケース441aと、シリンダケース441aの開口(図面左側)を塞ぐ蓋部材441bと、で構成されている。シリンダケース441aには、内部と外部を連通させる複数のポート4a〜4hが形成されている。蓋部材441bも、略有底円筒状に形成されており、筒状部の複数のポート4a〜4hに対向する各部位に各ポートが形成されている。
ポート4aは、配管431aに接続されている。ポート4bは、配管422に接続されている。ポート4cは、配管163に接続されている。配管163は、サーボ室1Aとポート4cとを接続している。ポート4dは、配管414を介してリザーバ434に接続されている。ポート4eは、配管424に接続され、さらにリリーフバルブ423を経由して配管422に接続されている。ポート4fは、配管413に接続されている。ポート4gは、配管421に接続されている。ポート4hは、管路31から分岐した管路311に接続されている。
ボール弁442は、ボール型の弁であり、シリンダ441内部のシリンダケース441aの底面側(以下、シリンダ底面側とも称する)に配置されている。付勢部443は、ボール弁442をシリンダケース441aの開口側(以下、シリンダ開口側とも称する)に付勢するバネ部材であって、シリンダケース441aの底面に設置されている。弁座部444は、シリンダケース441aの内周面に設けられた壁部材であり、シリンダ開口側とシリンダ底面側を区画している。弁座部444の中央には、区画したシリンダ開口側とシリンダ底面側を連通させる貫通路444aが形成されている。弁座部444は、付勢されたボール弁442が貫通路444aを塞ぐ形で、ボール弁442をシリンダ開口側から保持している。貫通路444aのシリンダ底面側の開口部には、ボール弁442が離脱可能に着座(当接)する弁座面444bが形成されている。
ボール弁442、付勢部443、弁座部444、およびシリンダ底面側のシリンダケース441aの内周面で区画された空間を「第1室4A」とする。第1室4Aは、ブレーキ液で満たされており、ポート4aを介して配管431aに接続され、ポート4bを介して配管422に接続されている。
制御ピストン445は、略円柱状の本体部445aと、本体部445aよりも径が小さい略円柱状の突出部445bとからなっている。本体部445aは、シリンダ441内において、弁座部444のシリンダ開口側に、同軸的且つ液密的に、軸方向に摺動可能に配置されている。本体部445aは、図示しない付勢部材によりシリンダ開口側に付勢されている。本体部445aのシリンダ軸方向略中央には、両端が本体部445a周面に開口した径方向(図面上下方向)に延びる通路445cが形成されている。通路445cの開口位置に対応したシリンダ441の一部の内周面は、ポート4dが形成されているとともに、凹状に窪んでいる。この窪んだ空間を「第3室4C」とする。
突出部445bは、本体部445aのシリンダ底面側端面の中央からシリンダ底面側に突出している。突出部445bの径は、弁座部444の貫通路444aよりも小さい。突出部445bは、貫通路444aと同軸上に配置されている。突出部445bの先端は、ボール弁442からシリンダ開口側に所定間隔離れている。突出部445bには、突出部445bのシリンダ底面側端面中央に開口したシリンダ軸方向に延びる通路445dが形成されている。通路445dは、本体部445a内にまで延伸し、通路445cに接続している。
本体部445aのシリンダ底面側端面、突出部445bの外周面、シリンダ441の内周面、弁座部444、およびボール弁442によって区画された空間を「第2室4B」とする。第2室4Bは、突出部445bとボール弁442とが当接していない状態で、通路445d,445c、および第3室4Cを介してポート4d、4eに連通している。
サブピストン446は、サブ本体部446aと、第1突出部446bと、第2突出部446cとからなっている。サブ本体部446aは、略円柱状に形成されている。サブ本体部446aは、シリンダ441内において、本体部445aのシリンダ開口側に、同軸的且つ液密的、軸方向に摺動可能に配置されている。また、サブピストン446のシリンダ底面側の端部には、ダンパ機構が設けられても良い。
第1突出部446bは、サブ本体部446aより小径の略円柱状であり、サブ本体部446aのシリンダ底面側の端面中央から突出している。第1突出部446bは、本体部445aのシリンダ開口側端面に当接している。第2突出部446cは、第1突出部446bと同形状であり、サブ本体部446aのシリンダ開口側の端面中央から突出している。第2突出部446cは、蓋部材441bと当接している。
サブ本体部446aのシリンダ底面側の端面、第1突出部446bの外周面、制御ピストン445のシリンダ開口側の端面、およびシリンダ441の内周面で区画された空間を「第1パイロット室4D」とする。第1パイロット室4Dは、ポート4fおよび配管413を介して減圧弁41に連通し、ポート4gおよび配管421を介して増圧弁42に連通している。
一方、サブ本体部446aのシリンダ開口側の端面、第2突出部446cの外周面、蓋部材441b、およびシリンダ441の内周面で区画された空間を「第2パイロット室4E」とする。第2パイロット室4Eは、ポート4hおよび管路311、31を介してポート11gに連通している。各室4A〜4Eは、ブレーキ液で満たされている。圧力センサ74は、サーボ室1Aに供給されるサーボ圧(「駆動圧」に相当する)を検出するセンサであり、配管163に接続されている。圧力センサ74は、検出信号を上流側ECU6に送信する。
このように、レギュレータ44は、第1パイロット室4Dの圧力(「パイロット圧」とも称する)に対応する力とサーボ圧に対応する力との差によって駆動される制御ピストン445を有し、制御ピストン445の移動に伴って第1パイロット室4Dの容積が変化し、第1パイロット室4Dに流入出する液体の流量が増大すると、パイロット圧に対応する力とサーボ圧に対応する力とが釣り合っている平衡状態における制御ピストン445の位置を基準とする同制御ピストン445の移動量が増大して、サーボ室1Aに流入出する液体の流量が増大するように構成されている。すなわち、レギュレータ44は、パイロット圧とサーボ圧との差圧に応じた流量の液体がサーボ室1Aに流入出するように構成されている。
レギュレータ44は、アキュムレータ431から第1パイロット室4Dに流入する液体の流量が増大するほど、第1パイロット室4Dが拡大するとともにアキュムレータ431からサーボ室1Aに流入する液体の流量が増大し、第1パイロット室4Dからリザーバ171に流出する液体の流量が増大するほど、第1パイロット室4Dが縮小するとともにサーボ室1Aからリザーバ171に流出する液体の流量が増大するように構成されている。このような構成のレギュレータ44は、増圧制御又は減圧制御から保持制御に移行しても所定期間だけサーボ圧(パイロット圧)が変動するヒステリシスを有している。所定期間は、サーボ圧(パイロット圧)の勾配に応じて変動する期間(状態に応じた期間)である。
ヒステリシスの量は、サーボ圧の増圧制御又は減圧制御を終了しても(保持制御に移行しても)なお変化するサーボ圧の変化量である。保持制御は、減圧弁41及び増圧弁42を閉弁状態とする制御である。ヒステリシスは、例えば増圧制御、すなわち制御ピストン445がボール弁442を押して第1室4Aと第2室4Bとを連通させた状態(制御ピストン445が増圧位置にある状態)から、保持制御、すなわち減圧弁41と増圧弁42を閉状態として第1パイロット室4Dを密閉状態とした状態に切り替えた際、制御ピストン445が増圧位置から後退して第1室4Aと第2室4Bを遮断するまでの間、増圧状態が続くことで生じる。サーボ圧の勾配、すなわちパイロット圧の勾配が大きいほど、制御ピストン445が前進した状態となり、保持制御に切り替えた後に後退する時間が長くなり、ヒステリシス量は大きくなる。反対にサーボ圧の勾配が小さいほど、ヒステリシス量は小さくなる。
また、上流側ECU6には、目標サーボ圧に対する不感帯が設定されている。不感帯は、目標サーボ圧に対してプラス側とマイナス側に設定される。上流側ECU6は、実サーボ圧が不感帯の範囲内の値となると、ブレーキ制御を保持制御に切り替える。つまり、上流側ECU6は、ブレーキ制御を行うにあたり、実サーボ圧が不感帯の範囲内(不感帯領域)に入ると実質的に目標サーボ圧に達したものと認識する。このような不感帯を設定することで、目標サーボ圧を一点に設定する場合よりも液圧制御のハンチングを抑制することができる。
アクチュエータ5は、マスタシリンダ圧(以下、マスタ圧という)が発生する第1マスタ室1D及び第2マスタ室1Eと、ホイールシリンダ541〜544の間に配置されている。アクチュエータ5と第1マスタ室1Dとは管路31により接続され、アクチュエータ5と第2マスタ室1Eは管路32により接続されている。アクチュエータ5は、下流側ECU6Aの指示に応じて、ホイールシリンダ541〜544の液圧(ホイール圧)を調整する装置である。アクチュエータ5は、下流側ECU6Aの指令に応じて、ブレーキ液をマスタ圧からさらに加圧する加圧制御、減圧制御、及び保持制御を実行する。アクチュエータ5は、下流側ECU6Aの指令に基づき、これら制御を組み合わせて、アンチスキッド制御(ABS制御)、又は横滑り防止制御(ESC制御)等を実行する。
具体的に、アクチュエータ5は、図3に示すように、油圧回路5Aと、モータ90と、を備えている。油圧回路5Aは、第1配管系統50aと、第2配管系統50bと、を備えている。第1配管系統50aは、後輪Wrl、Wrrに加えられる液圧(ホイール圧)を制御する系統である。第2配管系統50bは、前輪Wfl、Wfrに加えられる液圧(ホイール圧)を制御する系統である。また、各車輪Wに対して、車輪速度センサ76が設置されている。本実施形態では前後配管が採用されている。
第1配管系統50aは、主管路Aと、差圧制御弁51と、増圧弁52、53と、減圧管路Bと、減圧弁54、55と、調圧リザーバ56と、還流管路Cと、ポンプ57と、補助管路Dと、オリフィス部58と、ダンパ部59と、を備えている。説明において、「管路」の用語は、例えば液圧路、流路、油路、通路、又は配管等に置換可能である。
主管路Aは、管路32とホイールシリンダ541、542とを接続する管路である。差圧制御弁51は、主管路Aに設けられ、主管路Aを連通状態と差圧状態に制御する電磁弁である。差圧状態は、弁により流路が制限された状態であり、絞り状態ともいえる。差圧制御弁51は、下流側ECU6Aの指示に基づく制御電流に応じて、自身を中心としたマスタシリンダ1側の液圧とホイールシリンダ541、542側の液圧との差圧(以下、「第一差圧」とも称する)を制御する。換言すると、差圧制御弁51は、主管路Aのマスタシリンダ1側の部分の液圧と主管路Aのホイールシリンダ541、542側の部分の液圧との差圧を制御可能に構成されている。
差圧制御弁51は、非通電状態で連通状態となるノーマルオープンタイプである。差圧制御弁51に印加される制御電流が大きいほど、第一差圧は大きくなる。差圧制御弁51が差圧状態に制御されてポンプ57が駆動している場合、制御電流に応じて、マスタシリンダ1側の液圧よりもホイールシリンダ541、542側の液圧のほうが大きくなる。差圧制御弁51に対しては、チェックバルブ51aが設置されている。主管路Aは、ホイールシリンダ541、542に対応するように、差圧制御弁51の下流側の分岐点Xで2つの管路A1、A2に分岐している。
増圧弁52、53は、下流側ECU6Aの指示により開閉する電磁弁であって、非通電状態で開状態(連通状態)となるノーマルオープンタイプの電磁弁である。増圧弁52は管路A1に配置され、増圧弁53は管路A2に配置されている。増圧弁52、53は、増圧制御時に非通電状態で開状態となってホイールシリンダ541〜544と分岐点Xと連通させ、保持制御及び減圧制御時に通電されて閉状態となりホイールシリンダ541〜544と分岐点Xとを遮断する。
減圧管路Bは、管路A1における増圧弁52とホイールシリンダ541、542との間と調圧リザーバ56とを接続し、管路A2における増圧弁53とホイールシリンダ541、542との間と調圧リザーバ56とを接続する管路である。減圧弁54、55は、下流側ECU6Aの指示により開閉する電磁弁であって、非通電状態で閉状態(遮断状態)となるノーマルクローズタイプの電磁弁である。減圧弁54は、ホイールシリンダ541、542側の減圧管路Bに配置されている。減圧弁55は、ホイールシリンダ541、542側の減圧管路Bに配置されている。減圧弁54、55は、主に減圧制御時に通電されて開状態となり、減圧管路Bを介してホイールシリンダ541、542と調圧リザーバ56とを連通させる。調圧リザーバ56は、シリンダ、ピストン、及び付勢部材を有するリザーバである。
還流管路Cは、減圧管路B(又は調圧リザーバ56)と、主管路Aにおける差圧制御弁51と増圧弁52、53の間(ここでは分岐点X)とを接続する管路である。ポンプ57は、吐出ポートが分岐点X側で吸入ポートが調圧リザーバ56側に配置されるように、還流管路Cに設けられている。ポンプ57は、モータ90によって駆動されるギア式の電動ポンプ(ギアポンプ)である。ポンプ57は、還流管路Cを介して、調圧リザーバ56からマスタシリンダ1側又はホイールシリンダ541、542側にブレーキ液を流動させる。また、ポンプ57は、例えばアンチスキッド制御の際、開状態の減圧弁54、55を介して、ホイールシリンダ541、542内のブレーキ液をマスタシリンダ1に汲み戻す。このように、ポンプ57は、マスタシリンダ1とホイールシリンダ541、542との間に配置され、ホイールシリンダ541、542内のブレーキ液をホイールシリンダ541、542外に吐出することができる。
ポンプ57は、ブレーキ液を吐出する吐出過程と、ブレーキ液を吸入する吸入過程と、を繰り返すように構成されている。つまり、ポンプ57は、モータ90により駆動されると、吐出過程と吸入過程とを交互に繰り返して実行する。吐出過程では、吸入過程で調圧リザーバ56から吸入したブレーキ液が、分岐点Xに供給される。モータ90は、下流側ECU6Aの指示により、リレー(図示せず)を介して通電され、駆動する。ポンプ57とモータ90は、併せて電動ポンプともいえる。
オリフィス部58は、還流管路Cのポンプ57と分岐点Xとの間の部分に設けられた、絞り形状部位(いわゆるオリフィス)である。ダンパ部59は、還流管路Cのポンプ57とオリフィス部58との間の部分に接続されたダンパ(ダンパ機構)である。ダンパ部59は、還流管路Cのブレーキ液の脈動に応じて、当該ブレーキ液を吸収・吐出する。オリフィス部58及びダンパ部59は、脈動を低減(減衰、吸収)する脈動低減機構といえる。
補助管路Dは、調圧リザーバ56の調圧孔56aと、主管路Aにおける差圧制御弁51よりも上流側(又はマスタシリンダ1)とを接続する管路である。調圧リザーバ56は、ストローク増加による調圧孔56aへのブレーキ液の流入量増加に伴い、弁孔56bが閉塞されるように構成されている。弁孔56bの管路B、C側にはリザーバ室56cが形成される。
ポンプ57の駆動により、調圧リザーバ56又はマスタシリンダ1内のブレーキ液が、還流管路Cを介して主管路Aにおける差圧制御弁51と増圧弁52、53の間の部分(分岐点X)に吐出される。そして、差圧制御弁51及び増圧弁52、53の制御状態に応じて、ホイール圧が加圧される。このようにアクチュエータ5では、ポンプ57の駆動と各種弁の制御により加圧制御が実行される。つまり、アクチュエータ5は、ホイール圧を加圧可能に構成されている。なお、主管路Aの差圧制御弁51とマスタシリンダ1の間の部分には、当該部分の液圧(マスタ圧)を検出する圧力センサ77が設置されている。圧力センサ77は、検出結果を上流側ECU6及び下流側ECU6Aに送信する。
第2配管系統50bは、第1配管系統50aと同様の構成であって、前輪Wfl、Wfrのホイールシリンダ543、544の液圧を調整する系統である。第2配管系統50bは、主管路Aに相当し管路31とホイールシリンダ543、544とを接続する主管路Abと、差圧制御弁51に相当する差圧制御弁91と、増圧弁52、53に相当する増圧弁92、93と、減圧管路Bに相当する減圧管路Bbと、減圧弁54、55に相当する減圧弁94、95と、調圧リザーバ56に相当する調圧リザーバ96と、還流管路Cに相当する還流管路Cbと、ポンプ57に相当するポンプ97と、補助管路Dに相当する補助管路Dbと、オリフィス部58に相当するオリフィス部58aと、ダンパ部59に相当するダンパ部59aと、を備えている。第2配管系統50bの詳細構成については、第1配管系統50aの説明を参照できるため、説明を省略する。また、以下の説明において、アクチュエータ5の各部の記載は、第1配管系統50aの符号を用い、第2配管系統50bの符号は省略する。
アクチュエータ5によるホイール圧の調圧は、例えば、マスタ圧をそのままホイールシリンダ541〜544に提供する増圧制御、ホイールシリンダ541〜544を密閉する保持制御、ホイールシリンダ541〜544内のブレーキ液を調圧リザーバ56に流出させる減圧制御、又は差圧制御弁51による絞りとポンプ57の駆動によりホイール圧を加圧する加圧制御を実行することで為されている。詳細には後述する。
上流側ECU6及び下流側ECU6Aは、CPUやメモリ等を備える電子制御ユニット(ECU)である。上流側ECU6は、ホイール圧の目標値である目標ホイール圧(又は目標減速度)に基づいて、サーボ圧発生装置4に対する制御を実行するECUである。上流側ECU6は、目標ホイール圧に基づいて、サーボ圧発生装置4に対して、増圧制御(加圧制御)、減圧制御、又は保持制御を実行する。増圧制御では、増圧弁42が開状態となり、減圧弁41が閉状態となる。減圧制御では、増圧弁42が閉状態となり、減圧弁41が開状態となる。保持制御では、増圧弁42及び減圧弁41が閉状態となる。
上流側ECU6には、各種センサ71〜77が接続されている。上流側ECU6は、これらセンサから、ストローク情報、マスタ圧情報、反力液圧情報、サーボ圧情報、及び車輪速度情報等を取得する。上記センサと上流側ECU6とは、図示しない通信線(CAN)により接続されている。また、上流側ECU6は、下流側ECU6Aからアクチュエータ5の制御状況に関する情報(アンチスキッド制御中等)を取得する。
下流側ECU6Aは、ホイール圧の目標値である目標ホイール圧(又は目標減速度)に基づいて、アクチュエータ5に対する制御を実行するECUである。下流側ECU6Aは、目標ホイール圧に基づいて、アクチュエータ5に対して、上記のように、増圧制御、減圧制御、保持制御、又は加圧制御を実行する。
ここで、ホイールシリンダ541に対する制御を例に下流側ECU6Aによる各制御状態について説明すると、増圧制御では、増圧弁52(及び差圧制御弁51)が開状態となり、減圧弁54が閉状態となる。なお、差圧制御弁51と並列に設置されたチェックバルブ51aにより、上流から下流へのブレーキ液の流れは許容され、その逆は禁止される。したがって、上流側の液圧が下流側の液圧より高い場合、差圧制御弁51への制御なしに、チェックバルブ51aを介してブレーキ液は下流に供給される。減圧制御では、増圧弁52が閉状態となり、減圧弁54が開状態となる。保持制御では、増圧弁52及び減圧弁54が閉状態となる。また、保持制御は、増圧弁52を閉じず、減圧弁54を閉じ、差圧制御弁51を閉じる(絞る)ことでも実行できる。また、保持制御では、加圧応答性の観点からモータ90及びポンプ57を駆動させたまま、差圧制御弁51からブレーキ液を上流側に漏らしつつ、差圧を維持する制御もなされる。つまり、差圧制御弁51及び/又は増圧弁52は、ホイール圧を保持する「保持弁」に相当する。加圧制御では、差圧制御弁51が差圧状態(絞り状態)となり、増圧弁52が開状態となり、減圧弁54が閉状態となり、モータ90及びポンプ57が駆動する。モータ90及びポンプ57は、マスタ室とホイールシリンダとを接続する液圧路にブレーキ液を供給する「液圧供給部」に相当する。つまり、液圧供給部は、主管路Aにブレーキ液を吐出するポンプ57と、ポンプ57を駆動するモータ90と、を有している。また、減圧弁54は、保持弁51、52によって保持されたホイール圧を減圧する弁といえる。
下流側ECU6Aには、ストロークセンサ71、圧力センサ73、77、及び車輪速度センサ76等の各種センサが接続されている。下流側ECU6Aは、これらセンサから、ストローク情報、マスタ圧情報、反力液圧情報、及び車輪速度情報等を取得する。各種センサと下流側ECU6Aとは、図示しない通信線により接続されている。下流側ECU6Aは、状況や要求に応じて、アクチュエータ5に対し、横滑り防止制御やアンチスキッド制御を実行する。
両ECU6、6Aの協調制御の例について簡単に説明すると、上流側ECU6は、ストローク情報に基づいて目標減速度を設定し、通信線を介して目標減速度情報を下流側ECU6Aに伝達する。目標マスタ圧及び目標ホイール圧は、目標減速度に基づいて決定される。上流側ECU6と下流側ECU6Aは、協調制御により、ホイール圧を目標ホイール圧に(減速度を目標減速度に)近づけるようにブレーキ液の液圧を制御する。上流側ECU6ではストロークに基づき目標減速度を演算して目標マスタ圧を演算し、下流側ECU6Aでは目標減速度に基づき目標ホイール圧を演算し、検出されたマスタ圧(又は目標マスタ圧)と目標ホイール圧とに基づき加圧量(制御量)を設定する。下流側ECU6Aは、制御状況(アンチスキッド制御中等)を上流側ECU6に送信する。
また、両ECU6、6Aは、ハイブリッドECU81との回生協調制御を実行する。この場合、例えば、ブレーキ操作開始から所定状況までは、回生制動装置8による回生制動力とアクチュエータ5によるホイール圧の加圧(液圧制動力)により目標減速度を達成させる。そして、所定状況以降は回生制動力とサーボ圧発生装置4によるマスタ圧の増圧を主体として目標減速度を達成させ、ブレーキ操作終了付近では、回生制動力から液圧制動力(アクチュエータ5による加圧)に切り替えるいわゆるすり替え制御が実行される。
このように車両用制動装置BFは、マスタピストン14、15を駆動するサーボ圧を発生させるサーボ室1A、及びマスタピストン14、15の駆動によりマスタ圧を発生させるマスタ室1D、1Eを有するマスタシリンダ1と、サーボ室1Aにサーボ圧を発生させるサーボ圧発生装置4と、サーボ圧発生装置4に対し、マスタの目標値である目標マスタ圧に基づいて、サーボ圧を増圧する増圧制御、サーボ圧を保持する保持制御、又はサーボ圧を減圧する減圧制御を実行する上流側ECU6と、マスタ室1D、1Eとホイールシリンダ541〜544とを接続する主管路Aに配置され、自身よりホイールシリンダ541〜544側の液圧を自身よりマスタ室1D、1E側の液圧よりも差圧制御分だけ高く制御可能な差圧制御弁51及び/又はホイール圧を保持する増圧弁52と、主管路Aのうち差圧制御弁51とホイールシリンダ541〜544との間の部分にブレーキ液を吐出するポンプ57と、ポンプ57を駆動するモータ90と、ホイールシリンダ541〜544と調圧リザーバ56との間に配置された減圧弁54、55と、マスタ圧又は目標マスタ圧と目標ホイール圧とに基づいて、ホイール圧が目標ホイール圧となるように、差圧制御弁51、モータ90、及び減圧弁54、55を制御する下流側ECU6Aと、を備えている。
(目標設定処理)
ここで、本実施形態の目標設定処理について説明する。本実施形態では、車速が所定速度以下の際に目標設定処理を実行する。すなわち、目標設定処理は、回生制動力が所定値以下である場合に実行される。上流側ECU6は、機能として、上流制御部61と、目標設定部62と、を備えている。上流制御部61は、上記のように、サーボ圧発生装置4に対し、目標マスタ圧に基づいて、増圧制御、保持制御、又は減圧制御を実行するように構成されている。
目標設定部62は、ホイール圧を保持又は減圧する場合に、ホイール圧を増圧する場合に比べて、目標マスタ圧が目標ホイール圧に対してより小さくなるように目標マスタ圧を設定する「目標設定処理」を実行する。目標設定部62は、ホイール圧を増圧する場合には、目標設定処理として、目標マスタ圧が目標ホイール圧に追従するように目標マスタ圧を設定する。まとめると、目標設定部62は、目標マスタ圧を目標ホイール圧以下に設定するとともに、ホイール圧を保持又は減圧する場合、ホイール圧を増圧する場合に比べて、目標マスタ圧と目標ホイール圧との差が大きくなるように目標マスタ圧及び目標ホイール圧を設定する目標設定処理を実行する。この際の目標マスタ圧の下げ幅は、不感帯の片方の幅(目標値から不感帯の上限値までの幅)から、目標マスタ圧(すなわち、目標マスタ圧を0にする)までの間で設定される。本実施形態の目標設定部62は、目標設定処理において、ホイール圧を増圧する場合、目標マスタ圧と目標ホイール圧とを同じ値に設定する。そして、下流側ECU6Aは、目標設定処理が実行されると、モータ90を停止する(駆動させない)。
このように、目標設定処理が実行されると、目標マスタ圧は、増圧時に目標ホイール圧に追従するように設定され、保持又は減圧時には、目標ホイール圧よりもより小さい値に設定される。本実施形態の目標設定部62は、目標ホイール圧が目標減速度と回生協調の有無などによって決まるため、下流側ECU6Aで設定された目標ホイール圧をそのまま用い、目標マスタ圧を新たに設定する。また、本実施形態の目標設定部62は、低速走行時にブレーキ操作がなされた場合、すなわち回生制動力が出力されない又は微量の場合に、目標設定処理を実行するように構成されている。車速は車輪速度センサ76などから取得でき、発生可能な又は発生している回生制動力はハイブリッドECU81から取得できる。
ここで、目標設定処理の一例について図4を参照して説明する。この説明では、回生制動力が0である低速走行時のブレーキ操作を例とする。ブレーキ操作が開始されると、目標減速度が増大する。この際、目標設定部62は、目標減速度に対応する目標ホイール圧を設定し、それと同じ値に目標マスタ圧を設定し、サーボ圧発生装置4での増圧を優先させる。つまり、図4(下側)に示すように、両ECU6、6Aは、目標減速度を、マスタ圧の増圧(サーボ圧発生装置4による加圧)のみにより達成させようとする。上流側ECU6は、目標設定部62が設定した目標マスタ圧(目標サーボ圧に対応)に基づいて、サーボ圧発生装置4に対して増圧制御を実行する。下流側ECU6Aは、目標マスタ圧と目標ホイール圧との差が0であるため液圧の不足はなく(又はサーボ圧発生装置4が優先であることを認識し)、アクチュエータ5に対して加圧制御を実行せず、通常の増圧制御の状態(増圧弁52、53が開弁状態で且つ減圧弁54、55が閉弁状態)を維持する。つまり、モータ90及びポンプ57は駆動せず、サーボ圧発生装置4のみによりホイール圧が増圧される。
そして、ストローク(ブレーキ操作量)が一定になったら、演算される目標減速度は一定となる。目標設定部62は、ホイール圧を保持するために目標ホイール圧を一定とするとともに、マスタ圧が減圧側に制御されるように、目標マスタ圧を目標ホイール圧よりも所定圧だけ小さく設定する。これにより、上流側ECU6は、サーボ圧発生装置4に対して減圧制御を実行し、下流側ECU6Aは、アクチュエータ5に対して保持制御を実行する。つまり、上流側ECU6は、減圧弁41を開弁し且つ増圧弁42を閉弁し、下流側ECU6Aは、減圧弁54、55の閉弁及び増圧弁52、53の開弁は維持しつつ、差圧制御弁51を差圧状態(絞り状態)とする。下流側ECU6Aは、マスタ圧(サーボ圧)が徐々に低下するため、その変動に応じて差圧制御弁51の差圧状態を絞る方向(閉弁側)に制御する。この制御により、マスタ圧は低下するが、ホイール圧は一定に保たれる。
そして、上流側ECU6は、減圧により実際のマスタ(圧力センサ77の検出値)が目標マスタ圧に対する不感帯に入ると、保持制御を実行する。なお、これは、制御として、実際のサーボ圧(圧力センサ73の検出値)と目標サーボ圧によってなされるのと同意である。一方、下流側ECU6Aは、ホイール圧を保持するために、上記保持制御を維持し、マスタ圧の保持に応じて、差圧制御弁51への指示圧(制御電流)を一定にする。差圧制御弁51は、例えば閉弁状態に制御される。
そして、ストロークが減少すると、目標減速度が低下し、目標設定部62は、目標ホイール圧と目標マスタ圧との差を保ちつつ、目標減速度の低下に合わせて目標ホイール圧と目標マスタ圧とを小さくする。上流側ECU6は、目標マスタ圧の低下により減圧制御を実行し、マスタ圧は低下する。マスタ圧が低下すると、一定の差圧状態に制御された差圧制御弁51の作用により、ホイール圧も低下する。そして、目標マスタ圧は、目標減速度が減少する中で、目標ホイール圧より先に0(大気圧)となる。目標マスタ圧が0になった後、下流側ECU6Aは、目標減速度の低下に応じて差圧制御弁51を開弁側に制御し(すなわち制御電流を小さくして差圧を小さくし)、ホイール圧を低下させる。下流側ECU6Aは、この目標設定処理を経た液圧制御において、モータ90を駆動させず、主に差圧制御弁51の制御を実行する。
一方、同様の状況で目標設定処理を実行しない場合は、図4(上側)に示すように、ブレーキ操作が開始されると、目標減速度の上昇に応じて、まずアクチュエータ5での加圧制御が実行される。つまり、下流側ECU6Aは、モータ90及びポンプ57を駆動させる。そして、目標減速度が所定値以上となると、耐久性の観点から出力を補助するために、サーボ圧発生装置4での増圧制御が開始される。これに伴い、差圧制御弁51への指示圧も一定となる。そして、ストロークが一定となり、目標ホイール圧が一定になった後(保持制御に移行後)も、下流側ECU6Aは、モータ90及びポンプ57の駆動を継続させ、差圧制御弁51による差圧状態を維持し、差圧制御弁51から上流側にブレーキ液を漏らしつつ、ホイール圧を一定に保つ。
そして、目標減速度が低下すると、上記のようにブレーキ液を漏らしつつ又は減圧弁54、55を開弁してホイール圧を減圧する。このように、目標設定処理を実行しない制御では、増圧開始時にはアクチュエータ5だけの加圧により目標減速度を達成し、目標マスタ圧が設定された後(目標マスタ圧>0)は、目標ホイール圧が所定圧だけ目標マスタ圧より大きくなるように制御される。従来の制御では、回生制動力の大小にかかわらず、アクチュエータ5による加圧から液圧制動力の付与が開始され、モータ90及びポンプ57は駆動し続ける。
本実施形態によれば、目標設定処理により、ホイール圧を保持・減圧する際には、ホイール圧を増圧する際よりも、目標マスタ圧が相対的により小さくなる。ホイール圧への要求が増圧から保持に移行した際、目標マスタ圧が小さくなることで、差圧制御弁51又は増圧弁52によりホイール圧が保持されつつ、サーボ圧発生装置4で減圧制御が実行される。これにより、ホイール圧を保持しつつ、より確実にオーバーシュートを抑制することができる。また、より確実にオーバーシュートが抑制されることで、ホイール圧の増圧を、マスタ圧の増圧主体(すなわちサーボ圧発生装置4主体)で行うことができる。つまり、モータ90を駆動することなく又はモータ90の駆動量を軽減して、液圧制動力を発生させることができる。本実施形態によれば、オーバーシュートの抑制とモータ90の作動音の抑制とを両立することができる。
本実施形態では、ホイール圧増圧の際、目標マスタ圧が目標ホイール圧に追従するように(同じ値になるように)設定されるため、モータ90を駆動させることなく、要求された液圧制動力を発生させることができる。また、下流側ECU6Aは、低速走行時に為された一ブレーキ操作中(踏み増しなし)、モータ90を駆動させる必要はない。これにより、低速走行時のブレーキ操作において、モータ90の作動音が発生せず、静粛性は向上する。また、目標設定処理は、回生制動力が所定値以下である際に実行されるため、前輪Wfと後輪Wrで別々の液圧制動力を発生させる回生協調制御への影響は抑制される。
<その他変形態様>
本発明は、上記実施形態に限られない。例えば、目標設定部62は、目標設定処理として、車速が小さいほど、ホイール圧を保持又は減圧する場合の目標マスタ圧が目標ホイール圧に対してより小さくなるように(目標マスタ圧と目標ホイール圧との差が大きくなるように)、目標マスタ圧及び目標ホイール圧を設定しても良い。例えば、車速が極低速である場合(車速が第2所定速度以下、なお所定速度>第2所定速度)、ホイール圧への要求が増圧から保持に移行した際、目標マスタ圧を0に設定するようにしても良い。一度マスタ圧でホイール圧を増圧した後は、差圧制御弁51又は増圧弁52によりホイール圧を保持できるため、マスタ圧を0にしても良い。これにより、より確実にオーバーシュートを抑制できる。極低速の場合、踏み増しがあっても、アクチュエータ5による加圧のみで対応できる。ヒステリシスの影響は、液圧制動力(ホイール圧)が小さいほど、顕著に表れる。したがって、このように、車速に応じて下げ幅を変える(例えば複数の下げ幅を設定する)ことで、状況に応じたヒステリシス対策が可能となる。なお、車速の大小の判定時期は、ブレーキ操作開始時でも、制御の切り替え時でも、所定時間ごとでも良い。
また、上流側ECU6及び下流側ECU6Aは、1つのECUで実現されても良い。また、目標設定部62は、下流側ECU6Aに設けられても、新たなECUに設けられても良い。また、レギュレータ44の構成は、スプールを用いた構成でも良い。また、本実施形態の目標設定処理は、車速が所定速度以下である場合(回生制動力が所定値以下である場合)など、特定の状況で行われる特定目標設定処理ともいえる。なお、目標設定処理は、回生制動装置8がない車両にも適用できる。また、ホイール圧を増圧する際、目標マスタ圧を目標ホイール圧より小さくしても良いが、その分、モータ90の駆動が伴い、追従させる場合よりも静粛性の向上度は小さくなる。また、車速による規制なしに目標設定処理を実行しても良い。また、目標設定部62は、目標マスタ圧と目標ホイール圧とを設定しても良い。