以下、図面を参照して各実施形態を説明する。
<第1の実施形態>
図1は、第1の実施形態に係るX線診断装置の構成を示したブロック図であり、図2及び図3は、X線診断装置の外観図及び平面図である。X線診断装置1は、撮像装置10、寝台装置30及びコンソール装置40を備えている。撮像装置10は、高電圧発生装置11、X線発生部12、X線検出器13、Cアーム14、状態検出器141及びCアーム駆動装置142を備えている。
高電圧発生装置11は、X線管の陰極から発生する熱電子を加速するために、陽極と陰極の間に印加する高電圧を発生させてX線管へ出力する。
X線発生部12は、被検体Pに対してX線を照射するX線管と、照射X線量を減衰或いは低減させる機能を有するROI(Region Of Interest)フィルタ及びX線絞りを備えている。
X線管は、X線を発生させる真空管であり、陰極(フィラメント)より放出された熱電子を高電圧によって加速させ、この加速電子をタングステン陽極に衝突させることでX線を発生させる。
ROIフィルタはX線管とX線絞りの間に位置し、銅やアルミニウム等の金属板で構成される。ROIフィルタは少なくとも一部、例えば中央部に開口領域を有し、開口領域外のX線を減衰させる。このため、ROIフィルタは、開口領域のX線通過領域ではX線を全透過させ、それ以外の領域のX線を減衰して透過させる。ROIフィルタは、操作者が入力インタフェース43から入力した関心領域に応じて、図示しない駆動装置により駆動される。
X線絞りは、X線管とX線検出器13の間に位置し、金属板としての鉛板で構成される。X線絞りは、開口領域外のX線を遮蔽することにより、X線管が発生したX線を、被検体Pの関心領域にのみ照射されるように絞り込む。例えば、X線絞りは4枚の絞り羽根を有し、これらの絞り羽根をスライドさせることで、X線の遮蔽される領域を任意のサイズに調節する。X線絞りの絞り羽根は、操作者が入力インタフェース43から入力した関心領域に応じて、図示しない駆動装置により駆動される。
X線検出器13は、被検体Pを透過したX線を検出する。このようなX線検出器13としては、X線を直接電荷に変換するものと、光に変換した後、電荷に変換するものとが使用可能であり、ここでは前者を例に説明するが後者であっても構わない。すなわち、X線検出器13は、例えば、被検体Pを透過したX線を電荷に変換して蓄積する平面状のFPD(Flat Panel Detector)と、このFPDに蓄積された電荷を読み出すための駆動パルスを生成するゲートドライバとを備えている。FPDの大きさは一般的に8〜12インチである。FPDは微小な検出素子を列方向及びライン方向に2次元的に配列して構成される。各々の検出素子はX線を感知し、入射X線量に応じて電荷を生成する光電膜と、この光電膜に発生した電荷を蓄積する電荷蓄積コンデンサと、電荷蓄積コンデンサに蓄積された電荷を所定のタイミングで出力するTFT(薄膜トランジスタ)を備えている。蓄積された電荷はゲートドライバが供給する駆動パルスによって順次読み出される。
X線検出器13の後段には、図示しない投影データ生成回路及び投影データ記憶回路を備える。投影データ生成回路は、FPDから行単位あるいは列単位でパラレルに読み出された電荷を電圧に変換する電荷・電圧変換器と、この電荷・電圧変換器の出力をデジタル信号に変換するA/D変換器と、デジタル変換されたパラレル信号を時系列的なシリアル信号に変換するパラレル・シリアル変換器を備えている。投影データ生成回路は、このシリアル信号を時系列的な投影データとして投影データ記憶回路に供給する。投影データ記憶回路は、投影データ生成回路から供給される時系列的な投影データを順次保存して2次元投影データを生成する。この2次元投影データは、メモリ41に保存される。
Cアーム14は、X線発生部12とX線検出器13とを被検体P及び天板33を挟んで対向するように保持することで、天板33上の被検体PのX線撮影を行うことができる構成を有する。
図2に示すように、基台14aは天井面に設置されたレールr1に支持され、レールr1の長手方向(X方向)に沿って移動可能となっている。これにより、基台14aは天井面を水平方向へ移動可能となっている。基台14aが有する支点14b1は、第1支持アーム14c1の基端に接続され、この支点14b1から鉛直方向に伸びる第1回転軸z1を中心に回転することで、第1支持アーム14c1を天井面と水平方向に回転動作させる。すなわち、第1支持アーム14c1は、鉛直方向の第1回転軸z1を中心に回転可能に基台14aに支持される。第1支持アーム14c1の先端が有する支点14b2は、第2支持アーム14c2の上端に接続され、この支点14b2から鉛直方向に伸びる第2回転軸z2を中心に回転することで、第2支持アーム14c2を天井面と水平方向に回転動作させる。すなわち、第2支持アーム14c2は、鉛直方向の第2回転軸z2を中心に回転可能に第1支持アーム14c1に支持される。第2支持アーム14c2の下端が有する接続部14dは、Cアーム14をCアーム14の円弧形状に沿うようにスライド可能に支持し、天井面と平行に伸びるアーム主回転軸Rcを中心にCアーム14を回転可能に保持する。このようにスライド可能且つ回転可能に支持された状態で、Cアーム14は、第2支持アーム14c2に支持される。なお、X線発生部12のX線焦点と、X線検出器13の検出面中心とを通る撮影軸は、アーム主回転軸Rcと、アームスライド軸(図示せず)とに一点で交差するように設計されている。アームスライド軸は、Cアーム14がその円弧形状に沿ってスライドする際に、撮影軸の回転中心とみなせる軸である。当該交差する点(交点)の絶対座標(撮影室座標系上の位置)は、基台14a、第1及び第2支持アーム14c1,14c2が静止した状態において、Cアーム14がアーム主回転軸Rc又はアームスライド軸まわりに回転しても変位しない。当該交点の絶対座標は、一般的には、アイソセンタISと呼ばれている。また、本明細書中、鉛直方向にある場合の当該撮影軸をアイソセンタ軸zSとも呼ぶ。アイソセンタ軸zSは、第1回転軸z1、第2回転軸z2、アーム主回転軸Rc及びアームスライド軸による回転の初期状態において、第1回転軸z1の延長線上に位置する。このとき、水平面上(平面図)では、アイソセンタ軸zSは第1回転軸z1に重なる。すなわち、第1回転軸z1から第2回転軸z2までの水平距離Lと、アイソセンタ軸zSから第2回転軸z2までの水平距離Lとが互いに等しい構成となっている。
以上の構成から、図3に示すように、基台14aの移動、第1回転軸z1による回転、第2回転軸z2による回転を制御することにより、レールr1の幅方向(Y方向)に沿ってアイソセンタ軸zSを直線的に移動可能となっている。また、基台14aの移動、第1回転軸z1による回転、第2回転軸z2による回転を制御することにより、レールr1の幅方向(Y方向)に沿ってCアーム14を平行移動可能となっている。図3中、“CL”は、水平面上において、第2回転軸z2とアイソセンタ軸zSとを結ぶ直線を示す。なお、Cアーム14ないし基台14aは上記の他、天井面に対して、近接又は離反する方向にも移動可能である。また、各部材等の名称は、適宜、変更してもよい。例えば、基台14aは“天井走行枠”と呼んでもよい。レールr1は、“第1レール”、“天井レール”、“軌道”又は“直線軌道”と呼んでもよい。第1支持アーム14c1は“天井支持アーム”と呼んでもよい。第2支持アーム14c2は、“支柱”又は“支柱部”と呼んでもよい。
図1に戻り、Cアーム14は、基台14a、第1回転軸z1、第2回転軸z2、アーム主回転軸Rc及びアームスライド軸に係る動作を実現するための複数の動力源が該当する適当な箇所に備えられている。これらの動力源はCアーム駆動装置142を構成する。Cアーム駆動装置142は、駆動制御機能442からの駆動信号を読み込んでCアーム14をスライド運動、回転運動、直線運動させる。さらに、Cアーム14には、その角度または姿勢や位置の情報を検出する状態検出器141がそれぞれ備えられている。状態検出器141は、例えば回転角や移動量を検出するポテンショメータや、位置検出センサであるエンコーダ等で構成される。エンコーダとしては、例えば磁気方式、刷子式、あるいは光電式等の、いわゆるアブソリュートエンコーダが使用可能となっている。また、状態検出器141としては、回転変位をデジタル信号として出力するロータリエンコーダあるいは直線変位をデジタル信号として出力するリニアエンコーダなど、様々な種類の位置検出機構が適宜、使用可能となっている。
寝台装置30は、被検体Pを載置、移動させる装置であり、基台31と、寝台駆動装置32と、天板33と、支持フレーム34とを備えている。
基台31は、床面に設置され、支持フレーム34を鉛直方向(Z方向)に移動可能に支持する筐体である。
寝台駆動装置32は、寝台装置30の筐体内に収容され、被検体Pが載置された天板33を天板33の長手方向(Y方向)に移動するモータあるいはアクチュエータである。寝台駆動装置32は、駆動制御機能442からの駆動信号を読み込んで、天板33を床面に対して水平方向や垂直方向に移動させる。Cアーム14または天板33が移動することにより、被検体Pに対する撮影軸の位置関係が変化する。なお、寝台駆動装置32は、天板33に加え、支持フレーム34を天板33の長手方向に移動してもよい。
天板33は、支持フレーム34の上面に設けられ、被検体Pが載置される板である。
支持フレーム34は、基台31の上部に設けられ、天板33をその長手方向に沿ってスライド可能に支持する。
コンソール装置40は、メモリ41、ディスプレイ42、入力インタフェース43及び処理回路44を備えている。
メモリ41は、HDD(Hard Disk Drive)など電気的情報を記録するメモリ本体と、それらメモリ本体に付随するメモリコントローラやメモリインタフェースなどの周辺回路とを備えている。メモリ41は、例えば、処理回路44に実行されるプログラムと、処理回路44により生成されたX線画像と、処理回路44の処理に用いるデータ、処理途中のデータ及び処理後のデータ等とが記憶される。
ディスプレイ42は、医用画像などを表示するディスプレイ本体と、ディスプレイ本体に表示用の信号を供給する内部回路、ディスプレイ本体と内部回路とをつなぐコネクタやケーブルなどの周辺回路から構成されている。内部回路は、処理回路44の画像処理機能444から供給される画像データに被検体情報や投影データ生成条件等の付帯情報を重畳して表示データを生成し、得られた表示データに対しD/A変換とTVフォーマット変換を行なってディスプレイ本体に表示する。
入力インタフェース43は、被検体情報の入力、X線照射条件を含むX線撮影条件の設定、各種コマンド信号の入力等を行う。入力インタフェース43は、例えば、Cアーム14の移動指示、関心領域(ROI)の設定などを行うためのトラックボール、スイッチボタン、マウス、キーボード、操作面へ触れることで入力操作を行うタッチパッド、及び表示画面とタッチパッドとが一体化されたタッチパネルディスプレイ等によって実現される。入力インタフェース43は、処理回路44に接続されており、操作者から受け取った入力操作を電気信号へ変換し、処理回路44へと出力する。なお、本明細書において入力インタフェース43はマウス、キーボードなどの物理的な操作部品を備えるものだけに限られない。例えば、装置とは別体に設けられた外部の入力機器から入力操作に対応する電気信号を受け取り、この電気信号を処理回路44へ出力する電気信号の処理回路も入力インタフェース43の例に含まれる。
処理回路44は、メモリ41内のプログラムを呼び出し実行することにより、プログラムに対応するシステム制御機能441、駆動制御機能442、X線制御機能443、画像処理機能444及び表示制御機能445を実現するプロセッサである。なお、図1においては単一の処理回路44にてシステム制御機能441、駆動制御機能442、X線制御機能443、画像処理機能444及び表示制御機能445が実現されるものとして説明したが、複数の独立したプロセッサを組み合わせて処理回路を構成し、各プロセッサがプログラムを実行することにより各機能を実現するものとしても構わない。また、システム制御機能441、駆動制御機能442、X線制御機能443、画像処理機能444及び表示制御機能445は、それぞれシステム制御回路、駆動制御回路、X線制御回路、画像処理回路及び表示制御回路と呼んでもよく、個別のハードウェア回路として実装してもよい。
システム制御機能441は、例えば、入力インタフェース43から入力された操作者によるコマンド信号、及び各種初期設定条件等の情報を一旦記憶した後、これらの情報を処理回路44の各処理機能に送信する。
駆動制御機能442は、例えば、入力インタフェース43から入力されたCアーム14や天板33の駆動に関する情報を用いてCアーム駆動装置142及び寝台駆動装置32の制御を行う。
ここで、駆動制御機能442は、基台14aの移動、第1回転軸z1による回転、及び第2回転軸z2による回転を制御することにより、レールr1の幅方向に沿ってCアーム14を平行移動させる平行移動制御機能を有している。この平行移動制御機能は、レールr1の幅方向に沿ってCアーム14を平行移動させる場合、第1回転軸z1及び第2回転軸z2による回転を互いに同じ角度θに制御すると共に、基台14aの移動を制御するようにしてもよい。なお、第1回転軸z1と第2回転軸z2との間の水平距離をLとし、当該同じ角度をθとし、基台14aの移動距離をDとするとき、平行移動制御機能は、D=L−L cosθの関係に基づいて基台14aの移動を制御するようにしてもよい。また、駆動制御機能442における平行移動制御機能は、特許請求の範囲に記載の平行移動制御手段の一例である。
X線制御機能443は、例えば、システム制御機能441からの情報を読み込んで、高電圧発生装置11における管電流、管電圧、照射時間等のX線照射条件の制御を行う。
画像処理機能444は、例えば、メモリ41から投影データを取得し、投影データにフィルタリング処理等の画像処理を行ってX線画像データを生成し、X線画像データをメモリ41に保存する。更に、画像処理機能444は、得られた複数のX線画像データに対し合成処理や減算(サブトラクション)処理等を行ない、得られたX線画像データをメモリ41に保存する。
表示制御機能445は、例えば、システム制御機能441からの信号を読み込んで、メモリ41から所望のX線画像データを取得してディスプレイ42に表示する制御などを行う。
次に、以上のように構成されたX線診断装置の動作について図4のフローチャート、図5乃至図7の模式図を用いて説明する。以下の説明は、主に、天板33に載置された被検体Pの体軸Yに沿ってCアーム14を移動させるときの動作について述べる。
ステップST1において、X線診断装置1の処理回路44は、操作者による入力インタフェース43の操作に応じて、Cアーム14のアイソセンタ軸zSを天板33上の被検体Pの体軸Yに合わせるように、Cアーム駆動装置142を介して基台14aを移動させる。
ステップST1の終了後、図5(b)又は図6(b)に示すように、Cアーム14のアイソセンタ軸zSは、被検体Pの体軸Y上に位置する。また、水平面上において、第2回転軸z2とアイソセンタ軸zSとを結ぶ直線CLと、被検体Pの体軸Yとのなす角は90度となる。すなわち、Cアーム14が被検体Pの左側(又は右側)から真横入れに配置される。このとき、水平面上(平面図)では、アイソセンタ軸zSは第1回転軸z1に重なっている。また、第1回転軸z1から第2回転軸z2までの水平距離Lと、アイソセンタ軸zSから第2回転軸z2までの水平距離Lとは互いに等しい。
次に、ステップST2において、処理回路44の駆動制御機能442は、例えば、操作者による入力インタフェースの操作に応じて、図5(a)又は図5(c)に示すように、第1回転軸z1による回転、及び第2回転軸z2による回転を制御する。これにより、駆動制御機能442は、Cアーム駆動装置142を介し、レールr1の幅方向に沿ってCアーム14のアイソセンタ軸zSを直線的に移動させる。図5に示す場合、駆動制御機能442は、第1回転軸z1による回転を角度θとし、第2回転軸z2による回転を角度2θに制御する。
あるいは、ステップST2において、駆動制御機能442は、例えば、操作者による入力インタフェースの操作に応じて、図6(a)又は図6(c)に示すように、基台14aの移動、第1回転軸z1による回転、及び第2回転軸z2による回転を制御する。これにより、駆動制御機能442は、Cアーム駆動装置142を介し、レールr1の幅方向に沿ってCアーム14を平行移動させる。図6に示す場合、駆動制御機能442は、第1回転軸z1及び第2回転軸z2による回転を互いに同じ角度θに制御すると共に、基台14aの移動を制御する。また、図6に示す場合、レールr1の長手方向に沿って移動する基台14aの移動距離をD1とし、駆動制御機能442は、D1=L−L cosθの関係に基づいて基台14aの移動を制御している。図6から分かるように、第1回転軸z1及び第2回転軸z2による回転を互いに同じ角度θに制御することにより、Cアーム14を平行移動させている。また、基台14aの移動を制御することにより、Cアーム14の平行移動の方向をレールr1の幅方向に制御している。
なお、図6に示す動作は、図7(b)から図7(a)又は図7(c)に示す如き、天板33及び被検体Pの向きが水平方向に90度回転した場合でも同様に実施できる。すなわち、レールr1の長手方向と被検体Pの対軸Yとは、互いに直交する場合に限らず、互いに平行な関係にあってもよい。また、図5に示す動作も同様に、天板33及び被検体Pの向きが水平方向に90度回転した場合でも実施できる(図示せず)。
ステップST2の終了後、ステップST3において、X線診断装置1は、X線撮像を行う。図5に示した動作の場合、Cアーム14のスライド動作の方向に対応する直線CLと、被検体Pの体軸Yとのなす角が90度ではないので、Cアームスライド動作を伴わないX線撮像が行われる。
一方、図6に示した動作の場合、Cアーム14のスライド動作の方向に対応する直線CLと、被検体Pの体軸Yとのなす角が90度であるため、Cアームスライド動作を伴うX線撮像が実行可能である。例えば、Cアームスライド動作による回転DSA撮影(R−DSA)、3次元DSA撮影(3D−DSA)、3次元LCI撮影(3D−LCI)といった種々の撮影が可能となる。なお、DSAは、Digital Subtraction Angiographyの略語である。LCIは、Low Contrast Imagingの略語である。
ステップST3の終了後、ステップST4において、X線診断装置1は、ステップST3のX線撮像で検査が終了せずに、被検体Pの体軸Y上の別の位置でもX線撮像を行う場合(ST4;No)には、ステップST2に戻る。
一方、ステップST4において、X線診断装置1は、ステップST3のX線撮像で検査が終了した場合(ST4;Yes)には、ステップST5に進む。
ステップST5において、駆動制御機能442は、例えば、操作者による入力インタフェースの操作に応じて、基台14aの移動を制御する。これにより、駆動制御機能442は、Cアーム駆動装置142を介し、レールr1の長手方向に沿ってCアーム14を移動させ、Cアーム14を壁際(図示せず)まで退避させる。
Cアーム14の退避の後、X線診断装置1は、動作を終了する。
上述したように本実施形態によれば、レールの長手方向に移動可能な基台と、第1回転軸を中心に回転可能に基台に支持される第1支持アームと、第2回転軸を中心に回転可能に第1支持アームに支持される第2支持アームと、Cアームとを備えている。これに伴い、基台の移動、第1回転軸による回転、及び第2回転軸による回転を制御することにより、レールの幅方向に沿ってCアームを平行移動させる。
従って、Cアームを平行移動可能であって、X−Yステージ構造よりも小形でシンプルな構造を実現させることができる。補足すると、図6又は図7に示したように、Cアームを平行移動可能である。また、X−Yステージ構造におけるレールr1の幅方向に移動可能なレール構造や駆動部が不要となる。このため、本実施形態によれば、X−Yステージ構造よりも小形でシンプルな構造を実現できる。
なお、図8は、X−Yステージ構造をもつ比較例のX線診断装置の外観図であり、図2に対応する部分には同一符号を付して重複した説明を省略し、主に異なる部分について述べる。以下の各図面についても同様にして重複した説明を省略する。比較例のX線診断装置は、レールr1の長手方向に沿って移動可能な天井走行枠14yと、天井走行枠14y内をレールr1の幅方向に沿って移動可能な基台14xとを有するX−Yステージ構造を備えている。これにより、基台14xは、レールr1の長手方向及び幅方向に平行移動可能となっている。なお、基台14aは、鉛直方向の第1回転軸z1を中心に回転可能に支持アーム14cの上端を支持する。支持アーム14cの下端が有する接続部14dは、Cアーム14をCアーム14の円弧形状に沿うようにスライド可能に支持し、この接続部14dから天井面と平行に伸びるアーム主回転軸を中心に回転することで、Cアーム14を支持アーム14cに対して回転動作させる。また、アイソセンタ軸zSは、第1回転軸z1、アーム主回転軸及びアームスライド軸による回転の初期状態において、第1回転軸z1の延長線上に位置する。このとき、水平面上(平面図)では、アイソセンタ軸zSは第1回転軸z1に重なる。
このような比較例では、前述した通り、大型で複雑なX−Yステージ構造を必要とする。これに対し、本実施形態によれば、X−Yステージ構造よりも小形でシンプルな構造を実現できる。
図9は、別の比較例のX線診断装置の外観図である。別の比較例のX線診断装置は、床置き式であり、床面に配置された図示しない基台から第1回転軸z1aにより水平方向に回転可能に支持される第1支持アームと、第1支持アームの先端から第2回転軸z2aにより水平方向に回転可能に支持される第2支持アームとを備えている。床置き式は、このような2つの回転軸z1a,z2aを連動させる構成により、Cアーム14のアイソセンタ軸zSを回転させながら直線的に移動可能としている。直線的な移動の方向は、図9(a)に示すように、被検体Pの体軸Yの方向としてもよく、図9(b)に示すように、被検体Pの横手方向(X方向)としてもよい。
このような別の比較例では、前述した通り、Cアーム14を平行移動できないため、Cアーム14を被検体Pの真横入れに配置できず、Cアームスライド動作を伴うX線撮像を実行できない。例えば、別の比較例では、回転DSA撮影、3次元DSA撮影、3次元LCI撮影といったX線撮像を実行することができない。
これに対し、本実施形態によれば、Cアームを平行移動できるため、Cアーム14を被検体Pの真横入れに配置でき、Cアームスライド動作を伴うX線撮像を実行できる。なお、天井に配置されたレールに代えて、床面に配置された床レールを設け、床レールに沿って当該床置き式のX線診断装置の基台を移動可能とし、前述同様の平行移動制御機能を用いる構成により、本実施形態と同様のX線診断装置を実現してもよい。
また、本実施形態によれば、幅方向に沿ってCアームを平行移動させる場合、第1回転軸及び第2回転軸による回転を互いに同じ角度に制御すると共に、基台の移動を制御する。これにより、簡単な制御でCアームを平行移動させることができる。なお、第2回転軸z2と第1回転軸z1との間の水平距離と、第2回転軸z2とアイソセンタ軸zSとの水平距離とは、互いに等しい場合に限らず、互いに異なっていてもよい。
また、本実施形態によれば、第1回転軸と第2回転軸との間の水平距離をLとし、同じ角度をθとし、基台の移動距離をDとするとき、D=L−L cosθの関係に基づいて基台の移動を制御する。これにより、一層、簡単な制御でCアームを平行移動させることができる。なお、D=L−L cosθの数式は、例えば、D=L(1−cosθ)のように、数学的に等価な変形を施してもよい。また同様に、第2回転軸z2と第1回転軸z1との間の水平距離と、第2回転軸z2とアイソセンタ軸zSとの水平距離とは、互いに等しい場合に限らず、互いに異なっていてもよい。当該2つの水平距離が互いに異なる場合、数式“D=L−L cosθ”における距離“L”は、第2回転軸z2と第1回転軸z1との間の水平距離とすればよい。
<第2の実施形態>
次に、第2の実施形態に係るX線診断装置について説明する。
第2の実施形態は、第1の実施形態の応用例であり、Cアーム14を壁際に退避させるときに、壁に平行にCアーム14を壁近傍まで退避可能とした構成である。
これに伴い、処理回路44の駆動制御機能442は、前述した機能に加え、退避制御機能を持っている。但し、退避制御機能は、前述した平行移動制御機能とは独立して実行できるため、本実施形態の駆動制御機能442が、前述した平行移動制御機能(レールr1の幅方向に沿った平行移動制御機能)を必ずしも持たなくてもよい。なお、退避制御機能は、例えば、メモリ41に予め記憶された情報に基づき、次の(A)乃至(C)のいずれかに示すようにCアーム14の退避制御を実行してもよい。
(A)メモリ41が基台位置、第1回転軸z1、第2回転軸z2の座標情報を含む退避位置情報を記憶している場合
退避制御機能は、メモリ41から読み出した退避位置情報に基づいて、基台14a、第1回転軸z1及び第2回転軸z2を制御することにより、壁際へCアーム14を移動させる。ここで、基台14a、第1回転軸z1及び第2回転軸z2を制御する順序は、任意であるが、例えば、基台14aを制御した後、第1回転軸z1及び/又は第2回転軸z2を制御すればよい。また、基台位置の座標情報は、例えば、検査室内の座標値でもよく、レールr1上の位置を示す値でもよい。第1回転軸z1、第2回転軸z2の座標情報は、例えば、検査室内の座標値でもよく、各回転軸の回転方向と回転角度とを示す情報としてもよい。
(B)メモリ41が基台位置を記憶している場合(1)
退避制御機能は、メモリ41から読み出した基台位置に基台14aを移動させた後、カメラ等のセンサで壁又はCアーム14を検知しながら、第1回転軸z1及び第2回転軸z2を制御して壁際へCアーム14を移動させる。ここで、センサは、壁又はCアーム14だけでなく、壁近傍の干渉物を検出してもよい。センサが干渉物を検出した場合、退避制御機能は、干渉物に衝突させないように、Cアーム14を移動させる。センサは、Cアーム14、天井又は壁などの任意の位置に取り付けることが可能である。センサは、カメラに限らず、例えば、超音波センサとしてもよく、カメラ及び超音波センサを併用してもよい。
(C)メモリ41が基台位置を記憶している場合(2)
退避制御機能は、メモリ41から読み出した基台位置に基台14aを移動させた後、操作者による入力インタフェース43の操作に応じて、壁際へCアーム14を移動させる。具体的には例えば、退避制御機能は、一つの入力操作に応じて、第1回転軸z1及び第2回転軸z2を連動させてCアーム14を移動させてもよい。
なお、上記(A)乃至(C)のいずれにしても、本実施形態の退避制御機能は、以下のように、Cアーム14を平行移動させることが可能である。
すなわち、駆動制御機能442の退避制御機能は、Cアーム14を退避させる場合、レールr1の長手方向に沿って基台14aを移動させた後に、少なくとも第1回転軸z1及び第2回転軸z2による回転を制御することにより、Cアーム14を平行移動させる。ここで、「少なくとも」の用語は、基台14aの移動と、第1回転軸z1及び第2回転軸z2による回転とのうち、第1回転軸z1及び第2回転軸z2による回転のみを実行する場合を含むことを意味する。この場合、Cアーム14は、レールr1の長手方向と幅方向との間の斜め方向に沿って平行移動する。なお、壁際への退避動作においては、Cアーム14が斜め方向に平行移動しても構わない。すなわち、壁際への退避動作においては、図6又は図7の場合とは異なり、基台14aを静止させていてもよい。
この退避制御機能は、レールr1の幅方向に沿ってCアーム14を平行移動させる場合、第1回転軸z1及び第2回転軸z2による回転を互いに同じ角度に制御すると共に、基台14aの移動を制御するようにしてもよい。ここで、第1回転軸z1と第2回転軸z2との間の水平距離をLとし、当該同じ角度をθとし、基台14aの移動距離をDとするとき、退避制御機能は、D=L−L cosθの関係に基づいて基台14aの移動を制御するようにしてもよい。また、退避制御機能は、第1回転軸z1及び第2回転軸z2による回転をそれぞれ90度に制御するようにしてもよい。また、駆動制御機能442における退避制御機能は、特許請求の範囲に記載の退避制御手段の一例である。
他の構成は、第1の実施形態と同様である。
次に、以上のように構成されたX線診断装置の動作について図10のフローチャート、図11乃至図14の模式図を用いて説明する。以下の説明は、主に、前述したステップST5のCアーム14を退避させるときの動作について述べる。
ステップST5は、以下のステップST5−1〜ST5−4に示すように実行される。
ステップST5−1において、X線診断装置1の処理回路44は、操作者による入力インタフェース43の操作に応じて、Cアーム14に対する退避指示を受け付ける。
ステップST5−2において、処理回路44の駆動制御機能442は、退避指示に応じてメモリ41から基台位置を読み出し、この基台位置に基づいて、Cアーム駆動装置142を制御し、レールr1の長手方向に沿って基台14aをセット位置に移動させる。これにより、レールr1に沿ってCアーム14がセット位置に移動する。セット位置は、図11(a)に平面図を、図11(b)に正面図をそれぞれ示すように、X線診断装置1を収容する検査室の壁際にある。セット位置では、水平面上において、直線CLと、レールr1の長手方向と、壁wLとは、互いに略平行である。また、セット位置では、水平面上において、アイソセンタ軸zSが第1回転軸z1に重なっている。なお、セット位置は、壁wLが紙面右側に位置する場合に限らず、壁wLが紙面左側に位置してもよい。後述する壁近傍への退避動作も同様に、壁wLが紙面右側に位置する場合に限らず、壁wLが紙面左側に位置しても実行可能である。
ステップST5−2の終了後、ステップST5−3において、駆動制御機能442は、少なくとも第1回転軸z1及び第2回転軸z2による回転を制御することにより、Cアーム14を平行移動させる。回転軸による回転の制御は、メモリ41内の退避位置情報に基づく制御としてもよく、図示しないセンサからの出力に基づく制御としてもよく、一つの入力操作に応じた連動制御としてもよい。いずれにしても、回転軸による回転の制御により、Cアーム14が壁近傍の退避位置に退避する。退避位置では、図12(a)に平面図を、図12(b)に正面図をそれぞれ示すように、水平面上において、直線CLと、レールr1の長手方向と、壁wLとは、互いに略平行である。また、退避位置では、水平面上において、第2回転軸z2及びアイソセンタ軸zSが2本のレールr1間になく、一方のレールr1と壁wLとの間にある。すなわち、Cアーム14が壁wLに略平行に退避される(ステップST5−4)。
なお、退避制御機能は、レールr1の幅方向に沿ってCアーム14を平行移動させる場合、第1回転軸z1及び第2回転軸z2による回転を互いに同じ角度θに制御すると共に、基台14aの移動を制御する。ここで、第1回転軸z1と第2回転軸z2との間の水平距離をLとし、当該同じ角度をθとし、基台14aの移動距離をD1とするとき、退避制御機能は、D1=L−L cosθの関係に基づいて基台14aの移動を制御する。但し、本実施形態は、Cアーム14を壁際に退避すればよいので、Cアーム14をレールr1の幅方向に沿って平行移動させる必要はなく、Cアーム14をレールr1の幅方向から外れる方向(斜め方向)に平行移動させてもよい。すなわち、セット位置から退避位置にCアーム14を移動させる際に、基台14aを静止させてもよい。但し、基台14aを移動させてもよい。Cアーム14の退避動作において、基台14aを移動させる場合、基台14aの移動距離はD1としてもよく、D1以外としてもよい。また、第1回転軸z1及び第2回転軸z2による回転の角度θは、図12(a)に示す退避位置において、第1回転軸z1と直線CLとの距離をdとしたとき、d=L sinθに基づき、θ=arc sin(d/L)とすればよい。
また、退避制御機能は、第1回転軸z1及び第2回転軸z2による回転をそれぞれ90度に制御してもよい。この場合、図13(a)に平面図を、図13(b)に正面図をそれぞれ示すように、Cアーム14が壁際の退避位置に退避される。あるいは、図14(a)に平面図を、図14(b)に正面図をそれぞれ示すように、Cアーム14を壁際の退避位置に退避してもよい。いずれの場合も前述同様に、セット位置から退避位置にCアーム14を移動させる際に、基台14aを移動させる必要はない。また、基台14aを移動させる場合には、例えば、基台14aの移動距離D1を、第1回転軸z1と第2回転軸z2との間の水平距離Lとすればよい(D1=L−L cosθ=L−L cos90°=L)。
ステップST5−4の終了後、X線診断装置1は、動作を終了する。
上述したように本実施形態によれば、Cアームを退避させる場合、レールの長手方向に沿って基台を移動させた後に、少なくとも第1回転軸及び第2回転軸による回転を制御することにより、Cアームを平行移動させる。
従って、Cアームを平行移動可能であって、X−Yステージ構造よりも小形でシンプルな構造を実現させることができる。補足すると、図11と、図12乃至図14の各々とに示したように、Cアーム14を平行移動可能である。また、X−Yステージ構造におけるレールr1の幅方向に移動可能なレール構造や駆動部が不要となる。このため、本実施形態によれば、X−Yステージ構造よりも小形でシンプルな構造を実現できる。これに加え、退避の際に、アイソセンタ軸zSに重なる第1回転軸z1を有する第1支持アーム14c1と、アイソセンタ軸zSから離れた位置に第2回転軸z2を有する第2支持アーム14c2とを連動させる。これにより、図12乃至図14の各々に示すように、壁wLに略平行にCアーム14をぎりぎりまで退避させることができる。このため、Cアーム14を退避させた後に、被検体まわりの術者の作業空間を大きく確保することができる。
なお、図15は、X−Yステージ構造をもつ比較例の平面図及び正面図であり、図8に示した比較例のX線診断装置におけるCアームの退避動作を示している。なお、図15の上半分の(a)が平面図であり、図15の下半分の(b)が正面図である。
比較例のX−Yステージ構造によれば、Cアーム14を退避させる際に、図15の左側から右側に示すように、天井走行枠14y内をレールr1の幅方向に沿って基台14xを移動させると共に、基台14xの第1回転軸z1を中心に支持アーム14cを回転させる。なお、図15中、“D1a”は、レールr1の幅方向に沿った基台14xの移動距離を示す。“CLa”は、水平面上において、第1回転軸z1と接続部14dのアーム主回転軸とを結ぶ直線を示す。“L”は、直線CLaの水平距離を示す。
このとき、比較例では、図15(a)の右側に示すように、第1回転軸z1及びアイソセンタ軸zSが2本のレールr1間に位置し、直線CLaが壁wLに対して斜め方向に位置している。すなわち、比較例では、第1回転軸z1の延長線上に常にアイソセンタがある構造のため、Cアーム14を2本のレールr1の外側に平行移動できず、Cアーム14を第1回転軸z1よりも壁wLに寄せて退避させることができない。
これに対し、本実施形態によれば、2本のレールr1の外側にCアームを平行移動可能であって、X−Yステージ構造よりも小形でシンプルな構造を実現させることができる。
また、本実施形態によれば、幅方向に沿ってCアームを平行移動させる場合、第1回転軸及び第2回転軸による回転を互いに同じ角度に制御すると共に、基台の移動を制御する。これにより、簡単な制御でCアームを平行移動させることができる。なお、第2回転軸z2と第1回転軸z1との間の水平距離と、第2回転軸z2とアイソセンタ軸zSとの水平距離とは、互いに等しい場合に限らず、互いに異なっていてもよい。
また、本実施形態によれば、第1回転軸と第2回転軸との間の水平距離をLとし、当該同じ角度をθとし、基台の移動距離をDとするとき、D=L−L cosθの関係に基づいて基台の移動を制御する。これにより、一層、簡単な制御でCアームを平行移動させることができる。なお、D=L−L cosθの数式は、例えば、D=L(1−cosθ)のように、数学的に等価な変形を施してもよい。また同様に、第2回転軸z2と第1回転軸z1との間の水平距離と、第2回転軸z2とアイソセンタ軸zSとの水平距離とは、互いに等しい場合に限らず、互いに異なっていてもよい。当該2つの水平距離が互いに異なる場合、数式“D=L−L cosθ”における距離“L”は、第2回転軸z2と第1回転軸z1との間の水平距離とすればよい。
また、本実施形態によれば、第1回転軸及び第2回転軸による回転をそれぞれ90度に制御する。この場合、より一層、簡単な制御でCアームを平行移動できる。これに加え、広い作業空間を素早く確保することができる。
<第3の実施形態>
次に、第3の実施形態に係るX線診断装置について説明する。
第3の実施形態は、第2の実施形態の変形例であり、退避後のCアーム14の向きを目標にして、少なくとも第1回転軸z1及び第2回転軸z2による回転を制御する構成となっている。
これに伴い、退避制御機能は、Cアーム14を退避させる場合、少なくとも第1回転軸z1及び第2回転軸z2による回転により、第1支持アーム14c1の長手方向がレールr1の長手方向と交わり、かつ、Cアーム14の正面方向がレールr1の長手方向と平行又は垂直となるように、Cアーム14を退避させる。ここで、「少なくとも」の用語は、前述した意味をもっている。なお、退避制御機能は、必ずしもCアーム14を壁際に退避させなくてもよい。
他の構成は、第2の実施形態と同様である。
以上のような構成によれば、退避制御機能は、少なくとも第1回転軸z1及び第2回転軸z2による回転により、第1支持アーム14c1の長手方向がレールr1の長手方向と交わり、かつ、Cアーム14の正面方向がレールr1の長手方向と平行又は垂直となるように、Cアーム14を退避させる。
ここで、Cアーム14の正面方向がレールr1の長手方向と平行となるようにCアーム14を退避させた場合、退避位置では、前述した図12乃至図14のいずれかに示したように、Cアーム14が壁wLの近傍に位置する。
一方、Cアーム14の正面方向がレールr1の長手方向と垂直となるようにCアーム14を退避させた場合、退避位置では、図16乃至図18のいずれかに示すように、水平面上において、直線CLと、レールr1の長手方向とは互いに略垂直となる。また、水平面上において、直線CLと壁wLとは、互いに略平行となる。なお、図16乃至図18は、それぞれ図12乃至図14に比べ、レールr1を水平方向に90度回転させた場合を示す平面図及び正面図である。
従って、いずれにしても第3の実施形態によれば、第2の実施形態と同様の効果を得ることができる。
<第4の実施形態>
図19は、第4の実施形態に係るアンギオCT装置の構成を示したブロック図であり、図20及び図21は、アンギオCT装置の外観図及び平面図である。
第4の実施形態は、第1乃至第3のいずれかの実施形態のX線診断装置1をアンギオCT装置に適用した構成となっている。このアンギオCT装置100は、図19に示すように、前述したX線診断装置1と、CT(Computed Tomography)ガントリ50と、コンソール装置70とを備えている。なお、アンギオCT装置100のうち、アンギオ装置は、前述したX線診断装置1に対応する。アンギオCT装置100のうち、CT装置は、寝台装置30、CTガントリ50及びコンソール装置70に対応する。寝台装置30は、アンギオ装置及びCT装置に共通に用いられる。なお、コンソール装置40,70は、一体化(インテグレーション)してもよい。
ここで、X線診断装置1は、前述同様に、撮像装置10、寝台装置30及びコンソール装置40を備えている。
撮像装置10は、図20及び図21に示すように、前述同様に、基台14aと、第1支持アーム14c1と、第2支持アーム14c2と、Cアーム14とを備えている。
基台14aは、天井に配置されたレールr1に支持され、当該レールr1の長手方向に移動可能である。なお、レールr1は、“天井レール”又は“第1レール”と呼んでもよい。第1支持アーム14c1は、鉛直方向の第1回転軸z1を中心に回転可能に基台14aに支持される。第2支持アーム14c2は、鉛直方向の第2回転軸z2を中心に回転可能に第1支持アーム14c1に支持される。Cアーム14は、第2支持アーム14c2に支持される。撮像装置10の他の構成も前述した通りである。
寝台装置30及びコンソール装置40は、コンソール装置70と通信可能となっている。寝台装置30及びコンソール装置40の他の構成は、前述同様である。例えば、コンソール装置40の処理回路44の駆動制御機能442は、前述同様に、基台14aの移動、第1回転軸z1による回転、及び第2回転軸z2による回転を制御することにより、レールr1の幅方向に沿ってCアーム14を平行移動させる平行移動制御機能を含んでいる。これに限らず、駆動制御機能442は、前述した全ての平行移動制御機能及び退避制御機能のうちの所望の制御機能を実行することができる。
一方、CTガントリ50は、床面に配置されたレールr2であって、天井に配置されたレールr1の長手方向に直交する長手方向を有する当該レールr2の上を移動可能となっている。なお、レールr2は、“床レール”又は“第2レール”と呼んでもよい。レールr2の長手方向は、被検体Pの体軸Yの方向及び天板33の長手方向に平行である。
図20に戻って、CTガントリ50は、X線管51、X線検出器52、回転フレーム53、X線高電圧装置54、CT制御装置55、ウェッジ56、コリメータ57及びDAS58を有する。
X線管51は、X線を発生する。具体的には、X線管51は、熱電子を発生する陰極と、陰極から飛翔する熱電子を受けてX線を発生する陽極とを保持する真空管を含む。X線管51は高圧ケーブルを介してX線高電圧装置54に接続されている。陰極と陽極との間には、X線高電圧装置54により管電圧が印加される。管電圧の印加により陰極から陽極に向けて熱電子が飛翔する。陰極から陽極に向けて熱電子が飛翔することにより管電流が流れる。X線高電圧装置54からの高電圧の印加及びフィラメント電流の供給により、陰極から陽極に向けて熱電子が飛翔し、熱電子が陽極に衝突することによりX線が発生される。
X線検出器52は、X線管51から発生され被検体Pを通過したX線を検出し、検出されたX線の線量に対応した電気信号をDAS58へと出力する。X線検出器52は、チャネル方向に複数のX線検出素子が配列されたX線検出素子列がスライス方向(列方向、row方向)に複数配列された構造を有する。X線検出器52は、例えば、グリッド、シンチレータアレイ及び光センサアレイを有する間接変換型の検出器である。シンチレータアレイは、複数のシンチレータを有する。シンチレータは、入射X線量に応じた光量の光を出力する。グリッドは、シンチレータアレイのX線入射面側に配置され、散乱X線を吸収するX線遮蔽板を有する。光センサアレイは、シンチレータからの光の光量に応じた電気信号に変換する。光センサとしては、例えば、光電子増倍管が用いられる。なお、X線検出器52は、入射X線を電気信号に変換する半導体素子を有する直接変換型の検出器(半導体検出器)であっても構わない。
回転フレーム53は、X線管51とX線検出器52とを体軸Yに一致する回転軸Y回りに回転可能に支持する円環状のフレームである。具体的には、回転フレーム53は、X線管51とX線検出器52とを対向支持する。回転フレーム53は、固定フレーム(図示せず)に回転軸Y回りに回転可能に支持される。CT制御装置55により回転フレーム53が回転軸Y回りに回転することによりX線管51とX線検出器52とを回転軸Y回りに回転させる。回転フレーム53は、CT制御装置55の駆動機構からの動力を受けて回転軸Y回りに一定の角速度で回転する。回転フレーム53の開口部には、画像視野(FOV)が設定される。
X線高電圧装置54は、変圧器(トランス)及び整流器等の電気回路を有し、X線管51に印加する高電圧及びX線管51に供給するフィラメント電流を発生する高電圧発生装置と、X線管51が照射するX線に応じた出力電圧の制御を行うX線制御装置とを有する。高電圧発生装置は、変圧器方式であってもよいし、インバータ方式であっても構わない。X線高電圧装置54は、CTガントリ50内の回転フレーム53に設けられてもよいし、CTガントリ50内の固定フレーム(図示しない)に設けられても構わない。
ウェッジ56は、被検体Pに照射されるX線の線量を調節する。具体的には、ウェッジ56は、X線管51から被検体Pへ照射されるX線の線量が予め定められた分布になるようにX線を減衰する。例えば、ウェッジ56としては、ウェッジフィルタ(wedge filter)やボウタイフィルタ(bow-tie filter)等のアルミニウム等の金属板が用いられる。
コリメータ57は、ウェッジ56を透過したX線の照射範囲を限定する。コリメータ57は、X線を遮蔽する複数の鉛板をスライド可能に支持し、複数の鉛板により形成されるスリットの形態を調節する。
DAS58(Data Acquisition System)は、X線検出器52により検出されたX線の線量に応じた電気信号をX線検出器52から読み出し、読み出した電気信号を可変の増幅率で増幅し、ビュー期間に亘り電気信号を積分することにより当該ビュー期間に亘るX線の線量に応じたデジタル値を有するCT生データを収集する。DAS58は、例えば、CT生データを生成可能な回路素子を搭載したASICにより実現される。CT生データは、非接触データ伝送装置等を介してコンソール装置70に伝送される。
CT制御装置55は、コンソール装置70の処理回路73の撮像制御機能733に従いX線CT撮像を実行するためにX線高電圧装置54やDAS58を制御する。CT制御装置55は、CPU等を有する処理回路と、モータ及びアクチュエータ等の駆動機構とを有する。処理回路は、ハードウェア資源として、CPUやMPU等のプロセッサとROMやRAM等のメモリとを有する。また、CT制御装置55は、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field Programmable Gate Array)、CPLD(Complex Programmable Logic Device)、SPLD(Simple Programmable Logic Device)により実現されてもよい。
なお、CTガントリ50は、X線発生部とX線検出部とが一体として被検体の周囲を回転するRotate/Rotate-Type(第3世代CT)、リング状にアレイされた多数のX線検出素子が固定され、X線発生部のみが被検体の周囲を回転するStationary/Rotate-Type(第4世代CT)等の様々なタイプがあり、いずれのタイプでも適用可能である。
コンソール装置70は、通信インタフェース71、CTデータメモリ72、処理回路73、ディスプレイ74、メモリ75及び入力インタフェース76を有する。例えば、通信インタフェース71、CTデータメモリ72、処理回路73、ディスプレイ74、メモリ75及び入力インタフェース76間のデータ通信は、バス(bus)を介して行われる。
通信インタフェース71は、有線、無線又はその両方にてコンソール装置40と通信するための回路である。なお、図示しないが、コンソール装置40もコンソール装置70と通信するための回路である通信インタフェースを備えている。
CTデータメモリ72は、CTガントリ50から伝送されたCT生データを記憶する記憶装置である。CTデータメモリ72は、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)、集積回路記憶装置等の記憶装置である。
処理回路73は、ハードウェア資源として、CPUあるいはMPU、GPU(Graphics Processing Unit)等のプロセッサとROMやRAM等のメモリとを有する。処理回路73は、当該メモリから読み出した各種プログラムの実行により再構成機能731、画像処理機能732、撮像制御機能733及び表示制御機能734を実現する。なお、再構成機能731、画像処理機能732、撮像制御機能733及び表示制御機能734は、一の基板の処理回路73により実装されても良いし、複数の基板の処理回路73により分散して実装されても良い。
再構成機能731において処理回路73は、CTガントリ50から伝送されたCT生データに基づいて、被検体Pに関するCT値の空間分布を表現するCT画像を再構成する。画像再構成アルゴリズムとしては、FBP(filtered back projection)法や逐次近似再構成法等の既存のアルゴリズムが用いられれば良い。また、処理回路73は、CT生データに基づいてCTに関する位置決め画像を生成することも可能である。
画像処理機能732において処理回路73は、再構成機能731により再構成されたCT画像に種々の画像処理を施す。例えば、処理回路73は、CT画像にボリュームレンダリングや、サーフェスボリュームレンダリング、画素値投影処理、MPR(Multi-Planer Reconstruction)処理、CPR(Curved MPR)処理等の3次元画像処理を施して表示画像を生成する。
撮像制御機能733において処理回路73は、CT撮像を行うためにCTガントリ50と寝台装置30とを同期的に制御する。また、処理回路73は、CTガントリ50による位置決めスキャン(以下、CT位置決めスキャンと呼ぶ)を実行可能である。CT位置決めスキャンのために処理回路73は、CTガントリ50と寝台装置30とを同期的に制御する。
表示制御機能734において処理回路73は、種々の情報をディスプレイ74に表示する。例えば、処理回路73は、再構成機能731により再構成されたCT画像をディスプレイ74に表示する。
ディスプレイ74は、表示制御機能734における処理回路73の制御を受けて、種々の情報を表示する。ディスプレイ74としては、例えば、CRTディスプレイや液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイ、LEDディスプレイ、プラズマディスプレイ、又は当技術分野で知られている他の任意のディスプレイが適宜利用可能である。
メモリ75は、種々の情報を記憶するHDDやSSD、集積回路記憶装置等の記憶装置である。また、メモリ75は、CD−ROMドライブやDVDドライブ、フラッシュメモリ等の可搬性記憶媒体との間で種々の情報を読み書きする駆動装置等であっても良い。
入力インタフェース76は、ユーザからの各種指令を入力する。具体的には、入力インタフェース76は、入力機器に接続されている。入力機器としては、キーボードやマウス、トラックボール、ジョイスティック、各種スイッチ等が利用可能である。入力インタフェース76は、入力機器からの出力信号をバスを介して処理回路73に供給する。
次に、以上のように構成されたアンギオCT装置の動作について説明する。
アンギオCT装置100においては、レールr1に沿ってCアーム14を退避させ、レールr2に沿ってCTガントリ50を撮像位置にセットすることにより、CT装置が使用可能となる。また、レールr2に沿ってCTガントリ50を退避させ、レールr1に沿ってCアーム14を撮像位置にセットすることにより、アンギオ装置としてのX線診断装置1が使用可能となる。
ここで、X線診断装置1が使用可能な場合、X線診断装置1は、前述したステップST1〜ST5と同様に動作することができる。このとき、X線診断装置1は、前述同様に、例えば、基台14aの移動、第1回転軸z1による回転、及び第2回転軸z2による回転を制御することにより、Cアーム14をレールr1の幅方向に沿って平行移動させることができる。
また、X線診断装置1は、前述したステップST5−1〜ST5−4と同様に動作することができる。Cアーム14を退避させる場合、X線診断装置1は、前述同様に、例えば、レールr1の長手方向に沿って基台14aを移動させた後に、少なくとも第1回転軸z1及び第2回転軸z2による回転を制御することにより、Cアーム14を平行移動させることができる。
上述したように本実施形態によれば、床面に配置された第2レールに沿ってCTガントリを移動させた後、基台の移動、第1回転軸による回転、及び第2回転軸による回転を制御することにより、第1レールの幅方向に沿ってCアームを平行移動させる。これにより、アンギオCT装置において、第1の実施形態と同様の効果を得ることができる。
また、Cアームを退避させる場合、第1レールの長手方向に沿って基台を移動させた後に、少なくとも第1回転軸及び第2回転軸による回転を制御することにより、Cアームを平行移動させる。これにより、アンギオCT装置において、第2の実施形態と同様の効果を得ることができる。
以上説明した少なくとも一つの実施形態によれば、レールの長手方向に移動可能な基台と、第1回転軸を中心に回転可能に基台に支持される第1支持アームと、第2回転軸を中心に回転可能に第1支持アームに支持される第2支持アームと、Cアームとを備えている。これに伴い、基台の移動、第1回転軸による回転、及び第2回転軸による回転を制御することにより、レールの幅方向に沿ってCアームを平行移動させる。
従って、Cアームを平行移動可能であって、X−Yステージ構造よりも小形でシンプルな構造を実現させることができる。
上記説明において用いた「プロセッサ」という文言は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)、或いは、特定用途向け集積回路(Application Specific Integrated Circuit:ASIC)、プログラマブル論理デバイス(例えば、単純プログラマブル論理デバイス(Simple Programmable Logic Device:SPLD)、複合プログラマブル論理デバイス(Complex Programmable Logic Device:CPLD)、及びフィールドプログラマブルゲートアレイ(Field Programmable Gate Array:FPGA)等の回路を意味する。プロセッサは記憶回路に保存されたプログラムを読み出し実行することで機能を実現する。なお、記憶回路にプログラムを保存する代わりに、プロセッサの回路内にプログラムを直接組み込むよう構成しても構わない。この場合、プロセッサは回路内に組み込まれたプログラムを読み出し実行することで機能を実現する。なお、本実施形態の各プロセッサは、プロセッサごとに単一の回路として構成される場合に限らず、複数の独立した回路を組み合わせて1つのプロセッサとして構成し、その機能を実現するようにしてもよい。さらに、図1又は図16における複数の構成要素を1つのプロセッサへ統合してその機能を実現するようにしてもよい。
なお、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。