JP6967984B2 - 肌評価方法 - Google Patents

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Description

本発明は、肌の評価技術に関し、特に肌の粘弾性特性を用いて評価する技術に関する。
肌(皮膚)の粘弾性を測定する装置として、吸引方式の測定装置や回転方式の測定装置などがある。吸引方式では、プローブにより皮膚に陰圧を掛け皮膚表面を一定時間吸引した後、開放する過程における皮膚表面の変位が測定される。回転方式では、皮膚表面にプローブにより回転トルクを一定時間掛け、その回転が測定される。
このような測定装置で測定された値を用いることで、肌のハリ(弾力)などが評価される。特許文献1には、皮膚表層の粘弾性を測定し、測定した粘弾性を粘弾性基準値と比較することでスキンケアを評価する手法が提案されている。
特開2012−161371号公報
Nils Krueger, etc., "Age-related changes in skin mechanical properties: a quantitative evaluation of 120 female subjects", Skin Research & Technology, Volume 17, Issue 2, May 2011, Pages 141-148 桑水流 理、他、"顔皮膚のしわ形成に対する老化の影響"、第55回理論応用力学講演会 講演論文集 セッションID:3F13、2006年3月25日
本発明者らは、上述のような測定装置により測定された値そのものを用いて行う肌の粘弾性評価には、精度上の問題があることを明らかにした。その主な原因の一つとして、本発明者らは、測定条件のバラつき、特に、クリープ回復時の測定条件のバラつきに着目した。例えば、クリープ回復時、即ち吸引力や回転トルクの開放後から所定の測定時間、測定装置のプローブと肌表面との距離を一定に保つ必要があるところ、このような測定条件を常に一定に保つことは大変難しい。
図9は、肌の粘弾性測定で得られた肌の変形量の時間変化を示すグラフである。
一般的な肌の粘弾性評価は、図9に示される、Ue、Uv、Uf、Ur、Uaなどの各測定値又はそれら測定値間の比率(Ua/Uf、Ur/Uf、Ur/Ueなど)を用いて行われている。
本発明者らは、肌の粘弾性測定で得られる測定値そのもの、特にクリープ回復時の測定値には、正規化のみでは解消困難な精度上の問題があることを見出した。更に、本発明者らは、このような粘弾性パラメータと年齢との関係を確認し(上記非特許文献1参照)、肌のハリは本来、年齢と共に低下していくことが知られているにも関わらず、測定値そのものと年齢との間の相関が比較的低いことに着目し、測定値自体やその比率では、高精度に肌の粘弾性評価を行うことが難しいと考えた。
本発明は、このような課題に鑑みてなされたものであり、肌の粘弾性特性を用いた高精度な肌評価を可能とする技術に関する。
本明細書において「肌」は、「皮膚」と区別せずに用いられる。
本発明の態様では、上述した課題を解決するために、以下の構成を採用する。
本発明の態様は、肌評価方法に関する。肌評価方法は、被験者の肌に対する粘弾性測定の測定値を取得する測定値取得工程と、取得された測定値に基づいて、時定数が互いに異なる一以上のクリープ回復特性成分を用いて記述される、クリープ回復の時間特性を示す回復曲線の近似式を算出する算出工程と、算出された近似式を用いて、被験者の肌の粘弾性情報を生成する生成工程と、を含む。
なお、本発明の別態様は、例えば、上記態様に係る肌評価方法を実行する肌評価装置(情報処理装置、コンピュータ)に関するものであり、上記態様に係る肌評価方法をコンピュータに実行させるプログラムに関するものであり、このようなプログラムを記録したコンピュータが読み取り可能な記憶媒体に関するものである。この記録媒体は、非一時的な有形の媒体を含む。
上記態様によれば、肌の粘弾性特性を用いた高精度な肌評価を可能とする技術を提供することができる。
第一実施形態に係る肌評価方法を示すフローチャートである。 肌の粘弾性測定により得られる肌の変形量の時間変化の例を示すグラフである。 第二実施形態における肌評価方法を示すフローチャートである。 肌評価装置のハードウェア構成例を概念的に示す図である。 近似式に基づくクリープ変形曲線及びクリープ回復曲線と測定値に基づく各曲線を示すグラフである。 近似式に基づくクリープ変形曲線及びクリープ回復曲線と測定値に基づく各曲線を示すグラフである。 第一試験の結果を示すグラフである。 第二試験の結果を示すグラフである。 肌の粘弾性測定で得られた肌の変形量の時間変化を示すグラフである。
以下、本発明の好ましい実施形態の例(以降、本実施形態と表記する)について説明する。なお、以下に挙げる各実施形態はそれぞれ例示であり、本発明は以下の各実施形態の構成に限定されない。
[第一実施形態]
第一実施形態に係る肌評価方法について説明する。
図1は、第一実施形態に係る肌評価方法を示すフローチャートである。
第一実施形態に係る肌評価方法は、工程(S11)、工程(S13)、及び工程(S15)を含み、工程(S15)で生成された肌の粘弾性情報に基づいて、被験者の肌を評価する。
工程(S11)では、被験者の肌に対する粘弾性測定の測定値が取得される。
ここで「肌に対する粘弾性測定」とは、肌(皮膚)に何らかの負荷を所定時間掛けることで肌が時間と共に変形していく過程及びその負荷を肌から開放して(肌に掛けることをやめて)肌が時間と共に元に戻ろうとする過程を測定することを意味する。本実施形態では、この粘弾性測定の具体的な測定方法は、限定されず、上述の吸引方式又は回転方式であってもよいし、他の方法であってもよい。
本明細書では、この粘弾性測定で測定される前半過程の現象を「クリープ変形」と表記し、後半過程の減少を「クリープ回復」と表記する。即ち、「クリープ変形」とは、肌(皮膚)に荷重を掛けることで肌が時間と共に変形していく現象を意味し、「クリープ回復」とは、その荷重を開放して肌が時間と共に元に戻ろうとする現象を意味するものとする。
工程(S11)で取得される測定値は、肌に対する粘弾性測定で得られる測定値の一部であってもよいし、全部であってもよい。例えば、クリープ変形の測定値のみ又はクリープ回復の測定値のみが取得されてもよい。
また、当該測定値は、粘弾性測定により得られる物理量に基づく値であればよい。例えば、当該測定値は、吸引方式で測定された変形量(吸引長)であってもよいし、回転方式で測定された変形量(角度)であってもよい。
更に、当該測定値は、測定された値そのものでなくてもよい。例えば、当該測定値は、変形量に対する原形量の割合であるひずみ値であってもよいし、弾性率、クリープコンプライアンス(弾性率の逆数)などであってもよい。また、当該測定値は、何らかの基準で正規化(規格化)された測定値(相対値)であってもよい。例えば、工程(S11)では、クリープ回復開始時(最大変位時)の測定値で正規化された測定値(相対値)を取得することができる。また、被験者の肌に対して実施された複数回の測定で得られた各回の測定値を正規化(平均化)した測定値が取得されてもよい。このように正規化された測定値が取得されることで、測定条件のバラつきを低減することができる。
また、工程(S11)で取得される測定値は、粘弾性測定においてその値が測定された時間(以降、測定時間と表記する場合もある)と関連付け可能な状態で取得される。当該測定時間が予め決められている場合には、その測定時間の測定値のみが取得されればよい。例えば、測定値の取得順に応じて予め決められた各測定時間と各測定値とを関連付けることができる。また、測定値と測定時間とのペアが取得されてもよい。
また、工程(S11)での取得手法は制限されない。例えば、工程(S11)が測定装置により実行される場合には、工程(S11)は、粘弾性測定を行い、その測定値を計測することを包含してもよい。また、工程(S11)が測定装置以外のコンピュータにより実行される場合には、工程(S11)は、そのコンピュータが測定装置から無線若しくは有線の通信又は可搬型記録媒体などを介して測定値を取得すること、或いはそのコンピュータのユーザにより当該測定値が入力されることで取得することを包含してもよい。
工程(S13)では、工程(S11)で取得された測定値に基づいて、時定数が互いに異なる一以上のクリープ回復特性成分を用いて記述される、クリープ回復の時間特性を示す回復曲線の近似式が算出される。工程(S13)は、デバイスやコンピュータなどにより実行される。但し、工程(S13)の実行契機は、人間により与えられてもよいし、工程(S11)に続いてコンピュータ等自身により自動で判断されてもよい。
ここで「クリープ回復の時間特性を示す回復曲線」とは、時間軸とクリープ回復の指標値軸とで示される曲線であって、クリープ回復の時間変化を表す曲線を意味する。以降、この「クリープ回復の時間特性を示す回復曲線」をクリープ回復曲線と表記する場合もある。後述する図2におけるクリープ回復曲線が一例である。但し、クリープ回復曲線は、図2の例に限定されない。例えば、図2に示されるクリープ回復曲線を対称移動させた相似曲線をクリープ回復曲線としてもよい。この場合のクリープ回復曲線は、クリープ変形の時間特性を示す変形曲線に近い形状となる。
これに対して「クリープ変形曲線」との表記を用いる場合がある。この「クリープ変形曲線」とは、クリープ変形の時間特性を示す変形曲線であり、時間軸とクリープ変形の指標値軸とで示される曲線であって、クリープ変形の時間変化を表す曲線を意味する。後述する図2におけるクリープ変形曲線が一例である。
図2は、肌の粘弾性測定により得られる肌の変形量の時間変化の例を示すグラフである。
図2の例では、測定時0秒で肌に負荷が掛けられることでクリープ変形が始まり、測定時2秒で負荷が開放されクリープ回復が開始される。このため、測定時0秒から2秒までの変形量の時間変化がクリープ変形曲線と表記され、測定時2秒以降の変形量の時間変化がクリープ回復曲線と表記される。
本発明者らは、単純フォークトモデルが縦に複数個連結したモデルにより肌のクリープ変形曲線をモデル化することに成功している。単純フォークトモデルは、弾性のバネと粘性のダッシュポットが並列に繋がった力学的模型である。即ち、本発明者らは、時定数が互いに異なる複数のクリープ変形特性成分の和で記述される式でクリープ変形曲線を近似できることに成功している。ここでの「クリープ変形特性成分」とは、クリープ変形曲線を形成する、クリープ変形の時間特性の一成分を意味し、固有の時定数を有する指数関数式で示すことができる。
ここでの「時定数」とは、各クリープ変形特性成分の極限値の{(1−e−1)×100}パーセント(eはネイピア数(自然対数の底)であり、約63%である)に到達する時間である。
「クリープ変形特性成分の極限値」は、そのクリープ変形特性成分の指標値が時間経過に応じて収束していく先の値であり、変形量、ひずみ、弾性率、クリープコンプライアンスなどを示す値である。
更に、本発明者らは、クリープ変形曲線の近似式で用いた単純フォークトモデルを用いることで、肌のクリープ回復曲線についてもモデル化できるのではないかと考え、時定数が互いに異なる一以上のクリープ回復特性成分を用いて記述される式でクリープ回復曲線を近似できることを見出した。ここでの「クリープ回復特性成分」とは、クリープ回復曲線を形成する、クリープ回復の時間特性の一成分を意味し、固有の時定数を有する指数関数式で示すことができる。
ここでの「時定数」とは、クリープ回復の開始時点から各クリープ回復特性成分の極限値の{(1−e−1)×100}パーセント(eはネイピア数(自然対数の底)であり、約63%である)に到達する時間である。
「クリープ回復特性成分の極限値」は、そのクリープ回復特性成分の指標値が時間経過に応じて収束していく先の値であり、変形量、ひずみ、弾性率、クリープコンプライアンスなどを示す値である。
工程(S13)で算出されるクリープ回復曲線の近似式は、クリープ回復の開始値から一以上のクリープ回復特性成分の和を減じる以下の式として算出されてもよい。以下の式におけるiは、個々のクリープ回復特性成分を示し、Nは、クリープ回復特性成分の数を示し、gは、i個目のクリープ回復特性成分の極限値を示し、τは、i個目のクリープ回復特性成分の時定数を示す。
Figure 0006967984
上記式は、クリープ回復の開始値を正規化された「1」とし、その開始値からクリープ回復の変位量(回復量)の時間変化を表す曲線を近似する式である。但し、本実施形態におけるクリープ回復曲線の近似式は、一以上のクリープ回復特性成分を用いていればよく、このような式に限定されない。例えば、クリープ回復の開始値は、0.9、1.1など1以外の値でもよい。また、上記式で近似される曲線を対称移動させた曲線(クリープ変形曲線に似た形状の曲線)をクリープ回復曲線とする場合には、当該近似式は、クリープ回復の開始値を用いることなく、上記式の第2項のみを用いて算出されてもよい。
クリープ回復曲線の近似式で用いるクリープ回復特性成分の数は、個々の時定数と共に、予め決められる。
クリープ回復特性成分の数は、1以上に設定される。
このとき、時定数には、肌の粘弾性測定において用いられる瞬間回復値(Ur)の測定時間よりも短い時間を少なくとも含む予め決められた時間が用いられる。瞬間回復値(Ur)は、クリープ回復の開始時点から予め決められた所定時間(図9の例では0.1秒)で測定される回復量を示し、陰圧解除値とも呼ばれる。
クリープ回復特性成分の時定数は、クリープ回復の開始時点からの経過時間に相当するため、小さい時定数を持つクリープ回復特性成分ほど、クリープ回復曲線において支配的となる。このため、クリープ回復特性成分の数が1とされる場合には、瞬間回復値(Ur)の測定時間よりも短い時間を時定数として設定することが望ましく、クリープ回復特性成分の数が2以上とされる場合には、瞬間回復値(Ur)の測定時間を境界として、それよりも短い時間及び長い時間が時定数に設定されることが望ましい。これにより、クリープ回復曲線の近似精度を向上させることができる。
工程(S13)におけるクリープ回復曲線の近似式の算出手法には様々な手法がある。本実施形態では、工程(S11)で取得された測定値に基づいた算出手法であれば、その具体的な算出手法は限定されない。
当該算出手法には、クリープ変形曲線の近似式の情報を用いる第一手法と、クリープ変形曲線の近似式の情報を用いない第二手法とに大別できる。第一手法は、第二実施形態として後述するため、第一実施形態では、第二手法について説明することとする。但し、第一実施形態においても第一手法を用いて近似式が算出されてもよい。
第二手法を用いる工程(S13)では、工程(S11)で取得された測定値に基づいて、クリープ回復曲線の回復極限値が推定される。この「回復極限値」とは、クリープ回復曲線が負荷の開放後の時間経過に伴い収束する極限値である。
一つのクリープ回復特性成分を用いる場合には(上記式におけるN=1)、回復極限値がそのクリープ回復特性成分の極限値(上記式におけるg)として算出されてもよい。
二以上のクリープ回復特性成分を用いる場合には(上記式におけるN>=2)、回復極限値と工程(S11)で取得された測定値とを用いて、各クリープ回復特性成分の極限値がそれぞれ算出される。例えば、各クリープ回復特性成分の極限値の和が当該推定されたクリープ回復曲線の回復極限値となるような、各クリープ回復特性成分の極限値が最小二乗法を用いて算出される。この場合の算出式は、例えば、次のように表すことができる。以下の式において測定データ(測定時間、指標値)が(t、Y)で示され、近似データ(測定時間、指標値)が(t、y)で示され、mがクリープ回復曲線の回復極限値を示す。
Figure 0006967984
このような第二手法で算出されるクリープ回復曲線の回復極限値及び各クリープ回復特性成分の極限値(g)は、工程(S11)で取得された測定値と同種の値であってもよいし、異種の値であってもよい。例えば、工程(S11)で取得された測定値が変形量である場合、工程(S13)で算出される極限値は、変形量であってもよいし、その変形量から算出可能であれば、ひずみ値、弾性率、又はクリープコンプライアンスであってもよい。ひずみ値が算出される場合、原形量が予め決められていてもよいし、工程(S11)において測定値と共に取得されてもよい。弾性率又はクリープコンプライアンスが算出される場合、肌に掛けられる変形力(吸引力やトルクなど)が予め決められていてもよいし、工程(S11)において測定値と共に取得されてもよい。
工程(S15)では、工程(S13)で算出された近似式を用いて、当該被験者の肌の粘弾性情報が生成される。
「肌の粘弾性情報」とは、肌の弾性若しくは粘性又はそれらの両方を示す情報である。
工程(S15)では、工程(S13)で算出された一以上のクリープ回復特性成分の少なくとも一つの極限値(回復極限値も含む)がそのまま粘弾性情報とされてもよいし、極限値の比率が粘弾性情報とされてもよい。
例えば、各クリープ回復特性成分を特定し得る時定数の値と各クリープ回復特性成分の極限値とのペアがクリープ回復特性成分の数分含まれる粘弾性情報が生成される。また、極限値がクリープ回復特性成分ごとに色分けされた積み上げ棒グラフ、帯グラフ、円グラフなどを粘弾性情報として生成することもできる。これらグラフに極限値の数値が付されない場合には、そのグラフは極限値の割合を示すものとなる。
また、各クリープ回復特性成分の極限値の比率を数値で示す粘弾性情報が生成されてもよい。例えば、各クリープ回復特性成分の極限値の総和に対する最も小さい時定数を有するクリープ回復特性成分の極限値の比率が肌の弾力(ハリ)を示す当該粘弾性情報として生成されてもよいし、当該総和に対する最も小さい時定数及び次に小さい時定数を有するクリープ回復特性成分の極限値の和の比率が肌の弾力(ハリ)を示す当該粘弾性情報として生成されてもよい。
上述のように求められた各クリープ回復特性成分はそれぞれ次のような肌情報を示すと考えることができる。例えば、クリープ回復の開始時から瞬間回復値(Ur)の測定時までの時間よりも短い時間に設定された時定数を持つクリープ回復特性成分は、角層、表皮、真皮、及び皮下組織を形成する細胞固体の粘弾性応答を示すと考えられる。そして、その時間よりも長い時定数を持つクリープ回復特性成分は、上記成分よりも瞬間変位量が小さいため、細胞間脂質や血管及びリンパ管、それらを流れるリンパ液や血液などに影響を受けた粘弾性応答を示すと考えることができる。
このため、各クリープ回復特性成分の和で記述される近似式によれば、皮膚を形成する組織に対応する粘弾性応答特性、即ち肌の粘弾性情報を特定することができる。
また、各クリープ回復特性成分の極限値やその割合などによれば、肌のハリ(弾力)や肌の潤いなどの程度を示すこともできる。例えば、少なくとも一つのクリープ回復特性成分に関して年代ごとの平均指標値を予め保持しておき、算出されたそのクリープ回復特性成分の極限値とその平均指標値とを比較することにより、被験者の肌のハリ又は潤いに関する肌年齢が粘弾性情報として生成されてもよい。また、肌のハリ又は潤いが平均的なサンプル肌から得られたサンプル極限値が予め保持されており、そのサンプル極限値と被験者の肌に関して算出された極限値とを大小比較することにより、被験者の肌のハリ又は潤いが良好か否かを示す粘弾性情報が生成されてもよい。
また、粘弾性情報として、被験者の肌の角層、表皮、及び真皮を少なくとも含む複数層のいずれか一つ以上の弾性率の情報を生成することもできる。吸引方式の粘弾性測定装置において開口測定部の径が異なる複数種のプローブを用いてプローブごとに測定値が取得され、それら測定値から算出されるプローブごとの極限値の差分により或る層における弾性率を算出することができる。
第一実施形態に係る肌評価方法は、図1には図示されていないが、工程(S15)で生成された粘弾性情報を用いて、被験者の肌を評価する。ここでの評価方法は何ら制限されない。工程(S15)で生成された粘弾性情報を被験者や評価者などに提示することで、その提示を受けた者が独自に肌評価を行うことができる。
例えば、年代ごとの平均指標値やサンプル極限値などが提示されている状態で、工程(S15)で生成された粘弾性情報が提示されることで、その提示を受けた者は、両者を比較することで、被験者(又は自身)の肌のハリ又は潤い、肌年齢などを評価することができる。
もちろん、工程(S15)で生成される粘弾性情報が肌評価の結果を示していてもよい。例えば、上述したように、粘弾性情報に、被験者の肌のハリ又は潤いが良好か否かが示されていてもよく、被験者のハリ又は潤いに関する肌年齢が示されていてもよい。この場合には、粘弾性情報を用いた肌評価は別途実行されなくてもよい。
上述のように、第一実施形態では、粘弾性の力学モデルに基づいてクリープ回復曲線の近似式が算出され、その回復曲線における一以上の各成分のパラメータ(極限値)が肌の粘弾性情報として利用される。従って、第一実施形態によれば、肌の粘弾性を示す新しい指標に基づいて肌評価を行うことができる。この新しい指標を用いることで、クリープ変形の測定値をそのまま用いて行う評価に比べて、測定値に包含される測定条件のバラつきを低減することができるため、高精度の肌評価を実現することができる。
[第二実施形態]
以下、第二実施形態における肌評価方法について説明する。第二実施形態は、特にクリープ回復曲線の近似式の算出手法として上述の第一手法を用いる点において、第一実施形態と異なる。以下は、第一実施形態と異なる内容を中心に説明し、第一実施形態と同様の内容については適宜省略する。
図3は、第二実施形態における肌評価方法を示すフローチャートである。
第二実施形態に係る肌評価方法は、工程(S21)、工程(S23)、工程(S25)、工程(S27)、及び工程(S29)を含み、工程(S29)で生成された肌の粘弾性情報に基づいて、被験者の肌を評価する。
工程(S21)は、第一実施形態における工程(S11)と同様である。但し、第二実施形態では、クリープ変形時及びクリープ回復時の両方の測定値が取得される。
工程(S23)では、工程(S21)で取得された測定値がクリープ回復開始時(又はクリープ変形終了時)の変形量で正規化される。クリープ回復開始時の変形量はクリープ回復の開始値である。また、この開始値は、図9のパラメータUfに相当する。
この開始値には、工程(S21)で取得された測定値そのものが利用されてもよいし、取得されたクリープ変形時の測定値群又はそれらが最大変形量で正規化された値群に基づいて推定されるクリープ変形曲線の極限値が利用されてもよい。
また、正規化は、クリープ回復の開始値を基準値(例えば1)として0以上1以下の値を取るように実行されてもよいし、その開始値が正規化された測定値群に基づいて推定された値である場合には、その開始値そのものを基準値として正規化されてもよい。
工程(S25)では、工程(S23)で正規化された測定値群の中のクリープ変形時の測定値群に基づいて、クリープ変形曲線の近似式が算出される。クリープ変形曲線の近似式は、時定数が互いに異なる複数のクリープ変形特性成分の和、即ち以下の式で表すことができる。以下の式におけるiは、個々のクリープ変形特性成分を示し、Nは、クリープ変形特性成分の数を示し、kは、i個目のクリープ変形特性成分の極限値を示し、τは、i個目のクリープ変形特性成分の時定数を示す。
Figure 0006967984
クリープ変形曲線の近似式で用いるクリープ変形特性成分の数は、個々の時定数と共に、予め決められる。
クリープ変形特性成分の数は、2以上に設定される。このとき、時定数には、肌の粘弾性測定において用いられる瞬間伸長値(Ue)の測定時間に基づいて、この測定時間よりも短い時間及びこの測定時間よりも長い時間を少なくとも含む予め決められた複数の時間が用いられる。クリープ変形特性成分の時定数は、クリープ変形開始時点からの経過時間に相当するため、小さい時定数を持つクリープ変形特性成分ほど、クリープ変形曲線において支配的となる。このため、瞬間伸長値(Ue)の測定時間を境界として、それよりも短い時間及び長い時間が時定数に設定されることで、クリープ変形曲線の近似精度を向上させることができる。
更に言えば、クリープ変形特性成分の数は、4つに設定されることが望ましい。この場合、時定数には、瞬間伸長値(Ue)の測定時間よりも短い時間、その測定時間よりも長くかつ肌の粘弾性測定において肌に変形力を掛ける力付与時間よりも短い時間、その力付与時間、及びその力付与時間よりも長い時間の4つの予め決められた時間が用いられることが望ましい。このようにすれば、クリープ変形曲線の近似精度を向上させつつ、計算負荷の増大を防ぐことができる。例えば、瞬間伸長値(Ue)の測定時間が0.1秒に設定され、力付与時間が5秒に設定される場合には、0.05秒、0.5秒、5秒、50秒の4つの時定数が用いられる。
工程(S25)では、工程(S23)で正規化された測定値群に基づいて、クリープ変形曲線が収束する極限値を推定し、各測定値とこの推定されたクリープ変形曲線の極限値とを用いて、各クリープ変形特性成分の極限値をそれぞれ算出する。例えば、各クリープ変形特性成分の極限値の和が当該推定されたクリープ変形曲線の極限値となるような、各クリープ変形特性成分の極限値が最小二乗法を用いて算出される。この場合の算出式は、例えば、次のように表すことができる。以下の式において測定データ(測定時間、指標値)が(t、Y)で示され、近似データ(測定時間、指標値)が(t、y)で示され、mがクリープ変形曲線の極限値を示す。
Figure 0006967984
工程(S27)では、工程(S25)で算出されたクリープ変形曲線の近似式の情報と、工程(S23)で正規化されたクリープ回復時の測定値群とを用いて、クリープ回復曲線の近似式が算出される。第二実施形態では、クリープ変形曲線の近似式の情報を用いる第一手法を用いてクリープ回復曲線の近似式が算出されるが、もちろん、第一実施形態で述べた第二手法を用いて当該近似式が算出されてもよい。
第二実施形態で算出されるクリープ回復曲線の近似式は、次の式で表すことができる。以下の式におけるiは、個々のクリープ回復特性成分を示し、Nは、クリープ回復特性成分の数を示し、pは補正係数を示し、kは、1個目(最小時定数)のクリープ変形特性成分の極限値を示し、mは、i個目のクリープ回復特性成分の寄与係数を示し、τは、i個目のクリープ回復特性成分の時定数を示す。
Figure 0006967984
上記式に示されるように、クリープ変形曲線の近似式の情報として、最小時定数を持つクリープ変形特性成分の極限値(k)が用いられる。
粘弾性測定で見られる肌の変形は粘弾性変形であるため、クリープ変形曲線とクリープ回復曲線とは対称形となり、クリープ回復曲線はクリープ変形前の状態(ゼロ)に収束していくと思われるところ、変形前の状態には収束しない(図2参照)。本発明者らは、肌におけるこのような特異性に着目し、この特異性は、皮膚の構造、特に肌の角層、表皮、真皮、及び皮下組織を形成する細胞固体以外の成分に由来するものと考えた。そこで、本発明者らは、少なくとも、肌の角層、表皮、真皮、及び皮下組織を形成する細胞固体の成分は、クリープ回復時もクリープ変形時と同様の粘弾性応答を示すという仮説を立て、この仮説に基づいて実験を行うことで(実施例参照)、細胞固体の成分に対応する最小時定数を持つクリープ変形特性成分の極限値(k)を用いてクリープ回復曲線を高精度に近似できることを見出した。
加えて、本発明者らは、クリープ回復曲線の回復極限値が最小時定数を持つクリープ変形特性成分の極限値(k)で近似できることについても見出している。これにより、第二実施形態では、最小時定数を持つクリープ変形特性成分の極限値(k)をクリープ回復曲線の回復極限値として用いてクリープ回復曲線の近似式が算出される。このため、工程(S25)は、クリープ回復曲線の回復極限値を取得する回復情報取得工程と呼ぶこともできる。
工程(S27)では、工程(S25)で算出された最小時定数を持つクリープ変形特性成分の極限値(k)を用いて上記式で算出される近似データ(指標値y)が工程(S23)で正規化されたクリープ回復時の測定値群に近似するように、最小二乗法等により各クリープ回復特性成分の寄与係数mが算出される。更に、算出された寄与係数m及び極限値kを用いて算出される近似データ(指標値y)が更に測定値群に近づくように、補正係数pが算出される。例えば、補正係数pは、0.8以上1.2以下の値に設定される。
第二実施形態におけるクリープ回復曲線の近似式で用いるクリープ回復特性成分の数は、1以上に設定される。
このとき、当該クリープ回復特性成分の数は、当該クリープ変形曲線の近似式に含まれるクリープ変形特性成分の数よりも少なくすることができる。クリープ回復ではクリープ変形よりも長時間の回復成分が少ないため、クリープ回復特性成分の数が少なくても十分な精度で近似式を算出することができるからである。クリープ回復特性成分の数を少なくすることで、計算量及び計算時間を削減することができる。
上述したように、クリープ変形特性成分の数は4つに設定されることが望ましいため、近似精度でみれば、クリープ回復特性成分の数は3つに設定されることが望ましい。
また、クリープ回復特性成分の時定数の値は、クリープ変形特性成分の時定数の値と共通化されることが好ましい。具体的には、一以上の各クリープ回復特性成分の時定数の値は、複数のクリープ変形特性成分の時定数の中で小さい値のものから順に選択されることが好ましい。このように、クリープ回復特性成分の時定数の値をクリープ変形特性成分の時定数と共通化することで、高精度な近似式を算出することができる。
例えば、クリープ変形曲線の近似式において0.05秒、0.5秒、5秒、50秒の4つの時定数が用いられる場合には、クリープ回復曲線の近似式において0.05秒、0.5秒、5秒の3つの時定数が用いられる。
工程(S29)では、工程(S27)で算出された各クリープ回復特性成分の寄与係数(m)の少なくとも一つ又は工程(S25)で算出された最小時定数のクリープ変形特性成分の極限値(k)、若しくはそれらの両方を用いて、被験者の肌の粘弾性情報が生成される。肌の粘弾性情報については、第一実施形態で述べたとおりである。
実施例の項で後述するとおり、最小時定数のクリープ回復特性成分の寄与係数(m)が粘弾性測定の既存パラメータであるR5(Ur/Ue)及びR7(Ur/Uf)と高い相関を示すこと、最小時定数のクリープ変形特性成分の極限値(k)が当該既存パラメータであるR2(Ua/Uf)及びR6(Uv/Ue)と高い相関を示すことが実証されている。このため、少なくとも、最小時定数のクリープ回復特性成分の寄与係数(m)及び最小時定数のクリープ変形特性成分の極限値(k)を用いることで、既存パラメータR2、R5、R6、及びR7と同等以上の肌の粘弾性指標を得ることができる。更に言えば、寄与係数(m)及び極限値(k)は、測定値に包含される測定条件のバラつきを低減することができるため、既存パラメータよりも高精度の肌の粘弾性指標を得ることができる。
上述の第二実施形態では、クリープ回復曲線の回復極限値として、最小時定数のクリープ変形特性成分の極限値(k)が用いられたが、粘弾性測定で得られる既存パラメータUaが用いられてもよいし、第一実施形態で述べたようにクリープ回復時の測定値群から算出される回復極限値が用いられてもよい。このような変形例の場合、上述の工程(S25)は、クリープ回復曲線の回復極限値を取得する工程に置き換えられる。具体的には、工程(S25)では、粘弾性測定で得られる既存パラメータUaが取得される、或いは、工程(S23)で正規化されたクリープ回復時の測定値群に基づいてクリープ回復曲線の回復極限値が算出される。また、この変形例の場合、工程(S21)では、クリープ回復時の測定値のみが取得されればよい。
上述の説明で用いた複数のフローチャートでは、複数の工程(処理)が順番に記載されているが、各実施形態で実行される工程の実行順序は、その記載の順番に制限されない。各実施形態では、図示される工程の順番を内容的に支障のない範囲で変更することができる。また、上述の各実施形態及び変形例は、内容が相反しない範囲で組み合わせることができる。
〔肌評価装置〕
上述の各実施形態及び変形例に係る肌評価方法は、図4に例示される肌評価装置により実行可能である。
図4は、肌評価装置10のハードウェア構成例を概念的に示す図である。
肌評価装置10は、いわゆるコンピュータ(情報処理装置)であり、例えば、バスで相互に接続される、CPU(Central Processing Unit)11、メモリ12、入出力インタフェース(I/F)13、通信ユニット14等を有する。肌評価装置10を形成する各ハードウェア要素の数はそれぞれ制限されず、これらハードウェア要素は情報処理回路と総称することもできる。また、肌評価装置10は、図4に図示されないハードウェア要素を含んでもよく、そのハードウェア構成は制限されない。
CPU11は、一般的なCPU以外に、特定用途向け集積回路(ASIC)、DSP(Digital Signal Processor)、GPU(Graphics Processing Unit)等で構成してもよい。
メモリ12は、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、補助記憶装置(ハードディスク等)である。
入出力I/F13は、出力装置15、入力装置16等のユーザインタフェース装置と接続可能である。出力装置15は、LCD(Liquid Crystal Display)やCRT(Cathode Ray Tube)ディスプレイのような、CPU11等により処理された描画データに対応する画面を表示する装置、印刷装置などの少なくとも一つである。入力装置16は、キーボード、マウス等のようなユーザ操作の入力を受け付ける装置である。出力装置15及び入力装置16は一体化され、タッチパネルとして実現されてもよい。
通信ユニット14は、他のコンピュータとの通信網を介した通信や、他の機器との信号のやりとり等を行う。通信ユニット14には、可搬型記録媒体等も接続され得る。また、通信ユニット14には、回転方式又は吸引方式の肌の粘弾性を測定する装置(粘弾性測定装置)が接続されてもよい。
また、肌評価装置10は、粘弾性測定装置自体であってもよい。
メモリ12に肌評価プログラム(コンピュータプログラム)18が格納されており、この肌評価プログラム18がCPU11にロードされ実行されることで、肌評価装置10は、上述の各実施形態及び変形例に係る肌評価方法を実行することができる。即ち、肌評価装置10(CPU11)は、工程(S11)、工程(S13)、及び工程(S15)を順次実行してもよいし、工程(S21)、工程(S23)、工程(S25)、工程(S27)、及び工程(S29)を順次実行してもよい。各工程の処理内容はそれぞれ上述の通りであるが、以下に、各工程の処理内容が適宜補足される。
工程(S11)又は工程(S21)では、肌評価装置10は、当該測定値を粘弾性測定装置から通信により直接取得してもよいし、他のコンピュータや可搬型記録媒体から当該測定値を取得してもよい。また、肌評価装置10が粘弾性測定装置自体である場合、プローブからの信号により測定値を取得することができる。
工程(S13)又は工程(S27)で算出するためのクリープ回復特性成分の数及び個々の時定数は、肌評価プログラム18に予めインプリメントされていてもよいし、設定パラメータとして入力装置16を介して入力されてもよい。
工程(S25)で算出するためのクリープ変形特性成分の数及び個々の時定数についても同様である。
また、工程(S13)又は工程(S27)で算出されるクリープ回復曲線の近似式のために、クリープ回復曲線の極限値が肌評価装置10外から取得される場合には、肌評価装置10は、当該極限値を他のコンピュータや可搬型記録媒体から取得してもよいし、入力装置16を介した入力により取得してもよい。
工程(S15)又は工程(S29)では、肌評価装置10は、各クリープ回復特性成分の極限値若しくは寄与係数、又はクリープ回復曲線の極限値を肌の粘弾性情報としてそのまま生成し出力することができる。肌評価装置10は、年代ごとの平均指標値をメモリ12に保持しておき、肌の粘弾性情報として生成された値とその平均指標値とを比較することにより、被験者の肌の弾性(ハリ)に関する肌年齢を粘弾性情報として生成することができる。また、肌評価装置10は、肌の弾性(ハリ)が平均的なサンプル肌から得られたサンプル値をメモリ12に保持しておき、そのサンプル値と被験者の肌に関して生成された粘弾性情報で示される値とを大小比較することにより、被験者の肌の弾性(ハリ)が良好か否かを示す粘弾性情報を生成することもできる。
また、肌評価装置10は、工程(S13)、工程(S25)、又は工程(S27)で算出された近似式を用いて、角層、表皮、及び真皮を少なくとも含む複数層の各々についてそれぞれ弾性率を算出してもよい。
以下に実施例を挙げ、上述の内容を更に詳細に説明する。以下の実施例の記載は、上述の各実施形態及び変形例に何ら限定を加えるものではない。
上述の第二実施形態で採用された第一手法を用いて算出された近似式により、実際の肌の粘弾性測定で得られる測定値に基づくクリープ回復曲線を近似できることが次のように実証された。
図5は、近似式に基づくクリープ変形曲線及びクリープ回復曲線と測定値に基づく各曲線を示すグラフである。図5(a)は、20代女性の被験者の肌に対する粘弾性測定に基づくグラフを示し、図5(b)は、40代女性の被験者の肌に対する粘弾性測定に基づくグラフを示し、図5(c)は、50代男性の被験者の肌に対する粘弾性測定に基づくグラフを示す。図5において「近似_吸引」は近似式に基づくクリープ変形曲線を示し、「近似_開放」は近似式に基づくクリープ回復曲線を示す。
粘弾性測定は、Cutometerと呼ばれる吸引式の測定器を用いて、複数回行われ、その平均値が測定値として用いられた。
図5においては、クリープ変形曲線の近似式には、0.05秒、0.5秒、5秒、50秒の各時定数を持つ4つのクリープ変形特性成分の和で記述された式が用いられ、クリープ回復曲線の近似式には、0.05秒の時定数を持つ1つのクリープ回復特性成分を用いて記述された以下の式が用いられた。以下の式におけるkは、クリープ変形曲線の近似式における最小時定数(0.05)を持つクリープ変形特性成分の極限値を示し、pは補正係数を示す。
Figure 0006967984
上記式におけるkは、図5(a)において「0.91」と算出され、図5(b)において「0.91」と算出され、図5(c)において「0.79」と算出された。
これら算出された各kの値と、図5(a)、図5(b)及び図5(c)における測定値に基づくクリープ回復曲線の極限値とを比較すると、相互に近似していることがわかる。
これにより、クリープ回復曲線の極限値をクリープ変形曲線の近似式における最小時定数を持つクリープ変形特性成分の極限値で代替できることが実証されている。
なお、補正係数pは、図5(a)において「1.0」と設定され、図5(b)において「1.0」と設定され、図5(c)において「1.0」と設定された。
図5(a)によれば、20代女性の被験者の肌の粘弾性指標については、クリープ変形時及びクリープ回復時の両方において、高精度に近似できていることがわかる。
ところが、図5(b)及び図5(c)に示されるように、40代及び50代の被験者では、クリープ回復時において誤差が生じている。具体的には、近似式で得られる値よりも実際の肌の回復が遅れていることがわかる。
これは、図5で用いているクリープ回復曲線の近似式が、最小時定数(0.05)のクリープ回復特性成分、即ち瞬間的な回復成分のみで近似しているところ、このような成分に対応する細胞固体の弾性系成分が経年で減少しているためと考えられる。
従って、20代のような肌の細胞固体の弾性が大きい年代の肌については、一つのクリープ変形特性成分により十分な精度で近似できることが実証された。
ここで、クリープ回復特性成分を増やして近似した結果が図6に示される。図6は、図5と同様に、近似式に基づくクリープ変形曲線及びクリープ回復曲線と測定値に基づく各曲線を示すグラフである。
図6において、クリープ変形曲線の近似式は図5と同様であり、クリープ回復曲線の近似式には、0.05秒、0.5秒、5秒の時定数を持つ3つのクリープ回復特性成分を用いて記述された以下の式が用いられた。以下の式におけるkは、クリープ変形曲線の近似式における最小時定数(0.05)を持つクリープ変形特性成分の極限値を示し、m、m及びmは、各クリープ回復特性成分の寄与係数を示し、pは、補正係数を示す。
Figure 0006967984
図6(a)、図6(b)及び図6(c)によれば、20代、40代及び50代の全ての被験者の肌の粘弾性指標について、クリープ変形時及びクリープ回復時の両方において、高精度に近似できていることがわかる。
即ち、図6により、時定数の異なる複数のクリープ回復特性成分の和で記述される近似式により、クリープ回復曲線を高精度に近似できることが実証されている。
更に、上述の(数6)の近似式で得られる最小時定数(0.05)のクリープ回復特性成分の寄与係数mと最小時定数(0.05)のクリープ変形特性成分の極限値kと、既存の粘弾性パラメータとの相関を検証すべく、次の2つの試験が行われた。
第一試験では、20歳から49歳までの女性220人を被験者母集団として、各被験者の頬の肌に対して粘弾性測定が実施された。この粘弾性測定では、各被験者の肌を吸引径2mmのプローブを用いて吸引圧300mbarで2秒吸引し、開放後2秒間測定された。
第二試験では、31歳から34歳までの女性51人と51歳から54歳までの女性54人とを被験者母集団として、各被験者の頬の肌に対して粘弾性測定が実施された。この粘弾性測定では、各被験者の肌を吸引径2mmのプローブを用いて吸引圧300mbarで3秒吸引し、開放後3秒間測定された。
図7は、第一試験の結果を示すグラフであり、図8は、第二試験の結果を示すグラフである。
第一試験及び第二試験の結果、図7及び図8に示されるとおり、クリープ変形特性成分の極限値kと既存の粘弾性パラメータR2(Ua/Uf)及びR6(Uv/Ue)とが高い相関を示し、最小時定数(0.05)のクリープ回復特性成分の寄与係数mと既存の粘弾性パラメータR5(Ur/Ue)及びR7(Ur/Uf)とが高い相関を示した。
これにより、最小時定数のクリープ回復特性成分の寄与係数m及び最小時定数のクリープ変形特性成分の極限値kは、肌の粘弾性を示す新たな指標として用いることができることが実証された。
ここで、最小時定数のクリープ変形特性成分の極限値kは、クリープ回復曲線の極限値に近似することが実証されているため、クリープ回復時の測定値から算出される極限値で代用可能である。また、寄与係数m1よりも精度は劣るものの、mとkと補正係数pとを掛け合わしてなる、最小時定数のクリープ回復特性成分の極限値も寄与係数mの代わりに使用可能である。
10 肌評価装置
11 CPU
12 メモリ
13 入出力I/F
14 通信ユニット
15 出力装置
16 入力装置
18 肌評価プログラム

Claims (8)

  1. 被験者の肌に対する粘弾性測定の測定値を取得する測定値取得工程と、
    前記取得された測定値に基づいて、時定数が互いに異なる一以上のクリープ回復特性成分を用いて記述される、クリープ回復の時間特性を示す回復曲線の近似式を算出する算出工程と、
    前記算出された近似式を用いて、前記被験者の肌の粘弾性情報を生成する生成工程と、
    を含む肌評価方法。
  2. 前記一以上のクリープ回復特性成分の前記時定数の各々は、クリープ回復の開始時点から各クリープ回復特性成分の極限値の{(1−e−1)×100}パーセント(eはネイピア数)に到達する時間であって、予め決められた時間にそれぞれ設定され、
    前記算出工程では、前記測定値から得られるクリープ回復の開始値から前記一以上のクリープ回復特性成分を減じてなる前記回復曲線の近似式を算出し、
    前記生成工程では、前記一以上のクリープ回復特性成分の少なくとも一つの前記極限値を用いて、前記粘弾性情報を生成する、
    請求項1に記載の肌評価方法。
  3. 前記回復曲線の回復極限値を取得する回復情報取得工程、
    を更に含み、
    前記近似式は、複数の前記クリープ回復特性成分を用いて算出され、
    前記各クリープ回復特性成分の前記極限値は、前記回復曲線の前記回復極限値と前記各クリープ回復特性成分の寄与係数との積で示され、
    前記生成工程では、前記各クリープ回復特性成分の寄与係数の少なくとも一つ若しくは前記回復曲線の回復極限値、又はそれらの両方を用いて、前記粘弾性情報を生成する、
    請求項2に記載の肌評価方法。
  4. 前記取得される回復極限値は、前記粘弾性測定におけるクリープ変形の測定値に基づいて算出された、時定数が互いに異なる複数のクリープ変形特性成分の和で記述される、クリープ変形の時間特性を示す変形曲線の近似式における最小時定数を持つクリープ変形特性成分の極限値であり、
    前記各クリープ変形特性成分の前記時定数は、前記各クリープ変形特性成分の極限値の{(1−e−1)×100}パーセント(eはネイピア数)に到達する時間であって、予め決められた時間にそれぞれ設定される、
    請求項3に記載の肌評価方法。
  5. 前記回復曲線の前記近似式に含まれる前記クリープ回復特性成分の数は、前記変形曲線の前記近似式に含まれる前記クリープ変形特性成分の数よりも少ない、
    請求項4に記載の肌評価方法。
  6. 前記クリープ回復特性成分の前記時定数の値は、前記クリープ変形特性成分の前記時定数の値と共通である、
    請求項5に記載の肌評価方法。
  7. 前記一以上のクリープ回復特性成分の前記時定数には、前記粘弾性測定において用いられる瞬間回復値(Ur)の測定時間よりも短い時間を少なくとも含む予め決められた時間が用いられる、
    請求項1から6のいずれか一項に記載の肌評価方法。
  8. 請求項1から7のいずれか一つに記載の肌評価方法を実行する肌評価装置。
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