以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態(以下、「本実施形態」という。)に係る水処理システムおよび水処理方法について説明する。なお、以下で説明する本実施形態は実施形態の1例である下水処理システムおよび下水処理方法の例であり、本発明の範囲は本実施形態に限定されず、本発明の技術的思想の範囲内で任意に変更可能である。また、以下の図面においては、各構成をわかりやすくするために、各構造における縮尺および数等を、実際の構造における縮尺および数等と異ならせる場合がある。
各図に適宜示す3次元直交座標において、Z軸方向は、正の側を上側とし、負の側を下側とする鉛直方向である。X軸方向およびY軸方向は、互いに直交し、かつ、鉛直方向と直交する水平方向である。Z軸方向は、図1の上下方向である。X軸方向は、図1の左右方向である。
図1に示す本実施形態の下水処理システム(水処理システム)1は、下水(水)FWを消毒処理するシステムである。本実施形態の下水処理システム1は、図1に示すように、下水処理槽10と、供給装置20と、を備える。下水FWは、例えば、生活排水等の汚水である。なお、下水FWは、汚水に加えて、雨水を含んでいてもよい。
下水処理槽10は、上側に開口し内部に下水FWが流入される下水処理槽本体11と、下水処理槽本体11の上側の開口を塞ぐ蓋部材12と、を有する。下水処理槽本体11の内部は、下水FWが流れる流路13である。流路13は水平方向のうちX軸方向に沿って延びている。流路13内の下水FWは、X軸方向の負の側から正の側に向かって流れる。すなわち、本実施形態においてX軸方向は、流路13内における下水FWの流れ方向である。以下の説明においては、X軸方向を単に「流れ方向」と呼び、X軸方向の負の側を「上流側」、X軸方向の正の側を「下流側」と呼ぶ。流れ方向は、図1の左右方向である。
下水処理槽本体11の上流側の端部には、下水FWを下水処理槽本体11内の流路13に流入させる流入管31が接続されている。下水FWは、例えば、図示しない下水道から流入管31を介して流路13に流入される。
下水処理槽10の下流側の端部には、排水管32が接続されている。排水管32は、蓋部材12を鉛直方向に貫通して、流路13内に上側から挿入されている。流路13内を流れて消毒処理された下水FWは、排水管32から図示しない公共水域に放流される。公共水域は、例えば、河川および海洋である。
供給装置20は、流路13内を流れる下水FWに次亜臭素酸を含む消毒液ASを供給する装置である。本実施形態において消毒液ASは、次亜塩素酸化合物の水溶液と臭素化合物の水溶液とを混合することにより生成される消毒液である。以下の説明においては、次亜塩素酸化合物の水溶液を、「次亜塩素酸化合物水溶液W1」と呼び、臭素化合物の水溶液を、「臭素化合物水溶液W2」と呼ぶ。
次亜塩素酸化合物としては、例えば、次亜塩素酸ナトリウム、次亜塩素酸カリウム、次亜塩素酸カルシウム等が挙げられる。次亜塩素酸化合物としては、臭素化合物との反応性の点、および安価に入手できる点から次亜塩素酸ナトリウムが好ましい。
臭素化合物としては、臭化ナトリウム、臭化カリウムを含むアルカリ金属臭化物、臭化マグネシウム、臭化カルシウムを含むアルカリ土類金属臭化物等が挙げられる。臭素化合物としては、次亜塩素酸化合物との反応性の点、および安価に入手できる点から臭化ナトリウムが好ましい。
本実施形態においては、例えば、次亜塩素酸化合物が次亜塩素酸ナトリウムNaOClであり、臭素化合物が臭化ナトリウムNaBrである。この場合、以下の化学式(1)〜(3)に示す反応により、次亜臭素酸HOBrが生成される。
NaOCl + NaBr → NaOBr + NaCl …(1)
NaOBr → Na+ + OBr- …(2)
H+ + OBr- → HOBr …(3)
上記の式(1)〜(3)に示すように、1モルの次亜塩素酸ナトリウムNaOClと1モルの臭化ナトリウムNaBrとから、1モルの次亜臭素酸HOBrが生成される。
ここで、消毒液ASは、次亜臭素酸を含むが、更に次亜塩素酸化合物を含むことが好ましい。次亜臭素酸に対する次亜塩素酸化合物の割合は50モル%以下が好ましく、30モル%以下がより好ましい。消毒液ASが次亜塩素酸化合物を更に含むことにより消毒液ASによる消毒の効果がより高まる。
例えば、本実施形態において、式(1)の反応において次亜塩素酸ナトリウムを過剰に反応させることにより、反応の残りとして消毒液AS中に次亜塩素酸ナトリウムが含まれるようになる。過剰の次亜塩素酸ナトリウムの量を制御することにより、次亜塩素酸ナトリウムの含有割合を制御することができる。
次亜塩素酸ナトリウムと臭化ナトリウムとの混合の割合は、所望する消毒液AS中の次亜臭素酸濃度と次亜塩素酸ナトリウム濃度とにより適宜決定すればよく、後述の通り制御部80により制御して混合すればよい。
供給装置20は、吐出部40と、消毒液供給部50と、下水供給部(水供給部)60と、第1水溶液濃度センサ71と、第2水溶液濃度センサ72と、有機物濃度センサ73と、残留ハロゲン濃度センサ74と、制御部80と、を有する。なお、本実施形態において第1水溶液濃度センサ71は、第1濃度センサに相当し、有機物濃度センサ73は、第2濃度センサに相当する。
吐出部40は、流路13内に配置されている。吐出部40は、流路13内を流れる下水FW中において消毒液ASを拡散させて吐出する。本実施形態において吐出部40は、流路13内において下水FWが流れる向きと逆向きに消毒液ASを吐出する。すなわち、吐出部40は、下流側から上流側に向かって消毒液ASを吐出する。
本実施形態において吐出部40は、図2に示すように、例えば、エジェクタである。吐出部40は、ノズル部41と、ディフューザ部42と、連結部43と、を有する。
ノズル部41は、ノズル部本体41aと、注入部41dと、を有する。
ノズル部本体41aは、流れ方向に延びる円筒状である。ノズル部本体41aは、基部41bと、縮径部41cと、を有する。
基部41bは、ノズル部41のうち下流側の部分である。基部41bは、外径および内径が流れ方向の全体に亘って一様な円筒状である。基部41bの下流側の端部には、下水供給部60の後述する第3配管61が接続されている。これにより、基部41bの内部には第3配管61を介して下水FWが下流側から上流側に向かって流入される。第3配管61から基部41bの内部に流入される下水FWは、エジェクタである吐出部40の駆動流体として機能する。このように、ノズル部41には、下水供給部60からの下水FWが駆動流体として流入される。
縮径部41cは、ノズル部41のうち上流側の部分である。縮径部41cは、基部41bの上流側の端部に繋がっている。縮径部41cは、下流側から上流側に向かうに従って外径および内径が小さくなるテーパ状である。縮径部41cは、内部を下流側から上流側に流れる下水FWの流速を上昇させる。縮径部41cの上流側の端部は、ノズル部41の噴射口41eであり、流路13の内部に開口している。縮径部41cの上流側の端部からは、比較的高速となった駆動流体としての下水FWが上流側に向けて噴射される。
注入部41dは、基部41bから径方向に突出している。注入部41dには、消毒液供給部50の後述する供給配管56が接続されている。これにより、基部41bの内部には供給配管56から注入部41dを介して消毒液ASが注入される。すなわち、ノズル部41内には、消毒液供給部50から消毒液ASが供給される。
ディフューザ部42は、ノズル部41の上流側に、ノズル部41と隙間Gを空けて配置されている。ノズル部41とディフューザ部42との隙間Gは、流路13内に開口している。ディフューザ部42は、流れ方向に延び、流れ方向両側に開口する円筒状である。ノズル部41とディフューザ部42とは同軸に配置されている。ディフューザ部42には、ノズル部41から噴射された駆動流体としての下水FWが下流側の開口から流入される。ディフューザ部42は、吸引部42aと、拡散部42bと、を有する。
吸引部42aは、ディフューザ部42のうち下流側の部分である。吸引部42aの内径および外径は、下流側から上流側に向かうに従って小さくなっている。吸引部42aの下流側の端部における内径は、噴射口41eの内径よりも大きい。
拡散部42bは、ディフューザ部42のうち上流側の部分である。拡散部42bは、吸引部42aの上流側の端部に繋がっている。拡散部42bの内径および外径は、下流側から上流側に向かうに従って大きくなっている。拡散部42bの上流側の端部は、吐出部40の吐出口40aである。
連結部43は、流れ方向に延びて、ノズル部41とディフューザ部42とを連結している。連結部43は、吐出部40の周方向に沿って複数設けられている。連結部43の数は、特に限定されない。本実施形態において連結部43は、例えば、2つ設けられている。
第3配管61からノズル部41に流入された駆動流体としての下水FWには、基部41b内において注入部41dから消毒液ASが加えられる。消毒液ASが加えられた駆動流体としての下水FWは、縮径部41cによって加速され、比較的高速となって噴射口41eからノズル部41の外部に噴射される。噴射口41eから噴射された下水FWと消毒液ASとは、隙間Gを介してディフューザ部42に流入される。
ここで、噴射口41eから噴射される下水FWの流速および消毒液ASの流速は比較的高速であるため、周囲の圧力を低下させる。これにより、流路13内の下水FWが隙間Gを介して吸引部42aからディフューザ部42の内部に吸引される。これにより、ディフューザ部42には、駆動流体としての下水FWと、消毒液ASと、隙間Gから吸引された下水FWとが流入される。なお、隙間Gからディフューザ部42内に吸引される下水FWの量は、例えば、下水供給部60から駆動流体としてノズル部41に供給される下水FWの量よりも多い。
ディフューザ部42に流入された液体は、拡散部42bによって昇圧されて吐出口40aから上流側に向けて拡散して噴出される。すなわち、ディフューザ部42は、消毒液ASを駆動流体としての下水FWおよび隙間Gから吸引された下水FWとともに、流路13内を流れる下水FW中に拡散させて噴出する。このようにして、吐出部40は、流路13内を流れる下水FW中において消毒液ASを拡散させて吐出する。
なお、本明細書において「液体を拡散させて吐出する」とは、液体が拡散されながら吐出されていればよく、その方法は特に限定されない。例えば、液体が吐出口の内径よりも大きい径に拡がりつつ吐出されればよい。液体が吐出口の内径よりも大きい径に拡がりつつ吐出される場合とは、例えば、吐出部における吐出口に至るまでの経路が本実施形態のように拡径する形状である場合である。本実施形態では、吐出部40から吐出された液体は、吐出部40の径方向外側に拡がりつつ吐出される。その他の「液体を拡散させて吐出する」方法としては、じょうろのように多数の孔が空いた吐出口から液体を吐出させる、吐出口に邪魔板を設けることにより液体を拡散させて吐出する、などの方法が挙げられる。
本実施形態において吐出部40は、図1に示すように、複数設けられている。図1では、例えば、2つの吐出部40が、鉛直方向に並んで配置されている。吐出部40の数は、特に限定されない。吐出部40は、流れ方向に沿って複数設けられてもよいし、流れ方向と直交する水平方向、すなわちY軸方向に沿って複数設けられてもよい。また、吐出部40は、複数の方向のそれぞれに沿って複数ずつ設けられてもよい。
消毒液供給部50は、吐出部40に消毒液ASを送る。消毒液供給部50は、第1水溶液供給部51と、第2水溶液供給部52と、生成部53と、供給配管56と、バルブ54と、バルブ駆動モータ55と、を有する。
第1水溶液供給部51は、生成部53に次亜塩素酸化合物水溶液W1を供給する。第1水溶液供給部51は、第1タンク51aと、第1配管51bと、第1ポンプ51cと、を有する。第1タンク51aは、次亜塩素酸化合物水溶液W1を貯留するタンクである。次亜塩素酸化合物水溶液W1が次亜塩素酸ナトリウム水溶液の場合、第1タンク51aに貯留された次亜塩素酸ナトリウム水溶液の濃度は、次亜塩素酸ナトリウムの安定性などから1質量%以上、14質量%以下が好ましく、6質量%以上、12質量%以下がより好ましい。第1配管51bは、第1タンク51aと生成部53とを繋ぐ配管である。第1ポンプ51cは、第1タンク51a内の次亜塩素酸化合物水溶液W1を、第1配管51bを通して生成部53に送るポンプである。
第2水溶液供給部52は、生成部53に臭素化合物水溶液W2を供給する。第2水溶液供給部52は、第2タンク52aと、第2配管52bと、第2ポンプ52cと、を有する。第2タンク52aは、臭素化合物水溶液W2を貯留するタンクである。臭素化合物水溶液W2が臭化ナトリウム水溶液の場合、第2タンク52aに貯留された臭化ナトリウム水溶液の濃度は、輸送上の理由から10質量%以上、42質量%以下が好ましく、20質量%以上、40質量%以下がより好ましい。第2配管52bは、第2タンク52aと生成部53とを繋ぐ配管である。第2ポンプ52cは、第2タンク52a内の臭素化合物水溶液W2を、第2配管52bを通して生成部53に送るポンプである。
生成部53は、消毒液ASを生成する。生成部53は、第1水溶液供給部51から供給される次亜塩素酸化合物水溶液W1と第2水溶液供給部52から供給される臭素化合物水溶液W2とを混合して消毒液ASを生成する。生成部53には、生成された消毒液ASが貯留される。なお、図示は省略するが、生成部53の前には、次亜塩素酸化合物水溶液W1と臭素化合物水溶液W2とを混合する混合部が設けられていてもよい。混合部は、例えば、配管中にスタティックミキサーが配置された構成であってもよい。
また、生成部53および混合部のうちの少なくとも一方には、希釈水W3を供給可能な配管が接続されていてもよい。混合部に希釈水W3を供給可能な配管が接続される場合は、例えば、混合部に流入する前の次亜塩素酸化合物水溶液W1と臭素化合物水溶液W2とが通る配管に接続されている。これにより、混合部において、次亜塩素酸化合物水溶液W1と臭素化合物水溶液W2と希釈水W3とが混合される。本実施態様において生成部53には、希釈水W3を供給可能な配管が接続されている。
生成部53および混合部のうちの少なくとも一方に希釈水W3が供給されることにより、消毒液AS中の次亜臭素酸の濃度を必要に応じて適宜調整することができる。
消毒液ASに含まれる次亜臭素酸の濃度は、下水FWへの消毒剤の供給量により適宜変更すればよいが、1質量%以上、13質量%以下が好ましく、1質量%以上、6質量%以下がより好ましい。また、下水FWへの供給量が少ない場合や次亜臭素酸の分解を抑制したい場合は、消毒液AS中の次亜臭素酸濃度を低くすればよく、1質量%以上、6質量%以下が好ましく、1質量%以上、3質量%以下がより好ましい。
供給配管56は、生成部53と吐出部40とを繋ぐ配管である。上述したように供給配管56は、吐出部40の注入部41dに接続されている。生成部53内の消毒液ASは、第1ポンプ51cの圧力と第2ポンプ52cの圧力とによって、供給配管56を通って吐出部40に供給される。
バルブ54は、供給配管56に設けられている。バルブ54は、供給配管56内の一部を開閉可能である。バルブ54が閉じられることで、吐出部40への消毒液ASの供給が停止される。バルブ54の開閉は、バルブ駆動モータ55によって行われる。
下水供給部60は、吐出部40に流路13内の下水FWを送る。下水供給部60は、第3配管61と、第3ポンプ62と、を有する。第3配管61は、第3ポンプ62と吐出部40とを繋ぐ配管である。上述したように第3配管61は、ノズル部41の基部41bに下流側から接続されている。第3ポンプ62は、流路13内に配置されている。第3ポンプ62は、流路13内の下水FWを吸い上げ、第3配管61を通して吐出部40に送るポンプである。本実施形態において第3ポンプ62は、吐出部40よりも下流側に配置されている。
第1水溶液濃度センサ71は、第1水溶液供給部51から生成部53に供給される次亜塩素酸化合物水溶液W1の濃度を測定する濃度センサである。本実施形態において第1水溶液濃度センサ71は、第1タンク51aに貯留された次亜塩素酸化合物水溶液W1の濃度を測定する。第1水溶液濃度センサ71は、第1タンク51aの内部に配置されている。第1水溶液濃度センサ71は、例えば、次亜塩素酸化合物水溶液W1の有効塩素濃度を測定することで、次亜塩素酸化合物水溶液W1を測定する。第1水溶液濃度センサ71の測定結果は、制御部80に送られる。
第2水溶液濃度センサ72は、第2水溶液供給部52から生成部53に供給される臭素化合物水溶液W2の濃度を測定する濃度センサである。本実施形態において第2水溶液濃度センサ72は、第2タンク52aに貯留された臭素化合物水溶液W2の濃度を測定する。第2水溶液濃度センサ72は、第2タンク52aの内部に配置されている。第2水溶液濃度センサ72の測定結果は、制御部80に送られる。
有機物濃度センサ73は、下水FW中に含まれる有機物濃度を測定する濃度センサである。有機物濃度センサ73は、例えば、UV計である。すなわち、有機物濃度センサ73は、例えば、下水FWに有機物が吸収する波長の紫外線を照射し、下水FWにおける紫外線の吸光度を測定することで下水FW中に含まれる有機物の濃度を測定する。紫外線の波長は、1種でも複数でもよく、測定する有機化合物により適宜決定すればよい。有機物濃度センサ73は、流路13内に配置されている。有機物濃度センサ73は、吐出部40よりも上流側に位置する。すなわち、有機物濃度センサ73は、吐出部40よりも上流側において流路13内の下水FW中に含まれる有機物の濃度を測定する。有機物濃度センサ73の測定結果は、制御部80に送られる。
残留ハロゲン濃度センサ74は、下水FW中に含まれる残留ハロゲンの濃度を測定する濃度センサである。測定される残留ハロゲンとしては、残留塩素および残留臭素が挙げられる。残留ハロゲン濃度センサ74は、例えば、残留塩素濃度計である。残留ハロゲン濃度センサ74は、流路13内に配置されている。残留ハロゲン濃度センサ74は、吐出部40よりも下流側に位置する。すなわち、残留ハロゲン濃度センサ74は、吐出部40よりも下流側において流路13内の下水FW中に含まれる残留ハロゲン濃度を測定する。残留ハロゲン濃度センサ74の測定結果は、制御部80に送られる。
制御部80は、供給装置20を制御する。制御部80は、供給装置20から流路13内の下水FWに供給される消毒液ASの量を制御する。本実施形態において制御部80は、第1水溶液供給部51および第2水溶液供給部52を制御することで、下水FWに供給される単位時間当たりの消毒液ASの量を制御する。
例えば、具体的に制御部80は、第1ポンプ51cによって送られる次亜塩素酸化合物水溶液W1の流量と第2ポンプ52cによって送られる臭素化合物水溶液W2の流量とを増加させることで、下水FWに供給される単位時間当たりの消毒液ASの供給量を増加させ、また、双方の流量を減少させることで消毒液ASの供給量を減少させることができる。
前述のとおり、消毒液ASには次亜臭素酸とともに次亜塩素酸化合物が含まれることが好ましいが、消毒液ASが次亜塩素酸化合物を含むようにするには、生成部53に供給される次亜臭素酸化合物を臭素化合物より過剰に供給すればよい。生成部53に供給する次亜塩素酸化合物と臭素化合物の比率はモル比で、1:1〜1:0.5が好ましく、1:1〜1:0.7がより好ましい。制御部80は、生成部53に供給される次亜塩素酸化合物に対する生成部53に供給される臭素化合物のモル比が1.0未満となるように、第1水溶液供給部51と第2水溶液供給部52とを制御する。
本実施形態において制御部80は、例えば、生成部53内におけるモル比が、次亜塩素酸化合物:臭素化合物=1:0.7となるように、第1水溶液供給部51と第2水溶液供給部52とを制御する。生成部53で生成される次亜臭素酸は、1モルの次亜塩素酸化合物に対して0.7モルとなり、生成部53内には0.3モル分の次亜塩素酸化合物が残留する。したがって、本実施形態における消毒液ASは、次亜臭素酸と次亜塩素酸化合物とを0.7:0.3のモル比で含む消毒液となる。
制御部80は、第1水溶液濃度センサ71の測定結果に基づいて、第1水溶液供給部51と第2水溶液供給部52との少なくとも一方を制御する。本実施形態において制御部80は、第1水溶液濃度センサ71の測定結果と第2水溶液濃度センサ72の測定結果との両方に基づいて、第1水溶液供給部51と第2水溶液供給部52との両方を制御する。
具体的に制御部80は、例えば、第1水溶液濃度センサ71によって測定された次亜塩素酸化合物水溶液W1の濃度が所定値よりも低い場合、第1ポンプ51cの流量を増加させる、または第2ポンプ52cの流量を減少させる。これにより、制御部80は、生成部53に流入される次亜塩素酸化合物と臭素化合物との割合を上述した所定の割合に調整する。
制御部80は、生成部53および混合部の少なくとも一方に供給される希釈水W3の量を調整可能である。これにより、制御部80は、生成される消毒液ASに含まれる次亜臭素酸の濃度を調整可能である。次亜臭素酸の濃度の測定を行うには、例えば、生成部53に、消毒液ASに含まれる次亜臭素酸の濃度を測定する濃度センサを設ければよい。濃度センサの測定結果に基づいて、制御部80は生成部53または混合部の少なとも一方に供給すうる希釈水の量を調整する。
制御部80は、有機物濃度センサ73の測定結果に基づいて、吐出部40から吐出される消毒液ASの量を調整する。具体的に制御部80は、例えば、有機物濃度センサ73によって測定された下水FW中に含まれる有機物の濃度が所定値よりも大きい場合、吐出部40から吐出される消毒液ASの単位時間当たりの量を増加させる。一方、制御部80は、例えば、有機物濃度センサ73によって測定された下水FW中に含まれる有機物の濃度が所定値よりも小さい場合、吐出部40から吐出される消毒液ASの単位時間当たりの量を減少させる。
制御部80は、バルブ駆動モータ55の駆動を制御する。これにより、制御部80は、バルブ54を開閉して、消毒液ASを流路13中の下水FWに供給する状態と、消毒液ASの供給を停止する状態と、を切り換えることができる。
本実施形態によれば、吐出部40によって、流路13内を流れる下水FW中において消毒液ASを拡散させて吐出できる。そのため、消毒液ASに含まれる次亜臭素酸が下水FW中の有機物との反応等によって消費される前に、消毒液ASを下水FW中に広く行きわたらせることができる。これにより、流路13内を流れる下水FW中に含まれる大腸菌等の菌を好適に死滅させることができる。したがって、本実施形態によれば、下水FWの消毒効果を向上できる。
ここで、例えば、流路13の下水FWに対して上側から消毒液ASを滴下した場合でも、時間の経過とともに消毒液ASは拡散していく。しかし、このような拡散の仕方では消毒液ASが下水FW中に行きわたる前に次亜臭素酸が有機物等によって消費されやすい。また、消毒液ASを滴下した後に下水FWを攪拌する等によって混合すれば、多少は消毒液ASの拡散を促すことができる。しかし、このような場合であっても、消毒液ASの拡散に時間が掛かり、消毒液ASが下水FW中に行きわたる前に次亜臭素酸が有機物等によって消費されやすい。具体的に次亜臭素酸は、下水FW中に供給された時点から1分程度で消費される。そのため、次亜臭素酸により消毒効果を好適に得るためには、1分程度以内で消毒液ASを下水FW中に広く拡散させる必要がある。なお、これらの知見は、本発明者らによって新たに明らかとなった知見である。
これに対して、本実施形態のように、下水FW中において消毒液ASを吐出させ、かつ、消毒液ASの吐出方法として積極的に消毒液ASを拡散させる吐出方法を採用することで、比較的短時間、すなわち例えば1分程度以内で消毒液ASを下水FW中に広く拡散させることができる。これにより、有機物等によって消費される前に次亜臭素酸によって大腸菌等の菌を死滅させることができ、下水FWを好適に消毒できる。
また、本実施形態によれば、消毒液ASが次亜臭素酸を含むため、比較的短時間で大腸菌等の菌を死滅させることができる。これにより、貯水槽等に下水FWを長時間溜めることなく、流路13内を通すことによって下水FWを消毒できる。したがって、大雨等によって処理する下水FWの量が急激に増加した場合であっても、好適に下水FWを消毒処理できる。
また、本実施形態によれば、吐出部40によって、流路13内において下水FWが流れる向きと逆向きに消毒液ASを吐出する。そのため、図2に示すように、吐出部40から吐出された消毒液ASを含む下水FWの流れが、流路13内における下水FWの流れによって干渉され、乱流が生じやすい。これにより、消毒液ASをより下水FW中に拡散させやすく、消毒効果をより向上させることができる。また、吐出部40から吐出された後、流路13内における下水FWの流れと同じ向きの流れとなった消毒液ASを含む下水FWの流れによって吐出部40の周囲が覆われる。そのため、下水FW中に浮遊物等が含まれる場合であっても、浮遊物等が吐出部40に絡まることを抑制できる。
また、本実施形態によれば、吐出部40は、エジェクタである。そのため、吐出部40から吐出された消毒液ASをより好適に下水FW中に拡散させることができる。特に本実施形態では、吐出部40は、駆動流体として下水FWを用いて、ノズル部41とディフューザ部42との隙間Gから流路13内の下水FWを吸引するエジェクタである。そのため、隙間Gから吸引された下水FWの流れによって吐出部40内の下水FWと消毒液ASとを好適に混合できる。これにより、消毒液ASが好適に分散された状態の下水FWを吐出部40から拡散させて吐出させることができる。したがって、消毒液ASをより好適に流路13内を流れる下水FW中に拡散させることができる。
また、本実施形態によれば、消毒液ASがノズル部41内に供給される。そのため、例えば、下水供給部60の第3配管61内に消毒液ASを供給する場合に比べて、消毒液ASが下水FWと接触してから吐出部40の吐出口40aから吐出されるまでの時間を短くできる。これにより、吐出部40から吐出されるまでの間に次亜臭素酸が消費されることを抑制できる。
また、本実施形態によれば、生成部53において、次亜塩素酸化合物水溶液W1と臭素化合物水溶液W2とを混合して次亜臭素酸を含む消毒液ASを生成する。すなわち、消毒液ASは、2種類の液体を原料として生成される。そのため、例えば、BCDMH等の粉体を原料にする場合に比べて、原料となる次亜塩素酸化合物水溶液W1と臭素化合物水溶液W2とを各配管によって送りやすく、各水溶液を送る量を調整しやすい。これにより、消毒液ASを精度よく生成でき、かつ、消毒液ASの供給量も精度よく調整できる。また、消毒液ASの原料が配管内で詰まる等の不具合が生じにくい。また、液体であるため、各水溶液が長期間使用されずに各タンク内で保管される場合であっても、各タンク内で固まる等の不具合が生じにくい。これにより、長期間停止していた後に下水処理システム1を再稼働する場合であっても、下水処理システム1を迅速かつ正常に稼働させやすい。
また、本実施形態によれば、次亜塩素酸化合物は、次亜塩素酸ナトリウムであり、臭素化合物は、臭化ナトリウムである。そのため、比較的安価で消毒液ASの材料を入手でき、下水FWを消毒するコストを低減できる。また、臭化ナトリウムの水溶液は比較的安定性が高いため、第2タンク52aで長期間保管される場合であっても、濃度が低下しにくい。
また、本実施形態によれば、第1水溶液濃度センサ71によって次亜塩素酸化合物水溶液W1の濃度を測定する。そして、制御部80は、測定された次亜塩素酸化合物水溶液W1の濃度に基づいて、第1水溶液供給部51と第2水溶液供給部52との少なくとも一方を制御し、次亜塩素酸化合物水溶液W1の量と臭素化合物水溶液W2の量との少なくとも一方を調整する。そのため、例えば、次亜塩素酸化合物水溶液W1の濃度が長期間の保管により低下した場合等、次亜塩素酸化合物水溶液W1の濃度が変動した場合であっても、生成部53に供給される次亜塩素酸化合物と臭素化合物との割合を好適に調整できる。これにより、消毒液ASを好適に生成できる。
また、本実施形態によれば、第1水溶液濃度センサ71と第2水溶液濃度センサ72との両方によって各水溶液の濃度を測定する。そして、制御部80は、測定された各水溶液の濃度に基づいて各水溶液供給部を制御し、各水溶液の量を調整する。そのため、各水溶液の濃度が変動した場合であっても、生成部53に供給される次亜塩素酸化合物と臭素化合物との割合を好適に調整できる。これにより、消毒液ASをより好適に生成できる。
また、本実施形態によれば、制御部80によって第1水溶液供給部51と第2水溶液供給部52とを制御し、次亜塩素酸化合物に対する臭素化合物のモル比が1.0未満となるように、次亜塩素酸化合物水溶液W1と臭素化合物水溶液W2とを混合して消毒液ASを生成する。そのため、消毒液ASには、次亜臭素酸に加えて、臭素化合物と反応せずに残った次亜塩素酸化合物も含まれる。次亜塩素酸化合物は、次亜臭素酸に比べると低いものの下水FWを消毒する消毒効果を有する。また、次亜塩素酸化合物は、次亜臭素酸に比べて、下水FW中の有機物によって消費されにくい。そのため、仮に次亜臭素酸がすべて消費された後に下水FW中に大腸菌等の菌が残存している場合であっても、残存している大腸菌等の菌を次亜塩素酸化合物によって死滅させることができる。これにより、下水FWの消毒効果をより向上できる。
また、本実施形態によれば、有機物濃度センサ73によって、消毒液ASを吐出する位置よりも上流側において流路13内の下水FW中に含まれる有機物の濃度を測定する。そして、制御部80は、測定された有機物の濃度に基づいて、吐出部40から吐出する消毒液ASの量を調整する。ここで、下水FW中の有機物の濃度が高いほど、消毒液の消費量が多くなり、下水FWを消毒処理するために必要な消毒液ASの量が多くなる。これは、本発明者らによって新たに明らかとなった知見である。そのため、有機物の濃度に基づいて消毒液ASの量を調整することで、下水FWの消毒処理を行うために必要な消毒液ASの量を適切に調整できる。これにより、下水FWに供給される消毒液ASが足りないことを抑制でき、下水FWを好適に消毒できる。また、消毒液ASを過剰に下水FWに供給することを抑制できる。そのため、下水FWを消毒処理するコストを低減できる。
また、本実施形態によれば、残留ハロゲン濃度センサ74によって、消毒液ASを吐出する位置よりも下流側において流路13内の下水FW中に含まれる残留ハロゲンの濃度を測定する。そして、制御部80は、測定された残留ハロゲンの濃度に基づいて、吐出部40から吐出する消毒液ASの量を調整する。ここで、下水FW中残留にハロゲンが残存している場合、消毒液AS中の次亜臭素酸あるいは次亜塩素酸化合物が下水FW中に残存しているとみなすことができる。そのため、吐出部40よりも下流側において残留ハロゲン濃度センサ74によって測定された残留ハロゲンの濃度がある程度大きければ、消毒液ASによって下水FW中の大腸菌等の菌を十分に死滅させることができたことの1つの指標にできる。これにより、残留ハロゲン濃度センサ74によって、下水FWの消毒効果を確認できる。したがって、残留ハロゲン濃度センサ74の測定結果に基づいて消毒液ASの量を調整することで、下水FWを消毒処理するために必要な量の消毒液ASを下水FW中に好適に供給できる。
また、本実施形態によれば、制御部80は、生成部53への希釈水W3の供給量を調整することで、生成部53において生成される消毒液ASに含まれる次亜臭素酸の濃度を調整できる。ここで、消毒液ASに含まれる次亜臭素酸の濃度が高いほど、同じ量の消毒液ASを下水FWに供給したときの消毒効果は高くなる。そのため、下水FWに含まれる大腸菌等の菌が多く下水FWを消毒するのに必要な次亜臭素酸の量が多い場合に、消毒液ASに含まれる次亜臭素酸の濃度を高くすることで、下水FWを好適に消毒処理できる。
一方、濃度が高いほど、次亜臭素酸の分解は早く、消毒液ASに含まれる次亜臭素酸の濃度は早く低下しやすい。そのため、消毒液ASを生成してから下水FWに供給するまでの時間が長いような場合には、生成部53に供給される希釈水W3の量を増加して、消毒液ASに含まれる次亜臭素酸の濃度を比較的低くすることで、次亜臭素酸の分解を抑制できる。これにより、次亜臭素酸の濃度が安定した状態の消毒液ASを下水FWに供給できる。
具体的に制御部80は、下水FWへの消毒液ASの供給量が比較的大きい場合、生成部53への希釈水W3の供給を停止して、生成部53において生成される消毒液ASに含まれる次亜臭素酸の濃度を比較的高くする。下水FWへの消毒液ASの供給量が比較的大きい場合とは、例えば雨の降り始め等により、下水FWの量および下水FWに含まれる大腸菌等の菌の数が比較的多くなっている場合である。そのため、次亜臭素酸の濃度が比較的高い消毒液ASを下水FWに供給することで、下水FWをより好適に消毒することができる。また、下水FWへの消毒液ASの供給量が比較的大きいため、生成された消毒液ASは順次下水FWへと供給される。したがって、次亜臭素酸の濃度が比較的高く、次亜臭素酸が分解しやすい状況であっても、次亜臭素酸が分解する前に消毒液ASを下水FWに供給でき、次亜臭素酸の濃度が安定した消毒液ASを下水FWに供給できる。
また、生成部53から吐出部40に注入されるまでの供給配管56の長さは、例えば100m以上となる。そのため、消毒液ASが生成部53から吐出部40に注入されるまでに比較的時間が掛かる。これにより、供給配管56内が空の状態で消毒液ASの供給を開始すると、第1水溶液供給部51および第2水溶液供給部52を駆動してから、実際に下水FWに消毒液ASが供給されるまでの間にタイムラグが生じる。したがって、供給配管56内が空の状態においては、下水FWに消毒液ASを供給する際の応答性が悪くなる。
一方、供給配管56に消毒液ASが満たされた状態であれば、第1水溶液供給部51および第2水溶液供給部52を駆動した直後に、供給配管56内の消毒液ASが吐出部40に注入され、下水FWに供給される。そのため、下水FWに消毒液ASを供給する際の応答性を確保できる。しかし、下水FWへの消毒液ASの供給が停止している間に供給配管56に消毒液ASが満たされた状態としておく場合、供給配管56内の消毒液ASに含まれる次亜臭素酸の濃度が比較的高いと、下水FWへの消毒液ASの供給を再開した際に、供給配管56から下水FWに供給される消毒液ASに含まれる次亜臭素酸の濃度が低下している虞がある。
これに対して、制御部80は、下水FWへの消毒液ASの供給量が比較的小さい場合、生成部53に供給される希釈水W3を増加して、生成部53で生成される消毒液ASに含まれる次亜臭素酸の濃度を比較的低くする。そのため、例えば、雨が降り始めてからしばらくして雨量が減り、必要な消毒液ASの量が低下した際に、生成部53から供給配管56へと流れる消毒液ASに含まれる次亜臭素酸の濃度を低くできる。これにより、下水FWへの消毒液ASの供給を停止した際に、供給配管56内の残る消毒液ASを、制御部80によって次亜臭素酸の濃度が1モル%程度に低くされた消毒液ASとできる。したがって、下水FWへの消毒液ASの供給が停止している間に供給配管56内に満たされる消毒液ASに含まれる次亜臭素酸の分解を抑制しつつ、下水FWへの消毒液ASの供給を再開する際の応答性を確保できる。以上により、安定した次亜臭素酸の濃度の消毒液ASを迅速に下水FWに供給することができる。
なお、本発明の実施形態は上記の実施形態に限られず、以下の構成および方法も採用できる。
消毒液は、次亜臭素酸を含むならば、特に限定されない。本明細書において「消毒液が次亜臭素酸を含む」とは、消毒液が次亜臭素酸化合物を含む場合も含む。上述した実施形態の消毒液ASは次亜臭素酸の他に次亜塩素酸化合物を含む構成としたが、これに限られない。消毒液は、次亜塩素酸化合物を含まなくてもよい。消毒液の生成方法は、特に限定されない。消毒液は、次亜塩素酸化合物と臭素化合物とが同一の割合で混合されて生成されてもよいし、次亜塩素酸化合物に対する臭素化合物のモル比が1.0よりも大きくなるように混合されて生成されてもよい。消毒液は、BCDMH等の粉末に水を加えて生成されてもよい。
吐出部は、流路内を流れる下水中において消毒液を拡散させて吐出できるならば、特に限定されない。吐出部がエジェクタである場合、駆動流体として下水を用いなくてもよい。例えば駆動流体として有機物が含まれない液体を用いる場合、駆動流体をノズル部に送る配管中において消毒液を駆動流体に混ぜてもよい。この場合、ノズル部に到達するまでの間に消毒液が下水と接触しないため、消毒液中の次亜臭素酸が消費されることを抑制できる。吐出部は、エジェクタでなくてもよい。吐出部は、例えば、シャワーノズルのように消毒液をシャワー状に拡散させて吐出させる構成であってもよい。また、吐出部は、流路内において下水が流れる向きと同じ向きに消毒液を吐出してもよい。
制御部は、第1水溶液濃度センサ、第2水溶液濃度センサの測定結果に基づいて、第1水溶液供給部と第2水溶液供給部の両方を制御してもよく一方のみを制御してもよい。
例えば、第1水溶液濃度センサは、設けられなくてもよい。
第1水溶液濃度センサによって濃度が測定される次亜塩素酸化合物水溶液が、次亜塩素酸ナトリウム水溶液である場合、保管する際の温度が20℃以下であれば、濃度が低下しにくい。そのため、地下等、比較的気温が低い場所に保管することで、次亜塩素酸ナトリウム水溶液の濃度が低下することを抑制できる。また、屋外等の20℃を超える環境において次亜塩素酸ナトリウム水溶液を保管する場合であっても、食塩の含有量が少ない次亜塩素酸ナトリウム水溶液を使用することで保存期間中の濃度の低下を抑制できる。さらに、比較的多く雨が降るなどして消毒液の消費量が増加する場合は消毒液の原料となる次亜塩素酸ナトリウム水溶液の消費量も増加し、次亜塩素酸ナトリウム水溶液が保管されている期間が比較的短い。したがって、次亜塩素酸ナトリウム水溶液の濃度が低下する前に、次亜塩素酸ナトリウム水溶液を消費することができる。これらの場合には、濃度低下が少ないので、濃度センサを設けなくても、次亜塩素酸化合物水溶液の濃度が一定であるとして消毒液を生成させればよい。
また、例えば第2水溶液濃度センサは、設けられなくてもよい。
第2水溶液濃度センサによって濃度が測定される臭素化合物水溶液が臭化ナトリウム水溶液である場合、臭化ナトリウム水溶液では臭化ナトリウムが比較的安定であるので保管していても臭化ナトリウム水溶液の濃度は変化しない。そのため、第2センサを設けなくても、保管する際の臭化ナトリウム水溶液の濃度を一定とみなすことにより、消毒液を好適に生成できる。
また、第1水溶液供給部と第2水溶液供給部の少なくとも一方を制御してもよいが、水溶液の保管の環境、薬剤の種類等によっては、第1水溶液供給部と第2水溶液供給部いずれも制御せず、第1水溶液、第2水溶液ともに一定の濃度とみなして、混合比率を制御して消毒液を生成させることもできる。
制御部は、例えば、供給配管に設けられたバルブの開度を調整することで、流路中の下水に供給される消毒液の量を調整してもよい。また、生成部から吐出部へと消毒液を送るポンプが別途設けられてもよく、制御部は、当該ポンプを制御することで、流路中の下水に供給される消毒液の量を調整してもよい。有機物濃度センサは、設けられなくてもよい。ハロゲン濃度センサは、設けられなくてもよい。
また、上述した実施形態においては、水処理システムおよび水処理方法として、下水処理システムおよび下水処理方法について説明したが、これに限られない。水処理システムおよび水処理方法が処理する水は、特に限定されず、例えば、川や海の水であってもよい。
なお、本明細書において説明した各構成は、相互に矛盾しない範囲内において適宜組み合わせることができる。
図3に示す例1と図4に示す例2とを比較することで、本発明の有用性を確認した。例1は、実施例である。例2は、比較例である。例1において流路113の流れ方向の距離Lは、215400mmとした。流路113内を流れる下水FWの水深Hは、800mmとした。例1における吐出部140は、上述した実施形態の吐出部40と同様の構成とした。吐出部140は、流路113を流れる下水FWの向きと逆向きに消毒液ASを吐出する。例1においては、鉛直方向に並ぶ2つの吐出部140をY軸方向に沿って2組設けた。すなわち、例1においては、吐出部140を合計4つ設けた。
消毒液ASは、有効塩素濃度70g/Lの次亜塩素酸ナトリウム水溶液と濃度100g/Lの臭化ナトリウム水溶液とを、次亜塩素酸ナトリウムと臭化ナトリウムとのモル比が1:1となるように混合して生成した。複数の吐出部140からの消毒液ASの供給量の合計は、下水FWの流量に対して、10mg/Lとなるようにした。吐出部140から消毒液ASが吐出される位置は、流路113の上流側の端部から下流側に距離L2離れた位置とした。距離L2は、8500mmとした。
例2は、図4に示すように、吐出部140を設けずに、流路113の上流側の端部から下流側に距離L2離れた位置において、流路113の上側から消毒液ASを滴下する構成とした。消毒液ASは、例1と同様に生成した。消毒液ASを滴下する量は、例1と同様に、下水FWの流量に対して10mg/Lとした。例2のその他の点は、例1と同様とした。
例1および例2のそれぞれにおいて、流路113の上流側の端部から下流側に距離L1離れた位置と距離L3離れた位置とにおいて下水FWを採取し、下水FWに含まれる大腸菌群の数を測定した。距離L1は、3400mmとした。距離L3は、9500mmとした。距離L1の位置は、消毒液ASが下水FWに供給される位置よりも上流側である。距離L3の位置は、消毒液ASが下水FWに供給される位置よりも下流側である。距離L3の位置においては、深さが異なる位置P1,P2,P3のそれぞれにおいて下水FWの採取を行った。位置P1は、流路113の底から高さH1の位置である。位置P2は、流路113の底から高さH2の位置である。位置P3は、流路113の底から高さH3の位置である。高さH1は、150mmとした。高さH2は、450mmとした。高さH3は、700mmとした。
下水FWの採取は、例1および例2のそれぞれにおいて2回ずつ行った。例1の採取を行った際の下水FWの流量は、1m3/minであった。例2の採取を行った際の下水FWの流量は、0.85m3/minであった。大腸菌群の数の測定は、下水試験方法第6編第4章第2節に記載のデソキシコール酸培地法を用いて行った。各結果を図5および図6に示す。
図5に示すように、例1では消毒液ASを供給した後において、ほぼ大腸菌群を死滅させることができ、大腸菌群数が排水基準値の3000個/mLを大きく下回る数となったことが確認できた。一方、図6に示すように、例2では消毒液ASを供給する前後でほとんど大腸菌群数に変化がなく、大腸菌群数が排水基準値の3000個/mLよりも多いままとなっていることが確認できた。これにより、単に消毒液ASを滴下するのみでは十分な効果が得られにくく、例1のように下水FW中において消毒液ASを拡散させて吐出することで、下水FWと好適に消毒できることが確かめられた。以上により、本発明の有用性を確認できた。