以下、本発明の実施形態を示す紙幣識別装置及び遊技用装置について、図1〜図19を参照しながら説明する。
[本発明の実施形態の遊技用装置]
まず、図1を参照して、本発明の実施形態を示す紙幣識別装置1が設けられている遊技用装置20について説明する。
図1は、発明の実施形態に係る遊技用装置の内部構成を示す斜視図である。
紙幣識別装置1は、遊技用装置20に設けられている。遊技用装置20は、ホールにおいて、各パチスロに併設され、隣接するパチスロに対応して設置される遊技媒体(メダル)の貸出機である。
図1に示すように、遊技用装置20の前面部21には、LED(light emitting diode)部22、カード挿入口23、紙幣を挿入可能な紙幣挿入口24、タッチパネルLCD(liquid crystal display)により構成された操作ユニット25、メダル(遊技媒体)払出トレー26、スピーカカバー32等が設けられている。
LED部22は、フルカラーLEDや赤外LED(赤外線発光ダイオード)から構成されている。カード挿入口23は、例えばホールのカード発行機(図示せず)によって発行された情報カードを受け付け可能な挿入口である。遊技者は、情報カード又は所定金額の紙幣を、カード挿入口23又は紙幣挿入口24に挿入することで、遊技に必要な遊技媒体としてのメダルの貸し出しを受けることができる。
遊技用装置20は、情報カード及び紙幣といった価値媒体の挿入を受けると、挿入された価値媒体の金額に応じた数のメダルを、内部に設けられた払出用ホッパ27によって計数してメダル払出トレー26から払い出す。遊技者は、メダル払出トレー26から払い出されたメダルをパチスロのメダル投入口へ投入することにより、パチスロにおいて遊技を行うことができる。
操作ユニット25には、各種情報、例えば挿入された価値媒体の金額が表示される。スピーカカバー32は、裏側に設けられたスピーカ(図示省略)からの音を前方に透過させる複数の透過口を有している。
また、図1に示すように、遊技用装置20は、筐体28の内部に、紙幣を識別する紙幣識別装置1、電源ユニット29、払出用ホッパ27、スピーカ(図示省略)及び制御基板30(図3参照)等を有している。払出用ホッパ27は、その上部において筐体28の背面部に設けられた補給用開口部31を介して、ホールからの補給路によりメダルが補給されるようになっている。
制御基板30(図3参照)には、CPU、RAM及びROMが搭載されている。また、制御基板30は、遊技用装置20が備える各種装置、例えばLED部22、操作ユニット25、紙幣識別装置1、電源ユニット29、払出用ホッパ27やスピーカと電気的に接続されている。制御基板30に搭載されたCPUは、これら各種装置との間で、信号のやりとりやコマンドの送受信を行い、これら各種装置の動作を制御する。例えば、制御基板30に搭載されたCPUは、後述するように紙幣識別装置1から挿入された紙幣が「真券でない」旨のコマンドを受信すると、LED部22を所定の警告パターンで点灯させたり、操作ユニット25の液晶表示画面に警告画面を表示させたりする。
また、制御基板30は、図示しないホールコンピュータと接続されている。制御基板30に搭載されたCPUは、後述するように紙幣識別装置1から挿入された紙幣が「真券でない」旨のコマンド、又は「真券である」旨及び金種を示すコマンドを受信すると同旨のコマンドをホールコンピュータに送信する。
[本発明の実施形態の紙幣識別装置]
<紙幣識別装置の概要>
次に、図2を参照して、本発明の実施形態を示す紙幣識別装置1の概要について説明する。図2は、本発明に係る紙幣識別装置の模式的説明図であり、Aは紙幣識別装置の上面図を示し、Bは紙幣識別装置の側面図を示す。
紙幣識別装置1は、挿入された紙幣の真贋を判定する装置である。図2A,Bに示すように、紙幣識別装置1は、紙幣挿入口24、第1搬送ローラ11、第2搬送ローラ12、紙幣収納部16及びシャッタ19を有している。紙幣識別装置1は、紙幣挿入口24に挿入された紙幣を、第1搬送ローラ11と第2搬送ローラ12によって、紙幣収納部16に搬送する。本実施形態において、紙幣は、紙幣の両短辺部が鉛直方向に沿う状態で搬送される。また、紙幣の長辺の延在方向と紙幣の搬送方向とは一致している。
また、シャッタ19は、紙幣挿入口24の近傍に、紙幣挿入口24を開閉可能に設けられている。シャッタ19は、紙幣が挿入を許容する場合は開放状態に設定され、紙幣の挿入を禁止する場合は閉止状態に設定される。本実施形態では、シャッタ19の初期状態(デフォルトの状態)は、開放状態に設定されている。
第1搬送ローラ11は、一対のローラ11a、11bからなり、紙幣挿入口24の付近に配置されている。ローラ11aは、後述の搬送モータ61に連結しており、搬送モータ61の駆動によって、回転する。ローラ11bは、ローラ11aの回転に伴って回転する従動ローラである。
また、第2搬送ローラ12は、一対のローラ12a、12bからなり、第1搬送ローラ11と所定の距離を空けて配置されている。ローラ12aは、後述の搬送モータ61に連結しており、搬送モータ61の駆動によって、回転する。ローラ12bは、ローラ12aの回転に伴って回転する従動ローラである。
本実施形態では、紙幣の一方の短辺部(挿入方向の前端部)が紙幣挿入口24に挿入される。紙幣挿入口24に挿入された紙幣の短辺部は、第1搬送ローラ11のローラ11aとローラ11bとの間に挟持される。ローラ11aが、矢印a方向(図2における反時計回り)に回転し、また、これに伴ってローラ11bが回転すると、紙幣の一方の短辺部は、第2搬送ローラ12に向かって押し出される。そして、紙幣の一方の短辺部は、第2搬送ローラ12のローラ12aとローラ12bとの間に挟持される。
ローラ12aが、ローラ11aの回転方向と同様の方向(矢印a方向)に回転し、また、これに伴ってローラ12bが回転すると、紙幣の一方の短辺部は、第2搬送ローラ12を抜けて、紙幣収納部16に到達する。また、ローラ11a及びローラ12aが回転し続け、紙幣の他方の短辺部(挿入方向の後端部)がローラ12aから抜けて紙幣を収納する紙幣収納部16に到達すると、紙幣の全体が紙幣収納部16に収納される。
ここで、本実施形態では、図2Aにおいて点線で示す第1搬送ローラ11と第2搬送ローラ12間の紙幣の通り道を紙幣搬送路10と称する。したがって、本実施形態では、紙幣識別装置1は、紙幣を、紙幣搬送路10に沿って、紙幣挿入口24から紙幣収納部16まで搬送する。また、紙幣識別装置1は、挿入された紙幣の全体が紙幣収納部16に収納される前に、ローラ11a及びローラ12aを矢印b方向(図2における時計回り)に回転させ、紙幣を、紙幣搬送路10に沿って搬送し、紙幣挿入口24から排出する。
また、紙幣識別装置1は、紙幣搬送路10に沿って搬送される紙幣の一側(図2Aの上側)の面に赤外光を照射可能な赤外光反射用LED13を有している。また、紙幣識別装置1は、紙幣搬送路10に沿って搬送される紙幣の一側の面に可視光を照射可能な可視光反射用LED14を有している。また、紙幣識別装置1は、紙幣搬送路10に沿って搬送される紙幣の他側(図2Aの下側)の面に、赤外光を照射可能な赤外光透過用LED15を有している。
紙幣識別装置1は、紙幣搬送路10を介して、赤外光透過用LED15と対向する略長方形状のミラー17が設けられている。ミラー17は、ミラー17の一対の長辺部17a,17aが紙幣の搬送方向に対して直交するように配置され、また、ミラーの一対の短辺部17bが紙幣の搬送方向に沿うように配置されている。また、ミラー17は、反射面17cを有している。
ミラー17は、ミラー17の紙幣収納部16側の長辺部17aと紙幣搬送路10又は紙幣搬送路10に沿って搬送される紙幣の一面との距離が、ミラー17の紙幣挿入口24側の長辺部17aと紙幣搬送路10又は紙幣搬送路10に沿って搬送される紙幣の一面との距離よりも長くなるように、配置されている。このため、ミラー17の反射面17cは、紙幣搬送路10又は紙幣搬送路10に沿って搬送される紙幣の一面に対して、所定の角度、本実施形態では45°に傾いている。すなわち、ミラー17は、紙幣の搬送方向に対して45°に傾いている。
紙幣識別装置1は、挿入された紙幣の真贋を判定する紙幣識別部40を有している。紙幣識別部40は、ミラー17で反射された光を受光し、ミラー17の反射面17cに映る紙幣を撮像するCMOSイメージセンサ42を有している。CMOSイメージセンサ42は、ミラー17とCMOSイメージセンサ42の受光面の対向方向が、紙幣の搬送方向と水平となるように配置されている。
このためミラー17の反射面17cは、CMOSイメージセンサ42と、紙幣搬送路10に対してそれぞれ45°の傾きを有することとなる。したがって、搬送される紙幣に直交する方向と、ミラー17の反射面17cとCMOSイメージセンサ42の略中心部とを結ぶ線の延在方向とが、直交する。このように、CMOSイメージセンサ42と紙幣搬送路10は90°の傾きを有することで、CMOSイメージセンサ42が紙幣搬送路10を搬送される紙幣の一面に対して直上方向に設置された状態と同じ位置関係を構成することとなる。なお、本実施形態では、搬送される紙幣に直交する方向と、ミラー17の反射面17cとCMOSイメージセンサ42の略中心部とを結ぶ線の延在方向と、が直交する態様、すなわちこれらの方向が成す角度が90°である態様を説明した。しかしながら、この角度は、CMOSイメージセンサ42が撮像に必要な画角を確保できる範囲で適宜変更可能である。
ミラー17は、赤外光反射用LED13が紙幣に照射した光の反射光をCMOSイメージセンサ42の受光面に向けて反射する。また、ミラー17は、可視光反射用LED14が紙幣に照射した光の反射光をCMOSイメージセンサ42の受光面に向けて反射する。また、ミラー17は、赤外光透過用LED15が照射し紙幣を透過した透過光をCMOSイメージセンサ42の受光面に向けて反射する。
<紙幣識別装置の回路構成>
次に、紙幣識別装置1の回路構成について、図3を参照して説明する。図3は、紙幣識別装置1の回路構成例を示すブロック図である。
図3に示すように、紙幣識別装置1は、紙幣識別部40と、LEDユニット50と、紙幣搬送ユニット60を備えている。LEDユニット50は、上述の赤外光反射用LED13、可視光反射用LED14及び赤外光透過用LED15で構成されている。紙幣搬送ユニット60は、上述のシャッタ19、搬送モータ61及び搬送モータ61の動作を制御するモータ駆動回路62で構成されている。搬送モータ61は、第1搬送ローラ11のローラ11a及び第2搬送ローラ12のローラ12aと連結されており、これらを回転駆動させる。
紙幣識別部40は、制御LSI41とCMOSイメージセンサ42で構成されている。紙幣識別部40の制御LSI41は、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)で構成され、CMOSイメージセンサ42と電気的に接続されている。制御LSI41は、CMOSイメージセンサ42から出力された撮像データに基づいて、紙幣搬送路10を搬送される紙幣の真贋を判定し、判定結果を、後述するUARTから、制御基板30に送信する。CMOSイメージセンサ42は、4msec(ミリ秒)毎に、ミラー17の反射面17cを撮像する。
制御LSI41は、紙幣搬送ユニット60と後述するGPIO78(図6参照)を介して電気的に接続されている。制御LSI41は、モータ駆動回路62に対して、搬送モータ61の駆動及び駆動方向を指示し、モータ駆動回路62は、当該指示に基づいて搬送モータ61を駆動する。
また、制御LSI41は、LEDユニット50と後述するGPIO78(図6参照)を介して電気的に接続されている。LEDユニット50を構成する赤外光反射用LED13、可視光反射用LED14及び赤外光透過用LED15は、制御LSI41からの指示に応じて点灯(発光)及び消灯(消光)する。
ここで、LEDユニット50の点灯タイミングとCMOSイメージセンサ42の撮像データとの関係を、図4及び図5を用いて説明する。図4は、LEDユニットの点灯タイミングと撮像データとの関係を説明するための図である。また、図5は、可視光反射データを合成して生成した紙幣画像の一例を示す図である。なお、図4では、紙幣の輪郭線にBの符号を付して示している。
上述したように、CMOSイメージセンサ42は、4msec毎に、ミラー17の反射面17cを撮像する。制御LSI41は、CMOSイメージセンサ42から撮像データが制御LSI41へ送信されることに起因して出力される後述のVsync割込信号に基づいて、点灯させるLEDを切り換える。このため、本実施形態では、制御LSI41は、図4の下部におけるLEDの点灯・消灯タイミングに示すとおり、4msecを経過する毎に、点灯させるLEDを切り換える。本実施形態では、制御LSI41は、点灯させるLEDを、可視光反射用LED14、赤外光透過用LED15、赤外光反射用LED13の順で切り換える。このため、同種のLEDは、12msec周期で点灯する。
したがって、CMOSイメージセンサ42は、撮像タイミング毎に、異なるLEDによって光が照射された紙幣の一部を撮像することになる。例えば、最初の撮像タイミングで、可視光反射用LED14によって紙幣の一側に可視光が照射されているときの紙幣の一部を撮像し、次に、赤外光透過用LED15によって紙幣の他側に赤外光が照射されているときの紙幣の一部を撮像し、次に、赤外光反射用LED13によって紙幣の一側に赤外光が照射されているときの紙幣の一部を撮像する。なお、以下の説明において、可視光反射用LED14によって紙幣の一側に可視光が照射されているときの紙幣の一部を撮像したときの撮像データを可視光反射データと称する。また、赤外光透過用LED15によって紙幣の他側に赤外光が照射され、赤外光が透過しているときの紙幣の一部を撮像したときの撮像データを赤外光透過データと称する。また、赤外光反射用LED13によって紙幣の一側に赤外光が照射されているときの紙幣の一部を撮像したときの撮像データを赤外光反射データと称する。
図4に示す例では、最初の撮像タイミングで、可視光反射用LED14が点灯しているので、CMOSイメージセンサ42は、可視光反射データI1を生成する。また、2回目の撮像タイミングでは、赤外光透過用LED15が点灯しているので、CMOSイメージセンサ42は、赤外光透過データI2を生成する。そして、3回目の撮像タイミングでは、赤外光反射用LED13が点灯しているので、CMOSイメージセンサ42は、赤外光反射データI3を生成する。以降は、撮像タイミング毎にこの順番、すなわち可視光反射データ、赤外光透過データ、赤外光反射データの順で、CMOSイメージセンサ42はデータを生成する。すなわち、CMOSイメージセンサ42は、4msec毎に、可視光反射データ、赤外光透過データ、赤外光反射データの順で撮像データを生成し、制御LSI41へ送信する。
ここで、CMOSイメージセンサ42の撮像タイミング及び紙幣の搬送速度は、同種のLED点灯時の前回の撮像タイミングの撮像可能な紙幣の範囲と、今回の撮像タイミングで撮像可能な紙幣の範囲とが一部重複するように設定されている。このため、例えば可視光反射用LED14が点灯している前回の撮像タイミングで生成された可視光反射データI1における紙幣の画像の一部は、今回の撮像タイミングで生成された可視光反射データI4における紙幣の画像の一部と一部重複する。また、赤外光透過用LED15が点灯している前回の撮像タイミングで生成された赤外光透過データI2における紙幣の画像の一部は、今回の撮像タイミングで生成された赤外光透過データI5における紙幣の画像の一部と一部重複する。また、赤外光反射用LED13が点灯している前回の撮像タイミングで生成された赤外光反射データI3における紙幣の画像の一部は、今回の撮像タイミングで生成された赤外光反射データI6における紙幣の画像の一部と一部重複する。なお、図4において、重複している紙幣の画像の一部については、網掛けを重ねて示している。
以上のように、同種のLED点灯時の前回の撮像タイミングで生成された撮像データにおける紙幣の画像の一部と、今回の撮像タイミングで生成された撮像データにおける紙幣の画像の一部とが一部重複するように設定されているため、制御LSI41は、同種のLED点灯時に撮像されて生成された複数のデータをマッチング処理して合成し、一枚の紙幣データを生成することができる。例えば、図5では、前回の可視光反射用LED14の点灯時に生成される可視光反射データI1と、次回の可視光反射用LED14の点灯時に生成される可視光反射データI4とをマッチング処理すると、可視光反射データI1における紙幣の搬送方向の後端部側(図5の右側)の画像と、可視光反射データI4における紙幣の搬送方向の前端部側(図5の左側)の画像とが一致(又は所定程度類似)する。そこで制御LSI41は、これらの画像が重なるように、可視光反射データI1、I4を合成する。同様に、可視光反射データI4,I7、可視光反射データI7,I10等についてマッチング処理及び合成を繰り返すことで、図5に示すような、可視光反射データから可視光反射紙幣データを生成できる。
制御LSI41は、可視光反射紙幣データの生成と同様に、赤外光反射データから赤外光反射紙幣データを生成し、また、赤外光透過データから赤外光透過紙幣データを生成する。
<制御LSIの回路構成>
次に、制御LSI41の回路構成について、図6を参照して説明する。
図6は、制御LSI41の回路構成例を示すブロック図である。
制御LSI41は、ホストコントローラ71、画像認識DSP(digital signal processor)回路72、バックアップ電源(不図示)が接続されたSRAM(Static Random Access Memory)73、フラッシュメモリ74、ISP(Image Signal Processing)回路75を備えている。また、制御LSI41は、魚眼補正スケーラ回路76、画像認識アクセラレータ回路77、GPIO(General Purpose Input/Output)78及びUART(Universal Asynchronous Receiver Transmitter)79を備えている。これら制御LSI41を構成するデバイスは、バスを介して相互に接続されおり、本実施形態の制御LSI41では、バスのプロトコルとしてAXI(Advanced eXtensible Interface)が採用されている。
また、制御LSI41は、ISI(Image Sensor Interface)回路80を備えている。ISI回路80は、CMOSイメージセンサ42とISP回路75に電気的に接続されている。ISI回路80は、CMOSイメージセンサ42からLVDS(Low voltage differential signaling)方式で送信された撮像データ(可視光反射データ、赤外光透過データ、赤外光反射データ)をRGBベイヤ画像に変換して出力する。このとき、ISI回路80から出力されるRGB画像には固有の画像ID及びデータの種別(可視光反射データ、赤外光透過データ、赤外光反射データ)を示す情報が付される。この画像ID及びデータの種別を示す情報は、後述する各種画像変換を施された後のデータに引き継がれる。
<ISP回路>
ISP回路75は、ISI回路80からRGBベイヤ画像が出力されると(RGBベイヤ画像が入力される)と、VSYNC(Vertical Synchronization)割込信号を、ホストコントローラ71に出力する。
また、ISP回路75は、ISI回路80から出力されたRGBベイヤ画像にレンズ歪み補正処理を施す画像補正処理を行う。
レンズ歪み補正処理は、後述する各種判別・判定処理の精度を高めるため、CMOSイメージセンサ42が撮像した撮像データ上における紙幣識別部40のレンズの特性に起因して発生する歪みを補正する処理である。
例えば、レンズとして、凸レンズを採用した場合、レンズの端の厚みがレンズの中央部の厚みに比べて薄いため、図7に示すような歪みが生じる。図7では、CMOSイメージセンサ42の撮像領域A1と、CMOSイメージセンサ42が撮像した撮像領域A1の画像データG1を模式的に表している。画像データG1における黒点は、撮像領域A1の各格子の頂点に対応する箇所を表している。
図7に示すように、画像データG1では、中央部に比べて端部に比較的大きな歪みが発生している。ISP回路75は、予め設定されている各種補正パラメータに基づきレンズ歪み補正処理を行って画像データG1(ISI回路80から出力されたRGBベイヤ画像)を加工する。具体的には、画像データG1の黒点の位置が、対応する撮像領域A1の格子の頂点と同位置になるように、画像データG1を補完する。これによって、この歪みが後述する各種判別処理に与える影響を抑制する。
なお、各種補正パラメータは、紙幣識別部40に採用されるレンズに対する事前の特性評価に基づいて予めプログラム上で規定されている。なお、上記各種補正パラメータをフラッシュメモリ74に記憶させ、レンズ歪み補正処理時にISP回路75に参照されるようにしてもよい。
次に、ISP回路75は、レンズ歪み補正処理後のRGBベイヤ画像をYUV色空間に対応する画像データ(YUV画像データ)に変換し、このYUV画像データにおける輝度に係るデータ(以下、「グレースケール画像データ」と称する場合がある)をSRAM73に記憶させる。
<魚眼補正スケーラ回路>
魚眼補正スケーラ回路76は、SRAM73からグレースケール画像データを取得し、取得したグレースケール画像データを魚眼補正する魚眼補正処理を行う。
また、魚眼補正スケーラ回路76は、魚眼補正処理を行ったグレースケール画像データに対して、イコライズ処理を行う。イコライズ処理において、魚眼補正スケーラ回路76は、1/2,1/4,1/8に縮小した縮小画像データを作成する。
また、魚眼補正スケーラ回路76は、イコライズ処理において、作成した縮小画像データそれぞれに対して、バイラテラル変換処理を行う。本実施形態では、縮小画像データのノイズを除去するために、図8に示す3×3のカーネル(画像処理におけるカーネルであって、OSの機能を示すカーネルではない。)のガウシアンフィルタを用いる。しかし、ガウシアンフィルタには、画像データ内のエッジが目立たなくなる(ボケる)という欠点がある。そこで、この欠点を解消するために、バイラテラル変換処理の処理アルゴリズムとして、以下の式1に示すバイラテラルフィルタを採用する。すなわち、バイラテラルフィルタは、ガウシアンフィルタのカーネルを使用して画像データのノイズを除去するとともにエッジ補正及び強調を行うフィルタである。
数1において、バイラテラル変換処理前の画像データの配列をf(i, j)、処理後の画像データの配列をg(i, j)とする。また、wはカーネルサイズ、σは標準偏差、dは輝度値の差を表している。
そして、魚眼補正スケーラ回路76は、イコライズ処理を施した縮小画像データをSRAM73に記憶させる対応光源別画像データ保存処理を行う。SRAM73には、データの種別ごと、すなわち可視光反射データ、赤外光透過データ及び赤外光反射データごとに記憶領域が設けられており、魚眼補正スケーラ回路76は、縮小画像データに付随するデータの種別を示す情報に基づいて、縮小画像データを対応する記憶領域に記憶させる。以下の説明において、赤外光反射データに基づく縮小画像データを記憶する記憶領域を、赤外光反射データ記憶領域と称する。また、可視光反射データに基づく縮小画像データを記憶する記憶領域を、可視光反射データ記憶領域と称する。また、赤外光透過データに基づく縮小画像データを記憶する記憶領域を、赤外光透過データ記憶領域と称する。なお、SRAM73に記憶されている縮小画像データの数が上限数に達した場合、記憶された順序が古い縮小画像データから上書きされる。なお、本実施形態では、以降の処理で、SRAM73から取得される縮小画像は、1/4に縮小した縮小画像データとする。
<画像認識DSP回路>
画像認識DSP回路72は、紙幣挿入検知判定処理、対応光源別画像データ合成保存処理、紙幣搬入判定処理、金種・方向・表裏判定処理、フィルタ処理を行う。
(1)紙幣挿入検知判定処理
画像認識DSP回路72は、紙幣挿入検知判定処理を行う。紙幣挿入検知判定処理では、画像認識DSP回路72は、SRAM73の可視光反射データ記憶領域、赤外光透過データ記憶領域、又は、赤外光反射データ記憶領域に記憶されている縮小画像データの内の最新の縮小画像データを取得する。
次いで、画像認識DSP回路72は、取得した縮小画像データ上に紙幣のエッジ部分(紙幣の短辺の端と角)が検出できるか否かを判定する。具体的には、紙幣の種別(1万円、5千円、千円)ごと及び縮小画像の種別ごとに用意され、予めフラッシュメモリ74に記憶されているエッジテンプレートを用いてテンプレートマッチングを行う。エッジテンプレートのいずれかと一致する箇所が縮小画像データ上にある場合は、エッジ部分が検出できると判定する。なお、エッジ部分の検出には、他の公知の方法を採用してよい。また、紙幣の種別(1万円、5千円、千円)に関わらず紙幣の短辺は全て同一の長さ(76mm)であるため、紙幣の種別のいずれか1つ(例えば、千円)のエッジテンプレートを用いてテンプレートマッチングを行ってもよい。
画像認識DSP回路72は、エッジ部分が検出可能と判定する場合、すなわち紙幣の挿入を検知する場合、SRAM73に設けた紙幣挿入検知フラグをONに設定する。
(2)対応光源別画像データ合成保存処理
画像認識DSP回路72は、紙幣挿入検知判定処理で紙幣の挿入が検知されると、対応光源別画像データ合成保存処理を行う。対応光源別画像データ合成保存処理において、画像認識DSP回路72は、赤外光反射データ記憶領域、可視光反射データ記憶領域、又は、赤外光透過データ記憶領域に記憶されている最新の縮小画像データを取得する。
次いで、画像認識DSP回路72は、SRAM73に設けられている合成データ記憶領域を参照する。ここで合成データ記憶領域は、可視光反射データ、赤外光透過データ、赤外光反射データごとに記憶領域が設けられている。以下の説明において、赤外光反射データに基づく縮小画像データの合成データを、赤外光反射合成データと称し、また、これを記憶する記憶領域を、赤外光反射合成データ記憶領域と称する。また、可視光反射データに基づく縮小画像データの合成データを可視光反射合成データと称し、また、これを記憶する記憶領域を、可視光反射合成データ記憶領域と称する。また、赤外光透過データに基づく縮小画像データの合成データを赤外光透過合成データと称し、また、これを記憶する記憶領域を、赤外光透過合成データ記憶領域と称する。
画像認識DSP回路72は、取得した縮小画像データの種別に対応する合成データ記憶領域を参照し、合成データ記憶領域に記憶されている合成データがない場合は、取得した縮小画像データを合成データとして、その合成データ記憶領域に記憶させる。一方、合成データ記憶領域に合成データが記憶されていた場合は、取得した縮小画像データと、記憶されていた合成データとを、マッチング処理によって合成する。そして、合成後のデータを、対応する合成データ記憶領域に記憶させる。例えば、可視光反射データに基づく縮小画像データと、取得した可視光反射合成データと、をマッチング処理によって合成し、可視光反射合成データ記憶領域に記憶させる。なお、マッチング処理及びデータの合成の内容については、図5を用いて上述したため、ここでの説明は省略する。
(3)紙幣搬入判定処理
画像認識DSP回路72は、対応光源別画像データ合成保存処理で合成データが合成データ記憶領域に記憶されると、紙幣搬入判定処理を行う。紙幣搬入判定処理において、画像認識DSP回路72は、可視光反射合成データ記憶領域、赤外光透過合成データ記憶領域、又は、赤外光反射合成データ記憶領域から合成データを取得する。
次いで、画像認識DSP回路72は、取得した合成データ上に紙幣の輪郭形状(紙幣と同様の縦横比の長方形)が検出できるか否かを判定する。具体的には、紙幣の種別(1万円、5千円、千円)ごと、及び、合成データの種別ごとに用意され、予めフラッシュメモリ74に記憶されている輪郭テンプレートを用いてテンプレートマッチングを行う。そして、輪郭テンプレートのいずれかと一致する箇所が合成データ上にある場合は、紙幣の輪郭形状が検出できる、すなわち紙幣が搬入されたと判定する。なお、輪郭形状の検出には、他の公知の方法を採用してよい。
(4)金種・方向・表裏判定処理
画像認識DSP回路72は、紙幣搬入判定処理で紙幣が搬入されたと判定すると、金種・方向・表裏判定処理を行う。ここで、本実施形態において、金種・方向・表裏判定処理における「金種」とは、紙幣の種別(1万円、5千円、千円)を意味する。また、「方向」とは、紙幣識別装置1に紙幣を挿入するときの紙幣の方向(挿入方向)を意味する。例えば、図5に示す紙幣の右側に肖像画が記載されている面について、左側の端部から紙幣が挿入されるときは「左方向」とし、右側の端部から紙幣が挿入されるときは「右方向」とする。また、「表裏」とは、ミラー17に対向する紙幣の面が裏か表かを意味する。本実施形態では、各種紙幣において肖像画が記載されている面を「表」、その裏面を「裏」とする。
金種・方向・表裏判定処理において、画像認識DSP回路72は、SRAM73の可視光反射合成データ記憶領域、赤外光透過合成データ記憶領域、又は、赤外光反射合成データ記憶領域に記憶されている合成データを取得する。次いで、紙幣の種別(1万円、5千円、千円)ごと、及び合成データの種別ごとに用意され、予めフラッシュメモリ74に記憶されている輪郭テンプレートを用いてテンプレートマッチングを行い、金種を特定する。なお、紙幣搬入判定処理において、既に金種が特定可能な場合は、金種・方向・表裏判定処理における金種の特定は省略してよい。
続いて、画像認識DSP回路72は、特定した金種に応じた部分パターンを用いて、方向と表裏の判定を行う。ここで、部分パターンとは、合成データの種別、金種等に応じて予め用意されている画像であり、フラッシュメモリ74に記憶されている。例えば、可視光反射合成データの金種1万円の表面に対応する部分パターンとしては、図5に示すような肖像画が記載されている面の左上に位置する数字「10000」を示す画像P1が部分パターンとして用意されている。また、例えば、赤外光透過合成データの金種1万円に対応する部分パターンとしては、紙幣の中央部分に位置する透かし部分の画像が部分パターンとして用意されている。
例えば、金種が1万円と特定されている場合は、画像認識DSP回路72は、部分パターンP1に一致又は所定程度類似する画像が、合成データにおける紙幣の左上にあるかを判定する。当該画像ある場合は、画像認識DSP回路72は、紙幣の表裏について、「表」と判定し、且つ、方向を「左方向」と判定する。
一方、合成データにおける紙幣の左上にないと判定する場合は、合成データを180度回転させた上で、左上に部分パターンP1と一致又は所定程度類似する画像があるかを判定する。当該画像ある場合は、画像認識DSP回路72は、紙幣の表裏について、「表」と判定し、且つ、方向を「右方向」と判定する。
一方、当該画像がないと判定する場合は、金種1万円の裏面に係る部分テンプレート(図示省略)を用いて、同様にマッチング処理を行って、紙幣の表裏及び方向を特定する。以上のように、本実施形態では、紙幣の挿入方向を特定可能な部分パターンを各金種の表面及び裏面ごとに用意しており、金種・方向・表裏判定処理で、挿入された紙幣の金種・方向・表裏が特定可能となっている。
(5)紙幣データ抽出処理
画像認識DSP回路72は、金種・方向・表裏判定後に、各種合成データ記憶領域から可視光反射合成データ、赤外光反射合成データ、又は、赤外光透過合成データを取得する。そして、取得した合成データに対して予め用意された輪郭テンプレートを用いて、紙幣画像の領域を特定し、紙幣一枚の画像データとして抽出する。なお、以下の説明において、可視光反射合成データから抽出されたデータを可視光反射紙幣データと称し、赤外光反射合成データから抽出されたデータを赤外光反射紙幣データと称する。また、赤外光透過合成データから抽出されたデータを赤外光透過紙幣データと称する。
(6)フィルタ処理
画像認識DSP回路72は、可視光反射紙幣データ、赤外光反射紙幣データ、又は、赤外光透過紙幣データ(以下、これらをまとめて「紙幣データ」と称する場合がある)が抽出されると、フィルタ処理を行う。フィルタ処理は、3σ修正処理と、非線形拡散フィルタ処理からなる。
まず、3σ修正処理において、画像認識DSP回路72は、抽出された紙幣データにおける輝度の値について、一定範囲のデータの平均値を中心とした正規分布(図9参照)を作成する。ここで、3σとは、標準偏差の3倍であって、平均値±3σの範囲内にほぼ全てのデータが属する(ばらつきが正規分布である場合、99.7%のデータがこの範囲内に属する)ものである。
そして、輝度の値が−3σよりも小さい画素の輝度、例えば−4σの画素の輝度を、−3σの輝度の値に置き換える。また、輝度の値が3σよりも大きい画素の輝度、例えば4σの画素の輝度を、3σの輝度の値に置き換える。このようにすることで、イレギュラーなデータである輝度の値が極端に大きい画素(明る過ぎる画素)や輝度の値が極端に小さい画素(暗過ぎる画素)が、その後の処理に影響することを抑制することができる。
次に、画像認識DSP回路72は、3σ修正処理後の各種紙幣データに対して、非線形拡散フィルタ処理を行いX(縦)方向のエッジ画像XとY(横)方向のエッジ画像Yを作成する。
図10Aは、3σ修正処理後の紙幣データを模式的に表している。図10Aにおいて、格子の一マスは、画素を示している。また、図10Bはエッジ画像X用係数を示している。ここで図10Aの画素A1〜A8,Pの輝度の値を、それぞれa1〜a8,pとした場合、エッジ画像Xにおける注目画素Pの輝度の値は、エッジ画像X用係数を用いて、以下の式2によって算出される。
Pの輝度(PX)=a1×(−3)+a2×0+a3×3+a4×(−10)+p×0+a5×10+a6×(−3)+a7×0+a8×3…式(2)
画像認識DSP回路72は、3σ修正処理後の紙幣データの全ての画素について、上記式2を用いて輝度を算出することで、エッジ画像Xを作成する。
図10Cはエッジ画像Y用係数を示している。ここで図10Aの画素A1〜A8,Pの輝度の値を、それぞれa1〜a8,pとした場合、エッジ画像Yにおける注目画素Pの輝度の値は、エッジ画像Y用係数を用いて、以下の式3によって算出される。
Pの輝度(PY)=a1×(−3)+a2×(−10)+a3×(−3)+a4×0+p×0+a5×0+a6×3+a7×10+a8×3…式(3)
画像認識DSP回路72は、3σ修正処理後の各種紙幣データの全ての画素について、上記式3を用いて輝度を算出することで、エッジ画像Yを作成する。
各種紙幣データについて、エッジ画像X及びエッジ画像Yを作成した後、画像認識DSP回路72は、両画像からエッジ画像XYを作成する。エッジ画像XYにおける各画素の輝度PXYは、エッジ画像Xにおける画素の輝度の値をPXとし、同一位置にあるエッジ画像Yにおける画素の輝度の値をPYとした場合、以下の式4によって算出することができる。
画像認識DSP回路72は、エッジ画像X及びエッジ画像Yの全ての画素について、上記式4を用いて輝度PXYを算出することで、エッジ画像XYを作成し、作成したエッジ画像XYをSRAM73に記憶させる。すなわち、SRAM73には、可視光反射紙幣データのエッジ画像XY、赤外光反射紙幣データのエッジ画像XY、赤外光透過紙幣データのエッジ画像XYの3種類のエッジ画像が記憶され得る。
なお、画像認識DSP回路72が行う他の処理(真贋判定処理)については、後述する。
<画像認識アクセラレータ回路>
画像認識アクセラレータ回路77は、エッジ勾配画像に係る処理及び高速フーリエ変換(Fast Fourier Transform,以下「FFT変換」と称する場合がある)処理を行う。
[エッジ勾配画像に係る処理]
エッジ勾配画像に係る処理には、Scharr変換処理、HOG変換処理が含まれる。
(1)Scharr変換処理
Scharr変換処理において、画像認識アクセラレータ回路77は、SRAM73から可視光反射紙幣データのエッジ画像XY、赤外光反射紙幣データのエッジ画像XY、又は、赤外光透過紙幣データのエッジ画像XYを取得する。そして、取得したエッジ画像XYのそれぞれについて、X(縦)方向のエッジ変換画像XとY(横)方向のエッジ変換画像Yを作成する。
なお、Scharr変換処理においてエッジ変換画像Xとエッジ変換画像Yを作成する態様は、上述した非線形拡散フィルタ処理において、エッジ画像Xとエッジ画像Yを作成する態様と用いる係数を含めて同様のため、ここでは説明を省略する。
(2)HOG変換処理
HOG変換処理において、画像認識アクセラレータ回路77は、エッジ勾配画像を作成し、作成したエッジ勾配画像にHOG変換を施す。ここで、HOG(Histograms of Oriented Gradients)変換とは、画像データにおける局所領域(セル)の輝度の勾配方向をヒストグラム化することであり、HOG変換を伴う画像マッチングには、局所的な形状変化(幾何学的変換)に強いことや照明の変動に影響を受けにくいという特徴がある。
具体的には、Scharr変換処理で作成した各種画像XYについてのエッジ変換画像Xとエッジ変換画像Yからエッジ勾配画像を作成する。エッジ勾配画像における各画素の輝度すなわち勾配強度は、エッジ変換画像Xにおける画素の輝度の値をQX、同一位置にあるエッジ変換画像Yにおける画素の輝度の値をQYとした場合、以下の式5によって算出することができる。
また、エッジ勾配画像における各画素の勾配角度は、以下の式6によって算出することができる。
図11では、作成した可視光反射紙幣データ(のエッジ画像XY)に係るエッジ勾配画像G4を模式的に示している。画像認識アクセラレータ回路77は、作成したエッジ勾配画像G4における2点鎖線で示した長方形の枠Sを局所領域(セル)として、局所領域ごとに局所領域内の輝度の勾配方向のヒストグラムを、作成する。そして作成したヒストグラム一式(以降の説明において、「HOGデータ」と称する場合がある)をSRAM73に記憶させる。本実施形態において、SRAM73には、可視光反射紙幣データ(のエッジ画像XY)に係るHOGデータ、赤外光反射紙幣データ(のエッジ画像XY)に係るHOGデータ、赤外光透過紙幣データ(のエッジ画像XY)に係るHOGデータの3種類のHOGデータが記憶され得る。
[FFT変換処理]
FFT変換処理において、画像認識アクセラレータ回路77は、上述の各種エッジ画像XYを取得し、取得したエッジ画像XYに対して、FFT変換処理を施す。
具体的には、図12に示すように、画像認識アクセラレータ回路77は、取得した各種エッジ画像XYを、複数の領域に区画し、区画した各領域について、周波数と振幅の値を算出する。図12では、取得したエッジ画像XYデータを所定の角度ごとに区画し、当該区画した領域それぞれについて、周波数と振幅の値を算出した例を示している。
そして、画像認識アクセラレータ回路77は、算出した周波数と振幅の値(以下、これらを「FFTデータ」と称する場合がある)をSRAM73に記憶する。なお、本実施形態では、可視光反射紙幣データ(のエッジ画像XY)に係るFFTデータ、赤外光光反射紙幣データ(エッジ画像XY)に係るFFTデータ、赤外光透過紙幣データ(のエッジ画像XY)に係るFFTデータの3種類のFFTデータが記憶され得る。
<画像認識DSP回路による真贋判定処理>
次に、画像認識DSP回路72が実行する真贋判定処理について説明する。真贋判定処理は、挿入された紙幣が真券(本物)か否かを判定する処理であり、画像マッチングテンプレート比較処理、HOGテンプレート比較処理、FFTテンプレート比較処理及び3次元判定処理が含まれる。
(1)画像テンプレート比較処理
画像テンプレート比較処理において、画像認識DSP回路72は、SRAM73から可視光反射紙幣データのエッジ画像XY、赤外光反射紙幣データのエッジ画像XY、又は赤外光透過紙幣データのエッジ画像XYを取得する。
次に、画像認識DSP回路72は、取得したエッジ画像XYデータと、対応するテンプレートとを比較し、ゼロ平均正規化相互相関マッチング(Zero-mean Normalized Cross Correlation,以降の説明において「ZNCC」と称する場合がある)によって、類似度の評価値xを算出する。なお、ZNCCによって得られる類似度の評価値は、−1.0000000〜1.0000000の範囲で算出され、1.0000000が最も類似度が高い(似ている)評価値となる。
(2)HOGテンプレート比較処理
HOGテンプレート比較処理において、画像認識DSP回路72は、SRAM73に記憶されている可視光反射紙幣データ(のエッジ画像XY)に係るHOGデータ、赤外光反射紙幣データ(のエッジ画像XY)に係るHOGデータ、又は、赤外光透過紙幣データ(のエッジ画像XY)に係るHOGデータを取得する。次いで、取得したHOGデータと、対応するテンプレートのHOGデータとを比較し、ZNCCによって類似度の評価値yを算出する。
(3)FFTテンプレート比較処理
FFTテンプレート比較処理において、画像認識DSP回路72は、SRAM73に記憶されている可視光反射紙幣データ(のエッジ画像XY)に係るFFTデータ、赤外光反射紙幣データ(のエッジ画像XY)に係るFFTデータ、又は、赤外光透過紙幣データ(のエッジ画像XY)に係るFFTデータを取得する。次いで、取得したFFTデータと、対応するテンプレートのFFTデータとを比較し、ZNCCによって類似度の評価値zを算出する。
(4)3次元判定処理
3次元判定処理において、画像認識DSP回路72は、上述の処理で算出した評価値x,y,zと、予め設定した係数A,B,Cからなる以下の式が成立する場合に、挿入された紙幣が真券であると判定する。なお、係数A,B,Cの値は、要求する真贋判定の精度に応じて、適宜設定可能である。
x+Ay+Bz≧C ・・・式(7)
<GPIO>
GPIO78(図6参照)は、制御LSI41と、制御LSI41に接続されている機器や各種デバイスとの入出力のためのデバイスである。例えば、GPIO78のLED制御出力PORTが、LEDユニット50に接続され、制御LSI41によるLEDユニット50を構成する赤外光反射用LED13、可視光反射用LED14及び赤外光透過用LED15の点灯及び消灯制御が可能となっている。また、GPIO78の紙幣搬送制御出力PORTが、紙幣搬送ユニット60に接続され、制御LSI41による紙幣搬送ユニット60の動作の制御が可能となっている。また、GPIO78のCMOSポートがCMOSイメージセンサ42に接続され、制御LSI41によるCMOSイメージセンサ42の制御が可能となっている。
<UART>
UART79は、紙幣識別装置1と制御基板30との間で各種コマンドを送受信するためのシリアル通信用デバイスである。
<ホストコントローラ>
ホストコントローラ71は、制御LSI41を構成する各デバイス、例えば魚眼補正スケーラ回路76、画像認識DSP回路72、画像認識アクセラレータ回路77、GPIO78、UART79の制御を行う。
また、ホストコントローラ71は、GPIO78を介して、LEDユニット50へ点灯指示や消灯指示に係る信号を出力する。
ここで、SRAM73には、真贋判定の判定対象のデータの種別ごとに判定結果の記憶領域が設けられている。具体的には、本実施形態では、可視光反射データに基づくデータに対する判定結果を記憶する可視光反射判定結果記憶領域が設けられている。また、赤外光反射データに基づくデータに対する判定結果を記憶する赤外光反射判定結果記憶領域が設けられている。また、赤外光透過データに基づくデータに対する判定結果を記憶する赤外光透過判定結果記憶領域が設けられている。ホストコントローラ71は、これら判定結果の記憶領域全てに判定結果が記憶されたタイミングで、記憶された3種類の判定結果に応じて、紙幣判定正常時制御又は紙幣判定異常時制御を行う。
ホストコントローラ71は、記憶された3種類の判定結果が全て「真券」である場合に、挿入された紙幣が真券である旨及び金種を制御基板30に送信する紙幣判定正常時制御を行う。一方、ホストコントローラ71は、記憶された3種類の判定結果の少なくとも1つが「真券でない」である場合に、制御基板30へ、真贋判定で判定結果が真券でないと判定された旨を示す判定異常コマンドを送信する紙幣判定異常時制御を行う。
なお、SRAM73には、バックアップ電源(不図示)が接続されており、遊技用装置20の電源切断時も一定期間(例えば、1週間程度)はSRAM73に記憶された内容は保持される。
<フラッシュメモリ>
フラッシュメモリ74には、制御LSI41を構成する各種デバイス、例えば、ホストコントローラ71、画像認識DSP回路72、魚眼補正スケーラ回路76、画像認識アクセラレータ回路77が各種処理に用いるパラメータや各種処理に必要なデータが記憶されている。また、フラッシュメモリ74には、画像認識DSP回路72が行う紙幣挿入検知判定処理、紙幣搬入判定処理や金種・方向・表裏判定処理に用いられる各種テンプレート、例えばエッジテンプレート、輪郭テンプレート、部分テンプレートが記憶されている。
また、フラッシュメモリ74には、図13に示すように、真贋判定処理に用いられる各種テンプレートが記憶されている。テンプレートは、光源の違いに基づく比較対象データの元データの種別(可視光反射データ,赤外光反射データ,赤外光透過データ)、比較処理の種類(画像テンプレート、HOG、FFT)、金種の種類(表・裏)の組合せのそれぞれに対応する54種類が予め用意されている。
テンプレートNo.1〜18は、可視光反射紙幣データ(のエッジ画像XY)に係る比較処理に用いられる。テンプレートNo.19〜36は、赤外光反射紙幣データ(のエッジ画像XY)に係る比較処理に用いられる。テンプレートNo.37〜54は、赤外光透過紙幣データ(のエッジ画像XY)に係る比較処理に用いられる。例えば、可視光反射紙幣データ(のエッジ画像XY)に係る比較処理において、挿入された紙幣の金種が「5千円」で、表裏が「表」の場合におけるHOGテンプレート比較処理で用いるテンプレートは、No.9のHOGテンプレートとなる。
なお、本実施形態では、各種テンプレートについて、所定の方向(例えば、図5に示す例では左方向)で挿入した場合のテンプレートのみを記憶している。このため、画像認識DSP回路72が、金種・方向・表裏判定処理の結果、紙幣が所定の方向とは逆の方向(図5で示す例では右方向)から挿入されたと判定する場合、比較対象の紙幣データを回転させてマッチング処理を行う。しかしながら、これに代えて、両挿入方向に応じたテンプレートを予め用意しておいてもよい。また、テンプレートを回転させてマッチング処理をしてもよい。
<制御LSIの処理フロー>
[第1メイン処理]
次に、制御LSI41が行う第1メイン処理について、図14を参照して説明する。図14は、制御LSI41が行う第1メイン処理を説明するための処理フロー図である。
第1メイン処理において、制御LSI41のホストコントローラ71は、光源LED点灯制御処理を行う(S1)。光源LED点灯制御処理において、ホストコントローラ71は、点灯するLEDとして可視光反射用LED14、赤外光透過用LED15,又は、赤外光反射用LED13のいずれか一つを選択し、選択したLEDを点灯させる。なお、ホストコントローラ71は、本処理において、可視光反射用LED14、赤外光透過用LED15、赤外光反射用LED13の順で点灯するLEDを選択するように予め設定されている。
次いで、ホストコントローラ71は、Vsync割込信号が出力されたか否かを判定する(S2)。出力されていないと判定する場合(ステップS2がNO判定の場合)、ホストコントローラ71は、ステップS2の処理を繰り返す。
一方、ステップS2で、Vsync割込信号が出力されたと判定する場合(ステップS2がYES判定の場合)、制御LSI41の魚眼補正スケーラ回路76は上述の対応光源別画像データ保存処理を行う(S3)。そして、ステップS3の処理の後、制御LSI41は処理をステップS1に移行させる。
ここで、ステップS2におけるVsync割込信号は、上述したとおり、CMOSイメージセンサ42から送信された撮像データを、ISI回路80がRGB画像に変換し、変換したRGB画像をISP回路75が受信するときに出力される。また、CMOSイメージセンサ42は、上述のとおり4msec毎に、ミラー17の反射面17cを撮像する。すなわち、Vsync割込信号は4msec周期で出力される。したがって、本実施形態において、制御LSI41は、上述のとおり、4msecを経過する毎に、異なるLEDを点灯させ、また、同種のLEDが12msec周期で点灯するように、各種LEDの点灯を制御することになる。
また、ISP回路75はRGB画像をグレースケール画像データに変換し、変換されたグレースケール画像データについて、魚眼補正スケーラ回路76は、ステップS3で対応光源別画像データ保存処理を行う。このため、魚眼補正スケーラ回路76は、赤外光反射データに基づく縮小画像データを赤外光反射データ記憶領域に記憶させ、または、可視光反射データに基づく縮小画像データを可視光反射データ記憶領域に記憶させ、または、赤外光透データに基づく縮小画像データを赤外光透過データ記憶領域に記憶させることができる。
[第2メイン処理]
次に、制御LSI41が行う第2メイン処理について、図15を参照して説明する。図15は、制御LSI41が行う第2メイン処理を説明するための処理フロー図である。第2メイン処理は、第1メイン処理のステップS3の対応光源別画像データ保存処理が実行され、SRAM73に縮小画像データが記憶される毎(すなわち4msec毎)に、記憶された縮小画像データについて実行される。
第2メイン処理において、制御LSI41の画像認識DSP回路72は、まず、SRAM73に設けた紙幣挿入検知フラグはONか否かを判定する(S11)。ステップS11で紙幣挿入検知フラグがONでないと判定する場合(ステップS11がNO判定の場合)、画像認識DSP回路72は、紙幣挿入検知判定処理を行う(S12)。紙幣挿入検知判定処理において、画像認識DSP回路72は、SRAM73の赤外光反射データ記憶領域、可視光反射データ記憶領域又は赤外光透過データ記憶領域に記憶されている最新の縮小画像データを取得し取得した縮小画像データ上に紙幣のエッジ部分(端と角)が検出できるか否かに基づいて、紙幣の挿入を検知する。なお、ステップS12で取得される最新の縮小画像とは、第2メイン処理の実行のトリガーとなった直近の対応光源別画像データ保存処理(第1メイン処理のステップS13)に係る縮小画像である。
次いで、画像認識DSP回路72は、ステップS2の判定結果が検知か否かを判定する(S13)。ステップS12の判定結果が検知でない場合(ステップS13がNO判定の場合)、画像認識DSP回路72は、第2メイン処理を終了する。
一方、ステップS12の判定結果が検知の場合(ステップS13がYES判定の場合)、画像認識DSP回路72は、対応光源別画像データ合成保存処理を行う(S14)。対応光源別画像データ合成保存処理において、画像認識DSP回路72は、ステップS12で取得した最新の縮小画像データを合成データとして、SRAM73の対応する合成データ記憶領域に記憶させる。例えば、ステップS12で取得した最新の縮小画像データが可視光反射データに基づく縮小画像の場合、当該可視光反射データに基づく縮小画像を合成データとして、可視光反射合成データ記憶領域に記憶させる。
次いで、画像認識DSP回路72は、搬送用モータ搬送制御を行う(S15)。本処理において、画像認識DSP回路72は、挿入された紙幣が所定の速度で紙幣識別装置1内を搬送されるように、ホストコントローラ71を介して、紙幣搬送ユニット60の動作を制御する。具体的には、画像認識DSP回路72は、紙幣搬送ユニット60のモータ駆動回路62に、搬送モータ61を正回転させるように指示する。
次いで、画像認識DSP回路72は、SRAM73に設けた紙幣挿入検知フラグをONにセットする(S16)。そして、画像認識DSP回路72は、第2メイン処理を終了させる。
ここで説明をステップS11に戻し、ステップS11の処理で、紙幣挿入検知フラグはONであると判定する場合(ステップS11がYES判定の場合)、画像認識DSP回路72は、対応光源別画像データ合成保存処理を行う(S17)。本処理において、画像認識DSP回路72は、SRAM73の赤外光反射データ記憶領域、可視光反射データ記憶領域又は赤外光透過データ記憶領域に記憶されている最新の縮小画像データを取得する。また、画像認識DSP回路72は、取得した縮小画像データの種別に対応するSRAM73の合成データ記憶領域から合成データを取得し、取得した縮小画像データと合成データとをマッチング処理によって合成する。そして、合成後のデータを対応する合成データ記憶領域に記憶させる。なお、取得した縮小画像データの種別に対応するSRAM73の合成データ記憶領域に合成データが記憶されていない場合は、取得した縮小画像データを合成データとして当該合成データ記憶領域に記憶させる。例えば、赤外光透過データの縮小画像データを取得し、赤外光透過合成データ記憶領域に合成データが記憶されていない場合は、取得した赤外光透過データの縮小画像データを合成データとして、赤外光透過合成データ記憶領域に記憶する。
次いで、画像認識DSP回路72は、正常に画像合成できたか否かを判定する(S18)。具体的には、ステップS17において、合成データ記憶領域に合成データが記憶されておらず、取得した縮小画像データを最初の合成データとして当該合成データ記憶領域に記憶させた場合、ステップS18では正常に合成できたと判定される。また、ステップS17において、合成データ記憶領域に記憶されていた合成データに取得した縮小画像データを合成して、合成後のデータを合成データ記憶領域に記憶させた場合、ステップS18では正常に合成できたと判定される。
ステップS18で正常に合成できなかったと判定する場合(ステップS18がNO判定の場合)、画像認識DSP回路72は、合成NG時処理を行う(S19)。なお、正常に合成できない場合としては、例えば、挿入された紙幣の摩耗、汚れ、皺、破損や、紙幣の搬送時の紙幣の滑りや詰まりの発生により、重複部分を検出できない場合や、重複部分が閾値以上(詰まりの場合に発生)又は以下である場合が考えられる。
合成NG時処理において、画像認識DSP回路72は、SRAM73の各種データ記憶領域及び各種合成データ記憶領域に記憶されているデータを全て削除する。また、SRAM73の紙幣挿入検知フラグをOFFにセットする。そして、画像認識DSP回路72は、紙幣挿入口24から挿入された紙幣が返却されるように、ホストコントローラ71を介して、紙幣搬送ユニット60の動作を制御する。具体的には、画像認識DSP回路72は、紙幣搬送ユニット60のモータ駆動回路62に、搬送モータ61を一定時間(例えば、10秒間)逆回転させるように指示する。ステップS19の後、画像認識DSP回路72は、第2メイン処理を終了させる。
ステップS18の処理で、正常に画像合成できたと判定する場合(ステップS18がYES判定の場合)、画像認識DSP回路72は、紙幣搬入判定処理を行う(S20)。本処理において、画像認識DSP回路72は、ステップS17で合成データを記憶させた合成データ記憶領域から合成データを取得し、取得した合成データ上に紙幣の輪郭形状(紙幣と同様の縦横比の長方形)が検出できるか否かを判定する。そして、輪郭形状が検出できた場合は、紙幣が搬入されたと判定し、できなかった場合は、紙幣が搬入されていないと判定する。
次いで、画像認識DSP回路72は、ステップS20の紙幣搬入判定処理の判定結果が、搬入されたであるか否かを判定する(S21)。当該判定結果が搬入されていない場合(ステップS21がNO判定の場合)、画像認識DSP回路72は、第2メイン処理を終了する。
なお、紙幣搬入判定処理では、ステップS17で記憶させた合成データ上に紙幣の輪郭形状を検出した場合に紙幣が搬入されたと判断した。これに加えて、検出した輪郭形状が、ステップS17で合成データを記憶させた合成データ記憶領域とは異なる合成データ記憶領域に記憶されている合成データ上の紙幣の輪郭形状と一致するか否かの判定を行ってもよい。例えばステップS17で記憶させた可視光反射合成データについて紙幣の輪郭形状を検出した場合に、この検出した輪郭形状と、赤外光反射合成データ記憶領域に記憶されている赤外光反射合成データ上の輪郭形状か一致するか否かを判定する。一致しない場合は、ステップS19の合成NG処理を実行して、搬送された紙幣を返却してもよい。
ステップS21の判定結果が搬入された場合(ステップS21がYES判定の場合)、画像認識DSP回路72は、搬送用モータ停止制御を行う(S22)。本処理において、画像認識DSP回路72は、ホストコントローラ71を介して、紙幣搬送ユニット60のモータ駆動回路62に、搬送モータ61の動作を停止するように制御し、且つ、シャッタ19を閉止状態に設定する。なお、搬送用モータ停止制御の開始前において、既に搬送モータ61が停止し、且つ、シャッタ19が閉止状態に設定されている場合は、搬送用モータ停止制御は省略される。また、搬送用モータ停止制御実行後の撮像タイミングにおいては、停止している紙幣が撮像される。例えば可視光反射用LED14の点灯時の撮像に係る可視光反射データに基づく縮小画像についての第2メイン処理において搬送用モータ停止制御が行われた場合、次の撮像タイミングである赤外光透過用LED15の点灯時ではCMOSイメージセンサ42は停止している紙幣を撮像する。また同様に、その次の撮像タイミングである赤外光反射用LED13の点灯時ではCMOSイメージセンサ42は停止している紙幣を撮像する。
次いで、画像認識DSP回路72は、ステップS20の処理で取得した合成データに基づいて、金種・方向・表裏判定処理を行う(S24)。本処理において、画像認識DSP回路72は、部分テンプレートを用いて、挿入された紙幣の金種(1万円、5千円、千円)、方向(上述の「左方向」又は「右方向」)、及び紙幣の表か裏かを判定する。
次いで、画像認識DSP回路72は、ステップS23の判定の結果がOK、すなわち金種・方向・表裏が判定できたか否かを判定する(S24)。判定できなかった場合(S24がNO判定の場合)、画像認識DSP回路72は、搬送用モータ排出制御を行う(S25)。搬送用モータ排出制御において、画像認識DSP回路72は、ホストコントローラ71を介して、紙幣搬送ユニット60の動作を、挿入された紙幣が返却されるように制御する。すなわちシャッタ19を開放し、紙幣を紙幣挿入口24から返却されるようにモータ駆動回路62に搬送モータ61を一定時間逆回転させるように指示する。また、画像認識DSP回路72は、SRAM73の各種データ記憶領域及び合成データ記憶領域に記憶されているデータを全て削除する。また、画像認識DSP回路72は、SRAM73の紙幣挿入検知フラグをOFFにセットする。そして、画像認識DSP回路72は、第2メイン処理を終了する。
ステップS24で判定結果がOKの場合(S24がYES判定の場合)、画像認識DSP回路72は、真贋判定処理を行う(S26)。本処理において、画像認識DSP回路72は、ステップS20の処理で取得した合成データについて、上述の紙幣データ抽出処理を行って、可視光反射紙幣データ、赤外光反射紙幣データ又は赤外光透過紙幣データを抽出する。また、抽出した紙幣データについて上述のフィルタ処理を施す。また、画像認識アクセラレータ回路77に、エッジ勾配画像に係る処理(HOG)及び高速フーリエ変換(FFT)を行わせ、抽出した紙幣データについてのHOGデータとFFTデータを生成させる。そして、画像認識DSP回路72は、図13に示すテンプレートから、ステップS20で取得した合成データの元データの種別(可視光反射データ、赤外光透過データ、赤外光反射データ)及びステップS23で特定した金種・方向・表裏に対応するテンプレートを選択し、上述の画像テンプレート比較処理、HOGテンプレート比較処理及びFFTテンプレート比較処理を行う。そして、これら比較処理で求めたZNCCの値と、上述の式(7)を用いて、真贋判定を行う。
次いで、画像認識DSP回路72は、ステップS26の真贋判定の結果をSRAM73に記憶させる判定結果記憶処理を行う(S27)。本処理において、画像認識DSP回路72は、ステップS26の真贋判定の結果を、対応する記憶領域に記憶させる。例えば、S20の処理で取得した合成データが可視光反射合成データの場合、ステップS26の判定結果は、可視光反射データに基づくデータに対する判定結果となることから、当該判定結果を可視光反射判定結果記憶領域に記憶させる。そして、画像認識DSP回路72は、第2メイン処理を終了する。
[第3メイン処理]
次に、制御LSI41が行う第3メイン処理について、図16を参照して説明する。図16は、制御LSI41が行う第3メイン処理を説明するための処理フロー図である。第3メイン処理は、第2メイン処理のステップS27の判定結果記憶処理が実行され、SRAM73に判定結果が記憶される毎に実行される。
第3メイン処理において、制御LSI41のホストコントローラ71は、SRAM73の各種判定結果記憶領域を参照し、3種類の判定結果が記憶されたか否かを判定する。ここで、3種類の判定結果とは、可視光反射データに基づくデータに対する判定結果、赤外光反射データに基づくデータに対する判定結果、及び、赤外光透過データに基づくデータに対する判定結果である。
ステップS31の処理で3種類の判定結果が記憶されていないと判定する場合(S31がNO判定の場合)、ホストコントローラ71は、第3メイン処理を終了する。一方、3種類の判定結果が記憶されていると判定する場合(S31がYES判定の場合)、判定結果はOKか、すなわち3種類の全ての判定結果が「真券」であることを示しているか否かを判定する(S32)。
ステップS32の処理で判定結果はOKと判定する場合(ステップS32がYES判定の場合)、搬送用モータ搬入完了制御を行う(S33)。本処理において、ホストコントローラ71は、挿入された紙幣の挿入方向の後端部が第2搬送ローラ12を抜けて、紙幣全体が紙幣収納部16に収納されるように、モータ駆動回路62に搬送モータ61を正回転させるよう指示する。
次いで、ホストコントローラ71は、紙幣判定正常時制御を行う(ステップS34)。本処理において、ホストコントローラ71は、挿入された紙幣が真券である旨及び金種を示すコマンドを制御基板30に送信する。
一方、ステップS32の処理で判定結果はOKでないと判定する場合(ステップS32がNO判定の場合)、すなわち3種類の判定結果の少なくとも一つが「真券でない」である場合、ホストコントローラ71は、紙幣判定異常時制御を行う(S35)。本処理において、ホストコントローラ71は、搬送用モータ排出制御(図15のステップS25参照)を行う。以上のように、本実施形態では、「真券でない」と判定された紙幣は、紙幣挿入口24から排出される。しかしながら、これに代えて、「真券でない」と判定された紙幣については、搬送用モータ搬入完了制御を行い、紙幣を紙幣収納部16に収納させてもよい。この場合、ホストコントローラ71は、制御基板30へ、真贋判定で判定結果が真券でないと判定された旨を示す判定異常コマンドを送信してもよい。
ステップS34又はステップS35の処理の後、ホストコントローラ71は、SRAM73の紙幣挿入検知フラグをOFFにセットする(S36)。そして、第3メイン処理を終了する。
<作用>
本実施形態の紙幣識別装置1では、3種類の判定結果、すなわち可視光反射データに基づくデータに対する判定結果、赤外光反射データに基づくデータに対する判定結果、赤外光透過データに基づくデータに対する判定結果、に基づいて紙幣の真贋を判定する。このため、真贋判定の精度を高めることができる。
また、ミラー17は、紙幣の搬送方向に対して45°に傾いて配置されている。また、CMOSイメージセンサ42は、ミラー17とCMOSイメージセンサ42の受光面の対向方向が、紙幣の搬送方向と水平となるように配置されている。このように配置することで、CMOSイメージセンサ42と紙幣との距離を大きく空けなくても、CMOSイメージセンサ42の画角を比較的大きく確保することができる。このため装置の大型化を抑制することができる。
<変形例>
以上、本発明の一実施形態に係る紙幣識別装置について、その作用効果も含めて説明した。しかし、本発明は、上述の実施の形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載した本発明の要旨を逸脱しない限り、種々の変形実施が可能である。
変形例に係る紙幣識別装置2について、図17〜図19を参照しながら説明する。図17は、変形例に係る幣識別装置2の模式的説明図である。また、図18は、変形例に係る幣識別装置2における制御LSIの回路構成例を示すブロック図である。また、図19は、変形例に係る第1メイン処理の一例を示すフローチャートである。
図17及び図18に示すように、本変形例に係る紙幣識別装置2は、上述の紙幣識別装置1と異なり、挿入検知センサ63を有している。なお、以下の説明において、上述した紙幣識別装置1における構成要素と同一または類似の構成要素については、その説明を省略し、また、図面においては同一の符号を付す。
挿入検知センサ63は、発光素子及び受光素子からなるフォトセンサで構成され、紙幣挿入口24に挿入された紙幣の端部を検知すると検知信号を出力する。図17に示すように、挿入検知センサ63は、紙幣識別装置2内で、紙幣挿入口24付近に、且つ、シャッタ19の外側に設けられている。なお、紙幣識別装置2のシャッタ19の初期状態は、閉止状態に設定されている。
図18に示すように、紙幣識別装置2の紙幣搬送ユニット60は、シャッタ19、搬送モータ61、モータ駆動回路62、及び、挿入検知センサ63で構成されている。紙幣識別部40の制御LSI41は、紙幣搬送ユニット60とGPIO78(図6参照)を介して電気的に接続されている。このため、挿入検知センサ63が出力した検知信号は、制御LSI41が検知可能となっている。
次に、紙幣識別装置2の制御LSI41が実行する第1メイン処理について、図19を参照して説明する。
第1メイン処理において、制御LSI41のホストコントローラ71は、まず、紙幣挿入検知判定処理を行う(S41)。具体的には、制御LSI41は、挿入検知センサ63から出力される検知信号を検知したか否かを判定する。
次いで、ホストコントローラ71は、ステップS41の判定結果が検知か否かを判定する(S42)。ステップS42で判定結果が検知でないと判定する場合(ステップS42がNO判定の場合)、ホストコントローラ71は、処理をステップS41に移行させる。
一方、ステップS42で判定結果が検知であると判定する場合(ステップS42がYES判定の場合)、ホストコントローラ71は、SRAM73の紙幣挿入検知フラグをONにセットする(S43)。次いで、ホストコントローラ71は、シャッタ開制御を行い、シャッタ19を閉止状態から開放状態にする(S44)。
次いで、ホストコントローラ71は、搬送用モータ搬送制御を行い、挿入された紙幣が所定の速度で紙幣識別装置2内を搬送されるように、紙幣搬送ユニット60の動作を制御する(S45)。具体的には、紙幣搬送ユニット60のモータ駆動回路62に、搬送モータ61を正回転させるように指示する。
次いで、ホストコントローラ71は、CMOS撮像制御を行う(S46)。本処理においてホストコントローラ71は、CMOSイメージセンサ42に撮像を開始するように指示する。これによって、CMOSイメージセンサ42は、以降4msec毎に撮像を行い、撮像データを制御LSI41に出力することになる。
次いで、ホストコントローラ71は、光源LED点灯制御を行う(S47)。次いで、ホストコントローラ71は、Vsync割込信号が出力されたか否かを判定する(S48)。出力されていないと判定する場合(ステップS48がNO判定の場合)、ホストコントローラ71は、ステップS48の処理を繰り返す。
一方、ステップS48で、Vsync割込信号が出力されたと判定する場合(ステップS48がYES判定の場合)、制御LSI41の魚眼補正スケーラ回路76は上述の対応光源別画像データ保存処理を行う(S49)。なお、ステップS47〜S49の内容は、上述の紙幣識別装置1の制御LSI41が行う第1メイン処理のステップS1〜S3の内容と同様のため、ここでは説明を省略する。
ステップS49の後、ホストコントローラ71は、紙幣挿入検知フラグがONか否かを判定する(S50)。紙幣挿入検知フラグがONである場合(ステップS50がYES判定の場合)、ホストコントローラ71は、処理をS47に移行させる。
一方、ステップS50で紙幣挿入検知フラグがONでない場合(ステップS50がNO判定の場合)、ホストコントローラ71は、処理をS41に移行させる。これによって、紙幣識別装置2は、次の紙幣の挿入を検知可能となる。
紙幣識別装置2が実行する第2メイン処理及び第3メイン処理は、上述の紙幣識別装置1が実行する第2メイン処理(図15参照)及び第3メイン処理(図16参照)と同様のため説明を省略する。なお、紙幣識別装置2においては、第1メイン処理において紙幣挿入検知フラグがONにセットされた後で、第2メイン処理の実行トリガーとなる対応光源別画像データ保存処理が行われる(図19のステップS43及びS49参照)。このため、第2メイン処理(図15参照)のステップS11は必ずYES判定となり、処理はステップS17に移行することになる。したがって、紙幣識別装置2が行う第2メイン処理においては、ステップS12〜S16の処理は省略可能である。
本変形例の紙幣識別装置2は、上述の紙幣識別装置1と同様の作用効果を奏する。また、紙幣識別装置2では、紙幣の挿入検知を、挿入検知センサ63の検知信号に基づいて行う。このため、CMOSイメージセンサ42が撮像した画像(撮像データ)に基づいて挿入検知を行う場合に比べて、制御LSI41の処理の負担を軽減させることができる。
<その他の変形例>
変形例の紙幣識別装置2は、挿入検知センサ63を、紙幣識別装置2内で、紙幣挿入口24付近に、且つ、シャッタ19の外側に設けた態様を説明した。しかし、これに代えて、挿入検知センサ63を、シャッタ19の内側に設けてもよい。この場合、シャッタ19の初期状態は、開放状態に設定され、図19に示す第1メイン処理におけるステップS44のシャッタ開制御は省略可能である。
また、本実施形態では、台間機である遊技用装置20に紙幣識別装置1を設けた態様を説明したが、本発明の紙幣識別装置は、紙幣を取り扱う他の装置に搭載可能である。例えば、パチンコ機、パチスロ機自体に搭載してもよい。また、ゲーミングマシン、遊技場周辺機器に搭載してもよい。また、両替機や現金自動預け払機に搭載してもよい。
また、制御LSI41を構成する各種回路として物理的な回路を用いてもよいし、ホストコントローラが予め用意されたプログラムを実行することで各種回路の機能を実現してもよい。また、一つの回路が担う処理を複数の回路に分担させてもよいし、複数の回路が担う処理を一つの回路が実行するようにしてもよい。
また、画像テンプレート比較処理、HOGテンプレート比較処理、FFTテンプレート比較処理のいずれか一つの比較結果に基づいて真贋判定を行ってもよい。例えば、画像テンプレート比較処理の判定結果のみに基づいて真贋判定を行ってもよい。この場合、3次元判定処理は省略される。
また、本実施形態では、紙幣収納部16を備える紙幣識別装置(スタックタイプ)について説明したが、本発明は、紙幣収納部を備えない紙幣識別装置(搬送タイプ)にも適用される。搬送タイプの紙幣識別装置が、スタックタイプの紙幣識別装置と異なる点は、挿入された紙幣の判定後に、紙幣を遊技用装置20の裏側に設置された搬送路に搬送する点である。搬送路はホール内の島(複数台の遊技機と複数台の遊技用装置が背中合わせに並んだホール内のブロック)毎に設置された紙幣保管庫(金庫)に保管される。
また、本実施形態では、紙幣識別装置1が真贋判定を行う紙幣の種別が、日本銀行券の1万円、5千円、千円(1万円札、5千円札、千円札)である例を説明した。しかしながら、紙幣識別装置1が真贋判定を行う紙幣の種別は、これに限らない。紙幣真贋判定に用いるテンプレートを予め用意することで、例えば、2千円札や外国紙幣について真贋判定を行うこともできる。